説明

面ファスナー要素

本発明は、好ましくはプラスチック材料で作られる、非導電性基材(4)を有し、前記基材が接着面(6)を画定し、前記接着面から接着要素(8)が延び、前記接着要素が面ファスナーを形成するために相手要素と掛合可能であり、前記接着面(6)の内面に少なくとも1つの電気導体ワイヤ(14)が存在する面ファスナー要素であって、前記基材は長手方向を画定する基材帯(4)の形態で設けられており、前記基材帯はその長さの少なくとも一部にわたって少なくとも1つの導体で巻装されていることを特徴とする面ファスナー要素に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくはプラスチック材料から作られる、1つの非導電性基材を有し、当該基材が接着面を画定し、当該接着面から接着要素が延び、当該接着要素が面ファスナーを形成するために相手要素と掛合可能であり、当該接着面の内面に少なくとも1つの電気導体ワイヤを設けてなる面ファスナー要素に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な面ファスナー要素は、特許文献1に開示されている。特許文献1が提案する電気接点装置は、導電性表面を有するフック・ループ結合を備えている。この接点装置が含む少なくとも2つの接触要素は、それぞれ可撓性基材帯を有する。この基材帯は、フック・ループ構造を備えた接触領域を有し、このフック・ループ構造はフック・ループ結合を形成するために互いに掛合可能であり、かつ、多大な技術的複雑性を有することなく電気的結合を実現する。各基材帯の給電領域に導体ストリップが配置されており、この給電領域は、好ましくは各基材帯の主面上にある。フック・ループ構造を有する接触領域も各基材帯の主面上に配置されており、この基材帯は好ましくはフック・ループ構造を有さない。2つの基材帯のフック・ループ構造は互いに相補的であるように金属ワイヤから−フックとループとして−作られており、接触させると互いに係合する。あるいは、フック・ループ構造は金属で被覆された表面を有する細いプラスチック繊維を含む。
【0003】
特許文献2は、導電性ポリマー系の他の導電性面ファスナーに関する。この面ファスナーは、導電性材料を充填した導電性ポリマーおよび/またはプラスチック複合体を含む。例えばポリ−(3,4)−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)および/またはポリアニリン(PANI)等の高導電性ポリマーは、安価であり、面ファスナーに用いるのに十分役立つものである。生産のために、材料は繊維として延伸して面ファスナーに織り込むことができ、或いは、別のポリマーへの表面被覆として塗布することができ、従って、面ファスナーの両方の側に直接塗布することができる。
【0004】
特許文献3は、第1および第2の導電性織物部分を含む導電性織物の接点接続に関するものである。この場合、第1の織物表面に係着または一体化された第1の導電性接触面は、第2の織物表面とこの表面に係着または一体化された第2の導電性接触面とに脱離可能なように結合されている。織物の適用は、例えば文字列で印刷された材料片であり、材料片の下側はフック表面とループ表面を有し、当該表面に導電性織物の導体パッドが一体化されている。被服片の一部等の織物の相補側で一連の他の導電性パッドがフック・ループ不織布内で係着されている。材料片のフック・ループ表面と織物のフック・ループ不織布との間にフック・ループ結合を実現する間に、導体パッド間の導電性結合は、フック・ループ表面とフック・ループ不織布との押付けによって実現される。
【0005】
特許文献4が開示している扁平横断面を有する電気導体は、フックまたはループを備えた電気絶縁材料に埋封された導電性材料を有する。電気絶縁材料は少なくとも一方の外面に面ファスナーのフックまたはループを有する。この構成のゆえに、このような電気導体は、面ファスナー型結合によって、専用に設けられた組立品の表面に係着することができ、特に織物状表面を有する自動車の内装品に係着することができる。こうして接着接合は、耐久性のあるフック・ループ結合に置き換えられる。この目的を達成するために、通常の面ファスナー帯は絶縁材料として利用することができる。電気導体の両方の外面がフックおよび/またはループを有する場合、当該導体は両側で、適宜に形成された内装品または機能面に係着することができる。当該電気導体は、フレキシブルフラットリボンケーブルまたはフレキシブルプリント回路とすることができる。
【0006】
商標名”Kletten”として広く知られている面ファスナーの構成要素として、このような面ファスナー要素は多数の接着要素を有し、これらの接着要素は茎状基部とともに、頭側にファスナー体を形成しており、好ましくは基材と一体的に結合される。これらのファスナー体は茸頭、フックまたはループの形状を有していてよい。この場合、茎部長さがしばしば1 mm未満である接着要素は、密集したパターン配置で分散しており、基材から突出する掛合体は、結果として面ファスナーを完全なものにするように他の面ファスナー要素の相手要素との係止係合が実現するような間隔で互いに離れるように配置されている。
【0007】
面ファスナーを有利に利用することのできる多種多様な使用可能性または利用可能性において、面ファスナーは合成材料から作られたシステムの構成要素であるという状況がしばしば生じる。そのような状況としては、例えば、合成繊維を含む織物構造またはプラスチック材料等から作られた支持構造を挙げることができる。そのような材料の電気絶縁性に起因して、一定の条件のもとで、そのようなファスナーを取扱う者の健康への悪影響や、放電または電界による電子システムへの障害等、付随する弊害を伴う静電荷が生じたりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2006 039 134号明細書
【特許文献2】国際公開第2005/025362号パンフレット
【特許文献3】独国特許出願公開第10 2004 042 397号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第101 05 089号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この問題性を考慮して、本発明の課題は、非導電性基材を有するにもかかわらず電位生成の有害な作用に対抗して働き、かつ、製造が容易である面ファスナー要素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によればこの課題は、請求項1の特徴をその全体として有する面ファスナー要素によって解決される。
【0011】
本発明によれば、請求項1の特徴部分により、基材は長手方向を画定する基材帯の形態で設けられており、この基材帯はその長さの少なくとも一部にわたって少なくとも1つの導体ワイヤが巻装されている。同時に、製造は巻付けプロセスによって特に容易に行われる。
【0012】
非導電性材料製である基材の接着面の内面は、少なくとも1つの電気導体を有する。それゆえに、絶縁材料で構成されたシステムにもかかわらず、電気状態または静電状態に影響を及ぼす手段が例えば静電荷の散逸用に設けられる。
【0013】
基材帯にわたって連続した導体ワイヤを、交差することなく巻き付けて巻線に形成すると、このような巻線は有利なことに静電荷の散逸に利用できるだけでなく、外部機器により生成する電流の電気導体を、例えば制御機能用制御線または発熱抵抗器として形成することもできる。面ファスナーを加温または加熱する可能性は、例えば過酷な気候条件に曝された人物用の機能性衣服に当該面ファスナーが利用されるとき、特に有利なことがある。これに関して、面ファスナーの凍結を避けるのが有利なことがある。このために、周知の如くに自動温度調節を可能とするPTC(正温度係数(positive temperature coefficient))導体部品を当該導体に備えるようにすることができる。
【0014】
本発明に係る面ファスナー要素の好ましい一実施形態において、巻線層内の少なくとも1つの導体ワイヤは交差することなく連続的に基材帯に配置されている。さらに、当該少なくとも1つの導体ワイヤが基材帯の一方の端から他方の端へと延びていると有利である。
【0015】
本発明に係る面ファスナー要素の他の好ましい一実施形態において、少なくとも1つの導体ワイヤが少なくとも2つの巻線層を形成するように基材帯の周りに巻装することによって、交差するワイヤ部分のワイヤパターンは形成されている。交差するワイヤ部分のワイヤパターンは、導体ワイヤを2つの巻線層で基材帯の周りに巻装することによって形成することができる。当該巻線層は、基材帯の長手軸線に対して相逆向きの傾斜方向に傾斜している。このように交差した網状ワイヤは、特に静電荷の散逸に十分役立つ。
【0016】
その際、相逆向きの同じ傾斜角度で両方の巻線層が形成され、こうしてワイヤ部分がそれぞれ基材帯の接着面および裏面の中心で交差し、規則的な導体パターンが形成されているように配置を行ってよい。
【0017】
比較的少ない巻数の巻線で基材帯の当該長さ領域に導体ストリップを備えるために、有利には、基材帯の前側接着面および裏面上の巻線は、その長手軸線に対して、少なくとも10度の傾斜角度で延ばす。
【0018】
平面的に面上に分布した配置で導体ストリップが利用可能となるように、接着面の内面に導電性網状構造が形成されていれば、電荷の散逸にとって特に好ましい状況である。
【0019】
その際有利には、当該網状構造が、接着要素に隣接して接着面に沿って延びる少なくとも1つの導体ワイヤを有するように配置を行ってよい。基材は、好ましくは、プラスチック材料から作られている。
【0020】
有利には、導体ワイヤに重ねられる接着剤層が基材帯の裏面に設けられているように配置を行ってよい。これにより、面ファスナー要素は付属する構造要素に特に簡単に固定可能であると同時に、接着剤層は導体ワイヤ巻線を固定するのに利用でき、または、寄与することができる。
【0021】
導電性機構のない面ファスナー要素においてもしばしば該当するような仕方で、面ファスナー要素を当該構造要素にくっつけるために、引剥し可能なカバーストリップを接着剤層上に設けておくことができる。
【0022】
以下、図面に示した一実施形態に基づいて、本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る面ファスナー要素の代表的な実施形態の製造方法をより良く理解するための機能指向型の図としてのみ示した簡略図である。
【図2】面ファスナー要素の実施形態を実際の実施形態の大きさと比べて概ね倍の縮尺で示す斜視図である。接着要素は概略的にのみ示してあり、カバーストリップは一部引き剥がして示してある。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る面ファスナー要素の代表的な実施形態は、全体として符号2で図面に示す。図1には、当該面ファスナーの長手方向部分の一部のみ図示されている。図2から明らかなように、面ファスナー要素2は多層で構成され、容易に射出成形可能なプラスチック材料で作られており、接着要素8が突出している基材帯4を含む。これらの接着要素8はごく簡略化した略図で、フック形状で一部が示されてあるだけである。このような面ファスナー要素2において、それ自体知られた仕方で接着要素8は基材帯4と結合された茎状基部を有し、例えば茸頭、フックまたはループの形態の頭側掛合体を形成する。このようなプラスチック面ファスナー要素において、従来の仕方で接着要素8は接着面6から1 mm未満の突出と数百個/cm2の充填密度とで微細構造化して形成してよい。図2に示すように、基材帯4の接着面6とは反対側にある裏面に接着剤層10が設けられる。この接着剤層はカバーストリップ12で覆われており、このカバーストリップは、面ファスナー要素2を関係する構造要素に貼り付けるとき接着剤層10から引剥すことにより容易に外すことが可能な材料で作られている。
【0025】
本実施形態において、図2に示すように、細い導体ワイヤ14が面ファスナー要素2の周りに置かれ、導体ワイヤは直線的巻線部分が基材帯4の接着面6およびその裏面にわたって延びており、接着面6上の巻線部分は一部で接着要素8間の間隙を通って延びている。図示例では2つの巻線層が設けられており、基材帯4の長手方向に対する傾斜角度は数度であり、図2に示すように、接着面6の巻線部分と裏面の巻線部分とは大きく相隔たる。したがって、一方の巻線層の巻線部分が基材帯4の長手方向に対して一方の側に傾斜するのに対して、第二の巻線層の巻線部分が長手方向に対して逆向きの傾斜を有するように、巻線層の巻線部分は延びている。傾斜角度はそれぞれ相逆向きに同じ大きさであるように選択されており、巻線部分はそれぞれ基材帯4の中心で交差する。この特徴により、上から見ると、X形状パターンで導体が延びている、巻線部分がパターンを形成する導電性網状構造を形成することが可能となる。
【0026】
製造は、巻付けプロセスを用いて、図1の概略図で示すように、行うことができる。図2に示したような基材帯部分を得るために、回転矢印18で示す円形巻付け運動で吐出するワイヤ14を案内するワイヤ供給ユニット16を設けてよい。そのため、基材帯4の巻き付けられるべき部分が図1に方向矢印20で示す方向に動かされるとき、基材帯4の図2に示した部分の全長が巻き付けられる。ただ1つの巻線層のみを形成する場合、X形状を形成せずに導体ワイヤ14が交差することなく基材帯4の長さにわたって延び、接着面6の巻線部分と裏面の巻線部分がそれぞれ互いに平行に同じ傾斜方向で延びると、巻付けプロセスは終了する。しかしながら、図2に示す第二の巻線層がX形状の交差を形成するように巻き付ける場合、巻付けプロセスは方向矢印22に従って戻る運動を継続する。
【0027】
いずれの場合も、支持帯4上に形成される導体配置は、好ましくは単数および/または複数の巻線の一方の端および/または他方の端と接触する。この種の接触は、例えば基材帯4の裏面で、より容易に行われる。なぜならば、巻付けプロセスを実行した後に基材帯4の裏面に接着剤層10を被着した場合、巻線部分が多かれ少なかれ接着剤層内に埋封され、接触目的のためにあまり露出しないからである。巻線部分を接着剤層10内に埋封すると、有利なことに巻線が固定されることにもなり、都合がよい。
【0028】
各実施形態において、導体ワイヤ14は、静電荷の散逸に主に利用しようとするものではなく、むしろ、その代わりにまたは更に制御目的または加熱目的等のための通電導体として導線を利用しようとする場合、基材帯4の一方の端から他方の端へと交差することなくただ1つの連続した導体ワイヤ14の巻線層を設けるのが有利である。一方、主に静電荷を散逸しようとする場合、図2に示すように導体ワイヤ14のX状交差を有する巻線パターンが特に有利である。
【0029】
巻線パターンを形成する時に、細い導体ワイヤが好ましく用いられる。巻付けプロセスは、基材帯4の接着面6上の導体ワイヤ14が接着要素8の茎部に沿って延びるように行なわれる。こうして接着要素8はその頭部領域が自由なままである。そして、掛合体は、茸頭、フックまたはループの形態でも、またはループ、フック、茸頭の形態の掛合体から成る混合物の形態でも、導体ワイヤ14の相手要素の接着要素との係止係合用に自由であり、妨げられていない。こうして、巻線層は基材帯4の裏面で接着剤層10によって滑り止めされているだけでなく、接着面6でも接着要素8の茎部の間隙の間を延びることによって滑り止めされている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性基材(4)を有し、前記基材が接着面(6)を画定し、前記接着面から接着要素(8)が延び、前記接着要素が面ファスナーを形成するために相手要素と掛合可能であり、前記接着面(6)の内面に少なくとも1つの電気導体ワイヤ(14)が存在する面ファスナー要素であって、前記基材は長手方向を画定する基材帯(4)の形態で設けられており、前記基材帯はその長さの少なくとも一部にわたって少なくとも1つの導体ワイヤ(14)で巻装されていることを特徴とする面ファスナー要素。
【請求項2】
巻線層内の前記少なくとも1つの導体ワイヤ(14)が交差することなく連続的に前記基材帯(4)に配置されていることを特徴とする請求項1記載の面ファスナー要素。
【請求項3】
前記少なくとも1つの導体ワイヤ(14)が前記基材帯(4)の一方の端から他方の端へと延びていることを特徴とする請求項1または2記載の面ファスナー要素。
【請求項4】
前記基材帯(4)の周りに少なくとも2つの巻線層を形成するように前記少なくとも1つの導体ワイヤ(14)を巻装することによって、交差するワイヤ部分のワイヤパターンが形成されていることを特徴とする請求項1記載の面ファスナー要素。
【請求項5】
前記巻線層が前記基材帯(4)の長手軸線に対して相逆向きの傾斜方向に傾斜していることを特徴とする請求項4記載の面ファスナー要素。
【請求項6】
相逆向きの同じ傾斜角度で両方の巻線層が巻き付けられていることにより、前記ワイヤ部分がそれぞれ前記基材帯(4)の前記接着面(6)および裏面の中心で互いに交差していることを特徴とする請求項5記載の面ファスナー要素。
【請求項7】
前記基材帯(4)の前側接着面(6)および裏面上の巻線が長手軸線に対して、少なくとも10度の傾斜角度で延びていることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項記載の面ファスナー要素。
【請求項8】
前記接着面(6)の内面に導電性網状構造(14)が形成されていることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項記載の面ファスナー要素。
【請求項9】
前記少なくとも1つの導体ワイヤ(14)が前記接着要素(8)に隣接して前記接着面(6)に沿って延びていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の面ファスナー要素。
【請求項10】
前記基材(4)がプラスチック材料から作られていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の面ファスナー要素。
【請求項11】
前記少なくとも1つの導体ワイヤ(14)に重ねられる接着剤層(10)が前記基材帯(4)の裏面に設けられていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の面ファスナー要素。
【請求項12】
前記面ファスナー要素(2)を構造要素にくっつけるために引剥し可能なカバーストリップ(12)が前記接着剤層(10)上に設けられていることを特徴とする請求項11記載の面ファスナー要素。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−526566(P2012−526566A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510130(P2012−510130)
【出願日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002633
【国際公開番号】WO2010/130338
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(500009857)ゴットリープ ビンダー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンデイトゲゼルシャフト (22)
【Fターム(参考)】