説明

非常設備の甲板締結用装置

本発明は、非常設備を船の甲板又は甲板上の構造物へ締結するための装置(100)に関する。そして、第一引張り強度及び第二引張り強度をそれぞれ有する第一外部締結手段(170)及び第二外部締結手段(145)に対する第一締結機構(180)及び第二締結機構(130)を備えている。装置はさらに、第三引張り強度を有する第三外部締結手段(125)に対する第三締結機構(120)を備え、操作時に、第二締結機構(130)及び第三締結機構(120)が装置に組み込まれた接続手段によって及び第一外部締結手段(170)によってそれぞれ接続され、装置に組み込まれた接続手段(140)は、第一外部締結手段(170)の機能が終了した場合に第二締結機構(130)と第三締結機構(120)との間の荷重を吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、救命ボートのような非常設備を船の甲板又は甲板上の構造物へ締結するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、救命ボートや救命浮標、無線送信機等の非常設備を船の甲板又は甲板に設けられた専用の構造物に締結するための様々な装置が従来から知られている。このような装置は、例えば、船が沈没しそうになったり、或いは、他の何らかの事故が発生したときのように、非常設備を切り離す必要のある、ある特定の基準に達したときに船の甲板から設備を切り離す機構を備えている。
【0003】
しかしながら、上記従来知られた器具は、例えば、製造が複雑で高コストとなる多くの時間を要する。
【0004】
このような器具の他の欠点としては、それらは多数のロープ用の孔や、シャックル、類似の締結具を備えており、甲板やその構造物とは異なる場所で接続しなければならず、間違った取り扱いや機能低下を引き起こすような誤った接続になりかねないところである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、従来のものより簡単かつ低コストで製造できる、非常設備を船の甲板又は甲板上の構造物へ締結するための装置を提供することを目的とする。同時に、本発明の目的は、従来のものよりも長寿命化を図ることである。さらに、本発明に係る装置は、従来知られた器具と同一の範囲で時効現象を生じないように、かつ、誤操作による接続ミスを最小限に抑えることができることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明に係る非常設備を船の甲板又は甲板上の構造物へ締結するための装置は、外部締結手段に対する第一締結機構及び第二締結機構に加え、さらに外部締結手段に対する第三締結機構を備えている。第一及び第二締結機構は、装置における少なくとも一つの開口部によって構成され、装置はさらに前記第一及び第二締結機構の回りに延び、前記第一及び第二締結機構を利用する締結手段の回りにも延設されている接続手段を備えている。本発明に係る装置を使用する非常設備の例としては、救命ボート、救命浮標、無線送信機とされる。
【0007】
必須ではないが、好適には、第三締結機構が装置内の溝(groove)によって構成され、この溝が、前記第一及び第二締結機構の少なくとも一部まで延びて配されている。
【0008】
さらに、第一及び第二締結機構は、装置内でそれぞれ第一及び第二開口部によって構成され、前記第一及び第二開口部は、装置内で互いに離間して配されている構成もまた好適である。
【0009】
一実施形態において、前記接続手段が、第二及び第三締結機構の周囲に延びるループ状部材によって構成されている。
【0010】
また、前記ループ状部材は、装置内部で一体に配されていることが好ましい。
【0011】
さらに、装置は、スリーブを備えていてもよく、前記スリーブは開口部を備えており、この開口部を第一締結機構の少なくとも一部と合致させる操作によってスリーブが装置に装着されるものとされている。スリーブは、スナップ式締結手段によって装置に装着されるように調整されている。
【0012】
この特徴的構成のために、装置は、以下に詳述するように、要求に応じた形状に製作され得る。
【0013】
例えば、第三締結機構が装置内の溝によって構成されるとするここによって単純な構成ととなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る装置100の実施形態の一例を図1に示す。この発明は、第一に、例えば、救命ボートや救命浮標、無線送信機等の非常設備を船の甲板又は甲板に設けられた専用の構造物に締結するために使用される。
【0015】
図示する実施形態において、装置100は、例えば、第一開口部120と第二開口部130とを有する連続リンクとしてみなされる所謂シェアリングリンク部(shearing link)110を備えている。二つの開口部は、詳細を後述するが、数字の「8」の字状になるように、装置100に配された「横棒部(cross-bar)」によって互いに離間して配されている。
【0016】
第一開口部及び第二開口部は、後述するように、外部締結手段に対して個々に第一締結機構、第二締結機構として機能する。後述する説明から理解されるように、装置100において第一締結機構及び第二締結機構を互いに離間した開口部とすることが必ずしも必要ではなく、例えば、一つの開口部としてもよい。
【0017】
シェアリングリンク部110は、さらに、装置100における二つの開口部即ち締結機構120、130を接続させる手段140を備えている。例えば、この接続手段140は、ステンレス鋼からなるワイヤであって、例えば、押しつぶされた所謂タリューライト錠(pressed talurite lock)のような錠150にて閉じられている。接続手段140は、第一締結機構120及び第二締結機構130、つまり、シェアリングリンク部の二つの開口部の周囲に配されており、締結機構120、130に締結される任意の締結手段の周囲に延びて接続される。
【0018】
しかしながら、本発明の重要な側面は、接続手段の正確な具現化ではなく、重要なことは、以下に詳述するように、接続手段に十分な強度が与えられ得ることである。
【0019】
シェアリングリンク部の製造方法の一例としては、接続手段即ち開口部120、130を、これらを互いに離間させる横棒部とともにプラスティックで型取りするプラスティック射出成形とするものがある。しかしながら、これは一例であって、シェアリングリンク部は、もちろん、他の多くの方法によって実現され得るものであり、重要な側面は、ここで記述された機能が維持されることである。
【0020】
シェアリングリンク部110として記載される本発明に係る装置は、さらに外部締結手段として第三締結機構180を備えている。この第三締結機構180は、溝180の形状とされており、本装置即ちシェアリングリンク部110の外周の全体又は一部に配され、開口部120、130の少なくとも一部を囲んで又は周囲に拡がって配されている。第三締結手段180、即ち、溝の目的もまた以下に詳述する。
【0021】
本発明に係る装置は、ケーシング即ちスリーブ160を備えてもよい。このスリーブ160は、開口部120’を備えており、考え得る状態としては、中央にそれぞれ貫通孔を有し、かつ、貫通孔を挟んでそれぞれ反対側の外周端に配された二つの壁部によって接続された二つの板部とされ得る。ケーシングは、開口部120’に加えて、図1の矢印Aによって定義される方向に貫通孔を有する。
【0022】
スリーブ即ちケーシング160は、装置上即ち本実施形態のシェアリングリンク部上を滑動するようにデザインされており、開口部120を含むシェアリングリンク部の少なくとも一部の保護部材を有して、例えば、スナップ式締結部を用いて装置に固定される。装置の一部の保護部材が離間部材であるスリーブ160によって構成されているということは、多くの利点を有しており、例えば、摩耗した際には必要に応じて一体部品の場合よりも容易に交換することができる。他の利点としては、同一のシェアリングリンク部の構成で異なる場合に適用できるというものであり、例えば、強度や色彩等に関しては所定のアプリケーションにおける必要性に応じて修正され得る。要求に応じて形状や色彩が施され得るスリーブのように保護部材が構成され得るということは、異なるアプリケーションにおいて異なる色彩とするそれぞれの要求に応じて修正され得ることを意味する。
【0023】
装置100に装着されたとき、スリーブの開口部120’は、その構成に基づき、第一締結機構120の少なくとも一部と一致して所望の締結機構となり得る。
【0024】
本発明に係る装置100の組立てた状態、言い換えれば、スリーブ160が本発明の主要部であるシェアリングリンク部110に対して滑動させた状態を図2に示す。図2からわかるように、ケーシング160における開口部120’は、シェアリングリンク部に係る開口部120、130の少なくとも一部と一致しており、組立てられた状態の装置100は、シェアリングリンク部のもう一つの機構である開口部120とこれの少なくとも一部と一致するケーシング内の開口部120’として定義される一つの機構とからなる全部で二つの機構を有し得る。
【0025】
ケーシング160の開口部120’によって規定される装置100の締結機構は、シェアリングリンク部とは異なる色彩のケーシングとする機構であるため、ユーザに認識されやすく、装置100の使用の際、二つの締結機構を間違えることを抑制し、言い換えれば、装置を間違って連結するリスクを低減する。
【0026】
もちろん、シェアリングリンク部110やスリーブ160における締結機構の数は単なる一例であって、本発明によれば、そのような機構の数は任意であり、スリーブによって閉じられ、かつ、スリーブの開口部120’と一致する締結機構120とスリーブによっては閉じられていないシェアリングリンク部の開口部130との間で原則的には任意とされる。
【0027】
上述したように、スリーブ160は、シェアリングリンク部を滑動する際の保護壁となり、かつ、例えば、以下に詳述する第三締結機構即ち溝180に納められるロープのような締結手段170を案内する二つの「壁部」を有している。
【0028】
図3は、装置100の操作状態を示す。シャックル145といわゆるシンブル165の形とされる第一及び第二の外部部材が、以下のように互いに装置100を用いて接続される。即ち、シャックル145は、第二締結機構である開口部130を介して装置100と接続され、シンブル165は、溝180内を通過してスリーブ160の壁部内にあるロープエンド170を介して装置100と接続される。
【0029】
シャックルは、不図示の船の甲板、又は、例えば救命ボートのような非常設備を固定する甲板上の構造物との接続に使用され得る。そして、シンブルは、救命ボートの周りを回って甲板の他の場所に接続される線やシャックルとの接続に使用され得る。こうして、救命ボートは、例えば、装置や、装置の(本実施形態の最初に述べたように)第一及び第二の締結機構を利用する第一外部締結手段170及び第二外部締結手段145のそれぞれを用いて甲板に固定され得る。
【0030】
シンブル165と装置100とを接続するロープエンド170は、装置内の上述した溝180に伸びてシンブル165の周りを通過し、かつ、さらに装置の第二締結機構130を囲むシェアリングリンク部の少なくとも一部を囲んで通過するように配されている。ロープ端部は、さらに、例えば一例として図示する、予め決められた所定の圧力でロープ端部を切断するナイフが内臓された漏水検出器(hydrostat)のような救命ボートを切り離す装置190を通過し得る。装置190の機能については、本発明の主な範疇ではないので、ここではこれ以上詳細について記述しない。
【0031】
装置100の第一締結機構120を介して、さらなるシャックルとしての第三外部締結手段125がさらに固定される。適切には、このシャックル125は、装置100への接続に加えて、その機能が当業者にはよく知られた、それゆえここでは詳述しない投下線である、所謂「もやい網(painter line)」に締め付けられる。この「もやい網」は、通常、遊びを有して締め付けられているので、ロープエンド170が引っ張られた状態とされた場合、装置が操作されたときにはどのような力も吸収されない。
【0032】
図1に関連して上述したように、装置は、有利な実施形態ではワイヤ140とされる接続手段を備えており、この第二接続手段140によってシャックル125と145とをそれぞれ接続するように二つの締結機構120、130の周りに延びて配されている。装置100を介して救命ボートを固定するための引張力は、通常、ロープエンド170に吸収されるので、接続手段であるワイヤ140は、操作の間牽引されない。
【0033】
本発明による装置100のアプリケーションの理解を容易にするため、救命ボートに適用した場合の想定可能なプロセスについて説明する。
【0034】
図3に示すように、本発明に係る装置によって救命ボートは船の甲板に固定される。もし、船が沈没して漏水検出器190が予め決められた所定の水深に達した場合、組み込まれたナイフがロープエンド170を切断する。このとき、甲板と救命ボートとの接続が破れ、救命ボートは水面を漂い始める。しかしながら、救命ボートは、ワイヤ140を介して未だともに固定されたシャックル125と145とを介して「もやい網」に未だ固定されている。予め決められた所定の水深となったところで、「もやい網」も引っ張られてシャックル125、145がワイヤ140を引張り始め、救命ボートが開いて拡張する。そして、張力が引張り強度を越えた時点でワイヤ140が切断する。ワイヤはロープエンド170の引っ張り強度よりも小さい引張り強度とされているが、もちろん、本発明の範囲内で変化し得るものであり、個々のアプリケーションに依存する。
【0035】
本発明に係る装置がどのように結合され得るかを図4に示す。ロープエンド170が、溝180内にてシェリングリンク部110の一部の周囲を滑り移動する。ロープエンドはさらにケーシング160の上記壁部内に滑入される。ロープエンドは、装置100に配される前に、漏水検出器のような外部装置に結節され、さらに次々と次の外部装置に結節される。
【0036】
一度、ロープエンドが装置内の溝180の周囲にこのように配されることにより、装置は上述したように組み合わされる。即ち、シェアリングリンク部上を滑動して、例えば、スナップ式締結部によってケーシングを固定することによって、シェアリングリンク部110にケーシング160を装着して組み合わせる。
【0037】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の目的内で自由に変更され得る。例えば、発明の範囲内で変更され得る1パラメータとしては、シェアリングリンクにおけるワイヤの引張り強度であって、それゆえ、装置の使用の際のシェアリグリンク部とロープエンドとの間の強度関係を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る装置を示す一部断面を含む分解構成図である。
【図2】図1に係る装置を組立てた状態を示す説明図である。
【図3】操作状態を示す説明図である。
【図4】本発明に係る装置を用いて組立てを行う状態を示す説明図である。
【図5】本発明に係る装置を用いて組立てを行う状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
100 装置
120 第一締結機構
125、145 シャックル(外部締結手段)
130 第二締結機構
140 接続手段
170 ロープエンド(外部締結手段)
180 溝(第三締結機構)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非常設備を船の甲板又は甲板上の構造物へ締結するための装置(100)であって、
外部締結手段(125、145)に対する第一締結機構(120)及び第二締結機構(130)に加え、さらに外部締結手段(170)に対する第三締結機構(180)を備え、
第一締結機構(120)及び第二締結機構(130)が、該装置(100)内に形成された少なくとも一つの開口部によって構成され、
さらに第一締結機構(120)及び第二締結機構(130)の回りに延び、これにより、第一締結機構(120)及び第二締結機構(130)を利用する締結手段(125、145)の回りにまで延設される接続手段(140)を備えていることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置(100)において、
第三締結機構(180)が装置(100)内の溝(180)によって構成され、
前記溝が、第一締結機構(120)及び第二締結機構(130)の少なくとも一部にまで延びて配されていることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置(100)において、
第一締結機構(120)及び第二締結機構(130)が、それぞれ第一及び第二開口部によって構成され、
前記第一及び第二開口部が、装置(100)内で互いに離間して配されていることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一つに記載の装置(100)において、
前記接続手段(140)が、第一締結機構(120)及び第二締結機構(130)の周囲に延びるループ状部材によって構成されている。
【請求項5】
請求項4に記載の装置(100)において、
前記ループ状部材が、装置内部で一体に配されていることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一つに記載の装置(100)において、
さらにスリーブ(160)を備え、
前記スリーブが開口部(120’)を備え、
該開口部を第一締結機構(120)の少なくとも一部と合致させる操作によってスリーブが装置に装着されるものとされていることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置において、
スリーブ(160)が、スナップ式締結手段によって装置(100)に装着されるように調整されていることを特徴とする装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−500264(P2006−500264A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−513108(P2004−513108)
【出願日】平成15年4月22日(2003.4.22)
【国際出願番号】PCT/SE2003/000642
【国際公開番号】WO2003/106258
【国際公開日】平成15年12月24日(2003.12.24)
【出願人】(504364356)シー・エム・ハマー・アトベクリング・アーベー (1)
【Fターム(参考)】