説明

非接触式IC付き通帳

【課題】 通帳には届出の印影は、目視による確認が不可能な方法で印影情報を通帳に添付する方法であって、正規の口座名義人がその通帳と届出印を持参することにより、どこの本店又は支店の窓口からでも簡単に迅速な預金の引出し請求や解約請求を行える通帳を提供することを目的とする。
【解決手段】 非接触方式でデータの送受信を行うアンテナ部16と情報記憶部を有するIC回路17がシート内に内包されたIC回路付シート2、21を通帳に一体的に添付してなる非接触式IC付き通帳1であって、情報記憶部には、通帳に対応する届出印の印影データ36が記憶された構成を採用することにより、通帳1には届出の印影は、目視による確認が不可能にでき、正規の口座名義人がその通帳と届出印を持参することにより、どこの本店又は支店の窓口からでも簡単に迅速な預金の引出し請求や解約請求を行うことができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、銀行等の通帳に関し、特に非接触方式でデータの送受信を行うアンテナ部と電子的データが記憶される情報記憶部を有するIC回路がシート内に内包され、IC回路付シートが通帳に一体的に添付されてなる非接触式IC付き通帳に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、銀行等の金融機関で使用する通帳は、通帳に対応する口座から預金の引出し請求や口座の解約請求を行う際、口座に対応する届出印鑑の捺印を通帳の所定の箇所へ直接行うか、捺印した用紙を通帳へ貼り付けて届出の印影が表示されていた。
【0003】しかしながら、口座名義人が通帳を紛失たり盗難により、悪意の第三者の手に渡った場合、その通帳に表示された印影を基に酷似した印鑑を作成したり、極めて判別しにくい印鑑を使用し、通帳に対応する口座から預金の引出し請求や口座の解約請求を行う事件が発生し、被害金額も増加し社会問題化している。
【0004】そこで、通帳には届出の印影は、金融機関が保管するのみで通帳には表示させないようにすることが望ましいとされていた。そして、正規の口座名義人がその通帳と届出印を持参し、預金の引出し請求や解約請求を行う場合、口座を開設した本店又は支店の窓口で、金融機関が保管するその口座に対応する届出の印影を取出し、その都度、正規の口座名義人が提出した印影と金融機関が保管した印影とを確認するようにすることが試みられていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この印影照合は、通帳に対応する口座から預金の引出し請求や口座の解約請求等の請求の都度、口座に対応する届出印を保管場所から取出すことは、実質的に煩雑な手続きとなるうえ、手続を行う窓口が口座を開設した本店又は支店以外である場合は、手続を行う窓口の本店又は支店から口座を開設した本店又は支店に問い合わせ、対応する届出の印影を精度の良いFAXで転送するか又はデータベースに口座名義人の印影をデジタルデータに変換して蓄積されたファイルからネットワークを通じてその対応する印影データを転送して、この印影データに基づいて目視できる印影に再現し、上記の確認をしなくてはならず、極めて煩雑な手続になったり、規模の大きいシステムを構築しなくてはならず、顧客に対するサービスも以前改善できないものとなっていた。本発明は、これらの欠点を改善するもので、通帳には届出の印影は、そのままでは目視による確認が不可能な方法で印影情報を通帳に添付する方法であって、正規の口座名義人がその通帳と届出印を持参することにより、どこの本店又は支店の窓口からでも簡単に迅速な預金の引出し請求や解約請求を行える通帳を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の非接触式IC付き通帳は、上記目的を達成するために非接触方式でデータの送受信を行うアンテナ部と情報記憶部を有するIC回路がシート内に内包されたIC回路付シートを通帳に一体的に添付してなる非接触式IC付き通帳であって、前記情報記憶部には、通帳に対応する届出印の印影データが記憶された構成を採用することにより、通帳には届出の印影は、目視による確認が不可能にでき、正規の口座名義人がその通帳と届出印を持参することにより、どこの本店又は支店の窓口からでも簡単に迅速な預金の引出し請求や解約請求を行うことができるようになる。
【0007】また、前記IC回路付シートは、裏面に粘着部を形成したラベル形状で構成され、通帳の一部に貼着されてなる構成を採用するこで、今までの通帳を利用して本発明によるシステムを採用でき産業上有益なものとなる。
【0008】さらに前記IC回路付シートは、前記IC回路を内包したシートを通帳を構成する用紙とともに丁合綴じされ通帳に一体的に添付されてなる構成を採用することにより、前記IC回路付シートの裏面に粘着部を形成したラベルを通帳の一部に貼着された構成のものに比較し、IC回路によるラベルが剥がされことがなく、よりセキュリティを高めることができる。
【0009】そしてさらに、前記IC回路は、通帳に対応する届出印の印影データとともに通帳に対応する口座番号情報が記憶されてなることにより、印影データの読出しに際して、対応する口座データと印影データの照合が確実となりより高いセキュリティを求めることができる。
【0010】
【発明の実施の態様】次に、本発明を図1から図7に示す実施例に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の非接触式IC付き通帳の平面的状態の説明図、図2は、図1の非接触式IC付き通帳のX−X線断面説明図、図3は、本発明の別の実施態様を示す非接触式IC付き通帳の平面的状態の説明図、図4は、図3の非接触式IC付き通帳のY−Y線断面説明図、図5は、非接触式IC付き通帳の使用状態における印影照合を行う表示画面説明図、図6は、図5で示した非接触式IC付き通帳の使用状態における印影照合を行うシステム説明図、図7は、通帳に取引き記録を印字する場合の状態を示す通帳印字フロー説明図である。
【0011】まず、本発明の非接触式IC付き通帳1は、図1に示されるようには、通帳を開くと通帳の種類を示す口座表示3、口座番号表示4、通帳を発行した金融機関の発行機関表示5を有し、さらに非接触方式でデータの送受信を行うアンテナ部16と情報記憶部を有するIC回路17がシート12内に内包されたIC回路付シート2を通帳に一体的に添付してなるものであって、前記情報記憶部には、通帳に対応する届出印の印影データと通帳の口座番号データが記憶されている。また、この情報記憶部には、あらかじめ登録された暗証番号記憶エリアとこの登録された暗証番号と外部から入力された暗証番号との照合を行いIC回路とのアクセスを許可する処理プログラムが記憶されると共にIC回路17には、処理プログラムに基づいて演算制御を行うCPUを有している。
【0012】前記IC回路付シート2は、具体的には図2に示したようにアンテナ部16と情報記憶部を有するIC回路17が、基材シート12内に内包され、さらに表裏に上質紙11、12(あるいはポリエチレンテレフタレート(通称PET材)または、ポリプロピレンからなる樹脂シートでもよい)を積層し、さらに裏面に粘着部14を形成したラベル形状で構成され、通帳1の一部に貼着されてなるものである。また、このラベル形状で構成されたIC回路付シート2は、通帳発行時に少なくとも貼付されれば良いので、それまでは、粘着部14に剥離紙が覆われている(図示せず)。これにより、今までの従来システムの通帳を利用して本発明によるシステムを採用できる。
【0013】そしてさらに、前記IC回路17、27には、通帳1に対応する届出印の印影データ36(図5参照)とともに通帳1に対応する口座番号情報4(36k)が記憶されてなることにより、印影データ36の読出しに際して、対応する口座データ36kと印影データ36の照合が確実となりより高いセキュリティを求めることができる。
【0014】図6の印影照合システムについて説明すると、照合装置40は、印影の照合状態を表示する表示画面31と、銀行員が操作する入力装置32、照合装置40を駆動するプログラム等が記憶された記憶装置33が制御部30を介してそれぞれ接続されている。また、制御部30には、通帳1への印字、及びIC回路に記憶されている印影データ36を読取るためのリーダ/ライタ付プリンタ35と、このリーダ/ライタ付プリンタ35にIC回路に記憶されている印影データ36の読取りを行うためのパスワード(暗証番号)を入力するための暗証入力装置34と、預金の引出請求書28等に捺印された印影情報を光学的に読取りデジタルデータとして取り込むイメージ入力装置29を制御できるように接続されている。
【0015】図5は、表示画面31の拡大説明図が示されているが、次に、この図6と、図5に基づいて非接触式IC付き通帳1の使用状態について説明すると、例えば、預金の引出し請求を行う場合、通帳1には届出の印影は、目視による確認が第三者にはできないが正規の口座名義人であれば届出印を知っているので、預金の引出請求書28に該当する届出印で捺印し、非接触式IC付き通帳1と共に銀行の窓口に提出する。銀行側は、非接触式IC付き通帳1をリーダ/ライタ付プリンタ35で通帳に登録された印影データ36と口座番号の読出しに際して、預金の引出請求者に暗証入力部34から暗証番号を入力させ、非接触式IC回路にアクセスし、非接触式IC回路へのアクセスの許可を受けて、IC回路内の印影データ36、口座番号データ36kを読出し、表示画面31に表示させる。
【0016】一方、引出請求者が提出した引出請求書28は、イメージリーダ29で捺印された払戻請求印データ38、銀行員が入力装置32から入力した口座番号データ38kが、印影データ36、口座番号データ36kと対比されて表示画面31に表示されると共に、表示画面31には、さらに払戻請求印データ38とIC回路内の印影データ36が重合状態で照合を行う照合ウインドウ39が、口座番号の照合結果39kと照合ウインドウ39の照合率37を表示として並列表示されるようになっており、簡単に届出印の照合が行えるようになっている。
【0017】また、このように本発明の非接触式IC付き通帳1は、構成されているので、通帳の取り引き記録行が満杯となり新規の非接触式IC付き通帳1を発行する場合の例を図7に基づいて説明する。まず、銀行の窓口の照合装置40やキャッシュディスペンサ(図示せず)等で、通帳をその装置(照合装置の場合ICリーダ/ライタ付プリンタ35)に挿入(ステップ51)すると、プリンタ部で通帳印字位置が確認され(ステップ52)、通帳印字行が満杯でない場合(ステップ53)は、通帳に必要な取り引き情報が1行書き込まれる(ステップ54)。次にステップ55で印字が終了であれば通帳が排出される(ステップ56)が、印字情報が残っていればステップ52に戻り通帳印字位置が確認される。ステップ53で通帳印字行が満杯になった場合は、非接触式IC付き通帳1の使用者に暗証番号の入力を促し、入力(ステップ57)された暗証番号が一致していれば(暗証番号の照合は通帳1のIC回路内で行われる)、旧非接触式IC付き通帳1から新非接触式IC付き通帳1へ印影データと口座番号データおよび暗証番号等のデータが転送(ステップ58)され、ステップ54に戻り通帳に必要な取り引き情報が1行書き込まれる。そして以後同じ処理が繰返される。
【0018】上記ステップ57において、暗証番号の照合の一致がとれない場合は、再度暗証番号入力を促すようになっている。また、キャッシュディスペンサでの払戻し処理の場合、通常は、キャッシュカードでの併用で通帳が利用され、最初に暗証番号の入力が行われ、その時点で暗証の照合が行われているので、通帳印字フロー図を示す図7のステップ57は省略されてもよい。
【0019】以上のように本発明の非接触式IC付き通帳1は、構成されて使用されるが、他の実施態様としては、図3、図4に示されるように、例えば、通帳の表紙となる用紙22にIC回路を内包して構成してもよく、アンテナ26、IC回路27を内包する基材シート15の表裏に上質紙23、24を積層し構成され、通帳の中紙と共に綴じ合わされて非接触式IC付き通帳21が作成される。このようにすることで、図1、図2に示された非接触式IC付き通帳1のようにIC回路付シート2を通帳に貼り付ける必要もなく、IC回路付シート2が剥がされことがなく、よりセキュリティを高めることができる上、従来の通帳と同様に扱える。
【0020】尚、上記実施態様において、非接触式IC回路は、CPU付きの例を示したが必ずしもCPUを付加する必要はなく、少なくとも届出印の印影データ、あるいは、印影データと口座番号データのみが記憶され、単にメモリ的な構成としてもよい。また、このメモリ的な構成であっても暗証番号や印影データを公知のファイルの暗号化、及び復元技術によりセキュリティを所望のレベルで選択することができる。いずれにしてもIC回路内に印影データを記憶させ、目視による印影表示をさせないものであればよい。
【0021】さらにIC回路にCPUを付加しない場合や、暗証番号によって、IC回路にアクセスを許可する照合を行わない場合は、図6の照合装置40の暗証入力部34や図7で示した通帳印字フロー図で旧通帳から新通帳に、印影データやこの印影データと共に口座番号データを転送する際、ステップ57の暗証番号入力が必要ないことはいうまでもない。
【0022】
【発明の効果】本発明の非接触式IC付き通帳1は、以上説明した構成により、通帳には届出の印影は、目視による確認が不可能となり、正規の口座名義人がその通帳と届出印を持参することにより、どこの本店又は支店の窓口からでも簡単に迅速な預金の引出し請求や解約請求を行えると共に、悪意の第三者による通帳に表示された印影を基に印鑑が偽造されたり、酷似する印鑑が使用され、通帳から預金の引出し請求や口座の解約請求を行う事件を防止できる。また、通帳の取り引き記録行が満杯となり新規の通帳を発行する場合にも従来のように印影シールを貼り替えたり、印影を表示するためにその都度印鑑を持参する必要ものなく印影データは旧通帳から新規通帳に簡単に転送でき産業上極めて有益な通帳を提供できる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の非接触式IC付き通帳の平面的状態の説明図。
【図2】図1の非接触式IC付き通帳のX−X線断面説明図。
【図3】本発明の別の実施態様を示す非接触式IC付き通帳の平面的状態の説明図。
【図4】図3の非接触式IC付き通帳のY−Y線断面説明図。
【図5】非接触式IC付き通帳の使用状態における印影照合を行う表示画面説明図。
【図6】非接触式IC付き通帳の使用状態における印影照合を行うシステム説明図。
【図7】通帳に取引き記録を印字する場合の状態を示す通帳印字フロー説明図。
【符号の説明】
1、21 非接触式IC付き通帳
2、22 IC回路付シート
16、26 アンテナ部
17、27 IC回路
31 表示画面
35 ICリーダ/ライタ付プリンタ
36 印影データ
36k 口座番号データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 非接触方式でデータの送受信を行うアンテナ部と情報記憶部を有するIC回路がシート内に内包されたIC回路付シートを通帳に一体的に添付してなる非接触式IC付き通帳であって、前記情報記憶部には、通帳に対応する届出印の印影データが記憶されてなることを特徴とする非接触式IC付き通帳。
【請求項2】 前記IC回路付シートは、裏面に粘着部を形成したラベル形状で構成され、通帳の一部に貼着されてなることを特徴とする請求項1記載の非接触式IC付き通帳。
【請求項3】 前記IC回路付シートは、前記IC回路が内包されたシートを、通帳を構成する他の用紙とともに丁合綴じされ通帳に一体的に添付されてなることを特徴とする請求項1記載の非接触式IC付き通帳。
【請求項4】 前記IC回路の情報記憶部には、通帳に対応する届出印の印影データとともに通帳に対応する口座番号情報が記憶されてなることを特徴とする請求項1乃至3記載の非接触式IC付き通帳。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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