説明

非接触給電システム

【課題】非接触給電システムにおいて、2次コイルの位置に関わらず安定した出力電力を確保することにある。
【解決手段】2次コイルL2の1次コイルL1に対する位置に応じて、共振系切替回路41において有効とするコンデンサの切り替えを通じて容量を変化させる。従って、動作周波数に対する共振系の位置が一定に保たれる。よって、2次コイルL2の位置に関わらず、より安定した受電装置30の出力を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、非接触で受電装置に給電する非接触給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給電装置から受電装置へ非接触にて給電を行う非接触給電システムが存在する(例えば、特許文献1参照)。従来の非接触給電システムにおいては、給電の実行にあたって、受電装置を給電装置における決まった位置に設置する。この状態においてのみ、給電装置から受電装置への給電が行われる。
【0003】
近年、さらなるユーザの利便性の向上を図るべく、給電装置の上面(給電面)における任意の位置に受電装置を設置するだけで、この受電装置への給電が可能となる、いわゆるフリーレイアウト型の非接触給電システムが検討されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
図10(a)に示すように、フリーレイアウト型の非接触給電システムにおける給電装置10の内部には、その給電板6に沿って複数の1次コイルL1が配列されている。また、受電装置30には2次コイルL2が設けられている。図10(a)においては、2次コイルL2が1次コイルL1に正対した状態にある。この1次コイルL1は動作周波数f1にて励磁される。励磁された1次コイルL1からの磁束の変化に基づき2次コイルL2には誘起電流が生じる。この誘起電流が受電装置の出力電力である。このように、電磁誘導を利用して給電装置10から受電装置30に非接触で電力が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−204637号公報
【特許文献2】特開2008−5573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の非接触給電システム(フリーレイアウト型でないシステム)においては、図11に示すように、1次コイルL1の動作周波数f1は、2次コイルL2が1次コイルL1に正対したときの共振系における共振周波数frに一致するように設定される。この共振周波数frは、2次コイルL2の共振周波数である。従来の非接触給電システムにおいては、受電装置は給電装置に対して決まった位置に設置されるため、給電時には常に2次コイルL2を1次コイルL1に正対させることができる。よって、動作周波数f1を共振周波数frとすることで受電装置30において最大の出力電力W1を得ることができる。
【0007】
一方、上記フリーレイアウト型の非接触給電システムにおいては、給電装置10の給電板6であれば、受電装置30を特に決まった位置に設置する必要がない。従って、このシステムにおいては、図10(b)に示すように、2次コイルL2が互いに隣接する2つの1次コイルL1間に位置する場合もある。2次コイルL2が1次コイルL1に正対した状態においては漏れインダクタンスLeは最小となる。そして、2次コイルL2が正対位置から給電板6に沿ってずれていくにつれて漏れインダクタンスLeが増加する。
【0008】
共振周波数frは、漏れインダクタンスLeが大きくなるほど小さくなることが知られている。従って、図11の矢印で示すように、1次コイルL1に対する2次コイルL2の位置ずれに応じて共振系とともに共振周波数frが小さくなる。
【0009】
このため、2次コイルL2が2つの1次コイルL1間に位置しているときの出力電力W2は、正対位置にあるときの出力電力W1に比べて大幅に低下する。このように、フリーレイアウト型の非接触給電システムにおいては受電装置30の設置位置に応じて受電装置30における出力電力のばらつきが大きく、安定した出力電力を確保することが困難であった。
【0010】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、2次コイルの位置に関わらず安定した出力電力を確保できる非接触給電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の非接触給電システムは、動作周波数にて振動する交流電流が供給されることで交番磁束を発生させる1次コイルが給電面に沿って複数配置される給電装置と、前記給電面に設置された状態において、前記1次コイルからの交番磁束に基づき誘起電力を発生させ、その電力を負荷に供給する2次コイルを有する受電装置と、を備えた、前記2次コイルにおける共振現象を利用する非接触給電システムにおいて、前記2次コイルの前記1次コイルに対する位置を判断するコイル位置判断部と、前記動作周波数に対する前記2次コイルにおける共振周波数の値を切り替える切替回路と、前記コイル位置判断部の判断結果に基づき、前記切替回路を通じて前記動作周波数を前記共振周波数に対応する値とする制御回路と、を備える。
【0012】
また、上記構成において、前記切替回路は、前記2次コイルに直列接続されるとともに、互いに直列接続されるコンデンサ及びスイッチング素子が複数組設けられ、その各組が並列に接続され、前記各スイッチング素子のオンオフ状態の切り替えを通じて前記動作周波数に対する前記共振周波数の値を切り替えることが好ましい。
【0013】
また、上記構成において、前記コイル位置判断部は、前記各1次コイルと前記2次コイルとの磁気結合の度合いに応じて変化する前記各1次コイルにおける電圧値又は電流値に基づき存在検知レベルを認識し、その存在検知レベルに基づき前記2次コイルの前記1次コイルに対する位置を判断することが好ましい。
【0014】
また、上記構成において、前記コイル位置判断部は、前記1次コイル毎に設けられるとともに、前記給電面における前記受電装置に対して光を放射する発光素子と、前記発光素子に対応して設けられるとともに、前記給電面における前記受電装置に前記光が放射されたときの反射光の有無を検出する受光素子と、前記各受光素子のうち反射光がある旨検出した前記受光素子の数に基づき、前記2次コイルの前記1次コイルに対する位置を判断する判断部と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、非接触給電システムにおいて、2次コイルの位置に関わらず安定した出力電力を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態における非接触給電システムの構成を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態における給電装置及び受電装置の斜視図。
【図3】第1の実施形態における共振系切替回路の構成を示すブロック図。
【図4】第1の実施形態における2次コイルL2の位置に応じた各フォトMOSのオンオフ状態を示した表。
【図5】第1の実施形態における(a)2次コイルL2の正対位置を示す上面図、(b)2次コイルL2の第1の位置を示す上面図、(c)2次コイルL2の第2の位置を示す上面図。
【図6】第1の実施形態における2次コイルL2の位置に応じた受電装置の出力(共振系)を示したグラフ。
【図7】第2の実施形態における非接触給電システムの構成を示すブロック図。
【図8】第2の実施形態における存在検知回路の上面図。
【図9】第2の実施形態における給電装置及び受電装置の部分断面図。
【図10】背景技術における(a)2次コイルL2が正対位置にあるときの給電装置及び受電装置の部分断面図、(b)2次コイルL2が両1次コイルL1間の中央位置にあるときの給電装置及び受電装置の部分断面図。
【図11】背景技術における2次コイルL2が1次コイルL1に正対した位置及び2次コイルL2が両1次コイルL1間の中央位置にあるときの共振系を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、本発明の非接触給電システムを具体化した第1の実施形態を図1〜図6を参照しつつ説明する。
【0018】
図1に示すように、非接触給電システムは、給電装置10と、受電装置30とを備える。本例では、受電装置30は、携帯端末40に内蔵されている。以下、給電装置10及び受電装置30の具体的構成について説明する。
【0019】
(給電装置)
図2に示すように、給電装置10は平板状の筐体5を有している。筐体5の上面には携帯端末40が設置される給電板6が形成されている。筐体5の内部には、36個の1次コイルL1が給電板6の全域に亘って配置される。1次コイルL1は、給電板6において6行×6列のマトリックス状に配置されている。
【0020】
図1に示すように、給電装置10は、単一の共通ユニット11と、この共通ユニット11にそれぞれ接続される複数(本例では1次コイルL1と同数の36個)の給電ユニット15と、を備える。
【0021】
共通ユニット11は、電源回路13と、共通制御回路12と、メモリ14とを備える。電源回路13は、外部電源からの交流電力を適切な直流電圧に変換し、その直流電圧を動作電力として各給電ユニット15及び共通ユニット11に供給する。メモリ14には、受電装置30に固有のIDコードが記憶されている。
【0022】
共通制御回路12は、マイクロコンピュータで構成されるとともに、各給電ユニット15への各種指令信号を通じて給電装置10を統括制御する。
給電ユニット15は、ユニット制御回路19と、励磁駆動回路16と、電圧検出回路17と、1次側通信回路18とを備える。
【0023】
励磁駆動回路16には、1次コイルL1の両端が接続されている。そして、1次コイルL1の一端及び励磁駆動回路16間にはコンデンサC1が接続されている。また、1次側通信回路18には1次側通信用コイルL3の両端が接続されている。
【0024】
ユニット制御回路19は、共通制御回路12からの給電を要求する旨の指令信号を受けると、励磁駆動回路16の制御を実行する。励磁駆動回路16は、ユニット制御回路19による制御を通じて、動作周波数f1の交流電流を生成し、それを1次コイルL1及びコンデンサC1に供給する。これにより、1次コイルL1は励磁される。このとき、1次コイルL1からの磁束は変化する。
【0025】
電圧検出回路17は1次コイルL1に接続されている。この電圧検出回路17は、1次コイルL1の電圧を検出するとともに、その検出結果をユニット制御回路19に出力する。
【0026】
ユニット制御回路19は1次コイルL1に高周波電流を供給し、そのときの電圧検出回路17の検出結果に基づき、1次コイルL1の周辺に物体が存在するか否かの存在検知を行う。
【0027】
詳しくは、1次コイルL1の磁束方向に2次コイルL2が存在する場合には、励磁される1次コイルL1はその2次コイルL2と磁気結合することで1次コイルL1からみたインピーダンスが増加する。このため、1次コイルL1の電圧が低下する。
【0028】
ユニット制御回路19は、電圧検出回路17の検出結果に基づき、1次コイルL1に対する2次コイルL2の磁気結合の度合いを存在検知レベルとして算出する。この存在検知レベルは、1次コイルL1の軸方向における2次コイルL2と1次コイルL1との距離が一定の場合には、この軸方向からみて、2次コイルL2と1次コイルL1とが重なる面積に応じた値となる。存在検知レベルは、1次コイルL1に2次コイルL2が全く重なっていない場合には「0.0」と算出され、1次コイルL1の全域に亘って2次コイルL2が重なっているときには「1.0」と算出される。
【0029】
ユニット制御回路19は、算出された存在検知レベルに基づき、1次コイルL1の周辺に物体が存在する旨判断したとき、その存在検知レベルを含む情報信号を1次側通信回路18に出力する。1次側通信回路18は、情報信号を変調し、その変調した信号を1次側通信用コイルL3を介して無線送信する。
【0030】
また、ユニット制御回路19は、存在検知レベルに基づき、1次コイルL1の周辺に物体が存在する旨判断したとき、その存在検知レベルを共通制御回路12に出力する。共通制御回路12は、ユニット制御回路19から存在検知レベルを受けると、ユニット制御回路19を通じてID要求信号を生成し、その生成した信号を1次側通信回路18に出力する。1次側通信回路18は、ID要求信号を変調し、その変調した信号を1次側通信用コイルL3を介して無線送信する。
【0031】
1次側通信用コイルL3は、受電装置30からのID信号を電磁誘導を利用して受信すると、その受信信号を1次側通信回路18に出力する。1次側通信回路18は、ID信号を復調し、その復調した信号をユニット制御回路19を通じて共通制御回路12に出力する。共通制御回路12は、ID信号に含まれるIDコードと、メモリ14に記憶されるIDコードとの照合を行う。共通制御回路12は、IDコードの照合が成立した旨判断したとき、物体が正規の受電装置30であるとして上述のように給電を実行する。
【0032】
(受電装置)
図1に示すように、受電装置30は、整流回路31と、DC/DCコンバータ35と、2次側通信回路32と、2次側制御回路33と、メモリ34と、共振系切替回路41と、スイッチ駆動回路38と、を備える。
【0033】
2次側通信回路32には2次側通信用コイルL4の両端が接続されている。2次コイルL2は、1次コイルL1からの磁束の変化に基づき電流を誘起する。整流回路31は、2次コイルL2に誘起される交流電力を整流する。DC/DCコンバータ35は、整流回路31からの直流電圧を携帯端末40の動作に適切な値に変換する。この直流電圧は、例えば携帯端末40の動作電源である2次電池(図示略)の充電に利用される。
【0034】
2次側制御回路33は、マイクロコンピュータで構成されるとともに、整流回路31からの電力の一部を受けて動作する。また、メモリ34には、受電装置30に固有のIDコードが記憶されている。
【0035】
整流回路31には、2次コイルL2の両端が接続されている。また、2次コイルL2の一端及び整流回路31間には共振系切替回路41が接続されている。2次側通信用コイルL4は、電磁誘導を利用して1次側通信用コイルL3からのID要求信号又は情報信号を受信すると、その受信信号を2次側通信回路32に出力する。2次側通信回路32は、ID要求信号又は情報信号を復調し、その復調した信号を2次側制御回路33に出力する。
【0036】
2次側制御回路33は、ID要求信号を認識すると、メモリ34に記憶されるIDコードを含むID信号を生成し、その生成した信号を2次側通信回路32に出力する。2次側通信回路32は、ID信号を変調し、その変調した信号を2次側通信用コイルL4を介して無線送信する。
【0037】
2次側制御回路33は、情報信号を認識すると、その信号に含まれる存在検知レベルに基づき、スイッチ駆動回路38を通じて共振系切替回路41の状態を切り替える。以下、共振系切替回路41について詳細に説明する。
【0038】
図3に示すように、共振系切替回路41は、3つのコンデンサC2a〜C2cと、第1〜第3のフォトMOS(Metal Oxide Semiconductor)42a〜42cとを備える。コンデンサC2a及びフォトMOS42aは直列接続され、コンデンサC2b及びフォトMOS42bは直列接続され、コンデンサC2c及びフォトMOS42cは直列接続されている。各直列接続されたコンデンサ及びフォトMOSは、それぞれ並列接続されている。
【0039】
第1〜第3のフォトMOS42a〜42cは、発光ダイオード43と、光発電セル44と、2つのFET(電界効果トランジスタ:Field-Effect Transistor)45a,45bとを備える。各発光ダイオード43はスイッチ駆動回路38に接続されている。また、光発電セル44は、両FET45a,45bのゲート端子に接続されている。また、FET45a,45bのドレイン端子及びソース端子は2次コイルL2及び整流回路31間の接続線に接続されている。
【0040】
スイッチ駆動回路38は、2次側制御回路33からの指令信号に基づき発光ダイオード43を点灯させる。光発電セル44は、発光ダイオード43からの光を受けると、FET45a,45bのゲート端子に一定電圧を印加する。これにより、FET45a,45bのドレイン端子及びソース端子間が導通状態となる。これが第1〜第3のフォトMOS42a〜42cのオン状態である。
【0041】
ここで、図5(a)〜(c)に示すように、存在検知レベルに基づき2次コイルL2が1次コイルL1に対して正対位置、第1の位置及び第2の位置のうち何れの位置に存在しているかが判断可能である。具体的には、図5(a)に示すように、存在検知レベルが0.9以上のとき、2次コイルL2が1次コイルL1に対して正対位置に存在していると判断可能である。また、図5(b)に示すように、存在検知レベルが0.7以上0.9未満のとき、2次コイルL2が1次コイルL1に対して第1の位置に存在している旨判断可能である。また、図5(c)に示すように、存在検知レベルが0.7未満のとき、2次コイルL2が1次コイルL1に対して第2の位置に存在している旨判断可能である。
【0042】
このように、存在検知レベルを通じて2次コイルL2の位置が判断可能である。従って、本例では、存在検知レベルを算出するための構成である給電装置10におけるユニット制御回路19、1次コイルL1及び電圧検出回路17がコイル位置判断部に相当する。
【0043】
図4の表に示すように、2次側制御回路33は、情報信号に含まれる存在検知レベルに基づき、第1〜第3のフォトMOS42a〜42cのオンオフ状態を切り替える。以下、
存在検知レベル、すなわち1次コイルL1に対する2次コイルL2の位置に応じて、各フォトMOS42a〜42cの状態を切り替える理由について説明する。
【0044】
図6には1次コイルL1の動作周波数に応じた受電装置30の出力電力を示す共振系が示されている。同図に示すように、1次側共振周波数fa及び2次側共振周波数fbの2つの共振周波数が存在する。これら共振周波数fa,fbは2次コイルL2が1次コイルL1に正対した位置にあるときの共振周波数である。
【0045】
ここで、動作周波数f1を1次側共振周波数faの近傍に設定した場合には、両コイルL1,L2が磁気結合した状態でのインピーダンスが過度に低下することで回路効率が低下する。従って、本例では2次側共振周波数fbを利用するべく、1次コイルL1に供給される動作周波数f1は2次側共振周波数fbの近傍に設定される。共振周波数は以下の式から導出される。
【0046】
【数1】

式(1)より、漏れインダクタンスLe又はコンデンサの容量Cが大きいほど共振周波数が小さくなることがわかる。2次コイルL2が1次コイルL1に正対した位置から給電板6の面方向にずらされた場合には、漏れインダクタンスLeが増大していく。従来の構成においては、これに伴って、図6に示される共振系は、共振周波数が小さくなる方向(図中の左方向)に移動する。図6の実線で示す正対位置における共振系から、左側に一定値A1だけずれた位置に図6の一点鎖線で示す第1の位置における共振系が存在する。そして、正対位置における共振系から、左側に上記一定値A1より大きい一定値A2だけずれた位置に図6の二点鎖線で示す第2の位置における共振系が存在する。
【0047】
2次側制御回路33は、第1〜第3のフォトMOS42a〜42cのオンオフ状態の切り替えを通じて、動作周波数f1に対する共振系のずれを抑制する。すなわち、2次側制御回路33は、存在検知レベルが0.9以上のとき2次コイルL2が正対位置にあるとして、第1〜第3のフォトMOS42a〜42cをオン状態とする。このとき、3つのコンデンサC2a〜C2cが有効となるため、上記式(1)の容量Cが最大となる。この場合、図6の実線で示す正対位置の共振系となって、動作周波数f1で1次コイルL1を励磁することで出力電力W1を得ることができる。
【0048】
また、2次側制御回路33は、存在検知レベルが0.7以上0.9未満のとき、2次コイルL2が第1の位置にあるとして、第1及び第2のフォトMOS42a,42bをオン状態とし、第3のフォトMOS42cをオフ状態とする。このとき、2つのコンデンサC2a,C2bが有効となるため、上記式(1)の容量Cは、上記正対位置の場合より小さくなる。これにより、共振系は図6において一定値A1だけ右側に移動する。この一定値A1は、2次コイルL2が正対位置から第1の位置へずれた場合における漏れインダクタンスLeの増大に伴う共振系の左側へのずれ量と同一値である。換言すると、同一値となるようにコンデンサC2cの容量が設定されている。従って、漏れインダクタンスLeの増大に伴う共振系のずれが、容量Cの減少によって相殺される。この結果、2次コイルL2が第1の位置となった場合であっても共振系の位置は変化しない。このため、第1の位置においても出力電力W1を得ることができる。
【0049】
また、2次側制御回路33は、存在検知レベルが0.7未満のとき、2次コイルL2が第2の位置にあるとして、第1のフォトMOS42aをオン状態とし、第2及び第3のフォトMOS42b,42cをオフ状態とする。このとき、コンデンサC2aのみが有効となるため、上記式(1)の容量Cは、上記第1の位置における場合よりさらに小さくなる。これにより、共振系は図6において一定値A2だけ右側に移動する。この一定値A2は、2次コイルL2が正対位置から第2の位置へずれた場合における漏れインダクタンスLeの増大に伴う共振系の左側へのずれ量と同一値である。換言すると、同一値となるようにコンデンサC2b,C2cの容量が設定されている。従って、漏れインダクタンスLeの増大に伴う共振系のずれが、容量Cの減少によって相殺される。この結果、2次コイルL2が第2の位置となった場合であっても共振系の位置は変化しない。このため、第2の位置においても出力電力W1を得ることができる。よって、2次コイルL2の位置に関わらず、より安定した受電装置30の出力を得ることができる。
【0050】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)2次コイルL2の1次コイルL1に対する位置に応じて、有効とするコンデンサC2a〜C2cの切り替えを通じて上記式(1)の容量Cを変化させることで、動作周波数f1に対する共振系の位置が一定に保たれる。よって、2次コイルL2の位置に関わらず、より安定した受電装置30の出力を得ることができる。
【0051】
(2)容量Cを変化させることで動作周波数f1に対する共振系の位置を設定している。これにより、例えば動作周波数f1が予め規格等により定まっている場合であっても、動作周波数f1を規格に則した値に固定しつつ、より安定した受電装置30の出力を得ることができる。
【0052】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について、図7〜図9を参照して説明する。この実施形態の非接触給電システムは、2次コイルL2の1次コイルL1に対する位置の判断方法が上記第1の実施形態と異なっている点を除き、上記第1の実施形態と同様に構成される。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0053】
図7に示すように、給電ユニット15は存在検知回路50を備える。この存在検知回路50は、LED(発光ダイオード)51a〜51lと、受光素子52a〜52lとを備えている。
【0054】
図8に示すように、LED51a〜51l及び受光素子52a〜52lは、正方板状でなる基板55に配置されている。この基板55は、1次コイルL1からの磁束の出入りを阻害しない程度に透磁性の高い材質で形成されている。図9に示すように、この基板55は、各1次コイルL1の上面に設置されている。
【0055】
詳しくは、図8に示すように、LED51a〜51lは、基板55の縁に沿って正方形を描くように配置されている。基板55における図中の左上角部にLED51aを設け、右上角部にLED51dを設ける。また、基板55における図中の左下角部にLED51jを設け、基板55における図中の右下角部にLED51gを設ける。そして、LED51a,51d間には左からLED51b,51cを設け、LED51d,51g間には上からLED51e,51fを設ける。また、LED51g,51j間には右からLED51h,51iを設け、LED51j,51a間には下からLED51k,51lを設ける。各LED51a〜51lに対応してそれらの右下には受光素子52a〜52lが設けられる。給電板6は透光性の高い材質で形成される。また、LED51a〜51l及び受光素子52a〜52lは、給電板6の下面に接する位置に設けられる。各LED51a〜51lは給電板6の外部に光を出し、給電板6に受電装置30が存在する場合には各受光素子52a〜52lはその反射光を受光する。
【0056】
ユニット制御回路19は、一定周期毎に存在検知回路50を通じて2次コイルL2の1次コイルL1に対する位置を判断する。すなわち、ユニット制御回路19は、LED51a〜51lを順に点灯させる。このとき、LED51a〜51lの光の照射方向に受電装置30が存在する場合には、その光は受電装置30に反射する。受光素子52a〜52lは、この反射光の有無を検出し、その検出結果をユニット制御回路19に出力する。
【0057】
ユニット制御回路19は、受光素子52a〜52lのうち反射光がある旨検出した数を情報信号に含ませて1次側通信回路18及び1次側通信用コイルL3を通じて無線送信する。2次側通信用コイルL4は、電磁誘導を利用して1次側通信用コイルL3からの情報信号を受信すると、その受信信号を2次側通信回路32に出力する。2次側通信回路32は、情報信号を復調し、その復調した信号を2次側制御回路33に出力する。
【0058】
ここで、受光素子52a〜52lのうち反射光がある旨検出した数に基づき、2次コイルL2の1次コイルL1に対する位置を判断可能である。すなわち、その数が小さいほど1次コイルL1に対する2次コイルL2の位置はずれていると判断できる。従って、2次側制御回路33は、情報信号に含まれる、受光素子52a〜52lのうち反射光がある旨検出した数に基づき2次コイルL2が1次コイルL1に対して正対位置、第1の位置及び第2の位置の何れに存在しているかを判断する。例えば、2次側制御回路33は、受光素子52a〜52lのうち反射光がある旨検出した数が11以上の場合、2次コイルL2が正対位置にあるとして、第1の実施形態と同様に第1〜第3のフォトMOS42a〜42cをオン状態とする。また、2次側制御回路33は、受光素子52a〜52lのうち反射光がある旨検出した数が8以上11未満の場合、2次コイルL2が第1の位置にあるとして第1及び第2のフォトMOS42a,42bをオン状態とし、第3のフォトMOS42cをオフ状態とする。また、2次側制御回路33は、受光素子52a〜52lのうち反射光がある旨検出した数が8未満の場合、2次コイルL2が第2の位置にあるとして、第1のフォトMOS42aをオン状態とし、第2及び第3のフォトMOS42b,42cをオフ状態とする。これにより、上記実施形態と同様に2次コイルL2の位置に関わらず、より安定した受電装置30の出力を得ることができる。
【0059】
なお、本実施形態においては存在検知回路50及びユニット制御回路19がコイル位置判断部に相当する。
以上、説明した実施形態によれば、特に以下の効果を奏することができる。
【0060】
(3)LED51a〜51lから給電板6側に光が放射される。光に対する反射光の有無に基づき1次コイルL1に対する受電装置30(2次コイルL2)の位置が判断可能となる。よって、第1の実施形態と同様に、2次コイルL2の位置に応じて容量Cを変化させることができる。従って、2次コイルL2の位置に関わらず、安定した受電装置30の出力を得ることができる。
【0061】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記各実施形態においては、上記式(1)の容量Cを変化させることで、動作周波数f1を固定した状態で共振系をずらしていた。しかし、動作周波数f1を変化させてもよい。この場合、共振系切替回路41が省略されて、例えば励磁駆動回路16に周波数切替回路が設けられる。この場合であっても、2次コイルL2の1次コイルL1に対する位置に応じて動作周波数f1を2次コイルの共振周波数近傍とすることで、安定した出力電力が得られる。本構成においては、情報信号の送受信が不要となることから、両通信回路18,32を省略することもできる。
【0062】
・上記各実施形態においては、3つのコンデンサC2a〜C2cが互いに並列に接続されていたが、コンデンサの数はこれに限らない。コンデンサの数に応じてフォトMOSの数が決定する。また、上記式(1)の容量Cを変化させることができれば、共振系切替回路41の構成は上記各実施形態に限定されない。例えば、容量Cを変化させることができるバリアブルコンデンサを採用してもよい。
【0063】
・第1の実施形態においては存在検知レベル、第2の実施形態においては受光素子52a〜52lの検出結果に基づき2次コイルL2の1次コイルL1に対する位置が判断可能とされていた。しかし、その位置が判断可能であれば方式は上記両実施形態に限定されない。例えば、静電容量センサを給電板6に沿って配置し、そのセンサの検出結果に基づき2次コイルL2の1次コイルL1に対する位置を判断してもよい。
【0064】
・LED51a〜51l及び受光素子52a〜52lの数及び設置位置は、第2の実施形態に限定されない。例えば、図8における基板55の中央にもLED及び受光素子を設けてもよい。
【0065】
・第1の実施形態において、ユニット制御回路19は、存在検知レベルに基づき2次コイルL2の位置が正対位置、第1の位置及び第2の位置の何れであるかを判断し、その判断結果を情報信号に含ませて無線送信してもよい。また、この判断は、2次側制御回路33で行われてもよい。第2の実施形態も同様に、ユニット制御回路19は、受光素子52a〜52lの検出結果に基づき2次コイルL2の位置が正対位置、第1の位置及び第2の位置の何れであるかを判断し、その判断結果を情報信号に含ませて無線送信してもよい。
【0066】
・上記各実施形態においては、フォトMOS42a〜42cを利用して、有効となるコンデンサC2a〜C2cが切り替えられていた。しかし、有効となるコンデンサC2a〜C2cを切り替え可能なスイッチング素子であれば、フォトMOS以外の種類のFETであってもよいし、さらに機械的なスイッチであってもよい。
【0067】
・第1の実施形態においては、情報信号に存在検知レベルを含ませて送信していた。しかし、この情報信号に電圧検出回路17の検出結果をそのまま含ませてもよい。この場合、2次側制御回路33は、情報信号に含まれる電圧検出回路17の検出結果に基づき存在検知レベルを算出し、この存在検知レベルに基づき第1〜第3のフォトMOS42a〜42cのオンオフ状態を切り替えてもよい。
【0068】
・第2の実施形態においては、発光素子としてLED51a〜51lが採用されていたが、発光するものであればLEDに限らず電球であってもよい。また、赤外線センサを利用してもよい。
【0069】
・上記実施形態におけるユニット制御回路19を省略してもよい。この場合には、共通制御回路12は、上記実施形態においてユニット制御回路19が実行していた制御も行う。また、ユニット制御回路19が行っていた制御の一部を共通制御回路12が行ったり、逆に共通制御回路12が行っていた制御の一部をユニット制御回路19が行ったりしてもよい。
【0070】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
(イ)請求項2に記載の非接触給電システムにおいて、前記スイッチング素子はフォトMOSであることを特徴とする非接触給電システム。
【符号の説明】
【0071】
6…給電板、10…給電装置、11…共通ユニット、12…共通制御回路、13…電源回路、15…給電ユニット、16…励磁駆動回路、19…ユニット制御回路、30…受電装置、40…携帯端末、41…共振系切替回路、42a〜42c…フォトMOS、45a,45b…FET、51a〜51l…LED、52a〜52l…受光素子、C1,C2a〜C2c…コンデンサ、L1…1次コイル、L2…2次コイル、L3…1次側通信用コイル、L4…2次側通信用コイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作周波数にて振動する交流電流が供給されることで交番磁束を発生させる1次コイルが給電面に沿って複数配置される給電装置と、前記給電面に設置された状態において、前記1次コイルからの交番磁束に基づき誘起電力を発生させ、その電力を負荷に供給する2次コイルを有する受電装置と、を備えた、前記2次コイルにおける共振現象を利用する非接触給電システムにおいて、
前記2次コイルの前記1次コイルに対する位置を判断するコイル位置判断部と、
前記動作周波数に対する前記2次コイルにおける共振周波数の値を切り替える切替回路と、
前記コイル位置判断部の判断結果に基づき、前記切替回路を通じて前記動作周波数を前記共振周波数に対応する値とする制御回路と、を備えたことを特徴とする非接触給電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触給電システムにおいて、
前記切替回路は、前記2次コイルに直列接続されるとともに、互いに直列接続されるコンデンサ及びスイッチング素子が複数組設けられ、その各組が並列に接続され、前記各スイッチング素子のオンオフ状態の切り替えを通じて前記動作周波数に対する前記共振周波数の値を切り替えることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の非接触給電システムにおいて、
前記コイル位置判断部は、前記各1次コイルと前記2次コイルとの磁気結合の度合いに応じて変化する前記各1次コイルにおける電圧値又は電流値に基づき存在検知レベルを認識し、その存在検知レベルに基づき前記2次コイルの前記1次コイルに対する位置を判断することを特徴とする非接触給電システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の非接触給電システムにおいて、
前記コイル位置判断部は、
前記1次コイル毎に設けられるとともに、前記給電面における前記受電装置に対して光を放射する発光素子と、
前記発光素子に対応して設けられるとともに、前記給電面における前記受電装置に前記光が放射されたときの反射光の有無を検出する受光素子と、
前記各受光素子のうち反射光がある旨検出した前記受光素子の数に基づき、前記2次コイルの前記1次コイルに対する位置を判断する判断部と、を備えることを特徴とする非接触給電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−70444(P2013−70444A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205044(P2011−205044)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)