説明

【目的】 舌片が靴内部にずれ込むことを防止し、履きやすい靴を提供する。
【構成】 靴本体の一方の胛側11より延設したバンド3に胛被前方の切欠き部2を被覆する舌片4と圧着面状ファスナ−5を取付け、この圧着面状ファスナ−5と対をなす他方の胛側11’に固定面状ファスナ−6を装着し、舌片4をバンド3で緊締した。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は、胛被前方の切欠き部に舌片を設けた靴であって、特に幼児用に好適な靴に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、一般靴において舌片は胛被前方の切欠き部の内側に設けられているが、この構造の靴は履く時に足によって舌片が靴内部にずれ込んだり、また履用中に舌片がずれて胛被前方切欠き部の隙間から小石、砂などが入り込むことによって足に違和感を生じさせていた。これらの問題を防止する目的として実公昭61−14813号が提案されているが、この考案は舌片を胛被前方の切欠き部の上面に配して舌片の前半部に舌片補強部材を置き胛被とに一体に縫着し、舌片をバンドで緊締してなる靴であるが、この靴を履くには舌片の前方部が胛被に縫着されている為に、バンドを外した後、舌片の後方部を持ち上げて履かなければならず、幼児靴としては履くのに手間がかかり完全ではなかった。また、製造過程においては、ラストに胛被を吊込む時に舌片の後方部が靴内部に巻き込まれることがあり、吊込みの仕直しをせざるをえず作業性の能率低下の要因となっていた。
【0003】
【考案の解決しようとする課題】
この考案は上記の欠点を除去し、舌片が靴内部にずれ込みを防止し、履きやすい靴を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この考案は靴本体の胛被前方に形成された切欠き部2の上面に、該切欠き部2を被覆して舌片4を配した靴において、一方の胛側11より他方の胛側11’に延設したバンド3の裏面に舌片4を挟んで圧着面状ファスナ−5を取付け、この圧着面状ファスナ−5と対応して、これと対をなす固定面状ファスナ−3を他方の胛側11’に装着したことを特徴とする靴を考案の要旨とするものである。
【0005】
この考案において面状ファスナ−とは、面状に無数のフックを密性させた雄型の面状ファスナ−と、面状に無数のル−プを密性させた雌型の面状ファスナ−とからなり、両者を相対向させて押圧すれば、フックとル−プとの係合が面状に結合され、雄型の面状ファスナ−または雌型の面状ファスナ−のいずれか一方を一定の力で引っ張ることにより、両者の係合を離脱させるようにしたファスナ−を云い、市販のマジックファスナ−(登録商標)のようなものを云う。
【0006】
【作用】
本考案の靴は、バンドの圧着面状ファスナ−を胛側の固定面状ファスナ−から外しバンドを胛被から開放すると、舌片が胛被前方切欠き部から完全に離脱される。またバンドの圧着面状ファスナ−を胛側の面状ファスナ−に係合しバンドを胛被に止着すると、舌片によって胛被前方の切欠き部が完全に被覆される。
【0007】
【実施例】
以下実施図面によって説明する。図1はバンドを開放した状態を示した本考案の靴の斜視図であり、図2は図1のバンドのA−A断面図である。この考案の靴は、図1に示すように、胛被の胛側11の一方にバンド3の一端を縫着し、舌片4を靴1の胛被前方の切欠き部2に被覆するように配置してバンド3に取付け、バンド3の他端に舌片4と重なるように圧着面状ファスナ−5(雌型面状ファスナ−)を取付け、該圧着面状ファスナ−5(雌型面状ファスナ−)と対をなす他方の胛側11’に固定面状ファスナ−6(雄型面状ファスナ−)を縫着し、バンド3の圧着面状ファスナ−5(雌型面状ファスナ−)を胛被の固定面状ファスナ−6(雄型面状ファスナ−)に係合離脱できるようにした構造からなる。
【0008】
本考案のバンド3は、合成皮革など可撓性の材料が使用される。本考案の舌片4は、図1に示すように胛被前方切欠き部2を被覆する広さからなり、合成繊維にウレタンスポンジを貼り合わせた柔軟な材料が用いられる。本考案の舌片4は、舌片4の一部をバンド3と圧着面状ファスナ−5(雌型面状ファスナ−)の間に挾んで取付けられる。本考案の靴はバンド3に舌片4及び圧着面状ファスナ−5(雌型面状ファスナ−)を順に重ね合わせバンド3の外周に沿って一体に縫着した後、バンドを一方の胛側11に縫着すれば、バンドの縫製及び取付け作業の工数が簡略化できる。本考案の圧着面状ファスナ−5(雌型面状ファスナ−)は舌片4の裏面にまたがらせて縫着されるので、圧着面状ファスナ−5(雌型面状ファスナ−)の面積を広く取ることができる。
【0009】
【考案の効果】
この考案は以上のように構成されており、舌片4がバンド3と圧着面状ファスナ−5に挟まれて取り付けられているので、バンド3の圧着面状ファスナ−5を胛側11’の固定面状ファスナ−6から外してバンド3を開放すれば、舌片4が切欠き部2から完全に離脱されるので、靴を履く時に足によって舌片4が靴内部にずれ込むことがなく、かつ舌片4の後方部を持ち上げる必要がないので手間がかからない。また、本考案の靴はバンド3の圧着面状ファスナ−5を胛側11’の固定面状ファスナ−6に係合してバンド3を胛側11’に止着すれば、履用中でも舌片4がずれることがなく、舌片4によって切欠き部2が完全に被覆されるので足の胛部全体にフィット感及びソフト感を与えると共に、靴内部への小石、砂などの入り込みが防止される。製造過程においては、胛被をラストに吊り込む際、舌片が巻き込むことがなくなったので吊込みの仕直し作業が不要になり作業上の効率が向上した。
【0010】
そして、本考案の靴は一定の長さのバンド3において、舌片4にまたがらせて延長した圧着面状ファスナ−5を使用できるので、バンド3を引っ張り圧着面状ファスナ−5を固定面状ファスナ−6に対してずらして係合させても係合面積を減少させることがないので接合強度を確保できる効果を有するものである。さらに、従来舌片を胛被前方の切欠き部の上面に取付けるのに舌片補強部材が別に必要であったが、本考案の靴はその部材が必要なく舌片4をバンド3と圧着面状ファスナ−5の間に挾んで縫着するだけで簡単に取り付けられ、製造コストを下げることができ、また舌片4とバンド3とを異なる色を採用することにより、色彩豊かな靴が得られる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の一実施例を示す靴の斜視図である。
【図2】本考案の図1のA−A断面図である。
【符号の説明】
1…靴 11…胛側 11’…胛側
2…切欠き部
3…バンド
4…舌片
5…圧着面状ファスナ−
6…固定面状ファスナ−

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】靴本体の胛被前方に形成された切欠き部2の上面に、該切欠き部2を被覆して舌片4を配した靴において、一方の胛側11より他方の胛側11’に延設したバンド3の裏面に舌片4を挟んで圧着面状ファスナ−5を取付け、この圧着面状ファスナ−5と対応して、これと対をなす固定面状ファスナ−3を他方の胛被11’に装着したことを特徴とする靴。

【図1】
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【図2】
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【登録番号】第3033984号
【登録日】平成8年(1996)11月13日
【発行日】平成9年(1997)2月7日
【考案の名称】靴
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平8−8170
【出願日】平成8年(1996)7月25日
【出願人】(000004433)株式会社アサヒコーポレーション (15)