非接触給電システム
【課題】非接触給電システムにおいて、可動装置に装着される電気機器の選択の自由度をより向上させることにある。
【解決手段】可動装置30における収納スペース41に薄型TVやフォトフレームなどの好みの電気機器を設置した状態で、その電気機器を動作させることが可能となる。よって、可動装置30に設置される電気機器の選択の自由度を向上させることができる。また、引き戸(可動装置30)はスライド移動可能であるため、引き戸、ひいては電気機器の位置をユーザの好みに合わせて変更可能である。
【解決手段】可動装置30における収納スペース41に薄型TVやフォトフレームなどの好みの電気機器を設置した状態で、その電気機器を動作させることが可能となる。よって、可動装置30に設置される電気機器の選択の自由度を向上させることができる。また、引き戸(可動装置30)はスライド移動可能であるため、引き戸、ひいては電気機器の位置をユーザの好みに合わせて変更可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、非接触給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給電装置から受電装置へ非接触にて給電を行う非接触給電システムが存在する(例えば、特許文献1参照)。近年、この非接触給電システムを通じて高効率での非接触給電が可能となりつつあることから、その実用化が進められている。
【0003】
例えば、電磁誘導を用いて電源から電気機器に非接触で給電する方法がある。この方式においては、従来の電源及び電気機器間の電気コードをなくすコードレス化が可能である。
【0004】
特に給電対象が可動体である場合には、可動体の移動を阻害する電気コードを省略できるため、非接触給電のメリットは大きい。給電対象が可動体である構成には、現状では以下のようなものが存在する。すなわち、産業分野では、工場やクリーンルームなどにおいて、非接触で給電される移動台車が存在する(例えば、特許文献2参照)。また、IDカードシステムにおいても、読み取り機に対し人や物に取り付けられたカードをかざすことで、この読み取り機からIDカードに給電が行われ、その電力に基づき読み取り機及びIDカード間で認証等が実行される(例えば、特許文献3参照)。さらに、道路に等間隔で敷き詰められた複数の1次コイルから走行中の車の下部に取り付けられた2次コイルに給電するアイデアも存在する(例えば、特許文献4参照)。これら構成は、1次コイルを大きく又は複数個使って、移動体に設けられる1つの2次コイルに給電する場合が多い。
【0005】
また、特許文献5に記載の非接触伝送装置は、固定装置に対して可動装置が往復運動するように構成される。可動装置には、その移動方向に沿って一定間隔毎に複数の2次コイルが設けられている。固定装置には、何れかの2次コイルに対向する1つの1次コイルが設けられている。可動装置が何れの位置にあっても、1次コイルが何れかの2次コイルと磁気結合するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−204637号公報
【特許文献2】特開平7−2311号公報
【特許文献3】特開2011−28381号公報
【特許文献4】特開2011−167031号公報
【特許文献5】実開平7−14734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記可動体に給電する非接触給電システムを家庭内やオフィスに適用することが検討されている。この場合、可動体としてドア、窓ガラス等が想定される。例えばドアを可動体とした場合、その可動体に受電電力が供給される電気機器が一体的に搭載されることが考えられる。しかし、この構成においては、ユーザの希望に合わせて電気機器の変更や追加を行うことが困難である。従って、電気機器の選択の自由度がより高い可動体が求められている。
【0008】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、可動装置に装着される電気機器の選択の自由度をより向上させた非接触給電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の非接触給電システムは、高周波電流が供給されることで交番磁束を発生させる1次コイルを有する給電装置と、前記交番磁束を介して誘起電圧を発生させる2次コイルを有する可動装置と、を備えた非接触給電システムにおいて、前記給電装置は固定的に設置され、前記可動装置は、前記給電装置に対して移動可能に構成されるとともに、ユーザによって選択された電気機器が着脱可能に構成され、装着された前記電気機器に前記2次コイルを通じて受電した電力を供給可能に構成される。
【0010】
また、上記構成において、前記可動装置は、一定範囲をスライド可能にガイドレールに保持され、前記給電装置は前記可動装置の可動範囲に対応する位置に設けられることが好ましい。
【0011】
また、上記構成において、前記可動装置には前記電気機器を収納する収納スペースが形成されることが好ましい。
また、上記構成において、前記可動装置には、前記電気機器を設置可能な配置台が形成されることが好ましい。
【0012】
また、上記構成において、前記1次コイル又は前記2次コイルには、共振コンデンサが直列又は並列に設けられることが好ましい。
また、上記構成において、前記2次コイルは、前記可動装置の移動方向に沿って複数配置されるとともに、前記1次コイルにおける前記可動装置の移動方向に対応する長さをA、前記2次コイルの前記移動方向の長さをC、前記2次コイルの間隔をBとした場合にA>B+2Cを満たすようにA、B及びCが設定されることが好ましい。
【0013】
また、上記構成において、前記可動装置は一つ又は複数の仕様を持ち、前記可動装置は前記ガイドレールから着脱可能に構成されることが好ましい。
また、上記構成において、前記可動装置は、閉じた状態で2つの空間を仕切るとともに、開いた状態で物体の通り抜けを可能とする開閉体であることが好ましい。
【0014】
また、上記構成において、前記ガイドレールは壁、天井又は床に設けられることが好ましい。
また、上記構成において、前記可動装置は台車であることが好ましい。
【0015】
また、上記構成において、前記2次コイルの出力を整流する整流回路と、前記整流回路からの電圧を商用電圧と同一の電圧に変換して、その変換した電圧を前記電気機器に供給する単数又は複数の電圧安定化回路と、を備えることが好ましい。
【0016】
また、上記構成において、前記1次コイルに供給される前記高周波電流を生成する高周波インバータを備え、前記高周波インバータは共振型であることが好ましい。
また、上記構成において、前記高周波インバータは1石電圧共振型であることが好ましい。
【0017】
また、上記構成において、前記電気機器は、他の電気機器に非接触で電力を供給する非接触給電装置であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、非接触給電システムにおいて、可動装置に装着される電気機器の選択の自由度をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態における非接触給電システムの構成を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態における高周波インバータ(1石電圧共振型インバータ)等の具体的構成を示すブロック図。
【図3】(a),(b)可動装置(引き戸)の斜視図、(c)引き戸が外された状態のレール部等の正面図、(d)電気機器が設置された可動装置(引き戸)の斜視図、(e),(f)開閉される可動装置(引き戸)の斜視図。
【図4】第1の実施形態における(a),(b)1次コイルL1と2次コイルL2との位置関係及び構成を示した斜視図。
【図5】第1の実施形態における、(a)2次コイルL2が2つの場合の2次コイルL2の可動距離を示した断面図、(b)2次コイルL2が3つの場合の2次コイルL2の可動距離を示した断面図、(c)2次コイルL2が4つの場合の2次コイルL2の可動距離を示した断面図。
【図6】第1の実施形態における可動装置の正面図。
【図7】第2の実施形態における(a)可動装置(台車)の斜視図、(b)TVが設置された可動装置(台車)の斜視図、(c)アイロンが設置された可動装置(台車)の斜視図、(d)壁に設けられる給電装置を示した斜視図、(e),(f)可動装置(台車)の使用態様を示した斜視図。
【図8】第3の実施形態における(a),(b)可動装置(スライドボード)の移動態様を示した斜視図。
【図9】他の実施形態における両コイルL1,L2の位置関係及び構成を示した斜視図。
【図10】他の実施形態における高周波インバータ(2石ハーフブリッジ型部分共振型インバータ)等の具体的構成を示すブロック図。
【図11】他の実施形態における配置台が設けられた可動装置(引き戸)の斜視図。
【図12】他の実施形態における上下方向に移動する可動装置(スライドボード)の斜視図。
【図13】他の実施形態における上側のガイドレールによってスライド可能に吊り下げ支持される可動装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
以下、本発明の非接触給電システムを具体化した第1の実施形態を図1〜図6を参照しつつ説明する。
【0021】
図1に示すように、非接触給電システムは、給電装置10と、可動装置30とを備える。以下、非接触給電装置10及び可動装置30の電気的構成について説明する。
(給電装置)
非接触給電装置10は、高周波インバータ11と、1次コイルL1とを備える。
【0022】
高周波インバータ11は、商用電源からの電力を高周波電流に変換し、その高周波電流を1次コイルL1に供給する。詳しくは、図2に示すように、高周波インバータ11は、1石電圧共振型インバータで構成される。
【0023】
すなわち、高周波インバータ11は、1次側並列共振コンデンサC1と、平滑コンデンサC2と、全波整流回路12と、コンデンサCa、Cbと、ダイオードD1,D2と、抵抗R1〜R5と、FETQ1と、トランジスタTr1と、帰還巻線Laとを備える。
【0024】
全波整流回路12は、商用電源に並列接続されるとともに、回路に電流を供給可能に接続されている。この回路は、上流側の接続線A1と、下流側の接続線A2とを有する。両接続線A1,A2間には、3つの接続線A3〜A5が並列接続されている。接続線A3には平滑コンデンサC2が設けられ、接続線A4には、接続線A1側から順に抵抗R2及びコンデンサCaが直列で設けられている。
【0025】
また、1次側並列共振コンデンサC1は、1次コイルL1とともにLC共振回路を構成する。また、抵抗R1及びダイオードD1にて第1の並列回路を構成する。また、FETQ1及びダイオードD2にて第2の並列回路を構成する。接続線A5には、接続線A1側から順に、LC共振回路、第1の並列回路、第2の並列回路、及び抵抗R5が直列で設けられている。
【0026】
また、FETQ1のゲート端子と、接続線A4の抵抗R2及びコンデンサCa間には、帰還巻線La及び抵抗R3が直列接続されている。抵抗R3はFETQ1の損失を抑制するために設けられている。また、抵抗R3及びFETQ1のゲート端子間には、トランジスタTr1のコレクタ端子が接続されている。また、トランジスタTr1のエミッタ端子は接続線A2に接続されている。そして、トランジスタTr1のベース端子は抵抗R4の一端に接続されている。この抵抗R4の他端は抵抗R5及び上記第2の並列回路間に接続されている。さらに、トランジスタTr1のベース端子及び抵抗R4間と、接続線A2との間にはコンデンサCbが接続されている。
【0027】
商用電源からの交流電流は、全波整流回路12によって全波整流されて、さらに平滑コンデンサC2によって平滑化される。この平滑化された電流は抵抗R2を通してコンデンサCaに供給される。従って、コンデンサCaの電圧が上昇し、これに伴いFETQ1のゲート電圧が閾値以上となったときFETQ1がオン状態となる。そして、1次コイルL1には、接続線A1からの電流が流れる。これにより、1次コイルL1と磁気的に結合する帰還巻線Laに電圧が誘起されて帰還がかかり発振が始まる。
【0028】
1次コイルL1に流れる電流により、トランジスタTr1のベース端子に閾値以上の電圧が印加される。従って、コンデンサCaの電荷は、帰還巻線La、抵抗R3及びトランジスタTr1を通じて放電される。これにより、FETQ1のゲート電圧が閾値未満となってFETQ1がオフ状態となる。このように、FETQ1のゲート電圧は制御される。
【0029】
1次側並列共振コンデンサC1が設けられることで1次コイルL1は共振する。これにより、1次コイルL1の高周波電圧を昇圧できる。
(可動装置)
可動装置30は、複数の2次コイルL2と、2次コイルL2と同数の2次側並列共振コンデンサC3と、2次コイルL2と同数の整流回路31と、単一の電圧安定化回路32と、内蔵型給電装置33とを備える。
【0030】
2次コイルL2及び2次側並列共振コンデンサC3は並列接続されている。2次コイルL2は、1次コイルL1により発生する交番磁束を介して誘起電流を発生させる。2次側並列共振コンデンサC3を設けることで、2次コイルL2の出力電圧を昇圧させることや、定電圧とすることができる。
【0031】
整流回路31は、誘起電流を全波整流し、整流した電流を電圧安定化回路32に出力する。電圧安定化回路32は、整流回路31からの電圧を商用電源周波数の商用電圧と同一の電圧に変換し、その変換した電圧を電気機器40に供給する。電気機器40としては第1及び第2の電気機器40a,40bがある。これら電気機器40a,40bは可動装置30に対して着脱可能である。
【0032】
電圧安定化回路32にはコンセント39が接続されている。一方、第1の電気機器40aはプラグ36を有する。このプラグ36をコンセント39に接続することで、第1の電気機器40a及び電圧安定化回路32は導通状態となる。第1の電気機器40aとしては薄型TV、スピーカ、照明装置、及び扇風機等が想定される。
【0033】
内蔵型給電装置33は、第1の電気機器40aと同様に電圧安定化回路32に有線接続されている。すなわち、内蔵型給電装置33は電気機器でもある。
内蔵型給電装置33は、高周波インバータ38と、給電用コイルL3とを備える。高周波インバータ38は、電圧安定化回路32からの電流を高周波電流に変換し、その高周波電流を給電用コイルL3に供給する。これにより、給電用コイルL3から交番磁束が発生する。
【0034】
ここで、第2の電気機器40bとしては携帯端末が想定される。第2の電気機器40bは、受電用コイルL4と、整流回路31と、を備える。受電用コイルL4は、給電用コイルL3からの交番磁束に基づき電流を誘起する。整流回路31は誘起された電流を整流し、その整流した電流を携帯端末の2次電池(図示略)に充電する。
【0035】
次に、可動装置30及び非接触給電装置10の機械的構成について説明する。
図3(a)に示すように、本例では、可動装置30は、家庭内の部屋間を区切る引き戸として構成されている。引き戸は、例えば木材、ガラス、プラスチック又は壁材等からなる厚さ40mmの長方形の板状に形成される。
【0036】
図3(e),(f)に示すように、引き戸である可動装置30は、その上端及び下端がレール部46a,46bによって図中の左右方向にスライド可能に支持されている。ユーザは、部屋間を移動する際、取手44を通じて可動装置30を同図中の左右方向に開閉する。引き戸は、開かれた状態においては、図中の破線で示される戸袋43内に位置する。なお、引き戸は、レール部46a,46bからユーザによって着脱可能に構成される。
【0037】
また、可動装置30には、電気機器を設置可能な収納スペース41が形成されている。この収納スペース41は、ユーザ側に開口した矩形状の穴として設けられる。図3(a)に示す構成においては、収納スペース41が2行3列に計6つ設けられている。この収納スペース41は、可動装置30の厚さ方向からみて正方形である。また、図3(b)に示す構成においては、収納スペース41が上下に計2つ設けられている。この収納スペース41は、可動装置30の厚さ方向からみて左右方向に長い長方形である。
【0038】
図3(d)に示すように、収納スペース41には、電気機器40として薄型TV及び扇風機が設置される。その他の電気機器としては、例えば、デジタルフォトフレーム、LEDや有機ELを備える照明器具、携帯端末等様々なものが設置される。
【0039】
図3(a),(b)に示すように、収納スペース41内にはコンセント39が設けられている。コンセント39は収納スペース41に第1の電気機器40aが設置されたときに、第1の電気機器40aのプラグ36が挿入される。このプラグ36が挿入された状態において、図2に示されるように、第1の電気機器40aと電圧安定化回路32とが電気的に接続された状態となる。
【0040】
また、収納スペース41内には、内蔵型給電装置33が設けられている。携帯端末等の第2の電気機器40bが収納スペース41内に設置されると、内蔵型給電装置33から第2の電気機器40bに電磁誘導を通じた非接触の給電が可能となる。
【0041】
なお、各収納スペース41にコンセント39及び内蔵型給電装置33の何れか一方が設けられていてもよいし、各収納スペース41にコンセント39及び内蔵型給電装置33の両方が設けられていてもよい。
【0042】
図3(a)の破線で示すように、可動装置30における上端には、左右方向に沿って2次コイルL2が配列されている。
また、図3(a)の右下の収納スペース41部分に示すように、収納スペース41に電気機器40が設置されない場合には、収納スペース41に応じた外形を有する意匠部材45が嵌め込まれてもよい。意匠部材45を収納スペース41に嵌め込むことで、外観からは普通の引き戸に見える。特に、意匠部材45を板状に形成することで、収納スペース41に電気機器40を設置した状態で、その電気機器40を外から隠すことができる。
【0043】
図3(e),(f)に示すように、レール部46aの上側の壁には、非接触給電装置10が内蔵されている。この非接触給電装置10は外付けすることも可能である。本例では、非接触給電装置10は、可動装置30が閉状態にあるときの右上角部に対応する位置と、可動装置30が開状態にあるときの右上角部に対応する位置とに計2つ設けられている。
【0044】
次に、1次コイルL1及び2次コイルL2の具体的な構成について図4(a),(b)を参照しつつ説明する。本例では、両コイルL1,L2は、方形の平面コイルであるとともに、平板状のコア37に重ねられている。可動装置30の開閉に伴い、固定的に設置される1次コイルL1に対して複数(本例では4つ)の2次コイルL2は変位する。
【0045】
同図に示すように、1次コイルL1の横幅が長さAであって、2次コイルL2の幅が長さCであるとする。そして、互いに隣接する2次コイルL2間の距離を長さBとする。この場合、A≧B+2Cの条件を満たすように両コイルL1,L2のサイズや位置関係が設定される。
【0046】
この条件を満たすことで、可動装置30の位置に関わらず、何れかの2次コイルL2を1次コイルL1に対面させること、ひいては、1次コイルL1から2次コイルL2に給電することが可能となる。
【0047】
図5(a)〜(c)には、上記条件を満たした構成において、2次コイルL2がn個設けられる場合の可動装置30の可動距離Xを示す。この可動距離は、何れかの2次コイルL2が1次コイルL1に対面して給電が可能な範囲をいう。可動距離Xは、「X=(A−C)×n」の式から求められる。本例では、A=10cm、B=8cm、C=1cmに設定される。
【0048】
図5(a)に示すように、2次コイルL2が2個の場合には、可動装置30の可動距離は18cmである。図5(b)に示すように、2次コイルL2が3個の場合には、可動装置30の可動距離は27cmである。また、図5(c)に示すように、2次コイルL2が4個の場合には、可動装置30の可動距離は36cmである。逆に、約1mの可動距離を得るためには11個の2次コイルL2が必要となる。
【0049】
図6には、上記図2とは異なる可動装置30の配置例が示されている。
本例では、一対の可動装置30a,30b(引き戸)は、引き戸枠47に左右方向にスライド可能に嵌め込まれている。左右方向に延びる引き戸枠47の中央において、可動装置30aの右端面と可動装置30bの左端面とが接した状態にあるとき、可動装置30a,30bによって部屋が仕切られた閉状態となる。この状態から両可動装置30a,30bを互いに離間する開方向に移動させることで、人等が部屋間を移動可能な開状態となる。
【0050】
可動装置30aにおいては、収納スペース41が計3つ設けられている。すなわち、上側に比較的大きい収納スペース41が1つ設けられ、その収納スペース41の下側に左右方向に並ぶ比較的小さい収納スペース41が2つ設けられている。大きい収納スペース41には第1の電気機器40aである薄型TVが設置され、小さい収納スペース41には第1の電気機器40aである左右のスピーカが設置される。薄型TV及び両スピーカは、プラグ36及びコンセント39を通じて電圧安定化回路32に接続されている。
【0051】
可動装置30bにおいては、小さい収納スペース41が3行2列で計6つ設けられている。これら収納スペース41には、第2の電気機器40bである携帯端末と、第1の電気機器40aである照明器具及びデジタルフォトフレームとが設置されている。これら電気機器は、プラグ36及びコンセント39を通じて電圧安定化回路32に接続されていてもよいし、内蔵型給電装置33を通じて非接触で可動装置30bから電力が供給されてもよい。特に、携帯端末の場合には頻繁に充電することから、内蔵型給電装置33を通じて非接触で充電可能とすることで、充電毎にプラグを挿し込む手間が省ける。
【0052】
非接触給電装置10(1次コイルL1)は、引き戸枠47の右上角部付近と、左上角部付近とに2つ設けられる。そして、2次コイルL2は、各可動装置30a,30bの上端に沿って配置される。1次コイルL1及び2次コイルL2の関係は、図4を参照しつつ説明した上記条件(A≧B+2C)を満たすように設定されている。
【0053】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)可動装置30における収納スペース41に薄型TVやフォトフレームなどの好みの電気機器を設置した状態で、その電気機器を動作させることが可能となる。よって、可動装置30に設置される電気機器の選択の自由度を向上させることができる。
【0054】
また、引き戸(可動装置30)はスライド移動可能であるため、引き戸、ひいては電気機器の位置をユーザの好みに合わせて変更可能である。よって、利便性の高い非接触給電システムを提供することができる。
【0055】
(2)引き戸(可動装置30)は同じ外形のものを内部の仕様(収納スペース41の数、大きさ等)を変えた複数種類を準備できる。また、ユーザは、自身で可動装置30をレール部46a,46bから取り外すことができるので、季節や自分の好みに合わせて可動装置30を取り替えることができる。
【0056】
(3)1次コイルL1及び2次コイルL2にそれぞれ並列に共振コンデンサC1,C3が設けられている。このため、1次コイルL1側の高周波電圧を昇圧でき、同様に2次コイルL2側の出力電圧を昇圧することや定電圧とすることができる。また、1次コイルL1及び2次コイルL2間の磁気結合度が小さくても高効率で電力伝送できる。
【0057】
(4)1次コイルL1における、可動装置30の移動方向に対応する長さをAとし、2次コイルL2の当該移動方向の長さをCとし、各2次コイルL2の間隔の長さをBとする。この場合、A>B+2Cの条件を満たすように、両コイルL1,L2の形状及び位置関係は設定されている。この条件を満たす範囲において、2次コイルL2の数を最小限とすることで、可動装置30の位置に関わらず両コイルL1,L2を対応させることを可能としつつ、より簡易に可動装置30を構成できる。従って、可動装置30の移動距離に沿ってコイルを敷き詰める従来の構成に比べて、小型化、省施工及び低コストを実現することができる。
【0058】
(5)可動装置30は必要に合わせて取り替え可能に構成されている。従って、例えば、収納スペース41に照明器具が設置されている場合において、照明が必要ないときには、その可動装置30を取り外し、普通の引き戸に取り替えることもできる。
【0059】
また、電気機器の収納形態(収納スペース41の数、大きさ)が異なる複数の仕様の可動装置30を用意しておけば、TV用、ステレオ用、照明用、送風用等の目的に合わせて可動装置30を適宜取り替えることができる。このため、自分の生活スタイルにあった利用ができて便利である。また、可動装置30はユーザによって着脱かつ持ち運び可能であるため、専門の業者に頼ることなく、ユーザが交換作業を行うことができる。
【0060】
(6)電圧安定化回路32は、整流回路31からの電圧を商用電源周波数の商用電圧と同一の電圧に変換する。従って、一般に市販されている電気機器をそのまま可動装置30に設置して使用できる。
【0061】
(7)高周波インバータ11は共振型であるので、インバータ効率、ひいてはシステム効率が向上する。また、高周波インバータ11は1次コイルL1との共振回路も兼ねることができるため、回路を簡易に構成すること、ひいては低コスト化が図れる。
【0062】
さらには、高周波インバータ11は1石電圧共振型であるので、フルブリッジ型やハーフブリッジ型に比べて簡易に構成すること、ひいては低コスト化が図れる。
(8)電圧安定化回路32には内蔵型給電装置33が接続されている。この内蔵型給電装置33を通じて、収納スペース41に設置される携帯端末等に非接触で給電することができる。このため、収納スペース41に携帯端末等を設置するだけで、携帯端末等の充電が可能となるため、利便性を向上させることができる。
【0063】
(9)1次コイルL1及び2次コイルL2にはコア37が設けられている。このため、両コイルL1,L2間の磁気結合度が向上し、コイルの小型化と高効率化が図れる。
(10)既存のレール部46a,46b又は引き戸枠47に嵌め込まれている通常の引き戸を可動装置30に取り替えるだけで、簡単に電気機器に電力供給可能な引き戸を実現することができる。また、既存のレール部46a,46bを利用できるため、非接触給電システムのために新たにレール部46a,46b等を設ける必要がない。
【0064】
(11)意匠部材45を収納スペース41に嵌め込むことで、外観からは普通の引き戸に見える。これにより、可動装置30の意匠性を向上させることができる。この意匠部材45の色は、可動装置30と同色であってもよいし、可動装置30と異なる色のアクセントとして使用してもよい。
【0065】
さらに意匠部材45を板状に形成することで、収納スペース41に電気機器40を設置した状態で、その電気機器40を外から隠すことができる。これにより、例えば、扇風機を使用しない期間においては意匠部材45を収納スペース41に嵌め込むことで、外観から煩雑な印象を与えることを抑制できる。
【0066】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について、図7を参照して説明する。この実施形態の非接触給電システムは、可動装置が台車であること、及び給電装置の位置が上記第1の実施形態と異なっている点を除き、上記第1の実施形態とほぼ同様に構成される。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0067】
図7(a)に示すように、可動装置50は、四角柱状の台部51と、その台部51の下面に装着される4つの車輪52とを備えた台車として構成される。台部51の背面には、その長手方向に沿って2次コイルL2が配列されている。
【0068】
図7(b),(c)に示すように、台部51の上面には、電気機器40としてTVやアイロン等が設置される。可動装置50から電気機器40への給電方法は、上記第1の実施形態と同様に、可動装置50に設けられるコンセントに電気機器40のプラグが挿し込まれる構成であってもよいし、可動装置50に設けられる内蔵型給電装置33を通じて非接触で給電されてもよい。
【0069】
また、図7(d)に示すように、壁における低い位置(一般的にコンセントが配設される位置)には非接触給電装置10が設けられる。この非接触給電装置10は壁に内蔵されていてもよいし、外付けされていてもよい。
【0070】
上記構成において、TVが設置された可動装置50を車輪52を通じて移動させる。このとき、図7(e)に示すように、一の非接触給電装置10が設けられている位置から、他の非接触給電装置10が設けられている位置に可動装置50を移動させる。これらの状態においては、両コイルL1,L2が対向した状態にあるため、非接触給電装置10から可動装置50を通じてTVへの給電が可能となる。
【0071】
図7(f)に示すように、アイロンが可動装置50に載せられている場合には、アイロンがけをするときのみ、可動装置50を出してきて、その日の好みや状況に合わせて適当な非接触給電装置10に近づける。これにより、アイロンに電力を供給することが可能となる。この構成においては、例えば、可動装置50の上面をアイロン台とすることで、利便性を向上させることができる。
【0072】
以上、説明した実施形態によれば、特に以下の効果を奏することができる。
(12)電気機器を載せた状態で可動装置50を移動させて、両コイルL1,L2を対向した状態とすることで電気機器への給電が可能となる。このように、プラグ等の配線接続を行うことなく、容易に電気機器の位置を変更することができる。
【0073】
(13)可動装置50(台車)に載せることが可能であれば、比較的サイズの大きい電気機器に対しても給電することができる。
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について、図8を参照して説明する。この実施形態の非接触給電システムは、可動装置がスライドボードである点を除き、上記第1の実施形態とほぼ同様に構成される。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0074】
図8(a)に示すように、可動装置60は、スライドボードとして形成されている。この可動装置60にも、収納スペース62が形成されている。この収納スペース62には、例えば電気機器40として壁掛けTVが嵌め込まれる。この壁掛けTVは、収納スペース62から着脱可能である。
【0075】
壁には、左右方向に延出する凹状のガイドレール61が固定的に取り付けられる。ガイドレール61は、ねじ又は接着材等で壁に固定される。ガイドレール61は、互いに開口側が向き合う態様で一対設けられている。そして、そのガイドレール61間には可動装置60(スライドボード)が嵌め込まれる。この可動装置60は、上下の両端が各ガイドレール61の内面に摺動しつつ、ガイドレール61の延出方向にスライドする。可動装置60の上端には、左右方向に沿って2次コイルL2が配列されている。また、上側のガイドレール61の上方の壁には非接触給電装置10が内蔵又は外付けされている。本例では、非接触給電装置10は、ガイドレール61の全域に亘って等間隔で4つ配列されている。両コイルL1,L2の形状及び位置関係については、上記図4を参照しつつ説明した第1の実施形態と同様に設定される。上記構成によれば、図8(b)に示すように、可動装置60を手動でガイドレール61に沿って移動させることができる。
【0076】
以上、説明した実施形態によれば、特に以下の効果を奏することができる。
(14)可動装置60を、壁に取り付けられるガイドレール61に沿って移動させることで、電気機器40(例えばTV)を好みの位置に簡単に移動させることができる。従って、利便性を向上させることができる。
【0077】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・第1の実施形態においては、可動装置30は引き戸であったが引き戸と同様に往復移動する開閉体であれば、引き戸に限らず、窓ガラス、障子、ふすま、間仕切り壁、什器のスライド扉であってもよい。
【0078】
・第1の実施形態においては、非接触給電装置10は2つ設けられていた。しかし、非接触給電装置10の数は単数又は3つ以上であってもよい。単数の場合には、可動装置30の開閉に伴う移動距離を制限することで、可動装置30の位置に関わらず、非接触給電装置10から可動装置30に給電することが可能となる。
【0079】
・上記各実施形態においては、両コイルL1,L2は方形の平面コイルであるとともに、平板状のコア37に重ねられていたが、コイル及びコアはこの構成に限らない。例えば、図9に示すように、磁性体のコア64をコの字型とし、その両端部にコイルL1,L2を巻いて構成されていてもよい。また、Eの字型のコアやコアレスのコイルであってもよい。この場合であっても、1次コイルL1及び2次コイルL2の関係は、図4を参照しつつ説明した上記条件(A≧B+2C)を満たすように設定されている。
【0080】
・上記各実施形態においては、高周波インバータ11は1石電圧共振型インバータで構成されていた。しかし、高周波インバータ11は、1石電圧共振型インバータに限らず、図10に示すように、2石ハーフブリッジ型部分共振型インバータであってもよい。同図に示すように、当該インバータは、全波整流回路12と、平滑コンデンサC2と、一対のFETQ2,Q3と、寄生ダイオードD3,D4と、コンデンサC4〜C7とを備える。
【0081】
コンデンサC4は、1次側直列共振コンデンサであって1次コイルL1に直列接続されている。上流側の接続線A11と、下流側の接続線A12との間には1対の接続線A13,A14が接続される。接続線A13には、接続線A11側から順にFETQ2,Q3が設けられている。FETQ2,Q3には、それぞれ寄生ダイオードD3,D4が並列接続されている。また、接続線A14には、接続線A11側から順にコンデンサC5,C6が設けられている。また、接続線A13におけるFETQ2,Q3間と、接続線A14におけるコンデンサC5,C6間との間には1次コイルL1及びコンデンサC4が直列接続されている。また、1次コイルL1及びコンデンサC4に対してコンデンサC7が並列接続されている。
【0082】
上記構成において、FETQ2をオン状態として、FETQ3をオフ状態とすると、全波整流回路12からの電流はFETQ2を介して1次コイルL1に流れる。この状態から逆にFETQ2をオフ状態として、FETQ3をオン状態とすると、1次コイルL1に逆方向の電流(逆起電流)が流れる。このように、FETQ2,Q3を交互にオン状態とすることで1次コイルL1は発振する。1次側直列共振コンデンサであるコンデンサC4が直列接続されることで1次コイルL1は共振する。これにより、1次コイルの高周波電圧を昇圧できる。
【0083】
本構成においては、2次コイルL2に2次側直列共振コンデンサC8が直列接続される。この2次側直列共振コンデンサC8を設けることで、2次コイルL2の出力電圧を昇圧させることや、定電圧とすることができる。
【0084】
・上記各実施形態においては、意匠部材45は収納スペース41に嵌め込むものであったが、シャッターやロールカーテンのように予め可動装置に取り付けられていてもよい。本構成においては、意匠部材45を引き出すことで簡単に収納スペース41を隠すことができる。また、意匠部材45を紛失するおそれがない。
【0085】
・第1の実施形態においては、収納スペース41はユーザ側に開口した穴として形成されていた。しかし、収納スペース41は、可動装置30(引き戸)の厚さ方向に貫通していてもよい。この構成においては、収納スペース41に位置する電気機器を可動装置30の両側から使用可能である。すなわち、可動装置30が部屋の間仕切りとして使用されている場合、両部屋から電気機器の使用が可能となる。
【0086】
また、収納スペース41の底面を、ガラス、プラスチック、又は木材等で形成してもよい。これにより、引き戸としての意匠性が向上する。また、収納スペース41におけるコンセント39及び内蔵型給電装置33の位置を適宜変更してもよい。
【0087】
・第2の実施形態においては、可動装置50は台車であったが、台車と同様に車輪52が取り付けられている家具であれば、これに限らず、車輪付きの収納家具であってもよい。
【0088】
・第2の実施形態においては、壁に非接触給電装置10が設けられていたが、非接触給電装置10を床に設けてもよい。
・第1の実施形態においては、可動装置30の収納スペース41に電気機器40が設置されていた。しかし、この構成に限らず、図11に示すように、可動装置70に配置台71を取り付け、この配置台71に電気機器40を設置してもよい。配置台71は、可動装置70の面に対して直交するように、半円板状に形成されている。この配置台71の数、形状又はサイズは、設置される電気機器40に応じて変更可能である。例えば、配置台を装着可能に可動装置30に穴が形成されていてもよい。本構成における可動装置70から電気機器40への給電方法は、上記第1の実施形態と同様に、可動装置70に設けられるコンセントに電気機器40のプラグが挿し込まれる構成であってもよいし、可動装置70に設けられる内蔵型給電装置33を通じて非接触で給電される構成であってもよい。本構成によれば、比較的サイズの大きい電気機器40に対しても給電することができる。
【0089】
・第3の実施形態においては、ガイドレール61は左右方向に延出していた。しかし、図12に示すように、ガイドレール61を上下方向に延出させてもよい。この場合、可動装置30を高さ方向にスライドさせて、例えばユーザの好みの高さでTVを見ることができる。
【0090】
また、ガイドレール61を部屋間に亘って設けてもよい。これにより、2つの部屋で電気機器40を共有することが可能となる。
さらに、図13に示すように、上側のガイドレール65のみ設けてもよい。可動装置60は、そのガイドレール65に吊り下げられた状態でスライド可能に支持される。本例では、3つの可動装置60が設けられ、中央の可動装置60がTVであって、その左右の可動装置60がスピーカである。それぞれの可動装置60の位置を調整することで好みの音響状態を実現することができる。また、天井空間を有効に活用できる。
【0091】
また、この構成を窓ガラスに適用した場合には、その透明性を利用して、窓ガラスに供給された電力で例えば液晶シャッター機能を備えることができる。また、透明電極と組み合わせて有機EL照明器具や有機ELディスプレイなどの、照明や表示装置を窓ガラス内に設けることができる。
【0092】
また、ガイドレール61,65は、天井又は床に配置されていてもよい。また、可動装置は、カーテンや、シャッターなど形状がフレキシブルな構造物に取り付けられてもよい。これにより、家庭内において可動装置60を適用できる場所が広がる。
【0093】
・第3の実施形態及び図13の構成において、可動装置60がガイドレール61,65に沿って自動で動く構成であってもよい。この場合には、ユーザの操作により、モータ等の駆動力を通じて可動装置60をガイドレール61,65に沿って移動可能となる。この場合には、手動で動かす必要がないため利便性が高い。特に、可動装置60がユーザの手が届かないほどに高い位置にあっても、手元の操作手段(リモートコントローラ)を通じて、可動装置60を動かすことができる。
【0094】
・第1の実施形態においては、可動装置30は引き戸であったが中心軸を中心に回動する開き戸として構成してもよい。この場合、開き戸が閉じた状態においてのみ、電気機器に電力の供給が可能となる。また、開き戸が完全に開いた状態にあるときに、両コイルL1,L2が対応するように構成してもよい。
【0095】
また、レール部を円弧状に形成し、可動装置60もその円弧に合わせた曲率で曲面状に形成してもよい。
・上記各実施形態においては、非接触給電装置10から可動装置30,50,60に電磁誘導を利用して給電を行っていたが、給電方式はこれに限らず、例えば、磁気共鳴を利用して給電を行ってもよい。また、電界や電磁波を利用する給電方式であってもよい。
【0096】
さらに、金属異物検知機能、認証機能、磁界や電界のシールド、回路等の熱放散のための放熱機構、さらにノイズ対策回路、間欠的なコイル励磁等による省エネルギ待機など、通常の非接触給電システムに共通の技術や機構、構造などを組み込んでもよい。
【0097】
・第1の実施形態においては、引き戸である可動装置30に収納スペース41が形成されていた。しかし、第2の実施形態における台車に収納スペース41を形成してもよい。これにより、台部51のデッドスペースを有効に活用できる。
【0098】
・上記各実施形態においては、複数の整流回路31に対して単一の電圧安定化回路32が設けられていたが、整流回路31毎に電圧安定化回路32を設けてもよい。
・上記各実施形態においては、電圧安定化回路32は、整流回路31からの電圧を商用電圧と同一の電圧に変換していた。しかし、電圧安定化回路32は、電圧を商用電圧と異なる電圧に変換してもよい。この場合には、変圧器等が別に必要となる。
【0099】
・上記実施形態における可動装置30,50,60は屋内に限らず、屋外において使用されてもよい。
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
【0100】
(イ)請求項1〜14の何れか一項に記載の非接触給電システムにおいて、前記1次コイル及び前記2次コイルの少なくとも何れか一方に磁性体のコアが設けられることを特徴とする非接触給電システム。
【0101】
同構成によれば、コアが設けられることで両コイル間の磁気結合度が向上し、コイルの小型化と高効率化が図れる。
(ロ)請求項1又は2に記載の非接触給電システムにおいて、前記可動装置は、フレキシブルな構造物に取り付けられることを特徴とする非接触給電システム。
【0102】
同構成によれば、可動装置は、カーテンやシャッターなど形状がフレキシブルな構造物に取り付けられる。このため、さらに家庭内において応用できる場所が広がる。
【符号の説明】
【0103】
10…非接触給電装置、11,38…高周波インバータ、30,30a,30b,50,60,70…可動装置、31…整流回路、32…電圧安定化回路、40,40a,40b…電気機器、41,62…収納スペース、61,65…ガイドレール、71…配置台、L1…1次コイル、L2…2次コイル。
【技術分野】
【0001】
この発明は、非接触給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給電装置から受電装置へ非接触にて給電を行う非接触給電システムが存在する(例えば、特許文献1参照)。近年、この非接触給電システムを通じて高効率での非接触給電が可能となりつつあることから、その実用化が進められている。
【0003】
例えば、電磁誘導を用いて電源から電気機器に非接触で給電する方法がある。この方式においては、従来の電源及び電気機器間の電気コードをなくすコードレス化が可能である。
【0004】
特に給電対象が可動体である場合には、可動体の移動を阻害する電気コードを省略できるため、非接触給電のメリットは大きい。給電対象が可動体である構成には、現状では以下のようなものが存在する。すなわち、産業分野では、工場やクリーンルームなどにおいて、非接触で給電される移動台車が存在する(例えば、特許文献2参照)。また、IDカードシステムにおいても、読み取り機に対し人や物に取り付けられたカードをかざすことで、この読み取り機からIDカードに給電が行われ、その電力に基づき読み取り機及びIDカード間で認証等が実行される(例えば、特許文献3参照)。さらに、道路に等間隔で敷き詰められた複数の1次コイルから走行中の車の下部に取り付けられた2次コイルに給電するアイデアも存在する(例えば、特許文献4参照)。これら構成は、1次コイルを大きく又は複数個使って、移動体に設けられる1つの2次コイルに給電する場合が多い。
【0005】
また、特許文献5に記載の非接触伝送装置は、固定装置に対して可動装置が往復運動するように構成される。可動装置には、その移動方向に沿って一定間隔毎に複数の2次コイルが設けられている。固定装置には、何れかの2次コイルに対向する1つの1次コイルが設けられている。可動装置が何れの位置にあっても、1次コイルが何れかの2次コイルと磁気結合するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−204637号公報
【特許文献2】特開平7−2311号公報
【特許文献3】特開2011−28381号公報
【特許文献4】特開2011−167031号公報
【特許文献5】実開平7−14734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記可動体に給電する非接触給電システムを家庭内やオフィスに適用することが検討されている。この場合、可動体としてドア、窓ガラス等が想定される。例えばドアを可動体とした場合、その可動体に受電電力が供給される電気機器が一体的に搭載されることが考えられる。しかし、この構成においては、ユーザの希望に合わせて電気機器の変更や追加を行うことが困難である。従って、電気機器の選択の自由度がより高い可動体が求められている。
【0008】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、可動装置に装着される電気機器の選択の自由度をより向上させた非接触給電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の非接触給電システムは、高周波電流が供給されることで交番磁束を発生させる1次コイルを有する給電装置と、前記交番磁束を介して誘起電圧を発生させる2次コイルを有する可動装置と、を備えた非接触給電システムにおいて、前記給電装置は固定的に設置され、前記可動装置は、前記給電装置に対して移動可能に構成されるとともに、ユーザによって選択された電気機器が着脱可能に構成され、装着された前記電気機器に前記2次コイルを通じて受電した電力を供給可能に構成される。
【0010】
また、上記構成において、前記可動装置は、一定範囲をスライド可能にガイドレールに保持され、前記給電装置は前記可動装置の可動範囲に対応する位置に設けられることが好ましい。
【0011】
また、上記構成において、前記可動装置には前記電気機器を収納する収納スペースが形成されることが好ましい。
また、上記構成において、前記可動装置には、前記電気機器を設置可能な配置台が形成されることが好ましい。
【0012】
また、上記構成において、前記1次コイル又は前記2次コイルには、共振コンデンサが直列又は並列に設けられることが好ましい。
また、上記構成において、前記2次コイルは、前記可動装置の移動方向に沿って複数配置されるとともに、前記1次コイルにおける前記可動装置の移動方向に対応する長さをA、前記2次コイルの前記移動方向の長さをC、前記2次コイルの間隔をBとした場合にA>B+2Cを満たすようにA、B及びCが設定されることが好ましい。
【0013】
また、上記構成において、前記可動装置は一つ又は複数の仕様を持ち、前記可動装置は前記ガイドレールから着脱可能に構成されることが好ましい。
また、上記構成において、前記可動装置は、閉じた状態で2つの空間を仕切るとともに、開いた状態で物体の通り抜けを可能とする開閉体であることが好ましい。
【0014】
また、上記構成において、前記ガイドレールは壁、天井又は床に設けられることが好ましい。
また、上記構成において、前記可動装置は台車であることが好ましい。
【0015】
また、上記構成において、前記2次コイルの出力を整流する整流回路と、前記整流回路からの電圧を商用電圧と同一の電圧に変換して、その変換した電圧を前記電気機器に供給する単数又は複数の電圧安定化回路と、を備えることが好ましい。
【0016】
また、上記構成において、前記1次コイルに供給される前記高周波電流を生成する高周波インバータを備え、前記高周波インバータは共振型であることが好ましい。
また、上記構成において、前記高周波インバータは1石電圧共振型であることが好ましい。
【0017】
また、上記構成において、前記電気機器は、他の電気機器に非接触で電力を供給する非接触給電装置であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、非接触給電システムにおいて、可動装置に装着される電気機器の選択の自由度をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態における非接触給電システムの構成を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態における高周波インバータ(1石電圧共振型インバータ)等の具体的構成を示すブロック図。
【図3】(a),(b)可動装置(引き戸)の斜視図、(c)引き戸が外された状態のレール部等の正面図、(d)電気機器が設置された可動装置(引き戸)の斜視図、(e),(f)開閉される可動装置(引き戸)の斜視図。
【図4】第1の実施形態における(a),(b)1次コイルL1と2次コイルL2との位置関係及び構成を示した斜視図。
【図5】第1の実施形態における、(a)2次コイルL2が2つの場合の2次コイルL2の可動距離を示した断面図、(b)2次コイルL2が3つの場合の2次コイルL2の可動距離を示した断面図、(c)2次コイルL2が4つの場合の2次コイルL2の可動距離を示した断面図。
【図6】第1の実施形態における可動装置の正面図。
【図7】第2の実施形態における(a)可動装置(台車)の斜視図、(b)TVが設置された可動装置(台車)の斜視図、(c)アイロンが設置された可動装置(台車)の斜視図、(d)壁に設けられる給電装置を示した斜視図、(e),(f)可動装置(台車)の使用態様を示した斜視図。
【図8】第3の実施形態における(a),(b)可動装置(スライドボード)の移動態様を示した斜視図。
【図9】他の実施形態における両コイルL1,L2の位置関係及び構成を示した斜視図。
【図10】他の実施形態における高周波インバータ(2石ハーフブリッジ型部分共振型インバータ)等の具体的構成を示すブロック図。
【図11】他の実施形態における配置台が設けられた可動装置(引き戸)の斜視図。
【図12】他の実施形態における上下方向に移動する可動装置(スライドボード)の斜視図。
【図13】他の実施形態における上側のガイドレールによってスライド可能に吊り下げ支持される可動装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
以下、本発明の非接触給電システムを具体化した第1の実施形態を図1〜図6を参照しつつ説明する。
【0021】
図1に示すように、非接触給電システムは、給電装置10と、可動装置30とを備える。以下、非接触給電装置10及び可動装置30の電気的構成について説明する。
(給電装置)
非接触給電装置10は、高周波インバータ11と、1次コイルL1とを備える。
【0022】
高周波インバータ11は、商用電源からの電力を高周波電流に変換し、その高周波電流を1次コイルL1に供給する。詳しくは、図2に示すように、高周波インバータ11は、1石電圧共振型インバータで構成される。
【0023】
すなわち、高周波インバータ11は、1次側並列共振コンデンサC1と、平滑コンデンサC2と、全波整流回路12と、コンデンサCa、Cbと、ダイオードD1,D2と、抵抗R1〜R5と、FETQ1と、トランジスタTr1と、帰還巻線Laとを備える。
【0024】
全波整流回路12は、商用電源に並列接続されるとともに、回路に電流を供給可能に接続されている。この回路は、上流側の接続線A1と、下流側の接続線A2とを有する。両接続線A1,A2間には、3つの接続線A3〜A5が並列接続されている。接続線A3には平滑コンデンサC2が設けられ、接続線A4には、接続線A1側から順に抵抗R2及びコンデンサCaが直列で設けられている。
【0025】
また、1次側並列共振コンデンサC1は、1次コイルL1とともにLC共振回路を構成する。また、抵抗R1及びダイオードD1にて第1の並列回路を構成する。また、FETQ1及びダイオードD2にて第2の並列回路を構成する。接続線A5には、接続線A1側から順に、LC共振回路、第1の並列回路、第2の並列回路、及び抵抗R5が直列で設けられている。
【0026】
また、FETQ1のゲート端子と、接続線A4の抵抗R2及びコンデンサCa間には、帰還巻線La及び抵抗R3が直列接続されている。抵抗R3はFETQ1の損失を抑制するために設けられている。また、抵抗R3及びFETQ1のゲート端子間には、トランジスタTr1のコレクタ端子が接続されている。また、トランジスタTr1のエミッタ端子は接続線A2に接続されている。そして、トランジスタTr1のベース端子は抵抗R4の一端に接続されている。この抵抗R4の他端は抵抗R5及び上記第2の並列回路間に接続されている。さらに、トランジスタTr1のベース端子及び抵抗R4間と、接続線A2との間にはコンデンサCbが接続されている。
【0027】
商用電源からの交流電流は、全波整流回路12によって全波整流されて、さらに平滑コンデンサC2によって平滑化される。この平滑化された電流は抵抗R2を通してコンデンサCaに供給される。従って、コンデンサCaの電圧が上昇し、これに伴いFETQ1のゲート電圧が閾値以上となったときFETQ1がオン状態となる。そして、1次コイルL1には、接続線A1からの電流が流れる。これにより、1次コイルL1と磁気的に結合する帰還巻線Laに電圧が誘起されて帰還がかかり発振が始まる。
【0028】
1次コイルL1に流れる電流により、トランジスタTr1のベース端子に閾値以上の電圧が印加される。従って、コンデンサCaの電荷は、帰還巻線La、抵抗R3及びトランジスタTr1を通じて放電される。これにより、FETQ1のゲート電圧が閾値未満となってFETQ1がオフ状態となる。このように、FETQ1のゲート電圧は制御される。
【0029】
1次側並列共振コンデンサC1が設けられることで1次コイルL1は共振する。これにより、1次コイルL1の高周波電圧を昇圧できる。
(可動装置)
可動装置30は、複数の2次コイルL2と、2次コイルL2と同数の2次側並列共振コンデンサC3と、2次コイルL2と同数の整流回路31と、単一の電圧安定化回路32と、内蔵型給電装置33とを備える。
【0030】
2次コイルL2及び2次側並列共振コンデンサC3は並列接続されている。2次コイルL2は、1次コイルL1により発生する交番磁束を介して誘起電流を発生させる。2次側並列共振コンデンサC3を設けることで、2次コイルL2の出力電圧を昇圧させることや、定電圧とすることができる。
【0031】
整流回路31は、誘起電流を全波整流し、整流した電流を電圧安定化回路32に出力する。電圧安定化回路32は、整流回路31からの電圧を商用電源周波数の商用電圧と同一の電圧に変換し、その変換した電圧を電気機器40に供給する。電気機器40としては第1及び第2の電気機器40a,40bがある。これら電気機器40a,40bは可動装置30に対して着脱可能である。
【0032】
電圧安定化回路32にはコンセント39が接続されている。一方、第1の電気機器40aはプラグ36を有する。このプラグ36をコンセント39に接続することで、第1の電気機器40a及び電圧安定化回路32は導通状態となる。第1の電気機器40aとしては薄型TV、スピーカ、照明装置、及び扇風機等が想定される。
【0033】
内蔵型給電装置33は、第1の電気機器40aと同様に電圧安定化回路32に有線接続されている。すなわち、内蔵型給電装置33は電気機器でもある。
内蔵型給電装置33は、高周波インバータ38と、給電用コイルL3とを備える。高周波インバータ38は、電圧安定化回路32からの電流を高周波電流に変換し、その高周波電流を給電用コイルL3に供給する。これにより、給電用コイルL3から交番磁束が発生する。
【0034】
ここで、第2の電気機器40bとしては携帯端末が想定される。第2の電気機器40bは、受電用コイルL4と、整流回路31と、を備える。受電用コイルL4は、給電用コイルL3からの交番磁束に基づき電流を誘起する。整流回路31は誘起された電流を整流し、その整流した電流を携帯端末の2次電池(図示略)に充電する。
【0035】
次に、可動装置30及び非接触給電装置10の機械的構成について説明する。
図3(a)に示すように、本例では、可動装置30は、家庭内の部屋間を区切る引き戸として構成されている。引き戸は、例えば木材、ガラス、プラスチック又は壁材等からなる厚さ40mmの長方形の板状に形成される。
【0036】
図3(e),(f)に示すように、引き戸である可動装置30は、その上端及び下端がレール部46a,46bによって図中の左右方向にスライド可能に支持されている。ユーザは、部屋間を移動する際、取手44を通じて可動装置30を同図中の左右方向に開閉する。引き戸は、開かれた状態においては、図中の破線で示される戸袋43内に位置する。なお、引き戸は、レール部46a,46bからユーザによって着脱可能に構成される。
【0037】
また、可動装置30には、電気機器を設置可能な収納スペース41が形成されている。この収納スペース41は、ユーザ側に開口した矩形状の穴として設けられる。図3(a)に示す構成においては、収納スペース41が2行3列に計6つ設けられている。この収納スペース41は、可動装置30の厚さ方向からみて正方形である。また、図3(b)に示す構成においては、収納スペース41が上下に計2つ設けられている。この収納スペース41は、可動装置30の厚さ方向からみて左右方向に長い長方形である。
【0038】
図3(d)に示すように、収納スペース41には、電気機器40として薄型TV及び扇風機が設置される。その他の電気機器としては、例えば、デジタルフォトフレーム、LEDや有機ELを備える照明器具、携帯端末等様々なものが設置される。
【0039】
図3(a),(b)に示すように、収納スペース41内にはコンセント39が設けられている。コンセント39は収納スペース41に第1の電気機器40aが設置されたときに、第1の電気機器40aのプラグ36が挿入される。このプラグ36が挿入された状態において、図2に示されるように、第1の電気機器40aと電圧安定化回路32とが電気的に接続された状態となる。
【0040】
また、収納スペース41内には、内蔵型給電装置33が設けられている。携帯端末等の第2の電気機器40bが収納スペース41内に設置されると、内蔵型給電装置33から第2の電気機器40bに電磁誘導を通じた非接触の給電が可能となる。
【0041】
なお、各収納スペース41にコンセント39及び内蔵型給電装置33の何れか一方が設けられていてもよいし、各収納スペース41にコンセント39及び内蔵型給電装置33の両方が設けられていてもよい。
【0042】
図3(a)の破線で示すように、可動装置30における上端には、左右方向に沿って2次コイルL2が配列されている。
また、図3(a)の右下の収納スペース41部分に示すように、収納スペース41に電気機器40が設置されない場合には、収納スペース41に応じた外形を有する意匠部材45が嵌め込まれてもよい。意匠部材45を収納スペース41に嵌め込むことで、外観からは普通の引き戸に見える。特に、意匠部材45を板状に形成することで、収納スペース41に電気機器40を設置した状態で、その電気機器40を外から隠すことができる。
【0043】
図3(e),(f)に示すように、レール部46aの上側の壁には、非接触給電装置10が内蔵されている。この非接触給電装置10は外付けすることも可能である。本例では、非接触給電装置10は、可動装置30が閉状態にあるときの右上角部に対応する位置と、可動装置30が開状態にあるときの右上角部に対応する位置とに計2つ設けられている。
【0044】
次に、1次コイルL1及び2次コイルL2の具体的な構成について図4(a),(b)を参照しつつ説明する。本例では、両コイルL1,L2は、方形の平面コイルであるとともに、平板状のコア37に重ねられている。可動装置30の開閉に伴い、固定的に設置される1次コイルL1に対して複数(本例では4つ)の2次コイルL2は変位する。
【0045】
同図に示すように、1次コイルL1の横幅が長さAであって、2次コイルL2の幅が長さCであるとする。そして、互いに隣接する2次コイルL2間の距離を長さBとする。この場合、A≧B+2Cの条件を満たすように両コイルL1,L2のサイズや位置関係が設定される。
【0046】
この条件を満たすことで、可動装置30の位置に関わらず、何れかの2次コイルL2を1次コイルL1に対面させること、ひいては、1次コイルL1から2次コイルL2に給電することが可能となる。
【0047】
図5(a)〜(c)には、上記条件を満たした構成において、2次コイルL2がn個設けられる場合の可動装置30の可動距離Xを示す。この可動距離は、何れかの2次コイルL2が1次コイルL1に対面して給電が可能な範囲をいう。可動距離Xは、「X=(A−C)×n」の式から求められる。本例では、A=10cm、B=8cm、C=1cmに設定される。
【0048】
図5(a)に示すように、2次コイルL2が2個の場合には、可動装置30の可動距離は18cmである。図5(b)に示すように、2次コイルL2が3個の場合には、可動装置30の可動距離は27cmである。また、図5(c)に示すように、2次コイルL2が4個の場合には、可動装置30の可動距離は36cmである。逆に、約1mの可動距離を得るためには11個の2次コイルL2が必要となる。
【0049】
図6には、上記図2とは異なる可動装置30の配置例が示されている。
本例では、一対の可動装置30a,30b(引き戸)は、引き戸枠47に左右方向にスライド可能に嵌め込まれている。左右方向に延びる引き戸枠47の中央において、可動装置30aの右端面と可動装置30bの左端面とが接した状態にあるとき、可動装置30a,30bによって部屋が仕切られた閉状態となる。この状態から両可動装置30a,30bを互いに離間する開方向に移動させることで、人等が部屋間を移動可能な開状態となる。
【0050】
可動装置30aにおいては、収納スペース41が計3つ設けられている。すなわち、上側に比較的大きい収納スペース41が1つ設けられ、その収納スペース41の下側に左右方向に並ぶ比較的小さい収納スペース41が2つ設けられている。大きい収納スペース41には第1の電気機器40aである薄型TVが設置され、小さい収納スペース41には第1の電気機器40aである左右のスピーカが設置される。薄型TV及び両スピーカは、プラグ36及びコンセント39を通じて電圧安定化回路32に接続されている。
【0051】
可動装置30bにおいては、小さい収納スペース41が3行2列で計6つ設けられている。これら収納スペース41には、第2の電気機器40bである携帯端末と、第1の電気機器40aである照明器具及びデジタルフォトフレームとが設置されている。これら電気機器は、プラグ36及びコンセント39を通じて電圧安定化回路32に接続されていてもよいし、内蔵型給電装置33を通じて非接触で可動装置30bから電力が供給されてもよい。特に、携帯端末の場合には頻繁に充電することから、内蔵型給電装置33を通じて非接触で充電可能とすることで、充電毎にプラグを挿し込む手間が省ける。
【0052】
非接触給電装置10(1次コイルL1)は、引き戸枠47の右上角部付近と、左上角部付近とに2つ設けられる。そして、2次コイルL2は、各可動装置30a,30bの上端に沿って配置される。1次コイルL1及び2次コイルL2の関係は、図4を参照しつつ説明した上記条件(A≧B+2C)を満たすように設定されている。
【0053】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)可動装置30における収納スペース41に薄型TVやフォトフレームなどの好みの電気機器を設置した状態で、その電気機器を動作させることが可能となる。よって、可動装置30に設置される電気機器の選択の自由度を向上させることができる。
【0054】
また、引き戸(可動装置30)はスライド移動可能であるため、引き戸、ひいては電気機器の位置をユーザの好みに合わせて変更可能である。よって、利便性の高い非接触給電システムを提供することができる。
【0055】
(2)引き戸(可動装置30)は同じ外形のものを内部の仕様(収納スペース41の数、大きさ等)を変えた複数種類を準備できる。また、ユーザは、自身で可動装置30をレール部46a,46bから取り外すことができるので、季節や自分の好みに合わせて可動装置30を取り替えることができる。
【0056】
(3)1次コイルL1及び2次コイルL2にそれぞれ並列に共振コンデンサC1,C3が設けられている。このため、1次コイルL1側の高周波電圧を昇圧でき、同様に2次コイルL2側の出力電圧を昇圧することや定電圧とすることができる。また、1次コイルL1及び2次コイルL2間の磁気結合度が小さくても高効率で電力伝送できる。
【0057】
(4)1次コイルL1における、可動装置30の移動方向に対応する長さをAとし、2次コイルL2の当該移動方向の長さをCとし、各2次コイルL2の間隔の長さをBとする。この場合、A>B+2Cの条件を満たすように、両コイルL1,L2の形状及び位置関係は設定されている。この条件を満たす範囲において、2次コイルL2の数を最小限とすることで、可動装置30の位置に関わらず両コイルL1,L2を対応させることを可能としつつ、より簡易に可動装置30を構成できる。従って、可動装置30の移動距離に沿ってコイルを敷き詰める従来の構成に比べて、小型化、省施工及び低コストを実現することができる。
【0058】
(5)可動装置30は必要に合わせて取り替え可能に構成されている。従って、例えば、収納スペース41に照明器具が設置されている場合において、照明が必要ないときには、その可動装置30を取り外し、普通の引き戸に取り替えることもできる。
【0059】
また、電気機器の収納形態(収納スペース41の数、大きさ)が異なる複数の仕様の可動装置30を用意しておけば、TV用、ステレオ用、照明用、送風用等の目的に合わせて可動装置30を適宜取り替えることができる。このため、自分の生活スタイルにあった利用ができて便利である。また、可動装置30はユーザによって着脱かつ持ち運び可能であるため、専門の業者に頼ることなく、ユーザが交換作業を行うことができる。
【0060】
(6)電圧安定化回路32は、整流回路31からの電圧を商用電源周波数の商用電圧と同一の電圧に変換する。従って、一般に市販されている電気機器をそのまま可動装置30に設置して使用できる。
【0061】
(7)高周波インバータ11は共振型であるので、インバータ効率、ひいてはシステム効率が向上する。また、高周波インバータ11は1次コイルL1との共振回路も兼ねることができるため、回路を簡易に構成すること、ひいては低コスト化が図れる。
【0062】
さらには、高周波インバータ11は1石電圧共振型であるので、フルブリッジ型やハーフブリッジ型に比べて簡易に構成すること、ひいては低コスト化が図れる。
(8)電圧安定化回路32には内蔵型給電装置33が接続されている。この内蔵型給電装置33を通じて、収納スペース41に設置される携帯端末等に非接触で給電することができる。このため、収納スペース41に携帯端末等を設置するだけで、携帯端末等の充電が可能となるため、利便性を向上させることができる。
【0063】
(9)1次コイルL1及び2次コイルL2にはコア37が設けられている。このため、両コイルL1,L2間の磁気結合度が向上し、コイルの小型化と高効率化が図れる。
(10)既存のレール部46a,46b又は引き戸枠47に嵌め込まれている通常の引き戸を可動装置30に取り替えるだけで、簡単に電気機器に電力供給可能な引き戸を実現することができる。また、既存のレール部46a,46bを利用できるため、非接触給電システムのために新たにレール部46a,46b等を設ける必要がない。
【0064】
(11)意匠部材45を収納スペース41に嵌め込むことで、外観からは普通の引き戸に見える。これにより、可動装置30の意匠性を向上させることができる。この意匠部材45の色は、可動装置30と同色であってもよいし、可動装置30と異なる色のアクセントとして使用してもよい。
【0065】
さらに意匠部材45を板状に形成することで、収納スペース41に電気機器40を設置した状態で、その電気機器40を外から隠すことができる。これにより、例えば、扇風機を使用しない期間においては意匠部材45を収納スペース41に嵌め込むことで、外観から煩雑な印象を与えることを抑制できる。
【0066】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について、図7を参照して説明する。この実施形態の非接触給電システムは、可動装置が台車であること、及び給電装置の位置が上記第1の実施形態と異なっている点を除き、上記第1の実施形態とほぼ同様に構成される。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0067】
図7(a)に示すように、可動装置50は、四角柱状の台部51と、その台部51の下面に装着される4つの車輪52とを備えた台車として構成される。台部51の背面には、その長手方向に沿って2次コイルL2が配列されている。
【0068】
図7(b),(c)に示すように、台部51の上面には、電気機器40としてTVやアイロン等が設置される。可動装置50から電気機器40への給電方法は、上記第1の実施形態と同様に、可動装置50に設けられるコンセントに電気機器40のプラグが挿し込まれる構成であってもよいし、可動装置50に設けられる内蔵型給電装置33を通じて非接触で給電されてもよい。
【0069】
また、図7(d)に示すように、壁における低い位置(一般的にコンセントが配設される位置)には非接触給電装置10が設けられる。この非接触給電装置10は壁に内蔵されていてもよいし、外付けされていてもよい。
【0070】
上記構成において、TVが設置された可動装置50を車輪52を通じて移動させる。このとき、図7(e)に示すように、一の非接触給電装置10が設けられている位置から、他の非接触給電装置10が設けられている位置に可動装置50を移動させる。これらの状態においては、両コイルL1,L2が対向した状態にあるため、非接触給電装置10から可動装置50を通じてTVへの給電が可能となる。
【0071】
図7(f)に示すように、アイロンが可動装置50に載せられている場合には、アイロンがけをするときのみ、可動装置50を出してきて、その日の好みや状況に合わせて適当な非接触給電装置10に近づける。これにより、アイロンに電力を供給することが可能となる。この構成においては、例えば、可動装置50の上面をアイロン台とすることで、利便性を向上させることができる。
【0072】
以上、説明した実施形態によれば、特に以下の効果を奏することができる。
(12)電気機器を載せた状態で可動装置50を移動させて、両コイルL1,L2を対向した状態とすることで電気機器への給電が可能となる。このように、プラグ等の配線接続を行うことなく、容易に電気機器の位置を変更することができる。
【0073】
(13)可動装置50(台車)に載せることが可能であれば、比較的サイズの大きい電気機器に対しても給電することができる。
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について、図8を参照して説明する。この実施形態の非接触給電システムは、可動装置がスライドボードである点を除き、上記第1の実施形態とほぼ同様に構成される。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0074】
図8(a)に示すように、可動装置60は、スライドボードとして形成されている。この可動装置60にも、収納スペース62が形成されている。この収納スペース62には、例えば電気機器40として壁掛けTVが嵌め込まれる。この壁掛けTVは、収納スペース62から着脱可能である。
【0075】
壁には、左右方向に延出する凹状のガイドレール61が固定的に取り付けられる。ガイドレール61は、ねじ又は接着材等で壁に固定される。ガイドレール61は、互いに開口側が向き合う態様で一対設けられている。そして、そのガイドレール61間には可動装置60(スライドボード)が嵌め込まれる。この可動装置60は、上下の両端が各ガイドレール61の内面に摺動しつつ、ガイドレール61の延出方向にスライドする。可動装置60の上端には、左右方向に沿って2次コイルL2が配列されている。また、上側のガイドレール61の上方の壁には非接触給電装置10が内蔵又は外付けされている。本例では、非接触給電装置10は、ガイドレール61の全域に亘って等間隔で4つ配列されている。両コイルL1,L2の形状及び位置関係については、上記図4を参照しつつ説明した第1の実施形態と同様に設定される。上記構成によれば、図8(b)に示すように、可動装置60を手動でガイドレール61に沿って移動させることができる。
【0076】
以上、説明した実施形態によれば、特に以下の効果を奏することができる。
(14)可動装置60を、壁に取り付けられるガイドレール61に沿って移動させることで、電気機器40(例えばTV)を好みの位置に簡単に移動させることができる。従って、利便性を向上させることができる。
【0077】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・第1の実施形態においては、可動装置30は引き戸であったが引き戸と同様に往復移動する開閉体であれば、引き戸に限らず、窓ガラス、障子、ふすま、間仕切り壁、什器のスライド扉であってもよい。
【0078】
・第1の実施形態においては、非接触給電装置10は2つ設けられていた。しかし、非接触給電装置10の数は単数又は3つ以上であってもよい。単数の場合には、可動装置30の開閉に伴う移動距離を制限することで、可動装置30の位置に関わらず、非接触給電装置10から可動装置30に給電することが可能となる。
【0079】
・上記各実施形態においては、両コイルL1,L2は方形の平面コイルであるとともに、平板状のコア37に重ねられていたが、コイル及びコアはこの構成に限らない。例えば、図9に示すように、磁性体のコア64をコの字型とし、その両端部にコイルL1,L2を巻いて構成されていてもよい。また、Eの字型のコアやコアレスのコイルであってもよい。この場合であっても、1次コイルL1及び2次コイルL2の関係は、図4を参照しつつ説明した上記条件(A≧B+2C)を満たすように設定されている。
【0080】
・上記各実施形態においては、高周波インバータ11は1石電圧共振型インバータで構成されていた。しかし、高周波インバータ11は、1石電圧共振型インバータに限らず、図10に示すように、2石ハーフブリッジ型部分共振型インバータであってもよい。同図に示すように、当該インバータは、全波整流回路12と、平滑コンデンサC2と、一対のFETQ2,Q3と、寄生ダイオードD3,D4と、コンデンサC4〜C7とを備える。
【0081】
コンデンサC4は、1次側直列共振コンデンサであって1次コイルL1に直列接続されている。上流側の接続線A11と、下流側の接続線A12との間には1対の接続線A13,A14が接続される。接続線A13には、接続線A11側から順にFETQ2,Q3が設けられている。FETQ2,Q3には、それぞれ寄生ダイオードD3,D4が並列接続されている。また、接続線A14には、接続線A11側から順にコンデンサC5,C6が設けられている。また、接続線A13におけるFETQ2,Q3間と、接続線A14におけるコンデンサC5,C6間との間には1次コイルL1及びコンデンサC4が直列接続されている。また、1次コイルL1及びコンデンサC4に対してコンデンサC7が並列接続されている。
【0082】
上記構成において、FETQ2をオン状態として、FETQ3をオフ状態とすると、全波整流回路12からの電流はFETQ2を介して1次コイルL1に流れる。この状態から逆にFETQ2をオフ状態として、FETQ3をオン状態とすると、1次コイルL1に逆方向の電流(逆起電流)が流れる。このように、FETQ2,Q3を交互にオン状態とすることで1次コイルL1は発振する。1次側直列共振コンデンサであるコンデンサC4が直列接続されることで1次コイルL1は共振する。これにより、1次コイルの高周波電圧を昇圧できる。
【0083】
本構成においては、2次コイルL2に2次側直列共振コンデンサC8が直列接続される。この2次側直列共振コンデンサC8を設けることで、2次コイルL2の出力電圧を昇圧させることや、定電圧とすることができる。
【0084】
・上記各実施形態においては、意匠部材45は収納スペース41に嵌め込むものであったが、シャッターやロールカーテンのように予め可動装置に取り付けられていてもよい。本構成においては、意匠部材45を引き出すことで簡単に収納スペース41を隠すことができる。また、意匠部材45を紛失するおそれがない。
【0085】
・第1の実施形態においては、収納スペース41はユーザ側に開口した穴として形成されていた。しかし、収納スペース41は、可動装置30(引き戸)の厚さ方向に貫通していてもよい。この構成においては、収納スペース41に位置する電気機器を可動装置30の両側から使用可能である。すなわち、可動装置30が部屋の間仕切りとして使用されている場合、両部屋から電気機器の使用が可能となる。
【0086】
また、収納スペース41の底面を、ガラス、プラスチック、又は木材等で形成してもよい。これにより、引き戸としての意匠性が向上する。また、収納スペース41におけるコンセント39及び内蔵型給電装置33の位置を適宜変更してもよい。
【0087】
・第2の実施形態においては、可動装置50は台車であったが、台車と同様に車輪52が取り付けられている家具であれば、これに限らず、車輪付きの収納家具であってもよい。
【0088】
・第2の実施形態においては、壁に非接触給電装置10が設けられていたが、非接触給電装置10を床に設けてもよい。
・第1の実施形態においては、可動装置30の収納スペース41に電気機器40が設置されていた。しかし、この構成に限らず、図11に示すように、可動装置70に配置台71を取り付け、この配置台71に電気機器40を設置してもよい。配置台71は、可動装置70の面に対して直交するように、半円板状に形成されている。この配置台71の数、形状又はサイズは、設置される電気機器40に応じて変更可能である。例えば、配置台を装着可能に可動装置30に穴が形成されていてもよい。本構成における可動装置70から電気機器40への給電方法は、上記第1の実施形態と同様に、可動装置70に設けられるコンセントに電気機器40のプラグが挿し込まれる構成であってもよいし、可動装置70に設けられる内蔵型給電装置33を通じて非接触で給電される構成であってもよい。本構成によれば、比較的サイズの大きい電気機器40に対しても給電することができる。
【0089】
・第3の実施形態においては、ガイドレール61は左右方向に延出していた。しかし、図12に示すように、ガイドレール61を上下方向に延出させてもよい。この場合、可動装置30を高さ方向にスライドさせて、例えばユーザの好みの高さでTVを見ることができる。
【0090】
また、ガイドレール61を部屋間に亘って設けてもよい。これにより、2つの部屋で電気機器40を共有することが可能となる。
さらに、図13に示すように、上側のガイドレール65のみ設けてもよい。可動装置60は、そのガイドレール65に吊り下げられた状態でスライド可能に支持される。本例では、3つの可動装置60が設けられ、中央の可動装置60がTVであって、その左右の可動装置60がスピーカである。それぞれの可動装置60の位置を調整することで好みの音響状態を実現することができる。また、天井空間を有効に活用できる。
【0091】
また、この構成を窓ガラスに適用した場合には、その透明性を利用して、窓ガラスに供給された電力で例えば液晶シャッター機能を備えることができる。また、透明電極と組み合わせて有機EL照明器具や有機ELディスプレイなどの、照明や表示装置を窓ガラス内に設けることができる。
【0092】
また、ガイドレール61,65は、天井又は床に配置されていてもよい。また、可動装置は、カーテンや、シャッターなど形状がフレキシブルな構造物に取り付けられてもよい。これにより、家庭内において可動装置60を適用できる場所が広がる。
【0093】
・第3の実施形態及び図13の構成において、可動装置60がガイドレール61,65に沿って自動で動く構成であってもよい。この場合には、ユーザの操作により、モータ等の駆動力を通じて可動装置60をガイドレール61,65に沿って移動可能となる。この場合には、手動で動かす必要がないため利便性が高い。特に、可動装置60がユーザの手が届かないほどに高い位置にあっても、手元の操作手段(リモートコントローラ)を通じて、可動装置60を動かすことができる。
【0094】
・第1の実施形態においては、可動装置30は引き戸であったが中心軸を中心に回動する開き戸として構成してもよい。この場合、開き戸が閉じた状態においてのみ、電気機器に電力の供給が可能となる。また、開き戸が完全に開いた状態にあるときに、両コイルL1,L2が対応するように構成してもよい。
【0095】
また、レール部を円弧状に形成し、可動装置60もその円弧に合わせた曲率で曲面状に形成してもよい。
・上記各実施形態においては、非接触給電装置10から可動装置30,50,60に電磁誘導を利用して給電を行っていたが、給電方式はこれに限らず、例えば、磁気共鳴を利用して給電を行ってもよい。また、電界や電磁波を利用する給電方式であってもよい。
【0096】
さらに、金属異物検知機能、認証機能、磁界や電界のシールド、回路等の熱放散のための放熱機構、さらにノイズ対策回路、間欠的なコイル励磁等による省エネルギ待機など、通常の非接触給電システムに共通の技術や機構、構造などを組み込んでもよい。
【0097】
・第1の実施形態においては、引き戸である可動装置30に収納スペース41が形成されていた。しかし、第2の実施形態における台車に収納スペース41を形成してもよい。これにより、台部51のデッドスペースを有効に活用できる。
【0098】
・上記各実施形態においては、複数の整流回路31に対して単一の電圧安定化回路32が設けられていたが、整流回路31毎に電圧安定化回路32を設けてもよい。
・上記各実施形態においては、電圧安定化回路32は、整流回路31からの電圧を商用電圧と同一の電圧に変換していた。しかし、電圧安定化回路32は、電圧を商用電圧と異なる電圧に変換してもよい。この場合には、変圧器等が別に必要となる。
【0099】
・上記実施形態における可動装置30,50,60は屋内に限らず、屋外において使用されてもよい。
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
【0100】
(イ)請求項1〜14の何れか一項に記載の非接触給電システムにおいて、前記1次コイル及び前記2次コイルの少なくとも何れか一方に磁性体のコアが設けられることを特徴とする非接触給電システム。
【0101】
同構成によれば、コアが設けられることで両コイル間の磁気結合度が向上し、コイルの小型化と高効率化が図れる。
(ロ)請求項1又は2に記載の非接触給電システムにおいて、前記可動装置は、フレキシブルな構造物に取り付けられることを特徴とする非接触給電システム。
【0102】
同構成によれば、可動装置は、カーテンやシャッターなど形状がフレキシブルな構造物に取り付けられる。このため、さらに家庭内において応用できる場所が広がる。
【符号の説明】
【0103】
10…非接触給電装置、11,38…高周波インバータ、30,30a,30b,50,60,70…可動装置、31…整流回路、32…電圧安定化回路、40,40a,40b…電気機器、41,62…収納スペース、61,65…ガイドレール、71…配置台、L1…1次コイル、L2…2次コイル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電流が供給されることで交番磁束を発生させる1次コイルを有する給電装置と、
前記交番磁束を介して誘起電圧を発生させる2次コイルを有する可動装置と、を備えた非接触給電システムにおいて、
前記給電装置は固定的に設置され、
前記可動装置は、前記給電装置に対して移動可能に構成されるとともに、ユーザによって選択された電気機器が着脱可能に構成され、装着された前記電気機器に前記2次コイルを通じて受電した電力を供給可能に構成されることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触給電システムにおいて、
前記可動装置は、一定範囲をスライド可能にガイドレールに保持され、
前記給電装置は前記可動装置の可動範囲に対応する位置に設けられることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の非接触給電システムにおいて、
前記可動装置には前記電気機器を収納する収納スペースが形成されることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の非接触給電システムにおいて、
前記可動装置には、前記電気機器を設置可能な配置台が形成されることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の非接触給電システムにおいて、
前記1次コイル又は前記2次コイルには、共振コンデンサが直列又は並列に設けられることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の非接触給電システムにおいて、
前記2次コイルは、前記可動装置の移動方向に沿って複数配置されるとともに、
前記1次コイルにおける前記可動装置の移動方向に対応する長さをA、前記2次コイルの前記移動方向の長さをC、前記2次コイルの間隔をBとした場合にA>B+2Cを満たすようにA、B及びCが設定されることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項7】
請求項2に記載の非接触給電システムにおいて、
前記可動装置は一つ又は複数の仕様を持ち、
前記可動装置は前記ガイドレールから着脱可能に構成されることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項8】
請求項2又は7に記載の非接触給電システムにおいて、
前記可動装置は、閉じた状態で2つの空間を仕切るとともに、開いた状態で物体の通り抜けを可能とする開閉体であることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項9】
請求項2、7又は8に記載の非接触給電システムにおいて、
前記ガイドレールは壁、天井又は床に設けられることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項10】
請求項1に記載の非接触給電システムにおいて、
前記可動装置は台車であることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載の非接触給電システムにおいて、
前記2次コイルの出力を整流する整流回路と、
前記整流回路からの電圧を商用電圧と同一の電圧に変換して、その変換した電圧を前記電気機器に供給する単数又は複数の電圧安定化回路と、を備えたことを特徴とする非接触給電システム。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一項に記載の非接触給電システムにおいて、
前記1次コイルに供給される前記高周波電流を生成する高周波インバータを備え、
前記高周波インバータは共振型であることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項13】
請求項12に記載の非接触給電システムにおいて、
前記高周波インバータは1石電圧共振型であることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか一項に記載の非接触給電システムにおいて、
前記電気機器は、他の電気機器に非接触で電力を供給する非接触給電装置であることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項1】
高周波電流が供給されることで交番磁束を発生させる1次コイルを有する給電装置と、
前記交番磁束を介して誘起電圧を発生させる2次コイルを有する可動装置と、を備えた非接触給電システムにおいて、
前記給電装置は固定的に設置され、
前記可動装置は、前記給電装置に対して移動可能に構成されるとともに、ユーザによって選択された電気機器が着脱可能に構成され、装着された前記電気機器に前記2次コイルを通じて受電した電力を供給可能に構成されることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触給電システムにおいて、
前記可動装置は、一定範囲をスライド可能にガイドレールに保持され、
前記給電装置は前記可動装置の可動範囲に対応する位置に設けられることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の非接触給電システムにおいて、
前記可動装置には前記電気機器を収納する収納スペースが形成されることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の非接触給電システムにおいて、
前記可動装置には、前記電気機器を設置可能な配置台が形成されることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の非接触給電システムにおいて、
前記1次コイル又は前記2次コイルには、共振コンデンサが直列又は並列に設けられることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の非接触給電システムにおいて、
前記2次コイルは、前記可動装置の移動方向に沿って複数配置されるとともに、
前記1次コイルにおける前記可動装置の移動方向に対応する長さをA、前記2次コイルの前記移動方向の長さをC、前記2次コイルの間隔をBとした場合にA>B+2Cを満たすようにA、B及びCが設定されることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項7】
請求項2に記載の非接触給電システムにおいて、
前記可動装置は一つ又は複数の仕様を持ち、
前記可動装置は前記ガイドレールから着脱可能に構成されることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項8】
請求項2又は7に記載の非接触給電システムにおいて、
前記可動装置は、閉じた状態で2つの空間を仕切るとともに、開いた状態で物体の通り抜けを可能とする開閉体であることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項9】
請求項2、7又は8に記載の非接触給電システムにおいて、
前記ガイドレールは壁、天井又は床に設けられることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項10】
請求項1に記載の非接触給電システムにおいて、
前記可動装置は台車であることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載の非接触給電システムにおいて、
前記2次コイルの出力を整流する整流回路と、
前記整流回路からの電圧を商用電圧と同一の電圧に変換して、その変換した電圧を前記電気機器に供給する単数又は複数の電圧安定化回路と、を備えたことを特徴とする非接触給電システム。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一項に記載の非接触給電システムにおいて、
前記1次コイルに供給される前記高周波電流を生成する高周波インバータを備え、
前記高周波インバータは共振型であることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項13】
請求項12に記載の非接触給電システムにおいて、
前記高周波インバータは1石電圧共振型であることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか一項に記載の非接触給電システムにおいて、
前記電気機器は、他の電気機器に非接触で電力を供給する非接触給電装置であることを特徴とする非接触給電システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−70477(P2013−70477A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206030(P2011−206030)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
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