説明

音式スイッチコントローラ

【課題】 運動障害を持っていても音を聞くことが可能で、且つ、一つのスイッチをオン操作することができる人であれば、容易に操作することができ、意図したコントロール対象部を制御することができる音式スイッチコントローラを提供することを解決すべき課題とする。
【解決手段】 音式スイッチコントローラ1は、音発生部2から予め決められた複数の音が、順次、発生されている過程で、操作書が意図したコントロール対象部6を制御する音に、その発生音が一致した場合、操作者が一つのスイッチ5をオン操作すると、制御信号出力部4は、スイッチ5がオン操作されたときに発生している音に対応した制御信号をコントロール対象部6に出力するため、操作者が運動障害を持っていても音を聞くことが可能で、且つ、一つのスイッチ5をオン操作することができる人であれば、意図したコントロール対象部6を制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作する人が、複数の音を、順次、聞き、ある音が発生されている状態でスイッチをオン操作した場合、そのオン操作時の発生音に対応した制御信号を出力する音式スイッチコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運動障害を持つ人が電動車椅子に搭乗し、電動車椅子を走行させる場合、搭乗者が走行に関する音声命令を発すると、電動車椅子の制御装置は、その音声命令に基づき走行電動機を駆動して電動車椅子を走行させるものがある(特許文献1参照)。
また、音声命令を正確に発することが困難な、例えば高齢者が電動車椅子の搭乗者である場合、その高齢者の発した音声命令が電動車椅子の制御装置により正しく認識されているか否かを表示することによって、その高齢者がそれを確認することができるものがある(特許文献2参照)。
【0003】
尚、運動障害を持つ人が電動車椅子に搭乗し、ジョイステックコントローラを操作して走行させる電動車椅子が一般的であるが、運動障害を持つ人は、確実にジョイステックコントローラを操作することが難しい。
【特許文献1】特開2000−84004号公報
【特許文献2】特開2003−310665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1、及び、特許文献2に記載されている電動車椅子は、走行する場合、搭乗者が音声命令を発することができることが必要条件である。従って、音声発声機能が不十分である人は、その電動車椅子を走行させることができない。また、ジョイステックコントローラを装備した電動車椅子の場合は、手が不自由な運動障害者にとってジョイステックコントローラを正確に操作することが難しく、ジョイステックコントローラの操作に注意が集中するため、安全な走行ができない場合がある。
【0005】
そこで本発明では、運動障害を持っていても音を聞くことが可能で、且つ、一つのスイッチをオン操作することができる人であれば、容易に操作することができ、意図したコントロール対象部を制御することができる音式スイッチコントローラを提供することを、解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、特許請求の範囲の欄に記載した音式スイッチコントローラにより解決することができる。
請求項1に記載の音式スイッチコントローラによれば、音発生手段から予め決められた複数の音が、順次、発生されている過程で、操作者が意図したコントロール対象部を制御する音に、その発生音が一致した場合、操作者が一つのスイッチをオン操作すると、制御信号出力手段は、スイッチがオン操作されたときに発生されている音に対応した制御信号をコントロール対象部に出力する。これにより、操作者は、音を聞くことが可能で、且つ、一つのスイッチをオン操作することができる人であれば、音式スイッチコントローラを操作することができ、操作者が意図したコントロール対象部を制御することができる。
【0007】
また、請求項2に記載の音式スイッチコントローラによれば、請求項1に記載の音式スイッチコントローラが電動車椅子に搭載された場合、音発生手段から予め決められた複数の音が、順次、発生されている過程で、電動車椅子を例えば前進走行させる音に、その発生音が一致した場合、搭乗者がスイッチをオン操作すると、制御信号出力手段は、前進走行制御信号を電動車椅子の制御部に出力し、電動車椅子を前進走行させる。これにより、搭乗者は、音を聞くことが可能で、且つ、一つのスイッチをオン操作することができる人であれば、容易に音式スイッチコントローラを操作することができ、電動車椅子を駆動させることができる。
【0008】
請求項3に記載の音式スイッチコントローラによれば、前記電動車椅子が部屋に出入りする場合、当該部屋の扉を開閉させるための制御信号を出力することができるため、電動車椅子は円滑に部屋から廊下等に走行させることができる。これにより、運動障害を持つ人であっても、自力で行動範囲を広げることができる。
【0009】
請求項4に記載の音式スイッチコントローラによれば、前記電動車椅子が車両に乗り込む場合、当該車両の扉を開くための制御信号を出力することができるため、電動車椅子は円滑に車両に乗り込むことができる。これにより、更に行動範囲を広げることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、運動障害を持っていても音を聞くことが可能で、且つ、一つのスイッチをオン操作することができる人であれば、容易に操作することができ、意図したコントロール対象部を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、電動車椅子に搭載される音式スイッチコントローラ1の構成を示したブロック図である。
図1に示すように、音式スイッチコントローラ1は、音発生部2を備えている。音発生部2は、異なる音階、あるいは異なるメロディの複数の音を、順次、スピーカ3から発生させるとともに、スピーカ3から、順次、発生するそれぞれの音に対応した音発生信号を制御信号出力部4に出力する。音発生部2がスピーカ3から発生させる複数の音は、後述するコントロール対象部6としての電動車椅子を前、後、左、右に走行させる場合、あるいは電動車椅子が、ある部屋から部屋の外に出るときや、外から部屋に入るときに部屋の扉を自動的に開閉させる場合、あるいは電動車椅子が車両に乗り込む場合に当該車両の扉を開閉させる場合などに対応している。
【0012】
制御信号出力部4は、音発生部2から順次、出力された上記の音発生信号を入力する。また、制御信号出力部4には一つのスイッチ5が接続されており、このスイッチ5は電動車椅子に搭乗している人が、例えば電動車椅子を前進走行させたいと思っているとき、前述のスピーカ3から発生している音が前進走行に対応した音になった場合にオン操作するものである。
【0013】
上記のように電動車椅子に搭乗している人が、スピーカ3から発生する音を聞き、その音が電動車椅子を前、後、左、右に走行させる音、あるいは上記の部屋の扉の開閉、車両の扉の開閉に対応したとき、前述のスイッチ5をオン操作すると、制御信号出力部4は、前、後、左、右の走行制御信号、部屋扉開閉信号、車両扉開閉信号をコントロール対象部6に出力する。尚、部屋扉開閉信号、車両扉開閉信号は、電波あるいは光の無線信号となる。
【0014】
次に、電動車椅子に搭載された音式スイッチコントローラ1の作用について説明する。
図2は、運動障害を持つ人が電動車椅子に搭乗し、電動車椅子に搭載された音式スイッチコントローラ1を操作する場合の電動車椅子の制御を示したフローチャートである。
前述の音発生部2が、異なる音階(例えばド、ミ、ソ、シ)あるいは異なるメロディの複数の音を、順次、図2に示すようにスピーカ3から発生させている過程(音スキャン)で、搭乗者が電動車椅子を前進させたいと思っているとき、スピーカ3から(ド)の音階の音が発生すると、搭乗者はスイッチ5をオン操作する。この場合、(ド)の音階の音が電動車椅子を前進させる音に対応していることは、予めハード、ソフト上、決められており、搭乗者も予めそれを周知している。尚、(ミ)の音階の音は電動車椅子を後進させる音に対応しており、(ソ)の音階の音は電動車椅子を左に、(シ)の音階の音は電動車椅子を右に走行させるものと決められている。
【0015】
上記のように電動車椅子の搭乗者が電動車椅子を前進させたいと思っているとき、スピーカ3から(ド)の音階の音が発生したため、スイッチ5をオン操作すると、図2のステップSt1に示すように制御信号出力部4は、スイッチ5がオン操作されたものと判断する。
【0016】
尚、電動車椅子は、図1に示すように、人や障害物等を検知した場合に電動車椅子を緊急停止させるための緊急停止センサー7を装備している。この緊急停止センサー7として接触センサー、超音波センサー、あるいは人感センサーがあり、適宜、選択装備されている。これらの緊急停止センサー7が人や障害物等を検知した場合、外部停止信号を前述の制御信号出力部4に出力し、後で説明するように電動車椅子を安全に停止させる。
【0017】
図2のステップSt2に示すように、制御信号出力部4は、上記外部停止信号の入力が無いと判断した場合、ステップSt3に進み、電動車椅子の制御回路に前進走行制御信号を出力して電動車椅子を前進させる。尚、スピーカ3から(ミ)の音階の音が発生しているとき、搭乗者がスイッチ5をオン操作した場合、制御信号出力部4は、後進走行制御信号を出力し、電動車椅子を後進させる。また、スピーカ3から(ソ)の音階の音が発生しているとき、搭乗者がスイッチ5をオン操作した場合、制御信号出力部4は、左走行制御信号を出力し、スピーカ3から(シ)の音階の音が発生しているとき、搭乗者がスイッチ5をオン操作した場合、制御信号出力部4は、右走行制御信号を出力して電動車椅子を左もしくは右にカーブ走行させる。
【0018】
図2のステップSt4において、制御信号出力部4は、搭乗者がスイッチ5をオン操作していないと判断した場合、上記ステップSt2からSt4を繰り返す一方、スピーカ3から音が発生していない状態で搭乗者がスイッチ5をオン操作したと判断した場合、制御信号の出力を停止し、電動車椅子を停止させる。
【0019】
前述のステップSt2において、緊急停止センサー7が人や障害物等を検知し、外部停止信号が制御信号出力部4に出力された場合、制御信号出力部4は、ステップSt6において、制御信号の出力を停止し、ステップSt7において、回避信号を電動車椅子の制御回路に出力する。
回避信号とは、外部停止信号を発生させる原因を取り除く効果のある信号である。例えば、電動車椅子が前進走行中に外部停止信号が発生した場合には、電動車椅子が後進する制御信号が回避信号として出力される。また、部屋や車両の扉が閉まるときに外部停止信号が発生した場合には、扉の開く信号が回避信号として出力される。
【0020】
ステップSt8において、緊急停止センサー7による人や障害物等の検知が解除されたと判断した場合、制御信号出力部4は、ステップSt9において、回避信号の出力を停止し、初期状態にする。
【0021】
以上説明した図2のフローチャートは、音式スイッチコントローラ1により電動車椅子を制御する例であるが、音式スイッチコントローラ1は、図1に示すように、電動車椅子が、ある部屋から部屋の外に出るときや、外から部屋に入るときに部屋の扉を自動的に開閉させる場合の部屋扉開閉信号、及び電動車椅子が車両に乗り込む場合に車両の扉を開閉させる場合の車両扉開閉信号を制御信号出力部4から、図示していない部屋扉制御部や車両制御部に無線信号で出力する。この制御の場合、スピーカ3から発生させる音は、前述の音階の(ド、ミ、ソ、シ)と異なる音、あるいは異なるメロディとすることが望ましい。
【0022】
尚、図3は、音式スイッチコントローラ1による電動車椅子の操作、制御系統図を示したもので、音式スイッチコントローラ1から出力された信号S1〜S4(前、後、左、右の信号)は、DC電圧出力モジュール4aを介してDC出力電圧に変換され、電動車椅子制御回路6に出力される。
【0023】
以上の実施の形態では、電動車椅子を制御する音式スイッチコントローラ1について説明したが、音式スイッチコントローラ1は、図4に示すように、家庭電気機器10、例えばテレビジョン、照明スタンド、エアコンディショナーなどを制御する場合にも使用することができる。この場合は、前述の制御信号出力部4から出力される制御信号でそれぞれのソリッドステートリレー8を動作させ、家庭電気機器10のそれぞれにAC100V商用電源の供給をするとともに、それぞれの家庭電気機器用の赤外線リモートコントロールユニット9を動作させる。
【0024】
また、図5に示すように、音式スイッチコントローラ1は、パーソナルコンピュータ12を動作させる場合にも使用される。この場合、前述の制御信号出力部4から出力される制御信号は、一般のUSBマウスから出力される信号に対応するものであり、これらの信号は、USBマウスインターフェースモジュール11を介してパーソナルコンピュータ12に出力される。
【0025】
以上説明したように、音式スイッチコントローラ1を操作する人が、運動障害を持っていても、音を聞いて一つのスイッチを指でオン操作することができる人であれば、容易な操作で意図したコントロール対象部を制御することができる。従って、運動障害を持っていても音式スイッチコントローラ1を操作して電動車椅子を容易に運転することができるようになり、自力移動ができるとともに、自分の部屋に備えられた家庭電気機器の操作も容易になるため、自立した生活をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】音式スイッチコントローラの全体的な構成を示したブロック図である。
【図2】音式スイッチコントローラによる電動車椅子の制御フローチャートである。
【図3】音式スイッチコントローラによる電動車椅子の操作、制御系統図である。
【図4】音式スイッチコントローラによる家庭電器機器の操作系統図である。
【図5】音式スイッチコントローラによるパソコンの操作系統図である。
【符号の説明】
【0027】
1 音式スイッチコントローラ
2 音発生部
3 スピーカ
4 制御信号出力部
5 スイッチ
6 コントロール対象部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め決められた複数の音を順次発生させる音発生手段と、前記音発生手段から発生されている音が、予め決められたコントロール対象部を制御するための音に一致した場合にオン操作される一つのスイッチと、前記スイッチがオン操作されたときに発生されている前記音に対応した制御信号を前記コントロール対象部に出力する制御信号出力手段とを備えたことを特徴とする音式スイッチコントローラ。
【請求項2】
電動車椅子に搭載され、当該電動車椅子の搭乗者により前記スイッチが操作された場合に当該電動車椅子を駆動するための制御信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の音式スイッチコントローラ。
【請求項3】
請求項2に記載の音式スイッチコントローラであって、前記電動車椅子が部屋に出入りする場合、当該部屋の扉を開閉させるための制御信号を出力することを特徴とする音式スイッチコントローラ。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の音式スイッチコントローラであって、前記電動車椅子が車両に乗り込む場合、当該車両の扉を開閉させるための制御信号を出力することを特徴とする音式スイッチコントローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−55541(P2006−55541A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−243005(P2004−243005)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(000116622)愛知県 (99)