説明

頭髪処理剤塗布具

【課題】頭髪の頭頂部側から毛先側の長い範囲に安定して頭髪処理剤を塗布することができるとともに、櫛歯間に挿入された頭髪の一本一本に効率よく頭髪処理剤を付着させることのできる頭髪処理剤塗布具を提供すること。
【解決手段】本発明の頭髪処理剤塗布具1は、環状に配置された複数の櫛歯22からなる櫛部23を有する剤塗布部2を備えており、前記櫛歯22は、先端近傍部22aから基端22eに向かって櫛歯幅Wが減少する逆テーパー部22cを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭髪処理剤塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の櫛歯からなる櫛部を有する塗布具を用いて頭髪に染毛剤等の頭髪処理剤を塗布する技術が知られている。
例えば、本出願人は、櫛歯が直列した複数の櫛歯列によって両側を挟まれた中央部分から塗布液を吐出させ、該塗布液を、櫛歯列で頭髪を梳きながら頭髪に塗布できるようにした櫛歯付き塗布用具を提案している(特許文献1参照)。この櫛歯付き塗布用具によれば、櫛歯列間に塗布液を吐出させた後、櫛歯列間に塗布液を一旦保持した状態で、塗布用具を頭髪に当てることができる。
【0003】
しかし、同文献1の図2に示されるように、櫛歯の直径が櫛歯の高さ方向の略全域で等しい場合、例えば、頭頂部付近から首や肩上に亘る長い範囲の髪に連続して塗布液を塗布しようとしても、首上に位置する髪からその毛先に向って塗布する際に、髪が頭皮によって裏側から支持されていないこと、および毛先に向かうに従い髪量が減少することに起因にして、該髪が櫛歯間から抜ける場合があることが予想される。
【0004】
特許文献2には、櫛歯の先端側の側面に、容器内の流体を排出する滴下孔の開口部を設けるともに、該開口部より先端側に該開口部に近接して瘤部を形成した塗布具が記載され、特許文献3には、複数の櫛歯が直線状に配列された櫛部における櫛歯の上端に、下面が櫛歯片の中心軸心に対して直角近傍の角度をなすように形成された突片を設けることが記載されている。
しかし、特許文献2及び3の技術は、櫛歯から剤を排出する技術であり、長い頭髪の頭頂部側から毛先側の長い範囲に剤を安定して塗布することは困難である。また、特許文献2に記載の櫛歯は、櫛歯の先端部である瘤部の下端から櫛歯の基端側が、該基端側に向かって櫛歯幅が増加するテーパー部となっており、特許文献3に記載の櫛歯は、櫛歯の先端部である突片の下端から櫛歯の基端に亘って櫛歯幅が一定となっており、櫛歯間に挿入された頭髪の一本一本にむら無く剤を付着させることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−160240号公報
【特許文献2】実開平1−158729号公報
【特許文献3】特開2001−275752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、頭髪の頭頂部側から毛先側の長い範囲に安定して頭髪処理剤を塗布することができるとともに、櫛歯間に挿入された頭髪の一本一本に効率よく頭髪処理剤を付着させることのできる頭髪処理剤塗布具に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、環状に配置された複数の櫛歯からなる櫛部を有する剤塗布部を備えた頭髪処理剤塗布具であって、前記櫛歯は、先端近傍部から基端側に向かって櫛歯幅が減少する逆テーパー部を有している頭髪処理剤塗布具を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の頭髪処理剤塗布具によれば、頭髪の頭頂部側から毛先側の長い範囲に安定して頭髪処理剤を塗布することができるとともに、櫛歯間に挿入された頭髪の一本一本に効率よく頭髪処理剤を付着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の頭髪処理剤塗布具の一実施形態を示す一部破断側面図である。
【図2】図2は、図1の頭髪処理剤塗布具の剤塗布部の拡大斜視図である。
【図3】図3は、図1の頭髪処理剤塗布具の剤塗布部の櫛歯台を、櫛部が突出する面側から見た平面図である。
【図4】図4は、図1の頭髪処理剤塗布具の剤塗布部及びその近傍の部分断面図である。
【図5】図5は、図1の頭髪処理剤塗布具における相隣接する櫛歯を、筒状の櫛部の内側から視た図である。
【図6】図6は、図1の頭髪処理剤塗布具における筒状の櫛部の内側の空間内に液状又は泡状の頭髪処理剤を貯留させた状態を示す斜視図である。
【図7】図7は、図1の頭髪処理剤塗布具を用いて頭髪に頭髪処理剤を塗布する様子を示す斜視図である。
【図8】図8は、本発明の他の実施形態の櫛歯を示す図(図5相当図)である。
【図9】図9は、本発明の更に他の実施形態の櫛歯を示す図(図5相当図)である。
【図10】図10は、本発明の更に他の実施形態の剤塗布部を示す図である。
【図11】図11(a)は、実施例1の頭髪処理剤塗布具の櫛歯の形状を示す斜視図である。図11(b)は、比較例1の頭髪処理剤塗布具の櫛歯の形状を示す斜視図である。図11(c)は、比較例2の頭髪処理剤塗布具の櫛歯の形状を示す斜視図である。
【図12】図12(a)は、実施例1の頭髪処理剤塗布具を用いた場合の剤塗布量の変化を示すグラフであり、図12(b)は、比較例1の頭髪処理剤塗布具を用いた場合の剤塗布量の変化を示すグラフであり、図12(c)は、比較例2の頭髪処理剤塗布具を用いた場合の剤塗布量の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本発明の第1実施形態である頭髪処理剤塗布具1は、図1に示すように、環状に配置された複数の櫛歯22からなる櫛部23を有する剤塗布部2を備えている。剤塗布部2は、頭髪処理剤3を吐出する剤吐出口21を備えており、複数の櫛歯22は、剤吐出口21の周囲を囲むように環状に配置されている。頭髪処理剤塗布具1は、頭髪処理剤3を収容し、該頭髪処理剤3を剤塗布部2に供給可能な容器部4を有する。また、頭髪処理剤塗布具1は、頭髪処理剤3を容器部4から剤塗布部2に供給するための液導出路51を持つ延長部材5を有する。
【0011】
剤塗布部2は、頭髪に接触させる部分であり、頭髪を櫛部23で梳きながら該頭髪に頭髪処理剤3を塗布可能である。
第1実施形態における剤塗布部2は、図2及び図3に示すように、平面視円形状の櫛歯台20を備えており、該櫛歯台20の中央部に、延長部材5を通じて供給された頭髪処理剤3が吐出される剤吐出口21が開口している。櫛歯22は、櫛歯台20に、剤吐出口21の周囲を囲むように多数立設されている。これらの櫛歯22によって、櫛歯台20上に、円筒状の櫛部23が形成されている。櫛歯22及び櫛歯台20は、合成樹脂により一体に成形されている。
【0012】
第1実施形態における櫛歯22は、図3に示すように、平面視形状及び横断面形状が円形状であり、剤吐出口21を囲む円形のライン24上に等間隔に配置されている。
また、櫛歯22は、図5に示すように、先端近傍部22aから櫛歯の基端22e側に向かって櫛歯幅W(本実施形態では櫛歯の直径L1に同じ)が減少する逆テーパー部22cを有している。櫛歯幅Wとは、剤吐出口中央部側から櫛歯をみたときの投影幅である(図3及び図10参照)。本実施形態において、逆テーパー部22cは、櫛歯22における、隣接する櫛歯22との隙間の幅が、先端部側から基端部側に向かうに連れて漸増する部分でもある。
【0013】
第1実施形態における櫛歯22は、先端部22hとして半球状部22dを有しており、該半球状部22dの下端P3(先端部22hの下端P3)が、逆テーパー部22cの上端P1となっている。すなわち、櫛歯22は、先端部22hの下端P3から櫛歯の基端22e側に向かって櫛歯幅W(本実施形態では櫛歯の直径L1に同じ)が減少する逆テーパー部22cを有している。頭部に先端部22hを押し付けた際に、当該先端部22hは頭髪を掻き分けて、より多くの頭髪を隣接する櫛歯同士の隙間に誘導し易くするガイド機能を果たす。
他方、逆テーパー部22cの下端P2は、櫛歯22の高さ方向中央部22bに位置している。
頭髪を隣接する櫛歯の逆テーパー部間に誘導する観点から、逆テーパー部22cの上端P1は、櫛歯22の先端からの距離T1(図5参照)が0〜5mmであることが好ましく、より好ましくは0〜3mmであり、更に好ましくは0〜2mmである。
【0014】
櫛歯22の先端近傍部22aは、概ね、櫛歯22の先端から、該先端より7mm程度下方の位置までの範囲である。本発明における「先端近傍部」は、櫛歯の先端と、該櫛歯の先端の近傍に位置する部分との両者を包含する概念であり、図9に示す実施形態のように、逆テーパー部22cの上端P1が櫛歯の先端に位置していても良い。
【0015】
他方、櫛歯22の高さ方向中央部22bは、概ね、櫛歯22の高さを3等分して3領域に区分したときの中央の1領域である。櫛歯22の逆テーパー部は、櫛歯の高さ方向中央部に達していなくても良いが、本実施形態におけるように、櫛歯の先端近傍部から該櫛歯の高さ方向中央部に亘っていることが好ましい。逆テーパー部が、櫛歯の先端近傍部から該櫛歯の高さ方向中央部に亘っているという表現には、逆テーパー部の下端が、櫛歯の高さ方向中央部に位置している場合と、逆テーパー部が、該高さ方向中央部を超えて更にそれより下方の領域までに亘っている場合との両者が含まれる(図8参照)。
【0016】
逆テーパー部22cの下端P2は、櫛歯22の先端からの距離T2(図5参照)が、櫛歯22の高さT(図5参照)の10〜100%であることが好ましく、より好ましくは、30〜100%であり、更に好ましくは50〜100%である。
また、逆テーパー部22cの高さT3(上端P1と下端P2の高低差,図5参照)は、櫛歯22の高さTの10〜100%であることが好ましく、より好ましくは30〜100%であり、更に好ましくは50〜100%である。
【0017】
櫛部23及び頭髪処理剤3は、図6に示すように、櫛部23を上方に向けて頭髪処理剤3を吐出させたときに、筒状の櫛部23の内側に、頭髪処理剤3を所定量貯留可能であることが好ましい。
頭髪処理剤3としては、染毛剤、ブリーチ剤、整髪剤、育毛剤、ヘアケア剤等の各種公知の頭髪処理剤を用いることができ、そのそれぞれの組成も特に制限されない。しかし、頭部から離れた位置において頭髪処理剤3を吐出させた後、吐出させた剤を筒状の櫛部23内からこぼれないようにしながら頭部まで運べるようにする観点からは、頭髪処理剤3は、剤吐出口21からある程度の粘度を有する液状(クリーム状のものや固形分や気体分を含む液状のものを含む)又は泡状に吐出可能なものであることが好ましい。剤吐出口21から泡状に吐出する頭髪処理剤は、容器部4に充填する時点で泡状のもの、容器部4内で泡状に変化したもの、容器部4と剤吐出口21との間等で泡状に変化したもの等の何れであってもよい。ここで、頭髪処理剤の粘度は、5000〜30000mPa・s(20℃)が好ましく、10000〜20000mPa・s(20℃)がより好ましい。
【0018】
剤塗布部2を、頭部の頭頂部側から頭髪の毛先方向に向かって一回移動させる一度の塗布操作で、頭髪に、ある程度の塗布幅で、ある程度の長さに亘って剤を塗布できるようにする観点等から、頭髪長さが約20〜25cmのミディアムヘアの女性の場合には、櫛歯22の高さTは、5〜30mmであることが好ましく、より好ましくは10〜20mmであり、更に好ましくは12〜18mmである。
また、同様の観点等から、櫛歯22の基端部の断面中心が通る円状ライン24の内径L4(図3参照)は、5〜30mmであることが好ましく、より好ましくは5〜20mm、更に好ましくは5〜15mmである。かかる内径L4の範囲は本発明の塗布具をストリーク(頭髪の一部を筋状に脱色または染毛すること)で実施する場合に、好ましい筋幅となる範囲でもある。
【0019】
第1実施形態における櫛歯22は、逆テーパー部22cの両側の櫛歯外形線L2,L2がそれぞれ直線状をなしている。逆テーパー部22cの両側の櫛歯外形線L2,L2は、櫛歯22の軸中心線L22に対する傾斜角度θ1(図5参照)が、例えば0.5〜20°であり、より好ましくは1〜10°であり、更に好ましくは2〜5°である。かかる範囲の場合には、隣接する櫛歯同士の逆テーパー部で頭髪同士と頭髪処理剤がしごかれ、頭髪束の表面だけではなくその内部まで頭髪処理剤が浸透しやすくなる。さらに、頭髪処理剤が浸透した頭髪束が基端部へ移動しやすくなり、頭髪の根本から先端まで頭髪処理剤を均一に塗布することができる。なお、逆テーパー部22cの両側の櫛歯外形線L2,L2は、櫛歯22の中心軸線L22から離れる方向に向かって凸又は凹状に湾曲した曲線状とすることもできる。
【0020】
また、隣接する櫛歯22間の隙間は、逆テーパー部22cの上端P1における幅W1(最短距離)が、0.1〜3mmであることが好ましく、より好ましくは0.3〜1mmである。かかる範囲の場合には、逆テーパー部に誘導された頭髪束を抜けにくくでき、また頭髪同士と頭髪処理剤を良くしごくことができる。また、隣接する櫛歯22間の隙間は、逆テーパー部22cの上端P1より下方における最大の幅W2が、0.2〜5mmであることが好ましく、より好ましくは0.8〜2mmである。かかる範囲の場合には、頭髪処理剤が浸透した頭髪束を基端部へ移動させやすくなる。
第1実施形態における櫛歯22は、逆テーパー部22cより下方に、基端22eに近づくに連れて櫛歯幅W(直径L1)が増大するテーパー部22fを有している。テーパー部22fの両側の櫛歯外形線L3,L3は、櫛歯22の軸中心線L22に対する傾斜角度θ2(図5参照)が、例えば0.5〜5°であり、好ましくは0.5〜2°である。かかる範囲の場合には特殊な構造の成形金型が不要となり、剤塗布部2を成形しやすくなる。なお、テーパー部22fの前記傾斜角度θ2は、逆テーパー部22cの前記傾斜角度θ1より小さいことが好ましい。
逆テーパー部22cの下方は、テーパー部22fとするのに代えて、直径が上下方向に亘って一定の同径部とすることも好ましい。また、逆テーパー部22cの下方に、テーパー部22f及び同径部を設けることもできる。その場合、テーパー部22f及び同径部のうち、テーパー部22f側を基端22e側に形成しても良いし、同径部側を基端22e側に形成しても良い。
【0021】
第1実施形態の頭髪処理剤塗布具1における容器部4は、図1に示すように、スクイズ可能な有底筒状の外容器42と、外容器42内に配置され、口部が外容器42の円筒状の口部内面に気密に接合された内袋43とを有する容器本体41と、容器本体41の口部に取り付けられる逆止弁44付きの接続キャップ45とからなる2重構造の容器からなり、外容器42を片手で把持してその片手でスクイズすることにより、外容器42自体又は外容器42と内袋43との間の空気が、内部の内袋43を押圧し、それにより内袋43内の頭髪処理剤3が押し出されて液導出路51を介して剤吐出口21に供給される。また、接続キャップ45の上部には、容器部4と剤塗布部2との間に所定の間隔を形成する延長部材5が結合しており、図4に示すように、延長部材5の他端は、前記の櫛歯台20の裏面側に結合している。延長部材5は、内部に液導出路51を備え、液導出路51を介して、容器部4と剤吐出口21との間を連通している。
【0022】
図1に示す頭髪処理剤塗布具1においては、外容器42の円筒状の口部に、外容器42と内袋43との間の空間と、外容器42の外部とを連通する吸入孔42aが形成されている。そして、押圧されて変形した外容器42が、弾性復元力により元の状態に戻るときに、容器1の外部の空気が、接続キャップ45の下端と外容器42との間に設けた隙間42b及び前記の吸入孔42aを通って、外容器42と内袋43との間に流入する。容器部4は、このような構成を有することで、外周面を押圧して変形させる操作を繰り返すことにより、内容物である頭髪処理剤を徐徐に剤吐出口から吐出させることができる。
【0023】
容器部4に、このような2重構造の容器を用いることにより、内部の頭髪処理剤3の残量が減っても、容器部4がしぼんで把持しにくくなることを防止できる。また、接続キャップ45や、容器部4内の空間と剤吐出口21とを連通する液導出路51等に逆止弁44を設けて、剤の吐出後に空気が液導出路51や容器部4に逆流することを防止することにより、次回の吐出の際に、剤が出にくくなったり剤が飛び散ったりすることを防止することができる。また、容器部4の外容器42における接続キャップ45に覆われていない部分から櫛部23までの距離L(図1参照)は、頭髪への塗布状態の目視による確認性を高める観点及び塗布作業の容易等の観点から、40〜120mmであることが好ましく、より好ましくは70〜90mmである。
【0024】
第1実施形態の頭髪処理剤塗布具1を用いた頭髪処理剤の塗布方法の好ましい一例について説明する。
先ず、容器部4の容器本体41から接続キャップ45を取り外して、容器部4内に頭髪処理剤3を充填する。そして、接続キャップ45を取り付けた後に外容器42を片手で把持して繰り返しスクイズすることにより、容器部4内の頭髪処理剤3を剤塗布部2に送り、剤吐出口21から頭髪処理剤3を吐出させる。そして、図6に示すように、筒状の櫛部23の内側に所望の量の頭髪処理剤3を溜め、次いで、頭髪処理剤3を保持した剤塗布部2を、図7に示すように、頭部に移動し、櫛部23を頭髪側に向けて押し当てる。
そして、剤塗布部2を、頭髪の毛先方向に向けて移動させ、櫛部23で頭髪を梳きながら、隣接した櫛歯22間に挿入された頭髪に対して頭髪処理剤3を塗布する。
【0025】
第1実施形態の頭髪処理剤塗布具1によれば、櫛部23を構成する櫛歯22が前述した逆テーパー部22cを有するため、櫛部23を頭髪に押し当てて移動させた際に、櫛歯22間の隙間に頭髪が入り込み、それらの頭髪は、櫛歯22の先端部付近に滞留することなく、櫛歯22の基部方向に誘導される。
そのため、筒状の櫛部23内における櫛歯先端部付近に存する頭髪処理剤のみならず、櫛歯台の近くに存在する頭髪処理剤3も効果的に頭髪に塗布される。
また、櫛歯22が逆テーパー部22cを有するため、頭髪6がその裏側から頭皮によって支持されていない首62上の頭髪に塗布する場合や、髪の太さや髪の本数が減る毛先寄りの部位に塗布する場合にも、櫛歯22間から頭髪が抜け出しにくい。そのため、首62上の頭髪6や肩上の頭髪、頭髪の毛先寄りの部位に対しても、頭髪処理剤3を安定的に塗布することができる。また、それにより、例えば、頭頂部付近61の頭髪から首62や肩上に亘る長い範囲の頭髪6に対して安定して頭髪処理剤3を塗布することも可能となる。
【0026】
また、先端部22hとして半球状部22dが設けられた本発明の塗布具の櫛部23を頭髪側に向けて押し当てる際、半球状部22dによって、より多くの頭髪を隣接する櫛歯22の隙間に誘導する。そして、該隙間に頭髪が入り込んだ状態で、剤塗布部2を、頭髪の毛先方向に向けて移動させる際に、その頭髪束が、隣接する櫛歯22の逆テーパー部22c間でしごかれて、髪の束の内部の髪一本一本にも効率的に頭髪処理剤3が付着する。これにより、頭髪に対しムラのない頭髪処理を行うこともできる。
また、第1実施形態における櫛歯22は、図3に示すように、円形の仮想ライン上に環状に配置されているため、塗布する際の塗り方が多少異なっても、頭髪に同様の幅で塗布できる利点がある。
【0027】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
図8及び図9は、本発明の第2及び第3実施形態における頭髪処理剤塗布具の櫛歯を示す図(図5相当図)である。図10は、本発明の第4実施形態の頭髪処理剤塗布具の剤塗布部を示す図である。
第2〜第4実施形態の頭髪処理剤塗布具は、櫛歯の形状以外は、第1実施形態と同様の構成を有している。第2〜第4実施形態について、特に説明しない点については、第1実施形態について上述した説明(より好ましい構成の説明等も含む)が適宜適用される。
【0028】
図8に示すように、第2実施形態における櫛歯22Aにおける逆テーパー部22cは、先端近傍部22aから高さ方向中央部22bを超えて基端22eに至るまで連続して直径が減少している。第2実施形態における櫛歯22Aのように、櫛歯22の逆テーパー部22cは、先端近傍部22aから高さ方向中央部22bを超えて基端22eに亘るものであっても良い。
図9に示すように、第3実施形態における櫛歯22Bは、上端部に半球状部を有しておらず、上端が平らな面となっている。そのため、逆テーパー部22cの上端P1が、櫛歯の先端に位置している。
図10に示すように、第4実施形態における櫛歯22Cは、横断面形状が非円形の略三角形状であり、先端部22hとして略三角錐体部22gを有し、先端部22hの下端P3から櫛歯の基端22e側に向かって櫛歯幅Wが減少(隣接する櫛歯間の間隔は拡大)する逆テーパー部22cが設けられている。なお、櫛部23の外周側の形状がストレートとなっているため、櫛部を成形する金型構造を簡素化できる。
【0029】
第2,第4実施形態も、櫛歯22A,22Cが、先端部22hの下端P3から櫛歯の基端22e側に向かって櫛歯幅Wが減少する逆テーパー部22cを有するため、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
また、第3実施形態も、櫛歯22Bが、櫛歯の先端から櫛歯の基端22e側に向かって櫛歯幅Wが減少する逆テーパー部22cを有するため、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
なお、本発明における櫛歯は、例えば、第1,2及び第4実施形態における櫛歯のように、先すぼまり形状の先端部22hを有し、該先端部22hの下端P3が、逆テーパー部22cの上端P1となっていることが、櫛歯間の隙間に頭髪をスムーズに誘導できる観点から好ましい。
【0030】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【0031】
例えば、櫛歯は、高さ方向に離間した複数の逆テーパー部を有していても良い。この場合、複数の逆テーパー部間に、櫛歯幅や直径が均一なストレート部、あるいは櫛歯幅や直径が基端側に向かって増大する順テーパー部を有していても良い。
【0032】
また、櫛歯は、図3に示すように、円形ライン上に配列しているのに代えて、楕円形状のライン上に配列していても良いし、四角形、六角形等の多角形状のライン上に配列していても良い。
また、図5や図10に示すように、逆テーパー部の上方に半球状部や略三角錐体部を有するのに代えて、逆テーパー部の上方に、先端を丸めた円錐や円錐台状の先端部が、底面を逆テーパー部側に位置させて連続していても良い。第1及び第2実施形態における半球状の先端部(半球状部)や第4実施形態における略三角錐状の先端部(略三角錐体部)に加え、円錐状の先端部、多角錐(三角錐、四角錐、五角錐、六角錐等)状の先端部、円錐台、多角錐台状の先端部等も、前述した先すぼまり形状の先端部の例である。先すぼまり形状の先端部は、その先端が凸曲面状に丸めてあることが好ましい。
なお、逆テーパー部22cの上端P1より上方には、逆テーパー部22cより櫛歯幅や直径が大きい部分がないことが好ましい。
【0033】
また、本発明の頭髪処理剤塗布具は、容器部4や剤吐出口21を有しないものでも良い。剤塗布部2に剤吐出口21を有しない場合であっても、環状に配置された櫛歯22で囲まれた空間内に、頭髪処理剤を別の容器等から直接注入等することにより、本実施形態と同様にして頭髪処理剤の塗布を行うことができる。
また、容器部は、2重構造を有しないものであっても良いし、また、押し潰したり、巻き上げたりして内容物を押し出し可能なチューブ容器であっても良い。また、接続キャップは逆止弁を有しないものであっても良い。
また、容器部として、エアゾール容器を用いても良い。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0035】
〔実施例1〕
図1〜図5に示す形態の頭髪処理剤塗布具に準じて実施例1の頭髪処理剤塗布具を製造した。実施例1では櫛歯の強度向上の観点から各櫛歯基端にR面取り部(フィレット部)22iを設けた。実施例1の櫛歯の形状を図11(a)に示す。塗布具はウレタン樹脂を
用いて注型法で試作した。
各部の寸法は、下記の通りとした(記号T、T1、T2、W1、W2は図5参照、L4は図3参照)。
櫛歯の高さT(櫛歯先端から櫛歯の基端22eまでの距離):16mm
櫛歯先端から逆テーパー部上端P1までの距離T1:1mm
櫛歯先端から逆テーパー部下端P2までの距離T2:9mm
櫛歯先端からR面取り部(フィレット部)22iの上端22jまでの距離:15.6m

逆テーパー部上端P1における櫛歯の直径:2mm
逆テーパー部下端P2における櫛歯の直径:1.3mm
基端22eにおける櫛歯の直径:2.5mm
R面取り部(フィレット部)22iの上端22jにおける櫛歯の直径:1.5mm
櫛歯が並ぶ円状ラインの内径L4:12mm
櫛歯の本数:15本
逆テーパー部上端P1における隣接する櫛歯間の距離W1:0.5mm
逆テーパー部下端P2における隣接する櫛歯間の距離W2:1.2mm
【0036】
〔比較例1〕
櫛歯の先端部として半径0.5mmの半球状部を有し、半球状部の下端(後述のP1’と同一)から基端側に向かって直径が連続的に漸増するテーパー部となっている櫛歯に代えた以外は、実施例1と同様の構成を有する頭髪処理剤塗布具を製造した。比較例1の櫛歯の形状を図11(b)に示す。
各部の寸法は、下記の通りとした。
櫛歯の高さ(Tに相当):15.5mm
櫛歯先端からテーパー部上端(P1’)までの距離(T1に相当):0.5mm
櫛歯先端からテーパー部下端(P2’)までの距離(T2に相当):15mm
テーパー部上端(P1’)における櫛歯の直径:1mm
テーパー部下端(P2’)における櫛歯の直径(R面取り部上端の櫛歯の直径):1.5mm
基端22e’における櫛歯の直径:2.5mm
櫛歯が並ぶ円状ラインの内径(L4に相当):12mm
櫛歯の本数:15本
テーパー部上端(P1’)における隣接する櫛歯間の距離(W1に相当):1.5mm
テーパー部下端(P2’)における隣接する櫛歯間の距離(W2に相当):1mm
【0037】
〔比較例2〕
櫛歯を、先端部に直径2mmの球状部を有し、該球状部より下方が、先端側から基端側に向かって直径が連続的に漸増するテーパー部となっている櫛歯に代えた以外は、実施例1と同様の構成を有する頭髪処理剤塗布具を製造した。球状部に隣接するテーパー部上端部の直径は1mmであった。
各部の寸法は、下記の通りとした。
櫛歯の高さ(Tに相当):16mm
櫛歯先端からテーパー部上端(P1”)までの距離(T1に相当):1.9mm
櫛歯先端からテーパー部下端(P2”)までの距離(T2に相当):15.5mm
テーパー部上端(P1”)における櫛歯の直径:1mm
テーパー部下端(P2”)における櫛歯の直径(R面取り部上端の櫛歯の直径):1.5mm
基端22e”における櫛歯の直径:2.5mm
櫛歯が並ぶ円状ラインの内径(L4に相当):12mm
櫛歯の本数:15本
テーパー部上端(P1”)における隣接する櫛歯間の距離(W1に相当):1.5mm
テーパー部下端(P2”)における隣接する櫛歯間の距離(W2に相当):1mm
比較例2の櫛歯の形状を図11(c)に示す。
【0038】
〔評価〕
実施例及び比較例の頭髪処理剤塗布具を用いて、下記方法及び評価基準により塗布量の均一性及び剤の浸透性を評価した。
〔塗布量の均一性〕
(方法)
女性の頭部及び首部を模した頭部モデル(マネキン)の頭髪に頭髪処理剤の塗布を行った。
頭髪処理剤としては、下記組成のブリーチ剤を用いた。
また、頭髪処理剤の塗布は、頭髪処理剤を筒状の櫛部内に図6に示す状態に溜めた後、その剤塗布部を頭部上の頭髪に押し当て、次いで、該頭髪を梳くように、該剤塗布部を、頭部モデル(マネキン)の頭頂部付近から首部より下方の位置まで移動させて行った。(頭髪処理剤の組成)
1剤(アンモニア、重炭安等水溶液) :60質量%
2剤(過酸化水素等水溶液) :21質量%
パウダー剤(過硫酸塩等) :19質量%
【0039】
図12に、頭頂部付近の塗り始め部位(根元)から毛先まで塗布したときの塗布量の変化を示した。ここで各図12(a)〜(c)の中央部に縦線が3本あるが、中央の線は耳の位置を表している。左側の線は耳部より上部であって、頭部において頭髪をその裏側から頭皮によって支持している領域との境界を表している。右側の線は耳部より下部であって、頭部において頭髪をその裏側から頭皮によって支持していない領域(首部)との境界を表している。また、下記の評価基準により塗布量の均一性を評価し、その結果を表1に示した。なお、図12中に示す各グラフ中の直線Aは、単位長さの頭髪を処理するのに必要な剤の質量(g/cm)を示す。
(評価基準)
+1点:頭髪の根本から毛先までの全領域中において、70%以上の長さ領域で塗布量が上記のA値を超え、全領域でA値の50%以上が頭髪に塗布されている。
0点:50%以上の長さ領域でA値を超えている。
−1点:A値を超えている領域が50%以下。
【0040】
【表1】

【0041】
〔剤の浸透性〕
(方法)
女性の頭部及び首部を模した頭部モデル(マネキン)の頭髪に頭髪処理剤の塗布を行った。
頭髪処理剤としては、上記組成のものを用いた。
また、頭髪処理剤の塗布は、頭髪処理剤を筒状の櫛部内に図6に示す状態に溜めた後、その剤塗布部を頭部上の頭髪に押し当て、次いで、該頭髪を梳くように、該剤塗布部を、頭部モデル(マネキン)の頭頂部付近から首部より下方の位置まで移動させて行った。
(評価基準)
+1点:塗布部(頭髪束の表面)が処理剤で濡れていて、かつ頭髪束をほぐした場合に、頭髪束の内部まで処理剤で濡れている(処理剤が頭髪束の内部まで浸透している)。
−1点:塗布部(頭髪束の表面)が処理剤で濡れているが、頭髪束をほぐした場合に、頭髪束の内部までは処理剤で濡れていない(処理剤が頭髪束の内部までは浸透していない)。
【0042】
表1に示す結果から明らかなように、実施例の頭髪処理剤塗布具は、塗布量の均一性及び剤の浸透性に優れている。剤の浸透性に優れる理由は、頭髪導入部によって通常より多くの頭髪が櫛歯間に挿入され、隣接する櫛歯の逆テーパー部間で、頭髪の束をしごきながら剤が塗布されるためと考えられる。
【符号の説明】
【0043】
1 頭髪処理剤塗布具
2 剤塗布部
21 剤吐出口
22,22A,22B,22C 櫛歯
22a 先端近傍部
22c 逆テーパー部
3 頭髪処理剤
4 容器部
41 容器本体
45 接続キャップ
5 延長部材
51 液導出路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に配置された複数の櫛歯からなる櫛部を有する剤塗布部を備えた頭髪処理剤塗布具であって、
前記櫛歯は、先端近傍部から基端側に向かって櫛歯幅が減少する逆テーパー部を有している頭髪処理剤塗布具。
【請求項2】
前記逆テーパー部は、前記櫛歯の先端近傍部から該櫛歯の高さ方向中央部に亘っている、請求項1記載の頭髪処理剤塗布具。
【請求項3】
前記剤塗布部は、頭髪処理剤を吐出する剤吐出口を備えており、
複数の櫛歯は、前記剤吐出口の周囲を囲むように配置されており、
前記頭髪処理剤塗布具は、頭髪処理剤を収容し、該頭髪処理剤を前記剤塗布部に供給可能な容器部を有する、請求項1又は2記載の頭髪処理剤塗布具。
【請求項4】
前記櫛歯は、前記剤吐出口が開口する櫛歯台に、平面視円形状に配置されている請求項3記載の頭髪処理剤塗布具。
【請求項5】
前記剤吐出口から吐出させる頭髪処理剤が液状又は泡状である、請求項3又は4記載の頭髪処理剤塗布具。
【請求項6】
前記容器部は、外周面を押圧して変形させる操作を繰り返すことにより、内容物を徐徐に剤吐出口から吐出させ得る、請求項3〜5の何れか1項記載の頭髪処理剤塗布具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−16588(P2012−16588A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129966(P2011−129966)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】