説明

靴用回転ファスナ

【目的】単純な構造の回転ファスナであって、閉鎖のプロセスを素早く実行することができる回転ファスナを提供する。
【構成】 巻き上げスプール(13)が、回転ハンドルとして形成され、引っ張り手段(6)の一方または他方の端部(6a、6b)を通過させて案内するために、リング溝(16)から巻き上げスプール(13)の支持具(10)から離れる方を向いた前面へと延びる2つの貫通孔(17、18)が設けられている。巻き上げスプール(13)は、支承軸(12)およびベアリングによって、軸方向に変位可能に案内され、巻き上げスプール(13)が支持具(10)へと押された位置にあるとき、方向性を有するラチェット機構が係合し、支持具(10)から離れるように押された位置にあるとき、方向性を有するラチェット機構が解除されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の冒頭部分に記載の靴用回転ファスナに関する。
【背景技術】
【0002】
そのような回転ファスナが、DE 297 01 491 U1から知られている。ここでは、靴の舌革に取り付けられた保持用プレートのベアリング穴に係合する支承軸が、回転ハンドルが設けられた駆動軸に配置されている。駆動軸には、巻き上げスプールが回転可能に配置されるとともに、歯車ディスクが回転不可能に配置されており、歯車ディスクが偏心ディスクと協働して、減速ギアを形成している。方向性を有するラチェット機構が、歯車ディスクの歯に係合する戻り止めばねによって形成されている。最初の素早い閉鎖プロセスのために、回転ハンドルと巻き上げスプールとの間に摺動クラッチが設けられている。その後の強い引っ張りのプロセスにおいて、減速ギアが作動する。ファスナを開放するためには、戻り止めばねが、開放装置によって噛合から引き外される。
【0003】
DE 295 03 552 U1から、巻き上げスプールが回転ハンドルの駆動軸によって遊星歯車機構を介して駆動される回転ファスナが知られており、ファスナの開放のために、駆動軸と遊星歯車機構との間に軸方向に圧力を加えることによって切り離すことができるクラッチ部材が設けられている。引っ張り手段を巻き上げスプールのハブに固定するために、引っ張り手段の2つの端部が通過する2つの貫通穴が設けられている。
【0004】
US 6,289,558 B1による回転ファスナにおいては、ハウジングに軸方向に変位可能に取り付けられた回転ハンドルと、歯車減速ギアを介して巻き上げスプールを作動させる駆動軸との間に、回転ハンドルが手前に引かれたときに解放され、結果として巻き上げスプールを解放してファスナを開くクラッチとしての歯が設けられている。引っ張り位置への固定は、回転ハンドルとハウジングとの間の爪式のラチェット機構によって行われる。引っ張り手段の2つの端部は、セットねじによって巻き上げスプールの半径方向の穴に固定されている。ハイレグのブーツの場合などに、より長い長さの引っ張り手段をスプールへと巻き取ることができるよう、引っ張り手段として細い鋼線が使用されるが、容易によじれおよび断線を生じてしまう。
【0005】
公知の回転ファスナは、それらの複雑な構造ゆえに、コストがきわめて高い。DE 297 01 491 U1によれば、摺動クラッチによって閉鎖のプロセスが短縮されているが、公知の回転ファスナにおいては、とくにはハイレグのブーツの場合などのように引っ張り手段をより長い長さにわたって巻き取らなければならない場合に、回転ハンドルの回転による引っ張り手段の引き張りに依然として多くの時間を要する。
【特許文献1】DE 297 01 491 U1
【特許文献2】DE 295 03 552 U1
【特許文献3】US 6,289,558 B1
【特許文献4】DE 297 01 491 U1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、単純な構造の回転ファスナであって、閉鎖のプロセスを素早く実行することができる回転ファスナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これは、本発明によれば、請求項1に特徴付けられる回転ファスナによって達成される
。本発明の好都合な実施の形態が、従属請求項に提示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明による回転ファスナは、実質的に、巻き上げスプールと、巻き上げスプールを回転可能に取り付けるための支承軸および支承軸用のベアリングと、前記回転可能な取付台のために靴に位置する支持具と、方向性を有するラチェット機構とで構成される。このように、本発明による回転ファスナは、きわめて簡潔な構造を特徴としている。すなわち、公知の回転ファスナと対照的に、本発明による回転ファスナは、とくには追加の回転ハンドルを有しておらず、別個の減速ギアを有しておらず、ハウジングも有していない。
【0009】
方向性を有するラチェット機構は、好ましくは、爪式のラチェット機構によって形成され、爪が、巻き上げスプールまたは支持具に設けられ、爪が係合する凹所が、支持具または巻き上げスプールに設けられる。すなわち、爪を支持具に、凹所をスプールに設けることができ、あるいはスプールが爪を、支持具が凹所を有することができる。
【0010】
ここで、爪は、好ましくは巻き上げスプールまたは支持具と一体に形成できる弾性舌によって形成される。さらに、支承軸を、支持具または巻き上げスプールと一体に形成でき、ベアリングを、巻き上げスプールまたは支持具と一体に形成できる。爪または爪舌が、支承軸と同軸な円に配置されて、円周を巡って一定の間隔で分布する。
【0011】
爪式のラチェット機構に代えて、方向性を有するラチェット機構を、例えば歯付き車式のラチェット機構や摩擦ラチェット機構など、係合状態において一方向にのみ回転が可能である別のラチェット機構によって形成することも可能である。
【0012】
これにより、本発明による回転ファスナを、最も簡潔な場合には、例えば2つの射出成形プラスチック部品など、わずか2つの部品で形成できる。これは、本発明による回転ファスナを、きわめてコスト効率よく製造できることを意味する。
【0013】
さらに、本発明による回転ファスナにおいては、閉鎖のプロセスをきわめて素早く実行できる。
【0014】
靴が開放状態にあり、靴を開くにあたって舌革がきわめて遠くへと動かされた場合のように、引っ張り手段が完全にたるんでいるときに、引っ張り手段が、張力が顕著に増加するまで巻き上げスプールの2つの貫通孔を通って手で引き出される。同時に、巻き上げスプールが支持具に向かって押し付けられ、結果として方向性を有するラチェット機構が係合し、すなわち巻き上げスプールが靴を閉じるべく一方の回転方向について固定され、その後に靴が正しくフィットするまで、引っ張り手段を大きな張力で巻き上げスプールへと巻き上げて引き張るため、回転ハンドルとして形成されている巻き上げスプールが手で回転させられる。
【0015】
とくにはスノーボード用ブーツなどの脚部を有する靴において、引っ張り手段の大部分は単に巻き上げ軸の2つの貫通孔を通って引き出されるだけであるため、実際の閉鎖プロセスにおいて、巻き上げスプールの回転によって巻き上げなければならない引っ張り手段の部分はごくわずかである。
【0016】
これにより、閉鎖のプロセスを、きわめて迅速に行うことができる。さらには、本発明に回転ファスナは、方向性を有するラチェット機構が開放、すなわち切り離されるよう、巻き上げスプールをわずかに手前に引くだけでよいため、数分の1秒で開放が可能である。
【0017】
支承軸を、巻き上げスプールに設けることができ、随意により巻き上げスプールと一体に形成することが可能である。このときには、支承軸用のベアリングを、支持具の支承穴によって形成することができ、あるいは例えば好ましくは支持具と一体に形成される筒によって形成することができる。しかしながら、好ましくは、支承軸が支持具に配置される一方で、ベアリングは、巻き上げスプールの軸穴によって形成される。
【0018】
巻き上げスプールの貫通孔は、穴によって形成することができ、あるいは例えば巻き上げスプールの回転軸と同軸に配置される円弧状のスリットによって形成することができる。
【0019】
方向性を有するラチェット機構の係合および解放のために、巻き上げスプールを軸方向に変位させることが可能である。巻き上げスプールが、支承軸およびベアリングによって軸方向に案内される。
【0020】
しかしながら、好ましくは、巻き上げスプールは、支承軸上へと滑り込ませることができ、かつ支承軸から滑らせて外すことができるように構成されている。これにより、引っ張り手段の2つの端部を、単にそれらを手でつかむことによって、巻き上げスプールの2つの貫通孔を通って容易かつ迅速に引っ張ることができると同時に、巻き上げスプールを、引っ張り出される引っ張り手段の端部によって案内された状態で、他方の手によって支承軸に向かって押し、支承軸上へと滑り込ませることができる。その後、靴を開くためには、巻き上げスプールを、好ましくは引っ張り手段の2つの端部を引くことによって支承軸から滑らせて外すだけでよい。
【0021】
好ましくは、支承軸および巻き上げスプールの軸穴の両者が、円錐状に先細りの様相に形成される。これにより、支持具の方向に円錐状に広がる巻き上げ軸の軸穴を、巻き上げスプールの軸穴の中の支承軸の円錐状の先細りの端部へと滑らせることができるため、巻き上げスプールを支承軸上へと容易に滑り込ませることが可能になる。
【0022】
回転のために、本発明に従って巻き上げスプールとして形成されている回転ハンドルが、外周において手で把持される。この目的のため、回転ハンドルは、外周にリブ、ローレット、または同様の滑り止めの表面を有している。
【0023】
歯車減速を形成するために、巻き上げスプールのハブ、すなわち巻き上げスプールのリング溝が、溝底部において、巻き上げスプールの外径よりも大いに小さい直径を有している。好ましくは、溝底部における直径が、巻き上げスプールの外径よりも少なくとも3分の1だけ小さく、好ましくは少なくとも2分の1だけ小さい。
【0024】
巻き上げスプールの支持具から離れる方を向いた前面の2つの貫通孔は、好ましくは、互いに正反対に配置され、すなわち180°ずらされ、かつ巻き上げスプールのリング溝の溝底部に可能な限り近く配置される。すなわち、それらの溝底部からの半径方向の距離が、好ましくは、溝底部と巻き上げスプールの外径との間の半径方向の距離の最大でも3分の1までである。
【0025】
好ましくは、巻き上げスプールのリング溝の断面が、溝底部に向かって先細りとなっている。これにより、2つの貫通孔が互いに正反対に位置している場合に、巻き上げスプールを1回転させた後、すなわち巻き上げスプールに作用する引っ張り手段の張力が未だ比較的小さいときに、回転ハンドルをさらに回転させたとき、引っ張り手段の次の巻き付きが、2つの貫通孔に延びている引っ張り手段の溝底部に位置する半回転に相当する2つの部位に重なり、その結果として、引っ張り手段のこの部位が溝底部に固定され、巻き上げスプールをさらに回転させたときに、張力が貫通孔を通って案内されて溝底部に位置して
いる引っ張り手段の2つの端部にもはや作用しなくなる。この目的のために、狭い溝底部を形成するために、溝を例えばV字形の断面に形成することができ、あるいは2つの溝壁の一方または両方から、溝壁部分が他方の溝壁に向かう軸に対して斜めに延びることができる。溝底部は、直線状であってよい。溝底部は、好ましくは、引っ張り手段の厚さの2倍よりも小さい。
【0026】
巻き上げスプールが、靴を開くべく支承軸から滑らせて外されたときに引っ張り手段に固定されたままであるために、引っ張り手段の巻き上げスプールの貫通孔によって案内されている2つの部位が、それらの端部において例えば結び目によって互いに接続される。互いに接続された端部の領域に、例えば布地材料、皮革、または同様の柔軟な材料で作られたストラップを設けることができ、したがって引っ張り手段の端部がストラップによって保持される。
【0027】
引っ張り手段は、好ましくは、とくにはプラスチック繊維を好ましくは編んでなる従来からのひもなどによって形成される。織物繊維によって形成されるこのようなロープの厚さは、例えば2ミリメートル〜4ミリメートルであってよい。
【0028】
回転ファスナを靴へと取り付けるための支持具は、好ましくは、例えば靴の材料へと取り入れることができる保持プレートによって形成される。
【0029】
支持具を、靴の脚部の側方または後方に取り付けることが可能であるが、好ましくは、回転ファスナは、靴の舌革へと取り付けられる。
【0030】
好ましくは、靴が、従来からのひもシステムを有している。すなわち、舌革へと重なる保持フラップの対向する縁に、金属製またはプラスチック製のはとめ、あるいは織物製のストリング、いわゆる「ひもループ」など、引っ張り手段が通されて案内される摩擦が可能な限り小さい転向具が設けられており、引っ張り手段が、舌革においていずれの場合も2組の対向する転向具の間に交点を形成している。回転ファスナの巻き上げスプールは、好ましくは、舌革において最も上方の転向具の高さ、またはその上方に配置される。
【0031】
これは、引っ張り手段が、靴の舌革の両側において靴の転向具によって案内されることを意味する。支持具は、靴の舌革へと取り付けられたとき、前方へと出ており、すなわち靴のつま先に向かってずらされており、これは、支持具に向かって押し付けられた状態にあるとき、すなわち方向性を有するラチェット機構が係合状態にあるときの巻き上げスプールについても同じである。これにより、引っ張り手段が引き張られたとき、巻き上げスプールが、靴の舌革の両側において巻き上げスプールに隣接している2つの転向具によって支持具に向かって後方へと引かれ、これによって支承軸がベアリングに確実に保持され、方向性を有するラチェット機構が係合状態に確実に保持される。
【0032】
本発明による回転ファスナは、スノーボード用ブーツ、スキー用ブーツ、インラインスケート用ブーツ、またはアイススケート用ブーツなどといった脚部を有する靴、あるいは脚部を有する他の運動靴にとくに適している。
【実施例1】
【0033】
以下で、本発明による回転ファスナを、添付の図面を参照しつつあくまで例としてさらに詳しく説明する。
【0034】
図1によれば、靴(脚部1の一部分のみが示されている)が、曲げパイプとして形成された転向具4、5を2つの保持フラップ2、3の縁に有している。転向具4、5を通って、例えば靴ひもなどの引っ張り手段6が案内され、従来からの靴ひもの通し方と同様に、
保持フラップ2、3と重なる靴の舌革8において交点7を形成している。
【0035】
図1に示した靴ひもの通し方の最も上方の転向具4、5の高さにおいて、保持プレート9として形成された支持具10が、舌革8へと取り付けられており、円錐形に先細りである支承軸12が、支持具10から前方へと延びている。
【0036】
支承軸12は、巻き上げスプール13を回転可能に取り付けるべく機能する。この目的のため、巻き上げスプール13は、支承軸12が係合(図3〜6)する軸穴14を有している。軸穴14は、支承軸12と同じやり方で円錐形に形成されており、すなわち巻き上げスプール13の支持具10に面する前面における直径が、反対側の前面の直径よりも大きい。
【0037】
巻き上げスプール13は、外周のリブ15によって滑り止めの回転ハンドルとして形成されている。巻き上げスプール13は、巻き取り時に引っ張り手段6を引き取る外周のリング溝16を有している。
【0038】
リング溝16から、2つの貫通孔17、18が180°ずらされて延びている。貫通孔17、18は、巻き上げスプール13の支持具10から遠い方の前面へと延びる穴によって形成されており、この穴を通って引っ張り手段6の2つの端部6a、6bが案内されている。
【0039】
さらに、爪式のラチェット機構の形態を有する方向性を有するラチェット機構が設けられている。爪式のラチェット機構は、保持プレート9の靴の舌革8から遠い方の前面に配置された弾性舌21の形態を有する爪と、巻き上げスプール13の保持プレート9に面する前面に配置された鋸歯状の歯止め22とによって形成されている。これにより、歯止め22の歯の空間が、図3〜5に示されているように、支承軸12上の巻き上げスプール13が保持プレート9へと押された状態にあるときに、爪舌21が係合する凹所を形成している。爪式のラチェット機構が係合しているこの状態において、靴を閉じるべく、巻き上げスプール13を矢印A(図3〜5)に相当する回転方向にのみ回転させることができるが、矢印B(図6)に相当する反対の方向には回転不可能である。
【0040】
図1および2によれば、巻き上げスプール13が、矢印Cに対応して支承軸12上へと滑り込まされるように構成されており、図6によれば、矢印Dに対応して支承軸12から滑らせて外されるように構成されている。
【0041】
図7に示されているように、巻き上げ軸13のリング溝16が、溝壁19の軸25に面している内側溝壁部分19’によって形成されている溝底部23を有しており、内側溝壁部分19’は、前記2つの貫通孔(図7においては、孔17のみを見て取ることができる)を有する他方の溝壁20へと軸25に対して斜めに延びている。溝壁部分19’と溝壁20との間において、溝底部23が狭くほぼ直線状に形成されている。さらに図7から、貫通孔17および正反対に位置して図7では見ることができない貫通孔18が、溝底部23の高さにおいて溝16へと延びていることを見て取ることができる。また、図面から、貫通孔17、18によって案内された引っ張り手段6の2つの端部6a、6bが、それらが互いに接続される領域の端部においてストラップ24を備えていることを見て取ることができる。
【0042】
保持プレート9、爪舌21、および支承軸12は、例えば射出成形によるプラスチック部品として一体に形成される。巻き上げスプール13が、歯止め22とともに、射出成形による単一のプラスチック部品を形成することができる。
【0043】
本発明による回転ファスナは、以下のとおりに機能する。
【0044】
靴が図1による開放状態にあり、靴を開くにあたって舌革8が外へと動かされた場合のように、例えば靴ひもによって形成される引っ張り手段6がたるんでいるときに、引っ張り手段6の端部6a、6bのストラップ24を片手で把持し、2つの端部6a、6bを矢印K(図1および2)に対応して引っ張る。他方の手で巻き上げスプール13を把持し、矢印C(図1および図2)に従って支承軸12に向かって押し付けて、支承軸12上へと滑らせ、次いで引っ張り手段の端部6a、6bを、張力が顕著に増加するまでストラップ24によって孔17、18から引き出す(図3)。これにより、爪式のラチェット機構が係合し、すなわち保持プレート9の舌21が巻き上げスプール13の歯22に係合し、したがって巻き上げスプール13が、時計方向、すなわち矢印Aによる回転方向にのみ回転可能になる。巻き上げスプール13が、図3の状態から出発して矢印Aに従って半回転を超えてさらに回転させられ、すなわち例えば図4による位置へと270°にわたって回転させられると、引っ張り手段において2つの貫通孔17、18を通って溝へと延びている部位が、溝底部23において引っ張り手段6の次なる巻き付けに出会い、その結果として、この巻き付けがより大きな引っ張り応力にて転向具4、5から巻き上げスプール13へと引かれているため、引っ張り手段の溝底部23に位置する部位が締め付けられ、したがって巻き上げスプール13をさらに回転させるとき、貫通孔17、18によって案内されている引っ張り手段の2つの端部6a、6bにもはや張力が加わることがない。
【0045】
図5に従って巻き上げスプールをさらに回転させることで、比F:E、すなわち回転ハンドルの外径に対する溝底部の直径からもたらされる歯車減速によって、引っ張り手段6を、より大きな張力にて巻き上げ軸13へと巻き付けることができ、靴が良好にフィットするまで靴ひもを引き締めることができる。
【0046】
同時に、スプール13に隣接する2つの転向具4、5が、スプール13に対して後方へとずらされているため、スプール13が支持具10に向かって引き寄せられ、引き張られた引っ張り手段6によって支承軸12上へと確実に保持される。
【0047】
引き締められた靴を開放するために、支承軸12上に位置している図6による巻き上げスプール13が、矢印Dに従って保持プレート9から離れるようにわずかに滑らされ、その結果、爪式のラチェット機構が解除され、すなわち爪舌21および歯22が係合から外れる。これにより、巻き上げスプール13を矢印Bの方向に逆に回転させて、靴を開くことができる。なお、巻き上げスプール13の引き離しは、好ましくはストラップ24によって引っ張り手段の端部6a、6bを引き張ることによって行われる。これにより、同時に、引っ張り手段6がスプール13からほどかれ、スプール13が、図1および2に示した最初の状態へと回転して戻る。
【0048】
図8および9による実施形態は、実質的に、爪式のラチェット機構が巻き上げスプール13の循環する一式の内向きの歯26によってもたらされ、爪舌27が保持プレート9の突起27の外周に設けられる点においてのみ、図1〜7による実施形態と相違している。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1の実施形態による回転ファスナを備える靴の一部分のみを斜視図で示し、その閉鎖の段階を示している。
【図2】第1の実施形態による回転ファスナを備える靴の一部分のみを斜視図で示し、その閉鎖の段階を示している。
【図3】第1の実施形態による回転ファスナを備える靴の一部分のみを斜視図で示し、その閉鎖の段階を示している。
【図4】第1の実施形態による回転ファスナを備える靴の一部分のみを斜視図で示し、その閉鎖の段階を示している。
【図5】第1の実施形態による回転ファスナを備える靴の一部分のみを斜視図で示し、その閉鎖の段階を示している。
【図6】第1の実施形態による回転ファスナを備える靴の一部分のみを斜視図で示し、その開放段階を示している。
【図7】図1〜6による回転ファスナの巻き上げスプールの側面図を示している。
【図8】回転ファスナの別の実施形態の場合について、靴を閉じるときの図1に従った段階を斜視図で示している。
【図9】回転ファスナの別の実施形態の場合について、靴を閉じるときの図2に従った段階を斜視図で示している。
【符号の説明】
【0050】
1 脚部
2 保持フラップ
3 保持フラップ
4 転向具
6 引っ張り手段
6a 端部
7 交点
8 舌革
9 保持プレート
10 支持具
12 支承軸
13 巻き上げ軸(巻き上げスプール)
14 軸穴
15 リブ
16 リング溝
17 貫通孔
18 貫通孔
19 溝壁
20 溝壁
21 弾性舌(爪舌)
22 歯止め
23 溝底部
24 ストラップ
25 軸
26 歯
27 爪舌

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・2つの端部(6a、6b)を有する引っ張り手段(6)であって、2つの端部(6a、6b)が、引っ張り手段(6)を受け入れるためのリング溝(16)を備える巻き上げスプール(13)において働く引っ張り手段(6)と、
・ベアリングと係合する支承軸(12)による巻き上げスプール(13)のための回転可能な取付台と、
・前記回転可能な取付台のために靴へと取り付けることができる支持具(10)、および・係合および解除が可能であり、靴を固定すべく係合状態においては回転方向(B)について前記巻き上げスプール(13)を固定し、解除状態においてはこの回転方向(B)について前記巻き上げスプール(13)を解放する方向性を有するラチェット機構と
を備えている靴用回転ファスナであって、
前記巻き上げスプール(13)が、回転ハンドルとして形成され、前記引っ張り手段(6)の一方または他方の端部(6a、6b)を通過させて案内するために、リング溝(16)から前記巻き上げスプール(13)の前記支持具(10)から離れる方を向いた前面へと延びる2つの貫通孔(17、18)が設けられており、
前記巻き上げスプール(13)が、前記支承軸(12)および前記ベアリングによって、軸方向に変位可能に案内され、前記巻き上げスプール(13)が前記支持具(10)へと押された位置にあるとき、前記方向性を有するラチェット機構が係合し、前記支持具(10)から離れるように押された位置にあるとき、前記方向性を有するラチェット機構が解除されていることを特徴とする靴用回転ファスナ。
【請求項2】
前記支承軸(12)が、前記支持具(10)に配置され、
ベアリングが、前記巻き上げスプール(13)の軸穴(14)によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転ファスナ。
【請求項3】
前記巻き上げスプール(13)が、前記支承軸(12)上へと滑り込ませることができ、かつ前記支承軸(12)から滑らせて外すことができるように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の回転ファスナ。
【請求項4】
前記支承軸(12)および前記巻き上げスプール(13)の軸穴(14)が、前記支持具(10)から離れる方を向いた端部に向かって先細りであることを特徴とする請求項2または3に記載の回転ファスナ。
【請求項5】
前記巻き上げスプール(13)のリング溝(16)が、溝底部(23)において、前記巻き上げスプール(13)の外径(E)よりも少なくとも3分の1だけ小さい直径(F)を有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転ファスナ。
【請求項6】
前記巻き上げスプール(13)の前記リング溝(16)の断面が、前記溝底部(23)へと先細りであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の回転ファスナ。
【請求項7】
前記2つの貫通孔(17、18)が、互いに正反対に配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の回転ファスナ。
【請求項8】
前記2つの貫通孔(17、18)が、前記リング溝(16)の前記溝底部(23)へと延びていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の回転ファスナ。
【請求項9】
前記巻き上げスプール(13)の前記貫通孔(17、18)によって案内された引っ張り手段の前記2つの端部(6a、6b)が、端部において互いに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の回転ファスナ。
【請求項10】
前記方向性を有するラチェット機構が、少なくとも1つの爪を備える爪式のラチェット機構によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転ファスナ。
【請求項11】
少なくとも1つの爪が、前記巻き上げスプール(13)または前記支持具(10)に設けられ、爪が係合する凹所が、前記支持具(10)または前記巻き上げスプール(13)に設けられていることを特徴とする請求項10に記載の回転ファスナ。
【請求項12】
凹所が、歯止め(22、25)によって形成されていることを特徴とする請求項11に記載の回転ファスナ。
【請求項13】
爪が、弾性舌(21、27)によって形成されていることを特徴とする請求項10または11に記載の回転ファスナ。
【請求項14】
凹所および/または舌(21、27)が、前記巻き上げスプール(13)または前記支持具(10)と一体に形成されていることを特徴とする請求項11または12に記載の回転ファスナ。
【請求項15】
前記支承軸(12)が、前記支持具(10)または前記巻き上げスプール(13)と一体に形成されていることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の回転ファスナ。
【請求項16】
前記支持具(10)が、靴に取り付けできる保持プレート(9)によって形成されていることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の回転ファスナ。
【請求項17】
前記引っ張り手段(6)が、靴ひもによって形成されていることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の回転ファスナ。
【請求項18】
前記支持具(10)が、靴の舌革(8)へと取り付けられていることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の回転ファスナ。
【請求項19】
前記引っ張り手段(6)が、靴(1)に位置する転向具(4、5)によって靴の舌革(8)の両側を案内され、
前記巻き上げスプール(13)が、係合状態において前記支持具(10)へと押されているとき、靴の舌革(8)の両側の隣接する前記2つの転向具(4、5)に対して前方へとずれた位置に位置しているため、前記引っ張り手段(6)が引き張られたときに前記巻き上げスプール(13)が前記支持具(10)に対して引き寄せられることを特徴とする請求項18に記載の回転ファスナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−504210(P2009−504210A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525397(P2008−525397)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2006/004746
【国際公開番号】WO2007/016983
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(507208152)ヘッド・ジャーマニー・ゲーエムベーハー (3)
【氏名又は名称原語表記】HEAD GERMANY GMBH
【住所又は居所原語表記】VELASKOSTRASSE 8,D−85622 FELDKIRCHEN,GERMANY
【Fターム(参考)】