説明

非磁性・非着磁性車椅子

【解決課題】本発明は、磁気を発生するMRI等の診断装置を有する施設内に患者を乗せて入ることができる非磁性・非着磁性車椅子を提供する。
【解決手段】非磁性・非着磁性のキャスター10と非磁性・非着磁性大車輪25と該車輪25を固定する非磁性・非着磁性タックルブレーキ37を、非磁性・非着磁性のフレーム51で構成された車椅子に着設して非磁性・非着磁性の車椅子100とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
非磁性・非着磁性の車輪(非磁性かつ非着磁性の車輪)、非磁性・非着磁性のタックルブレーキ(非磁性かつ非着磁性のタックルブレーキ)を装着した非磁性・非着磁性の車椅子(非磁性かつ非着磁性車椅子)に関する。より詳しくは、車椅子の側面に着設する車輪を非磁性・非着磁性の車輪とし、さらに当該車輪を固定するタックルブレーキを非磁性・非着磁性のタックルブレーキとして車椅子に着設して、MRI等の診断装置が設置された施設内に持ち込むことができる非磁性・非着磁性車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
強力な磁気を発生するMRI(Magnetic Resonance Imaging)の診断装置等の近傍に磁性を有する器具を近づけると、MRI本体に向けて器具が移動し、患者に衝突する等の事故が発生している。近年、MRIの磁気出力の向上に伴い、MRIに関連する事故の発生を防止するために、非磁性・非着磁性の車椅子の開発が望まれている。
【0003】
特許文献1の発明は、特許文献2の段落[0020]「また、本発明の折り畳み式車椅子において、全ての構成部材が非磁性体からなることが好ましい。この場合、MRI検査の際に使用するのに適する。」車椅子が開示されている。そして、非磁性体にするために、引用文献1の車椅子は、段落[0024]「右枠体10は、右側板13、右側板13の後端辺に設けられた右グリップ板14、右側板13の下端辺に設けられた右幕板15、右側板13の上端辺に設けられた右アームレスト板16及び右幕板15の外側面から前方に延びる右フットレスト板17を有している。右グリップ板14の上部後面には、後方に延びる右グリップ板14gが取付けられている。図2に示すように、右フットレスト板17の前端部には、蝶番17tにより固定された足乗せ台17dが取付けられている。この足乗せ台17dは、水平に延びた状態と垂直に延びた状態との間を揺動可能である。これら右枠体10の構成部材は、SUS304製の蝶番17tを除いて全て木製である。」と記載されている。
【0004】
上記のように、特許文献1の車椅子の蝶番は非磁性のステンレスSUS304を用いており、それ以外の材料は木製であり、強度や耐久性の面で問題があり、非磁性・非着磁性の材料を用いた頑強な車椅子の出現が望まれている。
【特許文献1】特開2008−259668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、磁気を発生するMRI等の診断装置を有する施設内に患者を乗せて入ることができる非磁性・非着磁性車椅子(非磁性かつ非着磁性車椅子)を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
磁気を発生するMRI(Magnetic Resonance Imaging)等の診断装置を有する施設内に持ち込むことができる非磁性・非着磁性車椅子を提供するために鋭意研究を重ねた結果、車椅子の側面に着設する車輪と、該車輪を固定するタックルブレーキを非磁性体・非着磁性体(非磁性体かつ非着磁性体)で作製して、アルミ等の非磁性体・非着磁性体で作製したフレームで構成された非磁性・非着磁性車椅子等に着設して、MRI等の磁気を発生する診断装置を有する施設内に持ち込むことができる非磁性・非着磁性車椅子を創成した。
【0007】
本願発明の特徴は、非磁性・非着磁性の車椅子であって、非磁性・非着磁性の大車輪と該大車輪を固定する非磁性・非着磁性タックルブレーキを、非磁性・非着磁性のフレームで構成された車椅子に着設して非磁性・非着磁性の車椅子としたことを特徴とする非磁性・非着磁性車椅子である。
【0008】
さらなる特徴は、非磁性・非着磁性の車椅子であって、非磁性・非着磁性の小車輪と該小車輪を固定する非磁性・非着磁性タックルブレーキを、非磁性・非着磁性のフレームで構成された車椅子に着設して非磁性・非着磁性の車椅子としたことを特徴とする非磁性・非着磁性車椅子である。
【0009】
さらなる特徴は、前記非磁性・非着磁性の車椅子のフレームとボルトとナットがアルミ製のフレームと非磁性体・非着磁性体よりなるボルトとナットであることを特徴とする非磁性・非着磁性車椅子である。
【0010】
さらなる特徴は、前記非磁性・非着磁性車椅子のフレームとボルトとナットが非磁性・非着磁性ステンレスのフレームと非磁性体・非着磁性体よりなるボルトとナットであることを特徴とする非磁性・非着磁性車椅子である。
【0011】
さらに、本願発明の非磁性・非着磁性車椅子は磁気を発するMRI等の診断装置に引き寄せられることもなく、長時間MRIの施設内に放置しても磁気を帯びない特徴を有している。
【0012】
本願明細書中で「非磁性体」、「非着磁性体」とは、非磁性・非着磁性ステンレス(例えば、SUS304)、アルミニウム、シンチュウ、チタン、合成樹脂等をいう。非磁性・非着磁性のベアリング、非磁性・非着磁性のボルト、非磁性・非着磁性のナット、非磁性・非着磁性のワッシャー、非磁性・非着磁性のフレーム、非磁性・非着磁性のホイール等は、例えば、非磁性・非着磁性ステンレス(例えば、SUS304)、アルミニウム、シンチュウ、チタン、合成樹脂等で製造されたものをいう。
【発明の効果】
【0013】
車輪に非磁性・非着磁性のベアリングを用いると共に、合成樹脂製のワッシャーを着設して摺動性の良い非磁性・非着磁性の大車輪として、非磁性・非着磁性のフレームで構成された車椅子に着設してMRI等の磁気を発する装置を着設した近傍で使用できる非磁性・非着磁性車椅子が提供できる。さらに、非磁性・非着磁性のタックルブレーキを用いると共に、アルミ製のホイール、又は合成樹脂製のホイールにゴムタイヤを装着した車輪とすることによって、静かな非磁性・非着磁性車椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】非磁性・非着磁性のキャスターの側面図である。
【図2】非磁性・非着磁性のキャスターの正面図である。
【図3】非磁性・非着磁性の大車輪の側面図である。
【図4】非磁性・非着磁性の小車輪の側面図である。
【図5】非磁性・非着磁性のタックルブレーキの分解斜視図である。
【図6】非磁性・非着磁性の自走用車椅子の側面図である。
【図7】非磁性・非着磁性の自走用車椅子の背面図である。
【図8】非磁性・非着磁性の車椅子の部分側面図である。
【図9】非磁性・非着磁性の介護用車椅子の側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に図面を用いて本発明の実施の態様についていくつかの好ましい形態を例示するが、特許請求の範囲に記載された発明の範囲を限定することは意図するものではない。
【実施例1】
【0016】
非磁性・非着磁性キャスター
非磁性・非着磁性キャスター10は図1の(1−1)に示すように、非磁性・非着磁性キャスターの車輪部分は、非磁性・非着磁性のホイール12にゴム製のタイヤ11を装着した車輪がヨーク13に軸着されている。ヨーク13の上部にはワッシャー14が挿嵌されたシャフトインナーゴム15が上下に装着され、非磁性・非着磁性の小判ナット16で固定されている。非磁性・非着磁性キャスター10の回動部分は円で囲ったA部分を図1の(1−2)に詳細に示している。図1の(10−2)に示すように、キャスターの回動部分の上部に非磁性・非着磁性のキャスターシャフト24が着設され、その下に非磁性・非着磁性のヨークキャップ17を冠着する。ヨークキャップ17の下に合成樹脂製のワッシャー14a、14b(本願発明では、14aに(商標)オイレス#80ワッシャー、14bに(商標)オイレス#83ワッシャーを使用した。)を装着して、樹脂製のベアリングカラー19を挟んで上下に非磁性・非着磁性のベアリング18(本願発明では(商標)シンチュウベアリングA5を使用した。)を挿着した。ベアリング18の下には、合成樹脂製のワッシャー14a、14bを装着した。ベアリング18の上下に合成樹脂製のワッシャー14a、14bを挿着してナット20、20で固定した。合成樹脂製のワッシャー14a、14bを挿着することによって摺動性を良好にすると共に、静かな非磁性・非着磁性のキャスター10とすることができた。
【0017】
図2の(2−1)は非磁性・非着磁性のキャスター10の正面図を示しており、円で囲ったB部分の詳細な図面を図2の(2−2)に示す。図2の(2−2)に示すように、ホイール12はヨーク13にラジアル軸21で軸着され、ホイール12とヨーク13の間にキャスターカラー22、22が挿着されている。ホイール12は非磁性・非着磁性ベアリング18b、18b(本願発明においては、シンチュウベアリング(ラジアル)を使用した。)で軸着されている。さらにヨーク13の外側にもベアリング18a(本願発明においては、シンチュウベアリングを使用した。)を着設し、車軸ナット23で固定して、非磁性・非着磁性のキャスター10とした。
【実施例2】
【0018】
非磁性・非着磁性車輪
非磁性・非着磁性大車輪25は、図3の(3−1)に示すように、タイヤ27は非磁性・非着磁性のホイール28に着設されており、この側面にハンドリム29が着設されている。図3の(3−2)に示すように、タイヤ27はホイールの車軸32に非磁性・非着磁性のベアリング35、35(本願発明ではシンチュウベアリングを用いた。)を、ワッシャー33、33(本願発明では合成樹脂製のワッシャーを用いた。)を挟んで、車軸32の外側はヒールキャップ31で固定した。車軸32の内側はワッシャー33の次に幅だしカラー34を着設してナット36、36で固定した。ハンドリム29は図3の(3−3)に示すように、キャップボルト30(本願発明ではチタン製を使用した。)によりタイヤホイール28に着設した。
【0019】
非磁性・非着磁性小車輪26は、図4の(4−1)に示すように、タイヤ27は非磁性・非着磁性のホイール28に着設されている。図4の(4−2)に示すように、タイヤ27はホイール28の車軸32に非磁性・非着磁性のベアリング35、35(本願発明ではシンチュウベアリングを用いた。)を、ワッシャー33、33(本願発明では合成樹脂製のワッシャーを用いた。)を挟んで、車輪の外側はヒールキャップ31で固定した。車輪の内側はワッシャー33の次に幅だしカラー34を着設してナット36、36で固定した。
【実施例3】
【0020】
非磁性・非着磁性タックルブレーキ
本願発明の非磁性・非着磁性車椅子に着設する非磁性・非着磁性タックルブレーキ37は図5に示すように、ブレーキレバー38、操作棒39、ブレーキテコ40、タックル本体41、ブレーキリンク42、及びブレーキシュー43からなっている。操作棒39はブレーキテコ40の上部より挿入して六角穴付きボルト44で軸着する。ブレーキテコ40の下部にタックル本体41をタックルブレーキカラー45を介して着設し、六角穴付きボルト44とナイロンナット46で固定した。さらに、ブレーキテコ40の先端部にブレーキリンク42を六角穴付きボルト44と樹脂製のワッシャ33とシンチュウのワッシャー33で軸着した。タックル本体41の一方端をブレーキシュ43の上部にバネ47を付勢すると共に、タックルブレーキカラー45を介してワッシャー33と六角穴付きボルト44とナイロンナット46で軸着した。ブレーキシュ43の下部に前記ブレーキリンク42の一端を六角穴付きボルト44で軸着した。
【実施例4】
【0021】
非磁性・非着磁性車椅子
図6は、背もたれ部48と座部49と前方にフットレスト50が着設された非磁性・非着磁性フレーム51よりなる自走用の車椅子100に非磁性・非着磁性大車輪25とその前方に非磁性・非着磁性キャスター10と非磁性・非着磁性のタックルブレーキ37が着設された自走用の非磁性・非着磁性車椅子100である。非磁性・非着磁性キャスター10、非磁性・非着磁性大車輪25、非磁性・非着磁性タックルブレーキ37を非磁性・非着磁性のフレーム51よりなる自走用の車椅子に装着して自走用の非磁性・非着磁性車椅子100とすることができる。
【0022】
図7は非磁性・非着磁性キャスター10、非磁性・非着磁性大車輪25、非磁性・非着磁性タックルブレーキ37を着設した自走用の非磁性・非着磁性車椅子100の背面図を示している。非磁性・非着磁性のフレームで構成されたフレーム51と非磁性・非着磁性のキャスター10が着設された自走用の非磁性・非着磁性車椅子100に非磁性・非着磁性ハンドリム29を着設し、非磁性・非着磁性大車輪25を着設した自走用の非磁性・非着磁性車椅子である。ここに着設した非磁性・非着磁性大車輪25を固定するために非磁性・非着磁性のタックルブレーキ37が着設されている。
【0023】
図8の(8−A)は、図6のA部分の詳細図であり、非磁性・非着磁性クロスバーの接続方法を示している。可動部はキャップボルト30を挿通して合成樹脂製のワッシャー33を介してナイロンナット46で軸着している。図8の(8−B)はクロスバーのフレーム51への着設方法を示すもので、本体下部フレームにクロスバーの下部を本体フレーム51にキャップボルト30と合成樹脂製のワッシャー33を介してナイロンナット46で軸着している。図8の(8−C)は図7のC部分の部分拡大図で、非磁性・非着磁性のタックルブレーキ37の着設方法を示している。非磁性・非着磁性のタックルブレーキ37は車椅子本体の非磁性・非着磁性のサイドフレームにキャップボルト30でブレーキカラー45をシンチュウワッシャー33を介して合成樹脂製のナット36で着設した。
【0024】
図9は背もたれ部48と座部49と前方にフットレスト50が着設された非磁性・非着磁性フレーム51よりなる介護用の車椅子に非磁性・非着磁性小車輪26とその前方に非磁性・非着磁性キャスター10と非磁性・非着磁性のタックルブレーキ37が着設された介護用の非磁性・非着磁性車椅子200である。非磁性・非着磁性のフレームよりなる介護用の車椅子に実施例1の非磁性・非着磁性キャスター10、実施例2の非磁性・非着磁性小車輪26、実施例3の非磁性・非着磁性タックルブレーキ37をそれぞれ着設して介護用の非磁性・非着磁性車椅子200とすることができる。
【符号の説明】
【0025】
100:本発明の自走用の非磁性・非着磁性車椅子
200:本発明の介護用の非磁性・非着磁性車椅子
10:非磁性・非着磁性キャスター
11:タイヤ
12:ホイール
13:ヨーク
14:ワッシャー
15:シャフトインナーゴム
16:小判ナット
17:ヨークキャップ
18:ベアリング
19:ベアリングカラー
20:ナット
21:ラジアル軸
22:キャスターカラー
23:車軸ナット
24:キャスターシャフト
25:非磁性・非着磁性大車輪
26:非磁性・非着磁性小車輪
27:タイヤ
28:ホイール
29:ハンドリム
30:キャップボルト
31:ヒールキャップ
32:車軸
33:ワッシャー
34:幅だしカラー
35:ベアリング
36:ナット
37:非磁性・非着磁性タックルブレーキ
38:ブレーキレバー
39:操作棒
40:ブレーキテコ
41:タックル本体
42:ブレーキリンク
43:ブレーキシュー
44:ボルト
45:タックルブレーキカラー
46:ナイロンナット
47:バネ
48:背もたれ部
49:座部
50:フットレスト
51:フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性・非着磁性の車椅子であって、非磁性・非着磁性のキャスターと非磁性・非着磁性大車輪と該大車輪を固定する非磁性・非着磁性タックルブレーキを、非磁性・非着磁性のフレームで構成された車椅子に着設して非磁性・非着磁性の車椅子としたことを特徴とする非磁性・非着磁性車椅子。
【請求項2】
非磁性・非着磁性の車椅子であって、非磁性・非着磁性のキャスターと非磁性・非着磁性小車輪と該小車輪を固定する非磁性・非着磁性タックルブレーキを、非磁性・非着磁性のフレームで構成された車椅子に着設して非磁性・非着磁性の車椅子としたことを特徴とする非磁性・非着磁性車椅子。
【請求項3】
前記非磁性・非着磁性のフレームを係止するボルトとナットがアルミ製のボルトとナットで係止されていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の非磁性・非着磁性車椅子。
【請求項4】
前記非磁性・非着磁性のフレームを係止するボルトとナットが非磁性・非着磁性ステンレスのボルトとナットで係止されていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の非磁性・非着磁性車椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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