説明

非接触伝送装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、非接触伝送装置、すなわち比較的近接し対向して配置された固定部および移動部の各装置間で授受するデジタル信号やデジタル化されたデータ信号またはアナログ信号などの情報信号を、電磁波を媒体として非接触で伝送させる装置に関する。
【0002】
すなわち、非接触伝送装置は、複数組の装置を結合してなる静止機器およびNC工作機械,ロボット装置,搬送装置などの自動機械、あるいは車両とか飛翔体などのような移動を伴う各種の機械装置等に適用される。そして、本体の固定側と他方の運動や移動を行う側との何れか一方に能動モジュールを、他方に受動モジュールを装備する。
これにより、能動モジュールの送信ヘッドから受動モジュールの受信ヘッドに対し、電磁波または光などにより非接触で電力や指令制御信号等の情報信号を送信したり、受動モジュールの送信ヘッドからは種々のデータ信号、例えば形状、位置、歪、温度、色彩など各種の情報信号や電力信号を非接触で伝送したりする。
【0003】
【従来の技術】
従来、無線通信方式による幾つかの交信手段があり、例えば対象物から固有のマーカ符号を抽出するようにした識別装置や、受信局の検出情報に応じて送信出力を制御する方式にみられるような装置では、いずれも送信側および受信側のそれぞれに電源を備え、情報信号の送受信を行っている。
【0004】
一方、固定−回転装置間の電力、信号伝達装置や特に従来のデータ入出力カードでは、電源の供給方法などに多くの難点があった。
すなわち、非接触方式では、移動側で必要とする電源等の電力を固定側から非接触で供給し、また移動側から伝送するデータを固定側において非接触で受信する方式のものに対しては、距離に比例して大きくなる伝送損失が往復で効いてくるので、固定側から移動側へ、あるいはその逆の電磁波伝播による電力および信号の伝送を確実に行うことが難しく、その実現は困難なものとされている。
【0005】
【発明の目的】
本発明は上述の点を考慮してなされたもので、能動モジュールとしての固定側装置と受動モジュールとしての移動側装置とからなる非接触伝送装置において、受動モジュールが外部から取り込んだデータ信号を能動モジュールを介して外部に伝送することができる非接触伝送装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的達成のため、本発明では、固定側装置と、前記固定側装置に対し離間して交信することができる移動側装置とを備え、前記固定側装置に設けられた第1の電磁ヘッドのコイルと前記移動側装置に設けられた第2の電磁ヘッドのコイルとの間で、電磁波を非接触で伝送するようにした装置であって、前記固定側装置は、電力送信部と信号受信部とを含み、前記電力送信部は、前記移動側装置の前記第2の電磁ヘッドに向けて電力と指令制御信号電磁波送信する手段を備え、前記信号受信部は、前記第1の電磁ヘッドにより受信したデータ信号の復調処理を行う手段と、前記データ信号を外部回路に送出する手段とを有し、前記移動側装置は、電力受信部と信号送信部とを含み、前記電力受信部は、前記第2の電磁ヘッドが前記第1の電磁ヘッドと近接したときに前記電磁波を受信して処理する手段と、受信した前記電磁波の一部を整流して電源用電力を形成し当該移動側装置に給電する手段とを有し、前記信号送信部は、前記電源用電力が与えられて前記データを入力する入力手段と、前記データ信号および受信電力変化量の信号を信号伝送用周波数により変調を施した電磁波として前記固定側装置の信号受信部に伝送する手段を備え、前記第2の電磁ヘッドが前記第1の電磁ヘッドに接近したときに、前記移動側装置は受信した前記電磁波により動作に必要な電力を得て、該移動側装置の電力受信部で受信した電力の変化量に応じて、該移動側装置の信号送信部から伝送されて前記固定側装置の信号受信部で受信される電力変化量の信号に基づいて前記固定側装置の電力送信部の送信出力を制御すことを特徴とする非接触伝送装置を提供するものである。
又、前記非接触伝送装置において、前記固定側装置の電力送信部から送信された電力を前記移動側装置で受電した上で、前記移動側装置は受信した前記電力の出力の変化に対応する受信電力変化量の信号により、前記電源用電力が与えられて形成された信号伝送用周波数の電磁波に変調を施して前記固定側装置の信号受信部にフィードバックすることにより、前記固定側装置の電力送信部からの送信出力を制御する構成としたものである。
【0007】
本発明に係わる電力や情報信号を非接触で伝送する媒体として用いられる電磁波は、商用周波数以上の交流で低周波からマイクロ波を含むものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の基本構成は、能動モジュールに備えた第1の電磁ヘッドから受動モジュールに備えた第2の電磁ヘッドに向けて電力の電磁波を送信し、受動モジュールから能動モジュールに信号伝送用の電磁波を伝送する非接触伝送装置としてのものである。
【0009】
図1は、能動モジュールで受信した受動モジュールからの情報信号の信号強度に基づいて、電力の発送出力を自動的に制御する手段を備えた装置の実施例を説明するブロック線図である。
図中、Aは能動モジュール、Bは受動モジュールを表わしており、能動モジュールAは電力や情報信号を扱う電力送信部および情報信号を受信する信号受信部などを有し、受動モジュールBは電力や情報信号を受けて処理する電力受信部および情報信号を送信する信号送受信部などを有している。
【0010】
能動モジュールAの電力送信部は、電力発送用周波数を発振するf1発振回路1の出力を、RF(高周波)バッファアンプ2を経て受けるRFパワーアンプ3により電力増幅し、電磁送信ヘッド4(ヘッドの構成は後述)からその電磁波を放射する。
この電磁波は、受動モジュールBの電磁受信ヘッド5に捕捉されたのち、整流平滑回路6により直流E1とされて受動モジュールB内の各回路および付加回路の動作用電源として供給されるので、受動モジュールBは見掛け上無電源で動作する。
【0011】
この場合、電力伝送に係わる電磁送信ヘッド4と電磁受信ヘッド5との距離が大きくなるにつれて電磁受信ヘッド5に誘導される電力は大きく減衰する。
また、受動モジュールに付帯した装置の回路等から入力されるアナログデータDi1などの情報は、AF(低周波)アンプ7によってスケーリングなどの必要な処理が行なわれた後、信号伝送用周波数を発振するf2発振回路8の出力とともに変調回路9において変調信号となり、RFパワーアンプ10によって電力増幅されて電磁送信ヘッド11から空中へ電磁波として放射される。
【0012】
この電磁波は、能動モジュールAの電磁受信ヘッド12により捕捉され、次のRFアンプ13で増幅された後、検波回路14によって元のデータなどの情報に復調され、AFバッファアンプ15を経たうえで、出力データDo1などの情報として出力したり、その出力状況を観測したりすることができる。
【0013】
この場合、RFアンプ13の出力の一部は、キャリア検波回路16によって検波、直流化され適当な時定数回路17およびゲイン調整用の可変抵抗器18を経て、RFバッファアンプ2やRFパワーアンプ3の電源に直列に挿入された電圧制御回路19の制御端に印加される。このようにして、先に述べたように電力の発送出力を自動的に制御することができる。
【0014】
なお、このような発送出力を制御する一般的な方法としての、バッファアンプやパワーアンプのバイアス値を調節する手段を適用してもよいことはいうまでもない。それらの値を大幅に変化させるには、真空管の場合でいう動作級(A,B,C級など)を変化させることになり、効率やリニアリティなどの面から見て好ましくない。
したがって、本発明の実施例では、バイアス値を変えるのではなく、電圧制御回路19によってRFバッファアンプ2やRFパワーアンプ3の電源電圧を自動的に調整することによってRF出力を制御するようにしている。
【0015】
このような電源の安定化手段と並行に、能動モジュールAの信号受信部において受信した信号強度を電力送信部に常時ネガティブ・フィードバック、すなわち受信した信号強度が弱いときには電力送信部の出力を増強し、逆の場合には低減させるようなフィードバック動作を自動的に行うように回路を構成することによって、常に受動モジュールBに到達する電力の一定化を図るようにした。
なお、本発明の実施例の如く非接触で行なわれる電力発送用周波数の電力伝送と信号伝送用周波数のデータ伝送に係る媒体が双方とも電磁波であるから、大きな出力の電力伝送系に係わる電磁界が伝送系に影響しないように、電力発送用周波数と信号伝送用周波数とで異なる周波数を使用したりすることも必要である。
【0016】
電磁界用の送信ヘッド4,11および受信ヘッド5,12は、それぞれコンデンサを並列に接続したコイルを用いることができ、電磁送信ヘッド4および電磁受信ヘッド5については、電力用と情報信号用との2つのコイルを別個にそれぞれ単巻として2対分使用してもよい。
しかし、能動モジュールと受動モジュールとを単に対向させて使用するような場合には、周波数特性の異なる電力用および情報信号用の2種類の磁性体コアにそれぞれコイルを巻いたものを一体化して1個のヘッドにし、一方を送信用、他方を受信用にすれば一対だけで済ますことができ、全体の形を小さくすることができる。
【0017】
電力または情報信号の伝送効率を考慮したうえで、磁性体コアを使用せずに空心コイルにしても良いし、何れか片方のコイルのみに磁性体コアを使用し片方を空心コイルとしてもよい。
また、受動モジュールを回転するシャフトのようなものに取付けて使用する場合であれば、その外側に空隙をおいて固定した能動モジュールを同軸状に構成することもできる。
あるいは、例えば受動側モジュールを設置した装置が平板状をしたものであれば、ヘッドの形状も平面的なものが要求されることになるが、このような場合にはプリント配線を利用して単巻または積層プリントコイルを形成することにより対応できる。
【0018】
図2は、本発明の一実施例の構成を示したものである。この実施例では、能動モジュールAから発送された電力の大きさの変化を受動モジュールBで受信した上で、その変化量を能動モジュールAにフィードバックし、能動モジュールAにおいて受信した信号強度に応じて電力の発送出力を自動的に制御し、全体として受動モジュールBに伝送される電力を一定にするように構成されている。
【0019】
能動モジュールAの送信ヘッド20から放射された電力は、受動モジュールBの受信ヘッド21に捕捉される。その出力の一部は、平滑回路22によって直流出力E2となり、受動モジュールBの各回路および付帯する外部回路における動作電源用として供給される。
【0020】
そして、他の一部は、適当な時定数を持つ時定数回路17およびゲイン調整用の可変抵抗器18を経て、サブキャリア1発振変調回路23によって受信ヘッド21の出力に対応した変調波Fs1となる。
また受動モジュールBに付帯した外部回路で得られたデータ信号Di2などの情報は、AFアンプ7においてスケーリングなどの必要な処理を施され、次のサブキャリア2発振変調回路24を経ることによって育成されたデータ信号Di2などの情報に対応した変調波Fs2となる。
【0021】
そして変調波Fs2は、変調波Fs1とともにミキサ回路25によって混合され、更にメインキャリア発振回路26の出力で駆動される変調回路9に入力されて変調波となる。この変調波は、RFパワーアンプ10において電力増幅を受けた後、信号用の電磁送信ヘッド11から電磁波の情報信号として空間に放射される。
これを、能動モジュールAでは、電磁受信ヘッド12により受信した後、RFアンプ13において増幅し、メインキャリアに対する検波回路14によってサブキャリアによる変調波Fs1’および変調波Fs2’の混合波として復調する。
【0022】
これらの変調波のうちデータ信号Fs2’は、サブキャリア2検波回路27によって復調され、AFバッファアンプ15を経てデータ出力信号Do2などの情報として、外部回路において使用される。
また受信ヘッド21の出力に対応した変調波Fs1’は、サブキャリア1検波回路28によって復調された後、時定数回路17およびゲイン調整用の可変抵抗器18を経て、AFパワーアンプ29の出力を制御する目的で、その電源回路に直列に挿入された電圧制御回路19の制御入力に印加される。
【0023】
そして、AFパワーアンプ29の出力は、送信ヘッド20から受動モジュールBに向けて放射される。
このように能動モジュールAから発送された電力の変化を、受動モジュールBで受信した上で、その発送電力の出力に係る信号強度として能動モジュールAに返送する。
能動モジュールAは、受信した情報信号の信号強度の値に応じて電力送信部にネガティブ・フィードバックを掛けることにより、モジュール間の距離変化に関係なく信号強度をほぼ一定に保つことができる。
能動モジュールA、受動モジュールB間の送受信は、電磁波を種々組み合わせて行うことができ、電磁受信を行う一方のヘッドと、電磁送信を行う他方のヘッドとを図示以外の組合せで利用することができる。
【0024】
(変形例)
上記実施例の変調方式に換えて、通常の無線通信などで用いられる各種の変調方式の殆どを適用できることは自明であり、上述の制御とともに各モジュール内の受信系のみを対象とした通常のAGCを併用することもあり得る。
【0026】
【発明の効果】
本発明は上述のように、固定側装置と、この固定側装置に対し離間して交信することが
できる無電源の移動側装置とを備えた非接触伝送装置であって、固定側装置に設けられた
電力送信部は、受信した電磁波の信号強度に基づいて送信信号を均一な所定の出力強度に制御し、移動側装置に設けられた信号送信部は、信号伝送用周波数の電磁波によりデータに対応した変調波を形成して第2の電磁ヘッドから固定側装置に伝送するようにしたため、無電源の移動側装置は固定側装置に接近すると電源用電力が安定に供給されて回路動作を正確に行うことができるので、固定側装置における変調波の復調処理に際しても、移動側装置から固定側装置に向けて同期が取れていて正確かつ確実なデータ伝送を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成例を示すブロック線図。
【図2】本発明の一実施例の構成を示すブロック線図。
【符号の説明】
1 f1発振回路
2 RFバッファアンプ
3 RFパワーアンプ
4 電磁送信ヘッド
5 電磁受信ヘッド
6 整流平滑回路
7 AFアンプ
8 f2発振回路
9 変調回路
10 RFパワーアンプ
11 電磁送信ヘッド
12 電磁受信ヘッド
13 RFアンプ
14 検波回路
15 AFバッファアンプ
16 キャリア検波回路
17 時定数回路
18 可変抵抗器
19 電圧制御回路
20 信ヘッド
21 信ヘッド
22 平滑回路
23 サブキャリア1発振変調回路
24 サブキャリア2発振変調回路
25 ミキサ回路
26 メインキャリア発振回路
27 サブキャリア2検波回路
28 サブキャリア1検波回路
29 AFパワーアンプ
A 能動モジュール
B 受動モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側装置と、前記固定側装置に対し離間して交信することができる移動側装置とを備え、前記固定側装置に設けられた第1の電磁ヘッドのコイルと前記移動側装置に設けられた第2の電磁ヘッドのコイルとの間で、電磁波を非接触で伝送するようにした装置であって、
前記固定側装置は、電力送信部と信号受信部とを含み、
前記電力送信部は、前記移動側装置の前記第2の電磁ヘッドに向けて電力と指令制御信号電磁波送信する手段を備え、
前記信号受信部は、前記第1の電磁ヘッドにより受信したデータ信号の復調処理を行う手段と、前記データ信号を外部回路に送出する手段とを有し、
前記移動側装置は、電力受信部と信号送信部とを含み、
前記電力受信部は、前記第2の電磁ヘッドが前記第1の電磁ヘッドと近接したときに前記電磁波を受信して処理する手段と、受信した前記電磁波の一部を整流して電源用電力を形成し当該移動側装置に給電する手段とを有し、
前記信号送信部は、前記電源用電力が与えられて前記データ信号を入力する入力手段と、前記データ信号および受信電力変化量の信号を信号伝送用周波数により変調を施した電磁波として前記固定側装置の信号受信部に伝送する手段を備え、
前記第2の電磁ヘッドが前記第1の電磁ヘッドに接近したときに、前記移動側装置は受信した前記電磁波により動作に必要な電力を得て、該移動側装置の電力受信部で受信した電力の変化量に応じて、該移動側装置の信号送信部から伝送されて前記固定側装置の信号受信部で受信される電力変化量の信号に基づいて前記固定側装置の電力送信部の送信出力を制御する機能を備えたことを特徴とする非接触伝送装置。
【請求項2】
請求項1記載の非接触伝送装置において、
前記固定側装置の電力送信部から送信された電力を前記移動側装置で受電した上で、前記移動側装置は受信した前記電力の出力の変化に対応する受信電力変化量の信号により、前記電源用電力が与えられて形成された信号伝送用周波数の電磁波に変調を施して前記固定側装置の信号受信部にフィードバックすることにより、前記固定側装置の電力送信部からの送信出力を制御するように構成したことを特徴とする非接触伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【特許番号】特許第3574452号(P3574452)
【登録日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【発行日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−180056(P2003−180056)
【出願日】平成15年6月24日(2003.6.24)
【分割の表示】特願2002−316493(P2002−316493)の分割
【原出願日】昭和60年6月3日(1985.6.3)
【公開番号】特開2004−159291(P2004−159291A)
【公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【審査請求日】平成15年6月24日(2003.6.24)
【出願人】(000152871)株式会社日本システム研究所 (5)
【出願人】(000187655)
【参考文献】
【文献】特開昭56−140486(JP,A)
【文献】実開昭60−037963(JP,U)
【文献】特開昭56−122246(JP,A)
【文献】実開昭60−037963(JP,U)
【文献】特開昭62−133829(JP,A)
【文献】特開昭57−032144(JP,A)