説明

頭被覆体およびゴーグル

【課題】頭部からずれて容易に脱げてしまうことなく、また自ら容易に装着したり、ゴーグルを他人が容易に装着させることができる頭被覆体を提供する。さらに、保持力を使用者の好みの強さ、フィット感に簡単に対応させることができ、しかも水漏れを起こすことのないゴーグルを提供する。
【解決手段】頭被覆体1は、表側に面接着部3を備えたものとし、ゴーグル2のベルト4の端部の裏側に備えられた面接着部5を前記面接着部3に着脱自在として、ゴーグル2を取り付け可能にしたものとしている。ゴーグルは、ベルト4の端部の裏側に面接着部5を備えたものとし、頭被覆体1の表側に備えられた面接着部3に前記面接着部5を着脱自在として、頭被覆体1に取り付け可能にしたものとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水泳、スキーなどのスポーツをするときに着用するのに適した頭被覆体およびゴーグルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のゴーグル、例えば水泳用ゴーグルは、本体部の左右両側にゴムなどの弾性を有するベルトが取り付けられ、着用するときはベルトを広げ、水泳用キャップの上から頭部に被り、頭部の周囲を前記ベルトによって締め付けた状態で使用する構成となっている。
【0003】
また、この種の頭被覆体としては、例えば図7に示したような、水中眼鏡付水泳帽としたものが存在する。この水中眼鏡付水泳帽は、伸縮性の水泳帽本体11の開口縁両側の適所から、伸縮ベルト12を介して水中眼鏡13を連設してなるものとしている。そして、水中眼鏡13の伸縮ベルト12は、その伸縮をベルトそのものに依る場合の他に、別個伸縮調整機構を有する場合もあるとしている(特許文献1)。
【0004】
さらに、この種の頭被覆体としては、例えば図8に示したような、ゴーグル付水泳帽としたものが存在する。このゴーグル付水泳帽は、ゴーグル本体部21に基端部において取り付けられた両側一対のベルト部22と、水泳帽23の左右両側に設けられ、ベルト部22の先端側部位を着脱可能に保持する一対の保持具24とを備えたものとしている。そして、保持具24は、図9に示したように、前記先端側部位を止着するための止着部25と、この止着部25を水泳帽23に固定するための断面円形状の固定リング26とからなるものとしている(特許文献2)。
【特許文献1】実開昭56−34825号公報
【特許文献2】実開平3−7851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のゴーグルおよび頭被覆体では、以下のような問題点がある。
【0006】
先ず、上記従来の水泳用ゴーグルでは、ベルトでの締付位置が上方にずれると水泳用キャップも上方または前方にずれようとする力が作用するので、水泳用キャップが容易に脱げることがある。
【0007】
さらに、上記従来の水泳用ゴーグルでは、手に障害がある者や幼児などにおいては、その装着が困難である。すなわち、幼児においては首に力が無いために、自らが装着する場合または他人が装着させる場合においても、過大な力が首にかかると首が揺動して、その装着が困難である。手に障害がある者においても、ベルトを保持し、このベルトを強く引っ張って装着することが困難である。
【0008】
また、上記従来の水泳用ゴーグルでは、ベルトの長さ調節機構(保持力調節機構)が設けられているが、ベルトの長さを調節する場合に、一旦ゴーグルを外して調節した後にまたゴーグルを装着しなければならず、良好なフィット感を得るには、その外したり装着する操作が面倒であり、不便である。
【0009】
さらに、上記従来の水泳用ゴーグルでは、頭部全周にベルトを締め付ける構造にしているため、ゴーグルが脱落しないように締付力をかけると、長時間の装着においては頭部が圧迫されて、頭痛などを発症することがある。
【0010】
次に、上記特許文献1に記載された水中眼鏡付水泳帽では、水泳帽本体11がベルトの一部を構成し、水中眼鏡13が容易に脱落しないという特徴は得られるが、水泳帽本体11の形状が特殊化されるために、通常の水泳用には必ずしも適さない。単に、水泳の目的の場合には水中眼鏡13が不要なときも多々あるが、この場合、必要時にのみ水中眼鏡13を装着し、不要時には水泳帽のみに戻すことも困難である。しかも、水中眼鏡13を外した場合に、水泳帽本体11にベルトの一部が残り、非常に煩わしい。
【0011】
また、上記特許文献2に記載されたゴーグル付水泳帽では、水泳帽23の装着後にゴーグル本体部21を保持具24によって取り付ける場合に、髪の毛を保持具24に挟み込んでしまうことがある。さらに、この場合、水泳帽23を広げながら保持具24を操作するため、水泳帽23がずれてしまったり、保持具24の取り付けによって水泳帽23の生地が傷んでしまうことがある。また、水泳帽23の装着前にゴーグル本体部21を保持具24によって取り付けておくと、水泳帽23を装着したときにゴーグルの本来のフィット感が得られないばかりか、水漏れの原因にもなる。
【0012】
そこで、この発明は、上記従来の問題点を解決することをその課題としており、特定の構成としたゴーグルと共に用いることにより、頭部からずれて容易に脱げてしまうことなく、また自ら容易に装着したり、ゴーグルを他人が容易に装着させることができる頭被覆体を提供することを目的として、さらに特定の構成とした頭被覆体と共に用いることにより、保持力を使用者の好みの強さ、フィット感に簡単に対応させることができ、しかも水漏れを起こすことのないゴーグルを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのため、この発明の頭被覆体は、表側に面接着部3を備えたものとし、ゴーグル2のベルト4の端部の裏側に備えられた面接着部5を前記面接着部3に着脱自在として、ゴーグル2を取り付け可能にしたものとしている。
【0014】
さらに、この発明のゴーグルは、ベルト4の端部の裏側に面接着部5を備えたものとし、頭被覆体1の表側に備えられた面接着部3に前記面接着部5を着脱自在として、頭被覆体1に取り付け可能にしたものとしている。
【0015】
そして、前記頭被覆体1およびベルト4は、伸縮性を有するものとしている。
【0016】
さらに、前記面接着部3は多数のループを有するものとし、前記面接着部5は多数のフックを有するものとしている。
【0017】
また、前記面接着部3は、頭被覆体1の全面部または両側部に設けたものとしている。
【0018】
さらに、前記面接着部3は、使用者の頭部の表面積の約25%以上の占有面積を有するものとして、頭被覆体1の両側部の略下半部の略中央部に設けたものとしている。
【0019】
また、前記ベルト4の最端部には、摘み部8を設けたものとしている。
【発明の効果】
【0020】
この発明の頭被覆体は、この発明のゴーグルと共に用いることにより、頭部からずれて容易に脱げてしまうことなく、また自ら容易に装着したり、ゴーグルを他人が容易に装着させることができるものとなる。
【0021】
さらに、この発明のゴーグルは、この発明の頭被覆体と共に用いることにより、保持力を使用者の好みの強さ、フィット感に簡単に対応させることができ、しかも水漏れを起こすことのないものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明の頭被覆体およびゴーグルを実施するための最良の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
【0023】
図1〜4中、1はこの発明の頭被覆体であり、2はこの発明のゴーグルである。
【0024】
この発明の頭被覆体は、表側に多数のループを有する面接着部3を備えたものとし、ゴーグル2のベルト4の端部の裏側に備えられた多数のフックを有する面接着部5を前記面接着部3に着脱自在として、ゴーグル2を取り付け可能にしたものとしている。
【0025】
この発明のゴーグルは、ベルト4の端部の裏側に多数のフックを有する面接着部5を備えたものとし、頭被覆体1の表側に備えられた多数のループを有する面接着部3に前記面接着部5を着脱自在として、頭被覆体1に取り付け可能にしたものとしている。
【0026】
なお、前記面接着部3を多数のループを有するものにし、前記面接着部5を多数のフックを有するものにするのが、頭被覆体1の表側の手触りが良くなり好ましいが、必要に応じて、前記面接着部3を多数のフックを有するものにし、前記面接着部5を多数のループを有するものにしてもよい。
【0027】
そして、この発明の頭被覆体は、この発明のゴーグルと共に用いることにより、ゴーグル付頭被覆体とすることができ、この発明のゴーグルは、この発明の頭被覆体と共に用いることにより、頭被覆体付ゴーグルとすることができる。すなわち、頭被覆体1には表側に多数のループを有する面接着部3を備え、ゴーグル2にはベルト4の端部の裏側に多数のフックを有する面接着部5を備えたものとして、頭被覆体1の面接着部3とベルト4の面接着部5を着脱自在として、頭被覆体1にゴーグル2を取り付け可能なものにしてゴーグル付頭被覆体または頭被覆体付ゴーグルとすることができる。
【0028】
前記頭被覆体1は、例えば帽子のように、頭の全体を被覆する形状としたり、例えばヘヤーバンドのように頭の側部を被覆する形状とすることができるが、頭の全体または側部を被覆できるものであればどのようなものであってもよい。また、前記頭被覆体1は、伸縮性を有する生地などで作製されている。
【0029】
前記ゴーグル2は、レンズ6の左右両側にベルト4が取り付けられている。このゴーグル2のレンズ6は、図示したものでは、二眼レンズとしているが、一眼レンズとしてもよい。また、このレンズ6とベルト4とは、着脱不能に連結したものとしても、図示したように、凸嵌合部と凹嵌合部からなるバックル機構7を採用するなどして、着脱自在に連結したものとしてもよい。
【0030】
前記面接着部3は、例えば多数のループを有するニット生地を頭被覆体1の表側に縫製したり、貼り合わせたものとしている。この面接着部3は、図1に示したように、頭被覆体1の表側の全面部に設けたものとしたり、図2に示したように、頭被覆体1の表側の両側部に設けたものとしたり、図3に示したように、頭被覆体1の表側の両側部の略下半部に設けたものとしたり、さらに図4に示したように、頭被覆体1の表側の両側部の略下半部の略中央部に設けたものとすることができる。なお、前記頭被覆体1の面接着部3は、図4に示したような場合においては、使用者の頭部の表面積の約25%以上の占有面積を有するものとするのが、ベルト4の面接着部5との接着位置を自由に変えることができ好ましい。このようにすると、使用者の頭部の大きさや顔面の形状にかかわらず、頭被覆体1の面接着部3とベルト4の面接着部5との着脱操作が行い易く、また頭被覆体1とゴーグル2の保持力を使用者の好みの強さ、フィット感に簡単に対応させることができる。
【0031】
前記ベルト4は、伸縮性を有する生地などで作製されており、面接着部5を設けた端部のさらに最端部には摘み部8を設けたものとしている。なお、この摘み部8は、伸縮性を有する生地であってもよいが、伸縮性を有さない生地のほうが、摘み操作がし易いものとなり好ましい。
【0032】
前記面接着部5は、多数のフックを備えた面ファスナー生地をベルト4の端部の裏側に縫製したり、貼り合わせたものとしている。なお、この面接着部5は、頭被覆体1の面接着部3に接着させたときに、ゴーグル2が頭被覆体1から引き外されない程度の十分な強度を確保できる接着面積を有するものとしている。
【0033】
以上のように構成されたこの発明の頭被覆体とこの発明のゴーグルを共に用いるには、次のようにして行う。
【0034】
先ず、頭被覆体1を使用者の頭部の正規の位置に装着する。次に、使用者の眼を覆うようにしてゴーグル2のレンズ6を顔面に当て、ベルト4の摘み部8を指で摘んで、面接着部5を頭被覆体1の面接着部3に接着させる。すると、図6に示したように、頭被覆体1にゴーグル2が取り付けられ、この発明の頭被覆体およびゴーグルが、使用者の頭部および顔面に装着される。この場合、前記頭被覆体1とゴーグル2の保持力は、頭被覆体1の面接着部3へのベルト4の面接着部5の接着位置や、ベルト4の伸縮度により調節することができる。
【0035】
前記頭被覆体1は、伸縮性を有する生地から作製されているので、頭部に沿い易いものとなり、正規の位置に装着し易いものとなる。また、ゴーグル2も、頭被覆体1を頭部に装着してから顔面に装着することになるので、その装着操作は非常にし易いものとなる。さらに、頭被覆体1を装着したときに、頭被覆体1が正規の位置よりずれていても、伸縮性を有する頭被覆体1と伸縮性を有するベルト4が、互いに伸縮し合うことにより、頭被覆体1とベルト4の弛み、緩みを防止しつつ、正規の位置に装着することができる。
【0036】
なお、頭被覆体1が伸縮性を有さないと、頭部に沿いにくくなって皺ができ、その皺に水中での抵抗がかかったり、空気が入って浮いたりして、ゴーグル2のベルト4が揺れ動き、水漏れの原因となることがある。また、ベルト4が伸縮性を有さないと、頭被覆体1の伸縮性のみでゴーグル2を保持することになるため、頭被覆体1の伸びやそれに起因する水中での抵抗により、ゴーグル2の水漏れの原因となると共に、頭被覆体1の脱落の原因にもなる。
【0037】
そして、この発明の頭被覆体は、面接着部3にベルト4の面接着部5を接着させることにより、ゴーグル2が取り付けられるので、従来のゴーグルのベルトの全周を頭被覆体に保持するもののように、頭被覆体を上方または前方にずらそうとする力が作用することなく、使用者の頭部から脱げるというようなことはない。この発明の頭被覆体では、前記ゴーグル2のベルト4が頭被覆体1をむしろ下方に引っ張ろうとする力が作用し、頭被覆体1が脱げようとするのを積極的に防止している。
【0038】
また、この発明のゴーグルは、頭被覆体1との保持力を、頭被覆体1の面接着部3へのベルト4の面接着部5の接着位置や、ベルト4の伸縮度により調節するため、従来のゴーグルのベルトのように長さ調節機構は不要になる。さらに、頭被覆体1との保持力を前記したように調節することにより、ゴーグル2を顔面に付けたままで、保持力の調節が可能となり、容易に保持力を調節することができる。また、この発明のゴーグルは、手に障害がある者や幼児などにおいても、面倒な調節作業をすることなく自らが容易に装着することができ、また他人が装着させる場合においても、面倒な調節作業をすることなく、しかも過大な力が首にかからないため、容易に装着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の頭被覆体およびゴーグルの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】この発明の頭被覆体およびゴーグルの他の実施形態を示す斜視図である。
【図3】この発明の頭被覆体およびゴーグルのさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【図4】この発明の頭被覆体およびゴーグルのさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【図5】この発明のゴーグルを一部分解して示す斜視図である。
【図6】この発明のゴーグルおよび頭被覆体の使用状態を示す斜視図である。
【図7】従来の水中眼鏡付水泳帽の使用状態を示す斜視図である。
【図8】従来のゴーグル付水泳帽の使用状態を示す斜視図である。
【図9】従来のゴーグル付水泳帽の図9中のA−A線による分解断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 頭被覆体
2 ゴーグル
3 面接着部
4 ベルト
5 面接着部
8 摘み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側に面接着部(3)を備えたものとし、ゴーグル(2)のベルト(4)の端部の裏側に備えられた面接着部(5)を前記面接着部(3)に着脱自在として、ゴーグル(2)を取り付け可能にしたことを特徴とする頭被覆体。
【請求項2】
ベルト(4)の端部の裏側に面接着部(5)を備えたものとし、頭被覆体(1)の表側に備えられた面接着部(3)に前記面接着部(5)を着脱自在として、頭被覆体(1)に取り付け可能にしたことを特徴とするゴーグル。
【請求項3】
前記頭被覆体(1)およびベルト(4)を伸縮性を有するものとしたことを特徴とする請求項1記載の頭被覆体。
【請求項4】
前記頭被覆体(1)およびベルト(4)を伸縮性を有するものとしたことを特徴とする請求項2記載のゴーグル。
【請求項5】
前記面接着部(3)を多数のループを有するものとし、前記面接着部(5)を多数のフックを有するものとしたことを特徴とする請求項1または3記載の頭被覆体。
【請求項6】
前記面接着部(3)を多数のループを有するものとし、前記面接着部(5)を多数のフックを有するものとしたことを特徴とする請求項2または4記載のゴーグル。
【請求項7】
前記面接着部(3)を、頭被覆体(1)の全面部または両側部に設けたものとしたことを特徴とする請求項1、3、5のいずれかに記載の頭被覆体。
【請求項8】
前記面接着部(3)を、頭被覆体(1)の全面部または両側部に設けたものとしたことを特徴とする請求項2、4、6のいずれかに記載のゴーグル。
【請求項9】
前記面接着部(3)を、使用者の頭部の表面積の約25%以上の占有面積を有するものとして、頭被覆体(1)の両側部の略下半部の略中央部に設けたものとしたことを特徴とする請求項1、3、5、7のいずれかに記載の頭被覆体。
【請求項10】
前記面接着部(3)を、使用者の頭部の表面積の約25%以上の占有面積を有するものとして、頭被覆体(1)の両側部の略下半部の略中央部に設けたものとしたことを特徴とする請求項2、4、6、8のいずれかに記載のゴーグル。
【請求項11】
前記ベルト(4)の最端部に摘み部(8)を設けたものとしたことを特徴とする請求項1、3、5、7、9のいずれかに記載の頭被覆体。
【請求項12】
前記ベルト(4)の最端部に摘み部(8)を設けたものとしたことを特徴とする請求項2、4、6、8、10のいずれかに記載のゴーグル。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−161214(P2006−161214A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354611(P2004−354611)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000179926)山本光学株式会社 (49)