説明

音響インピーダンスを利用した空間電荷分布の校正方法およびその校正方法を用いた空間電荷分布測定装置

【課題】空間電荷分布の測定と同時に音響インピーダンスを考慮した信号補正をリアルタイムに行って、誘電体材料中で音波の減衰が大きい試料や音響的性質の異なる誘電体試料を重ねた多層誘電体においても正確な空間電荷分布を得る。
【解決手段】音響インピーダンス顕微鏡を用いて、試料をセットしていない状態で、圧電素子と接続された第1電極界面で反射する音波の大きさを測定し、第2電極を前記第1電極上にセットし反射する音波を測定し、試料を第1電極上にセットし音波の反射波形を測定するステップと、各種音響インピーダンスを算出し、試料の厚さ、各種音響インピーダンスに基づいて音波の減衰率αを算出するステップと、空間電荷分布測定装置に試料をセットし空間電荷分布の測定信号P(t)を測定し、試料厚さdおよび減衰率αに基づいて、測定信号P(t)が補正された空間電荷分布P(z)を求める補正ステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体あるいは絶縁材料の空間電荷分布をパルス静電応力(PEA)法によって測定する方法に関し、より詳細には、音響インピーダンスを利用した空間電荷分布校正方法およびその校正方法を用いた空間電荷分布測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パルス静電応力(PEA)法は、電気電子機器の絶縁材料等の性能、信頼性評価に広く利用されている。PEA法は、電極にはさまれた試料にパルス電圧を印加することによって、試料内部に存在する電荷に電気的力を働かせて、音波を発生させ、接地電極側(陰極)背面に取り付けた圧電素子により、その到達する音波の時間変化を計測し、信号処理することで試料内部の電荷分布を測定する。この方法では、圧電素子の近い位置で発生した音波から記録できるために電荷の分布を測定できる。
【0003】
しかしながら、このPEA法は原理上の問題がある。例えば、試料が柔らかく音波の減衰が起こる場合には、空間電荷の情報を含む音波が、試料内部で減衰してしまい空間電荷分布を正確に測定できない。特に、圧電素子から遠い位置の信号が試料内部を伝搬する途中で減衰してしまい、空間電荷を小さく評価することになる。このような音波の減衰は、位置分解能を向上させるためにパルス幅を狭くするなど、測定信号の周波数を上げると大きくその影響を受けることがわかっている。
【0004】
また、上部電極(陽極)の音響的性質と測定試料の音響インピーダンスが異なる場合には,上部電極界面で発生する音波が影響を受ける。また、音響的性質(音響インピーダンス)が異なる2層試料の空間電荷分布を測定する場合には,2つの試料の誘電率が異なることでパルス電界が試料間で異なり、かつ、界面での音波の反射と透過が音響インピーダンスの影響をうけるなど、測定する試料や上部電極の音響的性質によって測定結果に大きな誤差が起こる。すなわち、誘電体材料中で音波の減衰が大きい試料や音響的性質(音響インピーダンス等)の異なる誘電体試料を重ねた多層誘電体の空間電荷測定では、音波が減衰したり試料界面で反射したりするため正確な測定ができない。特に位置分解能を高くするとその影響は大きくなる。
【0005】
このような問題に対し、PEA法の空間電荷測定関係者は、上記の点を認識していたが改善することができなかった。ただし、空間電荷分布測定装置の研究者らによって、空間電荷分布の測定波形が音響特性に影響を受けていると仮定し信号補正を行うことが提案されていた(非特許文献1、2)。しかし,この信号処理方法は,印加電圧が低い場合に空間電荷分布の測定波形は、界面のみに存在し、内部に電荷が存在しないと仮定した場合の信号処理方法であり、上部電極と試料の音響インピーダンスの違いなどの考慮はなされてないため不完全なものであると考えられる。また,試料が2層となった場合には、この方法での信号補正は困難である。すなわち、空間電荷分布測定においては、音響的性質の異なる多層試料を測定する場合の補正(校正)が実用上重要であり、望まれている。
【0006】
また、研究者らによって、パルス静電応力法を用いた従来の空間電荷分布測定装置に音響インピーダンス顕微鏡(AIM:Acoustic Impedance Microscope)の機能を組み合わせることで測定試料の音響特性を空間電荷分布測定に全く影響させないで測定することが提案され(非特許文献3)、このPEA法とAIMを組み合わせた装置も提案されている(非特許文献4)。
【0007】
また、通常、PEA法では試料と上部電極の間に半導電電極を挟むことにより、試料−半導電電極間の音響インピーダンスの整合がとられている。一方、音波の発生位置が下部電極から離れるほど減衰が大きくなるため、それを補正する種々の方法が考案されている。補正の際、上部電極と下部電極の信号比から試料内の減衰定数が見積もられるが、これは上記した試料と半導電電極において音響的な整合がとれていることを前提としており、両者の音響インピーダンスの差が大きいほど補正において誤差が大きくなる。したがって、より正確な補正のためには半導電電極や試料の音響インピーダンスを正確に把握する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】田村光一,李英,田中康寛,高田達雄,“パルス静電応力法による低密度ポリエチレンの音響減衰と分散の測定”,電気学会論文誌A,115巻4号,pp.334−348(1995)
【非特許文献2】田村光一,李英,田中康寛,高田達雄,“パルス静電応力法における圧力波信号の補正処理”,電気学会論文誌A,115巻5号,pp.418−422(1995)
【非特許文献3】李哲奎,村上義信,穂積 直裕,長尾雅行,小林和人,西條芳文,田中直彦,大槻茂雄,「生体組織用超音波顕微鏡における参照信号の自動抽出による高精度化」,電気学会論文誌A,Vol.125,No2,pp145−152(2005)
【非特許文献4】布野竜二,福間眞澄,長尾雅行,村上義信,穂積直裕「誘電体材料の空間電荷分布と試料厚さの同時測定」,電気学会研究会資料,誘電・絶縁材料研究会,豊橋技術科学大学,ベンチャービジネスラボラトリー,DEI−10−22,PP.25−30(2010.1.25)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、空間電荷分布の測定と同時に音響インピーダンスを考慮した信号補正をリアルタイムに行って、誘電体材料中で音波の減衰が大きい試料や音響的性質(音響インピーダンス等)の異なる誘電体試料を重ねた多層誘電体においても精度の高い空間電荷分布を得ることが可能な音響インピーダンスを利用した空間電荷分布の校正方法およびその校正方法を用いた空間電荷分布測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、音響インピーダンスを利用した空間電荷分布の校正方法であって、
試料の厚さdを測定する第1前処理ステップと、
試料の誘電率εを測定する第2前処理ステップと、
音響インピーダンス顕微鏡を用いて、試料をセットしていない状態で、圧電素子と接続された第1電極界面で反射する音波の大きさ(P)を測定する第1音波測定ステップと、
第2電極が半導電部材を用いる場合に、当該第2電極を前記第1電極上にセットし、音響インピーダンス顕微鏡で反射する音波(半導電部材のP’)を測定する第2音波測定ステップと、
試料を第1電極上にセットし、音響インピーダンス顕微鏡で音波の反射波形(試料のP’)を測定する第3音波測定ステップと、
前記第1、2,3の音波測定ステップの測定結果に基づいて、第1電極の音響インピーダンス(Zle)、試料の音響インピーダンス(Z)、前記半導電部材の音響インピーダンス(Zue)を算出するZ算出ステップと、
前記試料の厚さd、前記第1電極の音響インピーダンス(Zle)、前記試料の音響インピーダンス(Z)、前記半導電部材の音響インピーダンス(Zue)に基づいて、音波の減衰率αを算出する減衰率演算ステップと、
パルス静電応力法を用いた空間電荷分布測定装置に前記試料をセットし、圧電素子から空間電荷分布の測定信号P(t)を測定する空間電荷分布測定ステップと、
前記第1、第2前処理ステップで得られた前記試料厚さdと、前記減衰率演算ステップで算出された減衰率αに基づいて、前記空間電荷分布測定ステップで測定された前記測定信号P(t)を補正し、補正された空間電荷分布P(z)を求める補正ステップと、を含み、
前記補正ステップは、下記式(1)において、
【数3】

前記空間電荷分布P(j)を、前記測定信号P(i)と伝達関数g(i,j)とから数値解析をして求めることを特徴とする。
【0011】
この構成によって、空間電荷分布の測定と同時に音響インピーダンスを考慮した信号補正をリアルタイムに行うことができ、誘電体材料中で音波の減衰が大きい試料において、減衰を考慮した空間電荷分布を求めることができる。また、音響的性質(音響インピーダンス等)の異なる誘電体試料を重ねた多層誘電体においても正確な空間電荷分布を得ることが可能になる。
【0012】
上記式(1)は、以下の式(1.1)、(1.2)に従って導きだされる。
【数4】

時間をi,試料中の位置をjとして離散系で表すと下記式(1.2)の関係が成立し、
【数5】


ここで,g(i−j)を示す行列をg(i,j)とすると上記式(1.2)は、上記式(1)の関係が成立する。上記式(1)において、g(i,j)は,試料中の位置z(=jΔz)での伝達関数波形 (時間変化t=iΔt)である。式(1)の連立1次方程式では,測定信号の時間変化P(t)と従来の空間電荷分布測定におけるインパルス測定波形を音響特性測定の測定結果によって補正し,g(z,t)を求める。そして,未知となる空間電荷分布P(z)を例えばヤコビ法または反復法などの数値解析の手法により求める。この方法は疑似コンボルーション処理と呼ばれる方法である。
【0013】
上記式(1.1)を離散系に変換すると、式(1.2)になり、すなわち、測定信号P(t)をΔt秒ごとに離散化し、空間電荷分布をP(z)として、Δzごとに離散化した場合を考えると、インパルス応答g(t)は,g(t,z)として考えると式(1.2)は,擬似的に上記式(1)となる。つまり,式(1)のP(j)を、p(i)とg(i,j)から数値解析(上記ヤコビ法、反復法)等を利用して求めると,空間電荷信号から空間電荷分布を算出するために用いてきた従来のDFT(高速フーリエ変換)を使用しないまでもデコンボルーション処理を行うことが可能になる。
【0014】
上記式(1)も模式的にあらわすと図1のようになる。図1は、伝達関数g(t)をΔzだけずらして配列を作成することで,g(t,z)を作成して,測定した信号Po(t)を用いて,空間電荷分布P(t)を求めることになる。すなわちDFTを用いないデコンボリューション処理である。試料内部で音波の振幅が伝搬する距離に応じて減衰する現象が予測できる場合には、伝達関数g(t,z)をz変更することで音波の減衰による空間電荷を補正しながらデコンボルーション処理を行うことができる。
【0015】
例えば、上記発明において、前記試料中の厚さ方向の位置をz、減衰率をαとしたときに、前記伝達関数g(t,z)の振幅がEXP−αzに基づいて減衰する。これは、試料中で厚さ方向に位置zに従って減衰率αで減衰するとして、伝達関数g(z,t)がこの減衰の影響を受けて、P(z)=P−αzに従うことを意味する。この式に従って,減衰率αで,減衰するとすれば,図1のg(z,t)の伝達関数が減衰の影響を受け、図1の伝達関数g(z,t)は,図2のように,伝達関数g(z,t)の振幅e−αzを減衰させる。この図2で示す連立一次方程式を解き空間電荷分布P(z)を求めると結果的に減衰を補正することになる。
【0016】
また、上記発明において、前記第1、第2、第3音波測定ステップの測定結果から、分散βを算出する分散演算ステップをさらに含み、
前記試料中の厚さ方向の位置をz、前記減衰率をα、前記分散をβとしたときに、前記伝達関数g(t,z)の振幅がEXP−αz−jβに基づいて減衰する。
【0017】
これによって、減衰に加えて分散を考慮できる。すなわち、試料中で厚さ方向に位置zに従って減衰率αで減衰し、および分散βで分散するとして、伝達関数g(z,t)がこの減衰および分散の影響を受けて、P(z)=P−αz−jβに従うことを意味する。つまり、音波が減衰する場合の他に,分散が起こる場合には,この式を用いて,伝達関数g(z,t)の伝搬による波形変形を同様に考慮することで,分散の補正も可能となる。分散βは具体的に以下の手順で求めることができる。音響インピーダンス顕微鏡(AIM)のAIM信号から求める。入射波の波形をFFT(高速フーリエ変換)して、周波数成分を求める。試料を経由して、上部電極がないときの信号をFFTして周波数成分を求める。FFTすると、f:周波数,位置を入射波をz=0として、周波数スペクトルP(f,0):反射波をP(f,2d)として求める。また、この時の各スペクトルの位相Φ(f,0)、Φ(f,2d)を求める。分散β(f)=1/2d*(Φ(f,2d)−Φ(f,0))を算出して求める。dは試料の厚みである。
【0018】
また、上記発明において、前記試料が2層の場合に、界面での音波の反射と透過が前記伝達関数g(t,z)に含まれる。すなわち2層試料の場合には,界面での音波の反射と透過を伝達関数に考慮することで,その補正も可能になる。これによって、音響的性質(音響インピーダンス等)の異なる誘電体試料を重ねた多層誘電体においても正確な空間電荷分布を得ることが可能になる。
【0019】
また、上記発明において、前記第2電極の音響インピーダンスZと前記試料の音響インピーダンスZとが異なる場合においても、前記伝達関数g(t,z)で補正できる。
【0020】
また、他の発明は、上記の空間電荷分布の校正方法に好適に用いることができる空間電荷分布測定装置であって、
試料の一方に接する第1電極と、試料の他方に接する第2電極と、前記第2電極から前記試料へパルス電圧を印加するための第1パルス発生装置PG1と、前記パルス発生装置PG1のパルス電圧の印加によって生じた音波を検出する、前記第1電極に接続された圧電素子と、前記圧電素子からの測定信号P(t)を記録する信号波形記録部と、前記信号波形記録部で記録された測定信号P(t)に基づいて、空間電荷分布P(z)を演算する情報処理部と、を有する空間電荷分布測定装置であって、
前記試料の厚さd、前記試料の音響インピーダンス(Z)、前記第1電極の音響インピーダンス(ZAl)、第2電極に用いられる半導電材料の音響インピーダンス(Zue)を測定するために、前記第1電極からパルス電圧を印加するための第2パルス発生装置PS2と、
音響インピーダンス顕微鏡用の受動素子回路とをさらに有し、
前記情報処理部が、
第1電極の音響インピーダンス(Zle)、試料の音響インピーダンス(Z)、前記半導電部材の音響インピーダンス(Zue)を算出するZ算出部と、
前記試料の厚さd、前記第1電極の音響インピーダンス(Zle)、前記試料の音響インピーダンス(Z)、前記半導電部材の音響インピーダンス(Zue)に基づいて、音波の減衰率αを算出する減衰率演算部と、
前記試料厚さdと前記減衰率αに基づいて、前記測定信号P(t)を補正し、補正された空間電荷分布P(z)を求める補正処理部を有し、
前記補正処理部は、下記式(1)において、
【数6】

前記空間電荷分布P(j)を、前記測定信号P(i)と伝達関数g(i,j)とから数値解析をして求めることを特徴とする。
【0021】
このように空間電荷分布測定装置に音響インピーダンス顕微鏡の機能を組み合わせることによって、空間電荷分布の測定と同時に音響インピーダンスを考慮した信号補正をリアルタイムに行うことができ、誘電体材料中で音波の減衰が大きい試料において、減衰を考慮した空間電荷分布を求めることができる。また、音響的性質(音響インピーダンス等)の異なる誘電体試料を重ねた多層誘電体においても正確な空間電荷分布を得ることが可能になる。
【0022】
また、上記発明において、前記補正処理部は、前記試料中の厚さ方向の位置をz、前記減衰率をαとしたときに、前記伝達関数g(t,z)の振幅をEXP−αzに基づいて減衰するとして当該伝達関数g(t,z)を定める。
【0023】
また、上記発明において、前記情報処理部は、試料および上部電極の音響インピーダンスから、分散βを算出する分散演算部をさらに有し、
前記補正処理部は、前記試料中の厚さ方向の位置をz、前記減衰率をα、前記分散をβとしたときに、前記伝達関数g(t,z)の振幅をEXP−αz−jβに基づいて減衰するとして当該伝達関数g(t,z)を定める。分散βの算出方法は上記と同様である。
【0024】
また、上記発明において、前記試料が2層の場合に、界面での音波の反射と透過が前記伝達関数g(t,z)に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】式(1)の伝達関数を模式的に表現した図
【図2】図1のg(z,t)の伝達関数が減衰の影響を受けたことを示した図
【図3A】本実施形態の空間電荷分布測定装置の概念図
【図3B】本実施形態の空間電荷分布測定装置の外観を示す図
【図4】音響インピーダンス測定を説明するための図
【図5】本実施形態の空間電荷分布の校正方法を示すフローチャート
【図6】音波の反射波形の一例を示す図
【図7】音波の反射波形の一例を示す図
【図8】従来手法で求めた空間電荷分布の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0026】
(空間電荷分布測定装置)
図3A、3Bは、音響インピーダンス顕微鏡を組み込んだ空間電荷分布測定装置の概念図と外観図である。空間電荷分布測定装置1は、試料50の一方に接する下部電極11(第1電極に相当する)と、試料50の他方に接する上部電極12(第2電極に相当する)と、前記上部電極12から前記試料50へパルス電圧を印加するための第1パルス発生装置PG1と、前記第1パルス発生装置PG1のパルス電圧の印加によって生じた音波を検出する、前記下部電極11に接続された圧電素子14(PVDF)と、前記圧電素子14からの測定信号P(t)を記録するデジタルオシロスコープ18(信号波形記録部に相当する)と、前記デジタルオシロスコープ18で記録された測定信号P(t)に基づいて、空間電荷分布P(z)を演算するコンピュータ19(情報処理部に相当する)とを有する。
【0027】
本実施形態では、下部電極11をアルミ材料で構成する。また、第1パルス発生装置PG1の他に直流印加電圧電源Hを用い、パルス電圧を直流印加電圧0〜10kVに重畳して行う。測定信号は、デジタルオシロスコープ18で記録され、必要に応じて平均化処理される。上部電極12には試料50と接する面に半導電シート122が設けられている。また、試料両表面には、試料と両電極の音響的コンタクトと高電圧印加による沿面放電を防止する目的でシリコンオイル13を塗布してある。なお、符号121は、上部電極12における高電圧をシールドするためのガードケースである。符号15は、圧電素子14を収納する下部電極11内部をシールドするケースである。
【0028】
また、試料50からの測定信号は、必要に応じて増幅器17で増幅されてデジタルオシロスコープ18へ入力される。デジタルオシロスコープ18で記録された信号波形は、これと接続されたコンピュータ19へ入力され、デコンボリューション処理が行われる。図3Aの測定波形は、本発明による補正をしない状態のもの(before Calibration:実線)と本発明の補正をした場合のもの(after Calibration:破線)を概念的に示している。
【0029】
本実施形態の空間電荷分布測定装置1には、さらに音響インピーダンス顕微鏡の機能が組み込まれており、前記試料50の厚さd、前記試料50の音響インピーダンスZ、前記下部電極11と前記上部電極12の音響インピーダンスZAl、Zueのそれぞれを測定するために、前記下部電極11からパルス電圧を印加するための第2パルス発生装置PS2と、音響インピーダンス顕微鏡用のダイオードD1、D2、D3、D4、抵抗R1、コンデンサC1を有する受動素子回路とを有する。音響インピーダンスを測定する場合に、下部電極11のみの状態で、試料50をセットした状態で、あるいは試料50および上部電極12(半導電シート122含む)をセットした状態で第2パルス発生装置PG2から圧電素子14へ所定のパルス電圧を印加して音波を発生させ、それぞれにおける反射信号を圧電素子14により検出し、上述と同様にデジタルオシロスコープ18で記録する。測定された各種音響インピーダンスZは、減衰率αの算出に用いられる。
【0030】
例えば、圧電素子14にパルス発生装置PG2からパルス電圧(幅10ns、高さ2V,繰り返し周波数200Hz)を印加すると、パルス電圧は、ダイオードD1を通過し、抵抗R1とダイオードD4の直列回路に印加される。このパルス電圧は並列に接続されるコンデンサC1と圧電素子14の直列回路に印加される。パルス電圧が印加されることによって音波が発生する。発生した音波は、下部電極11を通過し測定試料、上部電極12に伝搬する。伝搬する過程で、試料、電極界面で反射した音波は、再び圧電素子14へ戻る。図4(a)は圧電素子で発生した音波の伝搬を示す。図4中の記号Pは音波の入射波、Pは下部電極上面(空気との界面)での反射波、P’は下部電極11と1層目試料50との界面での反射波、P”は1層目試料50と半導電シート122(もしくは2層目試料)との界面での反射波を示す。ZAl、Zs1、Zs2は、それぞれ、下部電極11(アルミ材料)、試料50、半導電シート122(若しくは2層目の試料52)の音響インピーダンスを示す。圧電素子14で発生した音波は、下部電極11、試料50、半導電シート122と順に伝搬する過程でそれぞれ反射と透過を繰り返す。ここで、試料の音響測定に関係する音波伝搬と再び圧電素子14で検出する過程を以下に示す。図4(a)では、測定装置1に試料50を装着しないで、圧電素子14から音波を下部電極11に送った場合の反射を示している。このときの反射した音波の音圧をPとして測定することができる。具体的には、反射して圧電素子14に戻された音圧は、圧電素子14により電気信号に変換される。信号の電圧はダイオードD3、D4のオン電圧以下であるので、増幅器17で増幅されて、デジタルオシロスコープ18で観測される。図4(b)は、試料50が2層となった場合もしくは空間電荷分布測定のための上部電極12に半導電シート122を用いた場合の音波の反射を示す。図4(b)の反射波形をデジタルオシロスコープ18により記録することで試料の音響インピーダンスZ、音速c、音波の減衰率α、分散βを測定することができる。
【0031】
音波(圧力)の透過率(r)と反射率(t)は,試料の音響インピーダンス(Z[kg/m/s])によって下記式(5),(6)のように表わされる。なお、音響インピーダンスは,試料の音速c[m/s]と密度r[kg/m]の積(Z=rc)で求められる。
【数7】

【数8】

【0032】
図4(a)の実験より、空気の音響インピーダンスが,電極よりも極めて小さい(ZAl>>ZAir)場合には上記式(5)より,r@−1となり,パルス状音波の大きさPは、測定されるPの値に等しい。図4(b)の測定結果(c)より、(5),(6)より求めた式(7)により下部電極側の試料の音響インピーダンスZが測定できる。したがって,試料の裏と表を交換することにより,2層各層のZs1、Zs2が測定できる。なお、この方法により測定した音響インピーダンスZは、試料の密度測定から求めた音響インピーダンスの測定結果と低い誤差で一致する。また,音波の減衰率αは,音波の減衰が下記式(8)に従うとすれば減衰率α[1/m]は分散βを無視すれば概略式(9)式により求めることができる。なお、減衰αと分散βは周波数の関数として扱うものとする。
【数9】

【数10】

【数11】

【0033】
各種音響インピーダンスZを求める。上記式(7)中のPは、下部電極11上面(空気との界面)での反射波であり、測定装置1に試料50を装着しないで圧電素子14から音波を下部電極11に送ることで反射して戻ってきた音波を圧電素子14で検出し、デジタルオシロスコープ18で記録されたものである。図6に測定された波形とPの一例を示す。また、P’は下部電極11と試料50との界面での反射波であり、測定装置1に試料50を装着し、圧電素子14から音波を下部電極11に送ることで反射して戻ってきた音波を圧電素子14で検出し、デジタルオシロスコープ18で記録したものである。式(7)に従って、試料50の音響インピーダンスZs1を求める。また、測定装置1に半導電シート122のみを装着し、圧電素子14から音波を下部電極11に送ることで反射して戻ってきた音波を圧電素子14で検出し、デジタルオシロスコープ18で記録することで、半導電性シート122の反射波P’を得て、半導電シート122の音響インピーダンスZs2(Zue)を求める。なお、試料が多層構造であっても同様に反射波を求めて音響インピーダンスを求めることができる。アルミ材料である下部電極11の音響インピーダンスZAlは、音速や密度が明らかな水の文献値(水の音速1539m/s、密度1000kg/m)を基に同様の測定を行い求める(上記非特許文献4参考)。
【0034】
次に、上記式(9)に従って減衰率αを求める。上記式(9)中のP”は試料50と半導電シート122との界面での反射波である。測定装置1に試料50を装着し、かつ上部電極の半導電シート122を装着して圧電素子14から音波を下部電極11に送ることで反射して戻ってきた音波を圧電素子14で検出し、デジタルオシロスコープ18で記録する。図7に測定された音波の波形例を示す。試料は、厚さ0.53mmのPVCシートである。図7の波形から図6の波形との差分を求めることで、P”信号が拡大されるため、反射波形を求めることができ、それからより正確な反射波P”を求めることができる。dは音響インピーダンスを求めたい試料の厚みである。
【0035】
また,この音響インピーダンス顕微鏡の回路は,パルス発生装置を別として,同期をとることで,PEA法の回路と干渉(互いに影響を受けること)することがなく,両測定は同時に測定を行うことができる。
【0036】
(空間電荷分布の校正方法)
図5は、空間電荷分布の校正方法を示すフローチャートを示す。以下に本実施形態の空間電荷分布の校正方法を示す。
【0037】
まず、試料50の厚さdと、試料50の誘電率εを測定する(S1:第1前処理ステップ、第2前処理ステップ)。厚さdは、音響インピーダンス顕微鏡を用いた測定あるいは厚さゲージ(アズワン株式会社製、シクネスゲージ、DS−1211)で測定される。誘電率εは、以下の方法で測定できる。Qメーターまたは万能ブリッジでマイクロメーター付きの電極(空間電荷分布測定装置(PEA装置)でもよい)に試料を挟み、音速Cを共振点で測定する。その後、試料をマイクロメーター付きの電極(またはPEA装置)からはずし、試料を空気として、ギャップをちじめてゆき、 共振する点を求める。このとき、試料の厚さの比は、比誘電率になる。また、厚さ測定機能付きのPEA装置とすると電子回路を付加して比誘電率を測定することができる。誘電率εは、測定信号P(t)から空間電荷分布P(z)を求める際に用いられる。
【0038】
次に、音響インピーダンス顕微鏡を用いて、試料50をセットしていない状態で、圧電素子14と接続された下部電極11界面で反射する音波の大きさPを測定する(ステップS2、第1音波測定ステップ)。そして、上部電極12が半導電シート122(部材)を用いる場合に、当該上部電極122を下部電極11上にセットし、音響インピーダンス顕微鏡で反射する音波を測定する(ステップS3、第2音波測定ステップ)。そして、試料50を下部電極11上にセットし、音響インピーダンス顕微鏡で音波の反射波形を測定する(ステップS4、第3音波測定ステップ)。なお、上記ステップS2からステップS4の順番は、この順番に制限されず順番が入れ替わってもよい。
【0039】
次に、前記第1、2,3の音波測定ステップの測定結果に基づいて、下部電極11の音響インピーダンスZAl、試料の音響インピーダンスZ、半導電シート122の音響インピーダンスZueを算出する(ステップS5、Z算出ステップ)。上記式(7)に基づいて各種音響インピーダンスが求められる。そして、試料50の厚さd、下部電極11の音響インピーダンスZAl、試料50の音響インピーダンスZ、半導電シート122の音響インピーダンスZueに基づいて、音波の減衰率αを算出する(ステップS5、減衰率演算ステップ)。上記式(9)に基づいて減衰率αが求められる。式(9)のZs2は、半導電シート122(あるいは2層目の試料)の音響インピーダンスに相当する。
【0040】
また、減衰率αの算出とともに、分散βを算出する分散演算ステップが実行されてもよい。
【0041】
さらに音速cを算出する音速演算ステップが実行されてもよい。音速cは、試料50を測定装置1に装着し、音響測定での試料−電極界面での音波反射の伝搬時間の差と試料の厚さ測定の結果から求めることができる。試料の厚さdは、厚さゲージで予め測定することができる。
【0042】
次に、空間電荷分布測定装置1に試料50をセットし、圧電素子14から空間電荷分布の測定信号P(t)を測定する(ステップS6、空間電荷分布測定ステップ)。パルス電圧を直流印加電圧0〜10kVに重畳して行い、上部電極12を介して試料50に印加する。測定信号P(t)は、増幅器17で増幅されてデジタルオシロスコープ18に記録される。
【0043】
次に、試料厚さdおよび減衰率αに基づいて、記録された測定信号P(t)を補正し、補正された空間電荷分布P(z)を求める(ステップS7、補正ステップ)。この補正ステップは、下記式(1)において、
【数12】

空間電荷分布P(j)を、測定信号P(i)と伝達関数g(i,j)とから数値解析を利用して求める。数値解析はコンピュータ19で実行される。このとき、試料中の厚さ方向の位置zおよび減衰率αに基づいて、伝達関数g(t,z)の振幅が指数関数EXP−αzに従って減衰するとする。
【0044】
なお、減衰と分散を考慮する場合には、試料中の厚さ方向の位置z、減衰率α、分散βに基づいて、伝達関数g(t,z)の振幅が指数関数EXP−αz−jβに従って減衰するとする。
【0045】
また、このとき、試料が2層の場合に、界面での音波の反射と透過が伝達関数g(t,z)に含まれる。
【0046】
上記ステップS7で求められた空間電荷分布P(j)を出力する(ステップS8)。ここでは、コンピュータ19のモニターに表示させてもよく、別の装置へ送信してもよく、記録媒体に保存させてもよい。
【0047】
(実験例)
次に音響インピーダンス顕微鏡の機能を付加した空間電荷分布測定装置で、試料の空間電荷分布測定を行った。まず、すでに示してある図4(c)は、音響的性質の異なる2層試料(厚さ2mmと1mmのアクリル(PMMA)と塩化ビニル(PVC)シートを重ねた試料)の測定を行った音波波形を示している。Alは、下部電極を意味し、Semi−conは、半導電シートを意味している。Pは下部電極上面(空気との界面)での反射波、P’は下部電極11と1層目試料PMMAとの界面での反射波、P”は1層目試料PMMAと2層目試料PVCとの界面での反射波を示す。PVDFsignalは、圧電素子で検出した音波波形である。
【0048】
次に、厚さ0.53mmの塩化ビニルシートの音響特性と空間電荷分布の測定結果を図7、8に示す。図8に示す空間電荷分布の測定結果は、音波の減衰等は考慮しないで通常のデコンボルーション処理を行い、電位分布を計算して、印加電圧と陽極位置での電位が一致する条件で構成した結果である。10kVまでの印加電圧に対して,電極界面に電荷が観測されている。しかし,陰極と陽極での電荷密度を比較すると,陽極(上部電極)側での電荷密度が,陰極(下部電極)側の0.82となっている。
【0049】
上記図8の結果について、音響特性から考察を行った。厚さ0.53mmの塩化ビニルシートを1cm角に切り、天秤により質量を測定し、厚さを機械式の厚さゲージで測定し、測定装置1の音響インピーダンス機能を利用して音速cを測定した。それぞれの値を用いて、試料の音響インピーダンスZsを計算すると3.1×10[kg/m/s]あった。
【数13】

ρは試料の密度、cは音速である。
【0050】
上部電極12に使用した半導電シート122(Semi−con)を音響インピーダンス機能を利用して測定し、音響インピーダンスZueを求めた。また,下部電極11のアルミ電極についても同様に測定を行い音響インピーダンスZleを求めた。以下の値となった。
【数14】


【数15】

【0051】
塩化ビニルの音響インピーダンスZを上記式(7)を用いて、音響インピーダンス機能を利用して求めた各反射波を用いて求めると2.63×10[kg/m/s]であり,音速cと密度ρから求めた値とずれはあるが、ほぼ測定できたことを確認した。
【0052】
また、音波の減衰率αを上記式(9)を用いて、音響インピーダンス機能を利用して求めた各反射波を用いて求めると、0.45×10[1/m]となった。
【0053】
先に求めた、上部電極の音響インピーダンスZueと試料の音響インピーダンスZの違いから起こる上部電極界面で発生する音波の大きさPと下部電極で発生する音波の大きさPの比を求めると1.09倍となった。これによって、上部電極側で発生する音波の大きさの方が,下部電極に比べ10%程度大きいことが予想された。
【数16】

【0054】
次に,減衰率αを考慮して,上部電極と下部電極の信号の比を計算すると1:0.86であった。
【数17】

【0055】
この結果は、音響特性から予測される上部電極と下部電極の電荷密度の比は0.86で、空間電荷分布測定から得られる0.82倍とほぼ一致しており、電極界面の電荷密度は陽極(上部電極)と陰極(下部電極)でほぼ等しいが、試料内部での音波の減衰により、上部電極の電荷密度は陰極に比べ0.82倍小さく評価されたことが実験的に明らかになった。これが、減衰等によって生じた音波測定の誤差といえ、本発明において、音響特性を考慮した信号処理を同時に行うことで、試料や電極(半導電シート)の音響特性による誤差を補正することができる。例えば、補正によって、図4(c)のafter Calibrationの破線の信号波形に補正できる。
【符号の説明】
【0056】
1 空間電荷分布測定装置
11 下部電極
12 上部電極
14 圧電素子
18 デジタルオシロスコープ
19 コンピュータ
122 半導電シート
PG1 第1パルス発生装置
PG2 第2パルス発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響インピーダンスを利用した空間電荷分布の校正方法であって、
試料の厚さdを測定する第1前処理ステップと、
試料の誘電率εを測定する第2前処理ステップと、
音響インピーダンス顕微鏡を用いて、試料をセットしていない状態で、圧電素子と接続された第1電極界面で反射する音波の大きさを測定する第1音波測定ステップと、
第2電極が半導電部材を用いる場合に、当該第2電極を前記第1電極上にセットし、音響インピーダンス顕微鏡で反射する音波を測定する第2音波測定ステップと、
試料を第1電極上にセットし、音響インピーダンス顕微鏡で音波の反射波形を測定する第3音波測定ステップと、
前記第1、2,3の音波測定ステップの測定結果に基づいて、第1電極の音響インピーダンス、試料の音響インピーダンス、前記半導電部材の音響インピーダンスを算出するZ算出ステップと、
前記試料の厚さd、前記第1電極の音響インピーダンス、前記試料の音響インピーダンス、前記半導電部材の音響インピーダンスに基づいて、音波の減衰率αを算出する減衰率演算ステップと、
パルス静電応力法を用いた空間電荷分布測定装置に前記試料をセットし、圧電素子から空間電荷分布の測定信号P(t)を測定する空間電荷分布測定ステップと、
前記第1、第2前処理ステップで得られた前記試料厚さdと、前記減衰率演算ステップで算出された減衰率αに基づいて、前記空間電荷分布測定ステップで測定された前記測定信号P(t)を補正し、補正された空間電荷分布P(z)を求める補正ステップと、を含み、
前記補正ステップは、下記式(1)において、
【数1】

前記空間電荷分布P(j)を、前記測定信号P(i)と伝達関数g(i,j)とから数値解析をして求めることを特徴とする、空間電荷分布の校正方法。
【請求項2】
前記試料中の厚さ方向の位置をz、減衰率をαとしたときに、前記伝達関数g(t,z)の振幅がEXP−αzに基づいて減衰することを特徴とする、請求項1に記載の空間電荷分布の校正方法。
【請求項3】
前記第1、第2、第3音波測定ステップの測定結果から、分散βを算出する分散演算ステップをさらに含み、
前記試料中の厚さ方向の位置をz、前記減衰率をα、前記分散をβとしたときに、前記伝達関数g(t,z)の振幅がEXP−αz−jβに基づいて減衰することを特徴とする、請求項1に記載の空間電荷分布の校正方法。
【請求項4】
前記試料が2層の場合に、界面での音波の反射と透過が前記伝達関数g(t,z)に含まれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の空間電荷分布の校正方法。
【請求項5】
試料の一方に接する第1電極と、試料の他方に接する第2電極と、前記第2電極から前記試料へパルス電圧を印加するための第1パルス発生装置PG1と、前記パルス発生装置PG1のパルス電圧の印加によって生じた音波を検出する、前記第1電極に接続された圧電素子と、前記圧電素子からの測定信号P(t)を記録する信号波形記録部と、前記信号波形記録部で記録された測定信号P(t)に基づいて、空間電荷分布P(z)を演算する情報処理部と、を有する空間電荷分布測定装置であって、
前記試料の厚さd、前記試料の音響インピーダンス、前記第1電極の音響インピーダンス、第2電極に用いられる半導電材料の音響インピーダンスを測定するために、前記第1電極からパルス電圧を印加するための第2パルス発生装置PS2と、
音響インピーダンス顕微鏡用の受動素子回路とをさらに有し、
前記情報処理部が、
第1電極の音響インピーダンス、試料の音響インピーダンス、前記半導電部材の音響インピーダンスを算出するZ算出部と、
前記試料の厚さd、前記第1電極の音響インピーダンス、前記試料の音響インピーダンス、前記半導電部材の音響インピーダンスに基づいて、音波の減衰率αを算出する減衰率演算部と、
前記試料厚さdと前記減衰率αに基づいて、前記測定信号P(t)を補正し、補正された空間電荷分布P(z)を求める補正処理部を有し、
前記補正処理部は、下記式(1)において、
【数2】

前記空間電荷分布P(j)を、前記測定信号P(i)と伝達関数g(i,j)とから数値解析をして求めることを特徴とする、空間電荷分布測定装置。
【請求項6】
前記補正処理部は、前記試料中の厚さ方向の位置をz、前記減衰率をαとしたときに、前記伝達関数g(t,z)の振幅をEXP−αzに基づいて減衰するとして当該伝達関数g(t,z)を定める、請求項5に記載の空間電荷分布測定装置。
【請求項7】
前記情報処理部は、試料および上部電極の音響インピーダンスから、分散βを算出する分散演算部をさらに有し、
前記補正処理部は、前記試料中の厚さ方向の位置をz、前記減衰率をα、前記分散をβとしたときに、前記伝達関数g(t,z)の振幅をEXP−αz−jβに基づいて減衰するとして当該伝達関数g(t,z)を定めることを特徴とする、請求項5に記載の空間電荷分布測定装置。
【請求項8】
前記試料が2層の場合に、界面での音波の反射と透過が前記伝達関数g(t,z)に含まれる、請求項5〜7のいずれか1項に記載の空間電荷分布測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−53874(P2013−53874A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190867(P2011−190867)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】