説明

非接触電力伝送装置

【課題】送電側コイルの入力電圧を検出して、その値が一定の値になるように制御することにより、伝送電力を一定値にする。
【解決手段】比較回路70に伝送電力設定電圧を設定する。送電側コイル40に印加されている入力電圧を、比較回路70に入力する。比較回路70は、供給された入力電圧と伝送電力設定電圧を比較し、その結果電圧差をコイル駆動制御回路80に出力する。コイル駆動制御回路80は、比較結果に応じた信号を、コイル駆動装置90に供給する。コイル駆動装置90は、供給された信号に応じて、移動コイル台60を送電側コイル40の中心軸の方向に往復移動させる。送電側コイル40は、移動コイル台60に連動して移動する。これにより送電側コイル40と受電側コイル41の結合係数が変化し、伝送電力も変化する。送電側コイル40を、入力電圧と伝送電力設定電圧が一致するまで移動させて、伝送電力を設定値に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触状態に配置された送電側と受電側との装置の間で電力を伝送する非接触電力伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触電力伝送装置は、コネクタなどの物理的な接触なしで、負荷に電力を供給する装置である。最近では、家電製品やパソコン、電気自動車などに搭載された電池の充電用として着目されている。図6を用いて、従来の非接触電力伝送装置の基本的な構成を説明する。
【0003】
非接触電力伝送装置11は、電力供給回路12、送電側コンデンサ30及び送電側コイル40を有する送電側共振回路と、受電側コンデンサ31、受電側コイル41及び負荷回路50を有する受電側共振回路とを備える。送電側コンデンサ30と送電側コイル40とは直列に接続されており、これらに対して電力供給回路12の出力電圧が印加される。受電側コンデンサ31と受電側コイル41は、負荷回路50に対して直列に接続されている。
【0004】
送電側コイル40と受電側コイル41とは、巻き枠の外周に巻回された空芯コイルで、両者は所定の距離(ただし、不確定の距離)を隔てて配置されている。送電側コイル40には、送電側の回路の共振周波数に一致する周波数の入力電圧が、電力供給回路12から印加され、励振される。この励振により送電側コイル40と受電側コイル41との間の相互インダクタンス、すなわち結合係数に応じた同調結合回路が構成される。この同調結合回路により送電側共振回路から受電側共振回路に電力が伝送され、この電力は負荷回路50に供給される。
【0005】
このような従来技術において、送電側コンデンサ30のキャパシタンスをC1と、送電側コイルの自己インダクタンスをL1と、共振周波数をF1とすると、F1=1/(2π√(C1×L1))の式が示す関係となり、また、受電側コンデンサ31のキャパシタンスをC2と、受電側コイルの自己インダクタンスをL2と、共振周波数をF2とすると、F2=1/(2π√(C2×L2))の式が示す関係となる。C1、L1、C2、L2は、F1=F2となるような値で構成されると良い。このような構成により、非接触電力伝送装置10は、同調結合回路を構成できる。
【0006】
自己インダクタンスL1、L2は、コイル直径A、B、コイル巻き数などによって定まる値である。また、送電側コイル40と受電側コイル41と距離Dなどによって相互インダクタンスの値が定まる。
【0007】
相互インダクタンスは、送電側コイル40で生じた磁力が受電側コイル41を誘導し起電力を生じさせ、この生じた起電力による磁力が送電側コイル40を誘導するという磁気的結合によるインダクタンスである。一般に、距離Dが大きくなれば、相互インダクタンスは小さくなり、また、送電側コイル40と受電側コイル41との平行な位置関係がずれても小さくなる。
【0008】
磁気的結合の度合いを示す係数が、結合係数である。送電側コイル40と受電側コイル41との間の結合係数(以下、単に結合係数という)をkとし、相互インダクタンスの値をMとすると、k=M/(√(L1×L2))の式が示す関係となる。
【0009】
以上のような構成の非接触電力伝送装置としては、特許文献1や特許文献2に示すものが知られている。
【0010】
特許文献1の発明は、負荷変化などにより一次側導線と受電コイルとの間の相互インダクタンスが変化した場合に、高周波電流の電圧波形と電流波形とに生じる位相差を解消するものである。
【0011】
特許文献2の発明は、2つの共鳴コイル間の距離や負荷の少なくとも一方が変化しても、交流電源の交流出力電圧の周波数を変更せずに、交流電源から電力を効率良く負荷に供給するものである。すなわち、この発明は、2次コイルと負荷との間にインピーダンス可変回路を設け、共鳴系のパラメータ変化に対して、インピーダンスを調整するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10−225129号公報
【特許文献2】特開2010−141977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記特許文献1や特許文献2に記載されるように、非接触電力伝送装置において、送電側コイルと受電側コイルとの相対位置の変化で、この両コイル間の相互インダクタンス、すなわち結合係数が変化する。この変化により、送電側コイルへのコイル入力電圧も変化し、負荷に対する伝送電力が変化する。同様に、負荷の変化によっても伝送電力が変化する。
【0014】
しかし、コイルの相対位置の変化や負荷の変化に対して伝送電力が変化した場合でも、伝送電力として予め設定された一定の値(設定値)が要求されていることが多く、特許文献1及び特許文献2に記載された技術ではこの問題は解決できない。特に、直感的には、送電電力が低下した場合には、コイルを近付けることで送電量を増大できるように思えるが、実際には、コイル間の距離と送電電力とは直線的な比例関係にはなく、コイルの相対位置を適正に制御して送電電力を設定値に保持することは困難であった。
【0015】
この点を、図7を用いて説明する。図7の横軸は入力周波数であり、縦軸は、入力電流とその位相(電流と電圧)、及び出力電力とその効率である。図7(A)はコイル間距離が小の場合、図7(B)はコイル間距離が中の場合、図7(C)はコイル間距離が大の場合を示している。
【0016】
この図7(A)〜(C)から分かるように、コイル間距離が小さいと、効率はほぼ100%となるが、送電電力が小さく、電流位相が0°になる周波数が3周波数(f1、f0、f2)存在する。中間的な距離の場合は、距離が小さい場合よりも伝送可能電力が大きく、効率もよく、電流位相が0°になる周波数が1周波数f0存在する。コイル間距離が大になると、送電可能量は大となるが効率は低くなる。
【0017】
このように、コイル間距離と伝送効率、伝送電力の関係は必ずしも比例関係にあるわけではない。そのため、コイル間距離や負荷の変化により両コイルの相互インダクタンスが変化し、送電電力が設定値からずれた場合に、両コイルの相互インダクタンスを変化させ送電電力を設定値に戻すために、何を目安として、何を制御するかが重要である。特に、図7のように、コイル間距離を変化させることにより、送電電力が変化することは知られていても、送電電力が設定値からずれた場合に、そのずれ量に応じてどの程度両コイルの相互インダクタンスを調整するかの指針は、前記特許文献1や特許文献2には開示されていない。
【0018】
一方、発明者の知見によれば、図8に示すように、伝送電力は結合係数の増加と共に減少し、結合係数がある一定値以上であれば結合係数が変化しても効率はほとんど変化しない。図9は、図8を書き直したものであり、コイル入力電圧と伝送電力との関係を示したものである。効率がほとんど変化していないことより、コイル入力電圧と伝送電力との関係は、図9に示すように直線的となっている。これらの図から分かるように、伝送電力を制御するには、送電側コイル入力電圧を検出してその値を一定の値になるように制御すれば伝送電力も一定値に制御される。必要な電力を一定値に制御するための入力電圧が、伝送電力設定電圧である。
【0019】
本発明は、前記のような発明者の知見に基づいて提案されたものである。本発明の目的は、送電側コイルの入力電圧を検出して、その値が一定の値になるようにコイル間距離、コイル間に挿入する制御用コイルの位置、あるいは送電側コイルへ供給する入力電圧の利得を制御することにより、伝送電力を一定値に制御することのできる非接触電力伝送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、送電側コイルと受電側コイルが、距離を隔てて配置され、両コイル間における結合係数に応じた共振結合により、前記送電側コイルから前記受電側コイルに電力を伝送する非接触電力伝送装置であって、送電側コイルの入力側電圧値または入力電力値と、予め設定された伝送電力に対応する伝送電力設定電圧値または伝送電力設定電力値とを比較する比較回路と、前記比較回路からの出力信号に基づいて送電側コイルと受電側コイルとの結合係数を変化させて、前記受電側コイルへの伝送電力を予め設定された値に制御する伝送電力制御手段を有することを特徴とする。
【0021】
前記伝送電力制御手段として、前記送電側コイルと受電側コイルの相対位置を変化させるコイル駆動手段と、前記比較回路からの出力信号に基づいて、前記入力電圧と前記伝送電力設定電圧とが一致するように、前記コイル移動手段による送電側コイルまたは受電側コイルの移動量を制御するコイル駆動制御手段を使用することができる。
【0022】
前記伝送電力制御手段として、前記送電側コイルと受電側コイルの間に配設された中間コイルと、この中間コイルと、前記送電側コイル及び受電側コイルの相対位置を変化させる中間コイル駆動手段と、前記比較回路からの出力信号に基づいて、前記入力電圧と前記伝送電力設定電圧とが一致するように、前記中間コイル駆動手段による中間コイルの移動量を制御する中間コイル駆動制御手段を使用することができる。
【0023】
前記伝送電力制御手段として、前記伝送電力制御手段は、前記送電側コイルの入力側に設けられた可変利得増幅器と、この可変利得増幅器の利得を制御する増幅器制御回路とを備え、前記比較回路からの出力信号に基づいて、前記入力電圧または電力と前記伝送電力設定電圧または電力とが一致するように、前記増幅制御回路により可変利得増幅器の利得を制御するものを使用することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、送電側コイルへの入力電圧が、予め設定されている入力電圧となるように両コイルの結合係数を変化させることにより、両コイル間の伝送電力を予め設定した一定値に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1の非接触電力伝送装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施例2の非接触電力伝送装置の構成を示すブロック図である。
【図3】実施例3の非接触電力伝送装置の構成を示すブロック図である。
【図4】実施例4の非接触電力伝送装置の構成を示すブロック図である。
【図5】実施例5の非接触電力伝送装置の構成を示すブロック図である。
【図6】従来の非接触電力伝送装置の一例の構成を示すブロック図である。
【図7】コイル間距離と入力周波数との関係を示す波形図である
【図8】結合係数とコイル入力電圧と伝送電力との関係を示すグラフである。
【図9】コイル入力電圧と伝送電力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施例を説明する。なお、従来技術と同一の部分については、同一の符号を付し、説明は省略し、また、各実施例において、同一の内容については、説明を省略する。
【実施例1】
【0027】
図1を用いて、実施例1の非接触電力伝送装置10について説明する。
【0028】
(構成)
図1に示す本実施例の非接触電力伝送装置10は、交流電源12a、電圧計13、電流計14、電圧検出回路15、周波数可変発振器20、増幅器21、位相差検出回路22、送電側コンデンサ30、受電側コンデンサ31、送電側コイル40、受電側コイル41、負荷回路50及び比較回路70を有する。
【0029】
また、伝送電力制御手段として、移動コイル台60とコイル駆動装置90、及びコイル駆動制御回路80を有する。なお、本実施例の移動コイル台60とコイル駆動装置90が請求項のコイル駆動手段に、コイル駆動制御回路80が請求項のコイル駆動制御手段に相当する。
【0030】
周波数可変発振器20の入力側には、交流電源12aが接続されている。周波数可変発振器20の出力側は、増幅器21の入力側に接続されている。増幅器21の出力端子の一方は、送電側コンデンサ30に接続され、出力端子の他方は、送電側コイル40に接続されている。また、増幅器21の出力側は、位相差検出回路22が接続され、位相差検出回路22に対して、増幅器21の出力側で、電圧計13と電流計14で検知された電圧値と電流値が入力される。位相差検出回路22の出力側は、周波数可変発振器20の入力側に接続されている。
【0031】
送電側コイル40への入力側には、その入力電圧を検出する電圧検出回路15が設けられている。電圧検出回路15の出力側は、比較回路70に接続されている。
【0032】
比較回路70の出力側は、コイル駆動制御回路80に接続されている。コイル駆動制御回路80の出力側は、コイル駆動装置90の入力側に接続されている。コイル駆動装置90は、移動コイル台60を送電側コイル40の巻芯の軸(以下、中心軸という)方向に往復移動させるように、例えば、ラックアンドピニオンを用いて駆動する。移動コイル台60は、コイル駆動装置90の駆動により、往復移動をする。移動コイル台60は、例えば非磁性材料で形成され、その上面に送電側コイル40が固定されている。送電側コイル40は、移動コイル台60の移動と連動して移動する。
【0033】
(作用)
前記のような構成を有する実施例1において、送電側コイルへの入力電圧を制御する方法について説明する。まず、比較回路70に対して、両コイル間で一定値で送電する伝送電力量に対応した電圧値(伝送電力設定電圧という)を設定する。この状態で、交流電源12aから送電側コイル40に電流を流すと、送電側コイル40に印加されている入力電圧は、電圧検出回路15で検出され、この検出結果が比較回路70に供給される。比較回路70は、この検知された入力電圧と、予め設定された伝送電力設定電圧とを比較し、その電圧差を出力する。
【0034】
比較回路70からの電圧差は、コイル駆動制御回路80に供給される。コイル駆動制御回路80は、入力された電圧差に応じた信号を、コイル駆動装置90に供給する。コイル駆動装置90は、供給された信号に応じて、例えばその駆動モータを回転させ、モータに連動するラックアンドピニオンを駆動させることで、移動コイル台60を移動する。送電側コイル40は、移動コイル台60の往復移動に連動して移動する。
【0035】
この往復移動により、結合係数は変化し、図2に示すとおり、送電側コイル40の入力電圧は変化する。すなわち、両コイル間の距離が短くなった場合、結合係数が大きくなり、コイル入力電圧は小さくなる。一方、両コイル間の距離が長くなった場合、結合係数が小さくなり、コイル入力電圧は大きくなる。移動コイル台60のこの移動は、比較回路70において、前記入力電圧と前記伝送電力設定電圧とが一致するまで行われる。
【0036】
なお温度変化などの環境条件の変化により、共振周波数が変化し送電側コイル40に対する入力電圧と入力電流との間に、僅かであるが位相差が生じる場合がある。この場合、周波数可変発振器20は、周波数を制御して、送電側コイル40の入力電圧と入力電流との位相が一致するようにする。
【0037】
すなわち、図1に示す周波数可変発振器20は、交流電源12aからの入力周波数を、例えば、初期設定周波数に変換する。増幅器21は、周波数可変発振器20からの入力を増幅し、位相差検出回路22に出力する。位相差検出回路22は、増幅器21の出力側で、検知された電圧値と電流値のそれぞれの位相を比較して、位相差を検出する。
【0038】
位相差検出回路22で検出された位相差は、周波数可変発振器20に帰還される。この帰還された位相差に基づいて、周波数可変発振器20は、出力電圧の位相と出力電流の位相が一致するように周波数を制御する。これらの位相が一致したとき、例えば、初期設定周波数は、非接触電力伝送装置10の共振周波数になる。前記の制御により、送電側コイル40に印加される電圧の周波数は、共振周波数となる。なお、この制御の方式は限定されないが、PLL(Phase-locked loop)方式が望ましい。
【0039】
(効果)
本実施例の非接触伝送電力装置10は、送電側コイル40を中心軸の方向に往復移動させ、両コイル間の結合係数を変化させることによって、送電側コイル40への入力電圧を比較値と等しくすることができる。その結果、コイル間距離の変動や負荷の変動があった場合でも、設定された伝送電力を伝送することができる。また、この送電側コイル40の中心軸方向の往復移動は、複雑な回路構成を必要とせず、単純な機械的な構成で、正確に行うことができる。
【実施例2】
【0040】
図2を用いて実施例2に係る非接触電力伝送装置10aについて説明する。
【0041】
(構成)
本実施例の非接触電力伝送装置10aは、コイル駆動手段を、移動コイル台60aを駆動するコイル駆動装置90aとして、移動コイル台60aを送電側コイル40のコイル径方向(中心軸とは直角に交わる方向)に往復移動させる構成としたものである。例えば、図示のように、移動コイル台60aの側部に、シリンダやラックアンドピニオン機構などの往復移動手段を設け、この移動手段により移動コイル台60aを、その表面と平行な方向に移動させる構成とする。なお、コイル駆動装置90aにおける移動コイル台60aの制御を、比較回路70に対する設定電圧と入力側コイル40の入力電圧が一致するように行う点は、前記実施例1と同様である。
【0042】
(作用)
前記のような構成を有する実施例2において、移動コイル台60aは、図5の矢印が示すとおり、送電側コイル40のコイル径方向(中心軸とは直角に交わる)に往復する。この往復移動により、結合係数は変化し、送電側コイル40の入力電圧は変化する。すなわち、送電側コイル40の中心軸と受電側コイル41の中心軸との距離が短くなった場合、結合係数が大きくなり、コイル入力電圧は小さくなる。一方、両中心軸の距離が長くなった場合、結合係数が小さくなり、コイル入力電圧は大きくなる。
【0043】
(効果)
本実施例の非接触伝送電力装置10aは、実施例1の非接触伝送電力装置10と同様に送電電力を一定に維持することができる。また、前記実施例1と比べ、送電側コイル40の移動の方向が異なっていることより、装置の筺体の設計において、柔軟性を有する。特に、本実施例は、2つのコイル間の位置が中心軸に合っていない場合の修正にも使用できるので、電気自動車の停車位置に誤差がある場合の修正などにも有効である。
【実施例3】
【0044】
図3を用いて実施例3に係る非接触電力伝送装置10bについて説明する。
【0045】
(構成)
本実施例の非接触電力伝送装置10bは、コイル駆動手段を、移動コイル台60bを駆動するコイル駆動装置90bとして、移動コイル台60bを送電側コイル40の中心軸を通るコイル径方向の軸を中心として往復回転させる構成としたものである。例えば、図示のように、移動コイル台60bの側部に、コイル径方向の軸を中心として回転する支軸を設け、この支軸に駆動用モータの回転軸を直結した回転手段を設けることができる。なお、コイル駆動装置90bにおける移動コイル台60bの制御を、比較回路70に対する設定電圧と送電側コイル40の入力電圧が一致するように行う点は、前記各実施例と同様である。
【0046】
(作用)
前記のような構成を有する実施例3においては、移動コイル台60bが、図6の矢印が示すとおり、送電側コイル40の中心軸を通るコイル径方向の軸を中心として回転をすることで、両コイル間の結合係数が変化し、送電側コイル40の入力電圧は変化する。すなわち、送電側コイル40のコイル面と受電側コイル41のコイル面が平行位置から回転して角度が大きくなると結合係数が小さくなり、コイル入力電圧は大きくなる。
【0047】
(効果)
本実施例の非接触伝送電力装置10bは、前期各実施例と同様に送電電力を一定に維持することができると共に、送電側コイル40の移動の方向に制限がある場合などに有効である。
【実施例4】
【0048】
図4を用いて実施例4に係る非接触電力伝送装置10cについて説明する。
【0049】
(構成)
本実施例の非接触電力伝送装置10cは、伝送電力制御手段の構成として、中間コイル42を使用したものである。すなわち、中間コイル42は、送電側コイル40と受電側コイル41との間に、両コイルのコイル径と平行な方向に往復移動するように設けられている。比較回路70の出力側に、中間コイル駆動制御手段である中間コイル駆動制御回路81が設けられている。この中間コイル駆動制御回路81の出力側は、中間コイル駆動手段である中間コイル駆動装置91の入力側に接続されている。中間コイル駆動装置91は、一例として、図示のように中間コイル42の端部に、シリンダやラックアンドピニオン機構などの往復移動手段を設け、この移動手段により中間コイル42を、両コイルと平行な方向に移動させる構成とする。
【0050】
(作用)
前記のような構成を有する実施例4において、比較回路70での比較結果に応じた信号が、中間コイル駆動制御回路81に入力され、中間コイル駆動装置91は、供給された信号に応じて、中間コイル42を両コイルに平行な径方向に往復移動させる。この往復移動により、両コイル間の結合係数は変化し、送電側コイル40の入力電圧は変化する。
【0051】
すなわち、中間コイル42が送電側コイル40と受電側コイル41との間に挿入されると、結合係数が小さくなり、コイル入力電圧は大きくなる。一方、中間コイル42が送電側コイル40と受電側コイル41との間から引き出されると、結合係数が大きくなり、コイル入力電圧は小さくなる。このようにして、比較回路70に対する設定値と、送電側コイル40の入力電圧値が一致するように中間コイル42を移動させることで、両コイル40、41間の伝送電力を設定値に保持することができる。
【0052】
(効果)
本実施例の非接触伝送電力装置10cは、一定の伝送電力の供給を、単純な機械的な構成で、正確に行うことができる。また、中間コイル42は、送電側コイル40より小さな寸法でも良いため、中間コイル駆動装置91を、簡易な構成とすることができる。
【実施例5】
【0053】
図5を用いて実施例5に係る非接触電力伝送装置10dについて説明する。
【0054】
(構成)
本実施例の非接触電力伝送装置10dは、前記実施例1〜実施例4のようなコイルの物理的な移動に代えて、送電側コイル40に供給する入力電圧を変化させるという回路構成により、同様な目的を達成する。すなわち、本実施例では、伝送電力制御手段は、増幅器制御回路82と可変利得増幅器21aとを有する。この場合、可変利得増幅器21aとしては、変調型あるいはPWM型のものを使用することができる。
【0055】
すなわち、比較回路70の出力側は、増幅器制御回路82に接続されている。増幅器制御回路82の出力側は、可変利得増幅器21aの入力側の一方に接続されている。可変利得増幅器21aの入力側の他方には、周波数可変発振器20の出力側が接続されている。可変利得増幅器21aの出力側は、出力端子の一方が送電側コンデンサ30に接続され、出力端子の他方が送電側コイル40に接続されている。
【0056】
(作用)
前記のような構成を有する実施例5において、増幅器制御回路82は、比較回路70での送電側コイル40の入力電圧と伝送電力設定電圧との比較結果である電圧差に応じて、可変利得増幅器21aを制御する。可変利得増幅器21aは、増幅器制御回路82からの信号に基づいて利得を制御し、送電側コイル40の入力電圧を変化させる。
【0057】
例えば、コイル入力電圧が伝送電力設定電圧より大きい場合、増幅器制御回路82は、可変利得増幅器21aに対して、出力の利得を下げるように制御する。そうすると、コイル入力電圧は小さくなり、やがて、コイル入力電圧は伝送電力設定電圧と一致する。一方、コイル入力電圧が伝送電力設定電圧より小さい場合、増幅器制御回路82は、可変利得増幅器21aに対して、出力の利得を上げるように制御する。そうすると、コイル入力電圧は大きくなり、やがて、コイル入力電圧は伝送電力設定電圧と一致する。
【0058】
(効果)
本実施例の非接触伝送電力装置10dは、可変利得増幅器21aの出力を制御することにより、伝送電力を設定された値とすることができ、機械的な構造を有しない構成とすることができ、省スペース化や構成の単純化を図ることができる。
【実施例6】
【0059】
本発明は、前記のような実施例に限定されるものではなく、下記のような実施例も包含する。
(1)実施例1〜実施例3においては、移動コイル台60〜60bを採用したが、移動コイル台60〜60bを用いず、駆動装置により、送電側コイル40を直接移動させる構成でも良い。
【0060】
(2)本発明の非接触電力伝送装置は、増幅器出力電圧と出力電流から出力電力を検出し、その値が、必要伝送電力と等しくなるように、出力電圧を制御しても良い。例えば、伝送電力制御手段として、増幅器21からの出力電圧と出力電流から出力電力を検出する電力検出手段と、検出された電力値と予め設定された伝送電力設定電力とが一致するように、出力電圧を制御する制御手段を有する構成とすれば良い。
【0061】
(3)本発明の非接触電力伝送装置は、伝送電力の値を送電側コイル入力電圧によって検出し、制御する装置を用いても良い。例えば、伝送電力制御手段は、検知された送電側コイル40の入力電圧に基づいた伝送電力の値を求めて、予め設定された伝送電力設定電力とが一致するように、制御する制御装置を有する構成とすれば良い。
【0062】
(4)本発明の非接触電力伝送装置は、比較回路70に入力する伝送電力設定信号を、予め定めた1つの値ではなく、上限下限の決まった一定の範囲や、ある値以上またはある値以下と言ったコイル印加電圧制限信号として用いても良い。そのようにすれば、前記各実施例が一定の伝送電力の維持を行っているのに対して、ある範囲内の伝送電力、ある値以下の伝送電力、ある値以上の伝送電力などの制御を行うことができる。
【0063】
(5)実施例1〜実施例3では、送電側コイル40を移動させる構成であるが、受電側コイル41を移動させる構成であっても良い。この場合、コイル制御回路80を送電側に設けておき、コイル駆動装置を受電側コイル90、90a、90bに設ける。また、コイル制御回路やコイル駆動装置を受電側に設けて、送電側の比較回路70からの信号を無線を用いて受電側のコイル制御回路80に供給し、コイル駆動装置90、90a、90bを制御することもできる。
【符号の説明】
【0064】
10、10a〜10d、11…非接触電力伝送装置、12…電力供給回路、12a…交流電源、13…電圧計、14…電流計、15…電圧検出回路、20…周波数可変発振器、21…増幅器、21a…可変利得増幅器、22…位相差検出回路、30…送電側コンデンサ、31…受電側コンデンサ、40…送電側コイル、41…受電側コイル、42…中間コイル、50…負荷回路、60、60a、60b…移動コイル台、70…比較回路、80…コイル駆動制御回路、81…中間コイル駆動制御回路、82…増幅器制御回路、90、90a、90b…コイル駆動装置、91…中間コイル駆動装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電側コイルと受電側コイルが、距離を隔てて配置され、両コイル間における結合係数に応じた共振結合により、前記送電側コイルから前記受電側コイルに電力を伝送する非接触電力伝送装置であって、
送電側コイルの入力側電圧値または入力電力値と、予め設定された伝送電力に対応する伝送電力設定電圧値または伝送電力設定電力値とを比較する比較回路と、
前記比較回路からの出力信号に基づいて送電側コイルと受電側コイルとの結合係数を変化させて、前記受電側コイルへの伝送電力を予め設定された値に制御する伝送電力制御手段を有することを特徴とする非接触電力伝送装置。
【請求項2】
前記伝送電力制御手段は、
前記送電側コイルと受電側コイルの相対位置を変化させるコイル駆動手段と、
前記比較回路からの出力信号に基づいて、前記入力電圧と前記伝送電力設定電圧とが一致するように、前記コイル移動手段による送電側コイルまたは受電側コイルの移動量を制御するコイル駆動制御手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項3】
前記伝送電力制御手段は、
前記送電側コイルと受電側コイルの間に配設された中間コイルと、
この中間コイルと、前記送電側コイル及び受電側コイルの相対位置を変化させる中間コイル駆動手段と、
前記比較回路からの出力信号に基づいて、前記入力電圧と前記伝送電力設定電圧とが一致するように、前記中間コイル駆動手段による中間コイルの移動量を制御する中間コイル駆動制御手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項4】
前記伝送電力制御手段は、
前記送電側コイルの入力側に設けられた可変利得増幅器と、
この可変利得増幅器の利得を制御する増幅器制御回路とを備え、
前記比較回路からの出力信号に基づいて、前記入力電圧または電力と前記伝送電力設定電圧または電力とが一致するように、前記増幅制御回路により可変利得増幅器の利得を制御することを特徴とする請求項1に記載の非接触電力伝送装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−65484(P2012−65484A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208873(P2010−208873)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)