音響波取得装置
【課題】音響波取得装置において、画質の劣化を抑制しつつ、ブラインド領域を減らすための技術を提供する。
【解決手段】被検体を保持する保持板と、被検体から保持板を挟んで伝播する音響波を検出する音響検出手段と、音響検出手段を保持板の上で走査する走査手段と、音響検出手段が音響波を検出する方向の保持板に対する角度を変化させる角度変更手段と、走査手段および角度変更手段を被検体内における測定部位の位置に応じて制御する制御手段を有する音響波取得装置を用いる。
【解決手段】被検体を保持する保持板と、被検体から保持板を挟んで伝播する音響波を検出する音響検出手段と、音響検出手段を保持板の上で走査する走査手段と、音響検出手段が音響波を検出する方向の保持板に対する角度を変化させる角度変更手段と、走査手段および角度変更手段を被検体内における測定部位の位置に応じて制御する制御手段を有する音響波取得装置を用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響波取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、生体内部を非侵襲的にイメージングすることができる超音波を用いた装置が広く使用されている。一般的な超音波診断装置は、超音波を送信し生体内部で反射してきた超音波を受信することによって、生体内部の情報を得ることができる。これによって癌等の疾患部位を発見できるが、さらに発見効率を向上させるために、生体の生理的情報、つまり機能情報のイメージングが注目されている。機能情報のイメージング手段として、光と音響波を用いる、Photoacoustic Tomography(PAT:光音響トモグラフィー)が提案されている。
【0003】
光音響トモグラフィーとは、光源から発生したパルス光を被検体に照射し、被検体内で伝播・拡散した光の吸収によって音響波(典型的には超音波)が発生するという光音響効果を用いて、音響波の発生源となる内部組織を画像化する技術である。パルス光に近赤外光を用いた場合には、近赤外光は生体の大部分を構成する水を透過しやすく、血液中のヘモグロビンで吸収されやすい性質を持つため、血管像をイメージングすることができる。さらに、異なる波長のパルス光による血管像を比較し、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの比率を算出することによって、機能情報である血液中の酸素飽和度を測定することができる。悪性腫瘍周辺の血液は良性腫瘍周辺の血液より酸素飽和度が低くなっていると考えられているので、酸素飽和度を知ることによって腫瘍の良悪鑑別を行えるようになる。
【0004】
超音波診断装置と光音響トモグラフィー装置は音響波を用いるため、音響波の発生源から音響波検出器まで音響波が効率よく伝播するように音響波インピーダンスのマッチングを考慮する必要がある。音響波は物体の界面で反射され、その反射率は物質の密度と伝播音速の積である音響インピーダンスに依存する。このとき、界面の両側の物質の音響インピーダンスが近ければ、つまりマッチングが取れていれば、音響波の反射が少なく伝播しやすい。逆に、音響インピーダンスが大きく異なれば音響波は反射され、伝播効率が悪い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−57823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
生体等の被検体の広い範囲を測定する場合、図1に示したように、平板状の被検体保持板4で被検体3を保持し、音響検出器5を被検体保持板4と平行に走査し、順次位置を変えながら測定を行う方法が有効である。
被検体の測定部位として、生体の乳房のような丸い部位を扱う場合、その辺縁部では被検体3と被検体保持板4との間に空隙が生まれ、被検体3と音響インピーダンスが大きく違う空気が入ることがある。空隙が存在すると音響波が伝播しないため、音響検出器5で音響波が受信できず、内部情報を得ることができないブラインド領域3cができる。空隙を被検体3と音響インピーダンスの近い水やジェルなどで埋めることも考えられるが、被検者に負担を強いることになる。
また、乳房の根元部分には体や保持板を支える構造物18が必要である。しかし、装置
の強度を保つためには、構造物18に被検体3と音響インピーダンス近い材料を用いることは難しい。そのため、音響波が伝播できず、ブラインド領域3aができる。
【0007】
被検体の広い範囲を測定しつつブラインド領域を少なくするために、特許文献1にあるようにリニアスキャンに加えてセクタスキャンを用いることが考えられる。しかし、音響検出器の素子には指向性があるため、角度がついた音響波には感度が低くなってくる。そのためセクタスキャンの角度には限界がある上、取得できている角度でもSN比(シグナルノイズ比)が悪いものとなる。さらにセクタスキャンは、測定部位が被検体の奥側に行くに従って分解能が悪くなるという問題点がある。
【0008】
本発明は、このような課題認識に基づいてなされたものである。本発明の目的は、音響波取得装置において、画質の劣化を抑制しつつ、ブラインド領域を減らすための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の構成を採用する。すなわち、
被検体を保持する保持板と、
前記被検体から前記保持板を挟んで伝播する音響波を検出する音響検出手段と、
前記音響検出手段を前記保持板の上で走査する走査手段と、
前記音響検出手段が音響波を検出する方向の前記保持板に対する角度を変化させる角度変更手段と、
前記走査手段および前記角度変更手段を、前記被検体内における測定部位の位置に応じて制御する制御手段と、
を有することを特徴とする音響波取得装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、音響波取得装置において、画質の劣化を抑制しつつ、ブラインド領域を減らすための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】背景技術を説明する図である。
【図2】実施形態1に係る装置の構成を示す模式図である。
【図3】実施形態1に係る装置の設置を示す図である。
【図4】実施形態1に係る装置の実施方法を示す図である。
【図5】実施形態1に係る装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】実施形態2に係る装置の構成を示す模式図である。
【図7】実施形態2に係る装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】実施形態3に係る装置の構成を示す模式図である。
【図9】実施形態3に係る装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】実施形態4に係る装置の構成を示す模式図である。
【図11】実施形態4に係る装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】実施形態5に係る装置の構成を示す模式図である。
【図13】実施形態5に係る装置の動作を示すフローチャートである。
【図14】実施形態3に係る音響波検出を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照しつつ、本発明の好適な実施の形態について説明する。ただし、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状及びそれらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0013】
本発明の音響波取得装置には、被検体に超音波を送信し、被検体内部で反射した反射波(エコー波)を受信して、被検体内の特性情報を画像データとして取得する超音波エコー技術を利用した装置を含む。また、被検体に光(電磁波)を照射することにより被検体内で発生した音響波を受信して、特性情報を画像データとして取得する光音響効果を利用した装置を含む。
前者の超音波エコー技術を利用した装置の場合、取得される特性情報とは、被検体内部の組織の音響インピーダンスの違いを反映した情報である。後者の光音響効果を利用した装置の場合、取得される特性情報とは、光照射によって生じた音響波の発生源分布、被検体内の初期音圧分布、あるいは初期音圧分布から導かれる光エネルギー吸収密度分布や吸収係数分布、組織を構成する物質の濃度分布を示す。物質の濃度分布とは、例えば、測定部位における酸素飽和度分布や酸化・還元ヘモグロビン濃度分布などである。
【0014】
本発明でいう音響波とは、典型的には超音波であり、音波、超音波、音響波と呼ばれる弾性波を含む。光音響効果により発生した音響波のことを、光音響波または光超音波と呼ぶ。音響検出器は、被検体内で発生又は反射した音響波を受信する。
【0015】
[実施形態1]
実施形態1では、本発明の基本的な実施形態について説明する。図2は本実施形態に係る装置の構成要素を示すブロック図である。本実施形態では、光音響効果を利用した光音響トモグラフィー装置に発明を適用している。装置は、光源1、光照射装置2、被検体保持板4、音響検出器5、走査機構6、角度変更機構7、連動制御装置8、電気信号処理装置9、データ処理装置10、表示装置11を含む。装置の測定対象は、被検体3である。
【0016】
(光源)
光源1はパルス光を発生させる装置である。光源としては大出力を得るため、レーザーが望ましいが、発光ダイオードなどでもよい。光音響波を効果的に発生させるためには、被検体の熱特性に応じて十分短い時間に光を照射させなければならない。被検体が生体の場合、光源1から発生するパルス光のパルス幅は数十ナノ秒以下にすることが望ましい。また、パルス光の波長は生体の窓と呼ばれる近赤外領域であり、700nm〜1200nm程度が望ましい。この領域の光は比較的生体深部まで到達することができ、深部の情報を得ることができる。生体表面部の測定に限定すれば、500〜700nm程度の可視光から近赤外領域も使用してもよい。さらに、パルス光の波長は観測対象に対して吸収係数が高いことが望ましい。
【0017】
(光照射装置)
光照射装置2は、光源1で発生させたパルス光を被検体3へ導く装置である。具体的には光ファイバーやレンズ、ミラー、拡散板などの光学機器である。また、これらの光学機器がパルス光を導く際に、パルス光の形状や光密度を変更することもある。光学機器はここにあげたものだけに限定されず、必要とされる機能を満たすものであれば、どのようなものであってもよい。
【0018】
(被検体)
被検体3は測定の対象となるものである。被検体3としては主に、生体または、生体の音響特性と光学特性を模擬したファントム(模擬生体)を用いる。例えば乳癌の検査が目的であれば、被検体は生体の乳房である。音響特性とは具体的には音響波の伝播速度および減衰率であり、光学特性とは具体的には光の吸収係数および散乱係数である。被検体3の内部には、測定部位として光吸収係数の大きい光吸収体が存在する必要がある。具体的な光吸収体としては、生体の場合はヘモグロビン、水、メラニン、コラーゲン、脂質などが挙げられる。ファントムの場合は、以上のものの光学特性を模擬した物質を光吸収体と
して内部に封入する。
【0019】
(被検体保持板)
被検体保持板4は被検体を保持する平板である。被検体保持板4の材料は被検体3と音響インピーダンスが近いものが望ましい。被検体保持板4は被検体3と密着させて設置する。この際、被検体3と被検体保持板4の間に空気層ができることを避けるために、ジェルなどを塗布する。しかし、課題として上で述べたように、生体を被検体として用いた場合には、辺縁部が被検体に密着せず空隙が生じる。
【0020】
(音響検出器)
音響検出器5は音響波をアナログの電気信号に変換するものである。音響検出器5は被検体保持板4を挟んで被検体3の反対側に設置される。この時、音響波を良好に伝播させるには、被検体保持板4と音響検出器5の音響インピーダンスマッチングを取る必要があるため、両者の間にマッチング溶液を満たすことが望ましい。閉じた空間にマッチング溶液を満たすことが望ましいが、空間を閉じずに被検体保持板4と音響検出器5の間にマッチング溶液を常に流しておいてもよい。
光音響トモグラフィーでは複数の場所で音響波を捉えなければならないので、音響検出器としては複数の受信素子を平面上に並べた2D型のものが望ましい。ただし、単一素子型や、受信素子を一列に並べた1D型の音響検出器を、走査機構6を用いて複数の場所に移動させてもよい。音響検出器は感度が高く、周波数帯域が広いものが望ましく、具体的にはPZT、PVDF、cMUT、ファブリペロー干渉計を用いた音響検出器などが挙げられる。ただし、ここに挙げたものだけに限定されず、必要とされる機能を満たすものであれば、どのようなものであってもよい。
【0021】
(走査機構)
走査機構6は音響検出器5を走査させる機構である。走査は被検体保持板4と平行に行われる。走査機構はステッピングモーターなどを搭載した電動ステージであることが望ましいが、手動ステージでもよい。また、走査は二次元的に行えることが望ましい。ただし、ここに挙げたものだけに限定されず、必要とされる機能を満たすものであれば、どのようなものであってもよい。
【0022】
(角度変更機構)
角度変更機構7は、音響検出器5の被検体保持板4に対する角度を変更する機構である。角度を変更することによって音響検出器5と被検体保持板4との間に空隙ができるが、空隙に音響マッチング液を満たしておくことにより、音響インピーダンスマッチングを保つことができる。角度変更機構は電動で角度変更できることが望ましいが、手動でもよい。
【0023】
(連動制御装置)
連動制御装置8は音響検出器の走査と角度を連動して制御するものである。そのために連動制御装置8は、走査機構6と角度変更機構7を制御する機能を持つ。本発明の特徴は、走査と角度を関連付けて制御することであり、その制御の方法については後に詳述する。
【0024】
(電気信号処理装置)
電気信号処理装置9は音響検出器5で得られたアナログの電気信号を増幅し、デジタル信号へと変換するものである。効率的にデータを取得するため、音響検出器の受信素子数と同じだけアナログ−デジタル変換器(ADC)があることが望ましいが、一つのADCを順々につなぎ換えて使用してもよい。
【0025】
(データ処理装置)
データ処理装置10は電気信号処理装置9によって得られたデジタル信号を処理することによって、画像データを再構成するものである。すなわち、デジタル信号に基づいて被検体内の特性情報を画像データとして生成するものである。データ処理装置として、具体的にはコンピュータ、電気回路などが挙げられる。この時の処理方法は、微分処理した信号を重ね合わせるユニバーサルバックプロジェクション法が望ましいが、画像を再構成できる方法ならどのような方法であってもよい。被検体保持板と被検体の音響波伝播速度が異なるとき、角度に応じて音響波が屈折するので、それを補正して再構成を行うことが望ましい。
【0026】
(表示装置)
表示装置11はデータ処理装置10で生成された画像データを表示するものである。具体的にはコンピュータやテレビなどのディスプレイが挙げられる。
【0027】
図3を用いて、被検体3、被検体保持板4、音響検出器5、走査機構6、角度変更機構7の設置について説明する。図3には他に、音響検出器5の音響波受信面5a、パルス光16、音響検出器5による有効受信領域17、装置の構造物18、マッチング溶液19が示されている。被検体3は、乳房の根元の領域A(3a)、乳房の先端の領域C(3c)、中間の領域B(3b)に区分される。
【0028】
光源1が発生させて光照射装置2により導かれたパルス光16は、図3上部より被検体3に照射される。被検体3に対し被検体保持板4を挟むように音響検出器5が設置される。被検体保持板4と音響検出器5の間はマッチング溶液19で満たされており、マッチング溶液19は、被検体保持板4と図示されていないマッチング溶液保持板からなる閉空間で保持されている。また、音響検出器5は角度変更機構7と走査機構6を備えており、マッチング溶液19を保持する閉空間は、音響検出器5の走査と連動して移動する。
【0029】
音響検出器5は、被検体から伝播する音響波を有効に検出できる有効受信領域17を持つ。電子リニアスキャンを行う場合、有効受信領域17は、音響検出器5の音響波受信面5aの正面の領域としても良い。電子セクタスキャンを行う場合には、有効受信領域17は斜め方向に広がるが、リニアスキャンに比べて分解能の奥行き依存性が高くなり、場所による画質の変化が生じる。
あるいは、有効受信領域は、受信素子の指向性と感度に応じて、最大の感度で音響波を検出できる方向から所定の範囲の角度と定めても良い。また、最大の感度で受信された音響波の強度と比較して、所定の割合の強度で音響波を受信できる範囲の角度と定めても良い。これらのように受信素子の感度で有効受信領域を定義する場合、所定の角度の範囲内で検出された音響波、あるいは所定の割合の強度で検出された音響波が、有効に受信された音響波と呼べる。音響波受信面に受信素子が配列された音響検出器の場合、通常は音響波受信面の法線方向が、感度が最大の方向となる。この場合、角度変更機構が音響検出器の角度を変化させることは、音響波受信面が音響波を受信する方向を変化させることによって行われる。
【0030】
音響検出器5の角度を被検体3に対して正面に保ったまま、音響検出器5を構造物18に突き当たるまで当たるまで左に走査すると、走査がそれ以上できないために領域A(3a)は有効受信範囲17に入ることがなく、ブラインド領域となる。一方、領域B(3b)は、音響検出器5の角度を正面に保ったままでも有効受信領域17の中に入るので測定が可能である。また、領域C(3c)は、被検体保持板4と被検体3との間に空隙が生じており、音響検出器5の角度を正面に保ったままでは測定できないブラインド領域である。このように、音響検出器5の有効受信領域17の被検体3に対する角度が、被検体3の正面、すなわち被検体保持板4から略垂直な向きに固定されたままである場合、音響波を
受信できないブラインド領域3a,3cが広く存在する。
【0031】
次に、図4と図5を用いて、本発明の特徴である、連動制御装置8によって行われる音響検出器5の走査と角度変更を連動させた制御方法について述べる。簡単のために平面図で説明するが、三次元への拡張は走査や角度の次元を一つ増やせば実現できる。
【0032】
図4は、図5のフロー図の各工程における被検体3と音響検出器5の位置関係、および音響検出器5の角度を示したものである。以下、図4(a)〜(f)と、図5のステップ番号を対応付けつつ説明する。なお、ここで説明に用いる角度1〜3及び位置1〜6の決定方法は後に詳述する。
【0033】
最初に図4(a)に示すように、領域A(3a)のデータを取得する準備を行う。そのために、角度変更機構7によって、音響検出器5の角度を角度1に設定する(ステップS1)。次に走査機構6によって、音響検出器5の位置を位置1に設定する(ステップS2)。
図4(b)に示すように、角度1を保ったまま、走査機構6が音響検出器5を位置2まで走査する。走査の間、被検体3にパルス光16を照射し、音響検出器5により信号を取得する作業を、一定間隔で繰り返し行う(ステップS3)。この時パルス光16は領域A(3a)に集中して照射することが望ましいが、光は生体中で拡散するために被検体全体に照射してもよい。
【0034】
次に図4(c)に示すように、領域B(3b)のデータを取得する準備を行う。そのために、音響検出器5の角度を角度2に設定し(ステップS4)、位置を位置3に設定する(ステップS5)。
図4(d)に示すように、角度2を保ったまま、走査機構6が音響検出器5を位置4まで走査する。走査の間、被検体3にパルス光16を照射し、音響検出器5により信号を取得する作業を、一定間隔で繰り返し行う(ステップS6)。この時、有効受信領域17にパルス光16を集中して照射し、有効受信領域17の走査とともにパルス光16も同様に移動させることが望ましいが、被検体全体に照射を行ってもよい。
【0035】
さらに図4(e)に示すように、領域C(3c)のデータを取得する準備を行う。そのために、音響検出器5の角度を角度3に設定し(ステップS7)、位置を位置5に設定する(ステップS8)。
図4(f)に示すように、角度3を保ったまま、走査機構6が音響検出器5を位置6まで走査する。走査の間、被検体3にパルス光16を照射し信号を取得する作業を一定間隔で繰り返し行う(ステップS9)。この時パルス光16は領域C(3c)に集中して照射することが望ましいが、被検体全体に照射してもよい。
【0036】
最後に得られたデータをもとにデータ処理装置10が再構成を行い、結果を表示する(ステップS10)。領域Aまたは領域Cを測定対象としデータ取得する際に、領域Bも有効受信領域に入っているので、領域Bからも信号が得られている。すなわち、領域Bは複数回信号が取得されている領域がある。複数回信号が得られた箇所は、その領域を測定対象としないときの測定信号と測定対象とするときの測定信号との全ての信号を用いて再構成することが望ましい。ただし、測定ごとにその測定信号のみを用いて再構成を行い、得られた複数の画像のボクセル強度の平均値や二乗平均平方根をとるなどの重畳処理を行ってもよい。
【0037】
以上のように、角度と走査を連動して制御することによって、ブラインド領域のデータを取得できるようになる。その結果、ブラインド領域を一定の角度でリニアスキャンすることとなるので分解能が全領域で同じになり、見やすい画像が得られる。
【0038】
角度1〜3と位置1〜6は以下のように決定される。角度は音響検出器の音響波受信面の法線と被検体保持板の法線のなす角で定義される。すなわち、有効受信領域の方向と、被検体保持板の法線の方向で定義される。音響検出器が正面を向いている場合、つまり角度2は0度である。音響検出器が正面を向いている場合とは、音響検出器の音響波受信面が被検体保持板に正対している状態を指す。
【0039】
角度1、角度3は、0度以上90度未満の範囲を取り、大きければ大きいほど(被検体保持板に対し平行に近いほど)ブラインド領域を少なくできる。よって、角度は大きいほうが良いが、以下の制約条件により角度の上限が決められる。
制約条件の一つは被検体3、被検体保持板4、マッチング溶液の各界面での全反射である。いずれかの界面で全反射が起こると被検体3中の信号が音響検出器まで伝わらない。これを避けるため、角度を緩やかに(0度の側寄りに)しなければならず、全反射条件によって音響検出器の角度の上限が決定される。全反射条件は各部材の中を音響波が伝播するときの音速と、スネルの法則を用いることで算出される。各部材の全ての音速が同じであれば全反射条件はなく、どのような角度でも全反射は起きない。
【0040】
さらに角度1、角度3について各々もう一つずつの制約条件がある。この制約条件と、前述の全反射による角度の上限とを比較して、小さいほうの角度が上限となる。
角度1については、角度を緩やかにしすぎると、音響検出器の有効受信領域が被検体3と被検体保持板4で生じる空隙を通ってしまい、音響波が伝わらない。よって、図4(b)のように有効受信領域が領域Aの右上端部を通り、領域Cの左下端部を通る時の音響検出器の角度が、もう一つの上限である。
角度3については、角度を緩やかにしすぎると、領域Cの左上端部を取得するときに、より左の方に走査しなければならず、構造物に当たってしまう。よって、図4(e)のように音響検出器が最も構造物に近い位置にあるとき有効受信領域が領域Cの左上端部を通る角度が、もう一つの上限である。
【0041】
位置1〜6は、角度1,角度2,角度3で走査するとき、それぞれ領域A,領域B,領域Cと走査された有効受信領域の重畳が最大になるように決定される。
【0042】
以上の方法によれば、ほとんどのブラインド領域を画像化でき、全領域にわたって分解能が均一な画像が得られる。
【0043】
[実施形態2]
被検体が生体の場合、形状に個人差があり、再現性よく保持するのは難しいため、測定のたびに角度と走査の関係が変化してくる。本実施形態では、実施形態1の角度、位置を、被検体の外形をカメラ等で得て、自動で決定する方法について述べる。
【0044】
図6は本実施形態の装置のブロック図である。本実施形態の装置は、実施形態1の構成に、形態取得装置12、角度・位置決定装置13を加えた構成である。形態取得装置12は具体的にはカメラや三次元スキャナなどであり、被検体の形態情報、つまり外形を得ることができるものである。例えば乳房辺縁部の形態を取得すれば、被検体保持板の形状と合わせることで空隙の部位を決定できる。あるいはカメラが取得した画像を解析することにより、乳房と被検体保持板の非接触部位を決定できる。また、画像に基づいて被検体と装置の構造物の位置関係を解析し、音響検出器を走査できる範囲を決定できる。
【0045】
形態情報は角度・位置決定装置13へ送られ、角度・位置決定装置13は角度1、3、位置1〜6を自動的に決定する。角度2は0度で固定されているものとする。決定された角度1、3、位置1〜6は連動制御装置8に送られる。他の構成要素の機能は実施形態1
と同様である。
【0046】
図7は本実施形態のフロー図である。図5に示した実施形態1のフローと異なる部分について説明する。
最初に、形態取得装置12によって被検体の形態情報を取得する(ステップS11)。取得された携帯情報は、角度・位置決定装置13に送信される。
続いて、形態情報をもとに角度・位置決定装置13は角度1、3、位置1〜6を決定する(ステップS12)。このように決定された角度1、3、位置1〜6を用いて、実施形態1と同様の方法で、ステップS1〜S10に従って光音響測定を行う。
【0047】
以上の方法によれば、音響検出器の角度と位置とが連動した制御方法を自動的に決定することができ、より簡便にブラインド領域を取得することができる。
【0048】
[実施形態3]
被検体保持板が透明でない場合、被検体と被検体保持板の接触部分を、カメラなどで光学的に測定することは難しい。また、被検体保持板が透明であっても、接触部位を正確に測定することは難しい場合がある。本実施形態では、接触情報を音響波信号に基づいて取得する方法について述べる。
【0049】
図8は本実施形態の装置の構成を示すブロック図である。本実施形態の装置は、実施形態2の装置に、接触判定装置14を加えた構成である。接触判定装置14では、電気信号処理装置により得られたデジタル信号を用いて、接触部分の判定が行われる。
通常、パルス光が生体界面に照射されると、界面で大きな音響波が発生し、それに基づく大きな光音響信号(電気信号)が生成される。しかし、被検体と被検体保持板が接触していない部位では音響波が伝播されないため、光音響信号が検出されない。斜め方向から伝播してくる界面信号は音響検出器で検出されるため、被検体保持板中の音速から伝播時間を計算し、音響検出器の正面の界面信号が伝播してくる時間の信号を調べることによって、音響検出器の正面の接触を判定することができる。このとき、パルス光が被検体と被検体保持板の境界界面付近に照射されている必要がある。また、音響検出器の角度は角度2、つまり0度で行う必要がある。
【0050】
図9は本実施形態を示すフロー図である。最初に角度2で全域を走査しながら、パルス光を照射し信号を取得する作業を一定間隔でくりかえす(ステップS13)。得られた信号から接触判定装置14において前述の方法を用いて接触情報を取得する(ステップS14)。
接触情報は角度・位置決定装置13に送られ、形態取得装置14から得られる情報(ステップS12)と統合されて、角度、位置を決定する(ステップS12)。その後は、図7に示した実施形態2のフローと同様に、ステップS11〜S10の処理を行う。
【0051】
以上の方法によれば、接触部分をより正確に算出することができ、角度、位置の誤った自動設定を減らすことができ、より効率よく測定を行うことができる。
【0052】
[実施形態4]
実施形態1で述べたように、界面に対する音響波の入射角が大きくなる、すなわち音響波に角度がつくことによって、音響波の全反射が発生する。全反射まではいかなくとも、角度がつくことによって被検体保持板を透過する透過率が低下してくる。本実施形態では角度がつくことによる影響を補正する方法について述べる。
【0053】
本実施形態の装置の構成を示すブロック図を図10に示す。装置の構成要素は実施形態1と同じであるが、連動制御装置8からデータ処理装置10に角度情報が送られる。
【0054】
図11に本実施形態で行われる処理フローを示す。実施形態1と比べて再構成の処理内容が異なるため、ステップS10を詳述してある。ステップS1〜S9に関しては実施形態1と同様に行われる。
【0055】
そして本実施形態では、3次元空間において、得られた信号を、伝播速度を考慮して軸を変換し(ステップS10−1)、音響検出器位置から逆投影し(ステップS10−3)、得られた画像データを表示している(ステップS10−4)。ここで、逆投影とは具体的には、逆向きにした信号を、音響検出器の位置を中心とした同心球状に描くことである。本実施形態では、逆投影を行う信号に対して、音響検出器からの角度に応じて透過率や屈折率を補正する処理を行う。そのために、データ処理装置10においては、連動制御装置8から得られた角度情報に基づいて、角度ごとに透過率を計算し、その角度に投影する信号を透過率で除算することによって、透過率の低下による影響を補正する(ステップS10−2)。なお、ステップS10−1とS10−2は入れ替わってもよい。その後、逆投影(ステップS10−3)、画像表示(ステップS10−4)の順に処理を行う。
【0056】
以上の方法によれば、音響検出器の角度に応じた音響波の透過の違いを補正できるので、全ての領域でコントラストが等しい画像が得られる。
【0057】
[実施形態5]
本発明を、超音波診断装置等の超音波装置に適用した実施形態について述べる。光音響トモグラフィーでは被検体に光を照射していたが、超音波装置では被検体に超音波を送信する。また、光音響トモグラフィーでは光吸収体が測定部位として画像化されていたが、超音波装置では音響インピーダンスの異なる箇所が測定部位として画像化される。
【0058】
図12は本実施形態の装置の構成を表わすブロック図である。実施形態1と比較すると、光源1と光照射装置2がなくなり、音響検出器5の代わりに音響送受信機15を有して構成されている。音響送受信機15は音響波を送信し、被検体内で反射してきた音響波を受信し、電気信号に変換する装置であり、走査機構6と角度変更機構7を備えている。
【0059】
図13は本実施形態の処理の流れを示したフロー図である。
領域Aを測定するために、音響波送受信装置を角度1、位置1に設定する(ステップS1、S2)。位置2まで走査を行いながら、音響送受信機15で超音波を送受信する。受信された信号は、電気信号処理装置9で処理され画像化される(ステップS15)。
同様に、領域Bを測定するために響検出器を角度2、位置3に設定する(ステップS4、S5)。位置4まで走査を行いながら、超音波を送受信、画像化を行う(ステップS16)。
さらに、領域Cを測定するために響検出器を角度3、位置5に設定する(ステップS4、S5)。位置6まで走査を行いながら、超音波を送受信、画像化を行う(ステップS17)。
最後に得られた画像をつなぎ合わせて、画像を表示する(ステップS18)。
【0060】
以上の方法によれば、超音波装置においても、ほとんどのブラインド領域を画像化でき、全領域にわたって分解能が均一な画像が得られる。
【0061】
[実施形態6]
本実施形態ではさらに多くのブラインド領域からデータを取得する方法を述べる。装置の構成要素や処理の流れは、基本的には実施形態1と同じである。
【0062】
被検体3の内部の光吸収体で発生した光音響波は等方的に広がり、被検体3の持つ側面
のうち、光吸収体から見て被検体保持板4と反対側の面の方へも伝播する。ここで、被検体3の外側は通常空気であり、被検体と空気では音響インピーダンスが大きく異なる。そのために、光吸収体から見て被検体保持板4と反対側に伝播した光音響波は、被検体と空気の界面で反射し、被検体保持板4の方へ伝播する。この反射した音響波が音響検出器により受信された結果、光音響波の発生源からの直接波から遅れて、反射波が得られる。
【0063】
実施形態1で述べたように、被検体と被検体保持板の界面での音響波の全反射、被検体と被検体保持板の空隙、構造物の配置によって音響検出器の角度には制限があるため、直接波ではブラインド領域のうち被検体保持板の近傍で信号が得られない領域がある。しかし、反射波を用いればこのような領域からも信号を得ることができる。
【0064】
反射波による信号も含んで再構成を行うと、反射界面に対し被検体と反対側に反射による鏡像が現れる。そこで、再構成画像を反射界面で折り返す処理を行い、折り返しによって重なった画像同士の平均や二乗平均平方根を取る重畳処理を行う。ここでは被検体の周りは空気であるとして説明を行ったが、水など音響インピーダンスが生体に近いものの場合は反射板を設ける必要がある。また、被検体の周りが空気の場合でも正反射に近づけるために、反射板を設置し、反射界面を平面に整形することが望ましい。
【0065】
以上の方法によれば、ブラインド領域をさらに低減させ、角度などの条件によっては完全になくすことができる。
【0066】
[実施例1]
本発明の効果を実験にて確認した実施例について述べる。被検体は模擬生体であり、乳房形状で内部に光吸収体が設置されている。また、被検体保持板は、厚さ6.8mmのポリメチルペンテンである。音響検出器は、音響検出器表面と被検体保持板の表面の距離が15mm、音響検出器表面から角度変更機構の回転軸までの距離が5mmとなるように設置した。また、音響検出器と被検体保持板の間を水で満たした。
このとき、被検体の厚さ(被検体保持板に対し垂直方向)は50mm、幅(被検体保持板に対し平行方向)は115mmである。被検体のうち、被検体保持板を支える構造物によるブラインド領域の幅が20mm、丸みのため被検体と被検体保持板が離れていることによるブラインド領域の幅が35mmである。
【0067】
音響検出器は1MHz±40%の周波数帯域を持つ2Dアレイ音響検出器であり、アレイの素子は2mm幅、2mmピッチで縦10×横10個並んだものである。光源はNd:YAGレーザーであり、波長1064nmのナノ秒オーダーのパルス光を被検体保持板の反対側から被検体に照射する。本実施例では、カメラから得られた形態情報を元に、音響検出器の角度と位置を設定するようにした。
【0068】
音響検出器の角度1〜3、位置1〜6(図4参照)の設定は次のとおりである。位置は音響検出器の中央で定義され、原点は位置3とする。
角度1:35度、角度2:0度、角度3:35度。
位置1:15mm、位置2:35mm、位置3:0mm、位置4:40mm、位置5:5mm、位置6:20mm。
【0069】
以上の設定を用いて音響検出器の角度変更と走査を行いながら、一定間隔で、パルス光の照射、音響波の受信、電気信号の増幅、デジタルアナログ変換を行い、デジタル信号を得た。このとき用いられたADCは、サンプリング周波数20MHz、分解能12bitである。それぞれの素子のデジタル信号を平均化し、屈折、反射を考慮した画像再構成処理を行うことによって光吸収体を画像化した。
【0070】
その結果、従来方法であるリニアスキャンのみで測定した場合、領域Bしか測定できなかったところ、本手法を実施することによって領域Aの90%と領域Cの65%の画像を、画質を劣化させずに取得することができた。
【0071】
[実施例2]
本実施例では、測定により取得した信号から、実施形態3で説明した方法で接触判定を行った結果について述べる。装置のセットアップについては実施例1と同じように行った。そして、音響検出器の角度を0度にしたまま被検体全域の走査を行い、一定間隔で、パルス光の照射、音響波の受信、電気信号の増幅、デジタルアナログ変換を行い、デジタル信号を得た。ポリメチルペンテン中の音響波伝播速度は2200m/s、水中の音響波伝播速度は1500m/sであるので、パルス光照射から13.1μs後の信号が被検体と被検体保持板の界面を表している。
【0072】
図14(a)に、模擬生体と被検体保持板が接触していない位置の正面に音響検出器が置かれた場合に得られた信号の一例を示す。一方、図14(b)は、模擬生体と被検体保持板が接触している位置の正面に音響検出器が置かれた場合である。
図14(b)に見られるように、模擬生体と被検体保持板が接触している場合は光の回り込みがないので13.1μsの信号レベルがベースラインレベルに下がっている。一方、図14(a)に見られるように、模擬生体と被検体保持板が接触していない場合は、光が回り込むことによって、13.1μsの時点で信号が観測される。
【0073】
図14(c)は、得られたデジタル信号においてパルス光照射から13.1μs後の信号レベルをそれぞれの位置ごとに示したものである。位置42mm以降(図中横軸で65以降)で得られた信号はベースラインよりも上がっていた。よって、42mmが領域Bと領域Cの正確な境界であることがわかった。
そのため、角度1〜3、位置1〜6を以下のように設定した。角度1:35度、角度2:0度、角度3:35度、位置1:15mm、位置2:35mm、位置3:0mm、位置4:42mm、位置5:5mm、位置6:22mm。その後、実施例1と同様に信号を取得、画像再構成処理を行い、光吸収体を画像化した。
【0074】
以上のように、本実施例のように信号に基づく接触判定を行うことにより、領域Bと領域Cの境界を精度良く求めることができた。この結果を用いることにより、音響検出器の位置および角度を適切に決定することが可能となり、良好な画像取得ができるようになる。
【0075】
[実施例3]
反射板を用いて全ブラインド領域の画像化を行った実施例について述べる。実施例1のセットアップに加えて、被検体保持板と反射板で模擬生体を挟むように反射板を設置した。反射板の材質はガラスであり、音響インピーダンスは16.0[MRayl]である。模擬生体の音響インピーダンスは1.5[MRayl]であるので、模擬生体中から発生し反射板に向かって伝播する光音響波は、ガラスとの界面にて83%が反射されて音響検出器に向かって伝播する。パルス光はガラスをほとんど透過するので、パルス光の照射は、実施例1と同様に行うことができる。
【0076】
角度1〜3、位置1〜6を、実施例1と同様に設定し、走査を行いながら、一定間隔で、パルス光の照射、電気信号の増幅、デジタルアナログ変換を行い、デジタル信号を得た。このとき、デジタル信号はパルス光照射から100μs後まで取得した。
【0077】
この信号を用いて画像再構成処理を行うと、直接音響検出器に伝播してきた光音響波による実像と、反射板を経由して音響検出器に伝播してきた光音響波による鏡像を含む光吸
収体画像が得られた。得られた画像において、音響検出器がある方を手前とし、反射板の方を奥とすると、被検体保持板との境界面から50mmより奥の領域は鏡像のみで構成される鏡像領域である。鏡像領域を被検体保持板との境界面から50mmの線で線対称になるように折り返し、被検体保持板との境界面から50mm手前の実像領域の各ボクセルと平均値を取って、光吸収体の画像を得た。
【0078】
この手法によって、全領域を画像化でき、ブラインド領域をなくすことができた。
【符号の説明】
【0079】
4:被検体保持板,5:音響検出器,6:走査機構,7:角度変更機構,8:連動制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響波取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、生体内部を非侵襲的にイメージングすることができる超音波を用いた装置が広く使用されている。一般的な超音波診断装置は、超音波を送信し生体内部で反射してきた超音波を受信することによって、生体内部の情報を得ることができる。これによって癌等の疾患部位を発見できるが、さらに発見効率を向上させるために、生体の生理的情報、つまり機能情報のイメージングが注目されている。機能情報のイメージング手段として、光と音響波を用いる、Photoacoustic Tomography(PAT:光音響トモグラフィー)が提案されている。
【0003】
光音響トモグラフィーとは、光源から発生したパルス光を被検体に照射し、被検体内で伝播・拡散した光の吸収によって音響波(典型的には超音波)が発生するという光音響効果を用いて、音響波の発生源となる内部組織を画像化する技術である。パルス光に近赤外光を用いた場合には、近赤外光は生体の大部分を構成する水を透過しやすく、血液中のヘモグロビンで吸収されやすい性質を持つため、血管像をイメージングすることができる。さらに、異なる波長のパルス光による血管像を比較し、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの比率を算出することによって、機能情報である血液中の酸素飽和度を測定することができる。悪性腫瘍周辺の血液は良性腫瘍周辺の血液より酸素飽和度が低くなっていると考えられているので、酸素飽和度を知ることによって腫瘍の良悪鑑別を行えるようになる。
【0004】
超音波診断装置と光音響トモグラフィー装置は音響波を用いるため、音響波の発生源から音響波検出器まで音響波が効率よく伝播するように音響波インピーダンスのマッチングを考慮する必要がある。音響波は物体の界面で反射され、その反射率は物質の密度と伝播音速の積である音響インピーダンスに依存する。このとき、界面の両側の物質の音響インピーダンスが近ければ、つまりマッチングが取れていれば、音響波の反射が少なく伝播しやすい。逆に、音響インピーダンスが大きく異なれば音響波は反射され、伝播効率が悪い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−57823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
生体等の被検体の広い範囲を測定する場合、図1に示したように、平板状の被検体保持板4で被検体3を保持し、音響検出器5を被検体保持板4と平行に走査し、順次位置を変えながら測定を行う方法が有効である。
被検体の測定部位として、生体の乳房のような丸い部位を扱う場合、その辺縁部では被検体3と被検体保持板4との間に空隙が生まれ、被検体3と音響インピーダンスが大きく違う空気が入ることがある。空隙が存在すると音響波が伝播しないため、音響検出器5で音響波が受信できず、内部情報を得ることができないブラインド領域3cができる。空隙を被検体3と音響インピーダンスの近い水やジェルなどで埋めることも考えられるが、被検者に負担を強いることになる。
また、乳房の根元部分には体や保持板を支える構造物18が必要である。しかし、装置
の強度を保つためには、構造物18に被検体3と音響インピーダンス近い材料を用いることは難しい。そのため、音響波が伝播できず、ブラインド領域3aができる。
【0007】
被検体の広い範囲を測定しつつブラインド領域を少なくするために、特許文献1にあるようにリニアスキャンに加えてセクタスキャンを用いることが考えられる。しかし、音響検出器の素子には指向性があるため、角度がついた音響波には感度が低くなってくる。そのためセクタスキャンの角度には限界がある上、取得できている角度でもSN比(シグナルノイズ比)が悪いものとなる。さらにセクタスキャンは、測定部位が被検体の奥側に行くに従って分解能が悪くなるという問題点がある。
【0008】
本発明は、このような課題認識に基づいてなされたものである。本発明の目的は、音響波取得装置において、画質の劣化を抑制しつつ、ブラインド領域を減らすための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の構成を採用する。すなわち、
被検体を保持する保持板と、
前記被検体から前記保持板を挟んで伝播する音響波を検出する音響検出手段と、
前記音響検出手段を前記保持板の上で走査する走査手段と、
前記音響検出手段が音響波を検出する方向の前記保持板に対する角度を変化させる角度変更手段と、
前記走査手段および前記角度変更手段を、前記被検体内における測定部位の位置に応じて制御する制御手段と、
を有することを特徴とする音響波取得装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、音響波取得装置において、画質の劣化を抑制しつつ、ブラインド領域を減らすための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】背景技術を説明する図である。
【図2】実施形態1に係る装置の構成を示す模式図である。
【図3】実施形態1に係る装置の設置を示す図である。
【図4】実施形態1に係る装置の実施方法を示す図である。
【図5】実施形態1に係る装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】実施形態2に係る装置の構成を示す模式図である。
【図7】実施形態2に係る装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】実施形態3に係る装置の構成を示す模式図である。
【図9】実施形態3に係る装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】実施形態4に係る装置の構成を示す模式図である。
【図11】実施形態4に係る装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】実施形態5に係る装置の構成を示す模式図である。
【図13】実施形態5に係る装置の動作を示すフローチャートである。
【図14】実施形態3に係る音響波検出を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照しつつ、本発明の好適な実施の形態について説明する。ただし、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状及びそれらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0013】
本発明の音響波取得装置には、被検体に超音波を送信し、被検体内部で反射した反射波(エコー波)を受信して、被検体内の特性情報を画像データとして取得する超音波エコー技術を利用した装置を含む。また、被検体に光(電磁波)を照射することにより被検体内で発生した音響波を受信して、特性情報を画像データとして取得する光音響効果を利用した装置を含む。
前者の超音波エコー技術を利用した装置の場合、取得される特性情報とは、被検体内部の組織の音響インピーダンスの違いを反映した情報である。後者の光音響効果を利用した装置の場合、取得される特性情報とは、光照射によって生じた音響波の発生源分布、被検体内の初期音圧分布、あるいは初期音圧分布から導かれる光エネルギー吸収密度分布や吸収係数分布、組織を構成する物質の濃度分布を示す。物質の濃度分布とは、例えば、測定部位における酸素飽和度分布や酸化・還元ヘモグロビン濃度分布などである。
【0014】
本発明でいう音響波とは、典型的には超音波であり、音波、超音波、音響波と呼ばれる弾性波を含む。光音響効果により発生した音響波のことを、光音響波または光超音波と呼ぶ。音響検出器は、被検体内で発生又は反射した音響波を受信する。
【0015】
[実施形態1]
実施形態1では、本発明の基本的な実施形態について説明する。図2は本実施形態に係る装置の構成要素を示すブロック図である。本実施形態では、光音響効果を利用した光音響トモグラフィー装置に発明を適用している。装置は、光源1、光照射装置2、被検体保持板4、音響検出器5、走査機構6、角度変更機構7、連動制御装置8、電気信号処理装置9、データ処理装置10、表示装置11を含む。装置の測定対象は、被検体3である。
【0016】
(光源)
光源1はパルス光を発生させる装置である。光源としては大出力を得るため、レーザーが望ましいが、発光ダイオードなどでもよい。光音響波を効果的に発生させるためには、被検体の熱特性に応じて十分短い時間に光を照射させなければならない。被検体が生体の場合、光源1から発生するパルス光のパルス幅は数十ナノ秒以下にすることが望ましい。また、パルス光の波長は生体の窓と呼ばれる近赤外領域であり、700nm〜1200nm程度が望ましい。この領域の光は比較的生体深部まで到達することができ、深部の情報を得ることができる。生体表面部の測定に限定すれば、500〜700nm程度の可視光から近赤外領域も使用してもよい。さらに、パルス光の波長は観測対象に対して吸収係数が高いことが望ましい。
【0017】
(光照射装置)
光照射装置2は、光源1で発生させたパルス光を被検体3へ導く装置である。具体的には光ファイバーやレンズ、ミラー、拡散板などの光学機器である。また、これらの光学機器がパルス光を導く際に、パルス光の形状や光密度を変更することもある。光学機器はここにあげたものだけに限定されず、必要とされる機能を満たすものであれば、どのようなものであってもよい。
【0018】
(被検体)
被検体3は測定の対象となるものである。被検体3としては主に、生体または、生体の音響特性と光学特性を模擬したファントム(模擬生体)を用いる。例えば乳癌の検査が目的であれば、被検体は生体の乳房である。音響特性とは具体的には音響波の伝播速度および減衰率であり、光学特性とは具体的には光の吸収係数および散乱係数である。被検体3の内部には、測定部位として光吸収係数の大きい光吸収体が存在する必要がある。具体的な光吸収体としては、生体の場合はヘモグロビン、水、メラニン、コラーゲン、脂質などが挙げられる。ファントムの場合は、以上のものの光学特性を模擬した物質を光吸収体と
して内部に封入する。
【0019】
(被検体保持板)
被検体保持板4は被検体を保持する平板である。被検体保持板4の材料は被検体3と音響インピーダンスが近いものが望ましい。被検体保持板4は被検体3と密着させて設置する。この際、被検体3と被検体保持板4の間に空気層ができることを避けるために、ジェルなどを塗布する。しかし、課題として上で述べたように、生体を被検体として用いた場合には、辺縁部が被検体に密着せず空隙が生じる。
【0020】
(音響検出器)
音響検出器5は音響波をアナログの電気信号に変換するものである。音響検出器5は被検体保持板4を挟んで被検体3の反対側に設置される。この時、音響波を良好に伝播させるには、被検体保持板4と音響検出器5の音響インピーダンスマッチングを取る必要があるため、両者の間にマッチング溶液を満たすことが望ましい。閉じた空間にマッチング溶液を満たすことが望ましいが、空間を閉じずに被検体保持板4と音響検出器5の間にマッチング溶液を常に流しておいてもよい。
光音響トモグラフィーでは複数の場所で音響波を捉えなければならないので、音響検出器としては複数の受信素子を平面上に並べた2D型のものが望ましい。ただし、単一素子型や、受信素子を一列に並べた1D型の音響検出器を、走査機構6を用いて複数の場所に移動させてもよい。音響検出器は感度が高く、周波数帯域が広いものが望ましく、具体的にはPZT、PVDF、cMUT、ファブリペロー干渉計を用いた音響検出器などが挙げられる。ただし、ここに挙げたものだけに限定されず、必要とされる機能を満たすものであれば、どのようなものであってもよい。
【0021】
(走査機構)
走査機構6は音響検出器5を走査させる機構である。走査は被検体保持板4と平行に行われる。走査機構はステッピングモーターなどを搭載した電動ステージであることが望ましいが、手動ステージでもよい。また、走査は二次元的に行えることが望ましい。ただし、ここに挙げたものだけに限定されず、必要とされる機能を満たすものであれば、どのようなものであってもよい。
【0022】
(角度変更機構)
角度変更機構7は、音響検出器5の被検体保持板4に対する角度を変更する機構である。角度を変更することによって音響検出器5と被検体保持板4との間に空隙ができるが、空隙に音響マッチング液を満たしておくことにより、音響インピーダンスマッチングを保つことができる。角度変更機構は電動で角度変更できることが望ましいが、手動でもよい。
【0023】
(連動制御装置)
連動制御装置8は音響検出器の走査と角度を連動して制御するものである。そのために連動制御装置8は、走査機構6と角度変更機構7を制御する機能を持つ。本発明の特徴は、走査と角度を関連付けて制御することであり、その制御の方法については後に詳述する。
【0024】
(電気信号処理装置)
電気信号処理装置9は音響検出器5で得られたアナログの電気信号を増幅し、デジタル信号へと変換するものである。効率的にデータを取得するため、音響検出器の受信素子数と同じだけアナログ−デジタル変換器(ADC)があることが望ましいが、一つのADCを順々につなぎ換えて使用してもよい。
【0025】
(データ処理装置)
データ処理装置10は電気信号処理装置9によって得られたデジタル信号を処理することによって、画像データを再構成するものである。すなわち、デジタル信号に基づいて被検体内の特性情報を画像データとして生成するものである。データ処理装置として、具体的にはコンピュータ、電気回路などが挙げられる。この時の処理方法は、微分処理した信号を重ね合わせるユニバーサルバックプロジェクション法が望ましいが、画像を再構成できる方法ならどのような方法であってもよい。被検体保持板と被検体の音響波伝播速度が異なるとき、角度に応じて音響波が屈折するので、それを補正して再構成を行うことが望ましい。
【0026】
(表示装置)
表示装置11はデータ処理装置10で生成された画像データを表示するものである。具体的にはコンピュータやテレビなどのディスプレイが挙げられる。
【0027】
図3を用いて、被検体3、被検体保持板4、音響検出器5、走査機構6、角度変更機構7の設置について説明する。図3には他に、音響検出器5の音響波受信面5a、パルス光16、音響検出器5による有効受信領域17、装置の構造物18、マッチング溶液19が示されている。被検体3は、乳房の根元の領域A(3a)、乳房の先端の領域C(3c)、中間の領域B(3b)に区分される。
【0028】
光源1が発生させて光照射装置2により導かれたパルス光16は、図3上部より被検体3に照射される。被検体3に対し被検体保持板4を挟むように音響検出器5が設置される。被検体保持板4と音響検出器5の間はマッチング溶液19で満たされており、マッチング溶液19は、被検体保持板4と図示されていないマッチング溶液保持板からなる閉空間で保持されている。また、音響検出器5は角度変更機構7と走査機構6を備えており、マッチング溶液19を保持する閉空間は、音響検出器5の走査と連動して移動する。
【0029】
音響検出器5は、被検体から伝播する音響波を有効に検出できる有効受信領域17を持つ。電子リニアスキャンを行う場合、有効受信領域17は、音響検出器5の音響波受信面5aの正面の領域としても良い。電子セクタスキャンを行う場合には、有効受信領域17は斜め方向に広がるが、リニアスキャンに比べて分解能の奥行き依存性が高くなり、場所による画質の変化が生じる。
あるいは、有効受信領域は、受信素子の指向性と感度に応じて、最大の感度で音響波を検出できる方向から所定の範囲の角度と定めても良い。また、最大の感度で受信された音響波の強度と比較して、所定の割合の強度で音響波を受信できる範囲の角度と定めても良い。これらのように受信素子の感度で有効受信領域を定義する場合、所定の角度の範囲内で検出された音響波、あるいは所定の割合の強度で検出された音響波が、有効に受信された音響波と呼べる。音響波受信面に受信素子が配列された音響検出器の場合、通常は音響波受信面の法線方向が、感度が最大の方向となる。この場合、角度変更機構が音響検出器の角度を変化させることは、音響波受信面が音響波を受信する方向を変化させることによって行われる。
【0030】
音響検出器5の角度を被検体3に対して正面に保ったまま、音響検出器5を構造物18に突き当たるまで当たるまで左に走査すると、走査がそれ以上できないために領域A(3a)は有効受信範囲17に入ることがなく、ブラインド領域となる。一方、領域B(3b)は、音響検出器5の角度を正面に保ったままでも有効受信領域17の中に入るので測定が可能である。また、領域C(3c)は、被検体保持板4と被検体3との間に空隙が生じており、音響検出器5の角度を正面に保ったままでは測定できないブラインド領域である。このように、音響検出器5の有効受信領域17の被検体3に対する角度が、被検体3の正面、すなわち被検体保持板4から略垂直な向きに固定されたままである場合、音響波を
受信できないブラインド領域3a,3cが広く存在する。
【0031】
次に、図4と図5を用いて、本発明の特徴である、連動制御装置8によって行われる音響検出器5の走査と角度変更を連動させた制御方法について述べる。簡単のために平面図で説明するが、三次元への拡張は走査や角度の次元を一つ増やせば実現できる。
【0032】
図4は、図5のフロー図の各工程における被検体3と音響検出器5の位置関係、および音響検出器5の角度を示したものである。以下、図4(a)〜(f)と、図5のステップ番号を対応付けつつ説明する。なお、ここで説明に用いる角度1〜3及び位置1〜6の決定方法は後に詳述する。
【0033】
最初に図4(a)に示すように、領域A(3a)のデータを取得する準備を行う。そのために、角度変更機構7によって、音響検出器5の角度を角度1に設定する(ステップS1)。次に走査機構6によって、音響検出器5の位置を位置1に設定する(ステップS2)。
図4(b)に示すように、角度1を保ったまま、走査機構6が音響検出器5を位置2まで走査する。走査の間、被検体3にパルス光16を照射し、音響検出器5により信号を取得する作業を、一定間隔で繰り返し行う(ステップS3)。この時パルス光16は領域A(3a)に集中して照射することが望ましいが、光は生体中で拡散するために被検体全体に照射してもよい。
【0034】
次に図4(c)に示すように、領域B(3b)のデータを取得する準備を行う。そのために、音響検出器5の角度を角度2に設定し(ステップS4)、位置を位置3に設定する(ステップS5)。
図4(d)に示すように、角度2を保ったまま、走査機構6が音響検出器5を位置4まで走査する。走査の間、被検体3にパルス光16を照射し、音響検出器5により信号を取得する作業を、一定間隔で繰り返し行う(ステップS6)。この時、有効受信領域17にパルス光16を集中して照射し、有効受信領域17の走査とともにパルス光16も同様に移動させることが望ましいが、被検体全体に照射を行ってもよい。
【0035】
さらに図4(e)に示すように、領域C(3c)のデータを取得する準備を行う。そのために、音響検出器5の角度を角度3に設定し(ステップS7)、位置を位置5に設定する(ステップS8)。
図4(f)に示すように、角度3を保ったまま、走査機構6が音響検出器5を位置6まで走査する。走査の間、被検体3にパルス光16を照射し信号を取得する作業を一定間隔で繰り返し行う(ステップS9)。この時パルス光16は領域C(3c)に集中して照射することが望ましいが、被検体全体に照射してもよい。
【0036】
最後に得られたデータをもとにデータ処理装置10が再構成を行い、結果を表示する(ステップS10)。領域Aまたは領域Cを測定対象としデータ取得する際に、領域Bも有効受信領域に入っているので、領域Bからも信号が得られている。すなわち、領域Bは複数回信号が取得されている領域がある。複数回信号が得られた箇所は、その領域を測定対象としないときの測定信号と測定対象とするときの測定信号との全ての信号を用いて再構成することが望ましい。ただし、測定ごとにその測定信号のみを用いて再構成を行い、得られた複数の画像のボクセル強度の平均値や二乗平均平方根をとるなどの重畳処理を行ってもよい。
【0037】
以上のように、角度と走査を連動して制御することによって、ブラインド領域のデータを取得できるようになる。その結果、ブラインド領域を一定の角度でリニアスキャンすることとなるので分解能が全領域で同じになり、見やすい画像が得られる。
【0038】
角度1〜3と位置1〜6は以下のように決定される。角度は音響検出器の音響波受信面の法線と被検体保持板の法線のなす角で定義される。すなわち、有効受信領域の方向と、被検体保持板の法線の方向で定義される。音響検出器が正面を向いている場合、つまり角度2は0度である。音響検出器が正面を向いている場合とは、音響検出器の音響波受信面が被検体保持板に正対している状態を指す。
【0039】
角度1、角度3は、0度以上90度未満の範囲を取り、大きければ大きいほど(被検体保持板に対し平行に近いほど)ブラインド領域を少なくできる。よって、角度は大きいほうが良いが、以下の制約条件により角度の上限が決められる。
制約条件の一つは被検体3、被検体保持板4、マッチング溶液の各界面での全反射である。いずれかの界面で全反射が起こると被検体3中の信号が音響検出器まで伝わらない。これを避けるため、角度を緩やかに(0度の側寄りに)しなければならず、全反射条件によって音響検出器の角度の上限が決定される。全反射条件は各部材の中を音響波が伝播するときの音速と、スネルの法則を用いることで算出される。各部材の全ての音速が同じであれば全反射条件はなく、どのような角度でも全反射は起きない。
【0040】
さらに角度1、角度3について各々もう一つずつの制約条件がある。この制約条件と、前述の全反射による角度の上限とを比較して、小さいほうの角度が上限となる。
角度1については、角度を緩やかにしすぎると、音響検出器の有効受信領域が被検体3と被検体保持板4で生じる空隙を通ってしまい、音響波が伝わらない。よって、図4(b)のように有効受信領域が領域Aの右上端部を通り、領域Cの左下端部を通る時の音響検出器の角度が、もう一つの上限である。
角度3については、角度を緩やかにしすぎると、領域Cの左上端部を取得するときに、より左の方に走査しなければならず、構造物に当たってしまう。よって、図4(e)のように音響検出器が最も構造物に近い位置にあるとき有効受信領域が領域Cの左上端部を通る角度が、もう一つの上限である。
【0041】
位置1〜6は、角度1,角度2,角度3で走査するとき、それぞれ領域A,領域B,領域Cと走査された有効受信領域の重畳が最大になるように決定される。
【0042】
以上の方法によれば、ほとんどのブラインド領域を画像化でき、全領域にわたって分解能が均一な画像が得られる。
【0043】
[実施形態2]
被検体が生体の場合、形状に個人差があり、再現性よく保持するのは難しいため、測定のたびに角度と走査の関係が変化してくる。本実施形態では、実施形態1の角度、位置を、被検体の外形をカメラ等で得て、自動で決定する方法について述べる。
【0044】
図6は本実施形態の装置のブロック図である。本実施形態の装置は、実施形態1の構成に、形態取得装置12、角度・位置決定装置13を加えた構成である。形態取得装置12は具体的にはカメラや三次元スキャナなどであり、被検体の形態情報、つまり外形を得ることができるものである。例えば乳房辺縁部の形態を取得すれば、被検体保持板の形状と合わせることで空隙の部位を決定できる。あるいはカメラが取得した画像を解析することにより、乳房と被検体保持板の非接触部位を決定できる。また、画像に基づいて被検体と装置の構造物の位置関係を解析し、音響検出器を走査できる範囲を決定できる。
【0045】
形態情報は角度・位置決定装置13へ送られ、角度・位置決定装置13は角度1、3、位置1〜6を自動的に決定する。角度2は0度で固定されているものとする。決定された角度1、3、位置1〜6は連動制御装置8に送られる。他の構成要素の機能は実施形態1
と同様である。
【0046】
図7は本実施形態のフロー図である。図5に示した実施形態1のフローと異なる部分について説明する。
最初に、形態取得装置12によって被検体の形態情報を取得する(ステップS11)。取得された携帯情報は、角度・位置決定装置13に送信される。
続いて、形態情報をもとに角度・位置決定装置13は角度1、3、位置1〜6を決定する(ステップS12)。このように決定された角度1、3、位置1〜6を用いて、実施形態1と同様の方法で、ステップS1〜S10に従って光音響測定を行う。
【0047】
以上の方法によれば、音響検出器の角度と位置とが連動した制御方法を自動的に決定することができ、より簡便にブラインド領域を取得することができる。
【0048】
[実施形態3]
被検体保持板が透明でない場合、被検体と被検体保持板の接触部分を、カメラなどで光学的に測定することは難しい。また、被検体保持板が透明であっても、接触部位を正確に測定することは難しい場合がある。本実施形態では、接触情報を音響波信号に基づいて取得する方法について述べる。
【0049】
図8は本実施形態の装置の構成を示すブロック図である。本実施形態の装置は、実施形態2の装置に、接触判定装置14を加えた構成である。接触判定装置14では、電気信号処理装置により得られたデジタル信号を用いて、接触部分の判定が行われる。
通常、パルス光が生体界面に照射されると、界面で大きな音響波が発生し、それに基づく大きな光音響信号(電気信号)が生成される。しかし、被検体と被検体保持板が接触していない部位では音響波が伝播されないため、光音響信号が検出されない。斜め方向から伝播してくる界面信号は音響検出器で検出されるため、被検体保持板中の音速から伝播時間を計算し、音響検出器の正面の界面信号が伝播してくる時間の信号を調べることによって、音響検出器の正面の接触を判定することができる。このとき、パルス光が被検体と被検体保持板の境界界面付近に照射されている必要がある。また、音響検出器の角度は角度2、つまり0度で行う必要がある。
【0050】
図9は本実施形態を示すフロー図である。最初に角度2で全域を走査しながら、パルス光を照射し信号を取得する作業を一定間隔でくりかえす(ステップS13)。得られた信号から接触判定装置14において前述の方法を用いて接触情報を取得する(ステップS14)。
接触情報は角度・位置決定装置13に送られ、形態取得装置14から得られる情報(ステップS12)と統合されて、角度、位置を決定する(ステップS12)。その後は、図7に示した実施形態2のフローと同様に、ステップS11〜S10の処理を行う。
【0051】
以上の方法によれば、接触部分をより正確に算出することができ、角度、位置の誤った自動設定を減らすことができ、より効率よく測定を行うことができる。
【0052】
[実施形態4]
実施形態1で述べたように、界面に対する音響波の入射角が大きくなる、すなわち音響波に角度がつくことによって、音響波の全反射が発生する。全反射まではいかなくとも、角度がつくことによって被検体保持板を透過する透過率が低下してくる。本実施形態では角度がつくことによる影響を補正する方法について述べる。
【0053】
本実施形態の装置の構成を示すブロック図を図10に示す。装置の構成要素は実施形態1と同じであるが、連動制御装置8からデータ処理装置10に角度情報が送られる。
【0054】
図11に本実施形態で行われる処理フローを示す。実施形態1と比べて再構成の処理内容が異なるため、ステップS10を詳述してある。ステップS1〜S9に関しては実施形態1と同様に行われる。
【0055】
そして本実施形態では、3次元空間において、得られた信号を、伝播速度を考慮して軸を変換し(ステップS10−1)、音響検出器位置から逆投影し(ステップS10−3)、得られた画像データを表示している(ステップS10−4)。ここで、逆投影とは具体的には、逆向きにした信号を、音響検出器の位置を中心とした同心球状に描くことである。本実施形態では、逆投影を行う信号に対して、音響検出器からの角度に応じて透過率や屈折率を補正する処理を行う。そのために、データ処理装置10においては、連動制御装置8から得られた角度情報に基づいて、角度ごとに透過率を計算し、その角度に投影する信号を透過率で除算することによって、透過率の低下による影響を補正する(ステップS10−2)。なお、ステップS10−1とS10−2は入れ替わってもよい。その後、逆投影(ステップS10−3)、画像表示(ステップS10−4)の順に処理を行う。
【0056】
以上の方法によれば、音響検出器の角度に応じた音響波の透過の違いを補正できるので、全ての領域でコントラストが等しい画像が得られる。
【0057】
[実施形態5]
本発明を、超音波診断装置等の超音波装置に適用した実施形態について述べる。光音響トモグラフィーでは被検体に光を照射していたが、超音波装置では被検体に超音波を送信する。また、光音響トモグラフィーでは光吸収体が測定部位として画像化されていたが、超音波装置では音響インピーダンスの異なる箇所が測定部位として画像化される。
【0058】
図12は本実施形態の装置の構成を表わすブロック図である。実施形態1と比較すると、光源1と光照射装置2がなくなり、音響検出器5の代わりに音響送受信機15を有して構成されている。音響送受信機15は音響波を送信し、被検体内で反射してきた音響波を受信し、電気信号に変換する装置であり、走査機構6と角度変更機構7を備えている。
【0059】
図13は本実施形態の処理の流れを示したフロー図である。
領域Aを測定するために、音響波送受信装置を角度1、位置1に設定する(ステップS1、S2)。位置2まで走査を行いながら、音響送受信機15で超音波を送受信する。受信された信号は、電気信号処理装置9で処理され画像化される(ステップS15)。
同様に、領域Bを測定するために響検出器を角度2、位置3に設定する(ステップS4、S5)。位置4まで走査を行いながら、超音波を送受信、画像化を行う(ステップS16)。
さらに、領域Cを測定するために響検出器を角度3、位置5に設定する(ステップS4、S5)。位置6まで走査を行いながら、超音波を送受信、画像化を行う(ステップS17)。
最後に得られた画像をつなぎ合わせて、画像を表示する(ステップS18)。
【0060】
以上の方法によれば、超音波装置においても、ほとんどのブラインド領域を画像化でき、全領域にわたって分解能が均一な画像が得られる。
【0061】
[実施形態6]
本実施形態ではさらに多くのブラインド領域からデータを取得する方法を述べる。装置の構成要素や処理の流れは、基本的には実施形態1と同じである。
【0062】
被検体3の内部の光吸収体で発生した光音響波は等方的に広がり、被検体3の持つ側面
のうち、光吸収体から見て被検体保持板4と反対側の面の方へも伝播する。ここで、被検体3の外側は通常空気であり、被検体と空気では音響インピーダンスが大きく異なる。そのために、光吸収体から見て被検体保持板4と反対側に伝播した光音響波は、被検体と空気の界面で反射し、被検体保持板4の方へ伝播する。この反射した音響波が音響検出器により受信された結果、光音響波の発生源からの直接波から遅れて、反射波が得られる。
【0063】
実施形態1で述べたように、被検体と被検体保持板の界面での音響波の全反射、被検体と被検体保持板の空隙、構造物の配置によって音響検出器の角度には制限があるため、直接波ではブラインド領域のうち被検体保持板の近傍で信号が得られない領域がある。しかし、反射波を用いればこのような領域からも信号を得ることができる。
【0064】
反射波による信号も含んで再構成を行うと、反射界面に対し被検体と反対側に反射による鏡像が現れる。そこで、再構成画像を反射界面で折り返す処理を行い、折り返しによって重なった画像同士の平均や二乗平均平方根を取る重畳処理を行う。ここでは被検体の周りは空気であるとして説明を行ったが、水など音響インピーダンスが生体に近いものの場合は反射板を設ける必要がある。また、被検体の周りが空気の場合でも正反射に近づけるために、反射板を設置し、反射界面を平面に整形することが望ましい。
【0065】
以上の方法によれば、ブラインド領域をさらに低減させ、角度などの条件によっては完全になくすことができる。
【0066】
[実施例1]
本発明の効果を実験にて確認した実施例について述べる。被検体は模擬生体であり、乳房形状で内部に光吸収体が設置されている。また、被検体保持板は、厚さ6.8mmのポリメチルペンテンである。音響検出器は、音響検出器表面と被検体保持板の表面の距離が15mm、音響検出器表面から角度変更機構の回転軸までの距離が5mmとなるように設置した。また、音響検出器と被検体保持板の間を水で満たした。
このとき、被検体の厚さ(被検体保持板に対し垂直方向)は50mm、幅(被検体保持板に対し平行方向)は115mmである。被検体のうち、被検体保持板を支える構造物によるブラインド領域の幅が20mm、丸みのため被検体と被検体保持板が離れていることによるブラインド領域の幅が35mmである。
【0067】
音響検出器は1MHz±40%の周波数帯域を持つ2Dアレイ音響検出器であり、アレイの素子は2mm幅、2mmピッチで縦10×横10個並んだものである。光源はNd:YAGレーザーであり、波長1064nmのナノ秒オーダーのパルス光を被検体保持板の反対側から被検体に照射する。本実施例では、カメラから得られた形態情報を元に、音響検出器の角度と位置を設定するようにした。
【0068】
音響検出器の角度1〜3、位置1〜6(図4参照)の設定は次のとおりである。位置は音響検出器の中央で定義され、原点は位置3とする。
角度1:35度、角度2:0度、角度3:35度。
位置1:15mm、位置2:35mm、位置3:0mm、位置4:40mm、位置5:5mm、位置6:20mm。
【0069】
以上の設定を用いて音響検出器の角度変更と走査を行いながら、一定間隔で、パルス光の照射、音響波の受信、電気信号の増幅、デジタルアナログ変換を行い、デジタル信号を得た。このとき用いられたADCは、サンプリング周波数20MHz、分解能12bitである。それぞれの素子のデジタル信号を平均化し、屈折、反射を考慮した画像再構成処理を行うことによって光吸収体を画像化した。
【0070】
その結果、従来方法であるリニアスキャンのみで測定した場合、領域Bしか測定できなかったところ、本手法を実施することによって領域Aの90%と領域Cの65%の画像を、画質を劣化させずに取得することができた。
【0071】
[実施例2]
本実施例では、測定により取得した信号から、実施形態3で説明した方法で接触判定を行った結果について述べる。装置のセットアップについては実施例1と同じように行った。そして、音響検出器の角度を0度にしたまま被検体全域の走査を行い、一定間隔で、パルス光の照射、音響波の受信、電気信号の増幅、デジタルアナログ変換を行い、デジタル信号を得た。ポリメチルペンテン中の音響波伝播速度は2200m/s、水中の音響波伝播速度は1500m/sであるので、パルス光照射から13.1μs後の信号が被検体と被検体保持板の界面を表している。
【0072】
図14(a)に、模擬生体と被検体保持板が接触していない位置の正面に音響検出器が置かれた場合に得られた信号の一例を示す。一方、図14(b)は、模擬生体と被検体保持板が接触している位置の正面に音響検出器が置かれた場合である。
図14(b)に見られるように、模擬生体と被検体保持板が接触している場合は光の回り込みがないので13.1μsの信号レベルがベースラインレベルに下がっている。一方、図14(a)に見られるように、模擬生体と被検体保持板が接触していない場合は、光が回り込むことによって、13.1μsの時点で信号が観測される。
【0073】
図14(c)は、得られたデジタル信号においてパルス光照射から13.1μs後の信号レベルをそれぞれの位置ごとに示したものである。位置42mm以降(図中横軸で65以降)で得られた信号はベースラインよりも上がっていた。よって、42mmが領域Bと領域Cの正確な境界であることがわかった。
そのため、角度1〜3、位置1〜6を以下のように設定した。角度1:35度、角度2:0度、角度3:35度、位置1:15mm、位置2:35mm、位置3:0mm、位置4:42mm、位置5:5mm、位置6:22mm。その後、実施例1と同様に信号を取得、画像再構成処理を行い、光吸収体を画像化した。
【0074】
以上のように、本実施例のように信号に基づく接触判定を行うことにより、領域Bと領域Cの境界を精度良く求めることができた。この結果を用いることにより、音響検出器の位置および角度を適切に決定することが可能となり、良好な画像取得ができるようになる。
【0075】
[実施例3]
反射板を用いて全ブラインド領域の画像化を行った実施例について述べる。実施例1のセットアップに加えて、被検体保持板と反射板で模擬生体を挟むように反射板を設置した。反射板の材質はガラスであり、音響インピーダンスは16.0[MRayl]である。模擬生体の音響インピーダンスは1.5[MRayl]であるので、模擬生体中から発生し反射板に向かって伝播する光音響波は、ガラスとの界面にて83%が反射されて音響検出器に向かって伝播する。パルス光はガラスをほとんど透過するので、パルス光の照射は、実施例1と同様に行うことができる。
【0076】
角度1〜3、位置1〜6を、実施例1と同様に設定し、走査を行いながら、一定間隔で、パルス光の照射、電気信号の増幅、デジタルアナログ変換を行い、デジタル信号を得た。このとき、デジタル信号はパルス光照射から100μs後まで取得した。
【0077】
この信号を用いて画像再構成処理を行うと、直接音響検出器に伝播してきた光音響波による実像と、反射板を経由して音響検出器に伝播してきた光音響波による鏡像を含む光吸
収体画像が得られた。得られた画像において、音響検出器がある方を手前とし、反射板の方を奥とすると、被検体保持板との境界面から50mmより奥の領域は鏡像のみで構成される鏡像領域である。鏡像領域を被検体保持板との境界面から50mmの線で線対称になるように折り返し、被検体保持板との境界面から50mm手前の実像領域の各ボクセルと平均値を取って、光吸収体の画像を得た。
【0078】
この手法によって、全領域を画像化でき、ブラインド領域をなくすことができた。
【符号の説明】
【0079】
4:被検体保持板,5:音響検出器,6:走査機構,7:角度変更機構,8:連動制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を保持する保持板と、
前記被検体から前記保持板を透過して伝播する音響波を検出する音響検出手段と、
前記音響検出手段を前記保持板の上で走査する走査手段と、
前記音響検出手段が音響波を検出する方向の前記保持板に対する角度を変化させる角度変更手段と、
前記走査手段および前記角度変更手段を、前記被検体内における測定部位の位置に応じて制御する制御手段と、
を有することを特徴とする音響波取得装置。
【請求項2】
前記音響検出手段は、音響波を検出する方向において、音響波を有効に検出できる領域である有効受信領域を有し、
前記角度変更手段は、前記有効受信領域の方向を変更することにより、前記音響検出手段が音響波を検出する方向の前記保持板に対する角度を変化させる
ことを特徴とする請求項1に記載の音響波取得装置。
【請求項3】
前記音響検出手段は、音響波受信面に複数の受信素子が配列されたものであり、
前記有効受信領域は、前記音響波受信面の正面の領域である
ことを特徴とする請求項2に記載の音響波取得装置。
【請求項4】
前記有効受信領域は、前記音響検出手段に含まれる受信素子が所定の感度で音響波を受信できる範囲である
ことを特徴とする請求項2に記載の音響波取得装置。
【請求項5】
前記被検体内の測定部位のうち、前記音響検出手段の前記有効受信領域の方向が前記保持板の法線の方向である場合に、当該測定部位から伝播する音響波を前記音響検出手段が検出できない測定部位をブラインド領域とすると、
前記制御手段は、測定部位が前記ブラインド領域に含まれる場合、前記有効受信領域が前記ブラインド領域にかかるように、前記角度変更手段および前記走査手段を制御する
ことを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の音響波取得装置。
【請求項6】
前記ブラインド領域は、測定部位から前記保持板の法線の方向に伝播した音響波が前記保持板を透過する位置に構造物があることにより、前記走査手段が前記音響検出手段を走査することができない領域である
ことを特徴とする請求項5に記載の音響波取得装置。
【請求項7】
前記ブラインド領域は、前記被検体と前記保持板の間に空隙があることにより、測定部位からの音響波が前記保持板の法線の方向に伝播しない領域である
ことを特徴とする請求項5または6に記載の音響波取得装置。
【請求項8】
測定部位が前記ブラインド領域に含まれる場合、前記制御手段は、前記音響検出手段が前記ブラインド領域に向かい合う領域に含まれないように前記走査手段を制御するとともに、前記有効受信領域の方向が前記ブラインド領域のある方向になるように前記角度変更手段を制御する
ことを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の音響波取得装置。
【請求項9】
前記被検体の形態を取得する形態取得手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記形態取得手段が取得した形態情報に基づいて、前記走査手段および前記角度変更手段を制御する
ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の音響波取得装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記音響検出手段が検出した音響波から前記被検体と前記保持板との接触情報を取得し、当該接触情報に基づいて前記走査手段および前記角度変更手段を制御する
ことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の音響波取得装置。
【請求項11】
前記音響検出手段が検出した音響波に基づき前記被検体内の特性情報を生成するデータ処理手段をさらに有する
ことを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の音響波取得装置。
【請求項12】
前記データ処理手段は、前記音響検出手段が検出した音響波ごとに前記保持板に対する角度情報を取得し、当該角度情報を用いて前記保持板による音響波の透過率の低下を補正する
ことを特徴とする請求項11に記載の音響波取得装置。
【請求項13】
前記被検体を挟んで前記保持板の反対側に設置される反射板をさらに有し、
前記音響検出手段は、前記被検体内の測定部位で発生して前記反射板で反射した音響波を検出し、
前記データ処理手段は、前記反射板で反射した音響波も用いて特性情報を生成する
ことを特徴とする請求項11または12に記載の音響波取得装置。
【請求項14】
前記被検体から伝播する音響波は、光を照射された前記被検体内の光吸収体から発生する光音響波である
ことを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の音響波取得装置。
【請求項15】
前記被検体から伝播する音響波は、前記音響検出手段から送信された音響波が前記被検体内で反射した音響波である
ことを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の音響波取得装置。
【請求項1】
被検体を保持する保持板と、
前記被検体から前記保持板を透過して伝播する音響波を検出する音響検出手段と、
前記音響検出手段を前記保持板の上で走査する走査手段と、
前記音響検出手段が音響波を検出する方向の前記保持板に対する角度を変化させる角度変更手段と、
前記走査手段および前記角度変更手段を、前記被検体内における測定部位の位置に応じて制御する制御手段と、
を有することを特徴とする音響波取得装置。
【請求項2】
前記音響検出手段は、音響波を検出する方向において、音響波を有効に検出できる領域である有効受信領域を有し、
前記角度変更手段は、前記有効受信領域の方向を変更することにより、前記音響検出手段が音響波を検出する方向の前記保持板に対する角度を変化させる
ことを特徴とする請求項1に記載の音響波取得装置。
【請求項3】
前記音響検出手段は、音響波受信面に複数の受信素子が配列されたものであり、
前記有効受信領域は、前記音響波受信面の正面の領域である
ことを特徴とする請求項2に記載の音響波取得装置。
【請求項4】
前記有効受信領域は、前記音響検出手段に含まれる受信素子が所定の感度で音響波を受信できる範囲である
ことを特徴とする請求項2に記載の音響波取得装置。
【請求項5】
前記被検体内の測定部位のうち、前記音響検出手段の前記有効受信領域の方向が前記保持板の法線の方向である場合に、当該測定部位から伝播する音響波を前記音響検出手段が検出できない測定部位をブラインド領域とすると、
前記制御手段は、測定部位が前記ブラインド領域に含まれる場合、前記有効受信領域が前記ブラインド領域にかかるように、前記角度変更手段および前記走査手段を制御する
ことを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の音響波取得装置。
【請求項6】
前記ブラインド領域は、測定部位から前記保持板の法線の方向に伝播した音響波が前記保持板を透過する位置に構造物があることにより、前記走査手段が前記音響検出手段を走査することができない領域である
ことを特徴とする請求項5に記載の音響波取得装置。
【請求項7】
前記ブラインド領域は、前記被検体と前記保持板の間に空隙があることにより、測定部位からの音響波が前記保持板の法線の方向に伝播しない領域である
ことを特徴とする請求項5または6に記載の音響波取得装置。
【請求項8】
測定部位が前記ブラインド領域に含まれる場合、前記制御手段は、前記音響検出手段が前記ブラインド領域に向かい合う領域に含まれないように前記走査手段を制御するとともに、前記有効受信領域の方向が前記ブラインド領域のある方向になるように前記角度変更手段を制御する
ことを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の音響波取得装置。
【請求項9】
前記被検体の形態を取得する形態取得手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記形態取得手段が取得した形態情報に基づいて、前記走査手段および前記角度変更手段を制御する
ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の音響波取得装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記音響検出手段が検出した音響波から前記被検体と前記保持板との接触情報を取得し、当該接触情報に基づいて前記走査手段および前記角度変更手段を制御する
ことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の音響波取得装置。
【請求項11】
前記音響検出手段が検出した音響波に基づき前記被検体内の特性情報を生成するデータ処理手段をさらに有する
ことを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の音響波取得装置。
【請求項12】
前記データ処理手段は、前記音響検出手段が検出した音響波ごとに前記保持板に対する角度情報を取得し、当該角度情報を用いて前記保持板による音響波の透過率の低下を補正する
ことを特徴とする請求項11に記載の音響波取得装置。
【請求項13】
前記被検体を挟んで前記保持板の反対側に設置される反射板をさらに有し、
前記音響検出手段は、前記被検体内の測定部位で発生して前記反射板で反射した音響波を検出し、
前記データ処理手段は、前記反射板で反射した音響波も用いて特性情報を生成する
ことを特徴とする請求項11または12に記載の音響波取得装置。
【請求項14】
前記被検体から伝播する音響波は、光を照射された前記被検体内の光吸収体から発生する光音響波である
ことを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の音響波取得装置。
【請求項15】
前記被検体から伝播する音響波は、前記音響検出手段から送信された音響波が前記被検体内で反射した音響波である
ことを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の音響波取得装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−103064(P2013−103064A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250601(P2011−250601)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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