非接触電力伝送装置
【課題】送電装置内での受電装置の位置決め尤度が大きくて装置操作の負担が少なく、しかも簡素な構造でありながら十分な伝送効率が得られる位置決めが可能な非接触電力伝送装置を提供する。
【解決手段】共振コイルを含む送電コイル6を有する送電装置1と、共振コイルを含む受電コイル14を有する受電装置10とを備える。送電装置は、少なくとも1個の送電コイルの少なくとも一部分の内周縁に沿った周縁形状を有する位置決め部12を備え、受電装置は、受電コイルを収納する受電コイル収納ケースを2備える。受電コイル収納ケースは外周縁の少なくとも一部が位置決め部の周縁形状に沿った位置基準面を形成し、受電コイルは、ループ形状が、長円形であるか、または長円形の長径方向の外周縁が湾曲した湾曲長円形であり、その長径方向の外周縁の少なくとも一部は受電コイル収納ケースの位置基準面に沿うように収納されている。
【解決手段】共振コイルを含む送電コイル6を有する送電装置1と、共振コイルを含む受電コイル14を有する受電装置10とを備える。送電装置は、少なくとも1個の送電コイルの少なくとも一部分の内周縁に沿った周縁形状を有する位置決め部12を備え、受電装置は、受電コイルを収納する受電コイル収納ケースを2備える。受電コイル収納ケースは外周縁の少なくとも一部が位置決め部の周縁形状に沿った位置基準面を形成し、受電コイルは、ループ形状が、長円形であるか、または長円形の長径方向の外周縁が湾曲した湾曲長円形であり、その長径方向の外周縁の少なくとも一部は受電コイル収納ケースの位置基準面に沿うように収納されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触(ワイヤレス)で電力を伝送する非接触電力伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触で電力を伝送する方法として、電磁誘導(数100kHz)による電磁誘導型、電界または磁界共鳴を介したLC共振間伝送による電界・磁界共鳴型、電波(数GHz)によるマイクロ波送電型、あるいは可視光領域の電磁波(光)によるレーザ送電型が知られている。この中で既に実用化されているのは、電磁誘導型である。これは簡易な回路(トランス方式)で実現可能であるなどの優位性はあるが、送電距離が短いという課題もある。
【0003】
そこで、最近になって近距離伝送(〜2m)が可能な電界・磁界共鳴型の電力伝送が注目を浴びてきた。このうち、電界共鳴型の場合、伝送経路中に手などを入れると、人体が誘電体であるため、エネルギーを熱として吸収して誘電体損失を生じる。これに対して磁界共鳴型の場合、人体がエネルギーをほとんど吸収せず、誘電体損失を避けられる。この点から磁界共鳴型に対する注目度が上昇してきている。
【0004】
このような電磁誘導型や磁界共鳴型の構成により非接触で電力を送受電する場合、送電器に対して受電器が正しく置かれていないと、効率良く電力を伝送することができない。例えば、特許文献1に記載されているような磁界共鳴型の送受電装置は、電磁誘導を用いた送受電装置よりも比較的位置決め尤度が高いと言われているが、実用上、受電器に対する何らかの位置決め装置が必要である。
【0005】
特許文献1は、車両に設けられた受電コイルに対して送電コイルから電力を伝送する装置に関するものである。送電コイルに対する車両内の送電コイルを位置決めするために、送電コイルが送電する電力量と受電部が受電する電力量との相関に基づいて電力の受電状態を検知する受電状態検知手段と、受電状態検知手段が検知する受電状態が良くなるように受電コイルの位置を調整する受電コイル調整手段とを設けることが開示されている。受電コイル調整手段の例としては、受電コイルの位置を自在に変更可能な駆動ユニットが用いられ、駆動ユニットのサーボモータが作動することで受電コイルの位置を動かすように構成されている。地面に固定された送電ユニットに対して、受電コイルは駆動ユニットによって前後方向、左右方向、上下方向へ移動可能である。
【0006】
しかし、特許文献1に記載されているような自動車等の大型機器に関しては、その様な位置決め機構の存在は許容出来るが、補聴器等の小型機器に関しては、装置スペースおよび装置コストの観点から、その様な位置調整機構を備える事は許容できない。
【0007】
そのため、特許文献2に示されるような電動歯ブラシあるいは電動工具のような小型電気機器の場合は、やむを得ず、勘合部材による位置決めを用いていた。あるいは、位置ずれ尤度が少ない位置規制部材を配置することにより、受電コイルを内蔵する補聴器の位置をタイトに規制し、送電コイルとの相対位置がずれないような構成にしていた。そのような、補聴器を受電装置とし、位置ずれ尤度が少ない位置規制部材を備えた非接触電力伝送装置の例について、図14〜図17を参照して説明する。
【0008】
図14は、従来例の非接触電力伝送装置の受電装置である補聴器の構成を示す斜視図である。図15は、当該補聴器を含む非接触電力伝送装置の構成を示す平面図、図16はその断面図を示す。
【0009】
図14に示す補聴器32は、補聴器筐体2、イアホン3、及びそれらを連結する連結部4からなる。補聴器筐体2内には、電源となるコイン型2次電池5、及び円形の受電コイル33が収納されている。図15及び図16に示す送電装置36は、送電装置ケース37を有し、送電装置ケース37内に、送電コイル38、補聴器装着凹部39が配置され、補聴器装着凹部39内に位置決め凸部40が形成されている。補聴器装着凹部39の下部に送電コイル収納部13が設けられており、送電コイル38は送電コイル収納部13に収納されている。
【0010】
送電装置36により補聴器32に対する電力伝送を行うときには、補聴器32の内側に位置決め凸部40が嵌合するように補聴器32を装着する。それにより、受電コイル33と送電コイル38が整列して相対位置がずれないように位置規制され、効率良く電力を伝送することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−246348号公報
【特許文献2】特開平6−311660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記従来例のように、コスト増の許容値が小さい小型の民生機器に関しては、位置ずれ尤度が少ない位置規制部材を配置する事により、コスト抑制可能であるが、受電コイルを備えた機器を決まった場所に正確に装着する操作が必要があり、装置使用者の負担増になっていた。近年、機器取り扱いに関してはユニバーサル化が叫ばれており、特に高齢者の使用頻度が高くなる補聴器等は、低コストでかつ使用者の負担が小さい機器構成が望まれる。
【0013】
これに対して、図17に示すように、内側の位置決め凸部40を設けずに補聴器装着凹部39のみで位置規制する構成とすれば、位置決め尤度が大きくなる。しかし、図示したように、受電コイル33と送電コイル38の相対位置がずれ易くなり、このような状態になると、図18に示すように、電力伝送の効率は著しく低下する。図18において、受電コイル33と送電コイル38の相対位置ずれは、送電コイル38の中心軸と受電コイル33の中心軸の相対中心軸間距離(r/rm’)によって横軸に示される。rはコイル中心間距離、rm’は補聴器装着凹部39の半径である。r/rm’の値が0から縦の破線で示す狭い範囲のみで、実用的に十分な電送効率が得られることが判る。
【0014】
以上のことを考慮して、本発明は、送電装置内での受電装置の位置決め尤度が大きくて装置操作の負担が少なく、しかも簡素な構造でありながら十分な伝送効率が得られる位置決めが可能な非接触電力伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の非接触電力伝送装置は、共振コイルを含む送電コイルを有する送電装置と、共振コイルを含む受電コイルを有する受電装置とを備え、前記送電コイルと前記受電コイルの間の磁界共鳴を介して前記送電装置から前記受電装置へ電力を伝送するように構成され、前記送電装置は、少なくとも1個の前記送電コイルの少なくとも一部分の内周縁に沿った周縁形状を有する位置決め部を備え、前記受電装置は、前記受電コイルを収納する受電コイル収納ケースを備え、前記受電コイル収納ケースは外周縁の少なくとも一部が前記位置決め部の周縁形状に沿った位置基準面を形成し、前記受電コイルは、ループ形状が、長円形であるか、または長円形の長径方向の外周縁が湾曲した湾曲長円形であり、その長径方向の外周縁の少なくとも一部は前記受電コイル収納ケースの位置基準面に沿うように収納されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記構成の非接触電力伝送装置によれば、送電装置の位置決め部と受電コイル収納ケースの位置基準面の関係、及び受電コイルの受電コイル収納ケース内での配置の相互関係に基づき、送電装置内での受電装置の位置決め尤度が大きいにも関わらず、適切な範囲に維持できる。しかも、受電コイルのループ形状が長円形または湾曲長円形であることにより、送電コイルと受電コイル間で十分な伝送効率を得ることができる。従って、小型の装置に十分に適用可能な簡素な構造でありながら、装置操作の負担の少ない、高効率な使い勝手の良い非接触電力伝送装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態1における非接触電力伝送装置の受電装置を構成する補聴器を示す斜視図
【図2】同非接触電力伝送装置の送電装置に補聴器が装着された状態を示す平面図
【図3】同非接触電力伝送装置の図2に示した状態の断面図
【図4】同非接触電力伝送装置の送電装置における補聴器の位置決め形態の一例を示す平面図
【図5】同非接触電力伝送装置の送電装置における補聴器の位置決め形態の他の例を示す平面図
【図6】同非接触電力伝送装置の送電装置に対する補聴器の相対位置の定義を説明するための平面図
【図7】実施の形態2における非接触電力伝送装置の送電装置に受電装置を構成する補聴器が装着された状態を示す平面図
【図8】同非接触電力伝送装置の送電装置に対する補聴器の相対位置の定義を説明するための平面図
【図9】比較例1の非接触電力伝送装置の送電装置に補聴器が装着された状態を示す平面図
【図10】比較例2の非接触電力伝送装置の送電装置に補聴器が装着された状態を示す平面図
【図11】実施の形態1、2および比較例1、2の非接触電力伝送装置の伝送効率に関する特性を示す図
【図12】実施の形態3における非接触電力伝送装置の送電装置に受電装置の一態様である補聴器が装着された状態を示す平面図
【図13】実施の形態4における非接触電力伝送装置の送電装置に受電装置の一態様である懐中電灯が装着された状態を示す平面図
【図14】従来例の非接触電力伝送装置の受電装置である補聴器の構成を示す斜視図
【図15】同非接触電力伝送装置の送電装置に補聴器が装着された状態を示す平面図
【図16】同非接触電力伝送装置の図15に示した状態の断面図
【図17】同非接触電力伝送装置の課題を説明するための平面図
【図18】同非接触電力伝送装置の伝送効率に関する特性を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の非接触電力伝送装置は、上記構成を基本として、以下のような態様を採ることができる
すなわち、前記受電装置位置決め部は、前記送電装置に装着された前記受電装置を平面内方向における周囲を包囲する形状を有することが好ましい。それにより、送電装置内での受電装置の位置決め尤度を、適切な範囲内に容易に抑制することができる。その場合、前記送電コイルの形状は、円形もしくは正多角形とすることができる。
【0019】
また、前記位置決め部による前記受電コイル収納ケースの位置決め形態は、複数の形態を採ることが可能なように構成することができる。
【0020】
また、前記位置決め部により前記受電コイル収納ケースが位置決めされ、その結果、前記受電コイルが、前記送電コイルのループ形状の内周縁に対して位置決めされる構成とすることができる。
【0021】
また、前記位置決め部により決定される前記受電コイルと前記送電コイルの相対位置は、前記送電コイルから前記受電コイルへの電力伝送効率が、前記送電コイルと平行な面内において最大になるよう設定されていることが好ましい。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
<実施の形態1>
実施の形態1における非接触電力伝送装置の構成について、図1〜図3を参照して説明する。本実施の形態は、受電装置を構成する小型の機器の一例として補聴器を対象とし、補聴器に対して電力伝送するために構成された非接触電力伝送装置に関するものである。図1は、補聴器の構成を示す斜視図、図2は、当該補聴器を含む非接触電力伝送装置の構成を示す平面図、図3はその断面図を示す。なお、図2の平面図では、送電装置の蓋部等の図示が省略されている。
【0024】
図1に示す補聴器(受電装置)1は、補聴器筐体2、イアホン3、及びそれらを連結する連結部4からなる。補聴器筐体2内には、電源となるコイン型2次電池5、及び受電コイル6が収納されている。従って、補聴器筐体2は、受電コイル収納ケースを構成する。本実施の形態の特徴は、受電コイル6のループ形状の外形が、湾曲した長円形を成していることである。ここで、湾曲した長円形とは、長円形の長径に沿った外周縁が湾曲して略C字型を成していることを意味するものとする。以下の記載では、このループ形状を湾曲長円形と称する。
【0025】
図示は省略するが、補聴器筐体2内には更に、整流回路、充放電制御回路、および補聴器回路が収納されている。従って、受電コイル6により発生する交流電流は、整流回路により整流されて充放電制御回路に供給され、充放電制御回路によりコイン型2次電池5への充放電制御が行われる。また、補聴器回路は、イアホン3を駆動するための電力をコイン型2次電池5から供給される。
【0026】
図2及び図3に示す送電装置10は、送電装置ケース11を有し、送電装置ケース11内に補聴器1を位置規制する位置決め部材12が配置されている。位置決め部材12の下部に、送電コイル収納部13が設けられて、送電コイル14が収納されている。送電装置ケース11の内面と位置決め部材12の間には、送電コイル14から発生する電磁波が外部に漏れるのを防ぐ電磁シールド部材15が配置されている。送電装置ケース11内には更に、送電コイル14に高周波電流を供給する高周波回路16、及び送電装置10の動作を制御する制御回路17が収納されている。送電装置ケース11には、ヒンジ18を介して送電装置ケース用蓋19が連結されている。送電装置ケース用蓋19の内部には、蓋側電磁シールド部材20が配置され、その内側には蓋部内壁21が設けられている。
【0027】
位置決め部材12と送電コイル14の形状は、送電コイル14の内周縁の方がわずかに曲率半径は小さいが、ほぼ同一の曲線形状を有し、かつ補聴器筐体2の外周縁形状もほぼそれと同一の形状を有する。その結果、補聴器筐体2の外周縁は位置決め部材12の内壁にほぼ沿った位置に位置決めされ、結果として補聴器筐体2内部に配置されている湾曲長円形のループ形状を有する受電コイル6は、送電コイル14の内周縁に近い内周側に配置される。このように、補聴器筐体2は外周縁の少なくとも一部は、位置決め部材12の内壁(周縁形状)に沿うように形成されて位置基準面を構成している。
【0028】
位置決め部材12は、補聴器1に対する位置決め尤度が広い構成になっている。図4及び図5に、補聴器1の位置決め形態の例を示す。図2に示した位置決め形態と図4に示す位置決め形態との比較から判るように、補聴器1は位置決め部材12内で回転可能であり、回動角度方向における位置決め尤度が確保されている。また、図5に示す位置決め形態の様に、ある程度の範囲であれば平行に移動も可能である。このような構成により、使用者は補聴器1を送電装置10にセットするときに、補聴器1の角度や位置をあまり気にする事無く操作可能である。
【0029】
上記構成の非接触電力伝送装置による効果について検証するために、以下のような実験を行った。実験に用いた装置の諸元は、以下のとおりである。
【0030】
送電コイル14は、外径65mm、内径55mm(平均半径rm=30mm)の平面上に巻かれたターン数5のスパイラルコイルとし、外付けコンデンサー(図示せず)を接続し、共振周波数が10MHzになるよう調整した。受電コイル6は、平面状に巻かれたターン数10のスパイラルコイルであり、外付けコンデンサー(図示せず)を接続して、同様に共振周波数が10MHzになるように調整した。受電コイル6の長径d11は45mm、短径d12は9mmである。
【0031】
長径d11、短径d12の定義は、図6に示すとおりである。すなわち、本実施の形態では、受電コイル6の湾曲長円形は、長円の長軸が円弧を形成して湾曲している。湾曲した長軸の円弧の中点と円弧の曲率中心を結ぶ方向に平行な線であって、受電コイル6の長手方向における外形の両端の半円にそれぞれ接する2本の接線を描き、その2本の接線間の距離を長径d11とする。また、湾曲した長軸の円弧に直交する方向における受電コイル6の幅を短径d12とする。
【0032】
また、送電コイル14が形成する下面と受電コイル6が形成する上面の間の距離、すなわち図3に示す距離hは、補聴器筐体2が、位置決め部材12の底面に接した状態で、約5mmである。上記距離hを5mmに保持して、送電コイル14の中心軸と受電コイル6の中心軸間の距離r(mm)を変化させて、コイル間の電送効率を測定した。この送電コイル14の中心軸と受電コイル6の中心軸間の距離を、以下の記載せはコイル中心間距離rと記述する。
【0033】
コイル中心間距離r(mm)の定義は、図6に示すそれぞれの距離r11,r12,r13の平均値とした。ここで、距離r11は、受電コイル6の一方の端部に形成された半円の曲率中心軸から送電コイル14の中心軸までの距離である。距離r12は、受電コイル6の他方の端部に形成された半円の曲率中心軸から送電コイル14の中心軸までの距離である。距離r13は湾曲した長軸の円弧の中点を通る軸から送電コイル14の中心軸までの距離である。
【0034】
以上のようにして測定した、送電コイル14と受電コイル6間の伝送効率は、図11に実施例1の特性線で示すとおりであった。図11において、横軸は、相対中心軸間距離(r/rm)を示す。相対中心軸間距離(r/rm)は、送電コイル平均半径rmに対するコイル中心間距離rの比であり、受電コイルと送電コイルの相対位置ずれを表す。
【0035】
ここで、コイル中心間距離r(mm)は、位置決め部材12と補聴器筐体2の外周部が近接した状態であれば、補聴器1の角度によらず一定である。すなわち、図2に示した状態でのコイル中心間距離rの値をra、図4に示した状態でのコイル中心間距離rの値をrbとし、位置決め部材により許容されるコイル中心間距離rの最大値をrmaxと記述すれば、それらの関係は、下記の式で表される。
【0036】
ra≒rb≒rmax
一方、図5に示した状態でのコイル中心間距離rの値をrcとし、位置決め部材により許容されるコイル中心間距離rの最小値をrminと記述すれば、それらの関係は、下記の式で表される。
【0037】
rc≒rmin
本実施の形態の一実施例では、rmax=25mm,rmin=16mmになるように設定した。言い換えれば、送電コイル14の平均半径rm=30mmに対する中心軸間距離rの比率である相対中心軸間距離(r/rm)が、約0.53〜0.83の範囲になる様に、補聴器1の外形および位置決め部材12の寸法が設定されている。
【0038】
図11の実施例1の特性線で示した電送効率は、送電装置10の位置決め部材12の側壁を取り払った状態にして、相対中心軸間距離(r/rm)の値を0.3から1.2の範囲で変化させて測定した結果を示すものである。縦の破線で示す範囲が、相対中心軸間距離(r/rm)の0.53〜0.83の範囲に相当する。
【0039】
図11から明らかな様に、上記構成の非接触電力伝送装置によれば、送電装置ケース11内で補聴器1の位置決め尤度が大きいにも関わらず、相対中心軸間距離(r/rm)が、約0.5〜0.83の範囲になる様にコイル中心間距離r設計することにより、送電コイル14と受電コイル間の電送効率は44%以上の高い値に保たれる。
【0040】
また、図18に示した従来例における補聴器装着凹部39の半径rm’は、本実施の形成の送電コイル14の平均半径rmにほぼ値が等しいので、r/rm≒r/rm’の関係が成り立ち、従来例と比較すると、十分広い範囲で、高い電送効率が実現出来る事が分かる。
【0041】
このように、使用者が補聴器を送電装置にセットするときに、補聴器の位置や姿勢について厳密な調整を行うことが不要でありながら、自動的に送電コイルと受電コイル間の電送効率として最大かそれに近い値が得られる。従って、操作時の負担が少ない。
【0042】
<実施の形態2>
実施の形態2における非接触電力伝送装置の構成について、図7〜図8を参照して説明する。本実施の形態も、受電装置を構成する小型の機器の一例として補聴器を対象とし、補聴器に対して電力伝送するために構成された非接触電力伝送装置に関するものである。図7は、補聴器(受電装置)22を含む非接触電力伝送装置の構成を示す平面図である。本実施の形態の構成は、補聴器22内の受電コイル23の形状以外は、実施の形態1の構成と同一であるため、同一の要素については同一の参照番号を付して、説明の繰り返しを簡略化する。
【0043】
本実施の形態における受電コイル23のループ形状は、長円形状である。受電コイル23の寸法の一例としては、長径d1を28mm、短径d2を8mmとすることができる。
【0044】
実施形態1と同様に、位置決め部材12と送電コイル14の形状は、送電コイル14の内縁の方がわずかに曲率半径は小さいが、ほぼ同一の曲線形状をしており、かつ補聴器筐体2の外縁形状もほぼそれに近い形状をしている。その結果、補聴器筐体2の外周部は、位置決め部材12の内壁にほぼ沿った位置に位置決めされる。その結果として、補聴器筐体2の内部に配置される長円形状の受電コイル23は、送電コイル14の内周縁部に沿った形で、かつその内周縁に近い位置に配置される。
【0045】
本実施の形態においても、補聴器1の外形状および位置決め部材12の形状は、実施形態1の場合と同一なので、使用者は補聴器22を送電装置10にセットするときに、補聴器22の角度や位置をあまり気にする事無く操作可能である。
【0046】
上記構成の非接触電力伝送装置による効果について検証するために、実施の形態1と同様に、送電コイル14が形成する面と受電コイル23が形成する面との距離hを5mmに保持して、送電コイル14の中心軸と受電コイル23の中心軸間のコイル中心間距離r(mm)を変化させて、コイル間の電送効率を測定した。受電コイル23の長径d21を28mm、短径d22を8mmとした以外は、実施の形態1と同様に諸元を設定した。
【0047】
コイル中心間距離r(mm)の定義は、図8に示すそれぞれの距離r21,r22,r23の平均値とした。ここで、r21は、受電コイル23の端部に形成される半円の曲率中心軸から送電コイル14の中心軸までの距離である。r22は、受電コイル23の他方の端部に形成された半円の曲率中心軸から送電コイル14の中心軸までの距離である。r23は、受電コイル23の長軸の中点を通る軸と送電コイル14の中心軸までの距離である。
【0048】
測定の結果を、図11に実施例2の特性線により示す。同図から明らかな様に、上記構成の非接触電力伝送装置によれば、送電装置ケース11内で補聴器22(受電装置)の位置決め尤度が大きいにも関わらず、送電コイル14の平均半径rm=30mmに対して、相対中心軸間距離(r/rm)が、約0.5〜0.83の範囲になる様に設計することにより、送電コイル14と受電コイル23間の電送効率は、40%以上の高い値が保たれる。
【0049】
このように、実施形態1と同様に、使用者が補聴器を送電装置にセットするときに、補聴器の位置や姿勢について厳密な調整を行うことが不要でありながら、自動的に送電コイルと受電コイル間の電送効率として最大かそれに近い値が得られる。従って、操作時の負担が少ない。
【0050】
<比較例1>
上記各実施の形態による効果を検証するために行った、比較例1の非接触電力伝送装置に関する測定について、以下に説明する。比較例1の非接触電力伝送装置の構成は、図9の平面図に示すとおりである。この装置は、実施の形態1〜2と同様、補聴器(受電装置)32に対して電力伝送するように構成されている。この比較例1の構成は、補聴器32内の受電コイル33以外は、実施の形態1と同様である。従って、同一の要素については同一の参照番号を付して、説明の繰り返しを簡略化する。
【0051】
受電コイル33の形状は、図9に示す様に円形状をしている。実施形態1と同様に、位置決め部材12と送電コイル14の内周縁形状は、送電コイル14の内周縁の方がわずかに曲率半径は小さいが、ほぼ同一の曲線形状をしており、かつ補聴器筐体2の外縁形状もほぼそれに近い形状をしている。その結果、補聴器筐体2の外周部は位置決め部材12の内壁にほぼ沿った位置に位置決めされ、結果として補聴器筐体2内部に配置された長円形状の受電コイル33は、送電コイル14の内周縁に沿った形で、かつその内周縁に近い位置に配置される。
【0052】
比較例1においても、補聴器32の外縁形状および位置決め部材12の形状は、実施の形態1と同一なので、実施形態1と同様に、使用者は補聴器32を送電装置10にセットするときに、補聴器32の角度や位置をあまり気にする事無く操作可能である。
【0053】
この構成の非接触電力伝送装置について、上記実施の形態の装置と比較するために、実施の形態1と同様に、送電コイル14が形成する面と受電コイル33が形成する面との距離hを5mmに保持して、送電コイル14の中心軸と受電コイル33の中心軸間のコイル中心間距離r(mm)を変化させて、コイル間の電送効率を測定した。コイル中心間距離r(mm)の定義は、図9に示す様に、送電コイル14の中心から受電コイル33の中心までの距離である。それ以外は、実施の形態1の場合と同様に諸元を設定した。
【0054】
測定の結果を、図11に比較例1の特性線で示す。同図から明らかな様に、比較例1の非接触電力伝送装置の場合、送電装置ケース11内で補聴器32(受電装置)の位置決め尤度が大きいにも関わらず、相対中心軸間距離(r/rm)は0.6から0.83の範囲になるように設計されており、自動的に送電コイル14と受電コイル33間の電送効率は、最大かそれに近い値が得られる構成になっている。しかし、その最大値は17%程度しかない。従って、受電コイルは、上記実施の形態の場合のように、湾曲長円形もしくは長円形状が望ましいことが判る。
【0055】
ここで、受電コイルの有効面積S1を、受電コイルの内径、外径の中間部より内側の面積と定義し、送電コイルの有効面積S2を、平均半径rmより内側の面と定義すると、この比較例1では、S1/S2=0.01となる。それに対して、実施の形態1,2ではS1/S2の値がそれぞれ0.11、0.05である。従って、S1/S2の値は、0.05以上であることが望ましい。また、一般的に磁界強度は、コイルの内周縁接線方向に添って強くなる。
【0056】
<比較例2>
上記各実施の形態による効果を検証するために行った、比較例2の非接触電力伝送装置に関する測定について、以下に説明する。比較例2の非接触電力伝送装置の構成は、図10の平面図に示すとおりである。この装置は、図7に示した実施の形態2の場合と同様の補聴器(受電装置)22に対して電力伝送するように構成されている。
【0057】
この比較例2の装置は、送電装置34における送電装置ケース35が実施の形態の場合と異なり、補聴器22に対する位置決め部材が設けられていない。従って、補聴器22内の長円形状の受電コイル23の長軸を縦方向に配列させても、送電装置34と補聴器22が干渉しない構造になっている。それ以外の構成は、実施の形態2と同様である。従って、同一の要素については同一の参照番号を付して、説明の繰り返しを簡略化する。
【0058】
この構成の非接触電力伝送装置について、上記実施の形態の装置と比較するために、送電コイル14が形成する面と受電コイル23が形成する面との距離hを5mmに保持し、図10に矢印で示す様に縦方向の移動に限定して、送電コイル14の中心軸と受電コイル23の中心軸間のコイル中心間距離r(mm)を変化させて、コイル間の電送効率を測定した。
【0059】
コイル中心間距離r(mm)の定義は、図10に示す様に、送電コイル14の中心軸から受電コイル23の中心までの距離である。それ以外は、実施の形態1の場合と同様に諸元を設定した。受電コイル23の中心の定義は、実施形態2と同一とした。
【0060】
測定の結果を、図11に比較例2の特性線により示す。同図から明らかな様に、比較例2の非接触電力伝送装置の場合、相対中心軸間距離(r/rm)の値を変えても、送電コイル14と受電コイル23間の伝達効率は、最大30%程度で、あまり伝達効率が向上しない事が分かった。
【0061】
ここで、比較例1で述べた受電コイルの有効面積S1と、送電コイルの有効面積S2の比率は、実施の形態2と同様にS1/S2=0.05であるが、長円の長軸の向きが、送電コイルの接線方向に添う形状ではない。受電コイルの形状を長円形状にしても、その長軸向きが、送電コイルの接線形状に添う配置でないと、送電コイルと受電コイル間の伝達効率が向上しないことが判る。
【0062】
<実施の形態3>
実施の形態3における非接触電力伝送装置の構成について、図12を参照して説明する。本実施の形態も、受電装置を構成する小型の機器の一例として補聴器を対象とし、補聴器に対して電力伝送するために構成された非接触電力伝送装置に関するものである。図12は、補聴器(受電装置)1を含む非接触電力伝送装置の構成を示す平面図である。本実施の形態の構成は、送電装置24における位置決め部材25が、矩形の角が丸くなった形状である以外は、実施の形態1と同様である。従って、同一の要素については同一の参照番号を付して、説明の繰り返しを簡略化する。
【0063】
上記構成でも、実施の形態1とほぼ同様の効果が期待できる。すなわち、補聴器1の外周形状は、送電コイル14の内周形状とほぼ同一の曲線形状をしており、その結果、補聴器筐体2の外周部は位置決め部材25の内壁にほぼ沿った位置に位置決めされる。その結果、補聴器筐体2内部に配置された湾曲長円形状の受電コイル6は、送電コイル14の形状に沿った形でかつ、実施の形態1,2と同様の、送電コイル14に対する相対位置に配置される。
【0064】
以上のように、送電コイル14の内周形状に対して、位置決め部材25の形状あるいは受電装置(補聴器)筐体の外周縁形状の少なくともいずれかが、ほぼ同一形状であれば、本発明の効果が得られる。
【0065】
実施の形態3においても、実施の形態1と同様に、使用者が補聴器を送電装置にセットするときに、補聴器の位置や姿勢について厳密な調整を行うことが不要でありながら、自動的に送電コイルと受電コイル間の電送効率として最大かそれに近い値が得られる。従って、操作時の負担が少ない。
【0066】
<実施の形態4>
実施の形態4における非接触電力伝送装置の構成について、図13を参照して説明する。本実施の形態は、受電装置を構成する機器の一例としてL字型充電式懐中電灯26を対象とし、電力伝送するために構成された非接触電力伝送装置に関するものである。図13は、L字型充電式懐中電灯26を含む非接触電力伝送装置の構成を示す平面図である。
【0067】
L字型充電式懐中電灯26は、長円形状を有する受電コイル27が、矩形状の筐体(受電コイル収容ケース)28内に収納された構成を有する。L字型充電式懐中電灯26について、受電コイル27以外に図示はしないが、コイン型2次電池、受電コイル27により発生する交流電流を整流する整流回路、およびコイン型2次電池への充放電制御を行う充放電制御回路、等が構成要素として含まれる。
【0068】
実施形態1、2と異なり、筐体(受電コイル収容ケース)28、送電装置29に設けられた位置決め部材30および送電コイル31は、直線状の構成からなる矩形形状あるいは矩形形状の集合体である。しかし、結果として、それらは送電コイル31の一部形状と同一の直線形状をしており、その結果、筐体28の外周部は、位置決め部材30の内壁にほぼ沿った位置に位置決めされる。その結果、筐体28内部に配置された長円形状を有する受電コイル27は、送電コイル31の内周エッジ部に近い内周側に配置される。
【0069】
本実施の形態では、一例として、送電コイル31のX軸中心から、送電コイル31の上方コイル部の外側と内側の平均位置までの距離をコイル平均距離をxmとすると、受電コイル27の長円X軸中心と送電コイル31のX軸中心までの距離xは、約0.6xmから0.7xmとする。
【0070】
これにより、実施の形態1,2と同様に、使用者がL字型充電式懐中電灯を送電装置にセットするときに、L字型充電式懐中電灯の位置や姿勢について厳密な調整を行うことが不要でありながら、自動的に送電コイルと受電コイル間の電送効率として最大かそれに近い値が得られる。従って、操作時の負担が少ない。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、装置操作の負担が少なく、しかも簡素な構造でありながら十分な伝送効率が得られるので、補聴器、携帯電話やデジタルカメラ等のモバイル機器等の小型機器の非接触電力伝送に好適である。
【符号の説明】
【0072】
1、22、32 補聴器(受電装置)
2 補聴器筐体(受電コイル収納ケース)
3 イアホン
4 連結部
5 コイン型2次電池
6、23、27、33 受電コイル
10、24、34、36 送電装置
11、35、37 送電装置ケース
12、25、30 位置決め部材
13 送電コイル収納部
14、31、38 送電コイル
15、20 電磁シールド部材
16 高周波ドライバー
17 制御回路
18 ヒンジ
19 蓋
21 蓋部内壁
26 L字型充電式懐中電灯
28 筐体
39 補聴器装着凹部
40 位置決め凸部
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触(ワイヤレス)で電力を伝送する非接触電力伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触で電力を伝送する方法として、電磁誘導(数100kHz)による電磁誘導型、電界または磁界共鳴を介したLC共振間伝送による電界・磁界共鳴型、電波(数GHz)によるマイクロ波送電型、あるいは可視光領域の電磁波(光)によるレーザ送電型が知られている。この中で既に実用化されているのは、電磁誘導型である。これは簡易な回路(トランス方式)で実現可能であるなどの優位性はあるが、送電距離が短いという課題もある。
【0003】
そこで、最近になって近距離伝送(〜2m)が可能な電界・磁界共鳴型の電力伝送が注目を浴びてきた。このうち、電界共鳴型の場合、伝送経路中に手などを入れると、人体が誘電体であるため、エネルギーを熱として吸収して誘電体損失を生じる。これに対して磁界共鳴型の場合、人体がエネルギーをほとんど吸収せず、誘電体損失を避けられる。この点から磁界共鳴型に対する注目度が上昇してきている。
【0004】
このような電磁誘導型や磁界共鳴型の構成により非接触で電力を送受電する場合、送電器に対して受電器が正しく置かれていないと、効率良く電力を伝送することができない。例えば、特許文献1に記載されているような磁界共鳴型の送受電装置は、電磁誘導を用いた送受電装置よりも比較的位置決め尤度が高いと言われているが、実用上、受電器に対する何らかの位置決め装置が必要である。
【0005】
特許文献1は、車両に設けられた受電コイルに対して送電コイルから電力を伝送する装置に関するものである。送電コイルに対する車両内の送電コイルを位置決めするために、送電コイルが送電する電力量と受電部が受電する電力量との相関に基づいて電力の受電状態を検知する受電状態検知手段と、受電状態検知手段が検知する受電状態が良くなるように受電コイルの位置を調整する受電コイル調整手段とを設けることが開示されている。受電コイル調整手段の例としては、受電コイルの位置を自在に変更可能な駆動ユニットが用いられ、駆動ユニットのサーボモータが作動することで受電コイルの位置を動かすように構成されている。地面に固定された送電ユニットに対して、受電コイルは駆動ユニットによって前後方向、左右方向、上下方向へ移動可能である。
【0006】
しかし、特許文献1に記載されているような自動車等の大型機器に関しては、その様な位置決め機構の存在は許容出来るが、補聴器等の小型機器に関しては、装置スペースおよび装置コストの観点から、その様な位置調整機構を備える事は許容できない。
【0007】
そのため、特許文献2に示されるような電動歯ブラシあるいは電動工具のような小型電気機器の場合は、やむを得ず、勘合部材による位置決めを用いていた。あるいは、位置ずれ尤度が少ない位置規制部材を配置することにより、受電コイルを内蔵する補聴器の位置をタイトに規制し、送電コイルとの相対位置がずれないような構成にしていた。そのような、補聴器を受電装置とし、位置ずれ尤度が少ない位置規制部材を備えた非接触電力伝送装置の例について、図14〜図17を参照して説明する。
【0008】
図14は、従来例の非接触電力伝送装置の受電装置である補聴器の構成を示す斜視図である。図15は、当該補聴器を含む非接触電力伝送装置の構成を示す平面図、図16はその断面図を示す。
【0009】
図14に示す補聴器32は、補聴器筐体2、イアホン3、及びそれらを連結する連結部4からなる。補聴器筐体2内には、電源となるコイン型2次電池5、及び円形の受電コイル33が収納されている。図15及び図16に示す送電装置36は、送電装置ケース37を有し、送電装置ケース37内に、送電コイル38、補聴器装着凹部39が配置され、補聴器装着凹部39内に位置決め凸部40が形成されている。補聴器装着凹部39の下部に送電コイル収納部13が設けられており、送電コイル38は送電コイル収納部13に収納されている。
【0010】
送電装置36により補聴器32に対する電力伝送を行うときには、補聴器32の内側に位置決め凸部40が嵌合するように補聴器32を装着する。それにより、受電コイル33と送電コイル38が整列して相対位置がずれないように位置規制され、効率良く電力を伝送することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−246348号公報
【特許文献2】特開平6−311660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記従来例のように、コスト増の許容値が小さい小型の民生機器に関しては、位置ずれ尤度が少ない位置規制部材を配置する事により、コスト抑制可能であるが、受電コイルを備えた機器を決まった場所に正確に装着する操作が必要があり、装置使用者の負担増になっていた。近年、機器取り扱いに関してはユニバーサル化が叫ばれており、特に高齢者の使用頻度が高くなる補聴器等は、低コストでかつ使用者の負担が小さい機器構成が望まれる。
【0013】
これに対して、図17に示すように、内側の位置決め凸部40を設けずに補聴器装着凹部39のみで位置規制する構成とすれば、位置決め尤度が大きくなる。しかし、図示したように、受電コイル33と送電コイル38の相対位置がずれ易くなり、このような状態になると、図18に示すように、電力伝送の効率は著しく低下する。図18において、受電コイル33と送電コイル38の相対位置ずれは、送電コイル38の中心軸と受電コイル33の中心軸の相対中心軸間距離(r/rm’)によって横軸に示される。rはコイル中心間距離、rm’は補聴器装着凹部39の半径である。r/rm’の値が0から縦の破線で示す狭い範囲のみで、実用的に十分な電送効率が得られることが判る。
【0014】
以上のことを考慮して、本発明は、送電装置内での受電装置の位置決め尤度が大きくて装置操作の負担が少なく、しかも簡素な構造でありながら十分な伝送効率が得られる位置決めが可能な非接触電力伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の非接触電力伝送装置は、共振コイルを含む送電コイルを有する送電装置と、共振コイルを含む受電コイルを有する受電装置とを備え、前記送電コイルと前記受電コイルの間の磁界共鳴を介して前記送電装置から前記受電装置へ電力を伝送するように構成され、前記送電装置は、少なくとも1個の前記送電コイルの少なくとも一部分の内周縁に沿った周縁形状を有する位置決め部を備え、前記受電装置は、前記受電コイルを収納する受電コイル収納ケースを備え、前記受電コイル収納ケースは外周縁の少なくとも一部が前記位置決め部の周縁形状に沿った位置基準面を形成し、前記受電コイルは、ループ形状が、長円形であるか、または長円形の長径方向の外周縁が湾曲した湾曲長円形であり、その長径方向の外周縁の少なくとも一部は前記受電コイル収納ケースの位置基準面に沿うように収納されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記構成の非接触電力伝送装置によれば、送電装置の位置決め部と受電コイル収納ケースの位置基準面の関係、及び受電コイルの受電コイル収納ケース内での配置の相互関係に基づき、送電装置内での受電装置の位置決め尤度が大きいにも関わらず、適切な範囲に維持できる。しかも、受電コイルのループ形状が長円形または湾曲長円形であることにより、送電コイルと受電コイル間で十分な伝送効率を得ることができる。従って、小型の装置に十分に適用可能な簡素な構造でありながら、装置操作の負担の少ない、高効率な使い勝手の良い非接触電力伝送装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態1における非接触電力伝送装置の受電装置を構成する補聴器を示す斜視図
【図2】同非接触電力伝送装置の送電装置に補聴器が装着された状態を示す平面図
【図3】同非接触電力伝送装置の図2に示した状態の断面図
【図4】同非接触電力伝送装置の送電装置における補聴器の位置決め形態の一例を示す平面図
【図5】同非接触電力伝送装置の送電装置における補聴器の位置決め形態の他の例を示す平面図
【図6】同非接触電力伝送装置の送電装置に対する補聴器の相対位置の定義を説明するための平面図
【図7】実施の形態2における非接触電力伝送装置の送電装置に受電装置を構成する補聴器が装着された状態を示す平面図
【図8】同非接触電力伝送装置の送電装置に対する補聴器の相対位置の定義を説明するための平面図
【図9】比較例1の非接触電力伝送装置の送電装置に補聴器が装着された状態を示す平面図
【図10】比較例2の非接触電力伝送装置の送電装置に補聴器が装着された状態を示す平面図
【図11】実施の形態1、2および比較例1、2の非接触電力伝送装置の伝送効率に関する特性を示す図
【図12】実施の形態3における非接触電力伝送装置の送電装置に受電装置の一態様である補聴器が装着された状態を示す平面図
【図13】実施の形態4における非接触電力伝送装置の送電装置に受電装置の一態様である懐中電灯が装着された状態を示す平面図
【図14】従来例の非接触電力伝送装置の受電装置である補聴器の構成を示す斜視図
【図15】同非接触電力伝送装置の送電装置に補聴器が装着された状態を示す平面図
【図16】同非接触電力伝送装置の図15に示した状態の断面図
【図17】同非接触電力伝送装置の課題を説明するための平面図
【図18】同非接触電力伝送装置の伝送効率に関する特性を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の非接触電力伝送装置は、上記構成を基本として、以下のような態様を採ることができる
すなわち、前記受電装置位置決め部は、前記送電装置に装着された前記受電装置を平面内方向における周囲を包囲する形状を有することが好ましい。それにより、送電装置内での受電装置の位置決め尤度を、適切な範囲内に容易に抑制することができる。その場合、前記送電コイルの形状は、円形もしくは正多角形とすることができる。
【0019】
また、前記位置決め部による前記受電コイル収納ケースの位置決め形態は、複数の形態を採ることが可能なように構成することができる。
【0020】
また、前記位置決め部により前記受電コイル収納ケースが位置決めされ、その結果、前記受電コイルが、前記送電コイルのループ形状の内周縁に対して位置決めされる構成とすることができる。
【0021】
また、前記位置決め部により決定される前記受電コイルと前記送電コイルの相対位置は、前記送電コイルから前記受電コイルへの電力伝送効率が、前記送電コイルと平行な面内において最大になるよう設定されていることが好ましい。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
<実施の形態1>
実施の形態1における非接触電力伝送装置の構成について、図1〜図3を参照して説明する。本実施の形態は、受電装置を構成する小型の機器の一例として補聴器を対象とし、補聴器に対して電力伝送するために構成された非接触電力伝送装置に関するものである。図1は、補聴器の構成を示す斜視図、図2は、当該補聴器を含む非接触電力伝送装置の構成を示す平面図、図3はその断面図を示す。なお、図2の平面図では、送電装置の蓋部等の図示が省略されている。
【0024】
図1に示す補聴器(受電装置)1は、補聴器筐体2、イアホン3、及びそれらを連結する連結部4からなる。補聴器筐体2内には、電源となるコイン型2次電池5、及び受電コイル6が収納されている。従って、補聴器筐体2は、受電コイル収納ケースを構成する。本実施の形態の特徴は、受電コイル6のループ形状の外形が、湾曲した長円形を成していることである。ここで、湾曲した長円形とは、長円形の長径に沿った外周縁が湾曲して略C字型を成していることを意味するものとする。以下の記載では、このループ形状を湾曲長円形と称する。
【0025】
図示は省略するが、補聴器筐体2内には更に、整流回路、充放電制御回路、および補聴器回路が収納されている。従って、受電コイル6により発生する交流電流は、整流回路により整流されて充放電制御回路に供給され、充放電制御回路によりコイン型2次電池5への充放電制御が行われる。また、補聴器回路は、イアホン3を駆動するための電力をコイン型2次電池5から供給される。
【0026】
図2及び図3に示す送電装置10は、送電装置ケース11を有し、送電装置ケース11内に補聴器1を位置規制する位置決め部材12が配置されている。位置決め部材12の下部に、送電コイル収納部13が設けられて、送電コイル14が収納されている。送電装置ケース11の内面と位置決め部材12の間には、送電コイル14から発生する電磁波が外部に漏れるのを防ぐ電磁シールド部材15が配置されている。送電装置ケース11内には更に、送電コイル14に高周波電流を供給する高周波回路16、及び送電装置10の動作を制御する制御回路17が収納されている。送電装置ケース11には、ヒンジ18を介して送電装置ケース用蓋19が連結されている。送電装置ケース用蓋19の内部には、蓋側電磁シールド部材20が配置され、その内側には蓋部内壁21が設けられている。
【0027】
位置決め部材12と送電コイル14の形状は、送電コイル14の内周縁の方がわずかに曲率半径は小さいが、ほぼ同一の曲線形状を有し、かつ補聴器筐体2の外周縁形状もほぼそれと同一の形状を有する。その結果、補聴器筐体2の外周縁は位置決め部材12の内壁にほぼ沿った位置に位置決めされ、結果として補聴器筐体2内部に配置されている湾曲長円形のループ形状を有する受電コイル6は、送電コイル14の内周縁に近い内周側に配置される。このように、補聴器筐体2は外周縁の少なくとも一部は、位置決め部材12の内壁(周縁形状)に沿うように形成されて位置基準面を構成している。
【0028】
位置決め部材12は、補聴器1に対する位置決め尤度が広い構成になっている。図4及び図5に、補聴器1の位置決め形態の例を示す。図2に示した位置決め形態と図4に示す位置決め形態との比較から判るように、補聴器1は位置決め部材12内で回転可能であり、回動角度方向における位置決め尤度が確保されている。また、図5に示す位置決め形態の様に、ある程度の範囲であれば平行に移動も可能である。このような構成により、使用者は補聴器1を送電装置10にセットするときに、補聴器1の角度や位置をあまり気にする事無く操作可能である。
【0029】
上記構成の非接触電力伝送装置による効果について検証するために、以下のような実験を行った。実験に用いた装置の諸元は、以下のとおりである。
【0030】
送電コイル14は、外径65mm、内径55mm(平均半径rm=30mm)の平面上に巻かれたターン数5のスパイラルコイルとし、外付けコンデンサー(図示せず)を接続し、共振周波数が10MHzになるよう調整した。受電コイル6は、平面状に巻かれたターン数10のスパイラルコイルであり、外付けコンデンサー(図示せず)を接続して、同様に共振周波数が10MHzになるように調整した。受電コイル6の長径d11は45mm、短径d12は9mmである。
【0031】
長径d11、短径d12の定義は、図6に示すとおりである。すなわち、本実施の形態では、受電コイル6の湾曲長円形は、長円の長軸が円弧を形成して湾曲している。湾曲した長軸の円弧の中点と円弧の曲率中心を結ぶ方向に平行な線であって、受電コイル6の長手方向における外形の両端の半円にそれぞれ接する2本の接線を描き、その2本の接線間の距離を長径d11とする。また、湾曲した長軸の円弧に直交する方向における受電コイル6の幅を短径d12とする。
【0032】
また、送電コイル14が形成する下面と受電コイル6が形成する上面の間の距離、すなわち図3に示す距離hは、補聴器筐体2が、位置決め部材12の底面に接した状態で、約5mmである。上記距離hを5mmに保持して、送電コイル14の中心軸と受電コイル6の中心軸間の距離r(mm)を変化させて、コイル間の電送効率を測定した。この送電コイル14の中心軸と受電コイル6の中心軸間の距離を、以下の記載せはコイル中心間距離rと記述する。
【0033】
コイル中心間距離r(mm)の定義は、図6に示すそれぞれの距離r11,r12,r13の平均値とした。ここで、距離r11は、受電コイル6の一方の端部に形成された半円の曲率中心軸から送電コイル14の中心軸までの距離である。距離r12は、受電コイル6の他方の端部に形成された半円の曲率中心軸から送電コイル14の中心軸までの距離である。距離r13は湾曲した長軸の円弧の中点を通る軸から送電コイル14の中心軸までの距離である。
【0034】
以上のようにして測定した、送電コイル14と受電コイル6間の伝送効率は、図11に実施例1の特性線で示すとおりであった。図11において、横軸は、相対中心軸間距離(r/rm)を示す。相対中心軸間距離(r/rm)は、送電コイル平均半径rmに対するコイル中心間距離rの比であり、受電コイルと送電コイルの相対位置ずれを表す。
【0035】
ここで、コイル中心間距離r(mm)は、位置決め部材12と補聴器筐体2の外周部が近接した状態であれば、補聴器1の角度によらず一定である。すなわち、図2に示した状態でのコイル中心間距離rの値をra、図4に示した状態でのコイル中心間距離rの値をrbとし、位置決め部材により許容されるコイル中心間距離rの最大値をrmaxと記述すれば、それらの関係は、下記の式で表される。
【0036】
ra≒rb≒rmax
一方、図5に示した状態でのコイル中心間距離rの値をrcとし、位置決め部材により許容されるコイル中心間距離rの最小値をrminと記述すれば、それらの関係は、下記の式で表される。
【0037】
rc≒rmin
本実施の形態の一実施例では、rmax=25mm,rmin=16mmになるように設定した。言い換えれば、送電コイル14の平均半径rm=30mmに対する中心軸間距離rの比率である相対中心軸間距離(r/rm)が、約0.53〜0.83の範囲になる様に、補聴器1の外形および位置決め部材12の寸法が設定されている。
【0038】
図11の実施例1の特性線で示した電送効率は、送電装置10の位置決め部材12の側壁を取り払った状態にして、相対中心軸間距離(r/rm)の値を0.3から1.2の範囲で変化させて測定した結果を示すものである。縦の破線で示す範囲が、相対中心軸間距離(r/rm)の0.53〜0.83の範囲に相当する。
【0039】
図11から明らかな様に、上記構成の非接触電力伝送装置によれば、送電装置ケース11内で補聴器1の位置決め尤度が大きいにも関わらず、相対中心軸間距離(r/rm)が、約0.5〜0.83の範囲になる様にコイル中心間距離r設計することにより、送電コイル14と受電コイル間の電送効率は44%以上の高い値に保たれる。
【0040】
また、図18に示した従来例における補聴器装着凹部39の半径rm’は、本実施の形成の送電コイル14の平均半径rmにほぼ値が等しいので、r/rm≒r/rm’の関係が成り立ち、従来例と比較すると、十分広い範囲で、高い電送効率が実現出来る事が分かる。
【0041】
このように、使用者が補聴器を送電装置にセットするときに、補聴器の位置や姿勢について厳密な調整を行うことが不要でありながら、自動的に送電コイルと受電コイル間の電送効率として最大かそれに近い値が得られる。従って、操作時の負担が少ない。
【0042】
<実施の形態2>
実施の形態2における非接触電力伝送装置の構成について、図7〜図8を参照して説明する。本実施の形態も、受電装置を構成する小型の機器の一例として補聴器を対象とし、補聴器に対して電力伝送するために構成された非接触電力伝送装置に関するものである。図7は、補聴器(受電装置)22を含む非接触電力伝送装置の構成を示す平面図である。本実施の形態の構成は、補聴器22内の受電コイル23の形状以外は、実施の形態1の構成と同一であるため、同一の要素については同一の参照番号を付して、説明の繰り返しを簡略化する。
【0043】
本実施の形態における受電コイル23のループ形状は、長円形状である。受電コイル23の寸法の一例としては、長径d1を28mm、短径d2を8mmとすることができる。
【0044】
実施形態1と同様に、位置決め部材12と送電コイル14の形状は、送電コイル14の内縁の方がわずかに曲率半径は小さいが、ほぼ同一の曲線形状をしており、かつ補聴器筐体2の外縁形状もほぼそれに近い形状をしている。その結果、補聴器筐体2の外周部は、位置決め部材12の内壁にほぼ沿った位置に位置決めされる。その結果として、補聴器筐体2の内部に配置される長円形状の受電コイル23は、送電コイル14の内周縁部に沿った形で、かつその内周縁に近い位置に配置される。
【0045】
本実施の形態においても、補聴器1の外形状および位置決め部材12の形状は、実施形態1の場合と同一なので、使用者は補聴器22を送電装置10にセットするときに、補聴器22の角度や位置をあまり気にする事無く操作可能である。
【0046】
上記構成の非接触電力伝送装置による効果について検証するために、実施の形態1と同様に、送電コイル14が形成する面と受電コイル23が形成する面との距離hを5mmに保持して、送電コイル14の中心軸と受電コイル23の中心軸間のコイル中心間距離r(mm)を変化させて、コイル間の電送効率を測定した。受電コイル23の長径d21を28mm、短径d22を8mmとした以外は、実施の形態1と同様に諸元を設定した。
【0047】
コイル中心間距離r(mm)の定義は、図8に示すそれぞれの距離r21,r22,r23の平均値とした。ここで、r21は、受電コイル23の端部に形成される半円の曲率中心軸から送電コイル14の中心軸までの距離である。r22は、受電コイル23の他方の端部に形成された半円の曲率中心軸から送電コイル14の中心軸までの距離である。r23は、受電コイル23の長軸の中点を通る軸と送電コイル14の中心軸までの距離である。
【0048】
測定の結果を、図11に実施例2の特性線により示す。同図から明らかな様に、上記構成の非接触電力伝送装置によれば、送電装置ケース11内で補聴器22(受電装置)の位置決め尤度が大きいにも関わらず、送電コイル14の平均半径rm=30mmに対して、相対中心軸間距離(r/rm)が、約0.5〜0.83の範囲になる様に設計することにより、送電コイル14と受電コイル23間の電送効率は、40%以上の高い値が保たれる。
【0049】
このように、実施形態1と同様に、使用者が補聴器を送電装置にセットするときに、補聴器の位置や姿勢について厳密な調整を行うことが不要でありながら、自動的に送電コイルと受電コイル間の電送効率として最大かそれに近い値が得られる。従って、操作時の負担が少ない。
【0050】
<比較例1>
上記各実施の形態による効果を検証するために行った、比較例1の非接触電力伝送装置に関する測定について、以下に説明する。比較例1の非接触電力伝送装置の構成は、図9の平面図に示すとおりである。この装置は、実施の形態1〜2と同様、補聴器(受電装置)32に対して電力伝送するように構成されている。この比較例1の構成は、補聴器32内の受電コイル33以外は、実施の形態1と同様である。従って、同一の要素については同一の参照番号を付して、説明の繰り返しを簡略化する。
【0051】
受電コイル33の形状は、図9に示す様に円形状をしている。実施形態1と同様に、位置決め部材12と送電コイル14の内周縁形状は、送電コイル14の内周縁の方がわずかに曲率半径は小さいが、ほぼ同一の曲線形状をしており、かつ補聴器筐体2の外縁形状もほぼそれに近い形状をしている。その結果、補聴器筐体2の外周部は位置決め部材12の内壁にほぼ沿った位置に位置決めされ、結果として補聴器筐体2内部に配置された長円形状の受電コイル33は、送電コイル14の内周縁に沿った形で、かつその内周縁に近い位置に配置される。
【0052】
比較例1においても、補聴器32の外縁形状および位置決め部材12の形状は、実施の形態1と同一なので、実施形態1と同様に、使用者は補聴器32を送電装置10にセットするときに、補聴器32の角度や位置をあまり気にする事無く操作可能である。
【0053】
この構成の非接触電力伝送装置について、上記実施の形態の装置と比較するために、実施の形態1と同様に、送電コイル14が形成する面と受電コイル33が形成する面との距離hを5mmに保持して、送電コイル14の中心軸と受電コイル33の中心軸間のコイル中心間距離r(mm)を変化させて、コイル間の電送効率を測定した。コイル中心間距離r(mm)の定義は、図9に示す様に、送電コイル14の中心から受電コイル33の中心までの距離である。それ以外は、実施の形態1の場合と同様に諸元を設定した。
【0054】
測定の結果を、図11に比較例1の特性線で示す。同図から明らかな様に、比較例1の非接触電力伝送装置の場合、送電装置ケース11内で補聴器32(受電装置)の位置決め尤度が大きいにも関わらず、相対中心軸間距離(r/rm)は0.6から0.83の範囲になるように設計されており、自動的に送電コイル14と受電コイル33間の電送効率は、最大かそれに近い値が得られる構成になっている。しかし、その最大値は17%程度しかない。従って、受電コイルは、上記実施の形態の場合のように、湾曲長円形もしくは長円形状が望ましいことが判る。
【0055】
ここで、受電コイルの有効面積S1を、受電コイルの内径、外径の中間部より内側の面積と定義し、送電コイルの有効面積S2を、平均半径rmより内側の面と定義すると、この比較例1では、S1/S2=0.01となる。それに対して、実施の形態1,2ではS1/S2の値がそれぞれ0.11、0.05である。従って、S1/S2の値は、0.05以上であることが望ましい。また、一般的に磁界強度は、コイルの内周縁接線方向に添って強くなる。
【0056】
<比較例2>
上記各実施の形態による効果を検証するために行った、比較例2の非接触電力伝送装置に関する測定について、以下に説明する。比較例2の非接触電力伝送装置の構成は、図10の平面図に示すとおりである。この装置は、図7に示した実施の形態2の場合と同様の補聴器(受電装置)22に対して電力伝送するように構成されている。
【0057】
この比較例2の装置は、送電装置34における送電装置ケース35が実施の形態の場合と異なり、補聴器22に対する位置決め部材が設けられていない。従って、補聴器22内の長円形状の受電コイル23の長軸を縦方向に配列させても、送電装置34と補聴器22が干渉しない構造になっている。それ以外の構成は、実施の形態2と同様である。従って、同一の要素については同一の参照番号を付して、説明の繰り返しを簡略化する。
【0058】
この構成の非接触電力伝送装置について、上記実施の形態の装置と比較するために、送電コイル14が形成する面と受電コイル23が形成する面との距離hを5mmに保持し、図10に矢印で示す様に縦方向の移動に限定して、送電コイル14の中心軸と受電コイル23の中心軸間のコイル中心間距離r(mm)を変化させて、コイル間の電送効率を測定した。
【0059】
コイル中心間距離r(mm)の定義は、図10に示す様に、送電コイル14の中心軸から受電コイル23の中心までの距離である。それ以外は、実施の形態1の場合と同様に諸元を設定した。受電コイル23の中心の定義は、実施形態2と同一とした。
【0060】
測定の結果を、図11に比較例2の特性線により示す。同図から明らかな様に、比較例2の非接触電力伝送装置の場合、相対中心軸間距離(r/rm)の値を変えても、送電コイル14と受電コイル23間の伝達効率は、最大30%程度で、あまり伝達効率が向上しない事が分かった。
【0061】
ここで、比較例1で述べた受電コイルの有効面積S1と、送電コイルの有効面積S2の比率は、実施の形態2と同様にS1/S2=0.05であるが、長円の長軸の向きが、送電コイルの接線方向に添う形状ではない。受電コイルの形状を長円形状にしても、その長軸向きが、送電コイルの接線形状に添う配置でないと、送電コイルと受電コイル間の伝達効率が向上しないことが判る。
【0062】
<実施の形態3>
実施の形態3における非接触電力伝送装置の構成について、図12を参照して説明する。本実施の形態も、受電装置を構成する小型の機器の一例として補聴器を対象とし、補聴器に対して電力伝送するために構成された非接触電力伝送装置に関するものである。図12は、補聴器(受電装置)1を含む非接触電力伝送装置の構成を示す平面図である。本実施の形態の構成は、送電装置24における位置決め部材25が、矩形の角が丸くなった形状である以外は、実施の形態1と同様である。従って、同一の要素については同一の参照番号を付して、説明の繰り返しを簡略化する。
【0063】
上記構成でも、実施の形態1とほぼ同様の効果が期待できる。すなわち、補聴器1の外周形状は、送電コイル14の内周形状とほぼ同一の曲線形状をしており、その結果、補聴器筐体2の外周部は位置決め部材25の内壁にほぼ沿った位置に位置決めされる。その結果、補聴器筐体2内部に配置された湾曲長円形状の受電コイル6は、送電コイル14の形状に沿った形でかつ、実施の形態1,2と同様の、送電コイル14に対する相対位置に配置される。
【0064】
以上のように、送電コイル14の内周形状に対して、位置決め部材25の形状あるいは受電装置(補聴器)筐体の外周縁形状の少なくともいずれかが、ほぼ同一形状であれば、本発明の効果が得られる。
【0065】
実施の形態3においても、実施の形態1と同様に、使用者が補聴器を送電装置にセットするときに、補聴器の位置や姿勢について厳密な調整を行うことが不要でありながら、自動的に送電コイルと受電コイル間の電送効率として最大かそれに近い値が得られる。従って、操作時の負担が少ない。
【0066】
<実施の形態4>
実施の形態4における非接触電力伝送装置の構成について、図13を参照して説明する。本実施の形態は、受電装置を構成する機器の一例としてL字型充電式懐中電灯26を対象とし、電力伝送するために構成された非接触電力伝送装置に関するものである。図13は、L字型充電式懐中電灯26を含む非接触電力伝送装置の構成を示す平面図である。
【0067】
L字型充電式懐中電灯26は、長円形状を有する受電コイル27が、矩形状の筐体(受電コイル収容ケース)28内に収納された構成を有する。L字型充電式懐中電灯26について、受電コイル27以外に図示はしないが、コイン型2次電池、受電コイル27により発生する交流電流を整流する整流回路、およびコイン型2次電池への充放電制御を行う充放電制御回路、等が構成要素として含まれる。
【0068】
実施形態1、2と異なり、筐体(受電コイル収容ケース)28、送電装置29に設けられた位置決め部材30および送電コイル31は、直線状の構成からなる矩形形状あるいは矩形形状の集合体である。しかし、結果として、それらは送電コイル31の一部形状と同一の直線形状をしており、その結果、筐体28の外周部は、位置決め部材30の内壁にほぼ沿った位置に位置決めされる。その結果、筐体28内部に配置された長円形状を有する受電コイル27は、送電コイル31の内周エッジ部に近い内周側に配置される。
【0069】
本実施の形態では、一例として、送電コイル31のX軸中心から、送電コイル31の上方コイル部の外側と内側の平均位置までの距離をコイル平均距離をxmとすると、受電コイル27の長円X軸中心と送電コイル31のX軸中心までの距離xは、約0.6xmから0.7xmとする。
【0070】
これにより、実施の形態1,2と同様に、使用者がL字型充電式懐中電灯を送電装置にセットするときに、L字型充電式懐中電灯の位置や姿勢について厳密な調整を行うことが不要でありながら、自動的に送電コイルと受電コイル間の電送効率として最大かそれに近い値が得られる。従って、操作時の負担が少ない。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、装置操作の負担が少なく、しかも簡素な構造でありながら十分な伝送効率が得られるので、補聴器、携帯電話やデジタルカメラ等のモバイル機器等の小型機器の非接触電力伝送に好適である。
【符号の説明】
【0072】
1、22、32 補聴器(受電装置)
2 補聴器筐体(受電コイル収納ケース)
3 イアホン
4 連結部
5 コイン型2次電池
6、23、27、33 受電コイル
10、24、34、36 送電装置
11、35、37 送電装置ケース
12、25、30 位置決め部材
13 送電コイル収納部
14、31、38 送電コイル
15、20 電磁シールド部材
16 高周波ドライバー
17 制御回路
18 ヒンジ
19 蓋
21 蓋部内壁
26 L字型充電式懐中電灯
28 筐体
39 補聴器装着凹部
40 位置決め凸部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振コイルを含む送電コイルを有する送電装置と、
共振コイルを含む受電コイルを有する受電装置とを備え、
前記送電コイルと前記受電コイルの間の磁界共鳴を介して前記送電装置から前記受電装置へ電力を伝送する非接触電力伝送装置において、
前記送電装置は、少なくとも1個の前記送電コイルの少なくとも一部分の内周縁に沿った周縁形状を有する位置決め部を備え、
前記受電装置は、前記受電コイルを収納する受電コイル収納ケースを備え、
前記受電コイル収納ケースは外周縁の少なくとも一部が前記位置決め部の周縁形状に沿った位置基準面を形成し、
前記受電コイルは、ループ形状が、長円形であるか、または長円形の長径方向の外周縁が湾曲した湾曲長円形であり、その長径方向の外周縁の少なくとも一部は前記受電コイル収納ケースの位置基準面に沿うように収納されていることを特徴とする非接触電力伝送装置。
【請求項2】
前記受電装置位置決め部は、前記送電装置に装着された前記受電装置を平面内方向における周囲を包囲する形状を有する請求項1記載の非接触電力伝送装置。
【請求項3】
前記送電コイルの形状は、円形もしくは正多角形である請求項2記載の非接触電力伝送装置。
【請求項4】
前記位置決め部による前記受電コイル収納ケースの位置決め形態は、複数の形態を採ることが可能である請求項1記載の非接触電力伝送装置。
【請求項5】
前記位置決め部により前記受電コイル収納ケースが位置決めされ、その結果、前記受電コイルが、前記送電コイルのループ形状の内周縁に対して位置決めされる請求項1〜3のいずれか1項記載の非接触電力伝送装置。
【請求項6】
前記位置決め部により決定される前記受電コイルと前記送電コイルの相対位置は、前記送電コイルから前記受電コイルへの電力伝送効率が、前記送電コイルと平行な面内において最大になるよう設定されている請求項5記載の非接触電力伝送装置。
【請求項1】
共振コイルを含む送電コイルを有する送電装置と、
共振コイルを含む受電コイルを有する受電装置とを備え、
前記送電コイルと前記受電コイルの間の磁界共鳴を介して前記送電装置から前記受電装置へ電力を伝送する非接触電力伝送装置において、
前記送電装置は、少なくとも1個の前記送電コイルの少なくとも一部分の内周縁に沿った周縁形状を有する位置決め部を備え、
前記受電装置は、前記受電コイルを収納する受電コイル収納ケースを備え、
前記受電コイル収納ケースは外周縁の少なくとも一部が前記位置決め部の周縁形状に沿った位置基準面を形成し、
前記受電コイルは、ループ形状が、長円形であるか、または長円形の長径方向の外周縁が湾曲した湾曲長円形であり、その長径方向の外周縁の少なくとも一部は前記受電コイル収納ケースの位置基準面に沿うように収納されていることを特徴とする非接触電力伝送装置。
【請求項2】
前記受電装置位置決め部は、前記送電装置に装着された前記受電装置を平面内方向における周囲を包囲する形状を有する請求項1記載の非接触電力伝送装置。
【請求項3】
前記送電コイルの形状は、円形もしくは正多角形である請求項2記載の非接触電力伝送装置。
【請求項4】
前記位置決め部による前記受電コイル収納ケースの位置決め形態は、複数の形態を採ることが可能である請求項1記載の非接触電力伝送装置。
【請求項5】
前記位置決め部により前記受電コイル収納ケースが位置決めされ、その結果、前記受電コイルが、前記送電コイルのループ形状の内周縁に対して位置決めされる請求項1〜3のいずれか1項記載の非接触電力伝送装置。
【請求項6】
前記位置決め部により決定される前記受電コイルと前記送電コイルの相対位置は、前記送電コイルから前記受電コイルへの電力伝送効率が、前記送電コイルと平行な面内において最大になるよう設定されている請求項5記載の非接触電力伝送装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−85351(P2013−85351A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222797(P2011−222797)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
[ Back to top ]