説明

非接触スイッチ

【課題】部品点数を削減して組立性を高めることができる非接触スイッチを提供すること。
【解決手段】バイアス磁界を発生するバイアス磁石4と、該バイアス磁石4が発生するバイアス磁界内に配置されてバイアス磁界の変化を電気信号に変換するホール素子(半導体磁気素子)3と、該ホール素子3が電気的に接続される基板5と、該基板5が電気的に接続されるターミナル8と、該ターミナル8を一体的に保持する樹脂製のターミナルベース6を備え、磁性体から成る被検出物の接近に伴う前記バイアス磁界の変化を検出して電気信号を前記ターミナル8から出力する非接触スイッチ1において、前記ターミナルベース6に、前記ホール素子3を保持する素子保持部6Aと、前記バイアス磁石4を保持する磁石保持部6Bと、前記基板5を保持する基板保持部6Cを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体から成る被検出物の位置をバイアス磁界の変化によって検出する非接触スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のトランスミッションのニュートラル位置とバック位置を検出するための位置検出スイッチとして有接点の機械式スイッチが知られているが、この機械式スイッチでは操作感が重くなり、耐久回数に制限がある等の問題がある。
【0003】
そこで、磁性体から成る被検出物の位置をバイアス磁界の変化によって検出する無接点の非接触スイッチを用いることが考えられる。尚、特許文献1には、ホール効果を応用して回転体の回転を非接触で検出する回転検出装置が開示されている。
【0004】
非接触スイッチによる被検出物の検出方法として、固定したバイアス磁石が発生するバイアス磁界内に、ホール電圧を検出するホール素子や抵抗変化を検出する磁気抵抗素子等の半導体磁気素子を配置し、磁性体である被検出物の接近によってバイアス磁界に生じた変化を半導体磁気素子によって検出する方法がある。
【0005】
斯かる検出方法を用いた非接触スイッチに関して、例えば特許文献1には、半導体磁気素子(ホールIC)とバイアス磁石を樹脂モールドする構成が開示されている。
【0006】
又、特許文献2には、磁気抵抗素子と被検出物(磁性体ロータ)との間のエアギャップの管理を容易化するために、外部端子(ターミナル)に折曲部を形成し、磁気抵抗素子を保持する素子保持部材(モールド材)を外部端子の前記折曲部によってバイアス磁石の貫通孔を通して被検出物に向けて付勢し、該素子保持部材の先端を非磁性材料より成るキャップに当接させる構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−338850号公報
【特許文献2】特許第3170916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されているように半導体磁気素子とバイアス磁石を樹脂モールドすると、半導体磁気素子とバイアス磁石との位置調整が難しい他、電子部品を実装した基板を配設していないために半導体磁気素子からの電気信号をスイッチ以外で増幅する必要があるという問題がある。
【0009】
又、特許文献2において提案された構成では、部品の組み立てが容易でなく、外部端子に折曲部を形成する必要がある等の問題がある。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、部品点数を削減して組立性を高めることができる非接触スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、バイアス磁界を発生するバイアス磁石と、該バイアス磁石が発生するバイアス磁界内に配置されてバイアス磁界の変化を電気信号に変換する半導体磁気素子と、該半導体磁気素子が電気的に接続される基板と、該基板が電気的に接続されるターミナルと、該ターミナルを一体的に保持する樹脂製のターミナルベースを備え、磁性体から成る被検出物の接近に伴う前記バイアス磁界の変化を検出して電気信号を前記ターミナルから出力する非接触スイッチにおいて、
前記ターミナルベースに、前記半導体磁気素子を保持する素子保持部と、前記バイアス磁石を保持する磁石保持部と、前記基板を保持する基板保持部を形成したことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記ターミナルベースの前記素子保持部に前記半導体磁気素子を位置決めする素子位置決め部を形成し、前記磁石保持部に前記バイアス磁石を位置決めする磁石位置決め部を形成したことを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記バイアス磁石の前記半導体磁気素子と対向する前面に凹部を形成し、該凹部に前記ターミナルベースの前記磁石位置決め部を嵌合させるとともに、前記ターミナルベースの前記素子位置決め部を、前記ターミナルベースに組み付けられた前記バイアス磁石の前記凹部の内部に配設したことを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記ターミナルベースに保持された前記半導体素子と前記バイアス磁石及び前記基板を充填材によって覆ったことを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記ターミナルベースに保持された前記半導体磁気素子と前記バイアス磁石及び前記基板を収容するスイッチボディを設け、前記充填材を前記スイッチボディと前記ターミナルベースによって囲まれた空間に貫通孔を通じて充填したことを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記貫通孔を前記スイッチボディに形成するとともに、前記ターミナルベースに係合部を形成し、前記貫通孔を貫通する係合部材を前記ターミナルベースの前記係合部に係合させることによって前記スイッチボディと前記ターミナルベースを組み付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、電気信号を出力するターミナルを一体的に保持するターミナルベースに半導体磁気素子とバイアス磁石及び基板をそれぞれ保持する素子保持部と磁石保持部及び基板保持部を形成したため、部品点数を削減して組立性を高めることができる。又、基板を非接触スイッチの長手軸方向に沿った方向に配置してその面積を大きく取ることができるため、上位ECUや出力側機器の仕様に合わせて回路を容易に変更することができる。更に、ターミナルベースは樹脂製であるため、複雑な構造であっても容易に成形することができる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、ターミナルベースに磁石位置決め部と素子位置決め部を形成したため、バイアス磁石と半導体磁気素子をターミナルベースに組み付けることによってこれらのバイアス磁石と半導体磁気素子をターミナルベースに対して正確に位置決めすることができ、両者の煩雑な位置調整作業が不要となって組立性が高められる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、ターミナルベースの磁石位置決め部をバイアス磁石の凹部に嵌合させるとともに、バイアス磁石がターミナルベースに組み付いた状態で素子位置決め部がバイアス磁石の凹部の内部に配設されるよう構成したため、バイアス磁石を半導体磁気素子に対してより正確に位置決めした状態で確実に固定することができる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、ターミナルベースに保持された半導体磁気素子とバイアス磁石及び基板を充填材によって覆ったため、非接触スイッチ内に水や粉塵が侵入しても、半導体磁気素子や基板の電子部品等が水や粉塵等によって悪影響を受けることがない。
【0021】
請求項5記載の発明によれば、スイッチボディとターミナルベースによって囲まれた空間に充填された充填材によって、スイッチボディ内に収容されたターミナルベースに保持されたバイアス磁石と半導体磁気素子及び基板を所定の取付位置に位置決め固定することができるとともに、スイッチボディとターミナルベースの組付状態を維持することができる。
【0022】
請求項6記載の発明によれば、スイッチボディとターミナルベースとを係合部材によって離脱不能に強固に組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る非接触スイッチの分解斜視図である。
【図2】本発明に係る非接触スイッチの平面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図3のB−B線断面図である。
【図5】本発明に係る非接触スイッチのバイアス磁石の平面図である。
【図6】(a)〜(e)は本発明に係る非接触スイッチに使用されるバイアス磁石の種々の形態を示す平面図である。
【図7】本発明に係る非接触スイッチの検出原理を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0025】
図1は本発明に係る非接触スイッチの分解斜視図、図2は同非接触スイッチの平面図、図3は図2のA−A線断面図、図4は図3のB−B線断面図、図5はバイアス磁石の平面図である。
【0026】
本発明に係る非接触スイッチ1は、図3及び図4に示すように、スイッチボディ2内に、半導体磁気素子であるホール素子3とその背面側に配されたバイアス磁石4及び基板5を保持するターミナルベース6の一部をスイッチボディ2の後端開口部から嵌め込んで固定することによって構成されている。尚、非接触スイッチ1においては、図2〜図4の左方を前方、右方を後方とする。
【0027】
上記スイッチボディ2は、亜鉛ダイキャスト等によって六角ナット状に一体成形されており、その一端部には、当該非接触スイッチ1を車両に取り付けるためのネジ状の車両固定部2aが形成されている。そして、スイッチボディ2の六角ボルト状の本体部2Aの前端左右は貫通孔2b(図1には一方のみ図示)が形成されている。
【0028】
又、スイッチボディ2の前面側内部には有底筒状の樹脂製のキャップ7がインサート成形によって一体に装着されている。そして、スイッチボディ2の前端開口部はキャップ7によって閉塞されている。このようにスイッチボディ2のホール素子3と対向する前端開口部をキャップ7によって閉塞することによって、スイッチボディ2内への水や粉塵等の侵入が防がれるとともに、バイアス磁石4が発生するバイアス磁界がスイッチボディ2によって遮られることがない。又、金属製のスイッチボディ2の内部に樹脂製のキャップ7をインサート成形によって装着したため、組立工数を削減することができる。
【0029】
前記ターミナルベース6は、樹脂にて一体成形され、これには前方から素子保持部6A、磁石保持部6B、基板保持部6C及びカプラ部6Dが一体に形成されている。ここで、ターミナルベース6の前端部には多角柱状のブロック体である磁石位置決め部6aが形成されており、この磁石位置決め部6aの前端面には前記素子保持部6Aの矩形凹状の素子位置決め部6bが形成されている。
【0030】
又、ターミナルベース6の前端部には、下方と両側部が開口する前記磁石保持部6Bが形成されており、図1に示すように、磁石保持部6Bの後壁を構成する円形の縦壁6cの下部には横方向に長い矩形の貫通孔6dが形成されている。そして、ターミナルベース6の前記磁石位置決め部6aの下面には左右一対の圧入ピン6eが下方に向かって一体に突設されている。
【0031】
更に、ターミナルベース6の前記磁石保持部6Bの後方の左右には係合ブロック6Eが形成されておりており、これらの係合ブロック6Eからは縦板状の側板6fがそれぞれ後方に向かって平行にカプラ部6Dまで一体に延びている。そして、左右の係合ブロック6Eには係合孔6gがそれぞれ形成されている。
【0032】
又、ターミナルベース6の上記左右の側板6fの間には磁石保持部6Bとカプラ部6Dによって囲まれる略矩形の空間Sが形成されており、左右の側板6fの長手方向中央には弾性変形可能な前記基板保持部6Cが形成されており、これらの基板保持部6Cの各下端には係合爪6hがそれぞれ形成されている。
【0033】
そして、ターミナルベース6のカプラ部6Dには、図3及び図4に示すように、基板5が発する電気信号を外部機器に出力するための左右3本のターミナル8が設けられている。ここで、各ターミナル8はクランク状に屈曲した状態でターミナルベース6に収容されており、各ターミナル8の一端は、基板5の後端部に横方向に適当な間隔で形成された3つの貫通孔5a(図1参照)に差し込まれて基板5と電気的に接続されている。又、ターミナル8の他端は、ターミナルベース6のカプラ部6D内へと突出している。
【0034】
ここで、基板5は略矩形プレート状に成形されており、その前端部には3つの貫通孔5bが横方向に適当な間隔で形成されており、該基板5の両側部の前後方向中間部には切欠き状の係合溝5cが形成されている。
【0035】
而して、基板5は、ターミナルベース6の左右の側板6fと前後の磁石保持部6Bとカプラ部6Dとで形成された略矩形の空間Sに下方から嵌め込まれ、その左右に形成された係合溝5cにターミナルベース6の左右の基板保持部6Cの係合爪6hを係合させることによって、図3及び図4に示すようにターミナルベース6に水平に保持固定され、その後端に形成された3つの貫通孔5aの各々に3つの各ターミナル8の前端部が上方から差し込まれて前述のように両者が電気的に接続される。
【0036】
ところで、図1に示すように、前記ホール素子3からは3本のターミナル9が導出しているが、これらのターミナル9は、ホール素子3から下方に延びた後に後方に向かって直角に折り曲げられている。
【0037】
而して、ホール素子3は、図3及び図4に示すようにターミナルベース6の磁石位置決め部6aの前面に形成された素子保持部6Aの素子位置決め部6bに嵌め込まれ、このホール素子3から延びる3本のターミナル9は、ターミナルベース6の縦壁6cに形成された前記貫通孔6dを通過してその後方へと延びている。そして、3本のターミナル9は、図3に示すように、基板5の前端部に形成された3つの貫通孔5bのそれぞれに下方から差し込まれることによって基板5と電気的に接続されている。
【0038】
又、前記バイアス磁石4はバイアス磁界を発生する磁石であって、そのホール素子3と対向する前面にはターミナルベース6の磁石位置決め部6aの外形形状に沿った凹部4Aが形成されている。ここで、図5に示すように、バイアス磁石4に形成された凹部4Aの相対向する内壁面の底面に近い部分はテーパ面4aとされている。尚、バイアス磁石4に形成される凹部4Aの形状には図6(a)〜(e)に示すようなものを採用することができる。即ち、図6(a)に示す矩形状の溝のコーナー部に円弧状曲面を形成したもの、図6(b)に示す長円形のもの、図6(c)に示す半円状のもの、図6(d)に示す多角形状のもの、図6(e)に示す三角状のもの等を採用することができる。
【0039】
而して、バイアス磁石4は、その凹部4Aをターミナルベース6の磁石位置決め部6aに嵌合させた状態でターミナルベース6の磁石保持部6Bに下方から嵌め込まれ、下面の凹部4A周縁にターミナルベース6の磁石位置決め部6aに形成された不図示の係合爪を係合させることによってターミナルベース6に仮保持される。そして、このバイアス磁石4は、ホール素子3と共に図1に示すリッド10によってターミナルベース6に保持される。ここで、図1に示すように、リッド10の幅方向中央にはホール素子3から延びる3本のターミナル9を通すための凹溝10aが形成されており、該リッド10の前端部の左右には圧入溝10bが形成され、後端部の左右には係合突起10cが後方に向かって一体に突設されている。又、バイアス磁石4がターミナルベース6に組み付いた状態において、素子位置決め部6bは図4に示すようにバイアス磁石4の凹部4Aの内部に配設されている。
【0040】
而して、リッド10は、その後端部の左右に突設された係合突起10cをターミナルベース6の縦壁6cに形成された貫通孔6d(図1参照)に嵌め込み、前端部の左右に形成された圧入溝10bにターミナルベース6の磁石位置決め部6aに突設された左右2本の圧入ピン6eを圧入することによって図3に示すようにターミナルベース6の磁石保持部6Bに取り付けられ、このリッド10によってホール素子3とバイアス磁石4がターミナルベース6に保持されて該ターミナルベース6からの脱落が防がれる。
【0041】
ところで、実際の組み付けにおいては、以上のようにターミナルベース6にホール素子3とバイアス磁石4及び基板5が取り付けられてこれらかサブ組みされた状態で、ターミナルベース6をスイッチボディ2の後端開口部から内部に差し込み、該ターミナルベース6とスイッチボディ2によって囲まれた空間に充填材をスイッチボディ2の貫通孔2bから充填し、ターミナルベース6に保持されたホール素子3とバイアス磁石4及び基板5を充填材によって覆う。
【0042】
その後、ターミナルベース6の左右の係合ブロック6Eに形成された係合孔6gを図4に示すようにスイッチボディ2の貫通孔2bに合わせ、各貫通孔2bと係合孔6gに係合部材であるピン11を係合させることによって、図2〜図4に示すようにスイッチボディ2とターミナルベース6が組み付けられる。
【0043】
次に、以上のように構成された非接触スイッチ1による被検出物12の検出原理を図7に示す模式図に基づいて以下に説明する。
【0044】
本発明に係る非接触スイッチ1においては、バイアス磁石4のホール素子3と対向する前面に凹部4Aを形成し、この凹部4A内にホール素子3をバイアス磁石4の前面から突出しないよう配置したため、バイアス磁石4の前面はホール素子3の背面から該ホール素子3の厚さ距離分bだけ前方に突出するとともに、ホール素子3の後方には図示の距離分aのスペースが形成される。
【0045】
ところで、ホール素子3にはバイアス磁石4によってバイアス磁界が印加されており、バイアス磁石4が発生するバイアス磁界内に配置されたホール素子3は、磁性体から成る被検出物12が図7に実線にて示すように離れているときと鎖線にて示すように接近したときのバイアス磁界の変化を検出し、検出された磁束密度と予め設定された磁束密度の閾値とを比較してON/OFFのスイッチング動作を行う。
【0046】
而して、本実施の形態では、ターミナルベース6の素子位置決め部6bによってホール素子3がバイアス磁石4と離間するよう保持され、両者の間に図7に示すように一定の距離aが確保されるようにしたため、被検出物12が接近していない図7に示す状態でホール素子3に印加されるバイアス磁界の磁束密度を低減させることができる。このため、被検出物12が図7に実線にて示すように離れたときと鎖線にて示すように接近したときにホール素子3に印加される磁束密度の差が顕著となり、当該非接触スイッチ1のスイッチングのための磁束密度の閾値を容易に設定することができる。
【0047】
そして、本発明に係る非接触スイッチ1においては、ターミナルベース6の素子位置決め部6bをバイアス磁石4の前面よりも内側の凹部4A内に配設したため、従来と比較して、ホール素子3の厚さ距離分bだけ被検出物12をバイアス磁石4に近づけることができる。このため、被検出物12が図7に鎖線にて示すように接近した際にホール素子3に印加される磁束密度をより大きくすることができ、被検出物12が図7に実線にて示すようにホール素子3から離れている状態と鎖線にて示すように接近した状態においてホール素子3に印加される磁束密度の差が顕著となり、このことによっても当該非接触スイッチ1のスイッチングのための磁束密度の閾値の設定が容易となる。
【0048】
又、本実施の形態では、図5に示すようにバイアス磁石4のホール素子3と対向する前面に形成された凹部4Aの内壁面をテーパ面4aとしたため、磁束密度が同強度のエリアがバイアス磁石4の前面に対して平行に分布する。このため、バイアス磁石4に対するホール素子3の位置がラジアル方向(非接触スイッチ1の長手軸方向をZ軸とするとXY軸方向)に多少ばらついても磁界成分に大きな変化がなく、ホール素子3に高い取付精度が求められないために該ホール素子3の組付性が高められる。
【0049】
以上において、本発明に係る非接触スイッチ1によれば、電気信号を出力するターミナル8を一体的に保持するターミナルベース6にホール素子3とバイアス磁石4及び基板5をそれぞれ保持する素子保持部6Aと磁石保持部6B及び基板保持部6Cを形成したため、部品点数を削減して組立性を高めることができる。そして、基板5を非接触スイッチ1の長手軸方向に沿った方向に配置してその面積を大きく取ることができるため、不図示の上位ECUや出力側機器の仕様に合わせて回路を容易に変更することができる。又、ターミナルベース6は樹脂製であるため、複雑な構造であっても容易に成形することができる。
【0050】
更に、本発明に係る非接触スイッチ1によれば、ターミナルベース6に磁石位置決め部6aと素子位置決め部6bを形成したため、バイアス磁石4とホール素子3をターミナルベース6に組み付けることによってこれらのバイアス磁石4とホール素子3をターミナルベース6に対して正確に位置決めすることができ、両者の煩雑な位置調整作業が不要となって組立性が高められる。
【0051】
又、本発明に係る非接触スイッチ1によれば、ターミナルベース6の磁石位置決め部6aをバイアス磁石4の凹部4Aに嵌合させるとともに、バイアス磁石4がターミナルベース6に組み付いた状態で素子位置決め部6bがバイアス磁石4の凹部4Aの内部に配設されるよう構成したため、バイアス磁石4をホール素子3に対してより正確に位置決めした状態で確実に固定することができる。
【0052】
そして、ターミナルベース6に保持されたホール素子3とバイアス磁石4及び基板5を充填材によって覆ったため、非接触スイッチ1内に水や粉塵が侵入しても、ホール素子3や基板5の電子部品等が水や粉塵等によって悪影響を受けることがない。又、スイッチボディ2とターミナルベース6によって囲まれた空間に充填された充填材によって、スイッチボディ2内に収容されたターミナルベース6に保持されたホール素子3とバイアス磁石4及び基板5を所定の取付位置に位置決め固定することができるとともに、スイッチボディ2とターミナルベース6の組付状態を維持することができる。そして、スイッチボディ2とターミナルベース6とを係合部材であるピン11によって離脱不能に強固に組み付けることができる。
【0053】
尚、充填剤として低圧モールド材(例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等)を用い、ホール素子3とバイアス磁石4及び基板5が組み付けられたターミナルベース6を金型は入れて低圧モールド材で覆うように成形し、その後、硬化した低圧モールド材によって覆われたターミナルベース6をスイッチボディ2内に圧入してピン止めすることによって非接触スイッチ1を組み立てる方法を用いても良い。
【符号の説明】
【0054】
1 非接触スイッチ
2 スイッチボディ
2A スイッチボディの本体部
2a スイッチボディの車両固定部
2b スイッチボディの貫通孔
3 ホール素子(半導体磁気素子)
4 バイアス磁石
4A バイアス磁石の凹部
4a バイアス磁石の凹部のテーパ面
5 基板
5a,5b 基板の貫通孔
5c 基板の係合溝
6 ターミナルベース
6A ターミナルベースの素子保持部
6B ターミナルベースの磁石保持部
6C ターミナルベースの基板保持部
6D ターミナルベースのカプラ部
6E ターミナルベースの係合ブロック
6a ターミナルベースの磁石位置決め部
6b ターミナルベースの素子位置決め部
6c ターミナルベースの縦壁
6d ターミナルベースの貫通孔
6e ターミナルベースの圧入ピン
6f ターミナルベースの側板
6g ターミナルベースの係合孔
6h ターミナルベースの係合爪
7 キャップ
8,9 ターミナル
10 リッド
10a リッドの凹溝
10b リッドの圧入溝
10c リッドの係合突起
11 ピン(係合部材)
12 被検出物
S 空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイアス磁界を発生するバイアス磁石と、該バイアス磁石が発生するバイアス磁界内に配置されてバイアス磁界の変化を電気信号に変換する半導体磁気素子と、該半導体磁気素子が電気的に接続される基板と、該基板が電気的に接続されるターミナルと、該ターミナルを一体的に保持する樹脂製のターミナルベースを備え、磁性体から成る被検出物の接近に伴う前記バイアス磁界の変化を検出して電気信号を前記ターミナルから出力する非接触スイッチにおいて、
前記ターミナルベースに、前記半導体磁気素子を保持する素子保持部と、前記バイアス磁石を保持する磁石保持部と、前記基板を保持する基板保持部を形成したことを特徴とする非接触スイッチ。
【請求項2】
前記ターミナルベースの前記素子保持部に前記半導体磁気素子を位置決めする素子位置決め部を形成し、前記保持部材に、前記磁石保持部に前記バイアス磁石を位置決めする磁石位置決め部を形成したことを特徴とする請求項1記載の非接触スイッチ。
【請求項3】
前記バイアス磁石の前記半導体磁気素子と対向する前面に凹部を形成し、該凹部に前記ターミナルベースの前記磁石位置決め部を嵌合させるとともに、前記ターミナルベースの前記素子位置決め部を、前記ターミナルベースに組み付けられた前記バイアス磁石の前記凹部の内部に配設したことを特徴とする請求項2記載の非接触スイッチ。
【請求項4】
前記ターミナルベースに保持された前記半導体素子と前記バイアス磁石及び前記基板を充填材によって覆ったことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の非接触スイッチ。
【請求項5】
前記ターミナルベースに保持された前記半導体磁気素子と前記バイアス磁石及び前記基板を収容するスイッチボディを設け、前記充填材を前記スイッチボディと前記ターミナルベースによって囲まれた空間に貫通孔を通じて充填したことを特徴とする請求項4記載の非接触スイッチ。
【請求項6】
前記貫通孔を前記スイッチボディに形成するとともに、前記ターミナルベースに係合部を形成し、前記貫通孔を貫通する係合部材を前記ターミナルベースの前記係合部に係合させることによって前記スイッチボディと前記ターミナルベースを組み付けることを特徴とする請求項5記載の非接触スイッチ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−114873(P2013−114873A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259468(P2011−259468)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)
【Fターム(参考)】