説明

音声信号再生装置

【目的】 圧縮データを記憶手段を介して音声信号に伸長する際、全体の制御系の速度を可変することなく実現できること。
【構成】 圧縮技術を利用して記録したMD等の記録媒体から音声信号を再生するとき、MD等の記録媒体を間欠再生して得られる圧縮データを記憶するメモリ7からなる記憶手段と、そのメモリ7からなる記憶手段から連続的に前記圧縮データを読出し、それを音声信号に伸長するATRACデコーダ8からなる伸長手段とを備えた音声再生装置において、前記ATRACデコーダ8からなる伸長手段の動作速度は、所望の速度に可変する可変クロック生成部14からなる可変手段を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、音声信号を圧縮技術を利用して圧縮記録した記録媒体、例えば、コンパクトディスク(CD)、ミニディスク(MD)、カセットテープ等から、音声信号を逐次読出し、その読出した記録情報を一時的に記憶する記憶手段を介して音声信号に伸長する音声信号再生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種の音声信号再生装置として、主なものには、CDプレーヤ、MDプレーヤ、カセットレープレコーダ等がある。これらのなかには、語学修得や時間節約のために再生速度を遅くしたり、早くしたりする機能を有するものがある。
【0003】しかし、従来の音声信号再生装置においては、記録媒体から記録信号を読出す速度と、音声信号を出力する速度はリアルタイムの関係にあった。したがって、音声信号の再生速度を可変するためには、マスタークロックを可変して、全体の制御系の速度を可変することによって実現している。
【0004】また、近年、MDなる記憶媒体を用いて、音声の記録再生を行なうMDレコーダ、MDプレーヤが登場している(「日経エレクトロニクス」1991年12月9日号 P.160〜168,日経マグロウヒル社発行)。
【0005】このMDプレーヤでは、音声信号を約1/5にデータ圧縮する圧縮技術によって記録された記憶媒体から、読出したデータを一旦記憶手段に記憶し、その記憶手段から連続的に圧縮データを読出しながら、伸長手段によって前記圧縮データを音声信号に伸長し、得られた音声信号を出力することによって音声再生を行なっている。
【0006】また、MDなる記憶媒体からデータを読出す速度は、記録時と同じであり、圧縮比に対応して読出し速度を遅くしているわけではない。そのため、MDと音声出力手段及びMDと音声入力手段との間に記憶手段が必要となり、また、その記憶手段によってプレーヤが振動したとき、一時的に再書込みまたは再読出しすることにより、耐震性を向上させている。
【0007】
【発明が解決しようとする問題点】しかしながら、例えば、CDプレーヤ、MDプレーヤの可変速再生機能を実現するために、制御系全体の動作速度を可変させることは、CD、MDの回転制御や、信号を読取る光学式ピックアップの位置制御に悪影響を及ぼし、制御手段が複雑化することになる。
【0008】また、MDプレーヤのように、圧縮データを記憶手段を介して音声信号に伸長し、音声信号を出力するシステムでは、系全体の動作がリアルタイムでないため、可変速再生機能を実現するために制御系全体の動作速度を可変させてもあまり意味がない。
【0009】そこで、本発明は、圧縮データを記憶手段を介して音声信号に伸長する際、全体の制御系の速度を可変することなく、実現できる音声信号再生装置の提供を課題とするものである。
【0010】
【問題点を解決するための手段】本発明にかかる音声信号再生装置は、圧縮技術を利用して記録した記録媒体から音声信号を再生するとき、記録媒体を間欠再生して得られる圧縮データを記憶する記憶手段と、その記憶手段から連続的に前記圧縮データを読出し、それを音声信号に伸長する伸長手段とを備え、前記伸長手段の動作速度を可変手段で所望の速度に可変するものである。
【0011】
【作用】本発明においては、伸長手段の動作速度のみを可変手段のクロックで可変することによって、記憶手段から連続的に圧縮データを読出す可変速再生機能が実現できる。
【0012】
【実施例】以下、本発明の音声信号再生装置を図1に図示する実施例に従って説明する。
【0013】図1は本発明の音声信号再生装置をMDプレーヤに採用した実施例の全体構成ブロック回路図である。
【0014】図において、MDの記録トラックを光学的に再生する光ピックアップ1は、その再生出力をRFアンプ2に入力して増幅し、その出力をサーボ回路13とアドレスデコーダ3とEFMデコーダ4に入力している。前記サーボ回路13は再生増幅出力よりトラッキング制御信号とフォーカス制御信号を形成し、それらの信号を光ピックアップ1と送りモータ12に供給すると共に、前記EFMデコーダ4で抽出される同期信号に基づいて回転制御信号を形成してディスクモータ11に供給している。したがって、MDはディスクモータ11によって、各記録トラックの線速度が一定に保たれ、前記光ピックアップ1は正しく記録トラックに追随すると共にその焦点を記録トラック面に一致させる。
【0015】また、アドレスデコーダ3は、再生増幅出力のうち、トラッキングエラー信号の高域成分を抽出し、FM復調して得られるADIPコードを検出してEFMデコーダ4に入力しており、システムコントローラ10より得られる選択信号に従って、EFMデコーダ4内で検出されるサブコードと入力されるアドレスコードとを選択して、前記システムコントローラ10に供給している。前記システムコントローラ10は、再生位置で示すサブコードまたはアドレスコードに基づき光ピックアップアクセス制御を実行し、間欠再生を可能にしている。
【0016】EFMデコーダ4で復調された信号は、ACIRCデコーダ5においてエラー訂正等の処理がなされ、メモリコントローラ6に供給される。このメモリコントローラ6はデータを記憶手段であるメモリ7の所定のエリアに記憶させる。更に、このメモリコントローラ6は伸長手段であるATRACデコーダ8からの要求に応じて、記憶手段であるメモリ7より、途切れることなくデータを順次読出している。また、サウンドグループ単位で読出されるデータは、ATRACデコーダ8でデータ伸長され、D/A変換回路9に入力され、2チャンネルの音声データに変換され、アナログ信号として出力される。
【0017】可変クロック生成部14は、本実施例の伸長手段として機能し、読出し動作速度を可変させる可変手段である。この可変クロック生成部14で生成されるクロックは伸長手段である前記ATRACデコーダ8のマスタークロックとなる。また、その可変量は前記システムコントローラ10によって設定される。
【0018】通常速度では、ATRACデコーダ8は、1サウンドグループ分のデータを各チャンネルにつき44.1KHzのサンプリング周波数で512個分の16ビット量子化データに伸長する。
【0019】したがって、ATRACデコーダ8からメモリコントローラ6には、1/44.1[KHz ]×512≒11.6[ms]
毎に1サウンドグループ分のデータ転送要求がなされ、記憶手段であるメモリ7からデータが読出される。また、メモリ7へのデータの記憶は、メモリコントローラ6を介して、常に満杯になるように行なわれる。したがって、メモリ7を介して、メモリ7に対する書込みとメモリ7からの読出しは、時間的に分割され、リアルタイムの関係ではなくなる。
【0020】そこで、可変クロック生成部14で生成した可変クロックをATRACデコーダ8のマスタークロックとして使用すれば、メモリ7の読出し時の動作速度のみを可変することによって、可変速再生機能が実現できる。例えば、ATRACデコーダ8の通常速度でのマスタークロックが20MHzであったとすると、前記可変クロック生成部14で、18〜22MHzの可変クロックを生成すれば、通常速度より±10%の可変速再生が可能である。
【0021】また、ディスクモータ11の制御やトラッキング制御等の光ピックアップ1の制御は、常に、通常速度で行なわれるので、前記サーボ回路13等の制御回路部を可変速再生に対応させる必要はなく、制御回路が複雑化することもない。
【0022】このように、本実施例の音声信号再生装置は、圧縮技術を利用して記録したMD等の記録媒体から音声信号を再生するとき、MD等の記録媒体を間欠再生して得られる圧縮データを記憶するメモリ7からなる記憶手段と、そのメモリ7からなる記憶手段から連続的に前記圧縮データを読出し、それを音声信号に伸長するATRACデコーダ8からなる伸長手段とを備えた音声再生装置において、前記ATRACデコーダ8からなる伸長手段の動作速度は、所望の速度に可変する可変クロック生成部14からなる可変手段を有するものである。
【0023】したがって、本実施例の音声信号再生装置は、通常の音声信号再生装置を構成するATRACデコーダ8からなる伸長手段の、読出し速度を決定するクロックパルスの周波数を、可変クロック生成部14からなる可変手段で所望の速度に可変することにより、可変速再生機能を持たせることができる。この可変クロック生成部14として電圧制御発振回路等を使用することにより、連続的に出力を可変することができ、また、全体の制御系を動作させるクロック信号を分周回路或いは逓倍回路を通すことにより、所定の単位で可変することができる。そして、クロックの変更という簡単な構成で可変速再生機能が実現でき、かつ、サーボ回路には全く無関係となり、可変速再生機能を持たないプレーヤと同一となり、廉価に、可変速再生機能を持たせることができる。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の音声信号再生装置は、圧縮技術を利用して記録した記録媒体を間欠再生して得られる圧縮データを記憶する記憶手段と、その記憶手段から連続的に前記圧縮データを読出し、それを音声信号に伸長する伸長手段とを備えた音声再生装置において、前記伸長手段の動作速度は、所望の速度に可変する可変手段で決定するものであるから、簡単な構成で可変速再生機能が実現でき、また、サーボ回路には全く無関係となり、可変速再生機能を持たないプレーヤと同一となり、廉価に、可変速再生機能を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の音声信号再生装置をMDプレーヤに採用した実施例の全体構成ブロック回路図である。
【符号の説明】
6 メモリコントローラ
7 メモリ
8 ATRACデコーダ
14 可変クロック生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 圧縮技術を利用して記録した記録媒体を間欠再生して得られる圧縮データを記憶する記憶手段と、その記憶手段から連続的に前記圧縮データを読出し、それを音声信号に伸長する伸長手段とを備え、前記記録媒体から音声信号を再生する音声再生装置において、前記伸長手段の動作速度は、所望の速度に可変する可変手段を有することを特徴とする音声信号再生装置。

【図1】
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【公開番号】特開平6−275012
【公開日】平成6年(1994)9月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−66981
【出願日】平成5年(1993)3月25日
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)