説明

面状の蒸発器

本発明は、抵抗加熱要素内に加熱電流を導入するための少なくとも二つの電気接触部または電極(2、3)を備えており、加熱要素面上に分散されたまたは分散可能で、吸入により摂取可能な物質を、抵抗加熱要素を通って面状に流れているまたは流れ得る加熱電流によりインパルス方式で加熱して蒸発させるための面状の電気抵抗加熱要素を含む面状の蒸発器に関し、この抵抗加熱要素は、電極(2、3)の間に形成されているまたは形成可能な本来の電界の力線(4)を押しつける少なくとも一つのスリット状空隙(5)を有しており、且つ物質を収容しているまたは収容可能な開放気泡性の細孔構造と面状に結合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗加熱要素内に加熱電流を導入するための少なくとも二つの電気接触部または電極を備えており、加熱要素面上に分散されたまたは分散可能で、吸入により摂取可能な物質を、抵抗加熱要素を通って面状に流れているまたは流れ得る加熱電流によりインパルス方式で加熱して蒸発させるための面状の電気抵抗加熱要素を含む面状の蒸発器に関する。
【背景技術】
【0002】
概念定義
「吸入により摂取可能な物質」という概念は、原理的に人または利用者により吸入され得るあらゆる物質を含んでいる。蒸発した物質は、蒸気空気混合物および/または凝縮エアロゾルの形で利用者に供給することができる。この物質は、薬剤を含むことができまたは薬剤調合物から成ることができ、ただしこの物質は、薬剤として指定されていない成分しか含まれていなくてもよい。
【0003】
「インパルス方式で加熱して蒸発させる」とは、吸入の間に、つまり数秒以内または一瞬のうちに、物質を加熱して蒸発させることである。
【0004】
「抵抗加熱要素を通って面状に流れているまたは流れ得る加熱電流」は直流または交流であることができる。
【0005】
例えば米国特許第4,735,217号(ドナルド L. ガース(Donald L. Gerth)ら)、米国特許出願公開第2005/0268911号(スティーブン D. クロス(Steven D. Cross)ら)、米国特許第5,060,671号(メアリー E. カウンツ(Mary E. Counts)ら)、米国特許第5,095,921号(D. ブルース ロゼー(D. Bruce Losee)ら)、および米国特許第4,922,901号、図4〜図8(ジョニー L. ブルックス(Johnny L. Brooks)ら)に記載されているような既知の面状の蒸発器は、蒸発面の広範囲でほぼ一定の温度比を示している(例えば米国特許出願公開第2005/0268911号、図17aおよび図17bを参照)。比較的大きな温度勾配は、せいぜい、電流が面状の抵抗加熱要素内に導入され、且つ隣接する構造要素内に寄生的に熱が流れ出る電気接触部の領域内でしか生じない。しかしそのほかでは、温度分布は非常に均一である。この均一な温度分布は、特に、蒸発すべき物質が沸点の異なる成分を含んでいる場合に不利益となる可能性がある。つまりこの場合には、面状に一定の温度分布は、インパルス方式のエネルギー供給の際に、沸点が比較的低い物質を最初に蒸発させ、比較的低い温度で沸騰する物質が既にほぼ蒸発して蒸発ゾーンを離れてしまった後にようやく、沸点が比較的高い物質を蒸発させ始めるという効果を有している。この効果は、具体的には例えば規定の薬理的および/または薬物動態的な作用を発揮するためまたはそのような作用を促進するために、両方の物質がその蒸発または放出の直後に規定の意図されたやり方で相互作用すべき場合に悪影響を及ぼす。このような相互作用の例は、そうでなければ揮発性の物質をエアロゾル生成物質に付加することである。エアロゾル生成物質は非常に低い蒸気圧を特色とする。エアロゾル生成物質の例としては、グリセロール(グリセリン)が挙げられる。エアロゾル生成物質は、他の物質と結合しなければ揮発してしまう揮発性物質と結合し、そうすることで揮発性物質をより肺に入り込みやすくし、これにより例えば全身的な作用物質供給を可能にするという役割を有している。このような相互作用のさらなる例は、酸によるニコチンのプロトン化または対応するニコチン塩の生成である。ニコチンは、実質的に遊離塩基として蒸発する。しかしながら塩基の形の遊離ニコチンは易揮発性であり、この形で肺に入り込むのはほとんど不可能である。ニコチン塩基の大部分はその前に既に分離してしまうであろう。このやり方では、肺胞経由の全身的なニコチン投与はほとんど実現できない。ただしニコチンがその蒸発または放出の直後に酸と再結合すれば、とりわけ同時にエアロゾル生成物質も提供されていれば、ニコチンの揮発性を大幅に低下させることができる。火のついた紙巻きタバコの中では、吸引中にこの状況が最適に達成されている。これはとりわけ、炎熱ゾーンと蒸発および蒸留ゾーンとの間の急激な温度低下に理由を求めることができる。ここでは数ミリメートル内で温度が800℃超から100℃未満に低下する。この条件下では、たとえエアロゾル生成物質および有機酸の沸点または放出温度が明らかにニコチンの沸点(246℃)と異なっていても、エアロゾル生成物質、有機酸、およびニコチンが、非常に狭い空間で実際に同期して放出される。この条件下でニコチンが酸と再結合し、既に凝縮したエアロゾル粒子に付加される確率は相応に高い。フィルタのない紙巻きタバコでは、この条件は最終的に、主流煙中に移ったニコチンの大部分を実際に肺胞に到達させ、数秒以内で中枢神経系における所望の全身的作用を発揮させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、現況技術から知られた面状の蒸発器構成の、上で指摘した欠点を取り除くことである。本発明の課題は、特に、インパルス方式の電流供給の際に、蒸発する物質中で、面方向の非常に狭い空間で可能な限り急激な温度低下または可能な限り大きな温度勾配が生じ、これにより物質中に含まれる個々の物質が可能な限り同期して放出されるように、冒頭で説明した種類の面状の蒸発器を形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、抵抗加熱要素が、電極の間に形成されているまたは形成可能な本来の電界の力線を押しつける少なくとも一つのスリット状空隙を有しており、且つ物質を収容しているまたは収容可能な開放気泡性の細孔構造と面状に結合することによって解決される。
【0008】
概念定義:「本来の電界」とは、本発明によるスリット状空隙が存在しない場合に、抵抗加熱要素内に形成される電界である。
【0009】
開放気泡性の細孔構造は、例えば織物、開放気孔性の繊維構造、開放気孔性の焼結構造、開放気孔性の発泡体によって、または開放気孔性の堆積構造によって形成することができる。これらの構造の組合せも可能である。さらにこれらの構造を多層体において互いに積層することができる。
【0010】
流れる水に類似して、スリット状空隙は、水の流れを横切って延びる桟橋のように作用する。すなわち、スリット状空隙の周りの領域には、電流が上昇するゾーンも電流が低下するゾーンも形成される。電力密度は電流密度の二乗に比例するので、抵抗加熱要素内にもたらされる熱は、スリット状空隙の周りの領域では、ある一点から別の一点の間で激しく変化し、面方向において急激な温度勾配が形成される。この温度低下は、非常に狭い空間で、詳しくはスリット状空隙の広さに対応する距離内で実現することができる。もたらされた熱は熱伝導により、直に接している細孔構造内に蓄えられた物質に伝達される。この場合、細孔構造の本発明にとって重要な二つの特性が、すなわち一つには細孔構造内の熱伝導性が、気孔率が増すにつれて不釣り合いに大きく減少する特性、もう一つには細孔構造が比較的大きな物質量をも収容および固定し得る特性が発揮される。つまり細孔構造は、面方向における熱交換も物質交換も阻害する。これらの特性の効果は、抵抗加熱要素内で形成された温度勾配に細孔構造がほとんど影響を与えず、細孔構造内および最終的には蒸発すべき物質中でも同じ温度勾配を同等の大きさで形成させ得るということである。最後に、スリット状空隙が抵抗加熱要素の全体的な熱損失を上昇させないことも有利と見なすことができる。
【0011】
本発明の有利な一発展形態では、細孔構造自体が電気抵抗材料から成り、スリット状空隙が細孔構造をも貫いている。つまり細孔構造自体が抵抗加熱要素の一部になる。この構成は、熱が少なくとも部分的には細孔構造内で直接生成され、その場所で、蒸発すべき物質に直接伝達されるという有利な効果を有している。既に言及したように、細孔構造内の熱伝導性は、気孔率が増すにつれて不釣り合いに大きく減少する。この特性は、面方向における温度勾配の形成に対しては有利なことが明らかである反面、この特性により厚さ方向における温度勾配も結果として生じる場合には不利と見なされ得る。つまり、厚さ方向における温度勾配は、それにより沸騰危機の発生が助長される場合、蒸発、したがって蒸発器の性能をひどく阻害するおそれがある。これはとりわけ、細孔構造が蒸発すべき物質でほぼまたは完全に満たされている場合に当てはまる。熱を少なくとも一部は細孔構造内で直接生成することにより、厚さ方向における温度勾配の形成を効果的に妨げることができる。本発明による特殊な一例では、抵抗加熱要素を完全に細孔構造により形成することができる。この場合、熱はすべて細孔構造内で生成される。このような構成は、もちろん非常に高い蒸発能力を実現可能にし、とりわけ、細孔構造の細孔が両側で露出しており、つまり周囲と自由に連通しており、したがって蒸気が面状の加熱要素の両面から流れ出ることができる場合に、非常に高い蒸発能力を実現可能にする。ところで細孔構造の細孔は、本願の意味における空隙とは見なされず、たとえ細孔がスリット状であっても見なされない。スリット状空隙は、空隙が少なくとも複数の細孔にわたって延びている場合にのみ、本発明に基づくと見なされる。
【0012】
特に有利なのは、スリット状空隙が、実質的に直線状に延びており、スリット状空隙によって押しつけられる本来の電界の力線に対して少なくともほぼ直交に位置合わせされている場合である。前述の関係が与えられているか否かを判断するため、スリット状空隙により一番強く押しつけられる力線の本来の電界の妨げられていない力線を幾何的に評価することができる。スリット空隙が前述の幾何的条件を満たす場合には、所定の大きさのスリット状空隙は最大の押しつけ効果を有していることを示すことができる。
【0013】
本発明の好ましい一実施形態によれば、スリット状空隙は切込みから成っている。切込みは、好ましくはレーザ切断法により作製される。レーザ切断法は、特に細いスリットの作製を可能にする。こうしてレーザ細密切断法、例えばNd:YAGレーザにより、寸法通りで形状安定性のあるスリットまたは切込みを約50μm以上の幅で施すことができる。このような細い切込みは、本来の電界の力線の押しつけを、そのためにさほどの面積を必要とせずに可能にし、すなわち幾何的に見て、当初の加熱要素面のほぼ全体が蒸発のために利用可能なままである。
【0014】
本発明のさらなる有利な一形態では、抵抗加熱要素および細孔構造が、金属の抵抗材料から成っている。面状の金属材料、例えば薄い金属板、金属フィルム、および金属織物のレーザ切断は、今日ではごく普通に実施されている。つまりこのような材料の場合、本発明による切込みを施すことは、材料が細孔構造を有するものであっても大した技術的挑戦ではない。適切な金属の抵抗材料は、例えばAISI 304またはAISI 316のような特殊鋼、並びに熱伝導合金、特にNiCr合金およびCrFeAl合金(「カンタル(Kanthal)」)、例えばDIN材料番号2.4658、2.4867、2.4869、2.4872、1.4843、1.4860、1.4725、1.4765、1.4767である。ただし本発明は、これらの金属または合金に制限されるわけでは決してない。挙げた金属は、多くの非金属の抵抗材料に比べて高い導電性を示す。これに対応して高い加熱電流が生じる。特にこの電流をバッテリから引き込む場合、場合によってはそれだけで技術的にある程度の限界に突き当たる。これに関し本発明によるスリット状切込みは、加熱要素の抵抗が切込みにより上昇されるという点で有利であると分かる。そのうえスリットは、予め定められた規定抵抗値の厳密な調整を可能にする。
【0015】
本発明の好ましい一発展形態では、複数のまたは多数のスリット状空隙が設けられている。複数のまたはそれどころか多数のスリット状空隙を設けることにより、加熱要素面に、局所的に顕著な温度低下を示す複数のまたは多数のゾーンを作り出すことができ、既に述べた有利な効果をより広い面で生じさせることができる。
【0016】
本発明に基づき、スリット状空隙を加熱要素面に不均一な密度で分布させることができる。スリット状空隙の不均一な分布により、抵抗加熱要素または細孔構造に、第2のタイプの温度低下を形成することができ、この第2のタイプの温度低下は、局所的に顕著な温度低下を示すゾーンに重なり、それによってより広く作用する。より一般的に表現すれば、スリット状空隙の不均一な分布により、電流密度および電力密度の分布に影響を及ぼすことができる。こうして例えば高い電流密度のゾーンを、スリット状空隙を施すことにより密度緩和することができる。なぜならそれにより電流がこのゾーンを迂回するようになるからである。
【0017】
本発明による面状の蒸発器の特に有利な一発展形態では、細孔構造が導芯を形成している。導芯はその毛管現象により、インパルス方式の蒸発後に細孔構造が自動的に新たにこの場合には液状物質で満たされ得るようにする。細孔構造はこのために、ただ液体供給源と接触できればよい。つまり細孔構造は、この変形形態では多機能に作用する。
【0018】
さらに本発明は、最後に記載したような本発明による面状の蒸発器と、液状物質を導芯に供給するための、毛管現象により導芯と連通しているまたは連通可能な液体供給源とを含む吸入器コンポーネントに関する。本発明によれば、導芯は本来の電界の力線の方向に液状物質を供給し、スリット状空隙は、力線に対して実質的に平行に位置合わせされた列に、相前後して交互にずらして配置されている。導芯への本来の電界の力線の方向での液状物質の送り込みは、電気接触の拠点を経由して行うことによってより有利に実施でき、これにより追加的な熱損失を回避できる。スリット状空隙を列状にグループ化することにより、導芯のために残された、スリット状空隙がほとんどないゾーンができ、このゾーンを介して、ほとんど妨げられずに液状物質を細孔構造に供給することができる。スリット状空隙は複数の列に交互にずらしてもよい。
【0019】
直前に述べた変形形態の代わりに、本発明によれば、導芯に本来の電界の力線を横切って液状物質を送り込み、スリット状空隙を実質的に送り込み方向に向けることもできる。この構成は、スリット状空隙が毛管現象による液体流を最も妨げないという利点を有しており、ただし電気接触の拠点の隣に、導芯の毛管現象による接触のためのさらなる拠点を必要とする。
【0020】
本発明の有用且つ有利な例示的実施形態を図面に示し、以下の記述において詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】スリット状空隙のない面状の蒸発器を示す図である。
【図2】スリット状空隙を備えた本発明による面状の蒸発器を示す図である。
【図3】図2に基づく面状の蒸発器の電力密度分布を示す図である。
【図4】インパルス方式の加熱および蒸発の間の図3に基づく断面A-Aにおける温度分布を示すグラフである。
【図5】インパルス方式の蒸発の間の図2に基づく面状の蒸発器の物質放出を示すグラフである。
【図6】インパルス方式の蒸発の間の図1に基づく面状の蒸発器の物質放出を示すグラフである。
【図7】自動的に液体が供給される蒸発器構成を示す図である。
【図8】自動的に液体が供給されるさらなる蒸発器構成を示す図である。
【図9】自動的に液体が供給されるさらなる蒸発器構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
表1は、例としての本発明による面状の蒸発器の材料の詳細を示している。これによると、面状の蒸発器は六層から、すなわち金属フィルムおよびその上に焼結された五枚の金属ワイヤクロスから成る。金属は、この例では熱伝導合金NiCr8020、DIN材料番号2.4869から成る。もちろんほかの熱伝導合金を使用してもよい。熱伝導合金は、ティッセンクルップVDM社(ThyssenKrupp VDM GmbH)、www.thyssenkruppvdm.deから半仕上げ材料として仕入れることができ、続いてフィルム、極細ワイヤ、およびワイヤクロスへとさらに加工することができる。ティッセンクルップVDM社(ThyssenKrupp VDM GmbH)は、前述の材料NiCr8020、DIN材料番号2.4869を「クロニクス80(Cronix 80)」の商品名で取り扱っており、炭素含有率<0.02%の非常に純粋な組成も、溶融法によって得ることができる。レコード メタル フォーリエン社(Record Metall-Folien GmbH)、www.recordmetall.deは、上流のサプライヤと提携して、好ましくはリボンとして提供される半仕上げ材料から、金属フィルムを5μm以上の厚さで製造することができる。J. G.ダーメン& Co.社(J. G. Dahmen & Co. GmbH & Co. KG)、www.dahmen-draht.deは、好ましくはワイヤとして提供される半仕上げ材料を、太さ18μm以上の極細ワイヤに引き伸ばすことができる。この極細ワイヤを続いてワイヤクロスへと織り合わせることは、ワイヤ織り工場、例えばハーファー&ベッカー社(Haver & Boecker)、www.haverboecker.comまたはシュペルル社(Spoerl KG)、www.spoerl.deでごく普通に可能である。
【0023】
金属フィルムおよびワイヤクロス層は、焼結により互いに結合されている。この焼結は、好ましくは真空中または水素の保護雰囲気下で行われる。このような焼結は現況技術の一つであり、例えばGKNシンター メタルズ フィルターズ社(GKN Sinter Metals Filters GmbH)、www.gkn-filters.comおよびシュペルル社(Spoerl KG)、www.spoerl.deでごく普通に実施されている。焼結は、有利には多面付けの形で行われる。つまり、面状の蒸発器が個々に焼結されるのではなく、より大きな、例えば200×200mmサイズの面状の面付けされた状態のものが焼結される。焼結の後、多面付けされたパネルから、レーザ切断または型抜きにより個々の面状の蒸発器が得られる。
【0024】
熱伝導合金の代わりに、代替的に特殊鋼、例えばAISI 304LまたはAISI 316Lを、本発明による面状の蒸発器の材料として使用してもよい。特殊鋼は、NiCr8020に比べて費用面でかなり有利であるが、NiCr8020に比べて電気抵抗が明らかに低い。電気抵抗を高めるため、特殊鋼から製造された面状の蒸発器またはその生産の前段階のもの(多面付けされたままのもの)を、任意選択でエッチングすることができる。エッチングにより材料が均一に除去される。エッチングは、有利には硝酸50%およびフッ化水素酸13%から成る水性腐食浴中で行うことができる。このような腐食液は、「アヴェスタ302(Avesta 302)」の名称でアヴェスタ フィニッシング ケミカルズ社(Avesta Finishing Chemicals)、www.avestafinishing.comから仕入れることができる。エッチングの有利な副次的効果は、エッチングにより面状の蒸発器の気孔率も少し上昇することであり、これにより蒸発器は、蒸発すべき物質をさらに収容可能になる。ただし追加的なエッチングのプロセスステップは、熱伝導合金に対して元々あった費用面の有利さを少なくとも部分的には再び帳消しにする。
【0025】
熱伝導合金と特殊鋼を互いに組み合わせることも興味深い選択肢であり、その際、より重厚な層が熱伝導合金から、およびより繊細な層が特殊鋼から成ることが好ましい。表1に基づく具体的な例示的実施形態では、この選択肢に基づき、例えば外側の三つのクロス層、つまり第3〜第5のクロス層が特殊鋼から成ることもできる。
【表1】

【0026】
表1に基づいて構成された面状の蒸発器の場合、細孔構造は、互いに焼結されたワイヤクロス層により形成されている。ワイヤクロス層も金属フィルムも、結果として生じる電気熱抵抗に寄与している。表1に挙げた具体的な電気抵抗率および熱伝導性に関する値は、もちろん面方向に関してである。これらの値は、気孔率が増すにつれて不釣り合いに大きく減少する。
【0027】
図1は、具体例として面状の蒸発器1の長方形の構成を示している。蒸発器の寸法は、長さ=12mm、幅=5.6mmである。この蒸発器の構造は、表1に基づく構造に対応している。蒸発器および/またはその電気抵抗材料は、その細長い端部で電気的に接触しており、つまりこの端部で、加熱電流を導入して再び導出する二つの電極2、3を形成している。電極2、3に電圧が印加されるとすぐに加熱電流が流れる。図1に示した構成は、面状の蒸発器1の加熱されるまたは加熱可能な区域だけとも言える。つまり、抵抗材料は細孔構造ともども、電極2、3を越えて続いていることができる。例えば面状の蒸発器1は、電極2、3を越えたところの好ましくはフィルム側で、導電性接着剤を用いてまたは溶接結合により面状に接触していることができ、これにより同時に蒸発器の機械的固定ももたらされる。この場合、ライン状の電極2、3は面状の接触部の外側の境界線となる。簡単に検算できるように、図1に示した面状の蒸発器の結果的に生じる熱抵抗は81mΩである。図1はさらに、電極2、3に電圧が印加されているときに電極2、3の間に形成される本来の電界の力線4を示している。これによれば力線は直線状に延びており、両方の電極を最短距離で結んでいる。図示した蒸発器構成は、絶対的に均質な電流密度および電力密度の分布を有している。
【0028】
図2は、図1と同じ面状の蒸発器であるが、ここでは本発明によるスリット状空隙5を有する面状の蒸発器が示されている。空隙5は、本来の電界の力線4(図1を参照)に直交して位置合わせされており、これにより本来の電界の力線が押しつけられている。図2では、押しつけられた力線を符号6で示している。全部で九つのスリット5が設けられている。スリットは、この具体的な例示的実施形態では切込みとして形成されている。切込みの長さは1.2mmである。切込み5は、面状の蒸発器1の向かい合う縁7から出ている。Nd:YAGレーザを用いて切込みを付けることと有利である。この切断法により、約50μm以上の幅で切込みを作製することができる。このように細い切込みの利点は既に上で示した。この切込み5により、面状の蒸発器の結果的に生じる熱抵抗は110mΩに上昇し、これは約35%の上昇である。
【0029】
電気力線6の押しつけは、電界強度の不均一な分布を生じさせる。具体的には、切込み5の端部8に直に接しており、力線が一番強く押しつけられているゾーン9内でほぼ点状に、特に高い電界強度が生じており、一方で切込み5の長手辺に隣接するゾーン10内では、電界強度は比較的低い値を示す。電力密度の計算では電界強度が二乗されるので、電力密度はもっと顕著に変動していると予測することができ、これは、図3が示すように実際にもそうなっている。大まかに見ると三つのゾーンに区別することができる。すなわち一つは、切込み5の端部に直に接しており、ここでもほぼ点状に現れている最大電力密度のゾーン11である(黒く示されている)。もう一つは、面状の蒸発器1の長手辺にわたって延びており、幅方向にはほぼ切込み5の端部まで広がっている最小電力密度の二つの縁ゾーン12aおよび12bである(白く示されている)。そして最後に、実質的に縁ゾーン12aと12bの間に広がっている中程度の電力密度の中央ゾーン13である(点線で示されている)。この著しく不均質な電力密度分布は、細孔構造の低い熱伝導性とあいまって、インパルス方式の加熱中に、細孔構造内したがって蒸発すべき物質中でも急激な温度勾配を形成させる。ところで以下の計算例およびそれに基づく結果は、図2に描写した幾何形状に関する熱伝導方程式の評価並びに表2および表3に基づく前提条件を基礎としている。
【0030】
表2は蒸発すべき物質の組成を表示している。これによれば、この物質は具体的な例ではエタノールおよび水により非常に薄く希釈されたニコチン溶液から成っている。エアロゾル生成剤としてグリセロールが使用されている。さらに、ニコチンをプロトン化するための一連の有機酸が加えられている。細孔構造の細孔は完全にニコチン溶液で満たされていることとし、これに基づき、細孔構造内では全体で10.4μLのニコチン溶液が蓄えられている。蒸発の際の物質放出は、実質的にはエタノール-水-グリセロールの三物質系によって決定される。表2に挙げた含有物質を可能な限り同期して放出するという課題は、両方の主物質群、すなわち一つは溶剤(エタノールおよび水)、もう一つはエアロゾル生成剤(グリセロール)を、可能な限り同期して放出することができさえすれば果たされる。この課題が簡単でないことは、この物質群の物質特性がかなり異なっているという点だけで既に明白である(表2aを参照)。
【表2】

【表3】

【0031】
熱伝導方程式を解く際、図3に示した電力密度を熱源として代入する。電力密度の計算は、電極2、3に印加された1.5Vの直流電圧を基礎とし、その際、電流供給は表3に基づき可変の飽和度(デューティサイクル)で行われる。こうすることで、インパルス方式の加熱および蒸発の間のエネルギー供給を任意に制御することができる。つまり、結果として生じる有効電圧は、一定の振幅の矩形信号であり、ただし可変のデューティー比を有している。さらに、電極2、3での温度は周囲温度(20℃)で一定に設定され、これは例えば面状の蒸発器1が電極で同時に固定もされている場合にも適用される。
【表4】

【0032】
図4は、評価の第1の結果として、図3の断面A-Aにおける温度分布を示しており、詳しくはインパルス方式の加熱開始から0.5秒または1.0秒の温度分布を示している。これによると、細孔構造内したがってニコチン溶液中でも、温度勾配が200℃/mm、一部ではそれどころか最高350℃/mmの大きさで生じている。この値は、火がついている紙巻きタバコの中で生じている温度勾配の程度に既に完全に達している。
【0033】
図5は、シミュレーションのさらなる結果として、インパルス方式の蒸発中に放出される溶剤(エタノールおよび水)並びにエアロゾル生成剤(グリセロール)の累積量を示している。この値は、最初に細孔構造内に蓄えられていた出発量に対するパーセンテージである。算出の際には、エタノール-水-グリセロールの三物質系の個々の成分の放出が温度にのみ依存し、この依存が指数法則により優れた近似値として把握できると仮定した。上の曲線は溶剤を示しており、下の曲線はエアロゾル生成剤を示している。図6は、図5との直接的な比較において、図1に示したような、つまりスリットなしの面状の蒸発器を使用した場合の物質放出を示しており、ここでは熱抵抗が比較的低いので、電極2、3に印加する電圧は1.3Vに下げた(同じ電力密度)。スリット状空隙または切込み5が放出のダイナミクスにどれほど顕著に影響を及ぼすかは、一目で明らかである。図5に基づく物質放出ははっきりと同期しており、これに対し図6に基づく例における溶剤およびエアロゾル生成剤はほぼ対照的に放出されている。このことから、肺胞経由の全身的な作用物質供給、具体的な例では全身的なニコチン投与には、図2に基づくスリットを設けた面状の蒸発器1の方が、このようなスリットのない蒸発器よりかなり適しているであろうという結論を導き出すことができる。
【0034】
スリット長は、面状の蒸発器の固有の材料特性に、特に細孔構造の熱伝導性に適応させることができ、これに関しては最終的に妥協点を見つけなければならない。すなわち、あまりにも長いスリットおよび/または切込みは、まったく蒸発しないまたは本質的には蒸発しないゾーンを局所的に形成させる。このようなゾーン内では蒸発すべき物質は少し温められるだけである。このようなゾーンは蒸発に貢献しないまたはさほど貢献しないので、デッドゾーンと言ってもよい。これに対しスリット長があまりにも短く選択されると、急激な温度勾配を形成するスリットの能力を全面的には利用できなくなる。
【0035】
図2に基づく面状の蒸発器1の電流供給は、再充電可能な蓄電池を用いて行うことができる。今日の技術水準によれば、このために特にリチウムイオン電池およびリチウムポリマー電池が提供されている。この電池タイプは、目下のところ最高のエネルギー密度およびエネルギー流束を提供し、ずっと以前から多種多様に用いられており、これに関しては第1に携帯電話での幅広い使用を挙げることができる。図2に基づく面状の蒸発器1を二つ直列に電気接続し、且つ定格電圧または無負荷電圧が3.7Vで負荷下の有効電圧が約3Vの一つのリチウムポリマー電池に基づいてエネルギー供給を行う場合、オームの法則に基づき、面状の蒸発器を通って流れる電流は13.6Aと算出される。この電流強度は、今日のリチウムポリマー電池からは問題なく供給することができる。例として、コカム社(Kokam Co., Ltd)、www.kokam.com製のSLPB533459H4型の電池を挙げておく。この電池の寸法は58.5×33.5×5mm(L×B×H)で、この場合の重量は19.5gである。この電池は、容量が740mAhで、14.8Aの電流を連続的に供給することができる。表3に基づくインパルス方式の通電を基礎とする場合、両方の直列接続された蒸発器は、インパルス方式の蒸発ごとに約4.4mAhの電流量を消費する。これに従い、前述のコカム社(Kokam)の電池により、理論的には最高168回の蒸発サイクルまたは吸入が可能である。この値は、比較的高い電流強度およびインパルス方式の電流供給の故に、現実にはおそらく完全に達成はできないであろう。ただし、挙げた電池は非常に速く再充電することができる。
【0036】
図7は、吸入器コンポーネント内の蒸発器構成を示しており、面状の蒸発器1は、幾何形状および構造的に図2に基づく構成と同一である。面状の蒸発器1は、二つの端部区域の好ましくはフィルム側で、二つの導電性でプレート状の接触要素14aおよび14b上に支持されており、この接触要素の表面で蒸発器は同時に電気的にも接触している。接触は、例えばエポキシ テクノロジー社(Epoxy Technology)、www.epotek.comの導電性接着剤による面状の接着結合などによって行うことができる。接触要素14aおよび14bに電圧が印加されるとすぐに加熱電流が流れる。接触要素14aおよび14bの導電性が面状の蒸発器1の導電性より何倍も大きいので、面状の蒸発器1が接触要素14aおよび14bと初めて接触する部位である接触要素の外側の境界線15aおよび15bを、電極2、3と解釈することができる。図7では電極2を太線で示している。面状の蒸発器1は、端部区域が毛管間隙16内に突き出ている。この毛管間隙16は、上部17内に、対応する空隙、例えば切削加工部を施すことで、接触要素14bおよびその上に面状に載せられた上部17により形成される。毛管間隙16は液体タンク18(図7では象徴的に示されている)と連通している。液体タンク18は、蒸発すべき物質または蒸発すべき液体19を内包している。液体19は、例えば希釈された薬剤調合物から成ることができ、このような調合物は具体例として既に表2に表示した。さらに、接触要素14b内には通気穴20があり、この通気穴も液体タンク18と連通している。この構成は以下の作用を有している。すなわち毛管間隙16が、毛管間隙内で作用している毛管力により液体タンク18から液体を引き込み、それにより毛管間隙16が液体19で満たされる。液体19は毛管間隙16内で、面状の蒸発器1の細孔構造と接触する。細孔構造は液体19に浸潤され、そして細孔構造自体は灯芯のように作用し、これにより面状の蒸発器1の細孔構造全体が独りでに液体19で満たされる。引き出された液体量を補うため、通気穴20を介して周囲から液体タンク18内に空気が追随して流れ込む。液体19のインパルス方式の加熱および蒸発がすべて終わると、新たに充填工程が繰り返される。つまりこの場合、細孔構造は多機能に作用する。すなわち細孔構造は、第1にその低い熱伝導性のおかげで、蒸発すべき液体19中での急激な温度勾配の形成を補助し、第2に蒸発中の液体19を細孔構造の細孔内で固定し、それにより面方向の物質交換を阻止し、且つ既に形成された温度勾配を乱さず、そして第3にインパルス方式の蒸発後に、細孔構造内で作用している毛管力により、蒸発すべき液体19で新たに自動的に満たされる。
【0037】
図7に基づく例示的実施形態では、毛管構造への蒸発すべき液体19の供給は、本来の電界の力線4(図1を参照)の方向に行われる。スリット状空隙および/または切込み5は、相前後して交互にずらして、力線に対して実質的に平行に位置合わせされた二つの列に配置されている。これにより、導芯のために残された、スリット状空隙がほとんどない中央の主供給経路21ができ、この主供給経路を介して、ほとんど妨げられずに液体19を細孔構造に供給することができる(図7で矢印で示している)。
【0038】
図8および図9は、リング状の蒸発器構成を示している。面状の蒸発器1は、ここでも表1に示したように構成されることとし、この例示的実施形態でもまた、蒸発すべき液体19は毛管間隙16を介して供給される。前に示した例示的実施形態とは違い、毛管構造の送り込みは、ここでは本来の電界の力線を横切って行われ、スリット状空隙または切込み5は送り込み方向に向いている。具体的には、送り込みが径方向に内側から外側に行われ(図8で矢印で示している)、切込み5も径方向に位置合わせされている。送り込みのこのやり方は、導芯内での毛管現象による流れを切込み5が妨げないという利点を有している。切込みは内周縁にも外周縁にも設けられている。内周縁での切込みは舌部22を形成しており、この舌部は部分的に毛管間隙16内に突き出ており、こうすることで液体19と毛管現象によって結びつく。毛管間隙16は、カバープレート24内に、対応する空隙、例えば切削加工部を施すことで、導体板23およびその上に面状に載せられたカバープレート24により形成される。毛管間隙16はここでも、蒸発すべき液体19を液体タンク18(図9では象徴的に示されている)から引き出し、ここでもまた圧力平衡のために通気穴20が設けられている。延長部25が好ましくはフィルム側で、導電性接着剤を用いて導体板23上に面状に固定されることにより、面状の蒸発器1の電気接触が二つの延長部25を介して行われる。図9では電極2、3をそれぞれ太線で示している。
【0039】
毛管間隙16を形成する部材のための材料選択では、材料が蒸発すべき液体19により良好に湿潤され得ることに注意を払わなければならない。この条件は、図7に基づく構成にも図9に基づく構成にも当てはまる。
【0040】
本発明による面状の蒸発器の表1に具体例として示した構造は、金属フィルム上で複数の金属織物層が焼結されることを基礎とする。この構造型式の蒸発器では、生成された蒸気は、金属フィルムに面していない側でしか細孔構造から流れ出ることができない。この構造型式の代わりに細孔構造が両面で露出した面状の蒸発器を使用してもよく、これに関しては、抵抗加熱要素が完全に細孔構造によって形成される場合が特に有利である。この構造型式の面状の蒸発器は、特に高い蒸発速度を可能にする。このような蒸発器は、例えば導電性で開放気孔性の発泡材料から成ることができる。そのような発泡材料は、特殊鋼、例えばAISI 316L製で、三菱マテリアル社、www.mmc.co.jpから仕入れることができる。これに関しては、厚さが0.5mmで、細孔直径が50〜150μmの範囲内で、気孔率が約90%の標準的な発泡材料から出発する。この材料は圧延により、任意に、最高で約100μmまで厚さを減らすことができる。圧縮された材料は、続いて任意選択でさらに焼結することができる。当然、圧縮により気孔率も低下するが、気孔率は必要の際には続くエッチング処理の際に再び上昇させることができる。特にNiCr合金、例えばNiCr8020、DIN材料番号2.4869の群からの熱伝導合金も、このような発泡材料へと加工することができる。面状の蒸発器は、一つだけの発泡層からまたは複数の互いに焼結された発泡層から成ることができる。面状の蒸発器の安定性および強度を高めるため、発泡体を任意選択で薄い支持層上に、例えば特殊鋼または熱伝導合金から成るワイヤクロス上に焼結することができる。面状の発泡材料はレーザ切断により、それぞれの任意の形状にすることができる。本発明によるスリット状空隙または切込みは、好ましくはここでもNd:YAGレーザにより発泡材料に施される。
【0041】
上で示したすべての例示的実施形態では、スリット状空隙または切込みは面状の蒸発器の縁から始まっている。もちろん本発明はこの構成に制限されない。むしろスリット状空隙または切込みを縁から間隔をあけて配置してもよい。このように配置されたスリットは、この場合には本来の電界の力線を両方のスリット端部が狭めるので、二倍の押しこみ作用を有している。
【符号の説明】
【0042】
1 面状の蒸発器
2 第1の電極
3 第2の電極
4 本来の電界の力線
5 スリット状空隙、切込み
6 押しつけられた力線
7 縁
8 スリット端部
9 高い電界強度のゾーン
10 低い電界強度のゾーン
11 最大電力密度のゾーン
12 最小電力密度の縁ゾーン
13 中程度の電力密度の中央ゾーン
14 プレート状の接触要素
15 境界線
16 毛管間隙
17 上部
18 液体タンク
19 液体
20 通気穴
21 主供給経路
22 舌部
23 導体板
24 カバープレート
25 延長部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗加熱要素内に加熱電流を導入するための少なくとも二つの電気接触部または電極(2、3)を備えており、加熱要素面上に分散されたまたは分散可能で、吸入により摂取可能な物質を、前記抵抗加熱要素を通って面状に流れているまたは流れ得る加熱電流によりインパルス方式で加熱して蒸発させるための面状の電気抵抗加熱要素を含む面状の蒸発器であって、
前記抵抗加熱要素が、前記電極(2、3)の間に形成されているまたは形成可能な本来の電界の力線(4)を押しつける少なくとも一つのスリット状空隙(5)を有しており、且つ物質を収容しているまたは収容可能な開放気泡性の細孔構造と面状に結合していることを特徴とする面状の蒸発器。
【請求項2】
前記細孔構造自体が電気抵抗材料から成り、前記スリット状空隙(5)が前記細孔構造をも貫くことを特徴とする請求項1に記載の面状の蒸発器。
【請求項3】
前記抵抗加熱要素が完全に前記細孔構造により形成されることを特徴とする請求項2に記載の面状の蒸発器。
【請求項4】
前記スリット状空隙(5)が、実質的に直線状に延びており、前記スリット状空隙によって押しつけられる本来の電界の力線(4)に対して少なくともほぼ直交に位置合わせされていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の面状の蒸発器。
【請求項5】
前記スリット状空隙(5)が切込みから成ることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の面状の蒸発器。
【請求項6】
前記抵抗加熱要素および前記細孔構造が、金属の抵抗材料から成ることを特徴とする請求項5に記載の面状の蒸発器。
【請求項7】
複数のスリット状空隙(5)を特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の面状の蒸発器。
【請求項8】
多数のスリット状空隙(5)を特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の面状の蒸発器。
【請求項9】
前記スリット状空隙(5)が加熱要素面に不均一な密度で分布していることを特徴とする請求項7または8に記載の面状の蒸発器。
【請求項10】
前記細孔構造が導芯を形成することを特徴とする請求項7または8に記載の面状の蒸発器。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の面状の蒸発器(1)を少なくとも一つ含んでいる吸入器コンポーネント。
【請求項12】
請求項10に記載の面状の蒸発器(1)と、液状物質(19)を前記導芯に供給するための、毛管現象により前記導芯と連通しているまたは連通可能な液体供給源(18)とを含む吸入器コンポーネントであって、
前記導芯が、本来の電界の力線(4)の方向に液状物質(19)を供給し、前記スリット状空隙(5)が、力線(4)に対して実質的に平行に位置合わせされた列に、相前後して交互にずらして配置されていることを特徴とする吸入器コンポーネント。
【請求項13】
請求項10に記載の面状の蒸発器(1)と、液状物質(19)を前記導芯に供給するための、毛管現象により前記導芯と連通しているまたは連通可能な液体供給源(18)とを含む吸入器コンポーネントであって、
前記導芯に本来の電界の力線(4)を横切って液状物質(19)が送り込まれ、前記スリット状空隙(5)が実質的に送り込み方向に向いていることを特徴とする吸入器コンポーネント。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2013−521075(P2013−521075A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556343(P2012−556343)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際出願番号】PCT/AT2011/000123
【国際公開番号】WO2011/109849
【国際公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(303036094)バットマーク・リミテッド (2)