説明

頭部保護兼用付帯装置

【課題】用途に応じた色調の設定が容易で、且つ太陽電池の形成が容易である頭部保護兼用付帯装置を提供する。
【解決手段】外部電力に頼ることなく又は頼る割合を小さくして、使用者は電力に付属する設備に煩わされないか又は煩わされる度合いを小さくして付帯装置20による有益な影響に浴することができるが、太陽電池として色素増感型太陽電池を用いていることで増感色素を選択して色調を自在に設定し、ヘルメット部10の用途等に対応した種々の色調とすることができ、また色素増感型太陽電池は曲面等の形状を形成する自由度が高いために、一般に略半球状となされるヘルメット部10に太陽電池を容易に設けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルメットとして使用者の頭部を保護すると共に、該ヘルメットに備えられた太陽電池により生起された電力を用いて使用者に有益な影響をもたらすことができる頭部保護兼用付帯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘルメット部に太陽電池を備え、使用者に有益な影響をもたらすことができる装置として、例えばヘルメットに太陽電池を張設してなることで、瞬時性、機動性及び取り扱い性、携帯に優れる携帯電子機器用電池(例えば特許文献1)や、ヘルメット形に形成をした外側体の内側にファンとモータを収容したモータ函を取り付け、前記外側体の表面に多数のソーラ電池を取付けることで、夏の屋外等の環境下で使用者の頭部を冷却できるヘルメット(例えば特許文献2)が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−107229号公報
【特許文献2】登録実用新案3010064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ヘルメット部に太陽電池を備えた場合、特許文献1及び2に記載の如き従来のものでは、太陽電池に太陽光を入射させるために太陽電池部分が黒色の外観となり、ヘルメット部全面に太陽電池を設けた場合には黒色のヘルメットとなってしまい通常の用途に用いられる白色や黄色の色調への設定が困難である。またヘルメット部はほぼ全体が三次元的な曲面から形成されており、かかる三次元的曲面に太陽電池セルを沿わせて太陽電池を形成するのは困難な作業が伴うものであった。
【0005】
本発明は上記の如き課題に鑑みてなされたものであり、用途に応じた色調の設定が容易で、且つ太陽電池の形成が容易である頭部保護兼用付帯装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。すなわち、本発明に係わる頭部保護兼用付帯装置は、使用者の頭部を保護するヘルメット部と、使用者が装着し通電によって使用者に有益な影響がもたらされる付帯装置とを備え、前記ヘルメット部に備えられた太陽電池によって生起された電力を前記付帯装置に用いるものであって、前記太陽電池が色素増感型太陽電池であることを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係わる頭部保護兼用付帯装置によれば、外部電力に頼ることなく又は頼る割合を小さくして、使用者は電力に付属する設備に煩わされないか又は煩わされる度合いを小さくして付帯装置による有益な影響に浴することができるが、太陽電池として色素増感型太陽電池を用いていることで増感色素を選択して色調を自在に設定し、ヘルメット部の用途等に対応した種々の色調とすることができ、また色素増感型太陽電池は曲面等の形状を形成する自由度が高いために、一般に略半球状となされるヘルメット部に太陽電池を容易に設けることができる。
【0008】
また請求項1に記載の頭部保護兼用付帯装置において、前記付帯装置は、使用者が装着する衣服に巡らされた配線又は配管により使用者の身体が温熱及び/又は冷却されるようになされていれば、暑い又は寒い作業環境下における使用者の負担を軽減することができ、またヘルメット部の色調の設定が自在であることで、衣服を含めた使用者全体としての色調のバランスを取るのが容易であり好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係わる頭部保護兼用付帯装置によれば、外部電力に頼ることなく又は頼る割合を小さくして、使用者は電力に付属する設備に煩わされないか又は煩わされる度合いを小さくして付帯装置による有益な影響に浴することができるが、太陽電池として色素増感型太陽電池を用いていることで増感色素を選択して色調を自在に設定し、ヘルメット部の用途等に対応した種々の色調とすることができ、また色素増感型太陽電池は曲面等の形状を形成する自由度が高いために、一般に略半球状となされるヘルメット部に太陽電池を容易に設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係わる最良の実施の形態について、図面に基づき以下に具体的に説明する。
【0011】
図1は、本発明に係わる頭部保護兼用付帯装置の、実施の一形態におけるヘルメット部を示す斜視図である。ヘルメット部10は、半球状の保護部1と、保護部1の周辺に設けられた鍔部2とを備えるもので、保護部1と鍔部2のいずれか一方、若しくは両方について、使用時に太陽光が照射される部位に太陽電池(図示せず)を設けて発電を行わせるものである。保護部1において太陽電池は、外面の全体が受光面となるように設けてもよく、受光効率の高い頂部付近のみに設けてもよい。
【0012】
図2は、ヘルメット部10の、太陽電池が設けられた部位の断面を示す断面図である。本図において太陽電池3は保護部1に設けられたもので、色素増感型太陽電池である。太陽電池3は導電性透光基板31内面に酸化物半導体電極32が形成され、酸化物半導体電極32の内面側に間隔をおいて対向電極33が配置され、酸化物半導体電極32と対向電極33との間には電解質溶液34が充填されている。太陽光が導電性透光基板31を透過して酸化物半導体電極32に照射されることで、酸化物半導体電極32内で電子の移動が起こり、電解質溶液34を介して導電性透光基板31と対向電極33との間に電子の移動がなされることで電力が生起される。生起された電力は、導電性透光基板31の内側に設けられた導電性被膜(図示せず)と対向電極33の外側に設けられた導電性被膜(図示せず)により導電されて取り出される。対向電極33の導電性被膜の更に外側には、導電性透明基板31側の導電性被膜と電位差のある白金、カーボン等の薄膜が形成される。尚、本図における各々の厚みは便宜的なもので、導電性透光基板31及び対向電極33についてはヘルメットとして必要とされる強度に応じて厚みを大きくすることができる。
【0013】
ここで酸化物半導体電極32には、電子の移動を促進する増感色素(図示せず)が担持されるが、導電性透光基板31を透明なものとして、担持させる増感色素の色調を用途に応じて選択することでヘルメット部10の色調を自在に設定することができる。また酸化物半導体電極32を透光性のものとした場合には、増感色素の色調と電解質溶液34及び対向電極33の色調との設定により、混色によって色調を設定することもできる。
【0014】
色素増感型の太陽電池の増感色素として一般に用いられるのは、Cis−dithiocyanate[N−bis(2,2‘−bipyridyl4,4’−dicarboxylic acid)]Ru[二価]等のルテニウム錯体、又はポリフィリン系、シアニン系等の色素であるが、これらの色素は暗赤色の色調であり用途によってはそのまま用いることもできるが、ヘルメットとしてよく用いられる色調である黄色の色調を設定するには増感色素としてクチナシ色素、スイカズラ色素等のカロテノイド系のものやクマリン343等を用いて形成することができる。また完全な白色の形成は色素を用いる以上困難であるが、上述の黄色に用いる明度の高い色素を用いて担持量を減ずることで、酸化物半導体電極32の形成に用いられる酸化物半導体の白色の色調と相俟って白色に近似する色調とすることができる。
【0015】
色素増感型の太陽電池3を形成する導電性透光基板31、酸化物半導体電極32及び対向電極33については、公知の色素増感型太陽電池に用いられてきているものを用いることができる。導電性透光基板31を形成するのに用いる基材としては、頭部保護を兼用することから耐衝撃性に優れ、更に透光性の高いポリカーボネート樹脂が特に好適に用いることができる。対向電極33についても耐衝撃性に優れる材料が好適であるが、透光性は特に必要とされないことから、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂等の適宜の材料を用いて形成することができる。導電性透光基板31の内側の面及び対向電極33の外側の面にはITO、FTOを蒸着させる等して上述の導電性被膜が設けられる。
【0016】
酸化物半導体電極32については、例えばチタニア粉末等の酸化物半導体をポリエチレングリコール、アセチルアセトン等によりペースト状にして導電性透光性基板21に塗布し、導電性透光性基板21の基板がガラスであれば400〜500度、合成樹脂であれば100〜120度で焼き付けを行った後、上述の如き増感色素を担持させて形成できる。また電解質溶液34は、電解質を含むものであれば特に限定されるものではないが液体又は擬液体状のものが好ましく、例えばアセトニトリルとエチレンカーボネートの混合溶液や、メトキシプロピオニトリル等の溶媒に、ヨウ化リチウム、金属ヨウ素等の電解質を加えたもの等を用いることができる。
【0017】
図3は、本発明に係わる頭部保護兼用付帯装置の、実施の一形態を示す説明図である。まず(a)はヘルメット部10と導電線Cを介して付帯装置20であるカイロ20Aが接続されているもので、ヘルメット部10により生起された電力によりカイロ20Aから熱が発せられ、冬季における屋外の作業等、使用者が極めて寒冷な状況に置かれている場合に身につけていれば、外部電力への接続に係わる電線や電池切れ等に煩わされないか、またはその度合いを小さくして使用者の負担を軽減するという有益な影響をもたらすことができる。また(b)は付帯装置20として、電熱線及び/又は冷媒菅が張り巡らされた衣服20Bであるが、同じく使用者が寒冷若しくは灼熱の状況に置かれている場合に身につけていれば、外部電力への接続に係わる電線や電池切れ等に煩わされないか、またはその度合いを小さくして使用者の負担を軽減するという有益な影響をもたらすことができる。
【0018】
付帯装置20としては、これらカイロ20Aや衣服20Bに限定されず電力を用いるもので使用者が装着できるものであればよく、ラジオ、携帯電話、携帯用ステレオ、懐中電灯、ノートパソコン、無線機等に適用することで、使用者に非常時等における情報、通話時の電池切れの心配の排除、作業時のBGMの提供、暗所での視界の確保、電源が確保できない場所での計算や通信を可能にするといった有益な影響をもたらすことができる。またヘルメット部10若しくは付帯装置20に適宜蓄電手段を設けて、太陽光が照射されない場所においても使用が可能となるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係わる頭部保護兼用付帯装置の、ヘルメット部の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係わるヘルメット部の、太陽電池が設けられた箇所の断面図である。
【図3】本発明に係わる頭部保護兼用付帯装置の、実施の一形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0020】
3 太陽電池
10 ヘルメット部
20 付帯装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の頭部を保護するヘルメット部と、使用者が装着し通電によって使用者に有益な影響がもたらされる付帯装置とを備え、前記ヘルメット部に備えられた太陽電池によって生起された電力を前記付帯装置に用いるものであって、前記太陽電池が色素増感型太陽電池であることを特徴とする頭部保護兼用付帯装置。
【請求項2】
前記付帯装置は、使用者が装着する衣服に巡らされた配線又は配管により使用者の身体が温熱及び/又は冷却されるようになされていることを特徴とする請求項1に記載の頭部保護兼用付帯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−169652(P2006−169652A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−361337(P2004−361337)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】