説明

非接触温度測定装置、試料ベース、および非接触温度測定方法

【課題】試料台の面内の温度分布を高い分解能で測定する。
【解決手段】非接触温度測定装置1は、試料台の温度分布を測定する装置であり、試料台上20に載置される試料ベース10と、電子線を照射する電子線源2と、電子線照射によって誘起される二次電子を検出する二次電子検出器3と、検出した二次電子に基づいて温度分布を測定する温度測定部(信号処理部7)とを備える。試料ベース10は温度係数を異にする抵抗体の組みを1次元又は2次元に複数配列して構成される。抵抗体の各組みに所定電圧を印加して、各抵抗体の温度に応じた分圧電圧を発生させ、電子線照射によって誘起される二次電子を検出し、検出した二次電子線に基づいて、試料台の温度分布を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空チャンバ内の温度分布測定に関し、特に真空チャンバ内に設置される試料台の温度分布を非接触で測定する非接触温度測定装置、非接触温度測定方法、および非接触温度測定に用いる試料ベースに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶装置等に用いられるTFTアレイ基板を検査するTFTアレイ検査装置は、通常真空チャンバ内に検査対象のTFTアレイ基板を搬入して試料台上に載置した状態でTFTアレイ検査を行っている。このTFTアレイ検査において、TFTアレイの所定パターンの検査信号を印加し、このときに得られる各TFTの電圧状態を、電子線照射で得られる二次電子を検出することで行う検査方法が知られている。
【0003】
このような真空チャンバ内で行う基板検査において、基板を所定温度に上昇させることで検査精度を高めることが期待されている。
【0004】
また、上記TFTアレイ検査装置に限らず、半導体装置において試料室や試料台の温度管理の重要性が認識されている。例えば、特許文献1には、試料室内に熱伝導板を設け、この熱伝導板に発熱電線と温度測定用の電線を内蔵させ、温度測定用の電線によって検出して温度に基づいて発熱電線の発熱量を制御することが記載されている。
【0005】
図11は、この温度測定のための構成を説明するための図である。図11において、試料室内に加熱のための発熱電線102と温度測定部101を内蔵した熱伝導板100を備え、この熱伝導板100は、試料室外に設けたステージ温度制御装置110によって温度制御が行われる。ステージ温度制御装置110は、温度測定部101で測定した温度情報を読み込む温度情報読み込み装置111と、発熱電線102の加熱を制御する加熱制御装置112と、温度情報読み込み装置111の温度情報に基づいて加熱制御装置112を制御する熱板温度制御装置113を備える。
【0006】
このように、真空チャンバ内の試料台を加熱した場合に、その試料台の面内温度の均一性や、温度分布が設計値からのずれを確認するために、試料台上に仮想的な被測定物を置き、この被測定物に熱電対やサーミスタ等の有線式の温度センサを複数個取り付け、この温度センサから得られる温度情報から温度分布を把握することが行われている。
【0007】
また、電子顕微鏡において、試料を加熱あるいは冷却した状態で観察する際に、非接触温度センサによって微小な試料の温度を測定することが、例えば、特許文献2に記載されている。この特許文献2に示される非接触温度センサは、従来技術として、電子線によって試料を加熱し、その試料から放出される赤外線の強弱によって試料温度を測定するものが示され、この赤外線による方法では試料の種類が制限されるという問題を解決するものとして、試料台で発生した電磁波の強度あるいは波長を検出するものが示されている。
【特許文献1】特開2002−353116号公報
【特許文献2】特開平7−45229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、試料台上に熱電対やサーミスタ等の有線温度センサを配置し、この温度センサの検出信号を有線により試料室の外部に配置した温度測定装置に導く構成では、以下のような問題がある。
【0009】
例えば、試料に温度センサ素子を接触させる際に、低い熱抵抗で接触させることが困難であるため、検出精度が低下する。温度センサに接続している配線の熱伝導によって、温度センサや試料の一部が冷却され、温度測定の誤差が生じるおそれがある。
【0010】
また、真空チャンバ内においてTFTアレイ検査を行う際には試料台を移動させる場合があり、このような場合には、真空チャンバの内外で温度センサの配線を引き回す必要があるが、真空チャンバ内を真空に保持した状態において可動配線処理を行うことは困難である。また、上記の状況から、温度センサの配設個数を制限する必要があるが、温度センサの配設個数を制限すると、面内の温度分布を高分解能で測定するに必要な個数の温度センサを確保することが困難である。
【0011】
また、上述した特許文献2に示される非接触温度センサでは、試料台から放出される電磁波の強度や波長を、ロッドに設けた温度検出手段で測定するものである。非接触温度センサを用いることで、有線センサを用いることによる問題は解決されるが、電磁波を用いた温度測定では、試料台から発せられる電磁波は無指向性であると想定されるため、温度検出手段は試料台の各部分から発生された電磁波を区別することなく検出することになり、試料台の面内の温度分布を高い分解能で測定することが困難であるという問題がある。
【0012】
そこで、本発明は上記課題を解決して、試料台の面内の温度分布を高い分解能で測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、真空チャンバ等に設けられた試料台の温度分布を非接触で測定するものであり、試料台上に載置する仮想的な試料ベースを用い、この試料ベースの電圧状態を温度に依存して変化させ、この電圧状態を電子線照射によって得られる二次電子を検出することによって、有線センサを用いることなく非接触で温度分布を測定する。
【0014】
本発明は、上述した仮想的な試料ベースを用いることによる温度測定において、非接触温度測定装置の態様、試料ベースの態様、および非接触温度測定方法の態様の複数の態様とすることができる。
【0015】
本発明の非接触温度測定装置の態様は、試料台の温度分布を測定する装置であって、試料台上に載置される試料ベースと、電子線を照射する電子線源と、電子線照射によって誘起される二次電子を検出する二次電子検出器と、検出した二次電子に基づいて温度分布を測定する温度測定部とを備える。
【0016】
ここで、試料ベースは、ベース材と、温度係数を異にする抵抗体の組みと、これら各抵抗体の組みに所定電圧を印加するための配線とを有するとともに、各抵抗体の複数の組みをベース材上に1次元又は2次元に配列することで形成される。また、温度測定部は、電子線照射によって検出した二次電子による得られる電圧分布を用いて温度分布を求める。
【0017】
試料ベースでは、温度係数の異なる抵抗体を直列接続して抵抗体の組みを形成し、この抵抗体の両端の所定の電圧を印加する。この電圧印加によって、温度係数の異なる抵抗体の接続点の電位は、周囲温度に応じて変化する。真空状態では、雰囲気の熱対流が無いため、この抵抗体の接続点の電位は、試料ベースの温度に依存した値を示すことになる。
【0018】
また、各抵抗体の接続点の電位は、印加した電圧に依存するため、各部に印加する電圧を設定しておくことで、温度分布の測定が容易となる。
【0019】
電子線照射による二次電子検出は、抵抗体の接続点に電子線照射用電極を接続し、この電子線照射用電極に電子線を照射し、この電子線照射によって電子線照射用電極から誘起される二次電子を検出することで行う。
【0020】
この電子線照射用電極の電位は、抵抗体の接続点の電位と等電位である。また、この接続点の電位は試料ベースの温度を表しているため、電子線照射用電極の電位を測定することで試料ベースの温度を測定することができる。この電子線照射用電極の大きさは、任意とすることができる。また、この電子線照射用電極と温度を測定する抵抗体との対応関係を定めておくことによって、電子線照射用電極は、温度を測定する位置に必ずしも設置する必要はなく、任意の位置とすることもできる。
【0021】
さらに、試料ベース上において、各電子線照射用電極を配置する位置および領域の大きさについても任意に定めることができ、試料ベースあるいは試料台と同じ大きさとする必要はない。試料ベースあるいは試料台よりも小さい範囲内に配置することで、電子線走査の振り幅を大きくすることなく、試料ベースあるいは試料台全体の温度分布を求めることができる。
【0022】
また、本発明の抵抗体の組みと電子線照射用電極は、試料ベースにおいて同一平面状に配列する構成とする他に、抵抗体の組みを下層とし、電子線照射用電極を上層とする層状に配列してもよい。この層状配列とすることによって、下層の抵抗体は試料台との熱的な伝導が良好となり、試料台の温度と抵抗体の温度との間の誤差を減少させることができる。また、電子線照射用電極を上層に配置することによって、電子線照射用電極以外の部分への電子線照射、および電子線照射用電極以外の部分からの二次電子の取り込みを抑制することができ、検出精度を向上させることができる。
【0023】
また、抵抗体の接続点に電子線照射用電極を接続する構成に代えて、抵抗体の組みの一方の抵抗体を電子線照射用電極とする構成としてもよい。
【0024】
温度測定部は、表示装置を備える構成とすることができ、電子線の走査位置と検出した二次電子との同期させることによって、二次電子輝度情報をディスプレイ画面上に表示することができ、各部の温度に依存し、さらに各電極の電圧に依存した二次電子強度分布画像を得ることができる。
【0025】
なお、本発明の試料ベースの態様は、試料台上に載置される試料ベースであって、ベース材と、温度係数を異にする抵抗体の組みと、これら各抵抗体の組みに所定電圧を印加するための配線とを備える。そして、各抵抗体の複数の組みをベース材上に1次元又は2次元に配列する。抵抗体の複数の組みをベース材上に1次元に配列した構成によれば1次元の温度分布を測定することができ、2次元に配列した構成によれば2次元の温度分布を測定することができる。なお、試料ベースにおいて、電子線照射用電極に係わる部分は、上記非接触温度測定装置において説明しているため、重複を避けるためここでの説明は省略する。
【0026】
また、本発明の非接触温度測定方法の態様は、温度係数を異にする抵抗体の組みを1次元又は2次元に複数配列した試料ベースを試料台上に載置し、抵抗体の各組みに所定電圧を印加して、当該各抵抗体の温度に応じた分圧電圧を発生させ、電子線照射によって誘起される二次電子を検出し、検出した二次電子線に基づいて、試料台の1次元又は2次元温度分布を測定する。
【0027】
本発明の非接触温度測定装置および試料ベースの態様によれば、微小な熱容量の小さな抵抗体を配置することが容易であるため、試料台の周囲の温度に依存した抵抗変化を得ることができる。
【0028】
本発明の非接触温度測定装置および試料ベースの態様によれば、温度センサを構成する抵抗体から引き出す配線は非常に短いため熱容量を小さくすることができ、また、配線は試料ベースに密着した状態で配置することができるため、配線が温度分布に与える影響を低減させることができる。
【0029】
本発明の非接触温度測定装置、試料ベース、および非接触温度測定方法の態様によれば、真空チャンバを真空状態に保持し、かつ、TFTアレイ検査測定が検査状態であっても、有線による温度測定のように、真空チャンバ外部の温度測定器と真空チャンバ内部の温度センサ間の配線を引き回す必要がないため、可動配線処理を不要とすることができる。
【0030】
本発明の非接触温度測定装置、および試料ベースの態様によれば、可動配線処理が不要であるため、温度センサの個数を制限する必要がなく、面内分布を高分解能で取得するために必要な個数に温度センサを真空チャンバ内に設置することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、試料台の面内の温度分布を高い分解能で測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。
【0033】
図1は、本発明の試料ベースおよびこの試料ベースを用いて温度分布を非接触で測定する非接触温度測定装置の一構成例を説明するための図である。
【0034】
図1において、非接触温度測定装置1は、例えば、真空チャンバ等の容器内に設けられる試料台20の温度分布測定に用いることができ、例えば、TFTアレイ検査装置に適用することができる。
【0035】
非接触温度測定装置1は、試料台20上に載置される試料ベース10と、電子線を照射する電子線源2と、電子線照射によって誘起される二次電子を検出する二次電子検出器3と、二次電子検出器3で検出した二次電子に基づいて温度分布を測定する温度測定部7とを備える。二次電子検出器3の検出信号は、A/D変換器6でデジタル信号に変換した後に信号処理部7に送る他、信号処理部7に内蔵させたA/D変換器で変換してもよい。信号処理部7は、検出信号から温度を求める温度測定部、求めた温度分布を画像化する画像処理部等を備え、画像化した温度分布をディスプレイ装置8に表示してもよい。
【0036】
電子線照射によって誘起される二次電子の信号強度は、被照射部の電位情報を含んでいるため、この二次電子の検出信号から被測定対象の電位分布を求めることができる。電子線を用いたTFTアレイ検出装置では、この電子線照射による二次電子検出によって、検査信号で駆動したTFTアレイの電位状態を測定し、これによって欠陥検査を行っている。
【0037】
本発明の非接触温度測定装置1は、この電子線照射で誘起される二次電子を検出することで行う電位測定を利用することで、被測定対象の温度分布を求めるものである。ここで、通常、被測定対象の温度分布と電位分布との間には関連性はない。したがって、単に被測定対象の電位分布を求めたところで、温度分布を求めることはできない。本発明の非接触温度測定装置1は、温度分布を電位分布に変換するための構成として試料ベース10を備え、この試料ベースに電子線を照射することで、温度分布を電位分布として検出する。
【0038】
本発明の試料ベース10は、ベース材19と、このベース材19に設けられる温度係数を異にする抵抗体(12,13)の組み11と、これら各抵抗体の組み11に所定電圧を印加するための配線15とを有する。抵抗体の組み11は、温度係数を異にする抵抗体12と抵抗体13とを直列接続して構成され、接続点には電子線照射用電極14が接続されている。抵抗体の組み11には、配線15を介して所定電圧が印加され、電子線照射用電極14の電位は、抵抗体12と抵抗体13とで分圧された分圧電圧で定まる。
【0039】
この抵抗体の組み11を構成する抵抗体12と抵抗体13とは温度係数が異なるため、周囲の温度に依存した抵抗値比をなる。抵抗体12と抵抗体13の分圧電圧は、この抵抗値比に基づいて定まる。
【0040】
図2は、抵抗体の組み11の一構成例、および分圧電圧を説明するための図である。図2に示す抵抗体の組みは、抵抗体12をチップサーミスタとし、抵抗体13をチップ抵抗器とする構成を示している。ここで、抵抗体12の抵抗値をRthとし、抵抗体13の抵抗値をRrとする。抵抗体12と抵抗体13とを直列接続した抵抗体11において、抵抗体12側の端部に+Vを印加し、抵抗体13側の端部に−Vを印加した場合には、抵抗体12と抵抗体13の接続点Pの分圧電圧は、{2V・Rr/(Rth+Rr)}−Vで表される。したがって、接続点Pに接続された電子線照射用電極14には{2V・Rr/(Rth+Rr)}−Vの電位が現れる。
【0041】
ここで、例えば、抵抗体12の抵抗値Rthが周囲温度に応じて変化した場合には、電子線照射用電極14に現れる{2V・Rr/(Rth+Rr)}−Vの電位も周囲温度に応じて変化することになり、電位と温度との関係を予め求めておくことによって、電子線照射用電極14の電位から周囲温度を求めることができる。
【0042】
抵抗体の組み11は、ベース材19上に1次元又は2次元に配列され、各抵抗体には配線15を介して電圧が印加される。なお、ベース材20には、外部に設けられた電圧源4(ここでは+電圧源)から給電を受けるための給電電極16と、同じく外部に設けられた電圧源5(ここでは−電圧源)から給電を受けるための給電電極17とが設けられ、給電電極16と給電電極17との間は、配線15および抵抗体11によって接続される。
【0043】
電圧源4,5によって給電電極16と給電電極17との間に電位差をかけると、チップサーミスタ(抵抗体12)とチップ抵抗器(抵抗体13)との接続点Pに、各抵抗値比に依存して分圧された電圧が発生し、この接続点Pに接続された電子線照射用電極14もその分圧電圧値に保持される。
【0044】
なお、配線15の配線抵抗15aが、チップサーミスタ(抵抗体12)とチップ抵抗器(抵抗体13)の抵抗値に近い場合には、配線抵抗15aによる分圧電圧が無視できなくなり、この抵抗体の組み11による分圧電圧に誤差が生じて、測定精度が低下する要因となる。そこで、配線抵抗15aは、チップサーミスタ(抵抗体12)やチップ抵抗器(抵抗体13)の抵抗値よりも十分に小さな値を用いる。
【0045】
ベース材19上に配置される複数の抵抗体の組み11は、各位置の温度に依存した分圧電圧を発生する。電子線源2は各電子線照射用電極14に対して走査しながら電子線を照射する。各電子線照射用電極14では、照射された電子線によって二次電子が誘起される。この二次電子の強度は、電子線照射用電極14の電圧に依存し、かつ、温度の依存している。二次電子検出器3で検出された二次電子信号は、A/D変換器6および信号処理部7では、電子線照射の走査に同期して位置に温度情報を表示することによって、試料ベース10の面内温度分布を表示することができる。
【0046】
なお、二次電子検出器3の検出信号は、A/D変換することなく、アナログ信号のままアナログオシロスコープ等の非デジタル処理の測定器を用いて面内の温度分布を測定してもよい。
【0047】
以下、本発明の試料ベースの種々の形態例について、図3〜図10を用いて説明する。
【0048】
図3に示す第1の形態は、図1に示した例を示している。各抵抗体11は、抵抗体12としてチップサーミスタ12aと用いるとともに抵抗体13としてチップ抵抗器13bを用い、チップサーミスタ12aとチップ抵抗器13bの接続点に電子線照射用電極14を接続する構成である。
【0049】
図4に示す第2の形態は、抵抗体13として、第1の形態のチップ抵抗器13bに代えて、チップサーミスタ13aを用い、チップサーミスタ12aとチップサーミスタ13aの接続点に電子線照射用電極14を接続する構成である。この構成では、接続点Pに接続された電子線照射用電極14の電位は、{2V・Rth2/(Rth1+Rth2)}−Vとなる。なお、Rth1はチップサーミスタ12aの抵抗値を表し、Rth2はチップサーミスタ13aの抵抗値を表している。この構成によれば、第1の形態において、チップサーミスタ12aの温度に対する抵抗値変化が十分でない場合にも、チップサーミスタ13aの温度に対する抵抗値変化と組み合わせることで所望の特性の抵抗値変化とすることができる。
【0050】
図5に示す第3の形態は、抵抗体12および抵抗体13を、第1,第2の形態のチップ素子に代えて、ベース材19上に形成する抵抗材のパターンと用いる構成である。この構成によれば、抵抗体12および抵抗体13を電子線照射用電極14とともにパターン生成で形成することができ、試料ベース10の厚さを薄くすることができる。図5では、抵抗体12をパターン12cで形成し、抵抗体13をパターン13cで形成している。
【0051】
図6に示す第4の形態は、抵抗体12と電子線照射用電極14とを、一つのパターン18で形成する構成である。この形態によれば、ベース材19上に形成するパターンの個数を低減させることができる。なお、図6に示す例では、抵抗体13をパターン13cで形成している。
【0052】
前記した第1〜第4の形態は、抵抗体の組み11と電子線照射用電極14とをベース材19上の同一平面に形成する例を示しているが、抵抗体の組み11と電子線照射用電極14をそれぞれ異なる層に形成して層状構成としてもよい。
【0053】
図7〜9に示す第5〜7の各形態は、抵抗体の組み11を下層のB層に形成し、電子線照射用電極14を上層のA層に形成する構成である。
【0054】
第5の各形態(図7)は、B層の抵抗体の組み11については、抵抗体12をパターン12cで形成し、抵抗体13をチップ抵抗器13bで形成する例であり、第6の各形態(図8)は、B層の抵抗体の組み11については、抵抗体12をパターン12cで形成し、抵抗体13をパターン13cで形成する例であり、第7の各形態(図9)は、B層の抵抗体の組み11については、抵抗体12をチップサーミスタ12aで形成し、抵抗体13をチップ抵抗13bで形成する例である。
【0055】
また、第5、6の形態は、上下の層において、下層の抵抗体11と上層の電子線照射用電極14とを、上下位置でそれぞれ対応させて配置する構成を示している。下層の抵抗体11については、温度を測定する測定位置に対応させて配置する必要があるが、上層の電子線照射用電極14については必ずしも温度を測定する測定位置に対応させて配置する必要はなく、任意の位置としてもよい。図9は、上層の電子線照射用電極14を任意の位置に配置して構成を示している。この構成によれば、少ない電子線の走査幅で測定を行うことができる。
【0056】
図10は、抵抗体の組み11と電子線照射用電極14とを層状に構成したときの断面を示している。図10(a)は試料ベース10の断面を示している。試料ベース10は、ベース材19の下面に抵抗体の組み11を設け、ベース材19の上面に電子線照射用電極14を設けることで層状構成とすることができる。
【0057】
図10(b)は試料台20の断面を示し、加熱手段として例えばヒータ21を内蔵する。温度測定を行う際には、この試料ベース10を試料台20上に載置する。図10(c)は、試料ベース10を試料台20上に載置した状態を示している。これによって、試料ベース10は試料台20と低い熱抵抗で接触することができる。
【0058】
この抵抗体の組み11と電子線照射用電極14を層状構成とすることによって、下層の抵抗体は試料台との熱的な伝導が良好となり、試料台の温度と抵抗体の温度との間の誤差を減少させることができる。また、電子線照射用電極を上層に配置することによって、電子線照射用電極以外の部分への電子線照射、および電子線照射用電極以外の部分からの二次電子の取り込みを抑制することができ、検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の試料ベースおよびこの試料ベースを用いて温度分布を非接触で測定する非接触温度測定装置の一構成例を説明するための図である。
【図2】本発明の抵抗体の組みの一構成例、および分圧電圧を説明するための図である。
【図3】本発明の試料ベースの第1の形態を説明するための図である。
【図4】本発明の試料ベースの第2の形態を説明するための図である。
【図5】本発明の試料ベースの第3の形態を説明するための図である。
【図6】本発明の試料ベースの第4の形態を説明するための図である。
【図7】本発明の試料ベースの第5の形態を説明するための図である。
【図8】本発明の試料ベースの第6の形態を説明するための図である。
【図9】本発明の試料ベースの第7の形態を説明するための図である。
【図10】本発明の抵抗体の組みと電子線照射用電極の層状構成を説明するための断面図である。
【図11】従来の温度測定のための構成を説明するための図である。
【符号の説明】
【0060】
1…非接触温度測定装置、2…電子線源、3…二次電子検出器、4…電圧源、5…電圧源、6…A/D変換器、7…信号処理部、8…ディスプレイ装置、10…試料ベース、11…抵抗体の組み、12、13…抵抗体、14…電子線照射用電極、15…配線、15a…配線抵抗、16,17…給電電極、18…パターン、19…ベース材、20…試料台、100…熱伝導板、101…温度測定部、102…発熱電線、110…ステージ温度制御装置、111…加熱制御装置、113…熱伝導板制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料台の温度分布を測定する装置であって、
試料台上に載置される試料ベースと、
電子線を照射する電子線源と、
電子線照射によって誘起される二次電子を検出する二次電子検出器と、
前記検出した二次電子に基づいて温度分布を測定する温度測定部とを備え、
前記試料ベースは、ベース材と、温度係数を異にする抵抗体の組みと、これら各抵抗体の組みに所定電圧を印加するための配線とを有するとともに、前記各抵抗体の複数の組みを前記ベース材上に1次元又は2次元に配列し、
前記温度測定部は、前記二次電子により得られる電圧分布を用いて温度分布を求めることを特徴とする非接触温度測定装置。
【請求項2】
前記抵抗体の組みは、抵抗体の接続点に電子線照射用電極を接続することを特徴とする、請求項1に記載の非接触温度測定装置。
【請求項3】
前記抵抗体の組みを下層とし、前記電子線照射用電極を上層とする層状配置とすることを特徴とする、請求項2に記載の非接触温度測定装置。
【請求項4】
試料台上に載置される試料ベースであって、
ベース材と、
温度係数を異にする抵抗体の組みと、
これら各抵抗体の組みに所定電圧を印加するための配線とを備え、
前記各抵抗体の複数の組みを前記ベース材上に1次元又は2次元に配列することを特徴とする試料ベース。
【請求項5】
前記抵抗体の組みは、抵抗体の接続点に電子線照射用電極を接続することを特徴とする、請求項4に記載の試料ベース。
【請求項6】
前記抵抗体の組みを下層とし、前記電子線照射用電極を上層とする層状配置とすることを特徴とする、請求項5に記載の試料ベース。
【請求項7】
温度係数を異にする抵抗体の組みを1次元又は2次元に複数配列した試料ベースを試料台上に載置し、
前記抵抗体の各組みに所定電圧を印加して、当該各抵抗体の温度に応じた分圧電圧を発生させ、
電子線照射によって誘起される二次電子を検出し、
前記検出した二次電子線に基づいて、試料台の温度分布を測定することを特徴とする非接触温度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−157852(P2008−157852A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349228(P2006−349228)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)