説明

靴底の製造方法及び成形型

【目的】 本発明は、型成形で形成されたアンダーカット形状の突起を有する靴底を、型から容易に取り出すことが可能な靴底の製造方法及び成形型を提供するものである。
【構成】 本発明の靴底の製造方法は、付け根側を細くした突起2を多数備えてなる靴底1を型成形で製造する方法であって、型には突起形成用凹部41が設けられ、凹部41は開口側が狭くかつ底面に凸条52が設けられている構成である。また、凹部41は、その側面を接地面側型本体311に設けた貫通孔7で形成し、その底面を前記貫通孔に嵌入した入駒5で形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーカット形状の突起を備えてなる靴底を、合成樹脂等の靴底材料を用いて圧縮成形又は射出成形等の型成形で製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より靴の滑り止め性を向上するために、種々の充填材を、例えばガラス繊維、珪砂等を合成樹脂材料に充填し、これを射出成形やプレス成形することで靴底部を成形する技術が知られている。しかし充填材を均質に合成樹脂材料に混ぜるには多数の工程を必要とする。
【0003】
充填材を使用しないで、靴底にアンダーカット形状の突起を設けることで滑り止め性を高めることが知られている。また、靴底の接地ブロック(突起)の接地面外縁の角部の丸みをできるだけ小さくして、床面に引っ掛かるような効果を期待した靴底が知られている。
【特許文献1】実公昭59−11616号公報
【特許文献2】特開2000−116403号公報
【特許文献3】特開2001−225397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、型成形で形成されたアンダーカット形状の突起を有する靴底を、型から容易に取り出すことが可能な靴底の製造方法及び成形型を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の靴底の製造方法は、付け根側を細くした突起を多数備えてなる靴底を型成形で製造する方法であって、型には突起形成用凹部が設けられ、前記凹部は開口側が狭くかつ底面に凸条が設けられている構成である。
【0006】
また、上記の靴底の製造方法において、前記凹部は、その側面を接地面側型本体に設けた貫通孔で形成し、その底面を前記貫通孔に嵌入した入駒で形成したものである。
【0007】
また、本発明の靴底の成形型は、上記の靴底の製造に使用する成形型であって、入駒を前記貫通孔内を摺動させて前記凹部の深さを変化させる機構が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、型の突起形成用の凹部の底面側に凸条が設けられているために、靴底の突起の先端には溝が形成される。したがって、靴底を型から取り出す時において、開口側の狭い前記凹部から引き抜かれる突起は、前記溝が狭められて突起自体の寸法が小さくなるので、前記凹部より突起が抜け易いという効果を奏する。
【0009】
上記製造方法において、前記凹部の側面を接地面側型本体に設けた貫通孔で形成し、前記凹部の底面を前記貫通孔に嵌入した入駒の表面で形成してあるので、前記型凹部にある空気は、接地面側型本体と入駒の側面との僅かな隙間より排出されることになり、靴底材料は前記凹部に完全に充填される。
【0010】
本発明の靴底の成形型は、接地面側型本体に設けた貫通孔に入駒を嵌入した構成なので、接地面側型本体の貫通孔の内面と入駒の表面とがなす角部は角の出たものとなり、形成される靴底の突起は角部が角張った形状とすることができる。さらに、入駒を貫通孔内を摺動させて前記凹部の深さを変化させる機構が設けられているので、例えば、踏付け部と踵部とで厚さの異なる靴底、足の内外で厚さの異なる靴底、左足右足で厚さの異なる靴底等を、一つの型で製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の靴底の製造方法及び成形型を実施形態に基づいて具体的に説明する。図1に実施形態により製造される靴底1の底面図を示す。靴底1では、付け根側を細くした所謂アンダーカット形状の突起2が、底面視で円形に形成してあり踏付け部に28個、踵部に10個設けられている。靴底1の周縁及び土踏まず部には通常(アンダーカット形状ではない)の突起9が設けられている。
【0012】
突起2をアンダーカット形状としている理由は、突起2の先端面(接地面)を比較的広くできるために、先端面が床面を向いて床面を捉え続けやすくなるため、床面との密着により滑り止め性が発現するからである。また別の理由は、突起が撓り易くなるため、けり出し時等による横方向の荷重の最大値が時間的に分散されて小さくなり、滑り止め性が発現するからである。
【0013】
図3に靴底1の製造に使用する型3を示す。型3は、接地面側型31と接足面側型32とからなり、両者を組み合わせることで靴底成形空間4を形成するものである。
【0014】
靴底1は、靴底材料を靴底成形空間4に充填することで成形され、成形されたものを型より取り出すことによって製造される。靴底1の製造は、具体的には、反応型樹脂又は熱で流動性を持たせた熱可塑性樹脂や熱可塑性ゴムを空間4に射出等で注入後に固化させるか、あるいは適当な形状に成形した熱可塑性樹脂シートないし未加硫ゴムシートを加熱及び圧縮により空間4に充填することで靴底を成形し、この靴底を手作業や機械作業で型より取り出すことによって行う。特に、加熱により加硫するゴムシートの場合は金型を冷却する必要がないので成形サイクルの面で効率が良い。また、この際、接足面側型32に代えて甲被を被せた足型(図示せず)を用い、靴底1を形成する際に靴底1が甲被と接合するようにしても良い。
【0015】
図4に接地面側型31の突起2を形成する部分の端面拡大図を示す。接地面側型31には、突起形成用凹部41が形成してある。以下、この突起形成用凹部41を貫通孔と入駒によって形成した実施形態に基づいて説明する。
【0016】
接地面側型31には、接地面側型本体311の外面側からの切削加工により形成した貫通孔7が設けてある。貫通孔7は、入駒が嵌入する箇所において、実施形態では円柱をくり抜いた形状である。なお、貫通孔7は円柱に代えて四角柱等の多角柱をくり抜いた形状でも良い。
【0017】
図4に示すように、接地面側型本体311の内面側には、貫通孔7を狭めるような突出部312が形成してある。すなわち、突出部312の存在により接地面側型本体311の内面側において貫通孔7は、内面側より外面側に向かって凹部空間が広がる形状(アンダーカット形状)となっている。また、接地面側型本体311の外面側において貫通孔7には雌ネジが切られている。
【0018】
貫通孔7には貫通孔の形状に合わせた入駒5が接地面側型本体311の外面側より嵌入してあり、入駒5は貫通孔内の適当な距離を摺動できるようにされている。そして、接地面側型本体311の内面側に貫通孔7と入駒5とで突起形成用凹部41が形成されている。この突起形成凹部は、突出部312の存在で開口側が狭くなっている。突起形成用凹部41の深さは、押しネジ6により調製されるようにしてある。なお、入駒の外寸は貫通孔の内寸より0.01〜0.03mm小さくしてある。このような寸法差を持たせることで、突起2にバリを発生させることなく凹部にある空気を排出するようにしている。
【0019】
靴底1の突起2の先端は、例えば、図5(a)に示すように先端面21を溝22により2分割した形状、図5(b)に示すように先端面21を溝22により4分割した形状になるようにされている。また、靴底1では、先端面21は、床面との密着による滑り止め性が発現するように滑らかな平坦面としてある。
【0020】
このような突起2の先端面側の形状は、図6(a)〜(b)に示すような入駒5の滑らかな平坦面51及び平坦面51に立設した凸条52で形成されるようにしてある。
【0021】
一般に、型成形した場合、アンダーカット形状を有する突起を有する靴底は、突起が型から抜けづらいのであるが、図2、図5(a)〜(b)のような溝22を有する突起2は、溝22を狭めることで突起自体の寸法を小さくでき、型から容易に引き抜かれる。また、溝22が、一般的な靴底の溝と同様に滑り止め性に寄与することは言うまでもない。
【0022】
靴底1では、互いに隣接する突起2、2の間に、両者を連結する土手部8が形成されている。土手部8は、突起2よりも低い高さとしてある。このような土手部8を設けることにより、突起が補強されるので突起の水平断面積に対する高さの割合を高めることができる。つまり、上記のような突起の高さ割合を高めることで、突起が撓りやすくなるので靴底の滑り止め性を高められるという効果が期待できる。このような土手部8の形成は、接地面側型31の凹部42によって行う。なお、凹部42は、接地面側型本体311の互いに隣接する貫通孔7と貫通孔7の間を切削加工することにより形成してある。
【0023】
突起2の寸法は、形状が円形の場合では、先端の直径で5〜13mm、高さで3〜8mm程度であり、付け根の直径は先端の直径に対し60〜90%程度である。なお、形状が四角柱等の多角柱とした場合も、上記の円形と同程度の寸法及び寸法割合とすれば良い。
【0024】
靴底材料としては、軟質塩化ビニル系樹脂、エチレン系樹脂、熱可塑性ゴム、ウレタン系樹脂、加硫ゴム等が使用される。靴底の硬度は、一般的に靴に採用されている硬さで良く、非発泡の場合50〜80度程度(タイプA、高分子計器(株)製)、発泡の場合は60〜85度(タイプC、高分子計器(株)製)である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明により製造する靴底の底面図。
【図2】靴底のA−A線断面の説明図。
【図3】本発明で使用する成形型の説明図。
【図4】接地面側成形型の防滑突起を形成する部分の端面拡大図。
【図5】防滑突起の具体例の斜視図。
【図6】入駒の具体例の斜視図。
【符号の説明】
【0026】
1 本発明が製造する靴底
2 突起
3 型
4 靴底成形空間
5 入駒
6 押しネジ
8 土手部
22 溝
41 凹部
52 凸条
311 接地面側型本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
付け根側を細くした突起を多数備えてなる靴底を型成形で製造する方法であって、型には突起形成用凹部が設けられ、前記凹部は開口側が狭くかつ底面に凸条が設けられていることを特徴とする靴底の製造方法。
【請求項2】
前記凹部は、その側面を接地面側型本体に設けた貫通孔で形成し、その底面を前記貫通孔に嵌入した入駒で形成したものであることを特徴とする請求項1記載の靴底の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の靴底の製造に使用する成形型であって、入駒を前記貫通孔内を摺動させて前記凹部の深さを変化させる機構が設けられていることを特徴とする成形型。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−6680(P2006−6680A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189146(P2004−189146)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】