説明

非線形的な季節的時系列を予測するための方法

【課題】季節パターン及び過去の値と未来の値との間の非線形的な関係を有する時系列の過去の値から時系列の未来の値を予測するための方法を提供する。
【解決手段】指数平滑法、及びカーネルを用いた季節的時系列データの動的モデリングを使用し、短期電力需要を予測する。カーネルは、ガウスカーネルを使用した最小二乗放射基底関数回帰又はサポートベクトル回帰のような非線形関数を使用して、過去の値から時系列の未来の値を予測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、季節パターン及び過去の値と未来の値との間の非線形的な関係を有する時系列の過去の値から時系列の未来の値を予測することに関し、より詳細には、季節変動に基づいて短期電力需要を予測することに関する。
【背景技術】
【0002】
時系列は値の配列であり、たとえば、日平均気温の配列、又は或る地理的領域に関する日ごとの最大電気負荷の配列である。季節パターンは、既知の期間を有する、何らかの特有なほぼ反復するパターンである。たとえば、日ごとの気温の時系列は、1年の期間の、夏は気温がより高く、冬は気温がより低いという反復するパターンを有する。日ごとの電気負荷の時系列は、人間の活動の週ごとのパターンに起因する1週間の期間の季節パターンを有する。日ごとの電気負荷の時系列は、気候条件と共に電力需要が変化することに主に起因して発生する、1年の期間の季節パターンも有する。1つの時系列が異なる期間の複数の季節パターンを有することも可能である。たとえば、時系列予測のタスクは、時系列の過去の値に基づいて、翌日の日平均気温、又はこの先一週間の日平均気温を予測することである。
【0003】
季節的時系列Xを予測するための従来の方法は、以下に示すホルトウィンター平滑化を使用する。
【0004】
【数1】

【0005】
ここで、Lは時刻tにおける局所平均レベルを表し、Tは時刻tにおける傾向を表し、Iは時刻tにおける季節指数を表す。パラメーターαは平均レベルを更新するための平滑化パラメーターを表し、γは傾向を更新するための平滑化パラメーターを表し、δは季節指数を更新するための平滑化パラメーターを表し、pは季節パターンの持続期間を表す。
【0006】
時刻tにおいて行われる未来の値kの予測X(^)は、以下である。ここで、「X(^)」は、Xの上に推定値を表すハット「^」が付されていることを示す。
【0007】
【数2】

【0008】
各時間ステップtにおいてL、T、及びIを更新すると共に、予測方程式(4)を使用することによって、時系列の未来の値を予測することができる。
【0009】
レベル及び傾向の項を使用することによって、ホルトウィンター平滑化は、時系列の非季節的成分の単純な線形モデルを想定する。この線形推定はいくつかの時系列には適しているが、全ての時系列に適しているわけではない。
【発明の概要】
【0010】
本発明の実施の形態は、非線形的な季節的時系列データを予測するための方法を提供する。より詳細には、本方法は短期電力需要を予測する。本方法は、動的な季節的時系列データを、カーネルを用いてモデリングすることによる、ホルトウィンターの従来の指数平滑法に対する改善である。カーネルは、サポートベクトル回帰を使用して時系列の未来の値を予測するのに使用される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態による、時系列を予測するための方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態は、季節パターン及び過去の値と未来の値との間の非線形的な関係を有する時系列の過去の値から時系列の未来の値を予測するための方法を提供する。より詳細には、本方法は季節変動に基づいて短期電力需要を予測する。
【0013】
本方法では、ホルトウィンター平滑化における線形推定を、より一般的な、過去の値と未来の値との非線形的な関係に置き換える。本方法は以下の更新方程式を使用する。
【0014】
【数3】

【0015】
ここで、Lは時刻tにおける局所平均レベルを表し、Iは時刻tにおける季節指数を表す。2つの補助パラメーターのうち、αは平均レベルを更新するための平滑化パラメーターを表し、δは季節指数を更新するための平滑化パラメーターを表す。pは季節パターンの期間を表す。推定値X(^)(1)は、未来に時刻tの1つの時間ステップにおいて行われる予測である。本方法は従来の方法のように傾向を使用しないことに留意されたい。
【0016】
ベクトルLは、何らかの値mについて、過去のレベル値、すなわちL=[L,Lt−1,...,Lt−mを記憶する。Tは転置演算子である。
【0017】
非線形関数F(L)を使用して、過去のレベル値に基づいて現在のレベルLを推定する。関数F(L)は、時間ステップtごとに推定することができる。
【0018】
図1は、本方法のステップを示している。ステップは、当該技術分野において既知のメモリ及び入力/出力インターフェースを備えるプロセッサ100において実行することができる。本方法は以下のように進行する。
【0019】
パラメーターα及びδ、並びにL、I及びFの初期値を選択し(110)、次の観測値L(131)ごとに以下のステップを実行する。
【0020】
式(7)のようにX(^)(1)=It−p(L)を求める(120)。
【0021】
次の時間ステップtについて観測値L131を取得し、式(5)及び式(6)に従ってL及びIを更新する(130)。
【0022】
Lの過去の値から次のF(L)141を推定する(140)。
【0023】
関数F(L)の推定は、任意の非線形的な推定技法、たとえばガウスカーネルを使用した最小二乗放射基底関数(RBF)回帰又はサポートベクトル回帰を使用して行うことができる。
【0024】
たとえば、ベクトルLの最後のN個の値、すなわち{L,Lt−1,...,Lt−M+1}をトレーニングデータとして用いたRBF回帰を使用してF(L)を推定することができる。
【0025】
1つの応用形態では、本方法は電力需要を予測するが、本発明は任意の非線形的な時系列を予測するのに使用することができる。
【0026】
本発明を好ましい実施形態の例として説明してきたが、本発明の精神及び範囲内で様々な他の適応及び変更を行うことができることは理解されたい。したがって、添付の特許請求の範囲の目的は、本発明の真の精神及び範囲内に入るすべての変形及び変更を包含することである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時系列の過去の値から該時系列の未来の値を予測するための方法であって、Lは時刻tにおける初期局所平均レベルの値であり、Iは時刻tにおける季節指数の値であり、αは平均レベルを更新するための平滑化パラメーターであり、δは季節指数を更新するための平滑化パラメーターであり、pは季節パターンの持続期間であり、該方法は、次の局所平均レベルLごとに、
X(^)(1)=It−p(L)を求めるステップであって、X(^)(1)は、未来に時刻tの1つの時間ステップにおいて行われる予測であり、Fは局所レベル平均のベクトルLの非線形関数である、求めるステップと、
以下に従って前記局所平均L及び前記季節指数を更新するステップと、
【数1】

Lの過去の値から次のF(L)を推定するステップと、
を含み、前記求めるステップ、前記更新するステップ、及び前記推定するステップはプロセッサにおいて実行される、方法。
【請求項2】
前記時系列は、短期電力需要である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記時系列は、季節パターン及び前記過去の値と前記未来の値との間の非線形的な関係を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記非線形関数は、最小二乗放射基底関数である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記非線形関数は、ガウスカーネルを使用するサポートベクトル回帰である、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−159282(P2011−159282A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−282107(P2010−282107)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(597067574)ミツビシ・エレクトリック・リサーチ・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド (484)
【住所又は居所原語表記】201 BROADWAY, CAMBRIDGE, MASSACHUSETTS 02139, U.S.A.