説明

靴の中敷

【課題】従来、靴の中敷に銅及びアルミニウムを取り付けた消臭効果を目的とした靴の中敷が提供されてきた。しかしながらアルミニウムはアルツハイマーとの関連が危惧されている。皮膚からのアルミニウムの浸透の可能性についても心配されており、整汗剤はアルミニウムを含まない製品が提供されつつある。靴の中敷に使用した場合も同様の問題がある。
【解決手段】本発明はアルミニウムの代替品としてマグネシウムまたはマグネシウム合金を採用し、銅または銅合金及びマグネシウムまたはマグネシウム合金を靴の中敷に取り付けて課題を解決するものである。更には銀入り銅とマグネシウムまたはマグネシウム合金との組み合わせ、更に銀とマグネシウムまたはマグネシウム合金との組み合わせで抗菌効果を高める構成とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、靴の中敷に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、靴の中敷の消臭改善効果を目的とし、靴の中敷に銅とアルミニウムを取り付ける特許第1042431号が提案されていた。この方式は銅とアルミニウムの電極電位差を利用して微弱な電流を発生させてこの電流により、銅イオンの抗菌効果を促し、更に汗の成分中の塩素を電気分解することによって塩素による抗菌効果を発生させるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記の従来方式は銅とアルミニウムを靴の中敷に取り付ける方法であるが、アルミニウムは近年アルツハイマーとの関係が問題化している。アルミニウムとアルツハイマーとの因果関係が問題化した事件は1976年に溯る。当時、ヨーロッパで人工透析治療中の患者が揃って痴呆症状が発生した。この原因が透析流路中のアルミニウム容器から流出したアルミニウムが原因と推定された。その後、アルミニウムのアルツハイマー原因説は広く研究されるようになり、多くの論争を巻き起こしている。2002年6月5日、厚生労働省は「医薬品使用上の注意」でアルミニウムを含む医薬品について注意事項の変更点を示し、製薬会社に対し、能書きの早期改定を要請した。この内容は「してはいけないこと」の項の「次の人は服用しないこと」に「透析治療を受けている人」をさらに「長期服用をしないこと」を追記すること、「相談すること」の項では服用前に相談をする必要のある人に「腎臓病」を追記すると要請している。アルミニウムは経口摂取によるものの他、皮膚からの浸透であっても同じ様に危険であるとされ、整汗剤(デオドランド)はアルミニウムを含まないものが提供されつつある。アルミニウムを含んだ整汗剤を使用すると、アルミニウムがリンパ線から入り、女性の乳房に溜まり、ガン発生の危険性が高まるという発表もある。アルミニウムを含まない整汗剤の商品例としてはイスラエルのハラヴィン社が世界二十数ヵ国に販売しているLAVILIN(ラヴィリン)がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はこの問題点を解決するため、靴の中敷に銅または銅合金及びマグネシウムまたはマグネシウム合金を取り付けてアルミニウムを使用しない手段により、課題を解決するものである。更に銀入り銅または表面が銀とマグネシウムとの組み合わせにより、抗菌効果を向上するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明は以上のような構成であるので、課題であるアルミニウムの健康被害の可能性を除去することが出来る。銅、アルミニウム、マグネシウムのイオン傾向と電極電位は次の通りである。

以上のように銅との電位差はアルミニウムに比べてマグネシウムの方が大きく好都合である。この異種金属間の電位差による微弱な電流発生により、銅イオンの発生を促進し、銅イオンの抗菌効果、消臭効果を強化することが出来る。更に微弱電流が靴下の汗中の塩分と水分に働いて電気分解を起し、塩素を発生させて抗菌消臭効果を生み出す。本発明による銅とマグネシウム合金を取り付けた靴の中敷を5人で実験した結果は次の通りである。

その他の効果としては後述する低温溶射を利用することにより、不織布、発泡性柔軟プラスチック材、皮革などに容易に銅または銅合金、マグネシウム合金を取り付けることが出来、量産化が可能となる。更に銀入り銅または表面が銀で構成したものとマグネシウムまたはマグネシウム合金との組み合せにより抗菌効果を向上出来る。銀は銅に比べて抗菌効果、消臭効果が優れている。
【発明を達成するための最良の形態】
【0006】
本発明の一実施例について、図によって説明する。図1は本発明の構成を示す平面図である。靴の中敷1に銅部1−1とマグネシウム部1−2を図のように離して交互に配置する。マグネシウム部1−2は規格ZK60A(マグネシウム93%、亜鉛6%、ジルコニウム1%)などのアルミニウムを含まないマグネシウム合金を使用する。銅部1−1及びマグネウム部1−2の取り付け方法は一例として銅片及びマグネシウム合金片を靴の中敷にホットメルト接着する事が出来る。ポリエステル系ホットメルトは銅片、マグネシウム合金片の接着に適している。銅片及びマグネシウム合金片を接着出来るポリエステル系ホットメルトは東洋紡績(株)などが、提供している。別の取り付け方としては近年使用されつつある低温溶射工法がある。常温(30度)で溶射メッキするもので銅とマグネシウム合金は使用可能である。低温溶射工法による方法は1回の溶射で800ミクロン溶射が出来、ミリ単位の厚みまで可能である。低温溶射工法による方法は省力化が出来る。銅部1−1及びマグネシウム部1−2の取り付け方法はこの他かしめや縫製などの方法でも出来る。銅部1−1は銀入り銅を使用することで抗菌効果を高めることが出来る。工業材料として使用されている0.08%の銀含有の銅条があり、これを使用することが出来る。更に金属やプラスチックの表面を銀メッキ施した銀部とマグネシウム部を靴の中敷に取り付けて構成する方法も出来る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例の形態に従った一実施例の平面図である。
【符合の説明】
【0008】
1:靴の中敷
1−1:銅部
1−2:マグネシウム部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴の中敷に銅または銅合金及びマグネシウムまたはマグネシウム合金を取り付けて構成した靴の中敷
【請求項2】
低温溶射工法により銅または銅合金及びマグネシウムまたはマグネシウム合金を靴の中敷に低温溶射した請求項1の靴の中敷
【請求項3】
銅部が銀入り銅である請求項1の靴の中敷
【請求項4】
靴の中敷に銀及びマグネシウムまたはマグネシウウム合金を取り付けて構成した靴の中敷

【図1】
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【公開番号】特開2008−194428(P2008−194428A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64135(P2007−64135)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(593141104)株式会社前島工業所 (2)
【Fターム(参考)】