説明

面ファスナ用編地

【課題】薄く極めて軽量であり、面ファスナの雄部材側との係合力が高く、コストも安価な雌部材側の面ファスナ用編地を提供する。
【解決手段】経編の開き目と閉じ目を交互に繰り返す鎖編糸24により中間部Mを構成し、その裏側で鎖編糸24を中心として編地面方向の両側に、複数の編針を飛ばして往復する緯挿入糸22による裏面部Bを有する。鎖編糸24に係合するとともに、鎖編糸24を中心として編地面方向の両側に、複数の編針を飛ばして編み進むフロント編糸26を備える。フロント編糸26は、中間部Mの鎖編糸24の閉じ目24bに係合した開き目26aから複数の編針を飛ばして編み進み、閉じ目によるフリーループ26bを形成し逆方向に同様に編み進む。さらに、フロント編糸26は、中間部Mの鎖編糸24の閉じ目24bに開き目26aが係合し、その開き目26aからさらに複数の編針を飛ばして編み進み閉じ目によるフリーループ26bを形成し逆方向に同様に編み進む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紙おむつ等の面ファスナの雌部材側に用いられる面ファスナ用編地に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、おむつとしては紙おむつが多用されており、その腰部固着具として、当初は粘着テープが使われていた。しかし、粘着テープは固着強度が弱く、その粘着性により他の部分に貼り付いたりして使いづらいという問題があり、最近では面ファスナが多く使われるようになってきた。
【0003】
紙おむつ類に使われる面ファスナとしては、せいぜい数回の係脱操作に耐え得るものであれば十分であり、使い捨て商品としてコストが安価なものが求められてり、特許文献1に開示されているような面ファスナの雌部材や、本願出願人による特許文献2に開示された面ファスナ用編地が提案されている。
【特許文献1】特開2005−118360号公報
【特許文献2】特開2005−253649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術の特許文献1に開示された面ファスナ用編地の場合、編組織が比較的密であり、コストが掛かるものである。また、形成されるパイルが、ウェールの方向に対して同じ側に傾斜し、面ファスナの雄部材との係合力に方向性が出てしまうものである。
【0005】
また、上記従来の技術の特許文献2に開示された面ファスナ用編地の場合、単位面積当たりの重量は比較的軽くなっており、パイルも比較的大きく雄部材との係合について方向性は小さいが、より軽量でコストの安価なものが求められていた。しかし、軽量化と係合力は相反する関係にあり、特許文献2に開示された構造で、軽量化しようとすると、パイルの密度が下がり、係合力が低下するものであった。
【0006】
この発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、薄く極めて軽量であり、面ファスナの雄部材側との係合力が高く、コストも安価な雌部材側の面ファスナ用編地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、ポリエステル繊維による編糸を用いて経編地を形成し、その経編地のパターンを、表面部のパイルを構成するパターン、中間部を構成するパターン、及び裏面部を構成するパターンを有し、各々編針に対して複数本おきに通糸した前記編糸により各々所定形状を繰り返して編成され、前記表面部の編糸の前記パイルにより面ファスナの雌部材のループを形成した前記面ファスナ用編地において、前記中間部は、経編の開き目と閉じ目を交互に繰り返す鎖編糸により構成され、前記裏面部は、前記中間部の裏側で前記鎖編糸に係合し前記鎖編糸を中心として編地面方向の両側に複数の編針を飛ばして往復する緯挿入糸により構成され、前記表面部は、前記鎖編糸に係合するとともにその鎖編糸を中心として前記編地面方向の両側に複数の編針を飛ばして編み進むフロント編糸により構成され、前記フロント編糸は、前記中間部の鎖編糸の閉じ目に係合した開き目から、前記裏面部と同様に前記複数の編針を飛ばして編み進み、フリーループを形成して逆方向に同様に編み進んで、前記中間部の鎖編糸の閉じ目に開き目が係合し、その開き目からさらに前記裏面部と同様に前記複数の編針を飛ばして編み進み、フリーループを形成して逆方向に同様に編み進んでこれを繰り返した面ファスナ用編地である。これにより、編成状態で、前記フロント編糸が往復したウェールの、前記中間部の鎖編糸の閉じ目に係合した前記フロント編糸の開き目の両側で、前記各フリーループの編糸が起き上がって前記パイルを構成し、前記中間部の鎖編糸を中心とした前記ウェールに沿って、前記パイルが左右に振れて位置する面ファスナ用編地である。
【0008】
前記フロント編糸のパターンは、その開き目を中心としてその両側に、3〜5本の編針を飛ばして閉じ目でフリーループを形成し、これを繰り返すものである。
【0009】
さらに、前記フロント編糸のパターンは、各筬の位置番号が0から9の間で往復しながら編み進み、編糸の各筬の位置番号が、1−0/4−5/8−9/5−4の繰り返しで表され、前記中間部の鎖編糸のパターンは、各筬の位置番号が1−0/0−1/0−1/1−0の繰り返しで表され、前記裏面部の緯挿入糸のパターンは、各筬の位置番号が、0−0/4−4の繰り返しで表される面ファスナ用編地である。
【0010】
また、前記編糸の太さは、前記表面部を構成する編糸が相対的に太い糸であり、前記中間部の編糸は相対的に細い糸であり、前記裏面部の編糸は中位の太さであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
この発明の面ファスナ用編地は、安価なポリエステル繊維を用いて、パイルが交互に振れて、雄部材との係合力が均一で且つ係合力の高い面ファスナの雌部材用の編地を形成することができる。しかも、使用する編糸が少なく、コストも極めて安価に抑えることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の一実施形態の面ファスナ用編地について、図面に基づいて説明する。図1〜図3は、この発明の一実施形態を示すもので、この実施形態の面ファスナ用編地10は、合成樹脂フィルム等の基材テープ12と、基材テープ12の表面に形成された粘着剤による接着層14を備えている。粘着層14には、ポリエステル繊維による経編の編地16が貼り付けられている。
【0013】
編地16は、表面部Fに面ファスナ用編地10のパイル20を有し、図示しない雄部材に係合する。編地16の裏面部Bは、基材テープ12の接着層14に貼り付けられ、主に中間部Mの編糸により表面部Fの編糸と裏面部Bの編糸が連結されている。
【0014】
次に、編地16の構成について説明する。図2のパターン図において、編糸の各筬の位置番号を0から9とし、編地16のパターンについて位置番号を用いて表す。
【0015】
裏面部Bは、中間部Mの両側に、複数の編針、例えば3本を飛ばして往復する緯挿入糸22により構成され、緯挿入糸22のパターンは、各筬の位置番号が中間部Mを挟んで、0−0/4−4の繰り返しで表される。
【0016】
中間部Mは、経編の開き目24aと閉じ目24bを交互に繰り返す鎖編糸24により構成され、鎖編糸24のパターンは、各筬の位置番号が1−0/0−1/0−1/1−0の繰り返しで表され、裏面部Bの緯挿入糸22と表面部Fのフロント編糸26の後述する開き目26aに係合する。
【0017】
表面部Fのパターンは、鎖編糸24に係合するとともに鎖編糸24を中心として、その両側に複数の編針、例えば3本を飛ばして編み進むフロント編糸26により構成されている。フロント編糸26は、中間部Mの鎖編糸24の閉じ目24bに係合した開き目26aを備え、この開き目26aから複数の編針、ここでは3本の編針を飛ばして、1コース編み進み、閉じ目によるフリーループ26bにより逆方向に向かい、同様に1コース編み進んで、中間部Mの鎖編糸24の閉じ目24bに開き目26aが係合する。さらに、その開き目26aから複数、例えば3本の編針を飛ばして、1コース編み進み、閉じ目によるフリーループ26bにより逆方向に1コース編み進んで、これを繰り返す。
【0018】
フロント編糸26のパターンは、各筬の位置番号が0から9の間で往復しながら、上記のように編み進み、各筬の位置番号が、1−0/4−5/8−9/5−4の繰り返しで表される。
【0019】
また、編糸の太さは、適宜設定感応であるが、例えば表面部Fを構成するフロント編糸26が相対的に太い糸であり、中間部Mの鎖編糸24は相対的に細い糸であり、裏面部Bの緯挿入糸22は中位の太さが好ましい。
【0020】
この実施形態の用いられる編地は、編機を使用し、例えばゲージ数は10〜18ゲージとすることが好ましい。また、編立コース数は使用する糸の太さにもよるが、20〜35コース/インチで編立てることが、面ファスナの雄部材の係合素子との係合性の点から好ましい。また、そのほかの条件において編成しても良い。
【0021】
この実施形態の雌部材のパイル20は、種々の雄部材の係合素子との係合が可能であり、例えば、鉤形、矢尻形、リブ付きやじり形等、適宜選択し得る。また、係合素子のサイズは、高さ1〜3mm、鉤部や矢尻部の最大幅0.7〜2mm、素子密度40〜300個/cm2 程度が好ましい。この編地は、係合素子を有する雄部材と係合させた場合、係合強力が極めて高く、係合後の使用中におむつ等の留め部がずれることなく、繰り返し着脱しても係合力が落ちないものである。
【0022】
この実施形態の面ファスナ用編地10の用途は、幼児用または成人向けの使い捨ておむつが好適であり、腰部分の固定用に用いられる。
【0023】
この実施形態の面ファスナ用編地10は、編成状態で、フロント編糸26が往復した両端部の各閉じ目によるフリーループ26bが起き上がって、パイル20を形成し、中間部Mの鎖編糸24を中心としたウェールWに沿ってパイル20が左右に振れて位置する。これにより、係合力が強く、係合力の方向性がなく、軽い面ファスナ用編地10が形成される。さらに、この面ファスナ用編地10は、柔軟であり着用感が良好で、コストも安価である。
【0024】
なお、この発明の面ファスナ用編地は前記実施形態に限定されるものではなく、フロント編糸26が飛ばす編針の数は適宜設定可能であり、緯挿入糸22も同様である。また、その他、適宜本願発明の範囲内で変更可能なものである。
【実施例1】
【0025】
この発明の一実施例の面ファスナ用編地について、本願出願人による特許文献2に開示された面ファスナ用編地と比較した結果、幅130mmで長さ1800mの質量は、本願発明による面ファスナ用編地は420kgであるのに対して、特許文献2の面ファスナ用編地の場合630kgであった。
【0026】
また、係合力は、90回の剥離試験を行ったところ、本願発明の実施例による面ファスナ用編地と特許文献2に開示された面ファスナ用編地とは、剥離強度(係合力)は平均値において本実施例が2.4N/mmで、特許文献2の構造の場合2.5N/mmであり、ほぼ等しい係合力であった。また、係合力の分布も両方とも、ほぼ1.7〜3.2N/25mmであり、両面ファスナ用編地ともに近似した値が得られ、面ファスナ用編地として本実施例のものは十分な係合力であった。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の一実施形態の面ファスナ用編地の概略縦断面図である。
【図2】この実施形態の面ファスナ用編地の表面部、中間部、裏面部の編成パターンを示す正面図である。
【図3】この実施形態の面ファスナ用編地の編成パターンを示す正面図である。
【符号の説明】
【0028】
10 面ファスナ用編地
12 基材テープ
14 粘着層
16 編地
20 パイル
22 緯挿入糸
24 鎖編糸
24a,26a 開き目
24b 閉じ目
26 フロント編糸
26b フリーループ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル繊維による編糸を用いて経編地を形成し、その経編地のパターンを、表面部のパイルを構成するパターン、中間部を構成するパターン、及び裏面部を構成するパターンを有し、各々編針に対して複数本おきに通糸した前記編糸により各々所定形状を繰り返して編成され、前記表面部の編糸の前記パイルにより面ファスナの雌部材のループを形成した前記面ファスナ用編地において、
前記中間部は、経編の開き目と閉じ目を交互に繰り返す鎖編糸により構成され、
前記裏面部は、前記中間部の裏側で前記鎖編糸に係合し前記鎖編糸を中心として編地面方向の両側に複数の編針を飛ばして往復する緯挿入糸により構成され、
前記表面部は、前記鎖編糸に係合するとともにその鎖編糸を中心として前記編地面方向の両側に複数の編針を飛ばして編み進むフロント編糸により構成され、
前記フロント編糸は、前記中間部の鎖編糸の閉じ目に係合した開き目から、前記裏面部と同様に前記複数の編針を飛ばして編み進み、フリーループを形成して逆方向に同様に編み進んで、前記中間部の鎖編糸の閉じ目に開き目が係合し、その開き目からさらに前記裏面部と同様に前記複数の編針を飛ばして編み進み、フリーループを形成して逆方向に同様に編み進んでこれを繰り返し、
編成状態で、前記フロント編糸が往復したウェールの、前記中間部の鎖編糸の閉じ目に係合した前記フロント編糸の開き目の両側で、前記各フリーループの編糸が起き上がって前記パイルを構成し、
前記中間部の鎖編糸を中心とした前記ウェールに沿って、前記パイルが左右に振れて位置することを特徴とする面ファスナ用編地。
【請求項2】
前記フロント編糸のパターンは、その開き目を中心としてその両側に、3〜5本の編針を飛ばして閉じ目でフリーループを形成し、これを繰り返すことを特徴とする請求項1記載の面ファスナ用編地。
【請求項3】
前記フロント編糸のパターンは、各筬の位置番号が0から9の間で往復しながら編み進み、編糸の各筬の位置番号が、1−0/4−5/8−9/5−4の繰り返しで表され、前記中間部の鎖編糸のパターンは、各筬の位置番号が1−0/0−1/0−1/1−0の繰り返しで表され、前記裏面部の緯挿入糸のパターンは、各筬の位置番号が、0−0/4−4の繰り返しで表されることを特徴とする請求項1記載の面ファスナ用編地。
【請求項4】
前記編糸の太さは、前記表面部を構成する編糸が相対的に太い糸であり、前記中間部の編糸は相対的に細い糸であり、前記裏面部の編糸は中位の太さであることを特徴とする請求項1,2または3記載の面ファスナ用編地。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−63585(P2010−63585A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231844(P2008−231844)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(504096066)株式会社今井機業場 (1)
【Fターム(参考)】