説明

面ファスナ

【課題】円柱状小突起からなるファスナ部材を備えた面ファスナに柔軟性を付与する。
【解決手段】雌雄同一のファスナ部材2を備えた一対の生地3からなる面ファスナ1である。各生地3は、前記ファスナ部材2を備えた複数のブロックを有する。各ブロックの前記ファスナ部材2は、前記生地3の表面側に複数の合成樹脂製の円柱状突起4を有し、前記生地3の裏面側に少なくとも1枚の合成樹脂製の薄板5を有する。前記円柱状突起4と前記薄板5は、前記生地3を透過して一体化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面ファスナに関する。
【背景技術】
【0002】
面ファスナとして周知であり、幅広く用いられている発明は、「マジックテープ」(商標)や「ベルクロ」(商標)として知られるものである。一方の面に設けた多数のループと、他方の面に設けられた多数の鉤からなる。
【0003】
この周知の面ファスナの変形例も多数知られている。比較的に本願発明に近いものは下記特許文献1の発明である。これは、一方の面に設けた多数の円柱状突起と、他方の面に設けられた多数の円柱状突起からなるものである。
【特許文献1】米国特許第3101517号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発明はついに普及することがなかったようである。ループや鉤の場合に比べて、円柱状突起を支持するベース面が平面から見えて見栄えがせず、しかも硬くなりがちで、そのため、衣服などの用途にとって不向きとなったのではないかと想像される。また、加工の際には、その都度所望の形状に裁断して使用するようであり、使用しづらいものである。
【0005】
本発明は、特許文献1の発明と同様に、一方の面に設けた多数の円柱状突起と、他方の面に設けられた多数の円柱状突起からなる面ファスナであって、なおかつ、柔軟性を有し、衣服その他さまざまな応用が期待される面ファスナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明請求項1は、ファスナ部材を備えた生地からなる一対の面ファスナであって、各生地は、前記ファスナ部材を備えた複数のブロックを有し、各ブロックの前記ファスナ部材は、前記生地の表面側に複数の合成樹脂製の円柱状突起を有し、前記生地の裏面側に少なくとも1枚の合成樹脂製の薄板を有し、前記円柱状突起と前記薄板は、前記生地を透過して一体化されていることを特徴とする。
【0007】
本発明請求項10は、ファスナ部材を備えた生地からなる一対の面ファスナであって、各生地は、前記ファスナ部材を備えた複数のブロックを有し、前記各ブロックの前記ファスナ部材は、前記生地の表面側に、複数の合成樹脂製の円柱状突起と、この円柱状突起と一体となった合成樹脂製の薄板を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明請求項1の面ファスナは、特許発明1の技術と異なり、面ファスナがブロック化されているので、製造や加工が容易である。さらに、円柱状突起を支持するベースが平面からは見えないので、見栄えがよい。また、本発明請求項1でも、生地の背面には薄板が形成されるが、特許発明1で使用するようなベースと比較すると柔らかく薄くすることができるので、柔軟性に富んでいる。
【0009】
本発明請求項10の面ファスナは、特許発明1の技術と異なり、面ファスナがブロック化されているので、製造や加工が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ファスナ部材は、雌雄同一であることが成形上好ましく、生地表面からブロック単位に起立する複数の円柱状小突起を有する。各小突起は、先端膨出部が首部に比べてやや直径が大きい。
【0011】
使用する生地としては、広い面積を有する生地も可能であるが、本発明ではブロック単位にファスナ部材を設けるのであるから、テープ状の生地を使用するのにも適している。
【0012】
1ブロックは、例えば正方形、長方形、円形、楕円形、五角形・六角形等の多角形、その他不定形とすることができる。
【0013】
各ブロックにおける小突起の配列は、例えば、長方形の場合、次の2つの方法がある。
(a)1ブロック当たり、縦n個、横m個を直角に配列する方法
(b)1ブロック当たり、縦方向(又は横方向)に(n個、n−1個、n個、n−1個、...)の繰り返しからなる複数列とする方法(添付の図1(a)参照)
【0014】
前者の場合、小突起の配列は、縦横方向の間隔の方が45°斜め方向の間隔よりも狭い。相手側のファスナ部材と真正面から接合しようとすると、小突起同士の衝突を避けるために、小突起列は斜め方向にずらさなければならない。そのため、雌雄ファスナ部材が重ならず小突起の1/2間隔分だけ一方向にずれる。
【0015】
後者の場合、小突起の配列は、縦横方向の間隔の方が45°斜め方向の間隔よりも広いので、相手側のファスナ部材と係合したとき、相手側の小突起は縦横方向の間隔に入り込み、斜め方向の間隔には入り込むことがない。したがって、相手側のファスナ部材と真正面から接合したとき、ファスナ部材同士がずれずに重なる利点がある(添付の図4(b)参照)。
【0016】
テープ生地としては、溶融されることなく溶融樹脂が透過する生地であることが必要で、織物でも編物でもよく、例えば木綿生地、混紡生地等を採用することができる。合成樹脂はテープ生地を透過して裏面にも露出し、1ブロック当たり少なくとも1枚の薄板を形成する。
【0017】
この薄板に柔軟性を持たせるため、表面側に小突起がない部分において複数のテープ露出部を設けることが好ましい。テープ露出部の面積を多くして、極端な場合、表面側に小突起がある部分に対応する数の薄板を設けることも可能である。
【0018】
合成樹脂としては、熱可塑性樹脂、例えばポリエーテルエステルエラストマー(「ハイトレル」(商標)など)やポリアセタール樹脂を使用することができる。
【0019】
上記した発明の状態でも使用可能であるが、テープの裏面に露出する薄板が人目に見えてしまい、見苦しいと感じられる場合もある。そのようなとき、第1の生地の背後に第2の生地を設けて、前記薄板を覆い隠すことも可能である。
【0020】
例えば、第1のテープ状のファスナを1ブロック又は数ブロックごとに裁断してテープの断片とし、そのファスナ部材付きの断片を別の生地テープに縫製又は接着剤により、取り付けることが可能である。
【0021】
以下、添付の図面に基づき、より詳しく本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の実施例1のテープ状面ファスナ1であり、(a)は表面図、(b)は側面図、(c)は裏面図である。図2はその斜視図である。このテープ状面ファスナは同一形状のものが雄部材としても雌部材としても使用可能である。
【0023】
このファスナ部材2は、生地テープ3表面からブロック単位に起立する複数の円柱状小突起4を有する。生地テープ3は混紡織物であり、円柱状小突起4は「ハイトレル」(商標)として知られるポリエーテルエステルエラストマーを使用した。各小突起は、図3の拡大図に示すように、先端の最も太い部分41は首部42に比べてやや直径が大きい。最先端は先細りになって係合しやすくしている。生地3に接する位置には小さなベース43が設けられている。この実施例では、1ブロックの大きさは、縦10.6mm、横12.6mmであった。1小突起4の高さは2mm、直径は先端膨出部41で2.0mm、首部42で1.98mmであった。
【0024】
この実施例では、1ブロック当たり、縦方向に3個、2個、3個、2個、3個、2個からなる6列の小突起4を有し、横方向に3個からなる5列の小突起4を有するので、全体としては15個の小突起4が形成されている。
【0025】
小突起4同士は、縦横方向の間隔L1の方が45°斜め方向の間隔L2よりも広い。図4に示すように、相手側のファスナ部材2と係合したとき、相手側の小突起4は縦横方向の間隔L1に入り込み、斜め方向の間隔L2には入り込むことがない。そのため、ブロック同士が完全に重なる。
【0026】
ファスナ部材2を有する一対の生地テープ3を接合させると、両者のブロックの小突起4同士がスライドしながらはまりあい、摩擦係合する(図4(b))。しかし、生地テープ3を手でもってある程度以上の力を入れて引き剥がすと、分離可能である。
【0027】
このファスナ部材2を成形するには、ファスナ成形用空間を形成した上下金型(図示せず)間に、溶融樹脂が成形圧力によって通過浸透する粗さの生地テープ3を配設し、合成樹脂を前記成形空間内に射出する。生地テープ3両面に形成される表面側と裏面側とは生地テープ3を透過する合成樹脂によって一体化される。裏面側には図1(b)(c)に示すように、1ブロック当たり、1枚の薄板5が形成される。テープに柔軟性を持たせるため、裏面の薄板5にはところどころで生地露出部51を設けられている。この実施例では15個所でテープ生地が露出している。
【実施例2】
【0028】
実施例1では、生地テープ3の裏面に合成樹脂の薄板5が露出している。衣服に取り付けるときなど生地テープ3の裏面は見えないことが多いので、それでも問題がないといえるが、実施例2では、裏面の薄板5を見せないようにすることも可能にする。
【0029】
この方法では、図5に示すように、実施例1で製造したブロック付きテープ3をブロック単位で切断し、切断したテープ31を別の第2のテープ6に取り付ける。図5に示す例では、実施例1で横方向に切断したブロック付きテープ31を、第2テープ6に縦方向に取り付けている。取付方法は、糸による縫製が好ましいがその他の方法でもよい。
【0030】
このようにすることにより、図6に示すように、第1テープの裏面に露出していた合成樹脂の薄板5が第2テープ6により、覆い隠されている。
【実施例3】
【0031】
実施例3は、この生地テープの使用例である。図7に示しているのは、ブラジャー末端の左右止め具8(81,82)である。
【0032】
実施例2の考え方に基づくブロック付きテープ31を止め具として使用している。ただし、実施例2と異なり、ブロック2は2個又は4個隣接して設けることにより、接触面を増やしている。
【実施例4】
【0033】
図9は、本発明の実施例4の(a)平面図、(b)側面図、(c)裏面図であり、図10は、図9(a)の一部拡大断面図である。
【0034】
この実施例では、ブロック2Aは生地を通過しておらず、テープ生地とは別体として製造され、その後、テープ生地1Aに対して糸9で縫着される。そのため、薄板5Aはテープ生地1Aの表のみに現れる。ミシンで縫製するため、薄板5Aはなるべく柔らかい素材が好ましく、さらに、縫い糸通過用に予め穴91を複数個所で開けておくことが好ましい。糸9で縫着する個所は、この実施例ではブロック2Aの中央部で四角形状にしているが、縁部に沿って縫着してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施例1のテープ状面ファスナであり、(a)は表面図、(b)は側面図、(c)は裏面図である。
【図2】図1のテープの斜視図である。
【図3】小突起の拡大図である。
【図4】(a)はテープ状面ファスナの接合前の断面図、(b)は接合後の状態を示す断面図である。
【図5】本発明の実施例2のテープ状面ファスナであり、(a)は表面図、(b)は裏面図である。
【図6】図5(a)の断面図である。
【図7】本発明の実施例3に係るブラジャー端部であり、(a)(b)は正面図である。
【図8】本発明の実施例3に係るブラジャー端部であり、(c)(d)は背面図である。
【図9】本発明の実施例4の(a)平面図、(b)側面図、(c)裏面図である。
【図10】図9(a)の一部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 面ファスナ
2 ブロック状のファスナ部材
3 生地テープ
31 切断されたテープ
4 円柱状小突起
41 先端膨出部
42 首部
43 ベース
5 薄板
51 生地露出部
6 第2のテープ
8 止め具
9 糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファスナ部材(2)を備えた生地(3)からなる一対の面ファスナ(1)であって、
各生地(3)は、前記ファスナ部材(2)を備えた複数のブロックを有し、
前記各ブロックの前記ファスナ部材(2)は、前記生地(3)の表面側に複数の合成樹脂製の円柱状突起(4)を有し、前記生地(3)の裏面側に少なくとも1枚の合成樹脂製の薄板(5)を有し、
前記円柱状突起(4)と前記薄板(5)は、前記生地(3)を透過して一体化されていることを特徴とする面ファスナ。
【請求項2】
前記生地(3)がテープ状のものである請求項1記載の面ファスナ。
【請求項3】
前記小突起(4)は、先端膨出部(41)が首部(42)に比べて直径が大きいものである請求項1又は2記載の面ファスナ。
【請求項4】
前記各ブロック前記ファスナ部材(2)における小突起(4)の配列が、1ブロック当たり、縦又は横の一方向に(n個、n−1個、n個、n−1個、...)の繰り返しからなる複数列である請求項1〜3の何れかに記載の面ファスナ。
【請求項5】
前記薄板(5)に複数のテープ露出部(51)を設けた請求項1〜4の何れかに記載の面ファスナ。
【請求項6】
前記合成樹脂がポリエーテルエステルエラストマーである請求項1〜5の何れかに記載の面ファスナ。
【請求項7】
前記合成樹脂がポリアセタール樹脂である請求項1〜5の何れかに記載の面ファスナ。
【請求項8】
前記第1の生地(3)の背後に第2の生地(6)を設けて、前記薄板(5)を覆い隠した請求項1〜7の何れかに記載の面ファスナ。
【請求項9】
前記第1の生地(3)は1ブロック又は数ブロック毎に切断され、第2の生地(6)に取り付けられたものである請求項8記載の面ファスナ。
【請求項10】
ファスナ部材(2A)を備えた生地(3A)からなる一対の面ファスナ(1A)であって、
各生地(3A)は、前記ファスナ部材(2A)を備えた複数のブロックを有し、
前記各ブロックの前記ファスナ部材(2A)は、前記生地(3A)の表面側に、複数の合成樹脂製の円柱状突起(4A)と、この円柱状突起(4A)と一体となった合成樹脂製の薄板(5A)を有することを特徴とする面ファスナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−68928(P2010−68928A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238144(P2008−238144)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000114606)モリト株式会社 (198)
【出願人】(390003296)尼崎製罐株式会社 (7)
【Fターム(参考)】