説明

非接触給電用コイル装置

【課題】磁気遮蔽板の磁気遮蔽効果を損なわずに、コイル巻線のリード線の引出し距離を短縮できる非接触給電用コイル装置を提供する。
【解決手段】H型コア301を有するコイル本体と、コイル本体を収容する樹脂製のケース本体101と、ケース本体が固定される磁気遮蔽用の非磁性導電体板200とを備え、ケース本体101は、コイル本体の平行な磁極部302、303の間隔を二等分する中央線に近接して配置されたケース貫通孔103を有し、非磁性導電体板200は、ケース貫通孔103に重なる連通貫通孔201を有し、コイル本体に巻回された電線のリード線が、ケース貫通孔103及び連通貫通孔201に挿通されて導出される。H型コアを備えるコイルの漏洩磁束分布は、磁極と磁極との中間部分において少ないため、この部分にリード線を通すための貫通孔を設けても、非磁性導電体板の磁気遮蔽効果は損なわれない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車などの移動体に非接触で給電する非接触給電用コイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触給電装置は、送電コイル(一次コイル)と受電コイル(二次コイル)との間の電磁誘導を利用して送電コイルから受電コイルに電力を供給する。この非接触給電装置は、電気自動車やプラグインハイブリッド車に搭載された二次電池を充電するための給電装置として、利用の拡大が見込まれている。
図18は、非接触給電装置を用いたプラグインハイブリッド車の給電システムを示している。エンジン54とモータ53とを駆動源として搭載する車両は、モータ53用の電源である二次電池51と、二次電池51の直流を交流に変換してモータ53に供給するインバータ52と、非接触給電トランス30を通じて給電された交流を整流して二次電池51に供給する整流器40と、非接触給電トランス30を構成する受電コイル33及び二次側コンデンサ(受電コイル33と並列接続する共振コンデンサ)34とを備えており、受電コイル33は、車体の床面の外側に設置される。
一方、給電ステーション側(地上側)は、商用周波数の交流を直流に変換する整流器10と、直流から高周波交流を生成するインバータ20と、非接触給電トランス30を構成する送電コイル31及び一次側コンデンサ32とを備えており、運転者は、受電コイル33が送電コイル31の真上に来るように車両を停止させて、二次電池51への給電を開始する。
【0003】
この非接触給電装置では、送電コイル31に対して受電コイル33の位置が前後・左右にずれると、受電効率が低下する。しかし、受電コイル33が送電コイル31に正対するように車両を停めるには相当の運転技術が要求される。そのため、実際のシステムでは、送電コイル31及び受電コイル33の面積を拡げて給電位置の許容範囲を設定し、その許容範囲内に車を停めれば、受電コイル33と送電コイル31との間に所要の対向面積が確保でき、受電効率を落とさずに給電できるように構成されている。
しかしながら、車両にとって、大きくて重い受電コイル33を搭載することは、負担になる。
【0004】
車両用の非接触給電装置のコイルには、下記特許文献1に記載された、フラットなフェライトコアの片面に渦巻き状に電線を巻いて配置したコイル(片側巻コイル)と、下記特許文献2に記載された、コアの回りに電線を巻回したコイル(両側巻コイル)とが知られているが、コイル間の位置ずれに対しては、両側巻コイルの方が、小さな形状で対応できる利点があり、受電コイルの小型化が両側巻コイルによって可能になる。
【0005】
本発明者等は、先に、図19に示すように、小型化できるとともに、コア材量を減らして軽量化できるH字形状のコア80(H型コア)を提案している(特願2009−199425)。このH型コアの場合、Hの字の横棒部分83に電線(複数の絶縁被覆した細線を撚り合わせた高周波用のリッツ線)50が巻回され、平行する縦棒部分81、82が、磁束の出入する磁極部となる。
送電コイル31及び受電コイル33がH型コアにリッツ線を巻回した両側巻コイルから成る非接触給電トランスでは、図20に示すように、主磁束35が、送電コイル31のH型コアの磁極部3181から受電コイル33のH型コアの磁極部3381に進入し、リッツ線50が巻回されたコア中を通り、他方の磁極部3382から送電コイル31のH型コアの磁極部3182に進入し、リッツ線50が巻回されたコア中を通って磁極部3181に達するように巡回する。そして、次の瞬間には逆ルートで巡回し、これを交互に繰り返す。
【0006】
この両側巻コイルを用いる非接触給電トランスでは、片側巻コイルのようにコイルの非対向面側を覆うコア部材が無いため、コイルの非対向面側に迂回する漏洩磁束36、37が生じる。この漏洩磁束36が車体の床の鉄板に侵入すると、誘導電流が流れて鉄板が加熱され、給電効率が大幅に低下する。そのため、両側巻コイルを用いる非接触給電トランスでは、コイルの背面にアルミ板65、66等の非磁性の良導電体を配置して、漏洩磁束36を磁気遮蔽する必要がある。
受電コイル33の背面に設けるアルミ板66の面積は、受電コイル33が位置ずれの許容範囲内のどこに位置しても、送電コイル31の略全域がアルミ板66の下方に位置する大きさに設定することが望ましい。そのため、アルミ板66の面積は、受電コイル33の平面形状の面積に比べて可なり大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−87733号公報
【特許文献2】特開2010−172084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この非接触給電装置では、車体床面の外側に設置した受電コイル33の巻線のリード線(高周波用のリッツ線)を車内に引き込んで、二次側並列共振コンデンサ34や整流器40と電気的に接続する必要があるが、リード線を車内に引き込む際に、受電コイル33の背面側(床面側)に置かれた磁気遮蔽板(アルミ板)66が邪魔になる。
受電コイルのリード線をアルミ板の端まで延ばし、アルミ板を迂回してリード線を車内に引き込む場合は、高価なリッツ線の全長が長くなり、重量やコストが増加し、固有抵抗による熱損失が増大する。また、受電コイル33で受電する交流は数十kHzの高周波であるため、高周波ノイズの発生などの問題が生じる。
そうかと言って、コイル巻線のリード線の引出し距離を短縮するためにアルミ板に孔を開けてリード線を通した場合は、その孔から漏れた漏洩磁束が車体の床鉄板に侵入し、床鉄板の加熱や給電効率の低下等が生じる虞がある。
また、車内に配置する二次側並列共振コンデンサ34や整流器40が分散している場合も、それらを接続する配線の全長が長くなり、そのため、車内に占める非接触給電装置の体積や重量が増大し、高周波ノイズの発生やコストの上昇などが問題になる。
【0009】
本発明は、こうした事情を考慮して創案したものであり、配線の距離を短縮して、コンパクトに構成できる非接触給電用コイル装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、H字状のコアを有し、このコアの平行するコア部分が磁極部を構成し、各磁極部の中間部位を接続するコア部分に電線が巻回されたコイル本体と、コイル本体を収容する樹脂製のケース本体と、ケース本体が固定された磁気遮蔽用の非磁性導電体板と、を備える非接触給電用コイル装置であって、ケース本体が固定された非磁性導電体板の面の反対側の面に、コイル本体のコイルに並列接続する共振コンデンサ及び整流回路が収容された筐体を配置したことを特徴とする。
この非接触給電用コイル装置では、磁気遮蔽用の非磁性導電体板を挟んで、コイル本体と、並列共振コンデンサ及び整流回路とが一体化して配置されており、短い配線でコンパクトに構成することができる。
【0011】
また、本発明の非接触給電用コイル装置では、非磁性導電体板の一方の面に並列共振コンデンサ及び整流回路と共に充電回路を一体化配置しても良い。
【0012】
また、本発明の非接触給電用コイル装置では、コイル本体を収容したケース本体が、コイル本体の平行な磁極部の間隔を二等分する中央線に近接して配置されたケース貫通孔を有し、非磁性導電体板が、ケース貫通孔に重なる連通貫通孔を有し、コイル本体に巻回された電線のリード線が、ケース貫通孔及び連通貫通孔に挿通されて筐体内に導出され、共振コンデンサ及び整流回路に電気接続されることを特徴とする。
H型コアを備えるコイルの漏洩磁束分布は、磁極と磁極との中間部分において少ないため、この部分にリード線を通すための貫通孔を設けても、非磁性導電体板の磁気遮蔽効果は損なわれない。
【0013】
また、本発明の非接触給電用コイル装置では、ケース本体のケース貫通孔を、中央線を間に挟んで対を成すように配置し、コイル本体に巻回された電線の一端に接続するリード線とこの電線の他端に接続するリード線とを、対を成すケース貫通孔のそれぞれに挿通する。
ケース貫通孔を中央線の両側に配置することで、コイル本体から最外側のケース貫通孔までの距離を短くでき、ケース本体をコンパクト化できる。
【0014】
また、本発明の非接触給電用コイル装置では、ケース貫通孔に重なる非磁性導電体板の対を成す連通貫通孔を、スリットで繋ぐことが望ましい。
連通貫通孔の対を繋ぐスリットは、非磁性導電体板に発生する渦電流を遮断する。
【0015】
また、本発明の非接触給電用コイル装置では、コイル本体に複数の本数の電線を並列に巻回する場合に、ケース本体の中央線を間に挟んで配置するケース貫通孔の対の数を、電線の本数に対応させる。
【0016】
また、本発明の非接触給電用コイル装置では、この場合に、ケース本体の中央線を間に挟んで配置する複数対のケース貫通孔を、中央線の両側に複数列配置するようにしても良い。
こうすることで、複数対のケース貫通孔をケース本体に設ける場合でも、コイル本体から最外側のケース貫通孔までの距離を短くでき、ケース本体をコンパクト化できる。
【0017】
また、本発明の非接触給電用コイル装置では、非磁性導電体板の面積を、ケース本体の非磁性導電体板への接触面積よりも大きくし、ケース本体は、収容したコイル本体の中心位置が非磁性導電体板の中心位置と一致するように、非磁性導電体板に固定する。
受電コイルが位置ずれの許容範囲内のどこに位置しても、送電コイルの略全域が非磁性導電体板の下方に位置するように、非磁性導電体板の面積を広く設定し、その非磁性導電体板の中央に受電コイルを固定する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の非接触給電用コイル装置は、短い配線でコンパクトに構成することができ、高周波ノイズの低減や、高周波用リッツ線の短縮による重量やコストの削減などを図ることができる。
また、磁気遮蔽板の磁気遮蔽効果を損なわずに、コイル巻線のリード線の引出し距離を短縮できるため、コイル装置の小型化・軽量化が可能になり、給電効率の低下が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】H型コアから発生する磁束の遮蔽板での損失を示す図
【図2】本発明の第1の実施形態に係る非接触給電用コイル装置を示す図
【図3】図2のコイル装置の分解斜視図
【図4】図2のコイル装置のケース本体に収容されたH型コアを示す図
【図5】図2のコイル装置の非磁性導体板を示す図
【図6】図2のコイル装置での巻線のリード線導出形態を説明する図
【図7】図2のコイル装置を、透明と仮定した非磁性導体板の側から見た図
【図8】本発明の第2の実施形態に係るコイル装置のケース本体を示す図
【図9】図8のケース本体に収容されたH型コアを示す図
【図10】図8のケース本体と組み合わされるケース蓋体を示す図
【図11】図8のケース本体が固定される非磁性導体板を示す図
【図12】本発明の第2の実施形態に係るコイル装置を、透明と仮定した非磁性導体板の側から見た図
【図13】非磁性導体板の連通貫通孔をスリットで繋いだ状態を示す図
【図14】本発明の第3の実施形態に係るコイル装置の平面図(a)及び側面図(b)(c)
【図15】図14のコイル装置を、非磁性導体板を透明と仮定して示した図
【図16】図15のコイル装置のケース蓋体を取り除いた図
【図17】本発明のコイル装置を用いて二次電池を充電する給電システムの回路構成を示す図
【図18】プラグインハイブリッド車の給電システムを示す図
【図19】H型コアを有するコイルを示す図
【図20】図19のコイルを対向させた非接触給電トランスでの磁束の流れを説明する図
【発明を実施するための形態】
【0020】
図17は、本発明のコイル装置を用いて二次電池を充電する給電システムの回路構成を示している。
この回路は、商用電源の交流を直流に変換する整流器、及び、その直流から高周波交流を生成するインバータから成る高周波電源41と、送電コイル31及びそれに直列接続された直列コンデンサ32、並びに、受電コイル33及びそれに並列接続された並列共振コンデンサ34から成る給電トランス30と、給電された交流を整流する倍電圧整流回路42と、整流された直流電圧を所定レベルの直流電圧に変換して二次電池51に供給する充電回路44とを備えている。
倍電圧整流回路42は、電流の流れているダイオードが常に1個であるため、ダイオード順方向の電圧降下による損失分が少なく、フルブリッジ整流回路(常に二つのダイオードに電流が流れる。)に比べて効率が良い。しかし、整流回路には、フルブリッジ整流回路を用いても良い。
また、送電コイル31及び受電コイル33は、H型コアにリッツ線を巻回した両側巻コイルから成る。
【0021】
図1は、H型コアに巻線50を施したコイル80を磁気遮蔽板66上に置き、このコイル80から発生する磁束が磁気遮蔽板66によって受ける損失を解析した結果について示している。
図1から、H型コアの平行な磁極部81、82の中間部(特に、平行な磁極部81、82の間隔を二等分する(仮想)中央線83の巻線50から距離を置いた箇所)では、漏洩磁束分布が極めて少ないことが分かる。磁極部81、82の中間部で漏洩磁束分布が少ないことは、実験でも確かめられている。
本発明では、この事実を利用しており、磁気遮蔽板(アルミ板)に設ける巻線50のリード導出孔を、中央線83付近に配置して、アルミ板による磁気遮蔽効果を損なわずにリード線が導出できるようにしている。
【0022】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る受電コイル装置の外形を図2(下方から見た図)に示し、その分解斜視図を模式的に図3に示している。
この装置は、コイル本体を収容したケース100と、ケース100が固定される磁気遮蔽用のアルミ板200とを備えている。
ケース100は、樹脂製のケース本体101及びケース蓋体102で構成され、ケース本体101にコイル本体(図3では、そのH型コア301のみを示し、巻線を省略している。)が収納され、そのケース本体101にケース蓋体102が重ねられて、両者が結合される。
ケース本体101には、H型コア301に巻回された電線のリード線(リッツ線)を導出するケース貫通孔103が設けられている。このH型コア301には6本の電線を並列に巻回するようにしているため(6並列6ターン)、ケース本体101には、各電線の一端のリード線と他端のリード線とを挿通するための合計6対のケース貫通孔103が形成されている。
【0023】
図4は、ケース本体101内に位置決めされて収容されたH型コア301を示している。このH型コア301は、6本の電線が並列に巻回されるコイル巻枠304を備えており、コイル巻枠304には、電線(リッツ線)を巻き易くするためのガイドが設けられている(コイルは省略)。平行な磁極部302、303は、複数の矩形のフェライトコアを配列して構成している。平行な磁極部302、303の中間部位を接続するコア部分は、コイル巻枠304の中に配置されている。
ケース本体101のケース貫通孔103は、磁極部302、303の間隔を二等分する中央凸条(中央線)104を間に挟んで、その両側に対を成して形成されている。
アルミ板200は、その中心位置とケース本体101に収納されたH型コア301の中心位置とが重なるように、ケース本体101と固定される。
【0024】
また、アルミ板200には、ケース本体101のケース貫通孔103と連通する位置に連通貫通孔201が設けられている(図3)。図5には、連通貫通孔201を有するアルミ板200を単独で示している。
アルミ板200の面積は、H型コア301が位置ずれの許容範囲のどこに位置した場合でも、送電コイルの略全域がアルミ板200の下方に入る広さを有している。
図6に示すように、コイル巻枠304に巻回された電線のリード線(リッツ線)305、306は、ケース本体101のケース貫通孔103及びアルミ板200の連通貫通孔201を通って車内に導出される。
図7は、アルミ板200に固定されたケース100を、アルミ板200が透明であると仮定して、アルミ板200の側から示している。
【0025】
この受電コイルでは、H型コア301に巻回した巻線のリード線305、306を、アルミ板200に設けた孔(連通貫通孔201)から導出しているため、アルミ板200を迂回する場合に比べて、リード線の長さを短くできる。
また、アルミ板200に連通貫通孔201を開けた箇所は、H型コア301の磁極部302、303間の中間位置に当たり、漏洩磁束分布が少ない箇所であるため、連通貫通孔201から漏洩磁束が漏れる虞もない。
そのため、アルミ板200の磁気遮蔽効果を損なわずに、リード線(リッツ線)を短縮化することができる。
【0026】
なお、ここでは、ケース本体101に6対のケース貫通孔103を設けているが、磁極部302、303の間隔を二等分する中央線上に12個のケース貫通孔を形成し、これらの孔から6本の並行巻線のリード線を導出するようにしても良い。ただ、この場合、H型コア301と、それから最も離れたケース貫通孔との間の距離が長くなり、ケース100が大型化する。そのため、ケース100の小型化を図る上では、ケース貫通孔103を対で設ける方が望ましい。
【0027】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、ケースの更なる小型化を可能にする受電コイル装置について説明する。
この装置は、図8に示すように、ケース本体111が、中央凸条(中央線)114の両側に二列のケース貫通孔113を有している。
図9は、このケース本体111内に位置決めされて収容されたH型コア301を示している。このH型コア301のコイル巻枠304には、第1の実施形態と同様に、6本の電線が並列に巻回されるが、各電線の一端のリード線を挿通する6個のケース貫通孔113が中央凸条114の右側に二列に配置され、また、各電線の他端のリード線を挿通する6個のケース貫通孔113が中央凸条114の左側に二列に配置されている。そのため、H型コア301と、それから最も離れたケース貫通孔113との間の距離が、第1の実施形態より短くなり、その分、ケース本体111が小型化できる。
【0028】
図10は、このケース本体111と結合されるケース蓋体112を示している。
また、図11は、ケース本体111が固定されるアルミ板210を示しており、アルミ板210には、ケース本体111のケース貫通孔113に連通する4列の連通貫通孔211が形成されている。
図12は、アルミ板210に固定されたケース110を、アルミ板210が透明であると仮定して、アルミ板210の側から示している。
アルミ板210に連通貫通孔211を開けた箇所は、H型コア301の磁極部302、303間の中間位置に当たり、漏洩磁束分布が少ない箇所であるため、連通貫通孔211から漏洩磁束が漏れる虞はない。
そのため、アルミ板210の磁気遮蔽効果を損なわずに、リード線を短縮化することができ、且つ、ケース110を小型化することができる。
【0029】
また、図13(a)、(b)に示すように、アルミ板200、210に形成した連通貫通孔201及び連通貫通孔211は、他の連通貫通孔との間にスリット203を設けるようにしても良い。
このスリット203は、リード線に高周波電流が流れるためにアルミ板200、210の連通貫通孔201、211の回りに誘起される渦電流を遮断する。そのため、渦電流によるアルミ板200、210の加熱が抑えられる。
【0030】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、磁気遮蔽用のアルミ板を挟んで、コイル本体と、並列共振コンデンサ及び整流回路とを一体化したコイル装置について説明する。
図14は、このコイル装置の平面図(a)及び側面図(b)(c)を示している。
磁気遮蔽用アルミ板200の一面には、H型コアを収容したケース100が固定され、アルミ板200の反対面の対応する位置には、並列共振コンデンサ34及び整流回路42(図17)を収容した筐体400が固定されている。
筐体400は、アルミ製であり、発熱部を有する整流回路42を内蔵するため、冷却用のフィン401を備えている。
【0031】
図15は、アルミ板200の一面に固定されたケース100とアルミ板200の反対面に固定された筐体400とを、アルミ板200が透明であると仮定して、ケース100の側から示している。
また、図16は、図15のケース100のケース本体101内が見えるように、ケース蓋体102を取り除いた状態を示している。ケース本体101に形成されたケース貫通孔103、及び、このケース貫通孔103に連通するようにアルミ板200に開けられた連通貫通孔201は、筐体400が配置された位置に設けられており、コイル巻枠304に巻回されたコイル(図16では省略)のリード線は、ケース貫通孔103及び連通貫通孔201を通って筐体400内に導出され、筐体400内の並列共振コンデンサ34に電気接続される。
【0032】
この構成では、アルミ板200を挟んで、コイル本体と、並列共振コンデンサ及び整流回路とを一体化しているため、コイルのリード線(リッツ線)を短くでき、また、筐体400に内蔵された並列共振コンデンサ34と整流回路42との配線を短縮できる。
給電トランスの二次側で受電する交流は数十kHzの高周波であるため、受電コイル33と並列共振コンデンサ34との間、及び、並列共振コンデンサ34と整流回路42との間を出来る限り短距離で接続することが実用的に重要であり、そうすることで、高周波ノイズの抑制、熱損失の低減、高価なリッツ線の短縮などを図ることができ、コイル装置の小型・軽量化、低コストが実現できる。
なお、ここでは、筐体400内に並列共振コンデンサ34と整流回路42とを収容する場合について説明したが、さらに、筐体400内に充電回路44を収容しても良い。充電回路44も、整流回路42と同様に、発熱部を有しているが、筐体400が熱伝導率の高いアルミで構成され、且つ、放熱フィン401を有しているため、充電回路44の温度上昇が回避できる。
【0033】
また、ここでは、磁気遮蔽用にアルミ板を使用したが、アルミ以外の非磁性導電体を用いても良い。
また、ここでは、H型コアに複数本の電線を並列に巻回する場合について説明したが、巻回する電線は1本でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によるコイル装置は、小型・軽量化が可能であり、自動車や搬送車や移動ロボットなど、多くの移動体に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 整流器
20 インバータ
30 非接触給電トランス
31 送電コイル
32 一次側コンデンサ
33 受電コイル
34 二次側コンデンサ
35 主磁束
36 漏洩磁束
37 漏洩磁束
40 整流器
41 高周波電源
42 倍電圧整流回路
44 充電回路
50 電線(リッツ線)
51 二次電池
52 インバータ
53 モータ
54 エンジン
65 アルミ板(磁気遮蔽板)
66 アルミ板(磁気遮蔽板)
80 H型コア
81 磁極部
82 磁極部
83 中央線
100 ケース
101 ケース本体
102 ケース蓋体
103 ケース貫通孔
104 中央凸条
111 ケース本体
112 ケース蓋体
113 ケース貫通孔
114 中央凸条
200 アルミ板(磁気遮蔽板)
201 連通貫通孔
203 スリット
210 アルミ板(磁気遮蔽板)
211 連通貫通孔
301 H型コア
302 磁極部
303 磁極部
304 コイル巻枠
305 リード線(リッツ線)
306 リード線(リッツ線)
400 筐体
401 冷却フィン
3181 磁極部
3182 磁極部
3381 磁極部
3382 磁極部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
H字状のコアを有し、該コアの平行するコア部分が磁極部を構成し、各磁極部の中間部位を接続するコア部分に電線が巻回されたコイル本体と、該コイル本体を収容する樹脂製のケース本体と、該ケース本体が固定された磁気遮蔽用の非磁性導電体板と、を備える非接触給電用コイル装置であって、
前記ケース本体が固定された前記非磁性導電体板の面の反対側の面に、前記コイル本体のコイルに並列接続する共振コンデンサ及び整流回路が収容された筐体を配置したことを特徴とする非接触給電用コイル装置。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触給電用コイル装置であって、前記筐体に、さらに、充電回路が収容されていることを特徴とする非接触給電用コイル装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の非接触給電用コイル装置であって、
前記コイル本体を収容した前記ケース本体は、前記コイル本体の平行な前記磁極部の間隔を二等分する中央線に近接して配置されたケース貫通孔を有し、
前記非磁性導電体板は、前記ケース貫通孔に重なる連通貫通孔を有し、
前記コイル本体に巻回された前記電線のリード線が、前記ケース貫通孔及び連通貫通孔に挿通されて前記筐体内に導出され、前記共振コンデンサ及び整流回路に電気接続されることを特徴とする非接触給電用コイル装置。
【請求項4】
請求項3に記載のコイル装置であって、前記ケース本体の前記ケース貫通孔が、前記中央線を間に挟んで対を成して配置され、前記コイル本体に巻回された前記電線の一端に接続するリード線と該電線の他端に接続するリード線とが、対を成す前記ケース貫通孔のそれぞれに挿通されることを特徴とする非接触給電用コイル装置。
【請求項5】
請求項4に記載のコイル装置であって、前記ケース貫通孔に重なる前記非磁性導電体板の対を成す前記連通貫通孔が、スリットで繋がれていることを特徴とする非接触給電用コイル装置。
【請求項6】
請求項4に記載のコイル装置であって、前記コイル本体に複数の本数の前記電線が並列に巻回され、前記ケース本体の前記中央線を間に挟んで配置されている前記ケース貫通孔の対の数が、前記本数に対応していることを特徴とする非接触給電用コイル装置。
【請求項7】
請求項6に記載のコイル装置であって、前記ケース本体の前記中央線を間に挟んで配置されている複数対の前記ケース貫通孔が、前記中央線の両側に複数列配置されていることを特徴とする非接触給電用コイル装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のコイル装置であって、前記非磁性導電体板の面積は、前記ケース本体の前記非磁性導電体板への接触面積よりも大きく、前記ケース本体は、収容した前記コイル本体の中心位置が前記非磁性導電体板の中心位置と一致するように、該非磁性導電体板に固定されることを特徴とする非接触給電用コイル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−204469(P2012−204469A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65899(P2011−65899)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(591206887)株式会社テクノバ (20)
【出願人】(504190548)国立大学法人埼玉大学 (292)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)