音波発生装置およびそれを使用した音波式付着物除去・抑制装置、音波式スートブロワ装置、熱交換装置、排ガス処理装置、産業機器ならびに音波発生装置の運用方法、熱交換装置の運用方法
【課題】高音圧の音波を少ない圧縮気体消費量で発振でき、長寿命運転が可能な音波発生装置を提供する。
【解決手段】振動板3と、振動板3を保持する保持部16と、リム17を有するマウスピース4と、マウスピース4の外側に設けられた蓄圧器19と、蓄圧器19に圧縮気体2を供給する圧縮気体供給系統10と、マウスピース4と共鳴筒7とホーン8で形成される音響導管を備えた音波発生装置において、振動板3の背面側から圧縮気体25により振動板3をマウスピース4のリム17へ押し当てる手段を設けたことを特徴とする。
【解決手段】振動板3と、振動板3を保持する保持部16と、リム17を有するマウスピース4と、マウスピース4の外側に設けられた蓄圧器19と、蓄圧器19に圧縮気体2を供給する圧縮気体供給系統10と、マウスピース4と共鳴筒7とホーン8で形成される音響導管を備えた音波発生装置において、振動板3の背面側から圧縮気体25により振動板3をマウスピース4のリム17へ押し当てる手段を設けたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮気体を駆動力として振動板を駆動させて音波を発生する音波発生装置に係り、特に高音圧の音波を少ない量の圧縮気体で発生でき、しかも長寿命運転が可能な音波発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば石炭やバイオマスなどの固体燃料を燃焼するボイラ装置においては、燃焼排ガス中に多量の燃焼灰が含まれており、この燃焼灰が火炉壁や伝熱管などに付着、堆積して伝熱機能を阻害する。このため、蒸気式スートブロワを多数設置して局部的に高速の蒸気噴流を伝熱管などに吹き付けて燃焼灰の付着、堆積を抑制していた。
【0003】
しかし、この方法は蒸気噴流の速度が速いため、吹き付けられた面に燃焼排ガス中の灰が巻き込まれ、高速の灰が伝熱管と衝突する現象を引き起こしスチームエロージョンを発生して、伝熱管の耐用寿命を短くしていた。
【0004】
そのため音波式スートブロワを使用して、炉内に高音圧の音波を発生することにより伝熱管上への燃焼灰の付着、堆積を抑制する方法を併用すると、蒸気式スートブロワの運用頻度を従来の1/4〜1/10程度に低減させることができた。
【0005】
図29は従来の音波発生装置の要部断面図、図30は図29のX部の拡大断面図である。
この音波発生装置は図29に示すように、音波発生装置本体101、その音波発生装置本体101に保持・固定され、例えば圧縮空気などの駆動用圧縮気体102を利用して音波を発生する金属製の振動板103、前記音波発生装置本体101の内側に設置されたマウスピース104、前記音波発生装置本体101の上部に取り付けられて、前記振動板103を覆う振動板カバー105などを備えている。
【0006】
図示していないが、前記マウスピース104の先端部(図面においてマウスピース104の下端部)には共鳴筒が接続され、さらにこの共鳴筒の先端部にはホーンが接続されている。また、前記音波発生装置本体101に形成された圧縮気体導入口106には、圧縮気体102を送給するための供給系統が接続されている。
【0007】
円板状の振動板103の外周部は、音波発生装置本体101に設けられた保持部107と、振動板カバー105に設けられた押圧部108の間にOリング109a,109bを介して挟持・固定されている。図30に示す固定端は、前記Oリング109a,109bによる固定端を示している。
【0008】
なお図示していないが、前記Oリング109a,109bの代わりに、押圧部108により振動板103を押し付ける部位の上面に△状の加工を行なったり、逆に、押圧部108の押し付け部位を▽状に加工して、支点押圧を行なう方式もある。
【0009】
前記マウスピース104の振動板103と対向する側には、振動板103が当接する平面形状が環状のリム110(図30参照)が設けられている。音波発生装置本体101の軸方向111における前記リム110の上面位置は、振動板103が振動停止状態のときに振動板103を若干押し上げる状態になる位置に設定されている。
【0010】
前述のように図30は図29のX部の拡大断面図で、前記リム110の位置を説明するための図である。同図において、音波発生装置本体101からマウスピース104がない状態で振動板103を前記固定端で固定し、振動板103が水平状態にある位置を振動板103の「0位置」とすると、マウスピース104がある状態の音波発生装置本体101では、マウスピース104の前記リム110が前記「0位置」よりも上方、すなわち(+)方向にあって、図29に示すように振動板103を若干押し上げている。このようにリム110によって押し上げられた位置が、振動板103のニュートラル位置である。
【0011】
図29に示すように振動板103をリム110が押上げることで振動板103は湾曲状態に変形し、振動板103が元の状態に戻ろうとする剛性力がリム110側に作用するため、振動板103とリム110は密着した状態になっている。
【0012】
この状態で振動板103の駆動用圧縮気体102(圧縮気体102として、例えば圧縮空気が用いられる)をリム110と振動板103の間に形成されている環状の密閉空間部112内に供給する。すると密閉空間部112内の圧力が上昇し、上昇した圧縮気体圧力により振動板103はリム110から持ち上げられる。
【0013】
このとき振動板103とリム110との間に隙間が形成され、圧縮気体102はこの隙間よりマウスピース104側に排気されることで、前記密閉空間部112内の圧縮気体圧力は低下し、振動板103の持ち上げ力が減少する。
【0014】
このときの振動板103は図29において点線103Cで示すように、それの停止状態より更に湾曲するように撓むため振動板103自身に元の状態(停止状態)に戻ろうとする剛性力が更に強く働き、この剛性力に対し圧縮気体圧の低下により振動板103は戻り動作となり、リム110に衝突する。この時点で再度振動板103とリム110は密着性が確保されるため、振動板103はリム110から持ち上げられ、リム110と振動板103との隙間より圧縮気体が噴出し、振動板103はリム110に衝突する。このようにして、振動板103が上下の微振動を開始する。
【0015】
この振動板103の上下の微振動は、振動板103を押し上げた圧縮気体102がマウスピース104に排気された排気気体102Aに粗密波を形成する。そして振動板103の下方に設置されているマウスピース104を通過するときに前記粗密波は増幅され、増幅した粗密波がさらに下方の共鳴筒とホーン(共に図示せず)を通過するときに、一定周波数の音波のみの共振現象により更に大きく増幅された、一定周波数の音波が生まれる。
【0016】
このようにして発生した一定周波数を持つ音波は共鳴筒の入口部(マウスピース104側)に音圧のフィードバックが作用することで、リム110からの振動板103の持ち上げ力は(駆動用圧縮空気圧+音圧のフィードバック)の合力にとなり、振動板103自身をリム110より上方に強く持ち上げる作用を発生する。
【0017】
図中の点線103Aは最大振幅時における最上点の振動板103の湾曲状態を示しており、また点線103Bは最大振幅時における最下点の振動板103の湾曲状態を示している。また点線103Cは起動初期の振動板103の湾曲状態を示しており、Cは起動初期の振幅を示している。
【0018】
このようにして一度振動板103の微振動が発生すれば、その後は共鳴筒とホーンでの共振により増幅した音波により振動板103は所定の振幅103Aが継続し、連続した音波発生が可能となり、生成された音波はホーンを通して外部(ボイラ装置の場合は炉内あるいは煙道内)に発振される。
【0019】
なお、音波発生装置の先行技術文献に関しては、例えば下記のような特許文献1〜6などを挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際公開01/053754号公報
【特許文献2】特開平9−61089号公報
【特許文献3】特開平9−61090号公報
【特許文献4】特開平11−223328号公報
【特許文献5】特開2004−116798号公報
【特許文献6】特開2004−116799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
音波による灰堆積抑制効果は音圧が高いほど効果が得られるが、現状の例えば大型石炭焚きボイラ装置では音波発生領域の奥行きが広いため、ボイラ装置中央部の伝熱管に音波が到達するまでに音圧が減衰するという問題がある。
【0022】
この音圧減衰に対処するため、音波発生音圧を高める方法(具体的には前記圧縮気体102の圧力を高める方法、複数台の音波発生装置から同時に同一周波数の音波を発生させ合成音圧を高める方法など)と同時に、気柱共振を発生させる周波数を選定し、選定された共振周波数で運用することでボイラ装置内での音圧を高めていた。
【0023】
また、音波発生装置の構成上、振動板103が絶えずリム110に衝突するため、リム110に微小摩耗が発生し、振動板103とリム110との位置関係が徐々に変化し、最終的にはリム110の摩耗深さが許容値を超えることで、音波発生起動時に振動板103とリム110の密着性が確保できなくなり圧縮気体102が音波発生装置内で洩れることで、振動板を駆動できる圧力まで上昇できなくなり、音波の発振が停止する。
【0024】
音圧強化のために振動板103の振幅を大きくすると、振動板103がリム110に衝突するときの衝突速度が増加し、そのためにリム110の摩耗速度が速くなり、音波発生装置の運用期間が更に短くなるという問題がある。
【0025】
従来の音波式スートブロワ1台当りの音波発生音圧が大型石炭焚きボイラ装置の大きさに対して不足しているため、従来の音波式スートブロワを蒸気式スートブロワと併用することで、現状以上に蒸気式スートブロワの運用頻度を低減させ、伝熱管表面のスチームエロージョンを低減させるには、下記のような問題点がある。
【0026】
(問題点1)
音波発生装置の音圧強化のために駆動用圧縮気体の駆動運用圧力を増加するためには、圧縮気体を得るための既設空気圧縮機を高圧仕様に変更したり、あるいは追設する必要があり、そのために設備費が増加し、追設の場合には設置スペースが必要となる。また、駆動運用圧力を高めることにより、圧縮気体(圧縮空気)の消費量が増えて、運用費の増加をきたす。
【0027】
(問題点2)
前記音圧強化のため、複数の音波発生装置に対して同一周波数の音波を同時に発振させて、発振音波を合成させることで音圧強化を行なうが、音波発生装置の運用台数が増加することにより空気圧縮機の追設が必要となり、それらの設備費が嵩む。また、圧縮気体の消費量が増えて、運用費の増加をきたす。
【0028】
(問題点3)
前記音圧強化による振動板の振幅を大きくすることにより、リムの摩耗量が増え、音波発生装置の耐用寿命が低下し、また、音波発生装置の維持管理費が増加する。
【0029】
図29に示す従来の音波発生装置を長時間運用していると、振動板103と衝突するリム110には衝突による摩耗が発生し、この摩耗の進行により音波発生起動時にリム110による振動板103の押上げ量が低下し、振動板103の湾曲量が減少する。この摩耗が更に進行することで、振動板103の湾曲による剛性力の低下をもたらし、音波発生起動時に密着性が維持できなくなる。
【0030】
この状態で起動を開始すると振動板103とリム110の間に隙間があるため、密閉空間部112が形成されず、圧縮気体102を供給しても内圧の上昇量が少なく、そのため振動板103の押上げが不十分で、振動板103の微振動ができなくなり、その後のマウスピース104や共鳴筒とホーンでの増幅ができず、音波が発生しない。
【0031】
図5中の曲線Dは、従来の音波発生装置で振動板103とリム110の間に隙間が形成され、密閉空間部112内の圧力が上昇できず、その結果、音波が発生しない状態を示している。
【0032】
長時間の運用でも確実に音波を発生させるためには、音波発生装置の起動時に振動板とリムの密着状態が維持されていることが重要である。この密着性を確保するため、従来の音波発生装置ではリムにより振動板を押上げ、振動板を湾曲に変形させ、振動板の湾曲変形による剛性力を引き出して、この剛性力によりリムとの密着性を確保してきた。
【0033】
従来、長期間の運用によるリム110の摩耗量を考慮した運用を行うため、初期のリム設定レベルは余裕を持たせた状態、すなわち、許容磨耗量が発生しても密着性が確保できるように磨耗量を加えた設定を行なうため、リム110による振動板103の押上げ量を大きく設定していた。
【0034】
他方、振動板103自身の剛性力は湾曲量が増加すると共に強力になるため、振動板103の物理的仕様(直径、厚さ、材質)が一定の状態では湾曲できる範囲には物理的な制約がある。図29中の最大湾曲時の撓み量を(A)とし、振動板静止時の初期のリム押上げ設定レベルで発生した撓み量を(B)とすると、音波発生装置での最大振幅は(A−B)となる。
【0035】
前記最大湾曲時の撓み量(A)は圧縮気体102の圧力、あるいは振動板103の厚み、直径、材質により一定となるため、音波発生装置での振動板103の振幅を増加させるには、振動板静止時の初期のリム押上げ設定レベルで発生した撓み量(B)を低く設定することが必要となる。
【0036】
ところが従来の音波発生装置では、振動板静止時の初期のリム押上げ設定レベルで発生した撓み量(B)を低くすると、発振振幅(A−B)は増加するが、起動時の振動板103の湾曲量が低下するため、起動時の振動板103とリム110との密着性の維持ができなくなり、音波の発振停止や、初期では音波が発振できても長時間の運用によるリム110の摩耗進行が、許容磨耗量を超えた時点で音波の発振停止が発生していた。
【0037】
このように従来の音波発生装置では運用できる最大発振振幅(A−B)に制限をもつため発振音圧に限りがあることから、音波発生装置から発振できる最大音圧でも1台の音波発生装置の運用では、例えば大型石炭焚きボイラ装置の伝熱管への灰堆積抑制効果が十分に得られないという欠点があった。
【0038】
本発明の主な目的は、このような従来技術の欠点を解消し、高音圧の音波を少ない量の圧縮気体で発生でき、しかも長寿命運転が可能な音波発生装置およびそれを使用した音波式付着物除去・抑制装置、音波式スートブロワ装置、熱交換装置、排ガス処理装置、産業機器ならびに音波発生装置の運用方法、熱交換装置の運用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0039】
前記目的を達成するため、本発明の第1の手段は、
振動板と、
その振動板の周縁部を保持する保持部と、
前記保持部の径方向内側において前記振動板を押し当てるリムを有するマウスピースと、
前記振動板の前記リムに接触する正面側でかつ前記マウスピースの径方向外側に設けられた蓄圧器と、
その蓄圧器に圧縮気体を供給する圧縮気体供給系統と、
前記マウスピースと共鳴筒とホーンによって形成される一連の音響導管を備え、
前記振動板はその周縁部が前記保持部に保持されており、
前記振動板を前記リムへ押し当てる力に抗して前記蓄圧器から圧縮気体がマウスピースの内側に流入することで振動板の動作が開始され、その振動板の駆動により発生した疎密波を前記音響導管を通じて増幅し、前記ホーンの開口部から音波として放射する音波発生装置において、
前記振動板の背面側から外力により当該振動板を前記マウスピースのリムへ押し当てる手段を設けたことを特徴とするものである。
【0040】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、
前記押し当て手段により前記振動板をマウスピースのリムへ押し当てた状態での、前記振動板の正面と前記保持部との前記マウスピース軸方向沿いの距離で表される振動板の撓み量が、振動板の正面側0.0mm〜1.4mmの範囲内に設定されていることを特徴とするものである。
【0041】
本発明の第3の手段は前記第2の手段において、
前記振動板の撓み量が、振動板の正面側0.6mm〜1.4mmの範囲内に設定されていることを特徴とするものである。
【0042】
本発明の第4の手段は前記第1の手段において、
前記マウスピースのリムと、これに接触する前記振動板の正面の位置関係を、
前記押し当て手段により振動板を前記マウスピースのリムへ押し当てない状態において、
前記マウスピースのリムと、これと対向する前記振動板の正面の間に、前記圧縮気体が流れ得る程度の隙間が形成されるような位置関係になっていることを特徴とするものである。
【0043】
本発明の第5の手段は前記第2ないし第4のいずれかの手段において、
前記駆動用圧縮気体の圧力が0.2MPa〜0.7MPaの範囲内に設定されていることを特徴とするものである。
【0044】
本発明の第6の手段は前記第1ないし第5のいずれかの手段において、
前記押し当て手段が、前記振動板の背面のほぼ全体を背面加圧用圧縮気体で押し付ける構成になっていることを特徴とするものである。
【0045】
本発明の第7の手段は前記第6の手段において、
前記押し当て手段が、前記振動板の背面に形成された空洞部と通じる背面加圧用の蓄圧気室と、その蓄圧気室に背面加圧用圧縮気体を供給する供給系統を有することを特徴とするものである。
【0046】
本発明の第8の手段は前記第7の手段において、
前記空洞部と蓄圧気室の間に、空洞部と蓄圧気室を連通する例えば貫通孔や切欠部などからなる貫通部が形成された振動板カバーが介在されていることを特徴とするものである。
【0047】
本発明の第9の手段は前記第7の手段において、
前記背面加圧用圧縮気体の供給源が、前記駆動用圧縮気体と同じの供給源であって、
前記駆動用の蓄圧器と前記背面加圧用の蓄圧気室の圧力を調整する例えば圧力調整弁などの圧力調整手段が圧縮気体の供給系統に設けられていることを特徴とするものである。
【0048】
本発明の第10の手段は前記第1ないし第5のいずれかの手段において、
前記振動板の背面に空洞部を形成するとともに、その空洞部と大気を連通する貫通部が形成された振動板カバーが、音波発生装置本体の振動板背面側に当該振動板を覆うように取り付けられ、
前記押し当て手段として、前記振動板と振動板カバーの間に、複数個の弾性体を圧縮状態で前記リムの周方向に沿って介在したことを特徴とするものである。
【0049】
本発明の第11の手段は前記第10の手段において、
前記弾性体がバネ部材あるいは弾性リングであることを特徴とするものである。
【0050】
本発明の第12の手段は前記第1ないし第5のいずれかの手段において、
前記振動板の背面に空洞部を形成するとともに、その空洞部と大気を連通する貫通部が形成された振動板カバーが、音波発生装置本体の振動板背面側に当該振動板を覆うように取り付けられ、
前記押し当て手段として、前記振動板の背面側に複数個の連動するピストンを前記マウスピースのリムの周方向に沿って配置したことを特徴とするものである。
【0051】
本発明の第13の手段は前記第1の手段において、
前記共鳴筒の長さが変更可能になっていることを特徴とするものである。
【0052】
本発明の第14の手段は前記第13の手段において、
前記押し当て手段が、前記振動板の背面のほぼ全体を圧縮気体で加圧する圧縮気体供給手段を有し、その圧縮気体の圧力が50KPa〜80KPaの範囲内に設定されていることを特徴とするものである。
【0053】
本発明の第15の手段は前記第1の手段において、
前記マウスピースが音波発生装置本体に対して交換可能に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0054】
本発明の第16の手段は音波式付着物除去・抑制装置において、前記第1ないし第15のいずれかの手段の音波発生装置の前記ホーンが、表面に付着物が付き易い被処理対象物を配置している空間部側に向くように配置したことを特徴とするものである。
【0055】
本発明の第17の手段は音波式スートブロワ装置において、前記第1ないし第15のいずれかの手段の音波発生装置の前記ホーンが、表面に付着物が付き易い被処理対象物を配置している空間部側に向くように配置したことを特徴とするものである。
【0056】
本発明の第18の手段は熱交換装置において、前記第17の手段の音波式スートブロワ装置を設置したことを特徴とするものである。
【0057】
本発明の第19の手段は熱交換装置において、前記第17の手段の音波式スートブロワ装置と、前記被処理対象物に対して高圧水蒸気を噴出して付着物を除去する水蒸気式スートブロワ装置を併設したことを特徴とするものである。
【0058】
本発明の第20の手段は前記第18または第19の手段の熱交換装置がボイラ装置であることを特徴とするものである。
【0059】
本発明の第21の手段はガス処理用の触媒を備えた排ガス処理装置において、
前記第1ないし第15のいずれかの手段の音波発生装置の前記ホーンが、前記触媒を配置している空間部側に向くように配置したことを特徴とするものである。
【0060】
本発明の第22の手段は表面に付着物が付き易い被処理対象物を備えた産業機器において、
前記第1ないし第15のいずれかの手段の音波発生装置の前記ホーンが、前記被処理対象物を配置している空間部側に向くように配置したことを特徴とするものである。
【0061】
本発明の第23の手段は音波発生装置の運用方法において、
前記第1ないし第15のいずれかの手段の音波発生装置を複数台設置して、その複数台の音波発生装置から同時に音波を発生することを特徴とするものである。
【0062】
本発明の第24の手段は音波発生装置の運用方法において、
前記第1ないし第15のいずれかの手段の音波発生装置を音波式スートブロワ装置として複数台設置して、その複数台の音波式スートブロワ装置から同時に音波を発生することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0063】
本発明は前述のような構成になっており、高音圧の音波を少ない量の圧縮気体で発生でき、しかも長寿命運転が可能な音波発生装置およびそれを使用した音波式付着物除去・抑制装置、音波式スートブロワ装置、熱交換装置、排ガス処理装置、産業機器ならびに音波発生装置の運用方法、熱交換装置の運用方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1実施形態に係る音波発生装置の全体の断面図である。
【図2】その音波発生装置の要部の拡大断面図である。
【図3】図2Y部をさらに拡大した断面図である。
【図4】その音波発生装置に用いられるマウスピースの平面図である。
【図5】第1実施形態に係る音波発生装置と従来の音波発生装置において、調節弁(A)をOFFからONに切り替えた後の音波発生装置の内圧変化を示す特性図である。
【図6】第1実施形態に係る音波発生装置の起動時における蓄圧器の内圧特性と振動板の振幅特性を示す特性図である。
【図7】第1実施形態に係る音波発生装置と従来の音波発生装置において、リム設定位置を変えた場合の振動板の振幅の変化を示す特性図である。
【図8】第1実施形態に係る音波発生装置と従来の音波発生装置において、リム設定位置を変えた場合の発振音圧の変化を示す特性図である。
【図9】第1実施形態に係る音波発生装置と従来の音波発生装置の駆動用圧縮気体の圧力、発振音圧ならびに駆動用圧縮気体の消費量とを比較して示す図表である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る音波発生装置の全体の断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る音波発生装置の要部の拡大断面図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係る音波発生装置において、振動板上のバネ部材の配置例を示す平面図である。
【図13】本発明の第4実施形態に係る音波発生装置の要部の拡大断面図である。
【図14】本発明の第5実施形態に係る音波発生装置の要部の拡大断面図である。
【図15】本発明の第6実施形態に係る音波式スートブロワの断面図である。
【図16】本発明の第7実施形態に係る音波式スートブロワの共鳴筒の長さを長くした状態での断面図である。
【図17】その実施形態に係る音波式スートブロワの共鳴筒の長さを短くした状態での断面図である。
【図18】その実施形態に係る音波式スートブロワの共鳴筒のスライド機構を説明するための斜視図である。
【図19】本発明の第8実施形態に係る音波式スートブロワのボイラ装置内での配置例を示す配置図である。
【図20】従来の音波式スートブロワのボイラ装置内での配置例を示す配置図である。
【図21】本発明に係る音波式スートブロワの運用例を示す図である。
【図22】従来の音波式スートブロワの運用例を示す図である。
【図23】従来の音波式スートブロワの同時運用台数と合成音圧の関係を示す特性図である。
【図24】本発明の第9実施形態に係る音波式スートブロワの脱硝装置内での配置例を示す図である。
【図25】従来の音波式スートブロワの配置例を示す図である。
【図26】発電プラントにおける排ガス処理システムの系統図である。
【図27】その排ガス処理システムに用いる本発明の第10実施形態に係るガス−ガスヒータの概略構成図である。
【図28】第1実施形態に係る音波発生装置と従来の音波発生装置において、リムに対する振動板の衝突速度を説明するための概略図である。
【図29】従来の音波発生装置の要部断面図である。
【図30】図29のX部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
次に本発明の各実施形態を図と共に説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る音波発生装置の全体の断面図、図2はその音波発生装置の要部の拡大断面図、図3は図2Y部をさらに拡大した断面図、図4はこの音波発生装置に用いられるマウスピースの平面図である。
【0066】
この実施形態に係る音波発生装置は図1に示すように、音波発生装置本体1と、その音波発生装置本体1に保持・固定され、駆動用圧縮気体2を利用して音波を発生する金属製の円板状振動板3と、前記音波発生装置本体1の内側に設置されたマウスピース4と、前記音波発生装置本体1の上部に取り付けられて、前記振動板3を覆う振動板カバー5と、その振動板カバー5の背面を覆うハウジング6と、前記マウスピース4の先端部に取り付けられた共鳴筒7と、その共鳴筒7の先端部に取り付けられたラッパ状をしたホーン8などを備えている。
前記マウスピース4と共鳴筒7とホーン8によって一連の音響導管が形成されている。
【0067】
またこの音波発生装置は圧縮気体供給源9を有し、本実施形態の場合は圧縮気体として圧縮空気を使用しており、図示していないが前記圧縮気体供給源9には空気圧縮機が内蔵されている。
【0068】
この圧縮気体供給源9から前記音波発生装置本体1に向けて供給系統(A)10が延びており、供給系統(A)10の途中に電磁弁からなる調節弁(A)11が設置されている。前記供給系統(A)10の圧縮気体供給源9と調節弁(A)11の間からは供給系統(B)12が分岐されており、供給系統(B)12の先端部は前記ハウジング6に接続されている。供給系統(B)12の途中には、調節弁(B)13が設置されている。
【0069】
前記音波発生装置本体1は有底形で円筒状をしており、音波発生装置本体1の周壁15には1つの導入口14が設けられている。また、周壁15の上端内周部には、段落ちされて保持部16が形成されている。
【0070】
前記円板状の振動板3として本発明の各実施形態では直径が150mmで厚さが1.5mmのチタン板が用いられ、この振動板3の外径は前記保持部16の内径と略同寸かあるいは若干径小になっている。
【0071】
前記マウスピース4の振動板3と対向する側には、振動板3が当接する平面形状が環状のリム17(図4参照)が設けられている。このリム17の位置設定については、後で詳細に説明する。
【0072】
マウスピース4の外径は音波発生装置本体1の周壁15の内径よりも所定の寸法だけ短く設定されており、図1に示すようにマウスピース4を音波発生装置本体1の周壁15の内側に設置することにより、マウスピース4と音波発生装置本体1の周壁15の間に平面形状が環状の蓄圧器19が形成される。この蓄圧器19は、振動板3によって閉じられる形になっている。
【0073】
マウスピース4はボルトやネジ込みなどの手段によって音波発生装置本体1に対して交換可能に装着され、マウスピース4のリム17が所定の所まで磨耗すると、新品のマウスピース4と交換できるようになっている。なお、マウスピース4のリム17が所定の所まで磨耗したかどうかは、音波発生装置に設置した振動解析センサー(図示せず)によって監視されている。
【0074】
図1ならびに図2に示すように振動板カバー5の振動板3と対向する側には、振動板3の振動を許容するための背面空洞部20が形成されている。この背面空洞部20と前記ハウジング6の蓄圧気室21を連通するための供給孔22が、振動板カバー5の周方向に等間隔に複数本振動板カバー5の厚さ方向に貫通するように形成されている。
【0075】
振動板カバー5の振動板3の外周部と対向する位置には、環状の押圧部23が突出するように形成され、振動板カバー5を音波発生装置本体1にボルト締めすることにより、振動板3の外周部が、音波発生装置本体1に設けられた保持部16と、振動板カバー5に設けられた押圧部23の間で弾性を有するOリング24a,24bを介して挟持・固定されている。図3に示す固定端は、前記Oリング24a,24bによる固定端を示している。
【0076】
図1に示すように、前記ハウジング6は振動板カバー5の背面側に固定されており、ハウジング6の適所に背面加圧用圧縮気体25を導入する導入口26が設けられ、導入口26に供給系統(B)12が接続されている。
【0077】
この供給系統(B)12からハウジング6内に供給された圧縮気体25は、前記振動板カバー5の供給孔22を通して振動板3の背面に適切な外力(背圧)を作用させることになる。そのため振動板3はリム17側へ湾曲状に撓んで押し当てられ、リム17に押し付けられて振動板3とリム17の密着状態が確保される。
【0078】
このように振動板3がリム17に密着することにより蓄圧器19が密閉空間部となる。この蓄圧器19に圧縮気体2を供給することにより、蓄圧器19の内圧は直線的に増加して、振動板駆動圧以上に上昇する。
【0079】
図5は、本実施形態に係る音波発生装置と、従来の音波発生装置において、調節弁(A)をOFFからONに切り替えた後の音波発生装置の内圧変化を測定した結果を示す特性図である。図中の曲線Cは本実施形態に係る音波発生装置の特性曲線、曲線Dは従来の音波発生装置の特性曲線である。
【0080】
この図から明らかなように、本実施形態に係る音波発生装置は曲線Cで示されているように、調節弁(A)11をONにすると短時間(約20ms以内)に、蓄圧器19の内圧は直線的に増加して、振動板駆動圧以上に達する。
【0081】
これに対して従来の音波発生装置は曲線Dで示されているように、振動板103とリム110の間に隙間が形成されると、調節弁(A)をONにして圧縮気体102を供給しても前記隙間から洩れてしまい、密閉空間部の内圧は上昇せず、そのために音波の発振は生じない。
【0082】
次に本実施形態に係る音波発生装置の振動現象について説明する。図6は音波発生装置の起動時における蓄圧器19の内圧特性と振動板の振幅特性を示す特性図であり、図中の曲線Cは内圧の変化を示す特性曲線、曲線Eは振動板の振幅特性を示す特性曲線である。
【0083】
図2ならびに図3に示すように、音波発生装置本体1の軸方向18(図2参照)におけるマウスピース4のリム17の上面位置は、振動板3の背面加圧が無い振動停止状態(図3の0位置の状態)のときに振動板3の下面とほぼ同じ位置か、あるいは振動板3の背面加圧が無い振動停止状態(水平状態)のときに振動板3の下面よりも蓄圧器19の底面26(図2参照)側に下がった位置に設定されている。
【0084】
本実施形態の場合は図3に示すように、振動板3の背面加圧が無い状態での振動停止状態(図3の0位置の状態)のときに、振動板3の下面よりも蓄圧器19の底面26側に下がった位置、すなわち(−)位置側に設定されている。なお、本明細書において、振動板3のリム17に接触する側を正面側、その反対側を背面側としている。
【0085】
振動板3の背面加圧状態では、振動板3は外力(空気圧)により下方に湾曲し、振動板3の剛性力は上方に作用した状態となり、振動板3はリム17に押し当てられて密閉空間部(蓄圧器19)を形成している。
【0086】
この蓄圧器19に圧縮気体2を供給すると(電磁弁ON)、蓄圧器19内の空気圧力が直線的に上昇し(図6の点線参照)、振動板駆動圧以上に上昇すると振動板3はリム17から押上げられる。振動板3がリム17から振動板カバー5側へ移動すると、振動板3とリム17との間に隙間が形成され、圧縮気体2が隙間より瞬間的に噴出し、振動板3を押上げる力が減少する。
【0087】
振動板3の背面には振動板3をリム17側に押付けるための外力(空気圧)が掛かっているため、振動板3は元の状態に戻る方向に移動する。振動板3がリム17に押付けられると密閉空間部が形成され、その密閉空間部への圧縮気体2の供給により内圧が増加し、振動板3を持ち上げるような微振動を行なう。この現象が図6に示されている第1段階である。
【0088】
次に振動板3が微振動を起こすと振動板3を押し上げた圧縮気体2がマウスピース4に排気された後の気体2Aに粗密波が形成され、この粗密波は振動板3の近傍に配置されているマウスピース4により増幅される。マウスピース4で増幅された排気された気体2Aの粗密波は、マウスピース4に接続されている共鳴筒7とホーン8(図1参照)により、一定周波数の音波のみ共振現象で大きく増幅し、一定周波数の音波をホーン8の開口部から放射する。
【0089】
この音波は共鳴筒7からマウスピース4側に音圧のフィードバックとして作用し、リム17に密着している振動板3に対し「圧縮気体2の圧力」+「音圧のフィードバック」の合力が作用することで、振動板3を上方へ第1段階以上まで強く押上げる。
【0090】
振動板3は湾曲状態に撓むため、振動板3自身に元の状態に戻ろうとする剛性力の方向と、振動板3の背面への圧縮気体25による外力の方向が同一方向のため合力が働き、戻り動作となりリム17に更に激しく衝突する。
【0091】
このことで発生した排気気体2Aの粗密波はマウスピース4による増幅、共鳴筒7とホーン8により一定周波数のみ共振現象で大きく増幅され一定の周波数を持った音波として発振され、順次振幅を増加させる。この現象が図6に示されている第2段階である。
【0092】
このように一度共鳴筒7とホーン8による一定周波数の共振現象が発生した後は安定した一定周波数の音波の発振が継続でき、振動板3の湾曲限界(最大撓み量)まで押し上げられるため振幅も安定した運用となる。リム17の当り面を振動板3より下方に設定した状態でも確実に起動でき、安定した高音圧の音波を発生できることになる。この現象が図6に示されている第3段階である。
【0093】
図6において、領域Fは振動板3がリム17に衝突したときの状態を示しており、点Gは運用条件における振動板3の湾曲限界点(最大撓み量)となり、振動板3の最大振幅点を示している。
【0094】
また図2において点Aは振動板3の最大撓み量、点Bは振動板3がリム17に衝突した時点の位置または音波発生起動前の位置となる最小撓み量を示している。振動板3の厚み、直径、材質ならびに圧縮気体2の圧力を従来の音波発生装置(図29参照)と同じにした場合、振動板3(103)の最大撓み量(A)は同じである。ところが、音波発生起動前の静止時のリム110による振動板押上げによる撓み量(+B)を振動板背面加圧によりリム17と振動板3が密着できるため、それよりも下方に設定(−B)することで、振動板3の最大振幅は従来の最大振幅=(A−B)から最大振幅=(A−(−B))=(A+B)となる。
【0095】
その結果、図29に示す振動板103の振幅と図2に示す振動板3の振幅を比較して明らかなように、同一仕様(振動板の厚み、直径、材質ならびに駆動用圧縮気体の圧力など)の音波発生装置においても、本発明により確実な起動と大きな振幅を得ることが可能となった。
【0096】
図7は、本実施形態に係る音波発生装置と従来の音波発生装置において、リム設定位置(停止状態で振動板に撓みが発生しない状態の振動板下面に対するリムの位置)を変えた場合の振動板の振幅の変化を示す特性図である。
【0097】
なお、図7、8に示す各特性試験において、振動板はチタン製の金属円板を使用し、厚みは1.5mm、直径は150mmである。駆動用圧縮気体として圧縮機で得られた圧縮空気を使用し、共鳴筒やホーンなどは全て同一仕様である。
【0098】
図中の点H(黒菱形印)は従来の音波発生装置で圧縮気体の圧力(駆動圧力)を0.7MPaにした場合の特性曲線、曲線I〜Nは本実施形態に係る音波発生装置の特性曲線で、曲線I(×印)は駆動圧力を0.2MPaにした場合の特性曲線、曲線J(白菱形印)は駆動圧力を0.3MPaにした場合の特性曲線、曲線K(黒三角印)は駆動圧力を0.4MPaにした場合の特性曲線、曲線L(白三角印)は駆動圧力を0.5MPaにした場合の特性曲線、曲線M(白四角印)は駆動圧力を0.6MPaにした場合の特性曲線、曲線N(黒四角印)は駆動圧力を0.7MPaにした場合の特性曲線である。
【0099】
この図から明らかなように、リム設定位置を(+)0.80mmに設定した曲線Hの従来の音波発生装置では、駆動圧力を0.7MPaにしても振動板の振幅は2.1mm程度しか得られない。
【0100】
これに対して本実施形態に係る音波発生装置では、リム設定位置を(−)0.60mm〜(−)1.4mmの範囲に設定して、駆動圧力を0.2MPaにした曲線Iの音波発生装置でも、前記従来の音波発生装置とほぼ同じ振動板の振幅を得ることができる。なお、曲線Iの音波発生装置においてリム設定位置を(−)0.60mmに設定したものは、振動板の振幅が若干小さい傾向にあるが、駆動圧力を若干高めること(例えば0.25MPa)により、従来の音波発生装置と同等以上の振幅を得ることができることが、他の特性試験で確認されている。
【0101】
この曲線Iの音波発生装置の駆動圧力は0.2MPaであるから、従来の音波発生装置(0.7MPa)に較べて駆動圧力を約1/3に低減してもほぼ同じ振動板の振幅を得ることができる。従って、駆動用圧縮気体を得るための圧縮機を高圧仕様に変更したり、追設する必要がなく、また、駆動用圧縮気体の消費量も約1/3低減することが可能となる。
【0102】
また、本実施形態に係る音波発生装置において、リム設定位置を(−)0.60mm〜(−)1.40mmの範囲に設定して、駆動圧力を0.3MPa〜0.4MPa(曲線J,K)と少し高めていくと、振動板の振幅をさらに大きくすることができる。この曲線J,Kの音波発生装置は従来の音波発生装置に較べると、駆動圧力は低く、しかも振動板の振幅は大きいという特長を有している。
【0103】
さらに、本実施形態に係る音波発生装置において、リム設定位置を0.00mm〜(−)1.40mmの範囲に設定して、駆動圧力を0.5MPa〜0.7MPa(曲線L〜N)と高めていくと、振動板の振幅を大きくすることができる。この曲線L〜Nの音波発生装置は、従来の音波発生装置の駆動圧力以下で大きい振幅を得ることができるとともに、リムの設定範囲が0.00mm〜(−)1.40mmと広くとれ、許容磨耗量が大きくなり、長時間の運用が可能となり、運用寿命が長くなり、設計に大きな裕度があるという特長を有している。
【0104】
駆動圧力を0.7MPaに注目した場合、従来の音波発生装置では振動板の振幅は2.1mm〜2.4mm程度しか得られなかったが、本実施形態に係る曲線Nの音波発生装置では同じ駆動圧力で振動板の振幅を約3.2mm〜4.2mmまで大きくすることができ、リムの設定位置によっては2倍近くの振幅を得ることができる。
【0105】
図8は、本実施形態に係る音波発生装置と従来の音波発生装置において、リム設定位置(停止状態で振動板に撓みが発生しない状態の振動板下面に対するリムの位置)を変えた場合の発振音圧の変化を示す特性図である。同図に示す縦軸の発振音圧は、個々の圧縮気体の圧力(駆動圧力)に対して音波発生装置からの発振音圧を騒音計で測定した。
【0106】
また図9は、本実施形態に係る音波発生装置と従来の音波発生装置の駆動用圧縮気体(圧縮空気)の圧力、発振音圧ならびに駆動用圧縮気体の消費量とを比較して示す図表である。
なお図8,9において図中の符号H〜Nは、前記図7のそれと同じである。
【0107】
これらの図から明らかなように、リム設定位置を(+)0.80mmに設定した従来の音波発生装置(点H)では、駆動圧力を0.7MPaにしても発振音圧は142dBしか得られない。
【0108】
これに対して本実施形態に係る音波発生装置では、リム設定位置を(−)0.60mm〜(−)1.4mmの範囲に設定して、駆動圧力を0.2MPaにした曲線Iの音波発生装置でも、前記従来の音波発生装置とほぼ同じ発振音圧を得ることができる。なお、曲線Iの音波発生装置においてリム設定位置を(−)0.60mmに設定したものは、発振音圧が若干低い傾向にあるが、駆動圧力を若干高めることにより(例えば0.25MPa)、従来の音波発生装置と同等以上の発振音圧を得ることができることが、他の特性試験で確認されている。
【0109】
この曲線Iの音波発生装置の駆動圧力は0.2MPaであるから、従来の音波発生装置(0.7MPa)に較べて駆動圧力を約1/3低減してもほぼ同じ発振音圧を得ることができ、駆動用圧縮気体の消費量は従来の音波発生装置に較べて約1/3低減することが可能となる。
【0110】
本実施形態に係る音波発生装置において、リム設定位置を(−)0.60mm〜(−)1.40mmの範囲に設定して、駆動圧力を0.3MPa(曲線J)と少し高めていくと、従来の音波発生装置に較べて発振音圧を9.5dB〜11.5dB高めることができるとともに、駆動用圧縮気体の消費量は約1/2に低減することが可能となる。
【0111】
また本実施形態に係る音波発生装置において、リム設定位置を(−)0.60mm〜(−)1.40mmの範囲に設定して、駆動圧力を0.4MPa(曲線K)とさらに少し高めると、従来の音波発生装置に較べて発振音圧を14.5dB〜16.5dB高めることができるとともに、駆動用圧縮気体の消費量は約2/3低減することが可能となる(共に図9参照)。
【0112】
なお、図9では本実施形態に係る音波発生装置の代表例として曲線I〜Kを示したが、図8に示しているように、リム設定位置を0.00mm〜(−)1.40mmの範囲に設定して、駆動圧力を0.5MPa〜0.7MPa(曲線L〜N)と高めていくと、さらに発振音圧を高くすることができる。
【0113】
図8において、リム設定位置を(−)1.00mmに設定して、駆動圧力を0.7MPaした音波発生装置の発振音圧は167.5dBであり、従来の音波発生装置と同じ駆動圧力、すなわち駆動用圧縮気体の消費量が同じで、発振音圧を25.5dB高めることができる。
【0114】
前述のようにリム設定位置を0.00mm〜(−)1.40mmの範囲に設定したものは、マウスピース4のリム17と、これに接触する振動板3の正面の位置関係が、振動板3をリム17へ押し当てない状態において、リム17と、これと対向する振動板3の正面の間に、圧縮気体2が流れ得る程度の隙間が形成されるような位置関係になっている。
【0115】
(第2実施形態)
図10は、本発明の第2実施形態に係る音波発生装置の全体の断面図である。
本実施形態において前記第1実施形態と相違する主な点は、振動板カバー5を省略して、ハウジング6を音波発生装置本体1に直接取り付けた点である。従って本実施形態の場合、ハウジング6の蓄圧気室21が振動板3の振動を許容する背面空洞部20を兼ねることになり、十分な大きさの背面空洞部となる。
【0116】
このように振動板カバー5を省略することにより、部品点数の削減、装置のコンパクト化と軽量化、コスト低減が図れると共に、密閉系内での接合面が少なくなり、そのために高い密閉度が得られ、音波発生装置として好都合である。
【0117】
また、本実施形態の場合、音波発生装置本体1とハウジング6がボルトとナットによる接合手段27で接合されている。
【0118】
前記第1、2実施形態において、圧縮気体25の加圧圧力は、図1、10に示す調節弁(B)13により適宜調整できる。なお、前記第1、2実施形態で用いられるハウジング6は、図示していないが音波発生装置のケーシングで兼用することもできる。
【0119】
前記第1、2実施形態では振動板3の背面を加圧する背面加圧手段として、圧縮気体25を用いて振動板3の背面全体を均等に加圧した例を示した。
【0120】
(第3実施形態)
図11は第3実施形態に係る音波発生装置の要部の拡大断面図、図12は本実施形態において、振動板上のバネ部材の配置例を示す平面図である。なお、本実施形態では、振動板3の背面は大気圧状態となる。
【0121】
本実施形態では背面加圧手段として、弾性体の1種であるコイルバネなどのバネ部材28を使用している。
【0122】
このバネ部材28は図11に示すように、振動板3と振動板カバー5の間に若干圧縮された状態で介在される。また複数個のバネ部材28は図11、12に示すように、マウスピース4に設けられているリム17と対向する位置に、そのリム17の周方向に沿って等間隔に配置されている。
【0123】
各バネ部材28の位置を設置確実に確保するため図11に示すように、振動板カバー5の下面には筒状のバネホルダ29が設けられている。
【0124】
(第4実施形態)
図13は第4実施形態に係る音波発生装置の要部の拡大断面図である。
本実施形態では背面加圧手段として、弾性体の1種であるゴムや合成樹脂などの弾性材料からなる弾性Oリング30を使用している。
【0125】
この弾性Oリング30は図13に示すように、振動板3と振動板カバー5の間に若干圧縮された状態で介在される。弾性Oリング30はマウスピース4に設けられているリム17と対向する位置に、そのリム17の周方向に沿って配置されている。
【0126】
弾性Oリング30の設置位置を確実に確保するため図13に示すように、弾性Oリング30は接着剤31によって振動板カバー5の下面に固定か、またはOリング取付溝を形成してそのOリング取付溝にOリング30を固定する。
【0127】
なお、本実施形態では中実状の弾性Oリング30を用いたが、弾性Oリング30が比較的硬質の場合は中空状の弾性Oリング30を用いることも可能である。
【0128】
(第5実施形態)
図14は第5実施形態に係る音波発生装置の要部の拡大断面図である。
本実施形態では背面加圧手段として、エアピストン32を使用している。複数本のエアピストン32は環状のヘッダ33により同じ方向に配置、接続され、マウスピース4に設けられているリム17と対向する位置に、そのリム17の周方向に沿って等間隔に配置されている。
【0129】
前記ヘッダ33には圧縮気体(圧縮空気)25が供給され、それにより各エアピストン32のピストンロッド34で振動板3をマウスピース4のリム17に密着させている。各ピストンロッド34の先端部には、振動板3への押圧を良好にするため円板状の押圧板35が取り付けられている。
【0130】
前記第3〜5実施形態では、振動板カバー5がバネ部材28、弾性Oリング30ならびにエアピストン32の保持部材を兼ねている。なお、第3、4実施形態では、弾性体(バネ部材28、弾性Oリング30)の圧縮状態を維持するために振動板カバー5は必要であるが、第5実施形態の場合は圧縮気体(圧縮空気)25の供給でリム17に対する振動板3の密着が図れるため、必ずしも振動板カバー5は必要ではない。
【0131】
(第6実施形態)
図15は、前記第1実施形態に係る音波発生装置を備えた第6実施形態に係る音波式スートブロワの断面図である。
【0132】
この音波式スートブロワ41は前記実施形態に係る音波発生装置から主に構成されており、例えばボイラ火炉42の炉壁43などに取り付けられる。炉壁43に形成された開口部44からボイラ火炉42内に臨むようにホーン8が配置されている。ホーン8から発振される音圧がボイラ建屋40側に洩れるのを防止するために、遮熱(断熱)を兼ねた防音ケース45内にホーン8が配置されている。
【0133】
音波発生装置本体1、振動板3、マウスピース4、振動板カバー5、ハウジング6、共鳴筒7などで構成される音波発生部は、前記防音ケース45のボイラ火炉42と反対側に設置されている音波発生部ケース46内に収納されている。
【0134】
前記防音ケース45ならびに音波発生部ケース46の外周には、遮熱(断熱)を兼ねた防音用のラギング47が設置されている。図に示すように供給系統(A)(配管)10ならびに供給系統(B)(配管)12は、音波発生部ケース46ならびにラギング47を貫通して、それぞれ音波発生装置本体1ならびにハウジング6に接続されている。
【0135】
この音波式スートブロワから増幅された音波をボイラ火炉42内に向けて発振させて、その高い音圧をもつ音波によって、伝熱管表面に付着、堆積した燃焼灰の除去および伝熱管への燃焼灰の付着を抑制するものである。
【0136】
発振周波数が炉内の気柱共振と同一の場合は、ボイラ火炉42内に気柱共振を励起し、定在波を形成させ、その定在波によってボイラ火炉42内の音圧はさらに高まるため、灰除去および灰の付着抑制力が強化される。
【0137】
(第7実施形態)
図15に示す音波式スートブロワの場合、共鳴筒7の長さが一定であるため発振される音波の発振周波数は一定である。そのため、ボイラ火炉42内のガス温度条件が前記発振周波数に合致したときは、炉内気柱共振が確立して炉内の音圧が高くなり、灰の除去能力あるいは付着抑制能力が高まる。
ところがボイラ火炉42内のガス温度条件が変化して炉内気柱共振が確立しない場合には、音圧が下がり、灰の除去能力あるいは付着抑制能力が減退する。このため、広範囲のボイラ運用条件において音波式スートブロワが有効に機能しないという難点がある。
【0138】
この第7実施形態は、広範囲のボイラ運用条件において有効に機能する音波式スートブロワを示すものである。図16および図17は本実施形態に係る音波式スートブロワを説明するためのもので、図16は共鳴筒の長さを長くした状態での音波式スートブロワの断面図、図17は共鳴筒の長さを短くした状態での音波式スートブロワの断面図である。
【0139】
本実施例において前記第6実施形態に係る音波式スートブロワと相違する主な点は、例えば図16に示すように共鳴筒7が内筒7aと外筒7bからなり、内筒7aが外筒7b内でスライド可能になっている点である。
【0140】
図16は共鳴筒7の実質的な長さが長くなった状態、図17は短くなった状態を示している。このように共鳴筒7の長さを変えることにより、共鳴筒7で発振周波数の波長を調整し、ホーン8により所望の音圧に増幅でき、ボイラ火炉42内に複数の気柱共振周波数を連続的に変化させた音波を発生できる。
【0141】
本実施形態の場合、共鳴筒7の長さの変化に伴い音波発生装置本体1ならびにハウジング6も移動するため、音波発生装置本体1ならびにハウジング6に接続されている供給系統(A)10ならびに供給系統(B)12はフレキシブルなホースで構成されている。
【0142】
図18は、振動板の背面加圧設定値を種々変えた音波発生装置において、共鳴筒の長さを変化させたときのストローク(共鳴筒の長さの変化量)に対する周波数特性を示す図である。同図に示すように振動板の背面加圧設定値が10KPa〜80KPaの8種類に分けて実験を行なった。
【0143】
この図から明らかなように、振動板の背面加圧設定値が特に50KPa以上にすることで、ストロークに対する周波数特性は1つの直線となるため、ストロークに対する周波数制御はより精度に行なうことができる。
【0144】
本実施形態では共鳴筒7の全体の形状が直管状になった場合を示したが、全体の形状がU字状の共鳴筒を用い、それの直管部分を内筒と外筒で構成するスライド構造にしたり、あるいは全体の形状が渦巻き状の共鳴筒を用い、その共鳴筒の端部に直管部分を設け、その直管部分を内筒と外筒で構成するスライド構造することも可能である。
このようにU字状あるいは渦巻き状の共鳴筒を用いることにより、音波式スートブロワの小型化が可能となる。
【0145】
(第8実施形態)
図19ならびに図20はボイラ装置における後部伝熱部での音波式スートブロワの配置例を示す図で、図19は本発明の第8実施形態に係る音波式スートブロワの配置例を示す図、図20は従来の音波式スートブロワの配置例を示す図である。
【0146】
これらの図において53はバーナ、54は一次再熱器、55は一次過熱器、56は煙道蒸発器、57は節炭器、58は蒸気式スートブロワ、59は実施形態に係る音波式スートブロワ、60は従来の音波式スートブロワ、61は燃焼排ガスである。これらの図に示すように蒸気式スートブロワ58ならびに音波式スートブロワ59(60)は、各熱交換器(一次再熱器54、一次過熱器55、煙道蒸発器56、節炭器57)と対応して配置されている。そして蒸気式スートブロワ58と音波式スートブロワ59(60)を併用することにより、蒸気式スートブロワ58の運用頻度を1/4〜1/10程度に低減することができる。
【0147】
ところが従来の音波式スートブロワ60を使用する場合には、図20に示すようにボイラ装置の片側に16台、ボイラ装置の両側では32台設置する必要があった。これに対して本発明に係る音波式スートブロワ59を使用する場合には、図19に示すようにボイラ装置の片側に8台、ボイラ装置の両側では16台設置すれば十分であり、音波式スートブロワの設置台数ならびにそれに使用する駆動用圧縮気体の使用量を従来のものに対して半分に減らすことができる。
【0148】
従来の音波式スートブロワの発振音圧には限りがあったため、例えば伝熱部の寸法が大きいボイラ装置あるいは伝熱管への付着力、堆積力の強い炭種を使用する場合などでは、音波式スートブロワからの音圧をさらに高める必要があり、そのためにボイラ装置の対向する両側の壁にそれぞれ音波式スートブロワを設置して、多くの音波式スートブロワを同一周波数にて同時に発振することにより、合成音圧を高め運用方法が採用されている。
【0149】
図21ならびに図22は音波式スートブロワの同時発振の運用例を示す図で、図21は本発明に係る音波式スートブロワの運用例を示す図、図22は従来の音波式スートブロワの運用例を示す図である。図21において○印は運用中の音波式スートブロワ59、黒丸印は停止中の音波式スートブロワ59、図22において□印は運用中の音波式スートブロワ60、黒四角印は停止中の音波式スートブロワ60をそれぞれ示している。なお、図21ならびに図22において音波式スートブロワ59(60)の配置は図19ならびに図20と同じである。
また、図23は本発明に係る音波式スートブロワ59(白の菱形印)と従来の音波式スートブロワ60(黒の菱形印)の同時運用台数と合成音圧の関係を示す特性図である。
【0150】
なお、このテストに使用した本発明に係る音波式スートブロワ59は、リム設定位置を−1.20mm、駆動用圧縮空気圧を0.3MPaに設定しており、音波式スートブロワ1台の発振音圧は153dBである。また、従来の音波式スートブロワ60は、リム設定位置を+0.65mm、駆動用圧縮空気圧を0.7MPaに設定しており、音波式スートブロワ1台の発振音圧は145dBである。
【0151】
図22は従来の音波式スートブロワ60をボイラ装置の片側で8台(ボイラ装置の両側で16台)同時に運用した例を示しているが、そのときの合成音圧は図23から明らかなように154dBである。
【0152】
これに対して本発明に係る音波式スートブロワ59を使用して前述とほぼ同じ合成音圧(156dB 図23参照)を得るためには、図21に示すようボイラ装置の片側で2台(ボイラ装置の両側で4台)同時運用すれば十分であり、音波式スートブロワの設置台数ならびにそれに使用する駆動用圧縮気体の使用量を極端に減らすことができる。
【0153】
なお、図23中に付した斜線領域X,Y,Zは、本発明に係る音波式スートブロワの1台運用での発振音圧の範囲を駆動用圧縮空気圧別に示したものである。前記斜線領域Xはリム設定位置が−0.60mm〜−1.40mmで駆動用圧縮空気圧が0.2MPaのものの発振音圧、前記斜線領域Yはリム設定位置が−0.60mm〜−1.40mmで駆動用圧縮空気圧が0.3MPaのものの発振音圧、前記斜線領域Zはリム設定位置が−0.60mm〜−1.40mmで駆動用圧縮空気圧が0.4MPaのものの発振音圧を示す。
【0154】
この斜線領域X,Y,Zからも明らかなように、本発明に係る音波式スートブロワ1台でも従来の音波式スートブロワの複数台同時運用で得られる合成音圧に匹敵する音圧が得られ、音波式スートブロワの設置数を極端に減らすことが可能である。
【0155】
(第9実施形態)
図24ならびに図25は脱硝装置での音波式スートブロワの配置例を示す図で、図24は本発明の第9実施形態に係る音波式スートブロワの配置例を示す図、図25は従来の音波式スートブロワの配置例を示す図である。これらの図において(a)は脱硝装置の概略平面図、(b)は脱硝装置の概略縦断面図である。
【0156】
ボイラ装置に付設される脱硝装置64には燃焼排ガス61の流れ方向に沿って複数段の触媒ブロック65が設置されているが、煤塵などを多く含んだ燃焼排ガス61が通過するため、触媒ブロック65上に多量の煤塵などが付着堆積して、脱硝機能が経時的に減退する。
【0157】
そのため従来は、図25に示すように各触媒ブロック65毎に音波式スートブロワ60を配置していた。これに対して本発明に係る音波式スートブロワ59は個々に高い発振音圧を得ることができるから、音波式スートブロワ59の設置個数を極端に減らすことができ、例えば図24に示すように2段の触媒ブロック65を設置した脱硝装置64の場合、4台の音波式スートブロワ59を設置すれば十分である。
【0158】
(第10実施形態)
図26は発電プラントにおける排ガス処理システムの系統図、図27はその排ガス処理システムに用いる本発明の第10実施形態に係るガス−ガスヒータの概略構成図である。
【0159】
図26に示すように、ボイラ装置71から排出された燃焼排ガスは脱硝装置72に導入され、燃焼排ガス中のNOxが除去された後、空気予熱器73においてボイラ装置71に供給される燃焼用空気と熱交換される。その後ガス−ガスヒータ熱回収器74に導入されて熱回収され、電気集塵器75で燃焼排ガス中の煤塵の大半が除去される。
【0160】
そして、燃焼排ガスは誘引ファン76により昇圧され、湿式脱硫装置77に導入されて燃焼排ガス中のSOxが除去される。この湿式脱硫装置77において飽和温度まで冷却された燃焼排ガスはガス−ガスヒータ再加熱器78により昇温され、誘引ファン79により昇圧されて煙突80から排出される。
【0161】
本発明の第10実施形態に係るガス−ガスヒータ81は図27に示すように、前記ガス−ガスヒータ熱回収器74のフィン付き伝熱管82と、前記ガス−ガスヒータ再加熱器78のフィン無しの伝熱管83ならびにフィン付き伝熱管84を連絡管85で連結し、熱媒体循環ポンプ86で熱媒体を循環させて、熱媒体の顕熱により前記空気予熱器73(図26参照)の出口燃焼排ガス61を冷却し(熱回収)、前記湿式脱硫装置77(図26参照)の出口燃焼排ガス61を昇温(再加熱)する熱交換装置である。
【0162】
このガス−ガスヒータ81では、低負荷時などに媒体温度が低くなり過ぎないように、またはボイラ起動時あるいはボイラ運転停止時の暖気目的で蒸気を加熱源とする熱媒体ヒータ87が、再加熱器78の上流側の連絡管85内に設置されている。
【0163】
また、前記連絡管85の内部には熱媒体としての水を満水状態で充填しており、運転中は熱媒体温度の上昇により熱媒体(水)88が膨張するため、それを吸収する目的で熱媒体タンク89が付設されている。
【0164】
さらに、熱回収器74の出口排ガス温度を制御するため、その熱回収器74をバイパスして再加熱器78の熱媒体出口から入口に戻る熱媒体バイパスライン90が設けられ、電気集塵器75の出口排ガス温度を計測する排ガス温度計81の検出信号により、電気集塵器75の出口排ガス温度が設定範囲内となるように、前記熱媒体バイパスライン90に設けられた流量調整弁92の開度を調整して、熱媒体による熱回収器74での熱回収量を制御している。
【0165】
図27に示すように、前記熱回収器74の排ガス流れ方向上流側には、本実施形態に係る音波式スートブロワ93が対向するように設置され、定期的あるいは随時に稼動されるようになっている。
【0166】
図28は、前記第1実施形態に係る音波発生装置と従来の音波発生装置において、リムに対する振動板の衝突速度を説明するための概略図で、横軸に時間(t)、縦軸に振動板の振幅範囲を示しており、0位置を中心にしてニュートラルから(+)側とニュートラルから(−)側に分かれている。
【0167】
図中の実線Oはリムが無い場合の当該部位における振動板の変位を表す曲線、点線Pはその実線Oの傾き角度、すなわち振動板の衝突速度を示す直線である。また範囲Qはリムに対する振動板の衝突速度が低下する範囲、範囲Rはリムに対する振動板の衝突速度が最大になる範囲(衝突速度が一定になる範囲)を示している。
【0168】
さらに範囲S1は本発明の音波発生装置においてリムの設定位置をニュートラルから(−)側に少しずらしたときの振動板の振幅範囲、範囲S2は本発明の音波発生装置においてリムの設定位置をニュートラルから(−)側に更にずらしたときの振動板の振幅範囲、範囲Tはリムの設定位置をニュートラルから(+)側に設定した従来の音波発生装置の振動板の振幅範囲を示している。また、範囲Uは本発明の音波発生装置において振動板の振幅が大きくて、音波発生装置の耐用寿命が長い、好ましい範囲を示している。
【0169】
範囲S1ならびに範囲S2と範囲Tを比較すると明らかなように、本発明の音波発生装置はリムの設定位置をニュートラルから(−)側に設定しているため、リムの設定位置をニュートラルから(+)側に設定した従来の音波発生装置よりもかなり振動板の振幅範囲が広くなっている。
【0170】
振動板の振幅の広い、狭いが発振音圧の大小に直接影響し、本発明の音波発生装置では発振音圧を従来のものよりも高くすることが可能である。そして振動板の静止時にシール性が保持できる限度内で、リムの設定位置をニュートラルから(−)側に設定する方が、有利である。それに加えて、リムの設定位置を範囲Uに示すようにリムに対する振動板の衝突速度が低下する範囲に設定すれば、振動板の振幅が大きくて、リムの磨耗も少なく、音波発生装置の耐用寿命が長くなり有利である。
【0171】
前記実施形態では石炭焚きボイラ装置の場合を説明したが、石炭の替わりにバイオマスなど他の燃料を使用するボイラ装置にも本発明は適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明に係る音波発生装置ならびに音波式スートブロワは、ボイラ装置の他に粉塵の堆積や液滴の滞留等による問題が生じ得るあらゆる産業機器類に適用することが可能である。
【0173】
また、圧縮気体の供給源としては、設置されるプラントによって、高圧空気や余剰窒素(例えば製鉄所など)が挙げられる。
【符号の説明】
【0174】
1:音波発生装置本体、2:駆動用圧縮気体、2A:排気気体、3:振動板、4:マウスピース、5:振動板カバー、6:ハウジング、7:共鳴筒、7a:共鳴筒の内筒、7b:共鳴筒の外筒、8:ホーン、9:圧縮気体供給源、10:供給系統(A)、11:調節弁(A)、12:供給系統(B)、13:調節弁(B)、14:導入口、15:周壁、16:保持部、17:リム、18:音波発生装置本体の軸方向、19:蓄圧器、20:背面空洞部、21:蓄圧気室、22:貫通孔、23:押圧部、24a,24b:Oリング、25:背面加圧用圧縮気体、26:底面、27:接合部、28:バネ部材、29:バネホルダ、30:弾性Oリング、31:接着剤、32:エアピストン、33:ヘッダ、34:ピストンロッド、35:押圧板、40:ボイラ建屋、41:音波式スートブロワ、42:ボイラ火炉、43:炉壁、44:開口部、45:防音ケース、46:発波発振ケース、47:ラギング、54:一次再熱器、55:一次過熱器、56:煙道蒸発器、57:節炭器、58:蒸気式スートブロワ、61:燃焼排ガス、62:ガス温度センサ、63:制御部、64:脱硝装置、65:触媒ブロック、71:ボイラ装置、72:脱硝装置、74:ガス−ガスヒータ熱回収器、78:ガス−ガスヒータ再加熱器、81:ガス−ガスヒータ、82〜84:伝熱管、85:連絡管、86:熱媒体循環ポンプ、87:熱媒体ヒータ、88:熱媒体、89:熱媒体タンク、90:熱媒体バイパスライン、91:排ガス温度計、92:流量調整弁、93:音波式スートブロワ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮気体を駆動力として振動板を駆動させて音波を発生する音波発生装置に係り、特に高音圧の音波を少ない量の圧縮気体で発生でき、しかも長寿命運転が可能な音波発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば石炭やバイオマスなどの固体燃料を燃焼するボイラ装置においては、燃焼排ガス中に多量の燃焼灰が含まれており、この燃焼灰が火炉壁や伝熱管などに付着、堆積して伝熱機能を阻害する。このため、蒸気式スートブロワを多数設置して局部的に高速の蒸気噴流を伝熱管などに吹き付けて燃焼灰の付着、堆積を抑制していた。
【0003】
しかし、この方法は蒸気噴流の速度が速いため、吹き付けられた面に燃焼排ガス中の灰が巻き込まれ、高速の灰が伝熱管と衝突する現象を引き起こしスチームエロージョンを発生して、伝熱管の耐用寿命を短くしていた。
【0004】
そのため音波式スートブロワを使用して、炉内に高音圧の音波を発生することにより伝熱管上への燃焼灰の付着、堆積を抑制する方法を併用すると、蒸気式スートブロワの運用頻度を従来の1/4〜1/10程度に低減させることができた。
【0005】
図29は従来の音波発生装置の要部断面図、図30は図29のX部の拡大断面図である。
この音波発生装置は図29に示すように、音波発生装置本体101、その音波発生装置本体101に保持・固定され、例えば圧縮空気などの駆動用圧縮気体102を利用して音波を発生する金属製の振動板103、前記音波発生装置本体101の内側に設置されたマウスピース104、前記音波発生装置本体101の上部に取り付けられて、前記振動板103を覆う振動板カバー105などを備えている。
【0006】
図示していないが、前記マウスピース104の先端部(図面においてマウスピース104の下端部)には共鳴筒が接続され、さらにこの共鳴筒の先端部にはホーンが接続されている。また、前記音波発生装置本体101に形成された圧縮気体導入口106には、圧縮気体102を送給するための供給系統が接続されている。
【0007】
円板状の振動板103の外周部は、音波発生装置本体101に設けられた保持部107と、振動板カバー105に設けられた押圧部108の間にOリング109a,109bを介して挟持・固定されている。図30に示す固定端は、前記Oリング109a,109bによる固定端を示している。
【0008】
なお図示していないが、前記Oリング109a,109bの代わりに、押圧部108により振動板103を押し付ける部位の上面に△状の加工を行なったり、逆に、押圧部108の押し付け部位を▽状に加工して、支点押圧を行なう方式もある。
【0009】
前記マウスピース104の振動板103と対向する側には、振動板103が当接する平面形状が環状のリム110(図30参照)が設けられている。音波発生装置本体101の軸方向111における前記リム110の上面位置は、振動板103が振動停止状態のときに振動板103を若干押し上げる状態になる位置に設定されている。
【0010】
前述のように図30は図29のX部の拡大断面図で、前記リム110の位置を説明するための図である。同図において、音波発生装置本体101からマウスピース104がない状態で振動板103を前記固定端で固定し、振動板103が水平状態にある位置を振動板103の「0位置」とすると、マウスピース104がある状態の音波発生装置本体101では、マウスピース104の前記リム110が前記「0位置」よりも上方、すなわち(+)方向にあって、図29に示すように振動板103を若干押し上げている。このようにリム110によって押し上げられた位置が、振動板103のニュートラル位置である。
【0011】
図29に示すように振動板103をリム110が押上げることで振動板103は湾曲状態に変形し、振動板103が元の状態に戻ろうとする剛性力がリム110側に作用するため、振動板103とリム110は密着した状態になっている。
【0012】
この状態で振動板103の駆動用圧縮気体102(圧縮気体102として、例えば圧縮空気が用いられる)をリム110と振動板103の間に形成されている環状の密閉空間部112内に供給する。すると密閉空間部112内の圧力が上昇し、上昇した圧縮気体圧力により振動板103はリム110から持ち上げられる。
【0013】
このとき振動板103とリム110との間に隙間が形成され、圧縮気体102はこの隙間よりマウスピース104側に排気されることで、前記密閉空間部112内の圧縮気体圧力は低下し、振動板103の持ち上げ力が減少する。
【0014】
このときの振動板103は図29において点線103Cで示すように、それの停止状態より更に湾曲するように撓むため振動板103自身に元の状態(停止状態)に戻ろうとする剛性力が更に強く働き、この剛性力に対し圧縮気体圧の低下により振動板103は戻り動作となり、リム110に衝突する。この時点で再度振動板103とリム110は密着性が確保されるため、振動板103はリム110から持ち上げられ、リム110と振動板103との隙間より圧縮気体が噴出し、振動板103はリム110に衝突する。このようにして、振動板103が上下の微振動を開始する。
【0015】
この振動板103の上下の微振動は、振動板103を押し上げた圧縮気体102がマウスピース104に排気された排気気体102Aに粗密波を形成する。そして振動板103の下方に設置されているマウスピース104を通過するときに前記粗密波は増幅され、増幅した粗密波がさらに下方の共鳴筒とホーン(共に図示せず)を通過するときに、一定周波数の音波のみの共振現象により更に大きく増幅された、一定周波数の音波が生まれる。
【0016】
このようにして発生した一定周波数を持つ音波は共鳴筒の入口部(マウスピース104側)に音圧のフィードバックが作用することで、リム110からの振動板103の持ち上げ力は(駆動用圧縮空気圧+音圧のフィードバック)の合力にとなり、振動板103自身をリム110より上方に強く持ち上げる作用を発生する。
【0017】
図中の点線103Aは最大振幅時における最上点の振動板103の湾曲状態を示しており、また点線103Bは最大振幅時における最下点の振動板103の湾曲状態を示している。また点線103Cは起動初期の振動板103の湾曲状態を示しており、Cは起動初期の振幅を示している。
【0018】
このようにして一度振動板103の微振動が発生すれば、その後は共鳴筒とホーンでの共振により増幅した音波により振動板103は所定の振幅103Aが継続し、連続した音波発生が可能となり、生成された音波はホーンを通して外部(ボイラ装置の場合は炉内あるいは煙道内)に発振される。
【0019】
なお、音波発生装置の先行技術文献に関しては、例えば下記のような特許文献1〜6などを挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際公開01/053754号公報
【特許文献2】特開平9−61089号公報
【特許文献3】特開平9−61090号公報
【特許文献4】特開平11−223328号公報
【特許文献5】特開2004−116798号公報
【特許文献6】特開2004−116799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
音波による灰堆積抑制効果は音圧が高いほど効果が得られるが、現状の例えば大型石炭焚きボイラ装置では音波発生領域の奥行きが広いため、ボイラ装置中央部の伝熱管に音波が到達するまでに音圧が減衰するという問題がある。
【0022】
この音圧減衰に対処するため、音波発生音圧を高める方法(具体的には前記圧縮気体102の圧力を高める方法、複数台の音波発生装置から同時に同一周波数の音波を発生させ合成音圧を高める方法など)と同時に、気柱共振を発生させる周波数を選定し、選定された共振周波数で運用することでボイラ装置内での音圧を高めていた。
【0023】
また、音波発生装置の構成上、振動板103が絶えずリム110に衝突するため、リム110に微小摩耗が発生し、振動板103とリム110との位置関係が徐々に変化し、最終的にはリム110の摩耗深さが許容値を超えることで、音波発生起動時に振動板103とリム110の密着性が確保できなくなり圧縮気体102が音波発生装置内で洩れることで、振動板を駆動できる圧力まで上昇できなくなり、音波の発振が停止する。
【0024】
音圧強化のために振動板103の振幅を大きくすると、振動板103がリム110に衝突するときの衝突速度が増加し、そのためにリム110の摩耗速度が速くなり、音波発生装置の運用期間が更に短くなるという問題がある。
【0025】
従来の音波式スートブロワ1台当りの音波発生音圧が大型石炭焚きボイラ装置の大きさに対して不足しているため、従来の音波式スートブロワを蒸気式スートブロワと併用することで、現状以上に蒸気式スートブロワの運用頻度を低減させ、伝熱管表面のスチームエロージョンを低減させるには、下記のような問題点がある。
【0026】
(問題点1)
音波発生装置の音圧強化のために駆動用圧縮気体の駆動運用圧力を増加するためには、圧縮気体を得るための既設空気圧縮機を高圧仕様に変更したり、あるいは追設する必要があり、そのために設備費が増加し、追設の場合には設置スペースが必要となる。また、駆動運用圧力を高めることにより、圧縮気体(圧縮空気)の消費量が増えて、運用費の増加をきたす。
【0027】
(問題点2)
前記音圧強化のため、複数の音波発生装置に対して同一周波数の音波を同時に発振させて、発振音波を合成させることで音圧強化を行なうが、音波発生装置の運用台数が増加することにより空気圧縮機の追設が必要となり、それらの設備費が嵩む。また、圧縮気体の消費量が増えて、運用費の増加をきたす。
【0028】
(問題点3)
前記音圧強化による振動板の振幅を大きくすることにより、リムの摩耗量が増え、音波発生装置の耐用寿命が低下し、また、音波発生装置の維持管理費が増加する。
【0029】
図29に示す従来の音波発生装置を長時間運用していると、振動板103と衝突するリム110には衝突による摩耗が発生し、この摩耗の進行により音波発生起動時にリム110による振動板103の押上げ量が低下し、振動板103の湾曲量が減少する。この摩耗が更に進行することで、振動板103の湾曲による剛性力の低下をもたらし、音波発生起動時に密着性が維持できなくなる。
【0030】
この状態で起動を開始すると振動板103とリム110の間に隙間があるため、密閉空間部112が形成されず、圧縮気体102を供給しても内圧の上昇量が少なく、そのため振動板103の押上げが不十分で、振動板103の微振動ができなくなり、その後のマウスピース104や共鳴筒とホーンでの増幅ができず、音波が発生しない。
【0031】
図5中の曲線Dは、従来の音波発生装置で振動板103とリム110の間に隙間が形成され、密閉空間部112内の圧力が上昇できず、その結果、音波が発生しない状態を示している。
【0032】
長時間の運用でも確実に音波を発生させるためには、音波発生装置の起動時に振動板とリムの密着状態が維持されていることが重要である。この密着性を確保するため、従来の音波発生装置ではリムにより振動板を押上げ、振動板を湾曲に変形させ、振動板の湾曲変形による剛性力を引き出して、この剛性力によりリムとの密着性を確保してきた。
【0033】
従来、長期間の運用によるリム110の摩耗量を考慮した運用を行うため、初期のリム設定レベルは余裕を持たせた状態、すなわち、許容磨耗量が発生しても密着性が確保できるように磨耗量を加えた設定を行なうため、リム110による振動板103の押上げ量を大きく設定していた。
【0034】
他方、振動板103自身の剛性力は湾曲量が増加すると共に強力になるため、振動板103の物理的仕様(直径、厚さ、材質)が一定の状態では湾曲できる範囲には物理的な制約がある。図29中の最大湾曲時の撓み量を(A)とし、振動板静止時の初期のリム押上げ設定レベルで発生した撓み量を(B)とすると、音波発生装置での最大振幅は(A−B)となる。
【0035】
前記最大湾曲時の撓み量(A)は圧縮気体102の圧力、あるいは振動板103の厚み、直径、材質により一定となるため、音波発生装置での振動板103の振幅を増加させるには、振動板静止時の初期のリム押上げ設定レベルで発生した撓み量(B)を低く設定することが必要となる。
【0036】
ところが従来の音波発生装置では、振動板静止時の初期のリム押上げ設定レベルで発生した撓み量(B)を低くすると、発振振幅(A−B)は増加するが、起動時の振動板103の湾曲量が低下するため、起動時の振動板103とリム110との密着性の維持ができなくなり、音波の発振停止や、初期では音波が発振できても長時間の運用によるリム110の摩耗進行が、許容磨耗量を超えた時点で音波の発振停止が発生していた。
【0037】
このように従来の音波発生装置では運用できる最大発振振幅(A−B)に制限をもつため発振音圧に限りがあることから、音波発生装置から発振できる最大音圧でも1台の音波発生装置の運用では、例えば大型石炭焚きボイラ装置の伝熱管への灰堆積抑制効果が十分に得られないという欠点があった。
【0038】
本発明の主な目的は、このような従来技術の欠点を解消し、高音圧の音波を少ない量の圧縮気体で発生でき、しかも長寿命運転が可能な音波発生装置およびそれを使用した音波式付着物除去・抑制装置、音波式スートブロワ装置、熱交換装置、排ガス処理装置、産業機器ならびに音波発生装置の運用方法、熱交換装置の運用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0039】
前記目的を達成するため、本発明の第1の手段は、
振動板と、
その振動板の周縁部を保持する保持部と、
前記保持部の径方向内側において前記振動板を押し当てるリムを有するマウスピースと、
前記振動板の前記リムに接触する正面側でかつ前記マウスピースの径方向外側に設けられた蓄圧器と、
その蓄圧器に圧縮気体を供給する圧縮気体供給系統と、
前記マウスピースと共鳴筒とホーンによって形成される一連の音響導管を備え、
前記振動板はその周縁部が前記保持部に保持されており、
前記振動板を前記リムへ押し当てる力に抗して前記蓄圧器から圧縮気体がマウスピースの内側に流入することで振動板の動作が開始され、その振動板の駆動により発生した疎密波を前記音響導管を通じて増幅し、前記ホーンの開口部から音波として放射する音波発生装置において、
前記振動板の背面側から外力により当該振動板を前記マウスピースのリムへ押し当てる手段を設けたことを特徴とするものである。
【0040】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、
前記押し当て手段により前記振動板をマウスピースのリムへ押し当てた状態での、前記振動板の正面と前記保持部との前記マウスピース軸方向沿いの距離で表される振動板の撓み量が、振動板の正面側0.0mm〜1.4mmの範囲内に設定されていることを特徴とするものである。
【0041】
本発明の第3の手段は前記第2の手段において、
前記振動板の撓み量が、振動板の正面側0.6mm〜1.4mmの範囲内に設定されていることを特徴とするものである。
【0042】
本発明の第4の手段は前記第1の手段において、
前記マウスピースのリムと、これに接触する前記振動板の正面の位置関係を、
前記押し当て手段により振動板を前記マウスピースのリムへ押し当てない状態において、
前記マウスピースのリムと、これと対向する前記振動板の正面の間に、前記圧縮気体が流れ得る程度の隙間が形成されるような位置関係になっていることを特徴とするものである。
【0043】
本発明の第5の手段は前記第2ないし第4のいずれかの手段において、
前記駆動用圧縮気体の圧力が0.2MPa〜0.7MPaの範囲内に設定されていることを特徴とするものである。
【0044】
本発明の第6の手段は前記第1ないし第5のいずれかの手段において、
前記押し当て手段が、前記振動板の背面のほぼ全体を背面加圧用圧縮気体で押し付ける構成になっていることを特徴とするものである。
【0045】
本発明の第7の手段は前記第6の手段において、
前記押し当て手段が、前記振動板の背面に形成された空洞部と通じる背面加圧用の蓄圧気室と、その蓄圧気室に背面加圧用圧縮気体を供給する供給系統を有することを特徴とするものである。
【0046】
本発明の第8の手段は前記第7の手段において、
前記空洞部と蓄圧気室の間に、空洞部と蓄圧気室を連通する例えば貫通孔や切欠部などからなる貫通部が形成された振動板カバーが介在されていることを特徴とするものである。
【0047】
本発明の第9の手段は前記第7の手段において、
前記背面加圧用圧縮気体の供給源が、前記駆動用圧縮気体と同じの供給源であって、
前記駆動用の蓄圧器と前記背面加圧用の蓄圧気室の圧力を調整する例えば圧力調整弁などの圧力調整手段が圧縮気体の供給系統に設けられていることを特徴とするものである。
【0048】
本発明の第10の手段は前記第1ないし第5のいずれかの手段において、
前記振動板の背面に空洞部を形成するとともに、その空洞部と大気を連通する貫通部が形成された振動板カバーが、音波発生装置本体の振動板背面側に当該振動板を覆うように取り付けられ、
前記押し当て手段として、前記振動板と振動板カバーの間に、複数個の弾性体を圧縮状態で前記リムの周方向に沿って介在したことを特徴とするものである。
【0049】
本発明の第11の手段は前記第10の手段において、
前記弾性体がバネ部材あるいは弾性リングであることを特徴とするものである。
【0050】
本発明の第12の手段は前記第1ないし第5のいずれかの手段において、
前記振動板の背面に空洞部を形成するとともに、その空洞部と大気を連通する貫通部が形成された振動板カバーが、音波発生装置本体の振動板背面側に当該振動板を覆うように取り付けられ、
前記押し当て手段として、前記振動板の背面側に複数個の連動するピストンを前記マウスピースのリムの周方向に沿って配置したことを特徴とするものである。
【0051】
本発明の第13の手段は前記第1の手段において、
前記共鳴筒の長さが変更可能になっていることを特徴とするものである。
【0052】
本発明の第14の手段は前記第13の手段において、
前記押し当て手段が、前記振動板の背面のほぼ全体を圧縮気体で加圧する圧縮気体供給手段を有し、その圧縮気体の圧力が50KPa〜80KPaの範囲内に設定されていることを特徴とするものである。
【0053】
本発明の第15の手段は前記第1の手段において、
前記マウスピースが音波発生装置本体に対して交換可能に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0054】
本発明の第16の手段は音波式付着物除去・抑制装置において、前記第1ないし第15のいずれかの手段の音波発生装置の前記ホーンが、表面に付着物が付き易い被処理対象物を配置している空間部側に向くように配置したことを特徴とするものである。
【0055】
本発明の第17の手段は音波式スートブロワ装置において、前記第1ないし第15のいずれかの手段の音波発生装置の前記ホーンが、表面に付着物が付き易い被処理対象物を配置している空間部側に向くように配置したことを特徴とするものである。
【0056】
本発明の第18の手段は熱交換装置において、前記第17の手段の音波式スートブロワ装置を設置したことを特徴とするものである。
【0057】
本発明の第19の手段は熱交換装置において、前記第17の手段の音波式スートブロワ装置と、前記被処理対象物に対して高圧水蒸気を噴出して付着物を除去する水蒸気式スートブロワ装置を併設したことを特徴とするものである。
【0058】
本発明の第20の手段は前記第18または第19の手段の熱交換装置がボイラ装置であることを特徴とするものである。
【0059】
本発明の第21の手段はガス処理用の触媒を備えた排ガス処理装置において、
前記第1ないし第15のいずれかの手段の音波発生装置の前記ホーンが、前記触媒を配置している空間部側に向くように配置したことを特徴とするものである。
【0060】
本発明の第22の手段は表面に付着物が付き易い被処理対象物を備えた産業機器において、
前記第1ないし第15のいずれかの手段の音波発生装置の前記ホーンが、前記被処理対象物を配置している空間部側に向くように配置したことを特徴とするものである。
【0061】
本発明の第23の手段は音波発生装置の運用方法において、
前記第1ないし第15のいずれかの手段の音波発生装置を複数台設置して、その複数台の音波発生装置から同時に音波を発生することを特徴とするものである。
【0062】
本発明の第24の手段は音波発生装置の運用方法において、
前記第1ないし第15のいずれかの手段の音波発生装置を音波式スートブロワ装置として複数台設置して、その複数台の音波式スートブロワ装置から同時に音波を発生することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0063】
本発明は前述のような構成になっており、高音圧の音波を少ない量の圧縮気体で発生でき、しかも長寿命運転が可能な音波発生装置およびそれを使用した音波式付着物除去・抑制装置、音波式スートブロワ装置、熱交換装置、排ガス処理装置、産業機器ならびに音波発生装置の運用方法、熱交換装置の運用方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1実施形態に係る音波発生装置の全体の断面図である。
【図2】その音波発生装置の要部の拡大断面図である。
【図3】図2Y部をさらに拡大した断面図である。
【図4】その音波発生装置に用いられるマウスピースの平面図である。
【図5】第1実施形態に係る音波発生装置と従来の音波発生装置において、調節弁(A)をOFFからONに切り替えた後の音波発生装置の内圧変化を示す特性図である。
【図6】第1実施形態に係る音波発生装置の起動時における蓄圧器の内圧特性と振動板の振幅特性を示す特性図である。
【図7】第1実施形態に係る音波発生装置と従来の音波発生装置において、リム設定位置を変えた場合の振動板の振幅の変化を示す特性図である。
【図8】第1実施形態に係る音波発生装置と従来の音波発生装置において、リム設定位置を変えた場合の発振音圧の変化を示す特性図である。
【図9】第1実施形態に係る音波発生装置と従来の音波発生装置の駆動用圧縮気体の圧力、発振音圧ならびに駆動用圧縮気体の消費量とを比較して示す図表である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る音波発生装置の全体の断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る音波発生装置の要部の拡大断面図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係る音波発生装置において、振動板上のバネ部材の配置例を示す平面図である。
【図13】本発明の第4実施形態に係る音波発生装置の要部の拡大断面図である。
【図14】本発明の第5実施形態に係る音波発生装置の要部の拡大断面図である。
【図15】本発明の第6実施形態に係る音波式スートブロワの断面図である。
【図16】本発明の第7実施形態に係る音波式スートブロワの共鳴筒の長さを長くした状態での断面図である。
【図17】その実施形態に係る音波式スートブロワの共鳴筒の長さを短くした状態での断面図である。
【図18】その実施形態に係る音波式スートブロワの共鳴筒のスライド機構を説明するための斜視図である。
【図19】本発明の第8実施形態に係る音波式スートブロワのボイラ装置内での配置例を示す配置図である。
【図20】従来の音波式スートブロワのボイラ装置内での配置例を示す配置図である。
【図21】本発明に係る音波式スートブロワの運用例を示す図である。
【図22】従来の音波式スートブロワの運用例を示す図である。
【図23】従来の音波式スートブロワの同時運用台数と合成音圧の関係を示す特性図である。
【図24】本発明の第9実施形態に係る音波式スートブロワの脱硝装置内での配置例を示す図である。
【図25】従来の音波式スートブロワの配置例を示す図である。
【図26】発電プラントにおける排ガス処理システムの系統図である。
【図27】その排ガス処理システムに用いる本発明の第10実施形態に係るガス−ガスヒータの概略構成図である。
【図28】第1実施形態に係る音波発生装置と従来の音波発生装置において、リムに対する振動板の衝突速度を説明するための概略図である。
【図29】従来の音波発生装置の要部断面図である。
【図30】図29のX部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
次に本発明の各実施形態を図と共に説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る音波発生装置の全体の断面図、図2はその音波発生装置の要部の拡大断面図、図3は図2Y部をさらに拡大した断面図、図4はこの音波発生装置に用いられるマウスピースの平面図である。
【0066】
この実施形態に係る音波発生装置は図1に示すように、音波発生装置本体1と、その音波発生装置本体1に保持・固定され、駆動用圧縮気体2を利用して音波を発生する金属製の円板状振動板3と、前記音波発生装置本体1の内側に設置されたマウスピース4と、前記音波発生装置本体1の上部に取り付けられて、前記振動板3を覆う振動板カバー5と、その振動板カバー5の背面を覆うハウジング6と、前記マウスピース4の先端部に取り付けられた共鳴筒7と、その共鳴筒7の先端部に取り付けられたラッパ状をしたホーン8などを備えている。
前記マウスピース4と共鳴筒7とホーン8によって一連の音響導管が形成されている。
【0067】
またこの音波発生装置は圧縮気体供給源9を有し、本実施形態の場合は圧縮気体として圧縮空気を使用しており、図示していないが前記圧縮気体供給源9には空気圧縮機が内蔵されている。
【0068】
この圧縮気体供給源9から前記音波発生装置本体1に向けて供給系統(A)10が延びており、供給系統(A)10の途中に電磁弁からなる調節弁(A)11が設置されている。前記供給系統(A)10の圧縮気体供給源9と調節弁(A)11の間からは供給系統(B)12が分岐されており、供給系統(B)12の先端部は前記ハウジング6に接続されている。供給系統(B)12の途中には、調節弁(B)13が設置されている。
【0069】
前記音波発生装置本体1は有底形で円筒状をしており、音波発生装置本体1の周壁15には1つの導入口14が設けられている。また、周壁15の上端内周部には、段落ちされて保持部16が形成されている。
【0070】
前記円板状の振動板3として本発明の各実施形態では直径が150mmで厚さが1.5mmのチタン板が用いられ、この振動板3の外径は前記保持部16の内径と略同寸かあるいは若干径小になっている。
【0071】
前記マウスピース4の振動板3と対向する側には、振動板3が当接する平面形状が環状のリム17(図4参照)が設けられている。このリム17の位置設定については、後で詳細に説明する。
【0072】
マウスピース4の外径は音波発生装置本体1の周壁15の内径よりも所定の寸法だけ短く設定されており、図1に示すようにマウスピース4を音波発生装置本体1の周壁15の内側に設置することにより、マウスピース4と音波発生装置本体1の周壁15の間に平面形状が環状の蓄圧器19が形成される。この蓄圧器19は、振動板3によって閉じられる形になっている。
【0073】
マウスピース4はボルトやネジ込みなどの手段によって音波発生装置本体1に対して交換可能に装着され、マウスピース4のリム17が所定の所まで磨耗すると、新品のマウスピース4と交換できるようになっている。なお、マウスピース4のリム17が所定の所まで磨耗したかどうかは、音波発生装置に設置した振動解析センサー(図示せず)によって監視されている。
【0074】
図1ならびに図2に示すように振動板カバー5の振動板3と対向する側には、振動板3の振動を許容するための背面空洞部20が形成されている。この背面空洞部20と前記ハウジング6の蓄圧気室21を連通するための供給孔22が、振動板カバー5の周方向に等間隔に複数本振動板カバー5の厚さ方向に貫通するように形成されている。
【0075】
振動板カバー5の振動板3の外周部と対向する位置には、環状の押圧部23が突出するように形成され、振動板カバー5を音波発生装置本体1にボルト締めすることにより、振動板3の外周部が、音波発生装置本体1に設けられた保持部16と、振動板カバー5に設けられた押圧部23の間で弾性を有するOリング24a,24bを介して挟持・固定されている。図3に示す固定端は、前記Oリング24a,24bによる固定端を示している。
【0076】
図1に示すように、前記ハウジング6は振動板カバー5の背面側に固定されており、ハウジング6の適所に背面加圧用圧縮気体25を導入する導入口26が設けられ、導入口26に供給系統(B)12が接続されている。
【0077】
この供給系統(B)12からハウジング6内に供給された圧縮気体25は、前記振動板カバー5の供給孔22を通して振動板3の背面に適切な外力(背圧)を作用させることになる。そのため振動板3はリム17側へ湾曲状に撓んで押し当てられ、リム17に押し付けられて振動板3とリム17の密着状態が確保される。
【0078】
このように振動板3がリム17に密着することにより蓄圧器19が密閉空間部となる。この蓄圧器19に圧縮気体2を供給することにより、蓄圧器19の内圧は直線的に増加して、振動板駆動圧以上に上昇する。
【0079】
図5は、本実施形態に係る音波発生装置と、従来の音波発生装置において、調節弁(A)をOFFからONに切り替えた後の音波発生装置の内圧変化を測定した結果を示す特性図である。図中の曲線Cは本実施形態に係る音波発生装置の特性曲線、曲線Dは従来の音波発生装置の特性曲線である。
【0080】
この図から明らかなように、本実施形態に係る音波発生装置は曲線Cで示されているように、調節弁(A)11をONにすると短時間(約20ms以内)に、蓄圧器19の内圧は直線的に増加して、振動板駆動圧以上に達する。
【0081】
これに対して従来の音波発生装置は曲線Dで示されているように、振動板103とリム110の間に隙間が形成されると、調節弁(A)をONにして圧縮気体102を供給しても前記隙間から洩れてしまい、密閉空間部の内圧は上昇せず、そのために音波の発振は生じない。
【0082】
次に本実施形態に係る音波発生装置の振動現象について説明する。図6は音波発生装置の起動時における蓄圧器19の内圧特性と振動板の振幅特性を示す特性図であり、図中の曲線Cは内圧の変化を示す特性曲線、曲線Eは振動板の振幅特性を示す特性曲線である。
【0083】
図2ならびに図3に示すように、音波発生装置本体1の軸方向18(図2参照)におけるマウスピース4のリム17の上面位置は、振動板3の背面加圧が無い振動停止状態(図3の0位置の状態)のときに振動板3の下面とほぼ同じ位置か、あるいは振動板3の背面加圧が無い振動停止状態(水平状態)のときに振動板3の下面よりも蓄圧器19の底面26(図2参照)側に下がった位置に設定されている。
【0084】
本実施形態の場合は図3に示すように、振動板3の背面加圧が無い状態での振動停止状態(図3の0位置の状態)のときに、振動板3の下面よりも蓄圧器19の底面26側に下がった位置、すなわち(−)位置側に設定されている。なお、本明細書において、振動板3のリム17に接触する側を正面側、その反対側を背面側としている。
【0085】
振動板3の背面加圧状態では、振動板3は外力(空気圧)により下方に湾曲し、振動板3の剛性力は上方に作用した状態となり、振動板3はリム17に押し当てられて密閉空間部(蓄圧器19)を形成している。
【0086】
この蓄圧器19に圧縮気体2を供給すると(電磁弁ON)、蓄圧器19内の空気圧力が直線的に上昇し(図6の点線参照)、振動板駆動圧以上に上昇すると振動板3はリム17から押上げられる。振動板3がリム17から振動板カバー5側へ移動すると、振動板3とリム17との間に隙間が形成され、圧縮気体2が隙間より瞬間的に噴出し、振動板3を押上げる力が減少する。
【0087】
振動板3の背面には振動板3をリム17側に押付けるための外力(空気圧)が掛かっているため、振動板3は元の状態に戻る方向に移動する。振動板3がリム17に押付けられると密閉空間部が形成され、その密閉空間部への圧縮気体2の供給により内圧が増加し、振動板3を持ち上げるような微振動を行なう。この現象が図6に示されている第1段階である。
【0088】
次に振動板3が微振動を起こすと振動板3を押し上げた圧縮気体2がマウスピース4に排気された後の気体2Aに粗密波が形成され、この粗密波は振動板3の近傍に配置されているマウスピース4により増幅される。マウスピース4で増幅された排気された気体2Aの粗密波は、マウスピース4に接続されている共鳴筒7とホーン8(図1参照)により、一定周波数の音波のみ共振現象で大きく増幅し、一定周波数の音波をホーン8の開口部から放射する。
【0089】
この音波は共鳴筒7からマウスピース4側に音圧のフィードバックとして作用し、リム17に密着している振動板3に対し「圧縮気体2の圧力」+「音圧のフィードバック」の合力が作用することで、振動板3を上方へ第1段階以上まで強く押上げる。
【0090】
振動板3は湾曲状態に撓むため、振動板3自身に元の状態に戻ろうとする剛性力の方向と、振動板3の背面への圧縮気体25による外力の方向が同一方向のため合力が働き、戻り動作となりリム17に更に激しく衝突する。
【0091】
このことで発生した排気気体2Aの粗密波はマウスピース4による増幅、共鳴筒7とホーン8により一定周波数のみ共振現象で大きく増幅され一定の周波数を持った音波として発振され、順次振幅を増加させる。この現象が図6に示されている第2段階である。
【0092】
このように一度共鳴筒7とホーン8による一定周波数の共振現象が発生した後は安定した一定周波数の音波の発振が継続でき、振動板3の湾曲限界(最大撓み量)まで押し上げられるため振幅も安定した運用となる。リム17の当り面を振動板3より下方に設定した状態でも確実に起動でき、安定した高音圧の音波を発生できることになる。この現象が図6に示されている第3段階である。
【0093】
図6において、領域Fは振動板3がリム17に衝突したときの状態を示しており、点Gは運用条件における振動板3の湾曲限界点(最大撓み量)となり、振動板3の最大振幅点を示している。
【0094】
また図2において点Aは振動板3の最大撓み量、点Bは振動板3がリム17に衝突した時点の位置または音波発生起動前の位置となる最小撓み量を示している。振動板3の厚み、直径、材質ならびに圧縮気体2の圧力を従来の音波発生装置(図29参照)と同じにした場合、振動板3(103)の最大撓み量(A)は同じである。ところが、音波発生起動前の静止時のリム110による振動板押上げによる撓み量(+B)を振動板背面加圧によりリム17と振動板3が密着できるため、それよりも下方に設定(−B)することで、振動板3の最大振幅は従来の最大振幅=(A−B)から最大振幅=(A−(−B))=(A+B)となる。
【0095】
その結果、図29に示す振動板103の振幅と図2に示す振動板3の振幅を比較して明らかなように、同一仕様(振動板の厚み、直径、材質ならびに駆動用圧縮気体の圧力など)の音波発生装置においても、本発明により確実な起動と大きな振幅を得ることが可能となった。
【0096】
図7は、本実施形態に係る音波発生装置と従来の音波発生装置において、リム設定位置(停止状態で振動板に撓みが発生しない状態の振動板下面に対するリムの位置)を変えた場合の振動板の振幅の変化を示す特性図である。
【0097】
なお、図7、8に示す各特性試験において、振動板はチタン製の金属円板を使用し、厚みは1.5mm、直径は150mmである。駆動用圧縮気体として圧縮機で得られた圧縮空気を使用し、共鳴筒やホーンなどは全て同一仕様である。
【0098】
図中の点H(黒菱形印)は従来の音波発生装置で圧縮気体の圧力(駆動圧力)を0.7MPaにした場合の特性曲線、曲線I〜Nは本実施形態に係る音波発生装置の特性曲線で、曲線I(×印)は駆動圧力を0.2MPaにした場合の特性曲線、曲線J(白菱形印)は駆動圧力を0.3MPaにした場合の特性曲線、曲線K(黒三角印)は駆動圧力を0.4MPaにした場合の特性曲線、曲線L(白三角印)は駆動圧力を0.5MPaにした場合の特性曲線、曲線M(白四角印)は駆動圧力を0.6MPaにした場合の特性曲線、曲線N(黒四角印)は駆動圧力を0.7MPaにした場合の特性曲線である。
【0099】
この図から明らかなように、リム設定位置を(+)0.80mmに設定した曲線Hの従来の音波発生装置では、駆動圧力を0.7MPaにしても振動板の振幅は2.1mm程度しか得られない。
【0100】
これに対して本実施形態に係る音波発生装置では、リム設定位置を(−)0.60mm〜(−)1.4mmの範囲に設定して、駆動圧力を0.2MPaにした曲線Iの音波発生装置でも、前記従来の音波発生装置とほぼ同じ振動板の振幅を得ることができる。なお、曲線Iの音波発生装置においてリム設定位置を(−)0.60mmに設定したものは、振動板の振幅が若干小さい傾向にあるが、駆動圧力を若干高めること(例えば0.25MPa)により、従来の音波発生装置と同等以上の振幅を得ることができることが、他の特性試験で確認されている。
【0101】
この曲線Iの音波発生装置の駆動圧力は0.2MPaであるから、従来の音波発生装置(0.7MPa)に較べて駆動圧力を約1/3に低減してもほぼ同じ振動板の振幅を得ることができる。従って、駆動用圧縮気体を得るための圧縮機を高圧仕様に変更したり、追設する必要がなく、また、駆動用圧縮気体の消費量も約1/3低減することが可能となる。
【0102】
また、本実施形態に係る音波発生装置において、リム設定位置を(−)0.60mm〜(−)1.40mmの範囲に設定して、駆動圧力を0.3MPa〜0.4MPa(曲線J,K)と少し高めていくと、振動板の振幅をさらに大きくすることができる。この曲線J,Kの音波発生装置は従来の音波発生装置に較べると、駆動圧力は低く、しかも振動板の振幅は大きいという特長を有している。
【0103】
さらに、本実施形態に係る音波発生装置において、リム設定位置を0.00mm〜(−)1.40mmの範囲に設定して、駆動圧力を0.5MPa〜0.7MPa(曲線L〜N)と高めていくと、振動板の振幅を大きくすることができる。この曲線L〜Nの音波発生装置は、従来の音波発生装置の駆動圧力以下で大きい振幅を得ることができるとともに、リムの設定範囲が0.00mm〜(−)1.40mmと広くとれ、許容磨耗量が大きくなり、長時間の運用が可能となり、運用寿命が長くなり、設計に大きな裕度があるという特長を有している。
【0104】
駆動圧力を0.7MPaに注目した場合、従来の音波発生装置では振動板の振幅は2.1mm〜2.4mm程度しか得られなかったが、本実施形態に係る曲線Nの音波発生装置では同じ駆動圧力で振動板の振幅を約3.2mm〜4.2mmまで大きくすることができ、リムの設定位置によっては2倍近くの振幅を得ることができる。
【0105】
図8は、本実施形態に係る音波発生装置と従来の音波発生装置において、リム設定位置(停止状態で振動板に撓みが発生しない状態の振動板下面に対するリムの位置)を変えた場合の発振音圧の変化を示す特性図である。同図に示す縦軸の発振音圧は、個々の圧縮気体の圧力(駆動圧力)に対して音波発生装置からの発振音圧を騒音計で測定した。
【0106】
また図9は、本実施形態に係る音波発生装置と従来の音波発生装置の駆動用圧縮気体(圧縮空気)の圧力、発振音圧ならびに駆動用圧縮気体の消費量とを比較して示す図表である。
なお図8,9において図中の符号H〜Nは、前記図7のそれと同じである。
【0107】
これらの図から明らかなように、リム設定位置を(+)0.80mmに設定した従来の音波発生装置(点H)では、駆動圧力を0.7MPaにしても発振音圧は142dBしか得られない。
【0108】
これに対して本実施形態に係る音波発生装置では、リム設定位置を(−)0.60mm〜(−)1.4mmの範囲に設定して、駆動圧力を0.2MPaにした曲線Iの音波発生装置でも、前記従来の音波発生装置とほぼ同じ発振音圧を得ることができる。なお、曲線Iの音波発生装置においてリム設定位置を(−)0.60mmに設定したものは、発振音圧が若干低い傾向にあるが、駆動圧力を若干高めることにより(例えば0.25MPa)、従来の音波発生装置と同等以上の発振音圧を得ることができることが、他の特性試験で確認されている。
【0109】
この曲線Iの音波発生装置の駆動圧力は0.2MPaであるから、従来の音波発生装置(0.7MPa)に較べて駆動圧力を約1/3低減してもほぼ同じ発振音圧を得ることができ、駆動用圧縮気体の消費量は従来の音波発生装置に較べて約1/3低減することが可能となる。
【0110】
本実施形態に係る音波発生装置において、リム設定位置を(−)0.60mm〜(−)1.40mmの範囲に設定して、駆動圧力を0.3MPa(曲線J)と少し高めていくと、従来の音波発生装置に較べて発振音圧を9.5dB〜11.5dB高めることができるとともに、駆動用圧縮気体の消費量は約1/2に低減することが可能となる。
【0111】
また本実施形態に係る音波発生装置において、リム設定位置を(−)0.60mm〜(−)1.40mmの範囲に設定して、駆動圧力を0.4MPa(曲線K)とさらに少し高めると、従来の音波発生装置に較べて発振音圧を14.5dB〜16.5dB高めることができるとともに、駆動用圧縮気体の消費量は約2/3低減することが可能となる(共に図9参照)。
【0112】
なお、図9では本実施形態に係る音波発生装置の代表例として曲線I〜Kを示したが、図8に示しているように、リム設定位置を0.00mm〜(−)1.40mmの範囲に設定して、駆動圧力を0.5MPa〜0.7MPa(曲線L〜N)と高めていくと、さらに発振音圧を高くすることができる。
【0113】
図8において、リム設定位置を(−)1.00mmに設定して、駆動圧力を0.7MPaした音波発生装置の発振音圧は167.5dBであり、従来の音波発生装置と同じ駆動圧力、すなわち駆動用圧縮気体の消費量が同じで、発振音圧を25.5dB高めることができる。
【0114】
前述のようにリム設定位置を0.00mm〜(−)1.40mmの範囲に設定したものは、マウスピース4のリム17と、これに接触する振動板3の正面の位置関係が、振動板3をリム17へ押し当てない状態において、リム17と、これと対向する振動板3の正面の間に、圧縮気体2が流れ得る程度の隙間が形成されるような位置関係になっている。
【0115】
(第2実施形態)
図10は、本発明の第2実施形態に係る音波発生装置の全体の断面図である。
本実施形態において前記第1実施形態と相違する主な点は、振動板カバー5を省略して、ハウジング6を音波発生装置本体1に直接取り付けた点である。従って本実施形態の場合、ハウジング6の蓄圧気室21が振動板3の振動を許容する背面空洞部20を兼ねることになり、十分な大きさの背面空洞部となる。
【0116】
このように振動板カバー5を省略することにより、部品点数の削減、装置のコンパクト化と軽量化、コスト低減が図れると共に、密閉系内での接合面が少なくなり、そのために高い密閉度が得られ、音波発生装置として好都合である。
【0117】
また、本実施形態の場合、音波発生装置本体1とハウジング6がボルトとナットによる接合手段27で接合されている。
【0118】
前記第1、2実施形態において、圧縮気体25の加圧圧力は、図1、10に示す調節弁(B)13により適宜調整できる。なお、前記第1、2実施形態で用いられるハウジング6は、図示していないが音波発生装置のケーシングで兼用することもできる。
【0119】
前記第1、2実施形態では振動板3の背面を加圧する背面加圧手段として、圧縮気体25を用いて振動板3の背面全体を均等に加圧した例を示した。
【0120】
(第3実施形態)
図11は第3実施形態に係る音波発生装置の要部の拡大断面図、図12は本実施形態において、振動板上のバネ部材の配置例を示す平面図である。なお、本実施形態では、振動板3の背面は大気圧状態となる。
【0121】
本実施形態では背面加圧手段として、弾性体の1種であるコイルバネなどのバネ部材28を使用している。
【0122】
このバネ部材28は図11に示すように、振動板3と振動板カバー5の間に若干圧縮された状態で介在される。また複数個のバネ部材28は図11、12に示すように、マウスピース4に設けられているリム17と対向する位置に、そのリム17の周方向に沿って等間隔に配置されている。
【0123】
各バネ部材28の位置を設置確実に確保するため図11に示すように、振動板カバー5の下面には筒状のバネホルダ29が設けられている。
【0124】
(第4実施形態)
図13は第4実施形態に係る音波発生装置の要部の拡大断面図である。
本実施形態では背面加圧手段として、弾性体の1種であるゴムや合成樹脂などの弾性材料からなる弾性Oリング30を使用している。
【0125】
この弾性Oリング30は図13に示すように、振動板3と振動板カバー5の間に若干圧縮された状態で介在される。弾性Oリング30はマウスピース4に設けられているリム17と対向する位置に、そのリム17の周方向に沿って配置されている。
【0126】
弾性Oリング30の設置位置を確実に確保するため図13に示すように、弾性Oリング30は接着剤31によって振動板カバー5の下面に固定か、またはOリング取付溝を形成してそのOリング取付溝にOリング30を固定する。
【0127】
なお、本実施形態では中実状の弾性Oリング30を用いたが、弾性Oリング30が比較的硬質の場合は中空状の弾性Oリング30を用いることも可能である。
【0128】
(第5実施形態)
図14は第5実施形態に係る音波発生装置の要部の拡大断面図である。
本実施形態では背面加圧手段として、エアピストン32を使用している。複数本のエアピストン32は環状のヘッダ33により同じ方向に配置、接続され、マウスピース4に設けられているリム17と対向する位置に、そのリム17の周方向に沿って等間隔に配置されている。
【0129】
前記ヘッダ33には圧縮気体(圧縮空気)25が供給され、それにより各エアピストン32のピストンロッド34で振動板3をマウスピース4のリム17に密着させている。各ピストンロッド34の先端部には、振動板3への押圧を良好にするため円板状の押圧板35が取り付けられている。
【0130】
前記第3〜5実施形態では、振動板カバー5がバネ部材28、弾性Oリング30ならびにエアピストン32の保持部材を兼ねている。なお、第3、4実施形態では、弾性体(バネ部材28、弾性Oリング30)の圧縮状態を維持するために振動板カバー5は必要であるが、第5実施形態の場合は圧縮気体(圧縮空気)25の供給でリム17に対する振動板3の密着が図れるため、必ずしも振動板カバー5は必要ではない。
【0131】
(第6実施形態)
図15は、前記第1実施形態に係る音波発生装置を備えた第6実施形態に係る音波式スートブロワの断面図である。
【0132】
この音波式スートブロワ41は前記実施形態に係る音波発生装置から主に構成されており、例えばボイラ火炉42の炉壁43などに取り付けられる。炉壁43に形成された開口部44からボイラ火炉42内に臨むようにホーン8が配置されている。ホーン8から発振される音圧がボイラ建屋40側に洩れるのを防止するために、遮熱(断熱)を兼ねた防音ケース45内にホーン8が配置されている。
【0133】
音波発生装置本体1、振動板3、マウスピース4、振動板カバー5、ハウジング6、共鳴筒7などで構成される音波発生部は、前記防音ケース45のボイラ火炉42と反対側に設置されている音波発生部ケース46内に収納されている。
【0134】
前記防音ケース45ならびに音波発生部ケース46の外周には、遮熱(断熱)を兼ねた防音用のラギング47が設置されている。図に示すように供給系統(A)(配管)10ならびに供給系統(B)(配管)12は、音波発生部ケース46ならびにラギング47を貫通して、それぞれ音波発生装置本体1ならびにハウジング6に接続されている。
【0135】
この音波式スートブロワから増幅された音波をボイラ火炉42内に向けて発振させて、その高い音圧をもつ音波によって、伝熱管表面に付着、堆積した燃焼灰の除去および伝熱管への燃焼灰の付着を抑制するものである。
【0136】
発振周波数が炉内の気柱共振と同一の場合は、ボイラ火炉42内に気柱共振を励起し、定在波を形成させ、その定在波によってボイラ火炉42内の音圧はさらに高まるため、灰除去および灰の付着抑制力が強化される。
【0137】
(第7実施形態)
図15に示す音波式スートブロワの場合、共鳴筒7の長さが一定であるため発振される音波の発振周波数は一定である。そのため、ボイラ火炉42内のガス温度条件が前記発振周波数に合致したときは、炉内気柱共振が確立して炉内の音圧が高くなり、灰の除去能力あるいは付着抑制能力が高まる。
ところがボイラ火炉42内のガス温度条件が変化して炉内気柱共振が確立しない場合には、音圧が下がり、灰の除去能力あるいは付着抑制能力が減退する。このため、広範囲のボイラ運用条件において音波式スートブロワが有効に機能しないという難点がある。
【0138】
この第7実施形態は、広範囲のボイラ運用条件において有効に機能する音波式スートブロワを示すものである。図16および図17は本実施形態に係る音波式スートブロワを説明するためのもので、図16は共鳴筒の長さを長くした状態での音波式スートブロワの断面図、図17は共鳴筒の長さを短くした状態での音波式スートブロワの断面図である。
【0139】
本実施例において前記第6実施形態に係る音波式スートブロワと相違する主な点は、例えば図16に示すように共鳴筒7が内筒7aと外筒7bからなり、内筒7aが外筒7b内でスライド可能になっている点である。
【0140】
図16は共鳴筒7の実質的な長さが長くなった状態、図17は短くなった状態を示している。このように共鳴筒7の長さを変えることにより、共鳴筒7で発振周波数の波長を調整し、ホーン8により所望の音圧に増幅でき、ボイラ火炉42内に複数の気柱共振周波数を連続的に変化させた音波を発生できる。
【0141】
本実施形態の場合、共鳴筒7の長さの変化に伴い音波発生装置本体1ならびにハウジング6も移動するため、音波発生装置本体1ならびにハウジング6に接続されている供給系統(A)10ならびに供給系統(B)12はフレキシブルなホースで構成されている。
【0142】
図18は、振動板の背面加圧設定値を種々変えた音波発生装置において、共鳴筒の長さを変化させたときのストローク(共鳴筒の長さの変化量)に対する周波数特性を示す図である。同図に示すように振動板の背面加圧設定値が10KPa〜80KPaの8種類に分けて実験を行なった。
【0143】
この図から明らかなように、振動板の背面加圧設定値が特に50KPa以上にすることで、ストロークに対する周波数特性は1つの直線となるため、ストロークに対する周波数制御はより精度に行なうことができる。
【0144】
本実施形態では共鳴筒7の全体の形状が直管状になった場合を示したが、全体の形状がU字状の共鳴筒を用い、それの直管部分を内筒と外筒で構成するスライド構造にしたり、あるいは全体の形状が渦巻き状の共鳴筒を用い、その共鳴筒の端部に直管部分を設け、その直管部分を内筒と外筒で構成するスライド構造することも可能である。
このようにU字状あるいは渦巻き状の共鳴筒を用いることにより、音波式スートブロワの小型化が可能となる。
【0145】
(第8実施形態)
図19ならびに図20はボイラ装置における後部伝熱部での音波式スートブロワの配置例を示す図で、図19は本発明の第8実施形態に係る音波式スートブロワの配置例を示す図、図20は従来の音波式スートブロワの配置例を示す図である。
【0146】
これらの図において53はバーナ、54は一次再熱器、55は一次過熱器、56は煙道蒸発器、57は節炭器、58は蒸気式スートブロワ、59は実施形態に係る音波式スートブロワ、60は従来の音波式スートブロワ、61は燃焼排ガスである。これらの図に示すように蒸気式スートブロワ58ならびに音波式スートブロワ59(60)は、各熱交換器(一次再熱器54、一次過熱器55、煙道蒸発器56、節炭器57)と対応して配置されている。そして蒸気式スートブロワ58と音波式スートブロワ59(60)を併用することにより、蒸気式スートブロワ58の運用頻度を1/4〜1/10程度に低減することができる。
【0147】
ところが従来の音波式スートブロワ60を使用する場合には、図20に示すようにボイラ装置の片側に16台、ボイラ装置の両側では32台設置する必要があった。これに対して本発明に係る音波式スートブロワ59を使用する場合には、図19に示すようにボイラ装置の片側に8台、ボイラ装置の両側では16台設置すれば十分であり、音波式スートブロワの設置台数ならびにそれに使用する駆動用圧縮気体の使用量を従来のものに対して半分に減らすことができる。
【0148】
従来の音波式スートブロワの発振音圧には限りがあったため、例えば伝熱部の寸法が大きいボイラ装置あるいは伝熱管への付着力、堆積力の強い炭種を使用する場合などでは、音波式スートブロワからの音圧をさらに高める必要があり、そのためにボイラ装置の対向する両側の壁にそれぞれ音波式スートブロワを設置して、多くの音波式スートブロワを同一周波数にて同時に発振することにより、合成音圧を高め運用方法が採用されている。
【0149】
図21ならびに図22は音波式スートブロワの同時発振の運用例を示す図で、図21は本発明に係る音波式スートブロワの運用例を示す図、図22は従来の音波式スートブロワの運用例を示す図である。図21において○印は運用中の音波式スートブロワ59、黒丸印は停止中の音波式スートブロワ59、図22において□印は運用中の音波式スートブロワ60、黒四角印は停止中の音波式スートブロワ60をそれぞれ示している。なお、図21ならびに図22において音波式スートブロワ59(60)の配置は図19ならびに図20と同じである。
また、図23は本発明に係る音波式スートブロワ59(白の菱形印)と従来の音波式スートブロワ60(黒の菱形印)の同時運用台数と合成音圧の関係を示す特性図である。
【0150】
なお、このテストに使用した本発明に係る音波式スートブロワ59は、リム設定位置を−1.20mm、駆動用圧縮空気圧を0.3MPaに設定しており、音波式スートブロワ1台の発振音圧は153dBである。また、従来の音波式スートブロワ60は、リム設定位置を+0.65mm、駆動用圧縮空気圧を0.7MPaに設定しており、音波式スートブロワ1台の発振音圧は145dBである。
【0151】
図22は従来の音波式スートブロワ60をボイラ装置の片側で8台(ボイラ装置の両側で16台)同時に運用した例を示しているが、そのときの合成音圧は図23から明らかなように154dBである。
【0152】
これに対して本発明に係る音波式スートブロワ59を使用して前述とほぼ同じ合成音圧(156dB 図23参照)を得るためには、図21に示すようボイラ装置の片側で2台(ボイラ装置の両側で4台)同時運用すれば十分であり、音波式スートブロワの設置台数ならびにそれに使用する駆動用圧縮気体の使用量を極端に減らすことができる。
【0153】
なお、図23中に付した斜線領域X,Y,Zは、本発明に係る音波式スートブロワの1台運用での発振音圧の範囲を駆動用圧縮空気圧別に示したものである。前記斜線領域Xはリム設定位置が−0.60mm〜−1.40mmで駆動用圧縮空気圧が0.2MPaのものの発振音圧、前記斜線領域Yはリム設定位置が−0.60mm〜−1.40mmで駆動用圧縮空気圧が0.3MPaのものの発振音圧、前記斜線領域Zはリム設定位置が−0.60mm〜−1.40mmで駆動用圧縮空気圧が0.4MPaのものの発振音圧を示す。
【0154】
この斜線領域X,Y,Zからも明らかなように、本発明に係る音波式スートブロワ1台でも従来の音波式スートブロワの複数台同時運用で得られる合成音圧に匹敵する音圧が得られ、音波式スートブロワの設置数を極端に減らすことが可能である。
【0155】
(第9実施形態)
図24ならびに図25は脱硝装置での音波式スートブロワの配置例を示す図で、図24は本発明の第9実施形態に係る音波式スートブロワの配置例を示す図、図25は従来の音波式スートブロワの配置例を示す図である。これらの図において(a)は脱硝装置の概略平面図、(b)は脱硝装置の概略縦断面図である。
【0156】
ボイラ装置に付設される脱硝装置64には燃焼排ガス61の流れ方向に沿って複数段の触媒ブロック65が設置されているが、煤塵などを多く含んだ燃焼排ガス61が通過するため、触媒ブロック65上に多量の煤塵などが付着堆積して、脱硝機能が経時的に減退する。
【0157】
そのため従来は、図25に示すように各触媒ブロック65毎に音波式スートブロワ60を配置していた。これに対して本発明に係る音波式スートブロワ59は個々に高い発振音圧を得ることができるから、音波式スートブロワ59の設置個数を極端に減らすことができ、例えば図24に示すように2段の触媒ブロック65を設置した脱硝装置64の場合、4台の音波式スートブロワ59を設置すれば十分である。
【0158】
(第10実施形態)
図26は発電プラントにおける排ガス処理システムの系統図、図27はその排ガス処理システムに用いる本発明の第10実施形態に係るガス−ガスヒータの概略構成図である。
【0159】
図26に示すように、ボイラ装置71から排出された燃焼排ガスは脱硝装置72に導入され、燃焼排ガス中のNOxが除去された後、空気予熱器73においてボイラ装置71に供給される燃焼用空気と熱交換される。その後ガス−ガスヒータ熱回収器74に導入されて熱回収され、電気集塵器75で燃焼排ガス中の煤塵の大半が除去される。
【0160】
そして、燃焼排ガスは誘引ファン76により昇圧され、湿式脱硫装置77に導入されて燃焼排ガス中のSOxが除去される。この湿式脱硫装置77において飽和温度まで冷却された燃焼排ガスはガス−ガスヒータ再加熱器78により昇温され、誘引ファン79により昇圧されて煙突80から排出される。
【0161】
本発明の第10実施形態に係るガス−ガスヒータ81は図27に示すように、前記ガス−ガスヒータ熱回収器74のフィン付き伝熱管82と、前記ガス−ガスヒータ再加熱器78のフィン無しの伝熱管83ならびにフィン付き伝熱管84を連絡管85で連結し、熱媒体循環ポンプ86で熱媒体を循環させて、熱媒体の顕熱により前記空気予熱器73(図26参照)の出口燃焼排ガス61を冷却し(熱回収)、前記湿式脱硫装置77(図26参照)の出口燃焼排ガス61を昇温(再加熱)する熱交換装置である。
【0162】
このガス−ガスヒータ81では、低負荷時などに媒体温度が低くなり過ぎないように、またはボイラ起動時あるいはボイラ運転停止時の暖気目的で蒸気を加熱源とする熱媒体ヒータ87が、再加熱器78の上流側の連絡管85内に設置されている。
【0163】
また、前記連絡管85の内部には熱媒体としての水を満水状態で充填しており、運転中は熱媒体温度の上昇により熱媒体(水)88が膨張するため、それを吸収する目的で熱媒体タンク89が付設されている。
【0164】
さらに、熱回収器74の出口排ガス温度を制御するため、その熱回収器74をバイパスして再加熱器78の熱媒体出口から入口に戻る熱媒体バイパスライン90が設けられ、電気集塵器75の出口排ガス温度を計測する排ガス温度計81の検出信号により、電気集塵器75の出口排ガス温度が設定範囲内となるように、前記熱媒体バイパスライン90に設けられた流量調整弁92の開度を調整して、熱媒体による熱回収器74での熱回収量を制御している。
【0165】
図27に示すように、前記熱回収器74の排ガス流れ方向上流側には、本実施形態に係る音波式スートブロワ93が対向するように設置され、定期的あるいは随時に稼動されるようになっている。
【0166】
図28は、前記第1実施形態に係る音波発生装置と従来の音波発生装置において、リムに対する振動板の衝突速度を説明するための概略図で、横軸に時間(t)、縦軸に振動板の振幅範囲を示しており、0位置を中心にしてニュートラルから(+)側とニュートラルから(−)側に分かれている。
【0167】
図中の実線Oはリムが無い場合の当該部位における振動板の変位を表す曲線、点線Pはその実線Oの傾き角度、すなわち振動板の衝突速度を示す直線である。また範囲Qはリムに対する振動板の衝突速度が低下する範囲、範囲Rはリムに対する振動板の衝突速度が最大になる範囲(衝突速度が一定になる範囲)を示している。
【0168】
さらに範囲S1は本発明の音波発生装置においてリムの設定位置をニュートラルから(−)側に少しずらしたときの振動板の振幅範囲、範囲S2は本発明の音波発生装置においてリムの設定位置をニュートラルから(−)側に更にずらしたときの振動板の振幅範囲、範囲Tはリムの設定位置をニュートラルから(+)側に設定した従来の音波発生装置の振動板の振幅範囲を示している。また、範囲Uは本発明の音波発生装置において振動板の振幅が大きくて、音波発生装置の耐用寿命が長い、好ましい範囲を示している。
【0169】
範囲S1ならびに範囲S2と範囲Tを比較すると明らかなように、本発明の音波発生装置はリムの設定位置をニュートラルから(−)側に設定しているため、リムの設定位置をニュートラルから(+)側に設定した従来の音波発生装置よりもかなり振動板の振幅範囲が広くなっている。
【0170】
振動板の振幅の広い、狭いが発振音圧の大小に直接影響し、本発明の音波発生装置では発振音圧を従来のものよりも高くすることが可能である。そして振動板の静止時にシール性が保持できる限度内で、リムの設定位置をニュートラルから(−)側に設定する方が、有利である。それに加えて、リムの設定位置を範囲Uに示すようにリムに対する振動板の衝突速度が低下する範囲に設定すれば、振動板の振幅が大きくて、リムの磨耗も少なく、音波発生装置の耐用寿命が長くなり有利である。
【0171】
前記実施形態では石炭焚きボイラ装置の場合を説明したが、石炭の替わりにバイオマスなど他の燃料を使用するボイラ装置にも本発明は適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明に係る音波発生装置ならびに音波式スートブロワは、ボイラ装置の他に粉塵の堆積や液滴の滞留等による問題が生じ得るあらゆる産業機器類に適用することが可能である。
【0173】
また、圧縮気体の供給源としては、設置されるプラントによって、高圧空気や余剰窒素(例えば製鉄所など)が挙げられる。
【符号の説明】
【0174】
1:音波発生装置本体、2:駆動用圧縮気体、2A:排気気体、3:振動板、4:マウスピース、5:振動板カバー、6:ハウジング、7:共鳴筒、7a:共鳴筒の内筒、7b:共鳴筒の外筒、8:ホーン、9:圧縮気体供給源、10:供給系統(A)、11:調節弁(A)、12:供給系統(B)、13:調節弁(B)、14:導入口、15:周壁、16:保持部、17:リム、18:音波発生装置本体の軸方向、19:蓄圧器、20:背面空洞部、21:蓄圧気室、22:貫通孔、23:押圧部、24a,24b:Oリング、25:背面加圧用圧縮気体、26:底面、27:接合部、28:バネ部材、29:バネホルダ、30:弾性Oリング、31:接着剤、32:エアピストン、33:ヘッダ、34:ピストンロッド、35:押圧板、40:ボイラ建屋、41:音波式スートブロワ、42:ボイラ火炉、43:炉壁、44:開口部、45:防音ケース、46:発波発振ケース、47:ラギング、54:一次再熱器、55:一次過熱器、56:煙道蒸発器、57:節炭器、58:蒸気式スートブロワ、61:燃焼排ガス、62:ガス温度センサ、63:制御部、64:脱硝装置、65:触媒ブロック、71:ボイラ装置、72:脱硝装置、74:ガス−ガスヒータ熱回収器、78:ガス−ガスヒータ再加熱器、81:ガス−ガスヒータ、82〜84:伝熱管、85:連絡管、86:熱媒体循環ポンプ、87:熱媒体ヒータ、88:熱媒体、89:熱媒体タンク、90:熱媒体バイパスライン、91:排ガス温度計、92:流量調整弁、93:音波式スートブロワ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板と、
その振動板の周縁部を保持する保持部と、
前記保持部の径方向内側において前記振動板を押し当てるリムを有するマウスピースと、
前記振動板の前記リムに接触する正面側でかつ前記マウスピースの径方向外側に設けられた蓄圧器と、
その蓄圧器に圧縮気体を供給する圧縮気体供給系統と、
前記マウスピースと共鳴筒とホーンによって形成される一連の音響導管を備え、
前記振動板はその周縁部が前記保持部に保持されており、
前記振動板を前記リムへ押し当てる力に抗して前記蓄圧器から圧縮気体がマウスピースの内側に流入することで振動板の動作が開始され、その振動板の駆動により発生した疎密波を前記音響導管を通じて増幅し、前記ホーンの開口部から音波として放射する音波発生装置において、
前記振動板の背面側から外力により当該振動板を前記マウスピースのリムへ押し当てる手段を設けたことを特徴とする音波発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の音波発生装置において、
前記押し当て手段により前記振動板をマウスピースのリムへ押し当てた状態での、前記振動板の正面と前記保持部との前記マウスピース軸方向沿いの距離で表される振動板の撓み量が、振動板の正面側0.0mm〜1.4mmの範囲内に設定されていることを特徴とする音波発生装置。
【請求項3】
請求項2に記載の音波発生装置において、
前記振動板の撓み量が、振動板の正面側0.6mm〜1.4mmの範囲内に設定されていることを特徴とする音波発生装置。
【請求項4】
請求項1に記載の音波発生装置において、
前記マウスピースのリムと、これに接触する前記振動板の正面の位置関係を、
前記押し当て手段により振動板を前記マウスピースのリムへ押し当てない状態において、
前記マウスピースのリムと、これと対向する前記振動板の正面の間に、前記圧縮気体が流れ得る程度の隙間が形成されるような位置関係になっていることを特徴とする音波発生装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1項に記載の音波発生装置において、
前記駆動用圧縮気体の圧力が0.2MPa〜0.7MPaの範囲内に設定されていることを特徴とする音波発生装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の音波発生装置において、
前記押し当て手段が、前記振動板の背面のほぼ全体を背面加圧用圧縮気体で押し付ける構成になっていることを特徴とする音波発生装置。
【請求項7】
請求項6に記載の音波発生装置において、
前記押し当て手段が、前記振動板の背面に形成された空洞部と通じる背面加圧用の蓄圧気室と、その蓄圧気室に背面加圧用圧縮気体を供給する供給系統を有することを特徴とする音波発生装置。
【請求項8】
請求項7に記載の音波発生装置において、
前記空洞部と蓄圧気室の間に、空洞部と蓄圧気室を連通する貫通部が形成された振動板カバーが介在されていることを特徴とする音波発生装置。
【請求項9】
請求項7に記載の音波発生装置において、
前記背面加圧用圧縮気体の供給源が、前記駆動用圧縮気体と同じの供給源であって、
前記駆動用の蓄圧器と前記背面加圧用の蓄圧気室の圧力を調整する圧力調整手段が圧縮気体の供給系統に設けられていることを特徴とする音波発生装置。
【請求項10】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の音波発生装置において、
前記振動板の背面に空洞部を形成するとともに、その空洞部と大気を連通する貫通部が形成された振動板カバーが、音波発生装置本体の振動板背面側に当該振動板を覆うように取り付けられ、
前記押し当て手段として、前記振動板と振動板カバーの間に、複数個の弾性体を圧縮状態で前記リムの周方向に沿って介在したことを特徴とする音波発生装置。
【請求項11】
請求項10に記載の音波発生装置において、
前記弾性体がバネ部材あるいは弾性リングであることを特徴とする音波発生装置。
【請求項12】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の音波発生装置において、
前記振動板の背面に空洞部を形成するとともに、その空洞部と大気を連通する貫通部が形成された振動板カバーが、音波発生装置本体の振動板背面側に当該振動板を覆うように取り付けられ、
前記押し当て手段として、前記振動板の背面側に複数個の連動するピストンを前記マウスピースのリムの周方向に沿って配置したことを特徴とする音波発生装置。
【請求項13】
請求項1に記載の音波発生装置において、
前記共鳴筒の長さが変更可能になっていることを特徴とする音波発生装置。
【請求項14】
請求項13に記載の音波発生装置において、
前記押し当て手段が、前記振動板の背面のほぼ全体を圧縮気体で加圧する圧縮気体供給手段を有し、その圧縮気体の圧力が50KPa〜80KPaの範囲内に設定されていることを特徴とする音波発生装置。
【請求項15】
請求項1に記載の音波発生装置において、
前記マウスピースが音波発生装置本体に対して交換可能に取り付けられていることを特徴とする音波発生装置。
【請求項16】
前記請求項1ないし15のいずれか1項に記載の音波発生装置の前記ホーンが、表面に付着物が付き易い被処理対象物を配置している空間部側に向くように配置したことを特徴とする音波式付着物除去・抑制装置。
【請求項17】
前記請求項1ないし15のいずれか1項に記載の音波発生装置の前記ホーンが、表面に付着物が付き易い被処理対象物を配置している空間部側に向くように配置したことを特徴とする音波式スートブロワ装置。
【請求項18】
前記請求項17に記載の音波式スートブロワ装置を設置したことを特徴とする熱交換装置。
【請求項19】
前記請求項17に記載の音波式スートブロワ装置と、前記被処理対象物に対して高圧水蒸気を噴出して付着物を除去する水蒸気式スートブロワ装置を併設したことを特徴とする熱交換装置。
【請求項20】
前記請求項18または19に記載の熱交換装置がボイラ装置であることを特徴とする熱交換装置。
【請求項21】
ガス処理用の触媒を備えた排ガス処理装置において、
前記請求項1ないし15のいずれか1項に記載の音波発生装置の前記ホーンが、前記触媒を配置している空間部側に向くように配置したことを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項22】
表面に付着物が付き易い被処理対象物を備えた産業機器において、
前記請求項1ないし15のいずれか1項に記載の音波発生装置の前記ホーンが、前記被処理対象物を配置している空間部側に向くように配置したことを特徴とする産業機器。
【請求項23】
前記請求項1ないし15のいずれか1項に記載の音波発生装置を複数台設置して、その複数台の音波発生装置から同時に音波を発生することを特徴とする音波発生装置の運用方法。
【請求項24】
前記請求項1ないし15のいずれか1項に記載の音波発生装置を音波式スートブロワ装置として複数台設置して、その複数台の音波式スートブロワ装置から同時に音波を発生することを特徴とする熱交換装置の運用方法。
【請求項1】
振動板と、
その振動板の周縁部を保持する保持部と、
前記保持部の径方向内側において前記振動板を押し当てるリムを有するマウスピースと、
前記振動板の前記リムに接触する正面側でかつ前記マウスピースの径方向外側に設けられた蓄圧器と、
その蓄圧器に圧縮気体を供給する圧縮気体供給系統と、
前記マウスピースと共鳴筒とホーンによって形成される一連の音響導管を備え、
前記振動板はその周縁部が前記保持部に保持されており、
前記振動板を前記リムへ押し当てる力に抗して前記蓄圧器から圧縮気体がマウスピースの内側に流入することで振動板の動作が開始され、その振動板の駆動により発生した疎密波を前記音響導管を通じて増幅し、前記ホーンの開口部から音波として放射する音波発生装置において、
前記振動板の背面側から外力により当該振動板を前記マウスピースのリムへ押し当てる手段を設けたことを特徴とする音波発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の音波発生装置において、
前記押し当て手段により前記振動板をマウスピースのリムへ押し当てた状態での、前記振動板の正面と前記保持部との前記マウスピース軸方向沿いの距離で表される振動板の撓み量が、振動板の正面側0.0mm〜1.4mmの範囲内に設定されていることを特徴とする音波発生装置。
【請求項3】
請求項2に記載の音波発生装置において、
前記振動板の撓み量が、振動板の正面側0.6mm〜1.4mmの範囲内に設定されていることを特徴とする音波発生装置。
【請求項4】
請求項1に記載の音波発生装置において、
前記マウスピースのリムと、これに接触する前記振動板の正面の位置関係を、
前記押し当て手段により振動板を前記マウスピースのリムへ押し当てない状態において、
前記マウスピースのリムと、これと対向する前記振動板の正面の間に、前記圧縮気体が流れ得る程度の隙間が形成されるような位置関係になっていることを特徴とする音波発生装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1項に記載の音波発生装置において、
前記駆動用圧縮気体の圧力が0.2MPa〜0.7MPaの範囲内に設定されていることを特徴とする音波発生装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の音波発生装置において、
前記押し当て手段が、前記振動板の背面のほぼ全体を背面加圧用圧縮気体で押し付ける構成になっていることを特徴とする音波発生装置。
【請求項7】
請求項6に記載の音波発生装置において、
前記押し当て手段が、前記振動板の背面に形成された空洞部と通じる背面加圧用の蓄圧気室と、その蓄圧気室に背面加圧用圧縮気体を供給する供給系統を有することを特徴とする音波発生装置。
【請求項8】
請求項7に記載の音波発生装置において、
前記空洞部と蓄圧気室の間に、空洞部と蓄圧気室を連通する貫通部が形成された振動板カバーが介在されていることを特徴とする音波発生装置。
【請求項9】
請求項7に記載の音波発生装置において、
前記背面加圧用圧縮気体の供給源が、前記駆動用圧縮気体と同じの供給源であって、
前記駆動用の蓄圧器と前記背面加圧用の蓄圧気室の圧力を調整する圧力調整手段が圧縮気体の供給系統に設けられていることを特徴とする音波発生装置。
【請求項10】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の音波発生装置において、
前記振動板の背面に空洞部を形成するとともに、その空洞部と大気を連通する貫通部が形成された振動板カバーが、音波発生装置本体の振動板背面側に当該振動板を覆うように取り付けられ、
前記押し当て手段として、前記振動板と振動板カバーの間に、複数個の弾性体を圧縮状態で前記リムの周方向に沿って介在したことを特徴とする音波発生装置。
【請求項11】
請求項10に記載の音波発生装置において、
前記弾性体がバネ部材あるいは弾性リングであることを特徴とする音波発生装置。
【請求項12】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の音波発生装置において、
前記振動板の背面に空洞部を形成するとともに、その空洞部と大気を連通する貫通部が形成された振動板カバーが、音波発生装置本体の振動板背面側に当該振動板を覆うように取り付けられ、
前記押し当て手段として、前記振動板の背面側に複数個の連動するピストンを前記マウスピースのリムの周方向に沿って配置したことを特徴とする音波発生装置。
【請求項13】
請求項1に記載の音波発生装置において、
前記共鳴筒の長さが変更可能になっていることを特徴とする音波発生装置。
【請求項14】
請求項13に記載の音波発生装置において、
前記押し当て手段が、前記振動板の背面のほぼ全体を圧縮気体で加圧する圧縮気体供給手段を有し、その圧縮気体の圧力が50KPa〜80KPaの範囲内に設定されていることを特徴とする音波発生装置。
【請求項15】
請求項1に記載の音波発生装置において、
前記マウスピースが音波発生装置本体に対して交換可能に取り付けられていることを特徴とする音波発生装置。
【請求項16】
前記請求項1ないし15のいずれか1項に記載の音波発生装置の前記ホーンが、表面に付着物が付き易い被処理対象物を配置している空間部側に向くように配置したことを特徴とする音波式付着物除去・抑制装置。
【請求項17】
前記請求項1ないし15のいずれか1項に記載の音波発生装置の前記ホーンが、表面に付着物が付き易い被処理対象物を配置している空間部側に向くように配置したことを特徴とする音波式スートブロワ装置。
【請求項18】
前記請求項17に記載の音波式スートブロワ装置を設置したことを特徴とする熱交換装置。
【請求項19】
前記請求項17に記載の音波式スートブロワ装置と、前記被処理対象物に対して高圧水蒸気を噴出して付着物を除去する水蒸気式スートブロワ装置を併設したことを特徴とする熱交換装置。
【請求項20】
前記請求項18または19に記載の熱交換装置がボイラ装置であることを特徴とする熱交換装置。
【請求項21】
ガス処理用の触媒を備えた排ガス処理装置において、
前記請求項1ないし15のいずれか1項に記載の音波発生装置の前記ホーンが、前記触媒を配置している空間部側に向くように配置したことを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項22】
表面に付着物が付き易い被処理対象物を備えた産業機器において、
前記請求項1ないし15のいずれか1項に記載の音波発生装置の前記ホーンが、前記被処理対象物を配置している空間部側に向くように配置したことを特徴とする産業機器。
【請求項23】
前記請求項1ないし15のいずれか1項に記載の音波発生装置を複数台設置して、その複数台の音波発生装置から同時に音波を発生することを特徴とする音波発生装置の運用方法。
【請求項24】
前記請求項1ないし15のいずれか1項に記載の音波発生装置を音波式スートブロワ装置として複数台設置して、その複数台の音波式スートブロワ装置から同時に音波を発生することを特徴とする熱交換装置の運用方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2012−226010(P2012−226010A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91357(P2011−91357)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
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