説明

【課題】緊締操作を極めて容易に行えて良好なフィット感が得られると共に、靴紐の結び目が表出しない靴を提供すること。
【解決手段】足甲部分3Aに靴紐6を通すと共に、この靴紐6の両先端部をタン部材5の表側から裏側に通し、このタン部材5の裏側に通した靴紐6の両先端部をタン部材5の裏側へ引っ張って足甲部分3Aを緊締した際、この靴紐6による足甲部分3Aの緊締状態をロックするロック・解除可能な第一緊締ロック手段7を、靴紐6の前記タン部材5の裏側に通した部分に設けると共に、タン部材5の表側から裏側に通した靴紐6の両先端部と第一緊締ロック手段7とを、このタン部材5と前記インナー体10との間に配設し得るように構成し、上方覆い部2に、この上方覆い部2を緊締する緊締手段16を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊締操作が容易で良好なフィット感が得られる靴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
靴の緊締構造としては、甲被の足甲部分から履き口にかけてに靴紐を通して締め上げる構造が知られており、例えばスノーボード用のブーツのように、足首部より高さのある上方覆い部を有する形状の靴にも、この靴紐による緊締構造は多く採用されている。
【0003】
ところが、この靴紐による緊締構造は、つま先側から順番に締め上げていくが、スノーボード用ブーツのように上方覆い部がすね部にまで達する靴においては、つま先からすね部まで締め上げていくことは強い力が必要であると共に手間も時間もかかり、更にはすね部を締め上げるころにはつま先側が緩んできてしまったりしてしっかりと緊締することが難しかった。
【0004】
そこで、この厄介な緊締を容易に且つ迅速に行うことができるようにと、従来から様々な工夫がなされたスノーボード用ブーツが提案されている。
【0005】
例えば、ブーツの足甲部分と、足すね部分とに夫々独立した靴紐が設けられていて足甲部と足すね部の緊締具合を緩まないように別々に調整できると共に、夫々の靴紐に紐止め手段が設けられていてこの紐止め手段により靴紐を簡単に緩まないようにできる緊締構造を有するスノーボード用ブーツ(特許文献1参照。)が提案されており、このブーツによれば、足甲部と足すね部とを別々に緊締するので緩みが生じにくく、且つ力の弱い人でも締付操作を簡単に行うことができる。
【0006】
また、靴紐をダイヤル式の器具で巻き上げることで簡単に締め上げできる緊締構造を有するスノーボード用ブーツも提案されており、このブーツによれば、緊締に力がいらない上、巻き上げられた靴紐がダイヤルに巻かれて結び目が表出しないので体裁良好であると共に、靴紐の結び目がバインディングのストラップベルトに干渉しないというメリットもある。
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3115773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前記前者のブーツには、締め上げて長く余った靴紐が足首部分と足すね部分との二箇所に表出するため、例えばこの余った靴紐を引っ掛ける場所を設けたりして処理しているが、決して満足できる処理方法ではなく、余った靴紐やその操作性向上のためのハンドル部品などがスノーボードバイディングのストラップベルトに干渉してブーツのバインディングへの固定状態が不良となってしまう場合があった。
【0009】
また、前記後者のブーツには、緊締できる範囲が足首から足すね部にかけてが中心で、つま先から足首にかけては良好なフィット感が出づらい上、ダイヤル式巻き取り器具の故障が多く、一度故障すると簡単には修繕できないので、現地(スキー場)でユーザーが困惑する場面も少なくないという問題があった。
【0010】
本発明は、この従来のスノーボード用ブーツに見られるような問題点を見い出し、これを解決しようとするためのもので、緊締操作を極めて容易に行えて良好なフィット感が得られると共に、靴紐の結び目が表出(突出)せず、例えばスノーボード用ブーツに適用した場合においては、靴紐がバインディングのストラップベルトに干渉せずにバインディングに良好に固定されることになるなどのメリットも奏する極めて実用性に秀れた画期的な靴を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0012】
足首部分1より高さのある上方覆い部2を備え、甲被3の足甲部分3Aから上方覆い部2の履き口4にかけてタン部材5を備え、足首部分より高さのある上方被覆部10Aを備えたインナー体10を内装した靴Aにおいて、前記足甲部分3Aに靴紐6を通すと共に、この靴紐6の両先端部を前記タン部材5の表側から裏側に通し、このタン部材5の裏側に通した靴紐6の両先端部をタン部材5の裏側へ引っ張って足甲部分3Aを緊締した際、この靴紐6による足甲部分3Aの緊締状態をロックするロック・解除可能な第一緊締ロック手段7を、靴紐6の前記タン部材5の裏側に通した部分に設けると共に、タン部材5の表側から裏側に通した靴紐6の両先端部と第一緊締ロック手段7とを、このタン部材5と前記インナー体10との間に配設し得るように構成し、前記上方覆い部2に、この上方覆い部2を緊締する緊締手段16を設けたことを特徴とする靴に係るものである。
【0013】
また、前記靴紐6を、前記タン部材5の足首部分5Aの近傍でこのタン部材5の表側から裏側に通したことを特徴とする請求項1記載の靴に係るものである。
【0014】
また、前記第一緊締ロック手段7は、前記靴紐6を挿通する挿通孔70Aを備えた紐止め本体70に、前記挿通孔70Aに挿通された靴紐6を挿通孔70Aに圧接する圧接体を設けると共に、この圧接体が靴紐6に圧接するように付勢された紐止め具7Aを採用して構成したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の靴に係るものである。
【0015】
また、前記緊締手段16は、前記上方覆い部2にこの上方覆い部2を左右に横断する形状のベルト体8を設けて、この左右に横断させたベルト体8で上方覆い部2を緊締し得るように構成し、この緊締手段16による上方覆い部2の緊締状態をロックするロック・解除可能な第二緊締ロック手段9を緊締手段16に設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の靴に係るものである。
【0016】
また、前記第二緊締ロック手段9は、前記ベルト体8に、雌雄係合テープ9Aやバックルなどの止着具を設けて構成したことを特徴とする請求項4記載の靴に係るものである。
【0017】
また、前記タン部材5に、このタン部材5を表裏方向に貫通する貫通孔11を形成して、この貫通孔11を介して前記靴紐6の両先端部をタン部材5の裏側に通すか、若しくは靴紐6の両先端部をタン部材5の左右両側縁部の外側を迂回させてタン部材5の裏側に通す構成としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の靴に係るものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上述のように構成したから、足甲部分は靴紐で、上方覆い部は緊締手段で夫々を別々に緊締するので、足甲部分も上方覆い部も緩みを生じにくく、また靴紐が足甲部分だけに通されているので、つま先部分からすね部分にまで靴紐が通された構成の靴に比べてこの足甲部分の緊締に要する手間も時間も約半分で済むと共に、靴紐の緊締によってタン部材も足の甲部分を締め上げるので極めて良好なフィット感が得られることとなり、しかも、靴紐の両先端部をタン部材の裏側へ引っ張って足甲部分を緊締した後、この引っ張った靴紐に存する第一緊締ロック手段を一連の動作のうちにロック操作することができるので、スピーディーに足甲部分を緊締ロックして装着できるものとなり、その上本発明は、タン部材の表側から裏側に通した靴紐の両先端部と第一緊締ロック手段とをこのタン部材とインナー体との間に配設できるため、第一緊締ロック手段を有するこの靴紐の両先端部が直接足に触れることがなく良好な装着感が得られ、また靴紐の結び目などが甲被の表面に露出せずすっきりとした体裁良好な外観を呈すると共に、例えばリフト搬器や車両・重機などに靴紐が巻き込まれるような事故を回避できるものとなり、またこれにより、本発明をスノーボード用のブーツに適用した場合には、ブーツ表面にバインディングのストラップベルトに干渉する突起物が少なく、バインディングに極めて良好に固定されることになるスノーボード用ブーツを実現できることになるなど、極めて実用性に秀れた画期的な靴となる。
【0019】
また、請求項2記載の発明においては、無駄のない長さの靴紐を採用できると共に、この靴紐の緊締によってタン部材の足首部分が足の甲部分に良好に押し付けられることになるので、極めて良好なフィット感が得られる一層実用性に秀れた構成の靴となる。
【0020】
また、請求項3記載の発明においては、前記第一緊締ロック手段を簡易に設計実現可能となると共に、緊締ロック・解除操作が容易で一層スピーディーに足甲部分を緊締できることになる極めて実用性に秀れた構成の靴となる。
【0021】
また、請求項4記載の発明においては、前記緊締手段を簡易に設計実現可能となり、しかも、上方覆い部を左右に横断したベルト体で容易に緊締できると共に、この緊締手段による緊締状態を第二緊締ロック手段により確実にロックできることになる一層実用性に秀れた構成の靴となる。
【0022】
また、請求項5記載の発明においては、前記第二緊締ロック手段を簡易に設計実現可能となると共に、この第二緊締ロック手段は、緊締状態をロックする操作もロック解除操作も容易に行われるので、一層スピーディーに上方覆い部を緊締・緊締解除できることになる極めて実用性に秀れた構成の靴となる。
【0023】
また、請求項6記載の発明においては、靴紐をタン部材の表側から裏側へ通す構造を簡易に設計実現可能となる一層実用性に秀れた構成の靴となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0025】
履き口4から靴A内のインナー体10内に足を挿入し、タン部材5の表側から裏側に通した靴紐6の両先端部をタン部材5の裏側へ引っ張って足甲部分3Aに通した靴紐6でこの足甲部分3Aを緊締する。
【0026】
すると、靴紐6の緊締によって足甲部分3Aが足の甲部分へと押し付けられると共に、タン部材5の表側から裏側へと通した靴紐6がタン部材5も足の甲部分へと押し付けるので、極めて良好なフィット感が得られる。
【0027】
そして、この靴紐6による足甲部分3Aの緊締状態を、第一緊締ロック手段7によりロックするが、この第一緊締ロック手段7は、靴紐6の前記タン部材5の裏側に通した部分に設けているため、タン部材5の裏側に存する靴紐6の両先端部をタン部材5の裏側へ引っ張って緊締した後、この引っ張った靴紐6に存する第一緊締ロック手段7を一連の動作のうちにロック操作することができ、この緊締操作からロック操作までを非常に容易に行うことができる。
【0028】
また、靴紐6は、足首部分1よりも上方の上方覆い部2にまで通されておらず、足甲部分3Aだけに通されているので、つま先部分からすね部分まで靴紐が通された構成の靴に比べて、緊締に要する手間も時間も約半分で済むと共に、緊締した靴紐6の緩みも生じにくい。
【0029】
また、上方覆い部2は、緊締手段16により緊締する。この上方覆い部2も、足甲部分3Aとは別に緊締手段16で緊締するので緩みを生じにくい。
【0030】
従って、特に甲被3の足甲部分3Aを靴紐6によって容易に緊締できるので、本発明の靴Aは手間も時間もかけずにスピーディーに緊締して装着でき、その上、この足甲部分3Aにおいてはタン部材5も足の甲部分を締め上げるので極めて良好なフィット感が得られる。
【0031】
また、例えば、前記緊締手段16は、前記上方覆い部2にこの上方覆い部2を左右に横断する形状のベルト体8を設けて、この左右に横断させたベルト体8で上方覆い部2を緊締し得るように構成し、この緊締手段16による上方覆い部2の緊締状態をロックするロック・解除可能な第二緊締ロック手段9を緊締手段16に設ければ、上方覆い部2の緊締操作が容易に行われると共に、この緊締手段16による緊締状態を第二緊締ロック手段9によって確実にロックすることができる。更に、例えば、前記第二緊締ロック手段9は、前記ベルト体8に、雌雄係合テープ9Aやバックルなどの止着具を設けて構成すれば、第二緊締ロック手段9によるこの上方覆い部2の緊締状態のロック操作も解除操作も容易に行われるので、スピーディーに上方覆い部2を緊締・緊締解除できることになる。即ち、足甲部分3Aも上方覆い部2もスピーディーに緊締して装着できる靴Aが実現することになる。
【0032】
また、本発明は、靴紐6の両先端部がタン部材5の裏側へと通されて甲被3の表面へ露出しない構成であるため、靴紐6の結び目などが表出しないすっきりとした体裁良好な外観を呈することとなる。
【0033】
また、靴Aの表面に余分な靴紐6が表出しないことで、靴紐6が例えばリフト搬器や車両や重機などに巻き込まれるような事故を回避できる。
【0034】
また、タン部材5の表側から裏側に通した前記靴紐6の両先端部は、このタン部材5と前記インナー体10との間に配設し得るため、前記第一緊締ロック手段7を有するこの靴紐6の両先端部が直接足に触れることがなく、これにより履き心地が損なわれず良好な装着感が得られる。
【0035】
また、例えば、スノーボード用ブーツは、スノーボード用バインディングに備えられた二本のストラップベルトでつま先側部分と足首部分とを抑え付けてバインディングに固定される構造のものが多い。そして、このようなブーツ固定構造においては、ストラップベルトによって良好に固定されるように、ブーツの表面にはストラップベルトとの間に隙間を生じさせるような突起がない方が望ましい。この点、本発明は、靴紐6の両先端部が、タン部材5の裏側へと通されて甲被3の表面へ露出しない構成であるため、本発明をスノーボード用のブーツA1に適用した場合には、ブーツA1表面にバインディングのストラップベルトに干渉する突起物が少なく、それ故、バインディングに極めて良好に固定されることになる。
【0036】
このように、本発明をスノーボード用のブーツに適用すると非常に有用となる。
【0037】
また、靴Aを脱ぐ時も、上記と逆の手順で足甲部分3Aと上方覆い部2とを容易に緩めることができる。
【実施例1】
【0038】
本発明の具体的な実施例1について図1,図2に基づいて説明する。
【0039】
本実施例の靴Aは、スノーボード用のブーツA1に適用した場合を示している。
【0040】
このスノーボード用ブーツA1について簡単に説明すると、足首部分1より高さがあってすね部までを覆う上方覆い部2を備え、甲被3の足甲部分3Aから上方覆い部2の履き口4にかけてタン部材5を備えている。また、(アウター)ブーツA1内に、足首部分より高さがあってすね部までを覆う上方被覆部10Aを備えたインナー体10を着脱自在に有している。
【0041】
本実施例では、前記ブーツA1の前記足甲部分3Aに靴紐6を通すと共に、この靴紐6の両先端部を前記タン部材5の表側から裏側に通している。
【0042】
具体的には、甲被3の足甲部分3Aの開放部15の周縁に沿って紐通し部12を複数点在状態に設け、この複数の紐通し部12に靴紐6を通し、足甲部分3Aの最も足首部分1側の左右の紐通し部12から足首部分1側に向けて靴紐6の両先端部を配している。
【0043】
また、前記タン部材5の足首部分5A付近の左右部に、このタン部材5を表裏方向に貫通する貫通孔11を形成して、この各貫通孔11を介して前記靴紐6の両先端部をタン部材5の裏側に通している。
【0044】
本実施例は、この靴紐6を例えばつま先側から順番に締め上げてタン部材5の裏側に通した靴紐6の両先端部をタン部材5の裏側へ引っ張ることで、足甲部分3Aを緊締し得るように構成している。そして、この際、特に貫通孔11を有するタン部材5の足首部分5Aが、靴紐6の緊締によって足の甲部分に良好に押し付けられて良好なフィット感が得られることになる構成としている。
【0045】
また、本実施例では、このタン部材5の裏側に通した靴紐6の両先端部をタン部材5の裏側へ引っ張って足甲部分3Aを緊締した際、この靴紐6による足甲部分3Aの緊締状態をロックするロック・解除可能な第一緊締ロック手段7を、靴紐6の前記タン部材5の裏側に通した部分に設けている。
【0046】
具体的には、第一緊締ロック手段7は、既存の紐止め具7Aを採用して構成している。この紐止め具7Aを簡単に説明すると、前記靴紐6を挿通する挿通孔70Aを備えた紐止め本体70に、前記挿通孔70Aに挿通された靴紐6を挿通孔70Aに圧接する圧接体(図示省略)を設けた構成である。また、この圧接体を圧接・圧接解除するための操作部71を紐止め本体70に表出状態に設け、この操作部71をスライド操作することで、圧接体による靴紐6の紐止め状態と紐止め解除状態とが切り替えられる構成である。
【0047】
また、本実施例では、紐止め具7Aの挿通孔70Aに、靴紐6の両方の先端部を挿通して一つのこの紐止め具7Aだけで靴紐6の緊締状態をロックする構成としている。
【0048】
また、靴紐6の両先端部を接続すると共に、この接続部にカバー6Aを被覆して、このカバー6Aを持って容易に紐引き操作し得るように構成している。
【0049】
従って、靴紐6を例えばつま先側から順番に締め上げてタン部材5の裏側に通した靴紐6の両先端部をタン部材5の裏側へ引っ張った後、紐止め解除した紐止め具7Aをタン部材5の裏面に接近するようにスライド移動させて操作部71の操作により紐止め状態とすることにより、この靴紐6による足甲部分3Aの緊締状態をロックし(図2参照。)、逆にこのロック状態から紐止め具7Aをタン部材5の裏面から離遠スライド移動させることにより、靴紐6の緊締状態を緩めることができる(図1参照。)構成としている。
【0050】
また、タン部材5の表側から裏側に通した前記紐止め具7Aを有する前記靴紐6の両先端部は、このタン部材5と前記インナー体10の上方被覆部10Aとの間に配設する構成としている。
【0051】
本実施例では、前記上方覆い部2にこの上方覆い部2を緊締する緊締手段16として、この上方覆い部2を左右に横断する形状のベルト体8を設けると共に、この左右に横断させたベルト体8で上方覆い部2を緊締した際、このベルト体8による上方覆い部2の緊締状態をロックするロック・解除可能な第二緊締ロック手段9を、ベルト体8に設けている。
【0052】
具体的には、前記上方覆い部2の甲被3のすね部分3Bの開放部15の一側(図1,図2において左側)周縁の上下位置に柔軟性を有するベルト体8の一端部を止着し、このすね部分3Bの開放部15の他側周縁の上下位置にコ字状のベルト通し具13を付設している。
【0053】
即ち、このすね部分3Bの開放部15の上下部に夫々ベルト体8を横断させた上で、この上下のベルト体8の他端部をベルト通し具13に通し、この上下二本のベルト体8ですね部分3Bの開放部15(上方覆い部2)を締付することができる構成としている。
【0054】
そして、この二本のベルト体8で上方覆い部2を緊締することで、タン部材5とインナー体10の上方被覆部10Aとの間に配した靴紐6の両先端部並びに紐止め具7Aが簡単には動かなくなる構成である。
【0055】
また、本実施例の前記第二緊締ロック手段9は、ベルト体8の表面の先端部と、この先端部を除いた基端側とに、面ファスナー(マジックテープ(登録商標))を採用した雌雄係合テープ9Aを付設し、前記ベルト通し具13に通したベルト体8の先端部をこのベルト通し具13でベルト体8の基端側へと折り返して雌雄係合テープ9A同士を係合止着することにより、ベルト体8による上方覆い部2の緊締状態をロックでき(図2参照。)、この係合している雌雄係合テープ9A同士を係脱することにより、ベルト体8による緊締状態を解除できる(図1参照。)構成としている。
【実施例2】
【0056】
本発明の具体的な実施例2について図3,図4に基づいて説明する。
【0057】
本実施例は、前記実施例1において、前記靴紐6の両先端部を前記タン部材5の表側から裏側に通す手段を異ならせた場合である。
【0058】
具体的には、本実施例では、タン部材5に貫通孔11を形成せず、単にタン部材5の足首部分5A付近の左右両側縁部の外側を迂回させて靴紐6の両先端部をタン部材5の裏側に通す構成としている。
【0059】
また、このタン部材5の左右両側縁部の外側を迂回する靴紐6は、図3,図4に示すように、ブーツA1の足首部分1に位置する前記開放部15に形成されている溝状部分14に位置させて位置ずれを防止する構成としている。
【0060】
尚、本発明は、実施例1,2に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【0061】
また、本実施例では、スノーボード用ブーツA1に適用した場合を示したが、例えば、足首部分より高さのある上方覆い部2を備えた登山靴や、トレッキングシューズや、その他の靴にも適用可能である。
【0062】
また、本実施例では、緊締手段16として二本のベルト体8を採用した場合を示したが、ベルト体8は一本でも良いし三本以上でも良い。
【0063】
また、緊締手段16の第二緊締ロック手段9は、例えば、ベルト体8の先端部に適宜なバックルを設けて構成しても良い。
【0064】
また、緊締手段16は、上方覆い部2を靴紐によって緊締する構成としても良く、この構成を採用すると、本実施例に比して緊締に時間はかかるが、より強い緊締力が得られる。また、上方覆い部2を緊締する靴紐を、ダイヤル式の器具で巻き上げる緊締手段16を採用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施例1の第一緊締ロック手段と第二緊締ロック手段とをロック解除した状態を示す説明斜視図である。
【図2】実施例1の第一緊締ロック手段と第二緊締ロック手段とをロックした状態を示す説明斜視図である。
【図3】実施例2の第一緊締ロック手段と第二緊締ロック手段とをロック解除した状態を示す説明斜視図である。
【図4】実施例2の実施例1の第一緊締ロック手段と第二緊締ロック手段とをロックした状態を示す説明斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
1 足首部分
2 上方覆い部
3 甲被
3A 足甲部分
4 履き口
5 タン部材
5A 足首部分
6 靴紐
7 第一緊締ロック手段
7A 紐止め具
70 紐止め本体
70A 挿通孔
8 ベルト体
9 第二緊締ロック手段
9A 雌雄係合テープ
10 インナー体
10A 上方被覆部
11 貫通孔
16 緊締手段
A 靴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足首部分より高さのある上方覆い部を備え、甲被の足甲部分から上方覆い部の履き口にかけてタン部材を備え、足首部分より高さのある上方被覆部を備えたインナー体を内装した靴において、前記足甲部分に靴紐を通すと共に、この靴紐の両先端部を前記タン部材の表側から裏側に通し、このタン部材の裏側に通した靴紐の両先端部をタン部材の裏側へ引っ張って足甲部分を緊締した際、この靴紐による足甲部分の緊締状態をロックするロック・解除可能な第一緊締ロック手段を、靴紐の前記タン部材の裏側に通した部分に設けると共に、タン部材の表側から裏側に通した靴紐の両先端部と第一緊締ロック手段とを、このタン部材と前記インナー体との間に配設し得るように構成し、前記上方覆い部に、この上方覆い部を緊締する緊締手段を設けたことを特徴とする靴。
【請求項2】
前記靴紐を、前記タン部材の足首部分の近傍でこのタン部材の表側から裏側に通したことを特徴とする請求項1記載の靴。
【請求項3】
前記第一緊締ロック手段は、前記靴紐を挿通する挿通孔を備えた紐止め本体に、前記挿通孔に挿通された靴紐を挿通孔に圧接する圧接体を設けると共に、この圧接体が靴紐に圧接するように付勢された紐止め具を採用して構成したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の靴。
【請求項4】
前記緊締手段は、前記上方覆い部にこの上方覆い部を左右に横断する形状のベルト体を設けて、この左右に横断させたベルト体で上方覆い部を緊締し得るように構成し、この緊締手段による上方覆い部の緊締状態をロックするロック・解除可能な第二緊締ロック手段を緊締手段に設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の靴。
【請求項5】
前記第二緊締ロック手段は、前記ベルト体に、雌雄係合テープやバックルなどの止着具を設けて構成したことを特徴とする請求項4記載の靴。
【請求項6】
前記タン部材に、このタン部材を表裏方向に貫通する貫通孔を形成して、この貫通孔を介して前記靴紐の両先端部をタン部材の裏側に通すか、若しくは靴紐の両先端部をタン部材の左右両側縁部の外側を迂回させてタン部材の裏側に通す構成としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−194223(P2008−194223A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32369(P2007−32369)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(394006462)株式会社クレブ (6)
【Fターム(参考)】