説明

非着磁性粒子中の着磁性粒子の捕集方法および捕集装置

【課題】シリカやアルミナなどの非着磁性粒子中から着磁性粒子を短時間で効率的に捕集する方法および捕集装置の提供。
【解決手段】着磁性粒子を含む非着磁性粒子を液体中に分散させてスラリーとし、該スラリーを樋1と磁石3の隙間の流路5流すことにより、前記スラリーを磁石に接触させて着磁性粒子を捕集することを特徴とする、非着磁性粒子中の着磁性粒子の捕集方法および捕集装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非着磁性粒子中の着磁性粒子の捕集方法および捕集装置に関する。具体的には、例えばシリカやアルミナなどの非着磁性粒子中から着磁性粒子を捕集する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばシリカやアルミナなどの非着磁性粒子中から着磁性粒子を捕集する方法は、従来から提案されており、例えば、特許第4195243号公報(下記特許文献1)には、非着磁性粒子を水に分散させ、磁石を該スラリーに浸漬し、攪拌して磁石に捕捉する方法が記載されている。
【0003】
しかし、この特許文献1の方法では、必ずしも着磁性粒子が磁石に付着しないという問題があった。即ち、攪拌速度が速すぎると磁石と着磁性粒子が近づいても磁石に捕集されず、逆に攪拌速度が遅すぎると十分にスラリーが攪拌されないという問題があるうえ、磁石を浸漬して攪拌する工程を比較的長時間行わなければ十分な効果は得られず、1日に何度も行う場合には適用できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4195243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、例えばシリカやアルミナなどの非着磁性粒子中から着磁性粒子を短時間で効率的に捕集する方法および捕集装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前述の課題を解決するために鋭意検討の結果なされたものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(1)着磁性粒子を含む非着磁性粒子を液体中に分散させてスラリーとし、該スラリーをU字型の溝を有する樋と磁石の隙間の流路に流すことにより、前記スラリーを磁石に接触させて着磁性粒子を捕集することを特徴とする、非着磁性粒子中の着磁性粒子の捕集方法。
(2)(1)に記載の着磁性粒子の捕集方法に用いる捕集装置であって、U字型の溝を有する樋と、該溝に設けられた複数の突起を有し、該突起に磁石を固定することにより、前記樋と磁石との間にスラリーの流路を設けたことを特徴とする、非着磁性粒子中の着磁性粒子の捕集装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、磁石の周りにスラリーを安定して通すことができるため、従来の方法と比較して、半導体封止材用に用いるフィラーなどにおける非着磁性粒子中の着磁性粒子を多く、且つ安定して捕集することができ、具体的には下記のような産業上有用な著しい効果を奏する。
【0008】
1)スラリーを磁石と樋の間の細い流路を通すことで流体中の着磁性粒子と磁石との距離を一定以内とすることができ、よって同じ強さの磁石を用いても従来よりもより磁力の強い部分を通すことができるため捕集効率が上がる。
【0009】
2)樋を用いることで、従来の方法とは異なりスラリーの流速を減速することができる。流速を遅くすることで着磁性粒子が磁石の傍を通過する速度が遅くなり着磁性粒子が従来より捕集され易くなる。
【0010】
3)従来の方法では比較的長い時間の攪拌時間が必要であったが、本発明の方法は傾斜させた着磁性粒子捕集装置の流路を通すだけでよく、従来よりも短時間で着磁性粒子を捕集することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に用いる樋を例示する図である。
【図2】本発明に用いる磁石を樋に固定した状態の着磁性粒子捕集装置を例示する図である。
【図3】本発明の着磁性粒子の捕集装置の部分詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明を実施するための形態について、以下に説明する。本発明の非着磁性粒子中の着磁性粒子の捕集方法は、非着磁性粒子を液体中に分散させてスラリーとし、該スラリーをU字型の溝を有する樋と磁石の隙間の流路に流すことにより、前記スラリーを磁石に接触させて着磁性粒子を捕集することを特徴とする。本発明に用いる非着磁性粒子は、平均粒径が0.1〜50μm程度の、例えばシリカやアルミナなどの粒子をいう。
【0013】
1)着磁性粒子捕集装置
まず、本発明の着磁性粒子捕集装置について図3を用いて説明する。本発明の捕集装置は、前記スラリーと接触させて着磁性粒子を捕集するための磁石3と、前記磁石を設置するためのU字型の溝を有する樋1、樋1の内側に突起2を設け、磁石3が着脱可能に固定されると共に樋1との間に流路5が形成されるように構成する。本着磁性粒子捕集装置は、流路5の片側からスラリーを流し入れられるようになっており、流路5に流入したスラリーは磁石3と一定距離以内で接触できるので、スラリー中の着磁性粒子を従来より効率よく短時間に捕集する手段を提供するものである。
【0014】
本装置では、樋1の溝部の突起2は、磁石3を固定でき、流路5のスラリーの流れに支障が生じなければ配置や形状は自由である。また、流路5の幅は狭い方が捕集効率は上がるが、あまり狭くしすぎるとスラリー中の非着磁性粒子や磁石3に捕集された着磁性粒子によって流路5の詰まりが発生するため、スラリー中の粒子径や着磁性粒子の量、スラリー粘度などに合わせて流路の幅を調節することが好ましいが、調節が困難な構造の場合は広めに設定することが望ましいため、流路5の幅は着磁性粒子を含む非着磁性粒子の最大粒径の2倍〜10倍程度としておくのが良い。
【0015】
また、磁石3を長くし、流路5が長くなるようにすれば捕集能力は上がるので好ましいが、あまり長いと磁石の着脱、あるいは着磁性粒子の回収作業の容易性が落ちることもあるので、磁石の長さは10〜50cm程度が好ましい。また、磁石の磁力を強くすれば捕集率が上がるため磁石の表面磁束密度は3000ガウス以上が好ましい。
【0016】
図3では、磁石3に薄い鞘4を被せているが、これは捕集した着磁性粒子を容易に回収するためである。つまり、薄い鞘4を被せた磁石3でスラリー中の着磁性粒子を捕集し、着磁性粒子が付着した磁石3を鞘4を被せたまま樋1から取り出し、磁石3を外して鞘4に付着した着磁性粒子を純水等で洗い落とせば着磁性粒子を容易に回収することができる。この鞘4は、着磁性粒子を捕集後、回収する必要が無ければ必ずしも必要ではないが、着磁性粒子の洗浄除去のためにも鞘を被せている方が作業は容易である。尚、被せる鞘の素材は磁石3に着脱し易く、磁石3の着磁性を妨げず、着磁性粒子の付着・回収が容易な表面性状であり、スラリーに不純物として混入しにくいあるいは混入しても非着磁性粒子に影響が少ない素材であればどのような素材でもよく、金属、樹脂、セラミックス等のいずれの素材で形成しても良い。
【0017】
2)着磁性粒子の捕集工程
非着磁性粒子に含まれる着磁性粒子の捕集方法を次に記す。本方法では、まず着磁性粒子を含む非着磁性粒子を液体に分散させてスラリーとする。前記液体は、非着磁性粒子および着磁性粒子の分散性、非反応性等を考慮して適宜選択すればよいが、例えば、非着磁性粒子がシリカやアルミナの場合は、アルコール、またはアセトンなどの有機溶媒をそのまままたは混合して用いても良く、またこれらの溶媒と水を混合して用いても良い。また、作製したスラリーは均一に分散していることが望ましいが、流路5の内部で著しく沈殿するようなことがなければ若干不均一であっても差し支えない。
【0018】
次に、図2に例示したような磁石3を固定した着磁性粒子捕集装置を、流路5のスラリー流入側から流出側に適度な傾斜を付けて固定し、流路5の流入側からスラリーを一定流量で流し込む。するとスラリーが磁石3と流路5の間を流れ、流路5のスラリー流出側から流出する間にスラリー中の着磁性粒子が磁石3に付着する。尚、着磁性粒子が磁石3に捕集された後のスラリーは、流路5の流出側に設置したスラリー回収容器(図示せず)に回収される。
上記着磁性粒子捕集装置の傾斜角度は、水平に近いほどスラリーがゆっくり流れて着磁性粒子の捕集率が上がるので好ましいが、粘度が高いスラリー等の場合には流速が落ちるので捕集に時間がかかる。そのため、傾斜角度はスラリー性状に合わせて適宜調整することになるが、例えば、シリカやアルミナのような非着磁性粒子の比較的粘度の低いスラリーでは、水平方向から45度以下が好ましい。
【0019】
また、スラリーの流量を下げるほど捕集率が上がるため好ましいが、流量を下げ過ぎると全体量を処理する時間が長くなるので、スラリーの流量もスラリー性状に合わせて適宜決定する。例えば、シリカやアルミナのようなスラリーでは、捕集率と処理時間を考慮すると100〜1000ml/分程度とするのがよい。
【0020】
3)着磁性粒子の回収工程
次に、上記2)で捕集した着磁性粒子の回収法を説明する。尚、本説明では鞘4を被せた磁石3を用いて着磁性粒子を捕集した場合の操作を示す。前記着磁性粒子捕集装置から着磁性粒子の付着した磁石3を鞘4ごと取り出す。そして磁石3の鞘4に付着した着磁性粒子を洗い落として回収するためビーカー等の回収容器の上部に移動する。次に磁石3を鞘4から外すことにより、鞘4に付着していた着磁性粒子がビーカーに落ちる。さらに、着磁性粒子を変質させない液体、例えば純水等で洗い落とすことにより、鞘4に付着していた着磁性粒子を容器に全て回収することができる。
【0021】
この着磁性粒子の回収工程は、スラリー全量が流出した後に実施すれば付着した粒子全量を一度の操作で回収できるが、着磁性粒子が多く付着すると捕集効率が落ちたり、着磁した粒子が再度流れ出たりするため、ある程度着磁性粒子が付着した時点で着磁性粒子を回収することが望ましい。
【0022】
容器に回収した着磁性粒子は、フィルター等を利用して液体中から回収することができる。その個数や大きさを測定すれば、非着磁性粒子中の着磁性粒子数量を把握でき、さらに、形状や組成を分析することにより着磁性粒子の発生源を特定することができる。
【0023】
また、上記2)で流出回収したスラリーは着磁性粒子が除去されているので、本方法は着磁性粒子を含まない非着磁性粒子を製造することにも利用できる。
【実施例】
【0024】
<発明例>
シリカ粒子(新日鉄マテリアルズ株式会社製HS−101)300gを1000ml容器に計量し、これに水を1000ml入れてスラリーを作り、均一に分散されるように攪拌した。一方、磁石(日本マグネティックス製)に磁石と密着する金属鞘を被せ、着磁性粒子を捕集するための磁石を作成した。これを予め作成しておいたU字型の溝をもつ樋に設置し、樋が水平から20度傾斜するように着磁性粒子捕集装置を固定した。
【0025】
磁石を設置した樋にスラリーを流速500ml/分で流し込んだ。スラリー全量が流出した後、着磁性粒子捕集装置から着磁性粒子の付着した磁石3を取り出す。そして鞘を被せた磁石に付着した着磁性粒子を洗い落とすために磁石をビーカーの上部に移動した。次に鞘を被せた磁石から磁石を外すことにより、鞘に付着していた着磁性粒子がビーカーに落ちる。さらに純水等で洗い落とし、鞘に付着していた着磁性粒子をビーカーに捕集した。
【0026】
ビーカーの着磁性粒子をフィルターで回収し、画像解析装置を用いて数量をカウントした結果を表1に示す。
尚、表1に記載の回数は、同じシリカフィラーを用いて上記の手順を繰り返し実施した回数を示す。
【0027】
<比較例>
発明例と同様のスラリーを作製し、スラリーの入ったビーカーに磁石を浸漬し、実施例でかかった時間と同様の時間攪拌した。攪拌終了後、磁石を取り出し、流水で洗い流して着磁性粒子をビーカーに回収した。着磁性粒子の水からの回収と数量のカウントは発明例と同様に行った。結果を表1に示す。
表1に示すように、発明例では、回収された着磁性粒子の数が比較例に比べて著しく多く、本発明例のほうが効率的に着磁性粒子を回収できるという効果が確認された。
【0028】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、シリカやアルミナなどの非着磁性粒子中に含まれる着磁性粒子を効率よく捕集、回収することが出来る方法および装置に関し、本発明により回収した着磁性粒子の個数や大きさを測定することで非着磁性粒子中の着磁性粒子の数量を把握することに役立つだけでなく、形状や組成を分析することにより発生源を特定することができる。そしてこれらの分析結果を用いて更なる着磁性粒子発生源の対策に役立たせることができ、各種非着磁性粒子の製造開発、特に半導体封止材用のフィラー製造に利用できる。
【符号の説明】
【0030】
1 樋
2 突起
3 磁石
4 鞘
5 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着磁性粒子を含む非着磁性粒子を液体中に分散させてスラリーとし、該スラリーをU字型の溝を有する樋と磁石の隙間の流路に流すことにより、前記スラリーを磁石に接触させて着磁性粒子を捕集することを特徴とする、非着磁性粒子中の着磁性粒子の捕集方法。
【請求項2】
請求項1に記載の着磁性粒子の捕集方法に用いる捕集装置であって、U字型の溝を有する樋と、磁石を固定する為に該溝に設けられた複数の突起を有し、該突起に磁石を固定することにより、前記樋と磁石との間にスラリーの流路を設けたことを特徴とする、非着磁性粒子中の着磁性粒子の捕集装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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