説明

音響発生装置

【課題】スピーカの電気/音響変換素子とは異なる構造体を音響振動出力体として備える音響発生装置において、該音響振動出力体からの音響発生効率を向上させる。
【解決手段】振動軸5の一端側は振動発生部3の出力側に接続され、他端側は装飾用ホルダ29における空隙35の開口寄りの部位にまで達している。振動軸5とケーシング1の支柱部分とにより画定される隙間に介装される振動軸保持用Oリング31、33により、横方向のガタツキを防止された状態で、振動発生部3からの音響振動が振動軸5、及び音響発生用自在継手固定キャップ9を通じて音響発生葉用自在継手11に確実に伝達される。振動発生部3から振動軸5に伝達される音響振動は、台座7から、音響発生葉用自在継手13、15、41にも確実に伝達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音源からの電気信号を、音響振動に変換して出力する音響発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ストレスの解消と室内緑化のための植木鉢を有効に利用することを目的としたサラウンドタイプのスピーカシステムが提案されている。該提案に係るスピーカシステムでは、内部にスピーカユニットを装着したスピーカボックスの下面に、一対の脚と放音部とが形成され、該スピーカボックスの天板と植木鉢の底部とが密着した状態で係合された構成になっている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、スピ−カユニットが小型で低音特性に優れ、且つ室内装飾品として優れた形状を有するバスレフ型のスピーカボックスを提供することを目的とした提案もなされている。該提案に係るスピーカボックスは、ボックス主体と、その外部から上方に延びるダクトとが、滑らかな曲線を呈する外殻により一体に形成された構成となっている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
更に、草花や木などから音楽や声などの音響を発生させることができるようにすることを目的とした音響発生装置が提案されている。該提案に係る音響発生装置では、音源機器からその出力端子を通じて出力される電気信号によりコイル部を振動させ、コイル部に嵌入された草花や木などの棒状の被音響発生部材から音響を発生させるような構成となっている(例えば特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】実願平4−93439号(実開平6−54388号)のマイクロフィルム
【特許文献2】実願昭60−85635号(実開昭61−202990号)のマイクロフィルム
【特許文献3】特許第3353008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した提案のうちの、特許文献1として挙げた提案に開示されている技術、及び特許文献2として挙げた提案に開示されている技術は、夫々所期の目的を達成することが可能であったとしても、本質的に、草花や植木等の植物自体から音響を発生させるものではない。現実には、これら2つの提案に係る装置(スピーカシステム、及びスピーカボックス)は、音源からの出力信号がスピーカにおいて音響に変換されて、音響がスピーカから発せられるにも拘らず、恰も音響が上記植物から発せられるように擬似的に構成されているに過ぎない。上記に加えて、上記2つの提案に開示されている技術では、充分に高い音量や高品質の音響が得られないという問題もある。
【0007】
そこで、このような事情に鑑みて提案されたのが、特許文献3として挙げた提案に係る技術である。
【0008】
しかし、この提案に開示されている技術は、所期の目的を達成することが可能であったとしても、装置の設置条件に制約があるので、ユーザが所望する設置箇所によっては、該装置を設置できない場合がある。また、該提案に係る技術では、被音響発生部材である草花や木や創作物などの棒状部材を、コイル部に確実に取付けるための具体的な方法が開示されていないから、被音響発生部材をコイル部に確実に取付けるのは困難である。また、該提案に係る技術では、被音響発生部材からだけではなく、音響発生装置本体からも音響が発生し、しかも、該音響の方が、(草花や木等の植物、これらを模造した構造物、その他人工的な構造物等の)被音響発生部材から発生する音響よりも大きいという問題もある。また、該提案に係る技術では、被音響発生部材から発生する音響や、音響発生装置本体から発生する音響の音量及び音質と、通常のスピーカから出力される音響の音量及び音質とを比較すると、被音響発生部材や音響発生装置本体から発生する音響の方が、通常のスピーカから出力される音響よりも音量が小さく、音質が劣るという問題もある。
【0009】
更に、本発明者が実験を行った結果では、従来より製造されている所謂造花と称される部材が、音響を発生させる構造物(構造体)としては不適当であるという事実が判明している。
【0010】
従って本発明の目的は、スピーカの電気/音響変換素子とは異なる構造体を音響振動出力体として備える音響発生装置において、該音響振動出力体からの音響発生効率を向上させることができるようにすることにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、音響振動出力体として、草花や木等の植物に類似させた人工の構造体、若しくは草花や木等の植物とは非類似の人工の構造体を用いて音響を発生させることが可能な音響発生装置を提供することにある。
【0012】
また、本発明の更に他の目的は、高品質の音響が出力可能で、且つ低音の音響の再生帯域を広くとることが可能なスピーカを、観葉植物の略中央の部位にセットできるようにすると共に、それにより、スピーカからの音響が恰も観葉植物からの音響として認識され得るようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の観点に従う音響発生装置は、音源からの電気信号を、音響振動に変換する電気信号/音響振動変換部と、略直線状に延在する剛体で構成される、一端側が前記電気信号/音響振動変換部に接続され、一端側から伝達される上記電気信号/音響振動変換部からの音響振動を他端側へと導くための音響振動伝達部材と、可撓性を有する線状の弾性材を構成要素として含み、一端側が上記音響振動伝達部材の他端部寄りの部位に着脱自在に取付けられる、上記音響振動伝達部材からの音響振動を他端側へと導くための継手部材と、所定の曲率で湾曲せしめられ、上記継手部材の他端側に着脱自在に保持される植物の特定部位の形状に模して作成された音響振動出力体であって、上記継手部材を通じて伝達される音響振動を可聴の音響として所定の指向方向に出力する音響振動出力体と、を備える。
【0014】
本発明の第1の観点に係る好適な実施形態では、上記継手部材が、固定金具を介して上記音響振動伝達部材の上記他端側に着脱自在に取付けられている。
【0015】
上記とは別の実施形態では、上記可撓性を有する線状の弾性材が、竹ひごであり、上記継手部材は、複数本の竹ひごの束と、その束を包囲する熱収縮チューブと、上記竹ひごの束を固定するための固定用部材とを有する。
【0016】
また、上記とは別の実施形態では、上記所定の曲率が、上記音響振動出力体の軸線方向の長さに対し、0.64倍程度に設定されている。
【0017】
また、上記とは別の実施形態では、上記音響振動出力体が、草花、又は植木に模して作成されている。
【0018】
また、上記とは別の実施形態では、上記音響振動出力体、及び上記継手部材が、夫々複数備えられており、各々の音響振動出力体は、互いに接触することがないような位置関係で夫々異なる継手部材によって保持されている。
【0019】
また、上記とは別の実施形態では、上記音響振動出力体と略同一形状を呈する1個又は複数個のダミーの音響振動出力体を更に備える。
【0020】
更に、上記とは別の実施形態では、上記1個又は複数個のダミーの音響振動出力体が、上記音響振動出力体と接触することがないような位置関係で夫々上記音響振動伝達部材からの音響振動が伝達されない構造体により支持される異なる継手部材によって保持されている。
【0021】
本発明の第2の観点に従うスピーカシステムは、ハウジングと、一端側が外部に開放され、他端側が上記ハウジングの内部空間に連通する第1の音響管と、上記ハウジングの内部空間に設けられるスピーカユニットであって、そのコーン面を上記第1の音響管の他端側が臨む部位に対向するように上記内部空間に配置され、上記内部空間を外部に開放されている第1のキャビネットと、外部から密閉状態で隔離される第2のキャビネットとに仕切るスピーカユニットと、上記第1の音響管内から上記第1のキャビネットの内部空間にかけての部位に摺動自在に設けられる第2の音響管であって、その上記コーン面に対向する側の端部が、上記コーン面に接触することの無い位置を基準位置として、それより離間する任意の位置で位置決めされ、固定される第2の音響管と、を備える。
【0022】
本発明の第2の観点に係る好適な実施形態では、上記基準位置が、音源から上記スピーカユニットに出力される電気信号により、上記コーン面が振動しても、上記第2の音響管の前記端部が、上記コーン面に接触することの無い位置である。
【0023】
上記とは別の実施形態では、上記第1の音響管の外部に開放している側に、1個又は複数個の音響ポートが設けられている。
【0024】
また、上記とは別の実施形態では、上記音響ポートの個数、及び大きさが、上記スピーカシステムにおけるヘルムホルツ共振周波数特性に顕著な影響を及ぼさない範囲で設定される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、スピーカの電気/音響変換素子とは異なる構造体を音響振動出力体として備える音響発生装置において、該音響振動出力体からの音響発生効率を向上させることができるようにすることが可能になる。
【0026】
また、本発明によれば、音響振動出力体として、草花や木等の植物に類似させた人工の構造体、若しくは草花や木等の植物とは非類似の人工の構造体を用いて音響を発生させることが可能な音響発生装置を提供することができる。
【0027】
更に、本発明によれば、高品質の音響が出力可能で、且つ低音の音響の再生帯域を広くとることが可能なスピーカを、観葉植物の略中央の部位にセットできるようにすると共に、それにより、スピーカからの音響が恰も観葉植物からの音響として認識され得るようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を、図面により詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係る音響発生装置が備える振動装置の全体構成を示した図である。図1において、図1(a)は、上記振動装置を上方から見た図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A´線で切断したときの上記振動装置の断面構造を示した図である。
【0030】
上記振動装置は、図1(a)、及び図1(b)に示すように、ケーシング1と、振動発生部3と、振動軸5と、台座7と、音響発生用自在継手固定キャップ9と、複数の音響発生葉用自在継手11、13、15、41と、複数のダミー(装飾葉)用自在継手17、19、37と、装飾用ホルダ29と、を備える。上記振動装置は、上記各部に加えて、更に、複数の音響発生葉用自在継手固定ねじ21、23、43と、複数のダミー(装飾葉)用自在継手固定ねじ25、27、39と、複数の振動軸保持用Oリング31、33をも備える。
【0031】
図1(a)に示すように、上記振動装置は、その上方から見た全体形状が、略円形状を呈し、最外郭に略円環状を呈する装飾用ホルダ29が、その内周側に円環状の空隙35を隔てて略円環状を呈する台座7が、同心に配置された構成になっている。装飾用ホルダ29の内周面には、ダミー(装飾葉)用自在継手17、19、37が、略等間隔に配置されており、各ダミー(装飾葉)用自在継手17、19、37は、夫々ダミー(装飾葉)用自在継手固定ねじ25、27、39によって取付固定されている。
【0032】
台座7の外周面には、音響発生葉用自在継手13、15、41が、略等間隔に配置されており、各音響発生葉用自在継手13、15、41は、夫々音響発生葉用自在継手固定ねじ21、23、43によって取付固定されている。また、台座7の中心には、振動軸5が嵌挿されており、振動軸5の上端部分には、音響発生用自在継手固定キャップ9が装着されている。(図1(b)に記載の)音響発生葉用自在継手11は、音響発生用自在継手固定キャップ9を介して振動軸5に連携される。
【0033】
図1(b)に示すように、ケーシング1は、その側断面が略逆T字状を呈しており、ケーシング1の横方向に拡がる底部の略中央には、例えば円柱形状を呈する振動発生部3が配置されている。一方、ケーシング1の縦方向に延在する支柱部分の上端部近傍には、装飾用ホルダ29が嵌合されている。装飾用ホルダ29は、その側断面が略凹状を呈するように、装飾用ホルダ29と同心状に切り欠かれた上部が全開している空隙35を有する。
【0034】
振動軸5は、その一端側が振動発生部3の出力側に接続されると共に、その他端側は、装飾用ホルダ29における空隙35の開口寄りの部位にまで達している。振動軸5は、振動軸5とケーシング1の支柱部分とにより画定される隙間に介装される振動軸保持用Oリング31、33により、横方向のガタツキを防止された状態で、振動発生部3からの音響振動(縦波:疎密波)が振動軸5、及び音響発生用自在継手固定キャップ9を通じて音響発生葉用自在継手11に確実に伝達されるように保持される。なお、振動発生部3から振動軸5に伝達される音響振動は、更に、台座7から、音響発生葉用自在継手13、15、41にも確実に伝達される。
【0035】
本実施形態では、振動軸保持用Oリング31が、上記支柱部分の上端寄りの部位に、振動軸保持用Oリング33が、上記支柱部分の下端寄りの部位に、夫々介装されている。振動軸5の上端部には、音響発生用自在継手固定キャップ9の下部の部位が装着されており、音響発生用自在継手固定キャップ9の上部の部位は、音響発生葉用自在継手11の下端寄りの部位に装着されている。
【0036】
台座7は、略円柱形状を呈しており、その略中心に振動軸5が嵌挿されている。台座7は、空隙35の底部寄りの部位に位置決めされ、台座固定用のねじ44により振動軸5に取付固定されている。図1(a)において述べたように、台座7の外周面には、複数の音響発生葉用自在継手13、15(、41)が、略等間隔に配置されており、各音響発生葉用自在継手13、15(、41)は、夫々音響発生葉用自在継手固定ねじ21、23(、43)によって取付固定されている。
【0037】
図1(a)において述べたように、装飾用ホルダ29の内周面には、複数のダミー(装飾葉)用自在継手17、19(、37)が、略等間隔に配置されており、各ダミー(装飾葉)用自在継手17、19(、37)は、夫々ダミー(装飾葉)用自在継手固定ねじ25、27(、39)によって取付固定されている。これらのダミー(装飾葉)用自在継手17、19(、37)の下端部は、空隙35の底部、即ち、装飾用ホルダ29に没入した状態で取付固定されている。
【0038】
図2は、図1に記載の振動装置において、振動伝達系統を構成する各部を示した図である。図2において、図2(a)は、上記振動伝達系統を上方から見た図であり、図2(b)は、図2(a)のB−B´線で切断したときの上記振動伝達系統の断面構造を示した図である。
【0039】
本実施形態では、振動伝達系統が、振動軸5と、台座7と、複数の音響発生葉用自在継手11、13、15(、41)とによって構成される。図1において詳細に説明したように、振動軸5は、その一端側が振動発生部3の出力側に接続されていると共に、その他端側寄りの部位には、台座7が、その略中心部が嵌挿された状態で、台座固定用のねじ44により取付固定されている。
【0040】
図3は、図1に記載の振動装置を構成するケーシング1、振動発生部3、及び振動軸5を示した図である。図3において、図3(a)は、ケーシング1、振動発生部3、及び振動軸5を上方から見た図であり、図3(b)は、図3(a)のC−C´線で切断したときのケーシング1、振動発生部3、及び振動軸5の断面構造を示した図である。
【0041】
図1において述べたように、上方から見たケーシング1の底部の輪郭、同じく上方から見たケーシング1の支柱部分の輪郭、同じく上方から見た振動軸5の輪郭は、何れも略円形状を呈するように構成されており、ケーシング1の底部、ケーシング1の支柱部分、及び振動軸5は、同心状に配置されている。
【0042】
振動発生部3は、スピーカのコアの部分に対応するもので、例えば固定子であるリング状の磁石と、振動子(可動子)であるボイスコイルと、を備える。振動発生部3は、図示しない音源(例えばCDプレイヤー)から一対の信号ケーブル(図示しない)を通じて伝送される音響信号(電気信号)を、ボイスコイルにより音響(振動)に変換する。
【0043】
振動軸5は、例えば剛体で構成されており、その基端側が上述したボイスコイルの上面に取付固定されている。なお、符号31、33で示した部材は、振動軸保持用Oリングである。
【0044】
図4は、図1、及び図2に記載の音響発生葉用自在継手11、13、15、41、及びダミー(装飾葉)用自在継手17、19、37の構造を示した図である。図4において、図4(a)は、音響発生葉用自在継手11、13、15、41、及びダミー(装飾葉)用自在継手17、19、37を上方から見た図であり、図4(b)は、内部構造の一部が露出された状態の音響発生葉用自在継手11、13、15、41、及びダミー(装飾葉)用自在継手17、19、37の斜視図である。更に、図4(c)は、内部構造の全部が露出された状態の音響発生葉用自在継手11、13、15、41、及びダミー(装飾葉)用自在継手17、19、37の斜視図である。
【0045】
図4に示すように、音響発生葉用自在継手11、13、15、41、及びダミー(装飾葉)用自在継手17、19、37は、複数本(例えば5本程度)の細長い竹ひご45、47、49、51、53と、熱収縮チューブ55と、固定キャップ57と、を構成要素とする。竹ひご45、47、49、51、53は、(音響発生葉用自在継手、及びダミー(装飾葉)用自在継手の)骨格部材として採用されるもので、図4(b)に示すように何れも直線状に延びる長尺な部材であり、それらは音響振動の伝達効率を低下させないために、互いに密着した状態で束ねられている。竹ひご45、47、49、51、53に、何れも細長い竹材を用いる理由は、曲げた状態(湾曲した状態)にすることが比較的容易であるのみならず、細長いが故に、竹ひご(45、47、49、51、53)の一端側から他端側への音響振動の伝達効率が比較的高いからである。
【0046】
1束に束ねられた竹ひご45、47、49、51、53の一端側には、図4(c)に示すように竹ひご45、47、49,51、53の束を固定するために、固定キャップ57が被されている。固定キャップ57は、例えば市販の接着剤により上記竹ひご45、47、49、51、53の束の一端側に接着され、固定されている。更に、1束に束ねられた竹ひご45、47、49、51、53の外周部は、上記固定キャップ57が被せられている一端側の部位を除いた(開放端になっている)他端側の部位に至る残りの部位の全部に亘って、熱収縮チューブ55により、図4(a)に示す態様で包囲されている。なお、上述した自在継手(音響発生葉用自在継手(11、13、15、41)、のみならず、ダミー(装飾葉)用自在継手(17、19、37)をも含む)は、直線状に延在している状態が音響振動の伝達効率が最も高く、湾曲の度合が大きくなればなるほど音響振動の伝達効率が低下する。上記自在継手は、固定金具の締付の度合を強めることによって、設定した湾曲の度合を維持することができ、また、固定金具の締付の度合を緩めることにより、湾曲の度合を自在に設定変更することができる。このように、自在継手の湾曲の度合を自在に調整することができるので、音響振動出力体の取付角度を自由に設定することができる。
【0047】
図5は、図4に記載の音響発生葉用自在継手11、13、15、41、及びダミー(装飾葉)用自在継手17、19、37が湾曲したときの状態を示した図である。なお、図5(a)、及び図5(b)において、図4(b)、及び図4(c)におけると同一物には、同一符号を付す。
【0048】
図5(a)、及び図5(b)に示すように、音響発生葉用自在継手11、13、15、41、及びダミー(装飾葉)用自在継手17、19、37において、1束に束ねられている竹ひご45、47、49、51、53の一端側のみ(固定キャップ57と接着剤で)固定した状態で、音響発生葉用自在継手11、13、15、41、及びダミー(装飾葉)用自在継手17、19、37を弓なりに反らせると、例えば竹ひご45、及び竹ひご53の固定していない他端側において、それらの長さの間に“D”という差が生じる。
【0049】
しかし、上記状態で、上記1束に束ねられている複数本の竹ひご45、47、49、51、53の他端側を、図1、及び図2に記載の音響発生用自在継手固定キャップ9、音響発生葉用自在継手固定ねじ21、23、43、及びダミー(装飾葉)用自在継手固定ねじ25、27、39を用いてずれないように振動軸5や、台座7に取付固定することにより、仮に上記竹ひご45、47、49、51、53が弓なりに反ったとしても、竹ひご45、及び竹ひご53の固定していない他端側において、それらの長さの間に“D”という差が生じるのを防止することができる。よって、上記各自在継手は、その軸方向(垂直方向)に固定された状態で保持されるから、音響発生葉用自在継手11、13、15、41を介した音響発生用部材(これについては、後に詳述する。)の自由な設置が可能になると共に、振動軸5や、振動軸5、及び台座7を介した振動発生部3からの音響振動の効率的な伝達が可能になる。
【0050】
本実施形態では、音響発生葉用自在継手11、13、15、41、及びダミー(装飾葉)用自在継手17、19、37を構成する骨格部材として、単位体積当りの重量が軽く、軸方向に対し大きな強度(硬度)を持ち、音響振動を伝達するための素材としても優れた材質である竹ひごを用いた。しかし、音響発生葉用自在継手11、13、15、41、及びダミー(装飾葉)用自在継手17、19、37を構成する骨格部材は、竹ひごのみに限定されるものではなく、竹ひごと同等の性質(弾性力や可撓性)を有するものであれば、どのような材料を用いても差し支えない。
【0051】
図6は、本発明の一実施形態に係る音響発生装置において、音響発生用部材として用いられる葉の模造品(人造の葉)の一例を示す説明図である。
【0052】
図6に示すように、音響発生用部材としての人造の葉59は、その茎の部位が接続用の円筒状固定金具61を介して音響発生葉用自在継手(11、13、15、41)の固定キャップ57が被されている側の端部に取付固定される。既述のように、音響発生葉用自在継手11の他端側は、音響発生用自在継手固定キャップ9を介して振動軸5に、音響発生葉用自在継手13、15、41の他端側は、音響発生葉用自在継手固定ねじ21、23、43を介して台座7に、夫々取付固定される。これにより、振動発生部3からの音響振動が音響発生葉用自在継手11、13、15、41に伝達される。
【0053】
図7は、図6に記載の人造の葉59の構造の一例を示した図である。図7において、図7(a)は、人造の葉59の正面図であり、図7(b)は、該人造の葉59の側面図である。
【0054】
図7に記載の例では、何れも人造の葉59の葉脈である中心軸63と、複数本(図7では4本)の枝軸65、67、69、71、73、75、77、79とが、例えば上述した竹ひごのような弾性力や可撓性を有し、単位体積当りの重量が軽く、軸方向に対し大きな強度(硬度)を持ち、且つ、音響振動を伝達するための素材としても優れた材質の部材が用いられる。中心軸63は、人造の葉59の長尺方向に延びており、複数本の枝軸65、67、69、71は、中心軸63から向かって左斜め上方向に分岐(枝分かれ)している。一方、複数本の枝軸73、75、77、79は、中心軸63から向かって右斜め上方向に分岐(枝分かれ)しており、何れも中心軸63からの分岐(枝分かれ)位置が、枝軸65、67、69、71の中心軸63からの分岐(枝分かれ)位置とはずれた位置に設定されている。
【0055】
中心軸63と、枝軸65、67、69、71、73、75、77、79との接続部位の構造は、各々の枝軸65、67、69、71、73、75、77、79が中心軸63に対し確実に接続でき、且つ、所定の硬度での接続が保持できるような構造に設定されている。中心軸63と、枝軸65、67、69、71、73、75、77、79との接続構造を、上記のような接続構造にすることにより、人造の葉59からの音響の発生効率を高めることが可能になる。
【0056】
中心軸63と、枝軸65、67、69、71、73、75、77、79とを骨格部材として、輪郭線が葉状に縁取られた2枚の振動板81、83が、図7(b)に示すように、中心軸63、枝軸65、67、69、71、73、75、77、79を挟むようにして、市販の接着剤により貼り合わされる。振動板81、83を構成する材料には、吸水性があり、且つ、乾燥時に収縮する性質を有する材料、例えば和紙、若しくはフィルム材等が採用される。振動板81、83には、必要に応じて予め種々のイラストや写真等の画像がプリントアウトされた和紙(若しくは、フィルム)等の材料が用いられる。
【0057】
振動板81、83を中心軸63、枝軸65、67、69、71、73、75、77、79に貼り合わせるための接着剤には、その固形化時に、無色透明な状態になるものを用いるのが、人造の葉59のデザイン上望ましい。
【0058】
振動板81、83を中心軸63、枝軸65、67、69、71、73、75、77、79に対し接着剤を用いて貼り合わせ処理を行った後、加熱処理を行うことで、熱収縮を利用し、振動板81、83に張りを持たせることが可能になり、音響発生用部材として最適な構造にすることができる。また、人造の葉59を、可能な限り天然の植物の葉らしく見せるために、天然の植物の葉の写真(画像)を振動板81、83に貼り付けることで、天然の植物の葉に近い人工植物の葉を作成することができる。
【0059】
図8は、図7に記載の人造の葉59における複数本の枝軸65、67、69、71、73、75、77、79の、中心軸63への接続構造(取付構造)を示す部分斜視図である。
【0060】
図8に示すように、各々の枝軸(65、67、69、71の何れか、及び73、75、77、79の何れか)が中心軸63に接続される部位には、夫々枝軸(65、67、69、71の何れか、及び73、75、77、79の何れか)を中心軸63に固定するための枝軸固定補助板(葉脈固定補助板)85、87が取付けられている。枝軸固定補助板85、87は、上記接続部位を覆うように、上下方向から見た形状が略U字状に折り曲げられた状態で上記接続部位に取付固定されている。
【0061】
図9は、図6に記載の音響発生部材、即ち、人造の葉59における音響の発生原理を示す説明図である。図9において、図9(a)は、人造の葉59の正面図であり、図9(b)は、該人造の葉59の側面図である。
【0062】
図9(b)に示すように、人造の葉59は、連続的に(滑らかに)曲げられていると共に、自在継手(音響発生葉用自在継手(11、13、15、41の何れか)も、その中間の部位においても、連続的に(滑らかに)曲げられている。人造の葉59の湾曲は、例えば該人造の葉59に対する加熱処理、力を加える処理、乾燥処理等の工程を経る方法や、或いは、該人造の葉59に対し、スチームをかけながら湾曲させた後に、乾燥させる方法や、該人造の葉59の先端側に錘を付けて強制的に湾曲させる方法等が想到され得る。なお、図9において、図6、及び図7に記載したものと同一物には同一符号を付して、それらの詳細な説明を省略する。
【0063】
図10は、図9に記載の音響発生部材、即ち、人造の葉59における音響の発生原理を示す説明図である。
【0064】
図10に示すように、人造の葉59は、その軸線方向が、全体として略円弧状を呈するように(連続的に(滑らかに))湾曲せしめられている。そして、その湾曲の始端部位と、その湾曲の終端部位とを結ぶ線分と、該人造の葉59の軸線方向が直線状を呈しているときの、その軸線方向と直交する方向(図10における言わば横軸方向)とのなす角度が略45度になるよう、設定されている。換言すれば、該人造の葉59における湾曲の始端部位から湾曲の終端部位までの円弧の長さは、図10における横軸と、直線状を呈する該人造の葉59の軸線に略平行な図10における縦軸との交点を中心とする半径r=0.64xの円の略1/4の長さを持つ。
【0065】
上記の態様で、人造の葉59の軸線方向を湾曲せしめることにより、該人造の葉59の軸線方向において最も大きく振動する部位が該人造の葉59の中心領域になるので、該人造の葉59から効率良く音響を発生させることが可能になる。
【0066】
振動発生部3からの音響振動は、振動軸5、(台座7)、及び音響発生葉用自在継手(11、13、15、41)等を通じて人造の葉59に伝達されるが、垂直方向の音響振動は、人造の葉59において、円弧状に反った状態の該人造の葉59の中央部で、面に垂直な方向への音響振動に変換される。即ち、予め人造の葉59の縦方向(軸線方向)の長さに対し、0.64倍程度の曲率半径となるように反りを入れた人造の葉59の下部(音響発生葉用自在継手(11、13、15、41)に接続されている部分)から上記反りが生じていないときの該人造の葉59の軸線方向に沿って音響振動を印加することにより、該人造の葉59の面から略90度の方向に音響振動が出力されることになる。
【0067】
図11は、図6に記載の人造の葉59における音響振動の指向特性の一例を示す説明図である。図11において、図11(a)は、該人造の葉59の側面から見た音響振動の指向特性を、また、図11(b)は、図11(a)で示した人造の葉59の上方から見た音響振動の指向特性を、夫々示す。なお、図11において、太線矢印の長さは、人造の葉59から出力される音響振動の強度を表す。
【0068】
人造の葉59の湾曲された面の略中央の部位において、該湾曲された面に交わる方向の音響振動の指向特性は、図11(a)に示すように、該人造の葉59の湾曲された凹面側における該面に対し、略90度の角度をなす方向に出力される音響振動の指向特性が最も強く、上記角度が90度から小さくなるほど弱くなる。一方、該人造の葉59の湾曲された凸面側においては、該面に対し略90度の角度をなす方向に出力される音響振動の指向特性も、90度より小さい角度をなす複数の方向に出力される音響振動の指向特性も、強度においてはさほど変わりはない。
【0069】
図11(b)に示すように、人造の葉59の湾曲された面に沿って出力される音響振動の出力特性は、中心軸に沿って出力される音響振動の指向特性が最も強く、中心軸とのなす角度が大きくなるほど弱くなる。一方、該人造の葉59において、上記中心軸とは反対方向に出力される音響振動の出力特性は、中心軸とは正反対の方向に出力される音響振動の指向特性も、中心軸との間に夫々異なる角度をなす複数の方向に出力される音響振動の指向特性も、強度においてはさほど変わりはない。
【0070】
図12は、図6に記載の人造の葉の構造の別の例を示した図である。図12において、図12(a)は、人造の葉91の正面図であり、図12(b)は、該人造の葉91の側面図である。
【0071】
図12に記載の人造の葉91と、図7に記載の人造の葉59とは、人造の葉91が、何れも左斜め上方に向かって延びる複数本の枝軸95、97、99、101、・・・の中心軸93からの分岐位置と、何れも右斜め上方に向かって延びる複数本の枝軸103、105、107、109、・・・の中心軸93からの分岐位置とが、対応する枝軸同士において同一位置に設定されている点において、図7に記載の人造の葉59と相違する。その他の点については、図7に記載の人造の葉59と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0072】
図13は、図6に記載の音響発生用部材として用いられる複数の人造の葉の、振動装置への取付態様の一例を示す説明図である。図13において、図13(a)は、複数の人造の葉の、振動装置への取付態様を上方から見た図であり、図13(b)は、複数の人造の葉の、振動装置への取付態様を側面から見た図である。
【0073】
図13に記載の取付態様では、人造の葉が3枚、相互に接触したり衝突したりすることがない角度(例えば、振動軸5を中心にして120度間隔)で、各々が音響発生葉用自在継手((11)、13、15、41)によって保持されて配置されている。各々の人造の葉の、音響発生葉用自在継手((11)、13、15、41)を介した振動装置への取付構造については、既に説明したとおりであるので、詳細な説明を省略する。
【0074】
図13に記載の例では、3枚の人造の葉を用いる場合について説明したが、勿論、人造の葉の枚数は、3枚に限定されるものではない。
【0075】
s 図14は、図6に記載の音響発生用部材として用いられる複数の人造の葉の、振動装置への取付態様の別の例を示す説明図であり、図15は、図6に記載の音響発生用部材として用いられる複数の人造の葉の、振動装置への取付態様の更に別の例を示す説明図である。図14、及び図15に記載の例は、何れも複数枚(図では、3枚)の人造の葉を振動発生部に組み合わせることで、インテリア・スピーカとして室内等に設置される場合を示す。
【0076】
図14において、図14(a)に記載の例は、所謂鉢植えタイプと称される取付態様であり、図14(b)に記載の例は、フロアースタンドタイプと称される取付態様である。また、図15において、図15(a)に記載の例は、ディスプレイボード付きタイプと称される取付態様であり、図15(b)に記載の例は、壁掛けタイプと称される取付態様である。上記以外にも様々な態様が想到され得る。例えば、複数枚の人造の葉を振動発生部に組み合わせた構成のものを、照明器具と一体化した構成のものも想到され得る。
【0077】
図16は、図1に記載の振動装置において、振動伝達系統を構成する各部の別の実施例を示した図である。図16において、図16(a)は、上記振動伝達系統を上方から見た図であり、図16(b)は、図16(a)のD−D´線で切断したときの振動発生部3、及び振動軸5の断面構造を示した図である。
【0078】
本実施例では、振動伝達系統が、振動軸5と、1束に束ねられている複数本(図16(a)では、5本)の音響発生葉用自在継手(111、113、115、117、119)と、複数本の音響発生葉用自在継手(111、113、115、117、119)を、振動軸5に取付固定するための固定金具121、123、及び固定ねじ125、127とによって構成される。本実施例では、図1、及び図2に記載したような台座7は用いていない。
【0079】
固定金具121は、図16(a)に示すように、振動軸5の外周面のうちの略半円部分に密着するように、その中央部分が略半円状に湾曲せしめられており、両端寄りの部位に、夫々固定ねじが螺合可能に雌ねじ部を有する貫通孔が形成されている。一方、固定金具123は、その中央部分が、振動軸5の外周面のうちの残りの略半円部分、及び1束に束ねられた複数本の音響発生葉用自在継手(111、113、115、117、119)をも収容が可能なように、半楕円状に湾曲せしめられており、両端寄りの部位に、夫々固定ねじが螺合可能に雌ねじ部を有する貫通孔が形成されている。固定金具121側の1対の貫通孔、及び固定金具123側の1対の貫通孔は、1束に束ねられた複数本の音響発生葉用自在継手(111、113、115、117、119)を、固定金具121、123が協働して振動軸5に取付固定するに際し、夫々対応する貫通孔同士の位置が一致するように位置決めされて形成されているものとする。なお、図16(a)、図16(b)において、図2で示した物と同一物には同一符号を付してそれらの詳細な説明を省略する。
【0080】
図17は、図1に記載の振動装置において、振動伝達系統を構成する各部の更に別の実施例を示した図である。図17において、図17(a)は、上記振動伝達系統を上方から見た図であり、図17(b)は、図17(a)のE−E´線で切断したときの振動発生部3、及び振動軸5の断面構造を示した図である。
【0081】
本実施例では、図16で示した実施例におけると同様に、振動伝達系統が、振動軸5と、1束に束ねられている複数本(図17(a)では、5本)の音響発生葉用自在継手(111、113、115、117、119)と、複数本の音響発生葉用自在継手(111、113、115、117、119)を、振動軸5に取付固定するための1個の固定金具129とによって構成される。本実施例でも、図1、及び図2に記載したような台座7は用いていない。
【0082】
固定金具129は、図17(a)に示すように、略円筒形状を呈する、振動軸5よりも大径の基部129aと、略台形状を呈する、基部129aよりも小径の自在継手保持部129bと、を有する。基部129aは、図17(b)に示すように、内周面の少なくとも一部が振動軸5の外周面に密着した状態で、振動軸5の略中間の部位からその上端部にかけての部位の外周面を全周に亘り覆うもので、その側面形状が略円筒状を呈する。自在継手保持部129bは、図17(b)に示すように、基部129aの上方に位置する。自在継手保持部129bは、基部129aと一体的(連続的)に形成されているもので、基部129aの上端部からテーパ状に小径になって自在継手保持部129bを形作っている。
【0083】
複数本の音響発生葉用自在継手(111、113、115、117、119)は、図17(b)に示すように、振動軸5の上端部から離間した位置にて、自在継手保持部129bにより保持される。よって、振動発生部3において発生した音響振動は、振動軸5から固定金具129を介して各々の音響発生葉用自在継手(111、113、115、117、119)に伝達される。
【0084】
なお、固定金具129を構成する金属材料には、可撓性を有し、且つ、基部129aに嵌挿される振動軸5、及び自在継手保持部129bに嵌挿される複数本の音響発生葉用自在継手(111、113、115、117、119)を締め付ける方向に付勢する付勢力を生ぜしめる弾性力を有する金属材料が採用される。よって、本実施例では、図16で示したような固定金具締結部材(固定ねじ)を必要としない。
【0085】
ところで、従来、中高音用スピーカを大型化せずに再生帯域を低い周波数方向へ拡大できるようにすることを目的としたスピーカシステムが提案されている(特開平5−284586号公報)。該提案では、スピーカユニットの前面に配置した閉止音響管形態の第一のキャビネットの側面に音響ポートが設けられている。
【0086】
また、小型ながら、所望の低音域の信号を可能な限り平坦な周波数特性で再生することができるようにすることを目的としたスピーカ装置も提案されている(特開2003−289593号公報)。該提案では、音響管の共振周波数を、音響容積部分と音響管とによるヘルムホルツの共振周波数より0.5〜2.5オクターブ高い周波数とし、音響容積部分と音響管とはヘルムホルツの共鳴器を構成しており、所定のヘルムホルツの共振周波数において共振するようになっている。また、音響管自体も共振周波数を有する。
【0087】
特開平5−284586号公報に係る技術では、通常のケルトン方式によるヘルムホルツ共振に加え、閉止音共振に起因する出力音圧の増大により広帯域低音再生が行え、また、特開2003−289593号公報に係る技術では、ヘルムホルツの共振周波数から音響管の共振周波数までの連続的な帯域の信号を出力できる。
【0088】
しかし、上記何れの技術に係るスピーカも、高品質の音響が出力され得る構造になっているため、大型化は避けられない。特に低音の音響の再生帯域を広くとったものでは、大型化は顕著である。このような構造のスピーカは、如何に高品質の音響が出力され得るものであったとしても、葉や幹等の観葉植物の中央部よりも上方の部位から音響が出力されるように、観葉植物の中央部よりも上方の部位に設置されるスピーカとして用いるには大型過ぎる。上記構造のスピーカを敢えて用いて、恰も観葉植物から直接音響が出力されるようにセットするとすれば、観葉植物が植えられている鉢に直接取付ける以外に方法はないが、このような方法を採用すれば、観葉植物からではなく鉢から音響が出力されることとなるので、違和感を拭い切れない。
【0089】
そこで、本発明者等は上記に鑑みて、高品質の音響が出力可能で、且つ低音の音響の再生帯域を広くとることが可能なスピーカを、観葉植物の略中央の部位にセットできるようにし、それにより、スピーカからの音響が恰も観葉植物からの音響として認識され得るようにした。以下、上記構成のスピーカシステムを、本発明の他の実施形態として説明する。
【0090】
図18は、本発明の他の実施形態に係るスピーカシステムの正面方向から見た断面図、図19は、図18に記載のスピーカシステムの上面図である。
【0091】
本実施形態に係るスピーカシステムは、通常のケルトン型ウーハ(即ち、スピーカユニット(コーン)が、その前面をダクトのある空気室側、背面を密閉箱側に向けた状態で配置されていると共に、低音(低周波帯域に属する音響)のみを出力するようにしたキャビネット構造)の構成を前提としたものである。上記スピーカシステムの構成について更に詳述する。上記スピーカシステムは、図18、及び図19を参照して明らかなように、大径の円筒形状を呈するハウジング131と、その上面の略中心の部位から該上面と垂直方向に立設している、ハウジング131よりも小径の円筒形状を呈する第1音響管133と、を備える。ハウジング131と、第1音響管133とは密閉状態で連通している。上記スピーカシステムは、更に、第1音響管133の内部空間から該第1音響管133の内部空間とハウジング131の内部空間との連通部位を経てハウジング131の内部空間に達する区間を占める第2音響管135をも備える。
【0092】
ハウジング131は、スピーカユニット137により上側キャビネット139(即ち、空気室)と、下側キャビネット141(即ち、密閉箱)とに仕切られている。上側キャビネット139と下側キャビネット141とは、図18に示すように、上側キャビネット139の容積の方が、下側キャビネット141の容積よりも相当に小さな値になるように、スピーカユニット137のハウジング131内における取付固定位置が決められている。上側キャビネット139の容積については、後に詳述する。
【0093】
既述のように、スピーカユニット137は、その前面、即ち、コーン面137aを上側キャビネット139の側に、背面137bを下側キャビネット141の側に向けた状態で配置されている。スピーカユニット137には一対の信号ケーブル(図示しない)を通じて図示しない音源(例えばCDプレイヤー)から音声信号(電気信号)が伝送され、該音声信号(電気信号)が、スピーカユニット137を構成するボイスコイルにおいて音響(振動)に変換される。
【0094】
第1音響管133は、その上端部が開放端(大気開放)になっており、第1音響管133の開放端寄りの側面には、複数の音響ポート143、145、146、147、148が形成されている。上記各々の音響ポートのうち、音響ポート146、147、148は、第1音響管133から出力される音響の高周波特性の不要な共振を緩和し、周波数特性を平坦にするため、第1音響管133の側面に形成されるもので、上記スピーカシステムにおけるヘルムホルツ共振周波数特性に影響を及ぼさないよう、可能な限り小径で、且つ、少ない数に設定される。他方、音響ポート143、145は、第1音響管133から出力される音響に指向性を持たせるために形成されるもので、音響ポート143、145として、第1音響管133の断面積の1/5程度の大きさの開口面積を持つポートを3〜6個程度形成することで、第1音響管133から出力される音響に一定の指向性を持たせることができる。音響ポート143、145を形成したことにより生じる第1音響管133における音響の指向性、及び第1音響管133における、音響ポート143、145とヘルムホルツの共振周波数との関係については、夫々後に詳述する。
【0095】
第2音響管135は、第1音響管133内を摺動自在に、第1音響管133から上側キャビネット139にかけての内部空間に配置されている。即ち、第2音響管135は、その外周面と第1音響管133の内周面とが略密着した状態で往復動するよう、第2音響管135の外径が、第1音響管133の内径よりも極く僅かに小径に設定されている。第2音響管135は、その下端部が、コーン面137aに接触しない位置を下限位置とし、該下限位置、及び該下限位置から上方の適宜な位置において位置決めされた状態で、第1音響管133に取付固定される。
【0096】
コーン面137aは、スピーカユニット137が、上記図示しない音源からの音声信号(電気信号)を受けて上/下方向に振動する。そのため、上記下限位置は、コーン面137aの上/下方向の振動によっても、第2音響管135の下端部がコーン面137aに接触することのないように決定されるものとする。第2音響管125は、第1音響管133から上側キャビネット139にかけての内部空間を移動することで、上側キャビネット139の容積を可変する上側キャビネット可変部として機能する。
【0097】
ここで、第2音響管135の下端部とコーン面137aとの間隔dは、小さければ小さいほど、上記スピーカシステムにおける高周波帯域での出力特性が向上する。よって、第2音響管135の下端部の位置を適宜移動させることで、上記間隔dを可変調整することにより、上記スピーカシステムを、低周波帯域のみならず高周波帯域においても良好な出力特性を得ることが可能になる。換言すれば、ケルトン型のスピーカ(ケルトン型ウーハ)では、従来、低周波帯域においてのみ、良好な出力特性が得られたのであるが、上記スピーカシステムのような、第1音響管133の内部において移動自在な第2音響管135を備える構造にすることにより、1台のスピーカシステムで、低周波帯域、及び高周波帯域の双方に亘って良好な出力特性が得られることになる。
【0098】
次に、上記スピーカシステムにおけるヘルムホルツの共振周波数特性について、説明する。
【0099】
図18に記載のスピーカシステムにおいて、音響ポート143、145、146、147、148が無い場合は、第1音響管133、及び第2音響管135の断面積をS、上側キャビネット139の容積をB、第1音響管133の上端部(開放端)から第2音響管135の下端部までの長さをL(可変長)、音速(≒334m/s)をCとすれば、上記スピーカシステムにおけるヘルムホルツの共振周波数fは、下記の数式で表される。
【0100】
=(C/2π)・(S/LB)1/2
【0101】
ところで、上記スピーカシステムでは、第1音響管133から出力される音響に指向性を持たせるため、第1音響管133の側面に複数個の音響ポート143、145、146、147、148が形成されているが、これらの音響ポート143、145、146、147、148のうち、音響ポート146、147、148が第1音響管133の側面に形成されることにより、厳密な意味で上記関係数は成立しなくなる。しかし、音響ポート(146、147、148)の数を必要最小限の数とし、且つ、それらの大きさを可能な限り小さな大きさに設定することにより、少なくとも f≒(C/2π)・(S/DB)1/2の関係式が成立し得る。なお、符号Dは、音響ポート145の下部から第2音響管135の下端部までの長さ(可変長)を示す。
【0102】
図20は、図18、及び図19に記載のスピーカシステムから出力される音響の指向特性を示す説明図である。
【0103】
図20において、図20(a)は、上記スピーカシステムをその正面方向から見たときの、上記スピーカシステムからの音響の指向特性を、図20(b)は、上記スピーカシステムをその上面方向から見たときの、上記スピーカシステムからの音響の指向特性を、夫々示す。
【0104】
図20(a)、及び図20(b)を参照して明らかなように、第1音響管133を通じてスピーカシステムの外部に出力される音響は、第1音響管133の上下方向(長尺方向)に指向性を有し、第1音響管133の側面方向(横手方向)については無指向性である。
【0105】
図21は、図18、及び図19に記載のスピーカシステムから出力される音響の低周波帯域から高周波帯域に亘る減衰特性を示した図である。
【0106】
図21において、縦軸には減衰量(単位:dB)が、横軸には周波数(単位:Hz)が、夫々プロットされている。曲線151は、第2音響管135を設けた場合の上記スピーカシステムから出力される音響の減衰特性を、曲線153は、第2音響管135が設けられていない場合の上記スピーカシステムから出力される音響の減衰特性を、夫々示す。曲線151と曲線153とを比較対照すれば、第2音響管135を設けた場合の方が、設けていない場合よりも、上記スピーカシステムから出力される音響の高周波帯域における減衰量が充分に小さいことが明らかである。
【0107】
以上説明したように、本発明の他の実施形態に係るスピーカシステムによれば、図18で示した上側キャビネット139の容積と、下側キャビネット141の容積との関係、第1音響管133の長さと、第2音響管135の長さとの関係、音響ポート143、145の設置個数とそれらの大きさ等を、夫々適正な値になるように設計することにより、従来のケルトン型スピーカよりも小型で無指向性で広帯域に亘り出力特性の良好なスピーカシステムが得られる。また、上記スピーカシステムの小型化が可能であるので、上記スピーカシステムを、例えば観葉植物の鉢部等に容易に設置することができる。このように、上記スピーカシステムを、観葉植物の鉢部に設置したとしても、小型で目立たないため、上記スピーカシステムからの音響が、恰も観葉植物自身からの音響であるかのように、聴衆を認識させることも可能になる。なお、上記スピーカシステムの設計手法においては、従来より用いられている計算方法をそのまま利用することも可能である。
【0108】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の一実施形態に係る音響発生装置が備える振動装置の全体構成を示した図。
【図2】図1に記載した振動装置において、振動伝達系統を構成する各部を示した図。
【図3】図1に記載した振動装置を構成するケーシング、及び振動発生部を示した図。
【図4】図1、及び図2に記載した音響発生葉用自在継手、及びダミー(装飾葉)用自在継手の構造を示した図。
【図5】図4に記載した音響発生葉用自在継手、及びダミー(装飾葉)用自在継手が湾曲したときの状態を示した図。
【図6】本発明の一実施形態に係る音響発生装置において、音響発生用部材として用いられる葉の模造品(人造の葉)の一例を示す説明図。
【図7】図6に記載した人造の葉の構造の一例を示した図。
【図8】図7に記載した人造の葉における複数本の枝軸の、中心軸への接続構造(取付構造)を示す部分斜視図。
【図9】図6に記載した音響発生部材、即ち、人造の葉における音響の発生原理を示す説明図。
【図10】図9に記載した音響発生部材、即ち、人造の葉における音響の発生原理を示す説明図。
【図11】図6に記載した人造の葉における音響振動の指向特性の一例を示す説明図。
【図12】図6に記載した人造の葉の構造の別の例を示した図。
【図13】図6に記載した音響発生用部材として用いられる複数の人造の葉の、振動装置への取付態様の一例を示す説明図。
【図14】図6に記載した音響発生用部材として用いられる複数の人造の葉の、振動装置への取付態様の別の例を示す説明図。
【図15】図6に記載した音響発生用部材として用いられる複数の人造の葉の、振動装置への取付態様の更に別の例を示す説明図。
【図16】図1に記載した振動装置において、振動伝達系統を構成する各部の別の実施例を示した図。
【図17】図1に記載した振動装置において、振動伝達系統を構成する各部の更に別の実施例を示した図。
【図18】本発明の他の実施形態に係るスピーカシステムの正面方向から見た断面図。
【図19】図18に記載したスピーカシステムの上面図。
【図20】図18、及び図19に記載したスピーカシステムから出力される音響の指向特性を示す説明図。
【図21】図18、及び図19に記載したスピーカシステムから出力される音響の低周波帯域から高周波帯域に亘る減衰特性を示した図。
【符号の説明】
【0110】
1 ケーシング
3 振動発生部
5 振動軸
7 台座
9 音響発生用自在継手固定キャップ
11、13、15、41、111、113、115、117、119 音響発生葉用自在継手
17、19、37 ダミー(装飾葉)用自在継手
21、23、43 音響発生葉用自在継手固定ねじ
25、27、39 ダミー(装飾葉)用自在継手固定ねじ
29 装飾用ホルダ
31,33 振動軸保持用Oリング
35 空隙
44 台座固定用のねじ
45、47、49、51、53 竹ひご
55 熱収縮チューブ
57 固定キャップ
59、91 人造の葉
61 接続用の円筒状固定金具
63、93 中心軸
65、67、69、71、73、75、77、79、95、97、99、101、103、105、107、109 枝軸
81、83 振動板
85、87 枝軸固定補助板(葉脈固定補助板)
121、123、129 固定金具
125、127 固定ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音源からの電気信号を、音響振動に変換する電気信号/音響振動変換部と、
略直線状に延在する剛体で構成される、一端側が前記電気信号/音響振動変換部に接続され、一端側から伝達される前記電気信号/音響振動変換部からの音響振動を他端側へと導くための音響振動伝達部材と、
可撓性を有する線状の弾性材を構成要素として含み、一端側が前記音響振動伝達部材の他端部寄りの部位に着脱自在に取付けられる、前記音響振動伝達部材からの音響振動を他端側へと導くための継手部材と、
所定の曲率で湾曲せしめられ、前記継手部材の他端側に着脱自在に保持される植物の特定部位の形状に模して作成された音響振動出力体であって、前記継手部材を通じて伝達される音響振動を可聴の音響として所定の指向方向に出力する音響振動出力体と、
を備える音響発生装置。
【請求項2】
請求項1記載の音響発生装置において、
前記継手部材が、固定金具を介して前記音響振動伝達部材の前記他端側に着脱自在に取付けられている音響発生装置。
【請求項3】
請求項1記載の音響発生装置において、
前記可撓性を有する線状の弾性材が、竹ひごであり、前記継手部材は、複数本の竹ひごの束と、該束を包囲する熱収縮チューブと、前記竹ひごの束を固定するための固定用部材とを有する音響発生装置。
【請求項4】
請求項1記載の音響発生装置において、
前記所定の曲率が、前記音響振動出力体の軸線方向の長さに対し、0.64倍程度に設定されている音響発生装置。
【請求項5】
請求項1記載の音響発生装置において、
前記音響振動出力体が、草花、又は植木に模して作成されている音響発生装置。
【請求項6】
請求項1記載の音響発生装置において、
前記音響振動出力体、及び前記継手部材が、夫々複数備えられており、各々の音響振動出力体は、互いに接触することがないような位置関係で夫々異なる継手部材によって保持されている音響発生装置。
【請求項7】
請求項1記載の音響発生装置において、
前記音響振動出力体と略同一形状を呈する1個又は複数個のダミーの音響振動出力体を更に備える音響発生装置。
【請求項8】
請求項7記載の音響発生装置において、
前記1個又は複数個のダミーの音響振動出力体が、前記音響振動出力体と接触することがないような位置関係で夫々前記音響振動伝達部材からの音響振動が伝達されない構造体により支持される異なる継手部材によって保持されている音響発生装置。
【請求項9】
ハウジングと、
一端側が外部に開放され、他端側が前記ハウジングの内部空間に連通する第1の音響管と、
前記ハウジングの内部空間に設けられるスピーカユニットであって、そのコーン面を前記第1の音響管の他端側が臨む部位に対向するように前記内部空間に配置され、前記内部空間を外部に開放されている第1のキャビネットと、外部から密閉状態で隔離される第2のキャビネットとに仕切るスピーカユニットと、
前記第1の音響管内から前記第1のキャビネットの内部空間にかけての部位に摺動自在に設けられる第2の音響管であって、その前記コーン面に対向する側の端部が、前記コーン面に接触することの無い位置を基準位置として、それより離間する任意の位置で位置決めされ、固定される第2の音響管と、
を備えるスピーカシステム。
【請求項10】
請求項9記載のスピーカシステムにおいて、
前記基準位置が、音源から前記スピーカユニットに出力される電気信号により、前記コーン面が振動しても、前記第2の音響管の前記端部が、前記コーン面に接触することの無い位置であるスピーカシステム。
【請求項11】
請求項9記載のスピーカシステムにおいて、
前記第1の音響管の外部に開放している側に、1個又は複数個の音響ポートが設けられているスピ−カシステム。
【請求項12】
請求項11記載のスピーカシステムにおいて、
前記音響ポートの個数、及び大きさが、前記スピーカシステムにおけるヘルムホルツ共振周波数特性に顕著な影響を及ぼさない範囲で設定されるスピ−カシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−167135(P2008−167135A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354064(P2006−354064)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(301058377)テクノブロード株式会社 (2)