説明

音声圧縮セル化システム

【課題】 ATM通信網全体の輻輳を回避し得ると共に、無益に音声信号を圧縮して音質低下を来すことが無い音声セル化システムを提供すること。
【解決手段】 この音声圧縮セル化システムでは、ネットワーク監視回路11がATMインターフェース回路15を介してATM通信網18における輻輳状況情報及び音声接続パス情報を監視し、制御回路10が輻輳状況情報及び音声接続パス情報に基づいて無音検出回路12における無音検出閾値を制御する。無音検出回路12は制御回路10により設定された無音検出閾値に従って音声信号の無音検出を行い、その音声信号が音声符号化回路13で符号化される。無音圧縮セル組立回路14では、音声符号化回路13で符号化された符号化信号の有音部分のみをセル化してセル化信号をATMインターフェース回路15を介してATM通信網18へ送出する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主としてATM通信網に無音圧縮した音声信号を収容する際の音声圧縮セル化システムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の音声セル化システムに関連した技術としては、例えば特開平5−244104号公報に開示された音声符号化器が挙げられる。
【0003】この音声符号化器では、ATM通信網への適用を計るために、無音圧縮の適用範囲を制限し、音声信号の冗長度を抑制することによって音声信号の自然性を保っている。
【0004】図5は、この音声符号化器の基本構成を示したブロック図である。ここでの音声符号化器は、電話器からの入力信号を圧縮して符号化して符号化信号を出力する信号圧縮器301と、この符号化信号を入力してセルを組立ててセル化信号を出力するセル組立器302と、セル化信号において組立てられた複数のセルを一旦格納して順次回線へ出力信号として送出する送信バッファ303と、出力信号に基づいて送信バッファ303におけるセル格納量を検出した結果を示す検出信号を出力する検出器304と、検出信号に基づいてセル格納量を所定値とを比較してセル格納量が所定値より大きいときに信号圧縮の程度を増大するように信号圧縮器301を制御するための制御信号を出力する比較器305とから構成されている。
【0005】即ち、この音声符号化器における動作に関しては、先ず信号圧縮器301が電話器からの入力信号を圧縮して符号化して符号化信号を出力する。次に、セル組立て器302は信号圧縮器301からの符号化信号を入力してセルを組立ててセル化信号を出力する。引き続き、送信バッファ303はセル化信号を入力して組立てられた複数のセルを一旦格納して順次回線へ出力信号として送出する。
【0006】一方、検出器304は出力信号を入力して送信バッファ303のセル格納量を検出して検出信号を出力し、比較器305では検出信号を入力してセル格納量及び所定の閾値を比較し、その結果として、セル格納量が所定の閾値より大きいときには、信号圧縮の程度を増大するように信号圧縮器301を制御するための制御信号を出力する。
【0007】従って、この音声符号化器において、送信バッファ303のセル格納量が所定の閾値より少ない場合には信号圧縮の程度が抑制されるので、伝送信号の品質が向上する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上述した音声符号化器の場合、音声信号の圧縮程度の制御を自回路の送信バッファ内のセル格納量の絶対値に基づいて行っているため、出力信号が送出されるATM通信網内の音声パス通過部のうち、自回路が収容されているATM回線以外のATM回線の輻輳状況に対応した制御を行い得ないという問題がある。
【0009】本発明は、このような問題点を解決すべくなされたもので、その技術的課題は、ATM通信網全体の輻輳を回避し得ると共に、無益に音声信号を圧縮して音質低下を来すことが無い音声セル化システムを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、入力された音声信号を圧縮,セル化したセル化信号をATM通信網へ送出する音声圧縮セル化システムにおいて、所定の無音検出閾値との比較に基づいて音声信号の無音を検出する無音検出手段と、ATM通信網内の音声パス通過部の輻輳状況を監視するネットワーク監視手段と、輻輳状況に応じて無音検出閾値を制御する閾値制御手段と、無音検出された音声信号の有音部分のみをセル化してセル化信号を得るセル化手段とを有する音声圧縮セル化システムが得られる。
【0011】又、本発明によれば、上記音声圧縮セル化システムにおいて、無音検出手段は音声信号における無音検出を無音検出閾値に従って行う無音検出回路であり、ネットワーク監視手段はATM通信網における輻輳状況情報及び音声接続パス情報を監視するネットワーク監視回路であり、閾値制御手段は輻輳状況情報及び音声接続パス情報に基づいて無音検出閾値を制御する制御回路である音声圧縮セル化システムが得られる。
【0012】更に、本発明によれば、上記何れかの音声圧縮セル化システムにおいて、セル化手段は、無音検出された音声信号を符号化して符号化信号を出力する音声符号化回路と、符号化信号における有音部分のみをセル化してセル化信号を出力する無音圧縮セル組立回路とから成る音声圧縮セル化システムが得られる。
【0013】加えて、本発明によれば、上記何れかの音声圧縮セル化システムにおいて、セル化信号をATM通信網へ送出するためのATMインターフェース回路を有し、ネットワーク監視回路はATMインターフェース回路を介してATM通信網内を監視する音声圧縮セル化システムが得られる。
【0014】又、本発明によれば、上記何れかの音声圧縮セル化システムにおいて、無音検出閾値を外部から指令制御するために制御回路に接続された外部接続通信手段を備えた音声圧縮セル化システムが得られる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に実施例を挙げ、本発明の音声圧縮セル化システムについて、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】図1は、本発明の一実施例に係る音声圧縮セル化システムの基本構成を示したブロック図である。
【0017】この音声圧縮セル化システムは、所定の無音検出閾値との比較に基づいて音声信号線16より入力される音声信号の無音を検出する無音検出手段と、ATM通信網18内の音声パス通過部の輻輳状況を監視するネットワーク監視手段と、輻輳状況に応じて無音検出閾値を制御する閾値制御手段と、無音検出された音声信号の有音部分のみをセル化してセル化信号を得るセル化手段とを有している。
【0018】このうち、無音検出手段は音声信号における無音検出を無音検出閾値に従って行う無音検出回路12であり、ネットワーク監視手段はATM通信網18における輻輳状況情報及び音声接続パス情報を監視するネットワーク監視回路11であり、閾値制御手段は輻輳状況情報及び音声接続パス情報に基づいて無音検出閾値を制御する制御回路10となっている。
【0019】又、セル化手段は、無音検出された音声信号を符号化して符号化信号を出力する音声符号化回路13と、符号化信号における有音部分のみをセル化してセル化信号を出力する無音圧縮セル組立回路14とから成っている。
【0020】更に、この音声圧縮セル化システムでは、セル化信号をATM通信網18へ送出するためのATMインターフェース回路15を有し、ネットワーク監視回路11がATMインターフェース回路15を介してATM通信網18内を監視するようになっている。
【0021】図2は、このような音声圧縮セル化システムを含むATM通信ネットワークシステムの基本構成を例示したものである。ここでは、音声端末20が音声信号線16を介してATM通信網18に収容され、音声端末21が音声信号線17を介してATM通信網18に収容されている。又、ATM通信網18内部には、4つのATM中継ノード22〜25が配置され、各々ATM中継ノード22〜25は4本のATM中継回線26〜29でそれぞれ接続されている。
【0022】そこで、音声端末20及び音声端末21間にノード22,ノード23,ノード24を介した音声パスが設定されていると仮定すると共に、図1に示す音声圧縮セル化システムの各構成回路がノード22に実装されていると仮定し、図3に示されるようにATM中継回線26,27の輻輳状況が時間(t)軸に対する定量化パラメータとしての回線使用率の関係で示されるものとする。
【0023】こうした場合、音声圧縮セル化システムでは、ネットワーク監視回路11において音声パスがATM通信網18内部でノード22,ノード23,ノード24を介して接続されていることを認識し、音声接続パス情報を制御回路10へ送信すると同時に、ATM中継回線26,27の輻輳状況情報を通知する。制御回路10では、音声パス通過部の全ての中継回線のうち、回線使用率が最も高い中継回線の回線使用率によって決定する。
【0024】図3に示す例の場合、制御回路10では、回線輻輳状況を回線使用率によって3つの状態で管理し、回線使用率が80%〜100%までを状態A,60%〜80%までを状態B,0%〜60%までを状態Cとしているので、音声パス通過部の全ての中継回線のうち、回線使用率が最も高い中継回線の輻輳状況が状態Aであれば、無音検出閾値をA′,状態BであればB′,状態CであればC′(但し、ここではA′>B′>C′が成立する)とする。そこで、制御回路10では、図3におけるa,b,c,d,eのそれぞれの時間において、無音検出閾値を時間a中はC′,時間b中はB′,時間c中はA′,時間d中はB′,時間e中はC′とする。
【0025】即ち、図1に示す音声圧縮セル化システムでは、制御回路10でATM通信網18内の音声パス通過部の輻輳状況に応じて無音検出時の無音検出閾値を制御した上、無音圧縮セル組立回路14では無音検出された音声信号の有音部分のみをセル化したセル化信号をATM通信網18へ送出するため、ATM通信網全体の輻輳回避や無益な音声圧縮による音質低下の防止を計ることができる。
【0026】具体的に云えば、制御回路10においてはATM通信網18の音声パス通過部に網輻輳が発生,又は発生が予想される場合には高い無音検出閾値を設定するが、網リソースが十分にあり網輻輳の発生が予想されない場合には低い無音検出閾値を設定するので、ATM通信網18内の音声パス通過部に輻輳が発生,又は発生が予想される場合には無音検出閾値を高い値に設定してセル化信号をATM通信網18へ送出することによって音声セルを減少させるため、ATM通信網全体の輻輳回避が計られる。
【0027】一方、ATM通信網内の音声パス通過部に十分な網リソースがあり、輻輳の発生が予想されない場合には無音検出閾値を低い値に設定してセル化信号をATM通信網18へ送出することによって無益な音声圧縮による音質低下の防止が計られる。
【0028】図4は、本発明の他の実施例に係る音声圧縮セル化システムの基本構成を示したブロック図である。
【0029】この音声圧縮セル化システムでは、先の一実施例のシステムと比べると、新たに無音検出閾値を外部から指令制御するために制御回路10に接続された外部接続通信手段としてのコンソールインタフェース回路30が設けられている。
【0030】このコンソールインタフェース回路30は、コンソール端末に接続されることにより、コンソール端末から無音検出閾値を変更できるため、ATM通信網18を利用するユーザーがプログラマブルに無音検出閾値を決定できる構成となっている。例えば、制御プログラムに計時機能を持たせ、特定の時間帯において固定的に無音検出閾値を低く設定して音声品質を重視したり、或いは特定の時間帯において固定的に無音検出閾値を高く設定してATM通信網18の輻輳回避を重視するようなユーザー固有の運用が可能になる。又、ATM通信網18に収容される音声端末20,21に優先順位を持たせ、特定の音声端末からの音声信号のみを固定的に低い無音検出閾値で検出して音声品質を保つ等のサービスが可能となる。
【0031】
【発明の効果】以上に述べた通り、本発明の音声圧縮セル化システムによれば、ネットワーク監視手段により監視して得たATM通信網内の音声パス通過部の輻輳状況に応じて閾値制御手段により無音検出時の無音検出閾値を制御した上、セル化手段により無音検出された音声信号の有音部分のみをセル化したセル化信号をATM通信網へ送出するため、ATM通信網全体の輻輳を回避し得ると共に、無益に音声信号を圧縮して音質低下を来すことが無くなる。即ち、ATM通信網内の音声パス通過部に輻輳が発生,又は発生が予想される場合には無音検出閾値を高い値に設定してATM通信網へ送出するセル化信号の音声セルを減少させることによってATM通信網全体の輻輳回避が計られ、ATM通信網内の音声パス通過部に十分な網リソースがあり、輻輳の発生が予想されない場合には無音検出閾値を低い値に設定してセル化信号をATM通信網へ送出することによって無益な音声圧縮による音質低下の防止が計られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る音声圧縮セル化システムの基本構成を示したブロック図である。
【図2】図1に示す音声圧縮セル化システムを含むATM通信ネットワークシステムの基本構成を例示したブロック図である。
【図3】図2に示すATM通信ネットワークシステムのATM通信網内の局部ATM中継回線の輻輳状況を時間軸に対する定量化パラメータとしての回線使用率の関係で示したものである。
【図4】本発明の他の実施例に係る音声圧縮セル化システムの基本構成を示したブロック図である。
【図5】従来の音声符号化器の基本構成を示したブロック図である。
【符号の説明】
10 制御回路
11 ネットワーク監視回路
12 無音検出回路
13 音声符号化回路
14 無音圧縮セル組立回路
15 ATMインタフェース回路
16〜17 音声信号線
18 ATM通信網
20〜21 音声端末
22〜25 ATM中継ノード
26〜29 ATM中継回線
30 コンソールインタフェース回路
301 信号圧縮器
302 セル組立器
303 送信バッファ
304 検出器
305 比較器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 入力された音声信号を圧縮,セル化したセル化信号をATM通信網へ送出する音声圧縮セル化システムにおいて、所定の無音検出閾値との比較に基づいて前記音声信号の無音を検出する無音検出手段と、前記ATM通信網内の音声パス通過部の輻輳状況を監視するネットワーク監視手段と、前記輻輳状況に応じて前記無音検出閾値を制御する閾値制御手段と、前記無音検出された音声信号の有音部分のみをセル化して前記セル化信号を得るセル化手段とを有することを特徴とする音声圧縮セル化システム。
【請求項2】 請求項1記載の音声圧縮セル化システムにおいて、前記無音検出手段は前記音声信号における無音検出を前記無音検出閾値に従って行う無音検出回路であり、前記ネットワーク監視手段は前記ATM通信網における輻輳状況情報及び音声接続パス情報を監視するネットワーク監視回路であり、前記閾値制御手段は前記輻輳状況情報及び前記音声接続パス情報に基づいて前記無音検出閾値を制御する制御回路であることを特徴とする音声圧縮セル化システム。
【請求項3】 請求項1又は2記載の音声圧縮セル化システムにおいて、前記セル化手段は、前記無音検出された音声信号を符号化して符号化信号を出力する音声符号化回路と、前記符号化信号における有音部分のみをセル化して前記セル化信号を出力する無音圧縮セル組立回路とから成ることを特徴とする音声圧縮セル化システム。
【請求項4】 請求項2又は3記載の音声圧縮セル化システムにおいて、前記セル化信号を前記ATM通信網へ送出するためのATMインターフェース回路を有し、前記ネットワーク監視回路は前記ATMインターフェース回路を介して前記ATM通信網内を監視するものであることを特徴とする音声圧縮セル化システム。
【請求項5】 請求項2〜4の何れか一つに記載の音声圧縮セル化システムにおいて、前記無音検出閾値を外部から指令制御するために前記制御回路に接続された外部接続通信手段を備えたことを特徴とする音声圧縮セル化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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