説明

【課題】靴の着用者の本人特定を容易化する。
【解決手段】銘板が取り付けられた靴であって、前記銘板は、少なくとも熱及び機械的応力に対して耐性のある材料で形成されており、前記銘板には、当該靴の着用者の本人を特定するための情報である本人特定情報が刻み込まれており、前記銘板には、前記本人特定情報の内容を着用者が確認したことを記す確認欄が設けられており、前記銘板には、前記本人特定情報に記載された本人が、当該靴を着用するように、注意書きがなされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴に関し、特に、着用者を容易に特定することのできる靴に関する。
【背景技術】
【0002】
工場などの危険を伴う環境で作業に従事する者は、使用者の安全性の向上を図るために、靴底に鋼板が使われた安全靴と呼ばれる靴を着用している。また、災害などの被災者の救助に従事する者は、その救出が滑動に行えるような特殊な靴を着用している。
【0003】
このような靴を着用している着用者が、何らかの事故や災害に巻き込まれた場合、その人を特定するための情報が必要になることがある。例えば、工場で事故に遭遇し、病院に運ばれた場合に、その人の名前や血液型が分かれば、家族への連絡が円滑に行えるとともに、事故に遭遇した人の治療も素早く行えるようになる。また、大きな災害事故で多数の死者が出ているような場合に、その遺体が誰であるのかを特定する情報がすべて失われてしまっていることも有り得る。このような場合をも想定して、着用している靴に、何らかの本人特定情報が残るようにしておくことが望ましい。
【0004】
例えば、実開平4−9106号公報(特許文献1)や、実開平4−43108号公報(特許文献2)などに開示されているように、一般的には、靴にネームプレートなどが取り付けられている場合もあるが、単に、普通のプラスチック板や金属板に、名前を書いてあるに過ぎず、事故や災害の程度によっては、これらプラスチック板や金属板が消滅してしまったり、完全に溶けてしまったりすることもある。
【0005】
このような問題は、工場などの特殊な環境に従事する者だけに限ったことではなく、通常の人が何らかの事故や災害に巻き込まれる可能性もあることから、一般の靴についても、同様のことが言えると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平4−9106号公報
【特許文献2】実開平4−43108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、事故や災害等により、容易には失われないような態様で、本人特定情報を付加することのできる靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、銘板が取り付けられた靴であって、前記銘板は、少なくとも熱及び機械的応力に対して耐性のある材料で形成されており、前記銘板には、当該靴の着用者の本人を特定するための情報である本人特定情報が刻み込まれており、前記銘板には、前記本人特定情報の内容を着用者が確認したことを記す確認欄が設けられており、前記銘板には、前記本人特定情報に記載された本人が、当該靴を着用するように、注意書きがなされている、ことを特徴とする。
【0009】
この場合、前記本人特定情報には、性別が含まれており、さらに、着用者が男性である場合に、その着用者自らが、刻印を刻むための男性用刻印欄と、着用者が女性である場合に、その着用者自らが、刻印を刻むための女性用刻印欄と、が設けられているようにしてもよい。
【0010】
また、前記銘板には、さらに、着用者の顔写真が刻み込まれているようにしてもよい。
【0011】
また、前記銘板には、さらに、コード情報が刻み込まれており、前記コード情報には、着用者の服用している薬に関する情報と、着用者のアレルギーに関する情報のうちの少なくとも一方の情報が、含まれいているようにしてもよい。
【0012】
この場合、前記コード情報は、QRコードにより構成されているようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る靴の斜視図である。
【図2】図1の靴に取り付けられている銘板のおもて面に刻み込まれている本人特定情報の一例を示す図である。
【図3】図1の靴に取り付けられている銘板のうら面に刻み込まれている本人特定情報の一例を示す図である。
【図4】銘板のおもて面に、英語で本人特定情報を刻み込んだ変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本実施形態に係る靴10の斜視図である。この図1に示すように、靴10の底部には、靴底20が設けられており、この靴底20の上に、この靴10を着用した着用者の足を覆う足覆体22が形成されている。靴底20は、ゴム等のある程度の弾性のある材料で形成されている。この靴10が、安全靴等である場合には、この靴底20には、鋼板等の剛性のある板が埋め込まれており、着用者の足を保護できるように構成されている。足覆体22は、皮や合成皮革などの比較的柔らかい部材で形成されており、足覆体22と靴底20との間は、接着剤等により結合されている。
【0015】
足覆体22の甲の部分には、ベロ部24が形成されている。このベロ部24は、つま先方向の先端部26が、足覆体22に縫い付けられて、足覆体22と一体に連結しているが、足首方向の後端部28側は、足覆体22とは連結しておらず、分離している。このため、この靴を履いたり脱いだりする場合に、このベロ部24の後端部28が足覆体22と別個に移動して、その着脱作業を容易にしている。ベロ部24のつま先側には、銘板30が取り付けられている。
【0016】
図2は、本実施形態に係る銘板30のおもて面の構成の一例を示す図であり、図3は、そのうら面の構成の一例を示す図である。
【0017】
これら図2及び図3に示すように、本実施形態に係る銘板30の四隅には、それぞれ、貫通孔32が形成されている。本実施形態においては、この貫通孔32に、締結材であるビス34(図1参照)を貫通させることにより、銘板30を、容易には剥離しないように、ベロ部24に取り付けている。但し、銘板30のベロ部24に対する取り付け手法は、これに限られるものではなく、例えば、接着剤等を用いてベロ部24に銘板30を取り付けることもできる。
【0018】
本実施形態においては、この銘板30は、例えば0.5mmから2.0mmの厚さを有している。また、この銘板30は、軽量で、且つ、少なくとも熱及び機械的応力に対して耐性のある材料で形成されている。具体的には、災害などにより生じる、熱や化学液・気体、機械的応力などにより、容易には消滅しない材料で形成されている。例えば、本実施形態においては、銘板30は、(1)ステンレス鋼、(2)チタニウム、(3)ジルコニウム、又は、(4)Ni、Mo、W(ニッケル、モリブデン、タングステン)基合金などにより、形成されている。但し、銘板30は、これらの材料に限られるものではなく、例えば、プラスチックやセラミックであっても、事故や災害などで容易には消滅しない材料であれば、銘板30を形成することもできる。
【0019】
なお、この銘板30の材料は、この靴10が使用される環境に応じて、適宜選択することが望ましい。例えば、熱に対して耐性がある材料が好ましいのか、機械的な応力に対して耐性がある材料が好ましいのか、それとも、化学液に対して耐性がある材料が好ましいのかは、その靴10の使用環境によって異なるため、この靴10が使用される環境に応じて、材料を選択するようにすればよい。
【0020】
銘板30には、着用者を特定するための情報である、本人特定情報が記載されている。例えば、銘板30のおもて面には、着用者の氏名等が記載されており、銘板30のうら面には、着用者の顔写真等が記載されている。本実施形態においては、この本人特定情報は、事故や災害等により、容易には消滅しない記載方法で、銘板30に記載されている。例えば、銘板30の表面を削って刻み込むことにより、本人特定情報を、銘板30に加工印字している。
【0021】
本実施形態においては、銘板30の表面を削る深さは、0.005mm以内にしている。このため、本人特定情報を記すために削った部分の厚さ、すなわち、印字部分の板厚は、0.4mm以上あることとなり、また、元の銘板30の厚さの80%以上あることとなる。
【0022】
なお、銘板30の表面を削る方法には、様々な手法を採用し得る。すなわち、銘板30の表面を、電気化学的、化学的、熱的、又は、機械的に削って、本人特定情報を銘板30に刻み込むようにすればよい。
【0023】
より詳しくは、図2に示すように、銘板30のおもて面には、この本人特定情報を銘板30に記載した作成日、着用者の氏名、誕生日、性別、本人確認の有無、住所、電話番号、血液型が、刻み込まれている。また、銘板30のおもて面には、この銘板30が取り付けられた靴10を、必ず本人が着用するように促すために、「必ず本人が着用すること」という注意書きがなされている。つまり、この靴10の着用者と、銘板30に刻み込まれた本人特定情報とが合致するように、靴10の着用者に注意を促す記載がなされている。
【0024】
また、本人特定情報における性別の項目には、着用者自らがレ点を刻印するための刻印欄40、42が設けられている。すなわち、着用者が男性である場合には、その着用者自らが、刻印欄40にレ点を刻む作業を行い、着用者が女性である場合には、その着用者自らが、刻印欄42にレ点を刻む作業を行う。
【0025】
また、銘板30には、この銘板30に刻み込まれている本人特定情報に関して、本人確認が行われたことを記すための確認欄44が設けられている。すなわち、この銘板30に記載された内容が正しいことを確認した着用者は、確認欄44にレ点を刻む作業を自ら行う。このため、この確認欄44にレ点が刻まれていることにより、この銘板30に記載された本人特定情報が、正しいものであると推測することができる。
【0026】
また、本人特定情報の血液型の項目の前にも、確認欄46が設けられている。すなわち、銘板30に記載された血液型が正しいことを確認した着用者は、この確認欄46にレ点を刻む作業を自ら行う。このため、この確認欄46にレ点が刻まれていることにより、この銘板30に記載された血液型が本人のものであると推測することができる。
【0027】
一方、図3に示すように、銘板30のうら面には、本人特定情報として、着用者の顔写真50と、コード情報52とが、刻み込まれている。これら顔写真50とコード情報52は、銘板30のおもて面における氏名等と同じ方法で、刻み込むことができる。
【0028】
顔写真50は、使用者を撮像した画像をそのまま銘板30に刻み込んでもよいし、或いは、画像に基づいてイラスト化したイメージを銘板30に刻み込むようにしてもよい。コード情報52には、着用者の本人特定情報がコード化されて、刻み込まれている。本実施形態においては、このコード情報52は、QRコードにより構成されている。このQRコードに、着用者の氏名等の本人特定情報が含まれている。そして、例えば、携帯電話でこのQRコードを読み取ることにより、おもて面に記載した氏名等の本人特定情報を、電子情報として取得することができる。
【0029】
但し、コード情報52は、QRコード以外にも、PDF417や、DataMatirx、MaxiCodeなどの二次元コードで構成することもでき、さらには、バーコードなどの一次元コードにより構成することもできる。また、コード情報52に埋め込む情報は、おもて面に記載した本人特定情報に加えて、或いは、おもて面に記載した本人特定情報に代えて、本人特定情報以外の情報を埋め込むようにしてもよい。例えば、コード情報52に、着用者の服用している薬に関する情報と、着用者のアレルギーに関する情報のうちの少なくとも一方の情報が、含まれるようにしてもよい。
【0030】
以上のように、本実施形態に係る靴10によれば、災害や事故などで、着用者が負傷した場合や、死亡した場合に、銘板30に刻み込まれている本人特定情報に基づいて、着用者を容易に特定することができるようになる。このため、着用者の家族に速やかに連絡をすることができるようになり、また、着用者の治療を迅速に開始することができるようになる。
【0031】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず種々に変形可能である。例えば、上述した実施形態では、銘板30をベロ部24に取り付けることとしたが、この銘板30の取り付け位置は、ベロ部24に限るものではなく、靴10の任意の箇所に取り付けることが可能である。例えば、靴10のかかと部分にポケットを形成し、このポケットに銘板30を挿入するようにしてもよい。また、靴10にビンディングが設けられている場合には、このビンディングに、銘板30を取り付けるようにしてもよい。さらに、ポケットやビンディングが靴10に設けられている場合には、これらポケットやビンディングに、「必ず本人が着用すること」と、注意書きを記しておくようにしてもよい。
【0032】
また、上述した実施形態では、銘板30に日本語で本人特定情報を刻み込むようにしたが、本人特定情報は日本語以外の言語で刻み込むようにしてもよい。例えば、図4に示すように、銘板30のおもて面に、英語で、本人特定情報を刻み込むようにしてもよい。
【0033】
また、上述した銘板30に刻み込む情報は、単なる一例に過ぎず、必要に応じて、任意に取捨選択することが可能である。例えば、性別や血液型に関する情報、顔写真50やコード情報を、銘板30から省くようにしてもよい。また、性別を本人が刻み込むための刻印欄40、42は、必ずしも設ける必要はなく、例えば、氏名等と同様に、予め銘板30に男性であるのか、それとも女性であるのかを、刻み込むようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10 靴
20 靴底
22 足覆体
24 ベロ部
26 先端部
28 後端部
30 銘板
32 貫通孔
34 ビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銘板が取り付けられた靴であって、
前記銘板は、少なくとも熱及び機械的応力に対して耐性のある材料で形成されており、
前記銘板には、当該靴の着用者の本人を特定するための情報である本人特定情報が刻み込まれており、
前記銘板には、前記本人特定情報の内容を着用者が確認したことを記す確認欄が設けられており、
前記銘板には、前記本人特定情報に記載された本人が、当該靴を着用するように、注意書きがなされている、
ことを特徴とする靴。
【請求項2】
前記本人特定情報には、性別が含まれており、さらに、
着用者が男性である場合に、その着用者自らが、刻印を刻むための男性用刻印欄と、
着用者が女性である場合に、その着用者自らが、刻印を刻むための女性用刻印欄と、
が設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の靴。
【請求項3】
前記銘板には、さらに、着用者の顔写真が刻み込まれている、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の靴。
【請求項4】
前記銘板には、さらに、コード情報が刻み込まれており、前記コード情報には、着用者の服用している薬に関する情報と、着用者のアレルギーに関する情報のうちの少なくとも一方の情報が、含まれいている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の靴。
【請求項5】
前記コード情報は、QRコードにより構成されている、ことを特徴とする請求項4に記載の靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−156167(P2011−156167A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20478(P2010−20478)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(390002222)株式会社シモン (7)
【Fターム(参考)】