説明

顕微鏡のための変換装置

【課題】光学要素のしっかりとした保持と正確な配置を可能とする顕微鏡のための簡易に構成された変換装置と、前記要素の簡易な変換を提供する。
【解決手段】担持体50と、担持体上に着脱可能に取り付けるために第1の結合部分52に結合可能である第2の結合部分を有する少なくとも1つの光学要素を有する顕微鏡のための変換装置において、第2の結合部分は、第1のコード化構造56に向けての所定の取付け調整に関して、第1のコード化構造に対して相補的に具現化され、その取付け調整に関して、担持体の回転軸Rに垂直に第1のコード化構造に設置可能である第2の機械的なコード化構造を有し、対になって相互に係合する係合要素及び/又は対になって相互に当接する当接要素が、3点支持を画定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の周りに回転可能に支持された担持体(carrying body)を含む、顕微鏡の変換装置に関し、この変換装置は第1の結合部分と、担持体に光学要素を取外し可能に取り付けるために上記第1の結合部分に結合可能な第2の結合部分を備えた少なくとも1つの光学要素とを有する。
【背景技術】
【0002】
上記種類の変換装置は、光学要素の選択可能な取付けのための保持器(retainer)、例えば蛍光フィルタブロックとして顕微鏡で用いられている。これに関し、例として特許文献1が参照される。特許文献1は、担持体上に取付けられるべき光学要素がそれぞれ担持体の当接面上に取付けられたダブテイル型スライド(a dovetail slide)を備える変換装置を開示している。当接面の前方に、相互作用する保持要素として、ピン形のボルトと、その横でボルトによる張力を受けながら曲げられた圧縮ばねとが取り付けられている。曲げられた圧縮ばねの張力によって、圧縮ばねとボルトは、当接面に対して押圧されるダブテイル型スライドの内側に押し付けられる。
【0003】
この従来から知られている変換装置は、ダブテイル型スライドを備えたそれぞれの光学要素が、ボルトと圧縮ばねから構成されたばね構造に、側面から、即ち担持体の当接面に実質上並行である方向に、固定されなければならないという点で不利である。このような理由から、担持体は、装着を複雑にする担持体の望ましからざる回転運動を防ぐべく、光学要素を結合させるために、例えばそのために特に設けられたブレーキを用いて、動かせないようにしなければならない。また、上記のばね構造によって、圧縮ばねの撓みは、取り付け状態で固定効果を得るために正確に調整されなければならない。
【0004】
特許文献2と特許文献3から、回転軸の周りに回転可能に支持された担持体をそれぞれ含む変換装置が知られている。光学要素は、担持体に取外し可能に取り付けられ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】DE 199 36 497 A1
【特許文献2】DE 199 24 686 A1
【特許文献3】US 2008/0043324 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、光学要素のしっかりとした保持と正確な配置を可能とする顕微鏡のための簡易に構成された変換装置と、前記要素の簡易な変換を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、請求項1に係る特徴を有する顕微鏡のための変換装置によって、この目的を達成する。
【0008】
本発明に係る変換装置は、第1の結合部品が第1の機械的なコード化構造を有し、第2の結合部品が第2の機械的なコード化構造を有するという事実で顕著である。第2の機械的なコード化構造は、第1のコード化構造の方へ所定の設置調整(installation alignment)に関して、その第1のコード化構造に対し相補的なように具現化され、その設置調整に関して、担持体の回転軸に垂直に第1のコード化構造に配置可能である。
【0009】
それゆえ、本発明は、結合部品に関して、機械的なコード化構造を備える。機械的なコード化構造は、それらが互いに関して所定の設置調整でだけ相互に結合され得るような方法で相互に補完的に具現化される。コード化構造は、担持体の回転軸に垂直に、即ち、放射状の方向に、(担持体上に備わった)第1のコード化構造上へ(光学要素上に備わった)第2のコード化構造を配置することを可能にするように具現化される。「相補的な」構造は、これに関連して、鍵―鍵穴の原理の意味で、所望の設置調整において、また担持体の回転軸に垂直に放射状の方向において、相互の3次元適合(mutual three-dimensional fit)をもたらす物理的な立体構成(raumkoerperliche Ausgestaltung, solid physical configuration)として、理解されるべきものである。それゆえ、相補的なコード化構造は、担持体上の光学要素の明確な配置を保証し、不正確な配置を回避する接合面の幾何学的構造(interface geometry)を生じさせる。
【0010】
コード化構造によって、ユーザーは光学要素を放射状の方向で担持体上へ簡易に配置することが可能である。これは、光学要素が側面から担持体上に適所にクランプ固定される従来技術からの公知の手法と比較して変換装置の取り扱いを著しく簡素化する。特に、光学要素を取付けるために、例えばブレーキを用いて担持体を動けなくすること、又はねじで担持体をしっかり固定することは、もはや必要ではない。なぜなら、担持体上に回転作用する設置力が担持体上へ放射状に光学要素を配置することによって回避されるからである。それゆえ、光学要素の「設置」は以下、特に工具の使用なしを含んで、担持体上の光学要素の取付けや配置として理解される。
【0011】
放射状に相補的なコード化構造によって、光学要素もまた、回転軸の周りに回転するときに、担持体の加速又は減速に際して発生する遠心力に対して効果的にしっかりと固定される。
【0012】
2つのコード化構造の一方は、少なくとも1つの第1の係合要素、例えば小ピン及び/又は細長い突起を有している。一方、他方のコード化構造は、それに相補的な少なくとも1つの第2の係合要素、例えば凹部及び/又は溝を有している。第2の係合要素は、担持体の回転軸に垂直に第1の係合要素に係合されることが可能である。互いに係合するこれらの要素によって、光学要素は、担持体上に簡単に取付けられ得て、しっかりと担持体上に保持される。
【0013】
二者択一的に、又は上記係合要素に追加して、更に有利な実施形態に関し、2つのコード化構造の一方は、少なくとも1つの第1の平らな当接要素を有し、他方のコード化構造は、それに相補的な少なくとも1つの第2の平らな当接要素を有する。第2の係合要素は、担持体の回転軸に垂直に第1の当接要素に当接されることが可能である。特に、2つのコード化構造が、例えば小ピンと穴又は細長い突起と溝のような、互いに係合する要素だけでなく、平坦な接触の状態である当接要素も含む場合、これによって、一方ではコード化構造が不正確な取付けを避けながら光学要素の単純な放射状の配置を可能にし、また他方では光学要素が担持体上にしっかりと保持されることを保証する。
【0014】
対になって互いに係合する係合要素及び/又は対になって互いに当接する当接要素は、3点支持を定義する。この種の3点支持は、担持体の上に光学要素をしっかり装着することを保証する取付け面を明確に定義し、即ち、過度でも過少でもなく定める。
【0015】
溝が係合要素として備えられるとき、溝は、好ましくは横断面で矩形に又は三角形に具現化される。このような所謂U溝又はV溝は、それぞれ担持体上への光学要素の確かな結合を保証する。V溝は特に、それらの先細る横断面形状のため、担持体上での光学要素の自己調整を向上させる。
【0016】
好ましい実施形態に関して、少なくとも2つの溝が備えられる。好ましくは横断面で矩形状の第1の溝は、担持体の回転軸に並行に延在し、好ましくは横断面で三角形の第2の溝は、第1の溝に対して交差して延在している。対になって相互に係合し、相互に交差して配置される要素のため、この実施形態は、担持体上の光学要素のしっかりとした保持を向上させる。
【0017】
第2の溝は、好ましくは第1の溝によって中断された溝である。一方、第2の突起は、交差方向に第1の突起を貫通する棒形状の要素として具現化される。この実施形態に関して、2つの溝は、相互に対して言わばクロスに配置され、このことは担持体上の光学要素の自己調整装着(self-aligning mounting)を更に向上させる。
【0018】
好ましくは、第1のコード化構造は、少なくとも1つの第1の接続要素を有し、第2のコード化構造は、2つのコード化構造の結合のため、着脱自在な相互接触となり得る、即ち、結合され得る少なくとも1つの第2の接続要素を有する。好ましい実施形態に関して、接続要素はそれぞれ、相互係合となり得る係合要素の一方の上に及び/又は相互当接となり得る当接要素の一方の上に具現化される。例えば、2つの接続要素の一方は、横断面矩形状である溝の底面に具現化される。他方の接続要素は、溝に係合する突起の、上記底面の方に向いた平らな端面に具現化される。これによって、特に担持体の光学要素のしっかりとした保持を保証する。
【0019】
第1の接続要素と第2の接続要素は、好ましくは磁気的吸引要素を有する。例えば、磁石が、第1の接続要素上に装着され、強磁性材料が、第2の接続要素上に装着される。第1の接続要素と第2の接続要素の両方が相互に引き付けあう磁石を含むこと又はそのように具現化されることもまた考えられる。そのような要素の間に発生した磁気吸引力の範囲で、光学要素の装着の際に相互に近寄せられたコード化要素が自己調整するように相互に引っ張られる。これは、変換装置上に光学要素を取付けることを容易にする。磁力的に有効な要素、即ち磁石、磁化された要素又は磁化可能な要素の様々な組み合わせは、接続要素として考えられる。例えば、永久磁石及び/又はフェリ磁石やフェリ磁石材を作られた要素が使用可能である。電磁石もまた接続要素として利用され得る。
【0020】
有利な実施形態に関して、相互当接となり得る2つの当接要素は、相互にある角度に、好ましくは直角に配置された2つの面からそれぞれ形成される。これらの面の1つが取付け状態で水平に調整されるとき、その面は、その面に関連した当接要素が重力の結果として支えられる支持面として供せられる。この種の支持面は、例えば担持体の下端で具現化され得る。
【0021】
特に好ましい実施形態に関して、相互に接続されたコード化構造の相互磁気的吸引要素は、相互にずれて配置され、それによって、磁気吸引力を発生させる。磁気吸引力は、相互当接となる当接要素のそれらの面の間で磁気的吸引をそれぞれもたらす2つの力成分を有する。例えば、当接要素の1つが水平に配置された支持面上に載っているとき、相互に垂直にずれた磁気的に有効な接続要素によって、水平な力成分と垂直下方に向けられた力成分を有する斜め下方に向けられた吸引力を発生させることが可能である。垂直に調整された面は、水平な力成分によって相互に押付られ、一方、いずれにせよ作用する重力に加えて、垂直下方に向けられた力成分は、水平な支持面上に載っている面を支持面に押し付ける。
【0022】
磁気的に有効な接続要素の代わりに、他のタイプの接続要素、例えばネジ、釘、ばね等もまた力発生手段(force-generating means)として使用され得る。好ましい実施形態に関して、例えば第1の接続要素又は第2の接続要素は、スプリングクランプを有し、他方の接続要素は、スプリングクランプに掛かるラッチング要素(latching element)を有する。ばね力は、相互に対して押し付ける2つの当接要素の支持面上に作用し、それによって、支持面に対する当接要素の自己調整接触を、従って、変換装置に光学要素をしっかり保持することを保証する。
【0023】
係合要素、当接要素、接続要素によって構成されたコード化構造が、不正確な取付けを回避する一方で放射状の結合をもたらすため、また、担持体上に光学要素をしっかり保持するために、本発明に係るやり方で相互作用することが保証される限り、これら係合要素、当接要素、接続要素は任意の組み合わせで使用可能であることが特に言及される。係合要素、当接要素、接続要素はまた、本発明にしたがってそれらの相互作用が保証される限り、担持体上と光学要素上に任意に分布可能である。ある特定の実施形態において、例えば、溝が担持体に具体化可能で、溝に係合する突起は光学要素に具体化可能である一方、二者択一的な実施形態において、対応する溝が光学要素に配置され、突起が担持体に配置される。
【0024】
好ましくは、少なくとも1つの光学要素は、第2の結合部分をそれぞれ有する複数の光学要素を含み、担持体は、第2の結合部分の1つとそれぞれ関連付けられる複数の第1の結合部分を含む。この場合、担持体には、複数の光学要素を備えることが可能で、担持体は必要に応じて顕微鏡内で回転可能であるので、上述の光学要素の1つが選択可能に使用される。光学要素は、例えば、励起フィルタ、ビームスプリッタ、ブロッキングフィルタをそれぞれ含む蛍光フィルタブロックである。そして、変換装置は、フィルタセットに関連付けられる蛍光領域(範囲)の代替的な選択のために蛍光顕微鏡において有利に使用され得る。
【0025】
担持体は、好ましくはその回転軸周りに回転対称であるタレットである。この場合、タレット上に配置された結合部品は好ましくは同じ形態であり、光学要素上に備えられ且つそれらと関係付けられた結合部品もまた、好ましくは同じ形態である。光学要素のそれぞれは、タレット上に具現化された結合部品のそれぞれに接続され得る。
【0026】
本発明は、上記の種類の変換装置を有した顕微鏡を更に提供する。
【0027】
本発明は、図面を参照して更に詳細に以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る変換装置が配置された蛍光顕微鏡を示す概略的である。
【図2】第1の実施形態に係る変換装置の部品であるタレットを示す斜視図である。
【図3】第1の実施形態に係る変換装置の一部である蛍光フィルタブロックを示す概略図である。
【図4】光学要素を取り付けた状態の第1の実施形態に係る変換装置を示す側面図である。
【図5】取付け状態で第1の実施形態に係る変換装置を示す断面図である。
【図6】取付け状態で第1の実施形態に係る変換装置を示す斜視図である。
【図7】第2の実施形態に係る変換装置の部品であるタレットを示す斜視図である。
【図8】第2の実施形態に係る変換装置の部品であるフィルタブロックを示す。
【図9】第3の実施形態に係る変換装置の部品であるタレットを示す。
【図10】第3の実施形態に係る変換装置の部品であるフィルタブロックを示す。
【図11】取付け状態で第3の実施形態に係る変換装置を示す斜視図である。
【図12】第3の実施形態に係る変換装置を示す断面図である。
【図13】第4の実施形態に係る変換装置の部品であるタレットを示す斜視図である。
【図14】取付け状態で第4の実施形態に係る変換装置を示す斜視図である。
【図15】取付け状態で第4の実施形態に係る変換装置を示す平面図である。
【図16】取付け状態で第4の実施形態に係る変換装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明に係る変換装置(changing apparatus)12を含む倒立蛍光顕微鏡(inverted fluorescence microscope)10を示す。図1は、単に概略図であり、蛍光顕微鏡10の中で変換装置12の配置をただ説明するためのものである。
【0030】
変換装置12は、蛍光顕微鏡10のスタンド(stand)14に取り付けられている。変換装置は、回転軸Rの周りに回転可能に取付けられた、以下でタレットと称する担持体(carrying body)16を取り囲む。タレット16は、複数のフィルタブロック18を備え付け、それらの2つが図1に平面図で示されている。タレット16とフィルタブロック18は、様々な実施形態で、後に詳細に記載されている。
【0031】
光源19から、照射ビーム路(illumination beam path)21が発している。照射ビーム路は、照射レンズ23を通って、励起フィルタ(excitation filter)24と、照射ビーム路に45°で配置されたビームスプリッタ25と、出力フィルタとも称するブロッキングフィルタ26と、を取り囲む蛍光フィルタブロック18に突き当たる。照射ビームは、励起フィルタ24を通過し、ビームスプリッタ25で、対物レンズタレット(objective turret)20の上に取り付けられた対物レンズ22に導かれる。対物レンズタレット20は、タレット回転軸Tの回りに回転可能であり、別の対物レンズ用の第2の非装着位置(陰影を付けた)27を有する。照射ビーム路21は、顕微鏡の積載台29の上に配置された試料28を照射する。
【0032】
変換装置12は、フィルタブロック(18a、18b)の1つを選択可能に照射ビーム路21へ旋回するのに供される。
【0033】
対物レンズ22は、試料28を第1の中間画像面(intermediate image plane)30に結像する。このため、画像形成ビーム路(imaging beam path)39は、対物レンズ22とビームスプリッタ25とブロッキングフィルタ26とチューブレンズ(tube lens)31を通過し、第1の偏向ミラー(deflection mirror)32によって、第1の中間画像面30に導かれる。中間画像は、第2の偏向ミラー34と第3の偏向ミラー35を経て、さらなる倍率を生成しないトランスポーテーションレンズ33によって、第2の中間画像面36に結像される。中間画像は、ユーザー37によって接眼レンズ(eyepiece)38で見られ得る。或いはまた、中間画像は、カメラ(図示せず)に導かれ得る。
【0034】
図2〜5は、第1の実施形態に係る変換装置を示す。図2と3は、変換装置の個々のコンポーネントを示す。一方、図4と5は、取り付けられた状態で変換装置を示す。
【0035】
第1の実施形態に係る変換装置は、図2に示されたタレット50を取り囲む。タレットは、6つのフィルタブロックと共に配置され得て、それらの1つは、図3に、例として示され100と符号が付されている。
【0036】
タレット50は、同じ構成の6つの結合部分52からなり、それら結合部分のそれぞれに、フィルタブロック100(あるいは結合の点で同じ構成の他のフィルタブロック)が取り付けられ得る。それぞれの結合部分52は、タレット50の外側面54上に具現化されている。
【0037】
タレット50の結合部分52は、図2に全体的に符号56が付された第1の機械的なコード化構造(coding structure)を備えて構成される。この第1の機械的コード化構造56は、外側面54の結合部分の下半分に、2つの溝付き基部58,60を有している。それら溝付き基部のそれぞれに、V字形の溝62,64が具現化されている。溝62,64は、お互いに一直線上に合わせられている。それゆえ、それら溝は、単一であるが中断した溝(interrupted groove)としても解釈可能である。外側面54の上端には、支持面66が形成されている。そして支持面から小ピン(peg)68が突き出ている。第1の円形の磁石(circular magnet)70は、おおよそ外側面54の中心に配置されている。
【0038】
図5から最も知られ得るように、タレット50は、段付きで具現化された支承ボア(bearing bore)72によって貫かれている。支承ボアは、(図に単に概略的に示された)回転軸R上に回転可能にタレット50を支持するのに供される。
【0039】
図3に分離して示されたフィルタブロック100は、タレット50の結合部分52と関わり合う結合部分102を有している。前記結合部分102は、タレット50の第1のコード化構造56と相補的なように具現化された第2の機械的なコード化構造を備えて構成され、図3に全体的に符号104が付されている。この相補的なコード化構造104は、端面108から突き出した立方形の隆起部(cuboidal elevation)106から形成されている。隆起部106は、その下端で側方に突き出した2つの突起110,112を有し、その上端で矩形の凹部114を有する。第2の円形の磁石116は、おおよそ隆起部106の中心に配置されている。
【0040】
コード化構造56,104は、フィルタブロック100がその結合部分102によって、回転軸Rに垂直な放射状の方向で、タレット50の結合部分52に配置され得るように、相互に適合する。フィルタブロック100は、このように、即ち、工具の使用なしに、タレット50の上に取り付けられると、突起112は溝62と係合し、突起110は溝64と係合し、隆起部58の端面の上部は当接面(abutting surface)66と当接し、凹部114は小ピン68と係合するようになる。更に、2つの磁石70,116は、相互に当接し、磁気吸引力(magnetic attraction force)を発生させ、それによって、フィルタブロック34は、タレット50上にしっかりと保持される。図5で矢印によって示されているように、この吸引力は回転軸Rに垂直な放射状の方向に作用する。
【0041】
タレット50上に具現化された係合要素62,64,68は、フィルタブロック100上に具現化された係合要素110,112,114と相互に、タレット50上にフィルタブロック100をしっかりと固定することを保証する3点支持を形成する。2つの磁石70,116によって発生した吸引力は、タレット50上へのフィルタブロック100の結合に関して、相互に関連した相補的なコード化構造56,104の自動調心(self-alignment)をさらに助長(促進)する。フィルタブロック100が単にきちんと配置されることによって最適な位置にもたらされるため、再調整(readjustment)と特に工具の使用は不必要である。
【0042】
図2〜図4の補足として、図5に係る断面図から明らかな点は、本実施形態においてフィルタブロック100が励起フィルタ24とブロッキングフィルタ26とビームスプリッタ25を備えることである。
【0043】
図4〜図6は、第1の実施形態に係る交換装置を取り付け状態で示し、図4は側面図であり、図5は断面図である。図4と図5から特に明らかなように、フィルタブロック100は、取り付け状態でタレット50に放射状に配置される。
【0044】
本発明に係る変換装置の別の実施形態は、図7〜図16を参照して以下に説明される。これらの実施形態は、図2〜図6に示された第1の実施形態と、相互に関連した相補的なコード化構造の個々の要素に関して、異なる。図7〜図16においても同様に、機械的なコード化構造は、概して全体にわたって56,104でそれぞれ示されている。さらに、第1の実施形態のものに対応するコンポーネントは、第1の実施形態で既に使用されている参照符号で付されている。以下、これらのコンポーネントの説明は省略する。
【0045】
図7は、第2の実施形態に係るタレット150を示す。タレット150のコード化構造は、タレット150の横方向にお互いに一直線上に合わせられている2つのV溝152,154を備える。溝152と溝154の間に、コード化構造56は、回転軸Rに並行に延びるU溝156を備える。それゆえ、V字形の溝152,154は、言わば、U字形の溝156によって中断された1つの溝である。磁石160は、U字形の溝156の底面158上に配置されている。
【0046】
図8は、図7に示されたタレット150に関わり合うフィルタブロック200を示す。フィルタブロック200の機械的なコード化構造104は、タレット150上へのフィルタブロック200の結合に関して、U字形の溝156に係合する立方突起部(cuboidal lug)202を備える。突起部202は、バー(bar)204によって横方向に貫かれている。バー204の相対する端部分206,208は、V字形の溝152,154へ係合されるようになる。突起部202は、さらにその端面210で磁石212を備える。磁石212は、タレット150上へのフィルタブロック200の結合に関して、U字形の溝156に配置された磁石160に当接するようになっており、それゆえ、タレット150上にフィルタブロック200のしっかりとした保持を保証する。突起部202の下面上には、雌ねじ穴214が具現化されている。この雌ねじ穴に、止めねじ(図8で図示せず)は、バー204を突起部202に固定するため、挿入され得る。
【0047】
図7、図8に示された実施形態において、一方では係合要素152,154,206,208が、他方では係合要素156,202が、相互に関してクロスに配置されている。その結果、フィルタブロック200がタレット150上に特にしっかりと保持される。
【0048】
図9〜図12は、第3実施形態に係る変換装置を示す。図9は、タレット250を示す。その機械的なコード化構造56は、小ピン256だけでなく2つの当接面252,254を含む。コード化構造56は、タレット250の下端で、外側面54から水平に突き出ている2つの支持面258,260を更に含む。互いに垂直にずらされた2つの磁石262,264は、外側面54上に更に配置されている。
【0049】
図10は、タレット250上へ結合されるようになっているフィルタブロック300を示す。フィルタブロック300の機械的なコード化構造104は、フィルタブロック300の上端へ向かって開き、細長く、垂直に延在する凹部302を備える。コード化構造104は、互いに垂直にずらされた磁石304,306を更に含む。
【0050】
タレット250上へのフィルタブロック300の結合に関して、小ピン256は、凹部302に係合するようになっている。更に、タレットの外側面54上に具現化された当接面252,254は、側壁54の方へ向いたフィルタブロック300の端面の部品と当接するようになっている。
【0051】
図12から知られ得るように、対になって相互に関わり合う磁石262,304と磁石264,306は、互いに垂直にずれた状態でそれぞれ配置される。それゆえ、磁石262,304と磁石264,306のそれぞれの対は、水平に作用する力成分と垂直下方に作用する力成分の両方を備える磁気吸引力を発生させる。これは、斜め下方に向いている矢印によって図12に示されている。垂直下方に向けられた力成分によって、タレット250の支持面258,260上に支持されているフィルタブロック300のこれらの部分は、支持面258,260に対して押し付けられる。一方、水平に向けられた力の成分は、当接面252,254に対して当接するフィルタブロック300のこれらの部分が当接面252,254に対して押し付けられることを保証する。最後に、水平に向けられた成分は、また凹部302への小ピン256のしっかりとした係合も保証する。
【0052】
図13〜図16は、本発明に係る変換装置の第4の実施形態を示す。この変換装置は、図13に分離して示されたタレット350を含む。このタレットは、図2に示された第1の実施形態に係るタレット50とは、内部に設けられた磁石70の代わりに、上端で、2つのクランプ要素354,356から構成されるスプリングクランプ(spring clamp)352を備えるという点でだけ実質的に異なる。クランプ要素354,356の自由端は、V字形で内側に曲げられた相互に向き合った掛け金部分(latching segment)358,360を有している。
【0053】
図14〜図16は、第4の実施形態に係る変換装置を取付けられた状態で示す。そこで明らかなように、タレット350に関わるフィルタブロック400は、図3に示された第1の実施形態に係るフィルタブロック100とは、内部に備えられた磁石116が掛け金要素によって置き換えられているという点でだけ異なる。掛け金要素は、立方状の隆起部106の上端で具現化され、側面へ突き出ている2つの突起404,406から構成される。図15から最も容易に知られるように、突起404,406によって構成された掛け金要素は、タレット350上へのフィルタブロック400の配置に関してスプリングクランプ352に掛け止めされる。
【符号の説明】
【0054】
10 蛍光顕微鏡
12 変換装置
14 スタンド
16 タレット
18,18a、18b フィルタブロック
19 光源
20 対物レンズタレット
21 照射ビーム路
22 対物レンズ
23 照射レンズ
24 励起フィルタ
25 ビームスプリッタ
26 ブロッキングフィルタ
30 第1の中間画像面
31 チューブレンズ
32 偏向ミラー
33 トランスポーテーションレンズ
34 偏向ミラー
35 偏向ミラー
36 第2の中間画像面
37 ユーザ
38 接眼レンズ
50 タレット
52 結合部分
54 外側面
56 第1の機械的コード化構造
58,60 溝付き基部
62,64 V字形の溝
66 当接面
68 小ピン
70 磁石
100 フィルタブロック
102 結合部分
104 第2の機械的なコード化構造
106 隆起部
108 端面
110,112 突起
114 凹部
116 磁石
150 タレット
152,154 V字形の溝
156 U字形の溝
158 底面
160 磁石
200 フィルタブロック
202 突起部
204 バー
206,208 端部分
210 端面
212 磁石
214 雌ねじ穴
250 タレット
252,254 当接面
256 小ピン
258,260 支持面
263,264 磁石
300 フィルタブロック
302 凹部
304,306 磁石
350 タレット
352 スプリングクランプ
354,356 クランプ要素
358,360 掛け金部分
400 フィルタブロック
404,406 突起


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の結合部分(52)を有し、回転軸(R)周りに回転可能に支持された担持体(50,150,250,350)と、
前記担持体(50,150,250,350)上に着脱可能に取り付けるために前記第1の結合部分(52)に結合可能である第2の結合部分(102)を有する少なくとも1つの光学要素(100,200,300,400)と、を有する顕微鏡(10)のための変換装置において、
前記第1の結合部分(52)は、第1の機械的なコード化構造(56)を有し、前記第2の結合部分(102)は、前記第1のコード化構造(56)に向けての所定の取付け調整に関して、前記第1のコード化構造に対して相補的に具現化される第2の機械的なコード化構造(104)であって、その取付け調整に関して、前記担持体(50,150,250,350)の回転軸(R)に垂直に前記第1のコード化構造(56)に設置可能である第2の機械的なコード化構造(104)を有し、
2つのコード化構造(56,104)の一方は、少なくとも1つの第1の係合要素(68,110,112,202,206,208,256)、特に小ピン及び/又は細長い突起を有し、他方のコード化構造(56,104)は、前記第1の係合要素に対して相補的な少なくとも1つの第2の係合要素(62,64,114,152,154,156,302)、特に前記担持体(50,150,250,350)の回転軸(R)に垂直に前記第1の係合要素(68,110,112,202,206,208,256)と係合することになる凹部及び/又は溝を有し、
対になって相互に係合する前記係合要素(68,110,112,202,206,208,256;62,64,114,152,154,156,302)及び/又は対になって相互に当接する当接要素(66,158,252,254,258,260;210)が、3点支持を画定する、変換装置。
【請求項2】
2つのコード化構造(56,104)の一方が少なくとも1つの第1の平らな当接要素(66,158,252,254,258、260)を有し、他方のコード化構造(56,104)が、前記第1の係合要素に対して相補的な少なくとも1つの第2の平らな当接要素(210)を有し、前記第2の平らな当接要素は、前記担持体(50,150,250,350)の回転軸(R)に垂直に前記第1の当接要素(66,158,252,254,258,260)に当接することになる、請求項1に記載の変換装置。
【請求項3】
前記係合要素は、前記当接要素を相互に押付けて3点支持の支持面に対する前記当接要素の自己調整接触をもたらす力発生手段を有する、請求項1又は2に記載の変換装置。
【請求項4】
少なくとも1つの溝(62,64,156)が横断面で矩形又は三角形である、請求項1〜3の何れか一項に記載の変換装置。
【請求項5】
少なくとも1つの溝は、相互に一直線に向けられ、相互に離れて配置された2つのサブ溝(62,64,152,154)から構成される、請求項1〜4の何れか一項に記載の変換装置。
【請求項6】
少なくとも1つの溝は、2つの溝を有し、
好ましくは横断面で矩形の第1の溝(156)は、担持体(50,150,250,350)の回転軸(R)に並行に延在し、
好ましくは横断面で三角形の第2の溝(152,154)は、前記第1の溝(156)に垂直に延在し、
少なくとも1つの突起が、2つの突起を有し、
第1の突起(202)は、前記第1の溝(156)に係合し、
第2の突起(206,208)は、前記第2の溝(152,154)に係合する、請求項1〜5の何れか一項に記載の変換装置。
【請求項7】
前記第2の溝(152,154)は、前記第1の溝(156)によって中断された溝であり、
前記第2の突起(204)は、横方向に前記第1の突起(202)を貫通する棒形の要素として具現化される、請求項6に記載の変換装置。
【請求項8】
前記第1のコード化構造(56)は、少なくとも1つの第1の接続要素(70,160,262,264)を有し、
前記第2のコード化構造(104)は、少なくとも1つの第2の接続要素(116,202,304,306)を有し、
それらは、2つのコード化構造(56,104)の結合のために相互に着脱可能に接続される、請求項1〜7の何れか一項に記載の変換装置。
【請求項9】
前記接続要素(160,212)は、相互係合することになる前記係合要素(156,202)の1つに及び/又は相互当接することになる前記当接要素の1つにそれぞれ具現化される、請求項8に係る変換装置。
【請求項10】
2つの接続要素(160)の一方は、横断面で矩形である溝(156)の底面(158)に具現化され、
他方の接続要素(212)は、前記溝(156)に係合する突起(202)の、前記底面(158)の方に向いた平らな端面(210)に具現化される、請求項9に係る変換装置。
【請求項11】
第1の接続要素及び/又は第2の接続要素は、磁気的吸引要素(70、116、160、212、262、264、304、306)を有する、請求項8〜10の何れか一項に記載の変換装置。
【請求項12】
相互当接することになる2つの当接要素は、相互にある角度で、好ましくは直角に配置される2つの面(252、254、258、260)からそれぞれ形成される、請求項1〜11の何れか一項に記載の変換装置。
【請求項13】
コード化構造(56,104)が相互に接続される場合、磁気的吸引要素(262,264)は、相互にずれて配置され、相互当接となる当接要素(252、254、258、260)の前記面の間に磁気的吸引をそれぞれもたらす2つの力成分を有する磁気的吸引力を発生させる、請求項12に記載の変換装置。
【請求項14】
第1の接続要素又は第2の接続要素は、スプリングクランプ(352)を有し、
他方の接続要素は、スプリングクランプ(352)に掛かるラッチング要素(404,406)を有する、請求項8〜10、12の何れか一項に記載の変換装置。
【請求項15】
光学要素(100、200、300、400)は、蛍光フィルタブロック、中性フィルタ、分光フィルタ、ミラー又は撮像光学素子である、請求項1〜14の何れか一項に記載の変換装置。
【請求項16】
少なくとも1つの光学要素は、第2の結合部分(102)をそれぞれ有する複数の光学要素(100,200,300,400)を有し、
担持体(50、150、250、350)は、前記第2の結合部分(102)の1つとそれぞれ関連付けられる複数の第1の結合部分(52)を有する、請求項1〜15の何れか一項に記載の変換装置。
【請求項17】
担持体(50,150,250,350)は、その回転軸(R)周りに回転対称であるタレットである、請求項16に記載の変換装置。
【請求項18】
請求項1〜17の何れか一項に記載の変換装置を有する、顕微鏡(10)。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−25314(P2013−25314A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−160335(P2012−160335)
【出願日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【出願人】(500178876)ライカ マイクロシステムス ツェーエムエス ゲーエムベーハー (80)
【Fターム(参考)】