説明

音響再生システム、音響再生装置、及びそれらの制御方法

【課題】 新たなハードウェアを追加することなく、スピーカからの応答信号に応じて、音響制御を実行可能とする。
【解決手段】 外部音源から入力された音響信号を複数のスピーカへ送信して再生する音響再生装置に各スピーカが接続されたシステムにおいて、音響再生装置から各スピーカへ送信される音響信号に制御信号を重畳させて送信する。送信された制御信号に応じて、各スピーカが予め定められた応答信号を発音し、発音された応答信号に応じて、音響信号を再生する際の音響制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部音源から入力された音響信号を再生する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CDやDVDなどを再生するデジタルメディアプレーヤ(DMP)、パーソナルコンピュータ(PC)、携帯音楽プレーヤなどの外部音源を接続して、高音質音響を再生するアンプ内蔵型のスピーカシステムが多数市場に登場している。
【0003】
これらのスピーカシステムは、通常ステレオ再生が可能であるが、一体型の筐体である場合を除き、個々のスピーカにそれぞれ音響信号を増幅するアンプが搭載されている。
【0004】
従って、個々のスピーカにおいて、音響信号を個別に増幅するこれらのシステム全体で再生音響の音量や音質などを統合制御する場合に、制御信号を個々のスピーカに送信する必要が生じる。
【0005】
そこで、これら従来のシステムは、各チャンネル再生用のスピーカと、スピーカと一体型、或いは別筐体となるコントローラから構成され、コントローラに入力された音響信号を個々のスピーカへ伝送するための音響信号線を接続する必要があった。これに加えて、コントローラから個々のスピーカへ制御信号を送信するための制御信号線を別途接続する必要があった。
【0006】
しかしながら、音響信号線に加えて、制御信号線をコントローラ及びスピーカ間に配線することは、配線が重複して煩わしいといった問題がある。
【0007】
そこで、コントローラにより、音響信号に、制御信号を重畳してスピーカに送信するという技術が登場している。デジタル音響信号を光などでシリアル伝送する際に、再生制御信号を多重化して送信し、受信側で、多重化された再生制御信号に従って再生する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11-122169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたシリアル伝送は片方向の通信であるため、コントローラからスピーカへ制御信号を送信することはできるが、接続先のスピーカ種別、スピーカの動作状態などがコントローラ側で一切分からないという問題がある。
【0010】
従って、様々な性能や型が異なるスピーカが、同じコントローラに接続される音響再生システムを設計する場合に、スピーカの特性や状態を考慮した音響制御ができないという問題が生じていた。
【0011】
本発明は、新たなハードウェアを追加することなく、スピーカからの応答信号に応じて、音響制御を実行可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、外部音源から入力された音響信号を複数のスピーカへ送信して再生する音響再生装置に前記複数のスピーカが接続された音響再生システムであって、
前記音響再生装置から前記複数のスピーカへ送信されるそれぞれの音響信号に制御信号を重畳させて送信する送信手段と、
前記送信手段によって送信された制御信号に応じて、前記複数のスピーカが予め定められた応答信号を発音する発音手段と、
前記発音手段によって発音された応答信号を収音する収音手段と、
前記収音手段によって収音された応答信号に応じて、前記音響信号を再生する際の音響制御を実行する実行手段と、
有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、外部音源から入力された音響信号を複数のスピーカへ送信して再生する音響再生装置であって、
前記複数のスピーカへ送信されるそれぞれの音響信号に制御信号を重畳させて送信する送信手段と、
前記送信手段によって送信された制御信号に応じて、前記複数のスピーカで発音された応答信号を収音する収音手段と、
前記収音手段によって収音された応答信号に応じて、前記音響信号を再生する際の音響制御を実行する実行手段と、
有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、新たなハードウェアを追加することなく、スピーカからの応答信号に応じて、音響制御を実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態における音響再生システムの構成の一例を示す図である。
【図2】本実施形態における音響再生装置の構成の一例を示す図である。
【図3】本実施形態におけるスピーカの構成の一例を示す図である。
【図4】本実施形態における初期設定処理のシーケンスを示す図である。
【図5】本実施形態における音響制御処理のシーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本実施形態における音響再生システムの構成の一例を示す図である。ここで、音響再生システムには、音響再生装置(コントローラ)100、スピーカ110、120、マイクロフォン130、メディアプレーヤ140が含まれる。ここで、スピーカ110は左(L)チャンネル用のスピーカ、スピーカ120は右(R)チャンネル用のスピーカである。
【0018】
コントローラ100は、外部音源のメディアプレーヤ140から入力された音響信号を適宜処理し、左右のチャンネルの音響信号に制御信号を重畳してスピーカ110、120に送信する。尚、コントローラ100の詳細な構成は図2を用いて更に後述する。
【0019】
スピーカ110、120は、コントローラ100から送信された左右の対応チャンネルの音響信号をその音響信号に重畳されている制御信号に従って再生する。尚、内部の構成要素に関しては、図3を用いて更に後述する。
【0020】
マイクロフォン130は、スピーカ110、スピーカ120から発音された音響信号を集音し、コントローラ100へ出力する。メディアプレーヤ140は、CDやDVDなどに記録されたデジタル信号を再生し、コントローラ100へ出力する。
【0021】
次に、図1に示す音響再生装置(コントローラ)100の詳細な構成を、図2を用いて説明する。
【0022】
図2は、本実施形態における音響再生装置の構成の一例を示す図である。図2において、201は音響信号入力インタフェース(I/F)であり、メディアプレーヤ140から送信されたデジタル音響信号を受信する。尚、外部音源として、メディアプレーヤ140からデジタル音響信号を受信する場合を例に挙げて説明するが、本発明はこれだけに限定されるものではない。例えば、アナログ音響信号を受信する場合も、趣旨逸脱しない範囲において本実施形態と同等の処理を行うことができる。
【0023】
202はデコーダであり、入力されたデジタル音響信号が符号化信号であるならば復号を行い、そうでない場合はスルーする。203は音響信号処理器であり、入力された音響信号に対して、各種フィルタ処理、遅延処理、ダウンミックス処理、音場生成処理などの各種音響信号処理を行う。
【0024】
204、210は左右のチャンネル用の制御信号重畳器であり、左右の音響信号に個別に制御信号を重畳する。205、211は左右のチャンネル用の音響信号送信器であり、左右の音響信号を個別にスピーカ110、スピーカ120へ送信する。
【0025】
206は操作パネルであり、ユーザによって行われた操作に対応するユーザコマンドを制御信号生成器209へ送信する。207は受光器であり、リモコン216から光通信によって送信される光信号を電気信号に変換して制御信号生成器209へ送信する。
【0026】
208はスピーカ特性データベース(SP特性DB)であり、スピーカの種別によって検索することにより、スピーカの各種音響特性を調べることができるデータベースである。209は制御信号生成器であり、操作パネル206や受光器207から受信したユーザコマンドに従って各構成要素に対する制御信号を生成する。また、制御信号生成器209はマイクロフォン130で収音されたスピーカ110、120からの応答信号に基づいてスピーカの種別を判定する。
【0027】
212はマイクアンプであり、マイクロフォン130で収音された収音信号を入力して増幅する。213はアナログデジタル変換器(ADC)であり、マイクアンプ212から入力された収音信号をアナログ−デジタル変換してデジタル音響信号に変換する。
【0028】
214は音響プロトコルデータベース(DB)であり、本実施形態では予め定められている音響プロトコルを格納している。215は収音信号解析器であり、ADC213から入力された収音信号を解析し、音響プロトコルDB214を参照して、収音信号から音響プロトコルを解読し、制御信号に変換する。
【0029】
216はリモコンであり、ユーザが操作することにより、コントローラ100に対する各種ユーザコマンドを光信号としてコントローラ100へ送信する。尚、リモコン216は赤外線通信だけでなく、近距離無線通信を利用することも可能である。
【0030】
次に、コントローラ100から音響信号に重畳された制御信号に従って音響信号を再生するスピーカ110、スピーカ120の構成を、図3を用いて説明する。
【0031】
図3は、本実施形態におけるスピーカの構成の一例を示す図である。ここで、301は出力信号ミキサであり、制御信号抽出器310から入力された音響信号と音響プロトコル制御器307から入力された音響プロトコルとを適宜切り替え、或いは混合してスピーカ特性補正器302へ出力する。
【0032】
302はスピーカ特性補正器であり、制御信号解釈器309から入力された制御信号に従って、出力信号ミキサ301から入力された音響信号に対して周波数特性や位相などのスピーカ特性を補正処理し、DAC303へ出力する。303はデジタルアナログ変換器(DAC)であり、スピーカ特性補正器302から入力されたデジタル音響信号に対してデジタル−アナログ変換を行い、アナログ音響信号を電子ボリューム304へ出力する。
【0033】
304は電子ボリュームであり、入力されたアナログ音響信号を制御信号解釈器309から入力された増幅量に応じて増幅する。305はパワーアンプであり、入力されたアナログ音響信号を一定の増幅率で増幅する。306は振動板であり、パワーアンプ305からのアナログ音響信号を物理振動に変えて実際の音を生み出す。307は音響プロトコル制御器であり、制御信号解釈器309からの制御信号に従って予め定められた音響プロトコルの組み合わせを作成し、応答信号として出力する。
【0034】
308は識別情報記憶器であり、スピーカ110(120)を識別する信号のデータが格納されているメモリである。309は制御信号解釈器であり、制御信号抽出器310から入力された制御信号を解釈し、スピーカ110(120)の各構成要素向けの制御信号に変換して送信する。310は制御信号抽出器であり、音響信号受信器311から入力された音響信号から制御信号を抽出する。
【0035】
311は音響信号受信器であり、コントローラ100からスピーカ110(120)へ出力される音響信号を受信し、内部処理用の信号に変換する。
【0036】
ここで、音響再生システムにおける音響再生装置(コントローラ)100及びスピーカ110、スピーカ120の処理を、図4を用いて説明する。
【0037】
図4は、本実施形態における初期設定処理のシーケンスを示す図である。まず、処理に先立ち、制御信号生成器209がコントローラ100の各部の初期化を行う。この初期化により、コントローラ100に左右のスピーカ110、120やマイクロフォン130が物理的に接続されているか否かの検知が行われる。このような接続検知機能は、この分野においては公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0038】
次に、コントローラ100とスピーカ110、スピーカ120によって実行される初期設定処理を説明する。ユーザがリモコン216や操作パネル206を操作し、初期設定のユーザコマンドが制御信号生成器209へ出力される。そして、制御信号生成器209は、スピーカ110に対して初期設定の制御信号を送信するために、制御信号重畳器204に初期設定コマンドを出力する。
【0039】
一方、制御信号重畳器204は、制御信号生成器209からの初期設定コマンドを音響信号に重畳して音響信号送信器205に出力する。尚、外部音源からの入力がなくても、制御信号重畳器204は、制御信号生成器209からの各種コマンドを入力すると、無音の音響信号に制御信号を重畳して出力する。
【0040】
ここで、制御信号が重畳された音響信号は、音響信号送信器205によって送信され、スピーカ110の音響信号受信器311によって受信され、制御信号抽出器310に出力される。制御信号抽出器310は、送信されてきた音響信号から重畳されている制御信号を抽出及び分離し、音響信号を出力信号ミキサ301へ、また、制御信号である初期設定コマンドを制御信号解釈器309へ出力する。
【0041】
次に、制御信号解釈器309が初期設定コマンドを受信すると、音響プロトコル制御器307に対して識別情報を送信するように指示する。また、制御信号解釈器309は電子ボリューム304を操作して適切な音圧で音響再生が行われるように設定する。そして、音響プロトコル制御器307が制御信号解釈器309から指示を受けると、識別情報記憶器308に記憶されているスピーカ種別の識別情報を読み出し、後述する音響プロトコルに変換して出力信号ミキサ301へ出力する(S401)。
【0042】
尚、本実施形態における音響プロトコルは、DTMF(Dual-Tone Multi-Frequency)音声信号のような既存の音響プロトコルを用いても良い。また、例えば440HzをAの基準音とするトーン信号に複数の倍音を組み合わせた音素を基礎として、十二音階の音素を作成し、これらの音素を用いた簡単なメロディによって情報を送信するといった独自の音響プロトコルを用いても良い。
【0043】
次に、出力信号ミキサ301は、制御信号抽出器310からの無音の音響信号に音響プロトコル制御器307からのスピーカ種別の識別情報を示す音響プロトコルを混合して出力する。この音響信号は、スピーカ特性補正器302を介してDAC303でアナログ信号に変換され、電子ボリューム304で適切な振幅に増幅され、パワーアンプ305で増幅されて振動板306によって実際の音響として再生される。
【0044】
次に、スピーカ110によって音として再生された音響プロトコルは、マイクロフォン130で収音されてアナログ音響信号に変換される。そして、そのアナログ音響信号は、コントローラ100のマイクアンプ212で増幅された後、ADC213でデジタル音響信号に変換され、収音信号解析器215へ出力される。
【0045】
ここで、収音信号解析器215では、音響プロトコルDB214を参照して入力された音響信号を解析し、音響プロトコルが含まれているか否かを判定する。判定の結果、音響プロトコルが含まれている場合には、それが何を示しているかを解読し、その結果を制御信号生成器209へ出力する。
【0046】
本実施形態では、音響プロトコルを解析した結果、スピーカ種別の識別情報が含まれていることが解読され、その識別情報を制御信号生成器209へ出力する。一方、制御信号生成器209は、その識別情報をスピーカ110のスピーカ種別であるとして、制御信号生成器209の内部のメモリに記憶する(S402)。
【0047】
次に、コントローラ100は、スピーカ120に対してもスピーカ110と同様の手順で初期設定信号を送信し、その結果、スピーカ120が識別情報を示す音響プロトコルを作成する(S403)。そして、コントローラ100はスピーカ120で発音された音響プロトコルをマイクロフォン130で収音して解析し、スピーカ120のスピーカ種別である識別情報を制御信号生成器209の内部のメモリに記憶する(S404)。
【0048】
以上の動作により、初期設定処理を終了する。次に、本実施形態における音響制御処理を、図5を用いて説明する。
【0049】
図5は、本実施形態における音響制御処理のシーケンスを示す図である。ユーザが操作パネル206やリモコン216を操作し、各種音響制御の指示が制御信号生成器209へ出力される。そして、制御信号生成器209は、内部のメモリに格納されているスピーカ110とスピーカ120のスピーカ種別をキーにして、SP特性DB208を検索する。検索により、スピーカ110とスピーカ120の各音響特性のうち、指示された音響制御に関係する特性の情報を集めてメモリに一次記憶する(S501)。
【0050】
ここで、ユーザによる音響制御がスピーカの周波数特性の変更指示であれば、スピーカ毎のマルチウェイスピーカ構成や、振動板毎の再生周波数帯域、クロスオーバー周波数といった音響特性パラメータを内部のメモリに一次記憶する。
【0051】
次に、制御信号生成器209は、ユーザが指示した音響制御を実現するための各種音響制御パラメータを計算する。上述の例で示すと、指示された周波数特性の変更を実現するための音響信号全体に対するトーン制御パラメータやスピーカ毎のクロスオーバー周波数変更といったパラメータを計算する(S502)。
【0052】
次に、制御信号生成器209は、計算後のパラメータを実際に制御する各構成要素に、制御信号として出力する(S503)。上述の例では、音響信号全体に対するトーン制御パラメータを音響信号処理器203へ出力し、また、スピーカ毎のクロスオーバー周波数変更パラメータを左右の制御信号重畳器204、210へそれぞれ出力する。
【0053】
一方、音響信号処理器203は、制御信号生成器209からのパラメータに従って音響信号全体のトーン制御を変更する。また、音響信号に重畳されて送信された制御信号は、スピーカ110(120)の制御信号抽出器310によって音響信号から抽出されて制御信号解釈器309で解釈され、クロスオーバー周波数変更パラメータがスピーカ特性補正器302に出力される。スピーカ特性補正器302では、そのパラメータに従って、クロスオーバー周波数の変更を行う(S504、S505)。
【0054】
上述の処理と同時に、制御信号解釈器309は、そのパラメータに対する処理が正常に終わったことを示す信号を音響プロトコル制御器307へ出力する。音響プロトコル制御器307が、この制御信号を入力すると、正常終了を意味する音響プロトコルを作成して出力信号ミキサ301へ出力する。出力信号ミキサ301は、音響信号と音響プロトコルを混合して出力する。そして、混合された音響信号はスピーカ特性補正器302、DAC303、電子ボリューム304、パワーアンプ305を介して振動板306によって音として発音され、マイクロフォン130によって収音される。
【0055】
次に、収音された音響信号は、マイクアンプ212及びADC213を介してデジタル音響信号として収音信号解析器215によって解析され、正常終了を示す音響プロトコルが抽出及び解読される。そして、正常終了を示す応答信号が制御信号生成器209へ出力され、制御信号生成器209は音響制御が正常に行われたことを確認する(S506)。以上の動作により、音響制御処理を終了する。
【0056】
本実施形態では、コントローラ100がスピーカ110、120に制御信号を送信した場合、スピーカ110、120はその制御信号で指示されている動作を実行する。そして、必ず動作の終了時に、音響プロトコルによって動作結果をコントローラ100側に送信するように構成されている。従って、本実施形態によれば、確実にスピーカの制御を行うことが可能となる。
【0057】
本実施形態によれば、初期設定時に、コントローラに接続されている左右のスピーカにスピーカ種別を示す個別の識別情報を音響プロトコルとして発音させ、音響プロトコルをマイクロフォンを介して受信して解析する。これにより、コントローラに接続されているスピーカ種別を明らかにすることができ、スピーカの音響特性を詳細に把握できる。更に、この情報を利用してシステム全体の能力を把握することができるため、システム能力に応じた適切な音響制御を実行することが可能となる。
【0058】
また、正常に音響制御が行われたことを示す音響プロトコルをスピーカが発音し、それを収音して解析する。これにより、コントローラがオーディオインタフェースでしか接続されていないスピーカで行われる音響制御を確実に行うことができる。また、音響制御が正常に終了しなかった場合に、その旨を示す音響プロトコルをスピーカが発音しても良いことは言うまでもない。
【0059】
従って、音響再生装置はスピーカからの応答信号に応じて、音響制御を実行することが可能となる。また、スピーカが制御信号を受信した際に、予め記憶している個別の識別情報を音響プロトコルに変換して発音し、音響再生装置が、その音響プロトコルを解析することで、接続されているスピーカ種別を判定する。これにより、スピーカ種別に応じて、音響制御を変化させることができる。
【0060】
更に、制御信号がスピーカのパワーアンプや振動板などの発熱の状態を検知する指示の場合、音響プロトコルによりスピーカの動作状態を通知することができるので、スピーカの状態を考慮した音響制御を行うことができる。
【0061】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態では、スピーカ内部の処理をデジタル信号領域において行っているが、デジタル信号やアナログ信号の違いは、本発明の主旨には関わりがないため、アナログ信号領域において音響処理を実施することもできる。
【0062】
逆に、本実施形態では、信号の増幅をDA変換後に行っているが、これはデジタル信号のまま増幅するように実施することもできる。
【0063】
また、図1に示す構成において、コントローラ100とマイクロフォン130とは別の筐体として示しているが、マイクロフォン130をコントローラ100の内部構成要素としても良い。
【0064】
また、通常の音楽を再生している際にスピーカに狭帯域の音響プロトコルを発音させ、狭帯域でフィルタリングすることにより、その音響プロトコルをコントローラが受信しても良い。
【0065】
尚、実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記録媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(CPU若しくはMPU)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行する。これによっても、本発明の目的が達成されることは言うまでもない。
【0066】
この場合、コンピュータ読み取り可能な記録媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記録媒体は本発明を構成することになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部音源から入力された音響信号を複数のスピーカへ送信して再生する音響再生装置に前記複数のスピーカが接続された音響再生システムであって、
前記音響再生装置から前記複数のスピーカへ送信されるそれぞれの音響信号に制御信号を重畳させて送信する送信手段と、
前記送信手段によって送信された制御信号に応じて、前記複数のスピーカが予め定められた応答信号を発音する発音手段と、
前記発音手段によって発音された応答信号を収音する収音手段と、
前記収音手段によって収音された応答信号に応じて、前記音響信号を再生する際の音響制御を実行する実行手段と、
有することを特徴とする音響再生システム。
【請求項2】
前記発音手段は、前記制御信号が初期設定を指示する場合には、前記複数のスピーカに記憶されているスピーカの種別を識別する情報を前記応答信号として発音することを特徴とする請求項1に記載の音響再生システム。
【請求項3】
前記発音手段は、前記制御信号がスピーカの周波数特性を変更する音響制御を指示する場合、前記スピーカの音響特性パラメータを変更した結果を前記応答信号として発音することを特徴とする請求項1に記載の音響再生システム。
【請求項4】
前記発音手段は、前記制御信号がスピーカの状態を検知する指示の場合、前記スピーカの動作状態を前記応答信号として発音することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の音響再生システム。
【請求項5】
前記収音手段は、マイクロフォンによって前記複数のスピーカから発音された応答信号を収音することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の音響再生システム。
【請求項6】
外部音源から入力された音響信号を複数のスピーカへ送信して再生する音響再生装置であって、
前記複数のスピーカへ送信されるそれぞれの音響信号に制御信号を重畳させて送信する送信手段と、
前記送信手段によって送信された制御信号に応じて、前記複数のスピーカで発音された応答信号を収音する収音手段と、
前記収音手段によって収音された応答信号に応じて、前記音響信号を再生する際の音響制御を実行する実行手段と、
有することを特徴とする音響再生装置。
【請求項7】
外部音源から入力された音響信号を複数のスピーカへ送信して再生する音響再生装置に前記複数のスピーカが接続された音響再生システムの制御方法であって、
前記音響再生装置から前記複数のスピーカへ送信されるそれぞれの音響信号に制御信号を重畳させて送信する送信工程と、
前記送信工程において送信された制御信号に応じて、前記複数のスピーカが予め定められた応答信号を発音する発音工程と、
前記発音工程において発音された応答信号を収音する収音工程と、
前記収音工程において収音された応答信号に応じて、前記音響信号を再生する際の音響制御を実行する実行工程と、
有することを特徴とする音響再生システムの制御方法。
【請求項8】
外部音源から入力された音響信号を複数のスピーカへ送信して再生する音響再生装置の制御方法であって、
前記複数のスピーカへ送信されるそれぞれの音響信号に制御信号を重畳させて送信する送信工程と、
前記送信工程において送信された制御信号に応じて、前記複数のスピーカで発音された応答信号を収音する収音工程と、
前記収音工程において収音された応答信号に応じて、前記音響信号を再生する際の音響制御を実行する実行工程と、
有することを特徴とする音響再生装置の制御方法。
【請求項9】
コンピュータに、請求項7に記載の音響再生システムの制御方法又は請求項8に記載の音響再生装置の制御方法を実行させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−278996(P2010−278996A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132425(P2009−132425)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】