説明

顕微鏡システム及びプログラム

【課題】顕微鏡側に操作権がない状態で顕微鏡の制御が不能となっても、観察状態を制御が不能となる前の条件で復旧することができるようにする。
【解決手段】顕微鏡11は、顕微鏡ステータスSTを、通信ケーブル131を介してパーソナルコンピュータ121に送信し、所定の時間内に応答RESTが戻ってきたか、すなわち、タイムアウトしたか否かを判定し(S13)、タイムアウトしたと判定された場合、顕微鏡の操作権を、パーソナルコンピュータ121から顕微鏡11に変えて(S15)、制御不能となっているPC制御から顕微鏡制御に切り替え、ランプ制御などの顕微鏡制御を有効にすることで、顕微鏡側に操作権がない状態で顕微鏡の制御が不能となっても、観察状態を制御が不能となる前の条件で復旧することができる。本発明は、顕微鏡を有する顕微鏡システムに適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気的制御が可能な顕微鏡には、外部制御装置を要さずに顕微鏡制御を実現するために顕微鏡本体にレボルバ切り替えスイッチや開口制御スイッチ、フィルタ切り替えスイッチ、調光制御スイッチなどが設けられているものがある。
【0003】
最近では、長時間に渡る検鏡作業の自動化や工場のインライン装置への顕微鏡の組み込みなどへの要求に伴い、パーソナルコンピュータや外部装置による通信制御を備えている顕微鏡もある。この場合、顕微鏡は、顕微鏡本体が持つスイッチ又は外部装置によって通信制御を行うことになる。
【0004】
また、コントローラ等の依頼側端末と顕微鏡等の観察側端末とが通信回線を介して接続されている顕微鏡システムにおいては、依頼側と観察側で行われる操作の整合をとるために操作権といった概念を用いているものもある(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
この操作権によって一方の端末が操作している場合には、他方の端末からは操作できないようにする。
【特許文献1】特開平6−75173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1を含む従来の技術であると、顕微鏡の操作、制御を担う権利である操作権がパーソナルコンピュータ側にある状態で、通信ケーブルの切断、あるいはパーソナルコンピュータのフリーズが発生した場合には、操作権がパーソナルコンピュータ側に残ったままとなるため、顕微鏡側では、スイッチやボリュームなどにより顕微鏡制御を行うことができなくなる、という問題を生ずる。
【0007】
そして、一度この状態になってしまうと、顕微鏡の電源を切るしか復旧手段はなく、それまで継続して行っていた観察状態を初期化してしまうことになる。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、顕微鏡側に操作権がない状態で顕微鏡の制御が不能となっても、観察状態を制御が不能となる前の条件で復旧することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の顕微鏡システムは、顕微鏡と、前記顕微鏡が有する機器を前記顕微鏡の外部より制御する制御装置からなる顕微鏡システムにおいて、前記機器を制御する操作権が、前記制御装置に与えられている場合に、前記制御装置による前記機器の制御が不能となったか否かを判定する判定手段と、前記機器の制御が不能となったと判定された場合、前記操作権を、前記制御装置から、前記顕微鏡又は前記制御装置とは異なる前記顕微鏡の制御が可能な他の機器に切り替える切り替え手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、顕微鏡側に操作権がない状態で顕微鏡の制御が不能となっても、観察状態を制御が不能となる前の条件で復旧することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明を適用した顕微鏡システムの一実施の形態の構成を示すブロック図である。
【0013】
図1の顕微鏡システムは、顕微鏡11及びパーソナルコンピュータ121から構成される。顕微鏡11とパーソナルコンピュータ121とは、通信ケーブル131を介して接続される。
【0014】
顕微鏡11は、正立型の顕微鏡である。なお、本発明は顕微鏡の種類を問わず、倒立型の顕微鏡などにも適用できるため、本実施の形態では、単に、顕微鏡と称して説明する。
【0015】
顕微鏡11は、標本が載置されるステージ26を有しており、このステージ26の上方には、複数の倍率の異なる対物レンズ24を装着することができるレボルバ25が配置されている。また、顕微鏡11には、ステージ26を上下方向へ駆動させ、標本へ照準させるための照準ハンドル27、対物レンズ24が結んだ中間実像を拡大し、観察するための接眼部28などが設けられている。
【0016】
顕微鏡11にはまた、その背面にランプ21が設けられ、さらに、側面にはそのランプ21の点灯、消灯を制御するためのスイッチ22と、ランプ21の調光を行うための調光ボリューム23が設けられている。
【0017】
スイッチ22は、オルタネート式のプッシュスイッチであり、観察者がスイッチ22を押し込み、スイッチ22が押し込まれた位置で保持されることで、ランプ21が点灯する。逆に、ランプ21を消灯させるには、押し込まれた状態にあるスイッチ22を再度押して、スイッチ22を元の状態に戻せばよい。
【0018】
調光ボリューム23は、観察者の操作により回転し、その回転角度に応じてランプ21の調光量が変化する。
【0019】
また、顕微鏡11は、観察状態を制御するための制御手段を顕微鏡本体に有している。図2は、顕微鏡11の内部の詳細な構成を示す図である。
【0020】
図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)51は、ROM(Read Only Memory)52に記憶されているプログラム、または記憶部57からRAM(Random Access Memory)53にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM53にはまた、CPU51が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0021】
CPU51、ROM52、及びRAM53は、バス54を介して相互に接続されている。このバス54にはまた、入出力インターフェース55も接続されている。
【0022】
入出力インターフェース55には、上述した、ランプ21、スイッチ22、調光ボリューム23の他に、通信ケーブル131により接続されたパーソナルコンピュータ121との通信処理を制御する通信部56、各種のデータを記憶する記憶部57、及び、たとえばスピーカ、LED(Light Emitting Diode)、又はLCD(Liquid Crystal Display)等のディスプレイからなる通知部58が接続されている。
【0023】
スイッチ22の点灯/消灯状態と、調光ボリューム23の回転角度の状態は、CPU51によって常に監視されており、CPU51は、それらの状態に応じて、ランプ21の制御を行う。また、CPU51は、通信部56から供給される、パーソナルコンピュータ121からのランプ21の点灯/消灯、又は調光制御命令を受信した場合、その命令に応じて、ランプ21の制御を行う。また、CPU51は、ランプ21の点灯/消灯、又は調光量が変化した場合、通信部56を制御して、通信ケーブル131を介してパーソナルコンピュータ121に対し、顕微鏡ステータスSTを送信する。
【0024】
この顕微鏡ステータスSTは、顕微鏡11に関する情報を一括で外部装置に送るためのものである。顕微鏡ステータスSTは、たとえば、図3に示すように、顕微鏡のバージョン情報である先頭のヘッダ(Header)の次に、レボルバアドレス情報(Revolver Info.)が配置され、その次に、上下動位置情報(Focusing Info.)、開口絞り開口径情報(Aperture Info.)、ランプの種類、電圧値等の情報(Lamp Info.)などの情報が配置されたデータ列で構成される。
【0025】
パーソナルコンピュータ121においては、図1に示すように、通信ケーブル131を介して顕微鏡11から受信した顕微鏡ステータスSTが専用のソフトウェア311によって解析され、モニタに表示されたグラフィカルユーザインターフェース(以下、GUIという)に反映される。そして、観察者は、その専用のソフトウェア311により提示されるGUIを操作することで、顕微鏡11を操作することができる。
【0026】
なお、図1の顕微鏡システムにおいては、パーソナルコンピュータ121から通信ケーブル131を経由して顕微鏡11を制御する制御方法を、PC制御と称し、観察者による直接の操作により、顕微鏡11を制御する制御方法を、顕微鏡制御と称する。
【0027】
また、図2に示すように、顕微鏡11において、入出力インターフェース55には、必要に応じてドライブ59が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリなどのリムーバブルメディア60が適宜装着され、それらから読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部57にインストールされる。
【0028】
以上のようにして、顕微鏡システムは構成される。
【0029】
次に、図4のシーケンス図を参照して、顕微鏡システムの通常時の動作について説明する。図4のシーケンス図には、顕微鏡11側で行われる各種の処理の他に、図中の矢印で表しているように、顕微鏡11とパーソナルコンピュータ121との間で、通信ケーブル131を介してやり取りされるデータの流れが示されている。
【0030】
顕微鏡11は起動すると、ステップS1において、操作権を顕微鏡に設定する。パーソナルコンピュータ121は、顕微鏡11に対して、通信ケーブル131を介して接続を確認するための命令(以下、接続確認命令という)CO1を送る。すると、顕微鏡11は、接続確認命令CO1に応じて、通信ケーブル131を介して応答RECO1を送る。この処理により、顕微鏡11とパーソナルコンピュータ121のそれぞれは、相互に接続されていることを認識する。
【0031】
その後、操作権を変更するために、顕微鏡11は、操作権を変更する命令(以下、操作権変更命令という)CH1を、通信ケーブル131を介してパーソナルコンピュータ121から受信した場合、ステップS2において、顕微鏡の操作権を、顕微鏡11からパーソナルコンピュータ121に切り替える。そして、顕微鏡11は、操作権変更命令CH1に対する応答RECH1を、通信ケーブル131を介してパーソナルコンピュータ121に対して返す。そして、その応答RECH1を受け取ったパーソナルコンピュータ121は、正常に、操作権がパーソナルコンピュータ121に切り替えられたことを認識する。
【0032】
また、顕微鏡11は、顕微鏡ステータスST1,ST2,ST3,・・・,STn(n:自然数)を一定間隔で、通信ケーブル131を介してパーソナルコンピュータ121に出力する。この顕微鏡ステータスST1,ST2,ST3,・・・,STnは、上記の図3を参照して説明したように、顕微鏡11に関する情報をパーソナルコンピュータ121に送るためのものである。
【0033】
たとえば、顕微鏡ステータスST1を受け取ったパーソナルコンピュータ121は、その顕微鏡ステータスST1を解析し、たとえば、レボルバ25のレボルバ番地表示や上下動位置、ランプ21の調光状態などの顕微鏡11に関する情報を、ソフトウェア311のGUIに反映させる。この顕微鏡ステータスST1は、ソフトウェア311のGUI表示を行う目的の他、顕微鏡11とパーソナルコンピュータ121との間の通信状態を監視する目的でパーソナルコンピュータ121に送られているため、顕微鏡ステータスST1を受け取ったパーソナルコンピュータ121は、応答REST1を返さなければならない。この応答REST1が顕微鏡11側で受信されると、顕微鏡11は、パーソナルコンピュータ121との通信接続が継続されていると判断し、通信接続が継続されている間、一定時間毎に、顕微鏡ステータスST2,ST3,・・・,STnを順次、通信ケーブル131を介してパーソナルコンピュータ121に送り続ける。パーソナルコンピュータ121は、顕微鏡11から顕微鏡ステータスST2,ST3,・・・,STnを受信した場合、それに応じて、応答REST2,REST3,・・・,RESTnを、通信ケーブル131を介して顕微鏡11に対して送り返す。
【0034】
このようにして、通信接続の継続中は、顕微鏡ステータスSTと応答RESTのやり取りが、顕微鏡11とパーソナルコンピュータ121との間で繰り返し行われる。
【0035】
その後、再度、操作権を、パーソナルコンピュータ121から顕微鏡11に切り替える場合、パーソナルコンピュータ121は、操作権変更命令CH2を、通信ケーブル131を介して顕微鏡11に対して送信する。すると、操作権変更命令CH2を受信した顕微鏡11は、ステップS3において、顕微鏡の操作権を、パーソナルコンピュータ121から顕微鏡11に切り替える。そして、顕微鏡11によって、応答RECH2が、通信ケーブル131を介してパーソナルコンピュータ121に送信されることで、パーソナルコンピュータ121は、正常に、操作権が顕微鏡11に切り替えられたことを認識する。
【0036】
そして、操作権が顕微鏡制御に切り替わることで、顕微鏡11に備えられているスイッチ22や調光ボリューム23による調光制御が可能となるので、顕微鏡11は、ステップS4において、たとえば、観察者によるスイッチ22の操作に応じて、ランプ21を消灯する。顕微鏡11は、ランプ21が消灯されたことを示す調光状態を含む顕微鏡ステータスST4を、通信ケーブル131を介してパーソナルコンピュータ121に送信する。すると、パーソナルコンピュータ121は、顕微鏡ステータスST4に対する応答REST4を送り返す。
【0037】
以上のように、顕微鏡システムにおいては、通常時、顕微鏡11とパーソナルコンピュータ121との間で、顕微鏡ステータスSTと応答REST、操作権変更命令CHと応答RECHなどのデータが、通信ケーブル131を介して送受信される。
【0038】
次に、図5のシーケンス図を参照して、顕微鏡システムの異常時の動作について説明する。ここでいう異常とは、たとえば、通信ケーブル131が切断された場合や、パーソナルコンピュータ121で起動しているソフトウェア311のフリーズにより、顕微鏡11とパーソナルコンピュータ121との通信が切断された場合などの顕微鏡11とパーソナルコンピュータ121との通信が正常に行えない状態をいう。
【0039】
なお、図5のシーケンス図には、顕微鏡11とパーソナルコンピュータ121で行われる各種の処理の他に、図中の矢印で表しているように、顕微鏡11とパーソナルコンピュータ121との間で、通信ケーブル131を介してやり取りされるデータの流れが示されている。
【0040】
また、図5のシーケンス図で示す異常時の処理の例では、はじめ正常に動作していた図1の顕微鏡システムにおいて、途中から異常が発生し、その後、異常時の動作を行うといった流れで説明するため、異常が発生する前までの処理は、図4のシーケンス図に示した、図1の顕微鏡システムの通常時の動作と同じである。すなわち、図5のステップS11及びステップS12においては、図4のステップS1及びステップS2と同様に、顕微鏡11の起動時に、顕微鏡制御に設定された操作権が、パーソナルコンピュータ121からの操作権変更命令CH1に応じてPC制御に変えられる。そして、顕微鏡11によって、顕微鏡ステータスST1,ST2,ST3が順次、パーソナルコンピュータ121に送られると、それらを順次受信しているパーソナルコンピュータ121は、応答REST1,REST2を順に送り返す。
【0041】
ところが、図5のシーケンス図においては、顕微鏡11から顕微鏡ステータスST3が送られた後、通信ケーブル131が切断される異常が発生したため、顕微鏡11側には、本来、顕微鏡ステータスST3に応じて送られてくるはずの応答REST3が、パーソナルコンピュータ121から送られてこないこととなる。
【0042】
顕微鏡11は、ステップS13において、顕微鏡ステータスSTを送信した後、所定の時間内に応答RESTが戻ってきたか、すなわち、タイムアウトしたか否かを判定する。ステップS13において、タイムアウトしていないと判定された場合、タイムアウトするまでステップS13の処理が繰り返される。つまり、タイムアウトする前に、応答RESTが戻ってきた場合には、異常なしとして、再度、顕微鏡ステータスSTを送信する処理が行われる。
【0043】
一方、ステップS13において、タイムアウトしたと判定された場合、異常ありとして、ステップS14において、顕微鏡11は、所定の機構(機器)の動作を停止する。たとえば、パーソナルコンピュータ121で起動しているソフトウェア311によって、顕微鏡11のレボルバ25の上下動を操作している最中に、顕微鏡ステータスSTに対する応答RESTがタイムアウト、つまり、パーソナルコンピュータ121側からのレボルバ25の制御が不能となると、レボルバ25がそのまま下方向に移動し続け、対物レンズ24と観察対象とが衝突し、双方にダメージを与える恐れがある。そこで、顕微鏡11は、ステップS14において、レボルバ25などの機構が駆動している最中に、その機構の制御が不能となった場合には機構の駆動を停止することで、対物レンズ24と観察対象との衝突などの事象を未然に防止するようにしている。
【0044】
ステップS15において、顕微鏡11は、顕微鏡の操作権を、パーソナルコンピュータ121から顕微鏡11に切り替える。すなわち、通信ケーブル131が切断された状態で操作権がパーソナルコンピュータ121側にあると、たとえば、パーソナルコンピュータ121で起動しているソフトウェア311によってランプ21の点灯を制御することはできないし、顕微鏡11に設けられたスイッチ22及び調光ボリューム23を操作したとしても、顕微鏡制御になっていないので、ランプ21の点灯は制御できない。そこで、本発明では、そのような状態になった場合には、顕微鏡11は、操作権を、パーソナルコンピュータ121から顕微鏡11に強制的に切り替えることで、操作権が顕微鏡制御に切り替わり、ランプ制御などの顕微鏡制御が有効になる。これにより、観察者は、直に顕微鏡11を操作し、顕微鏡11を制御することが可能となる。
【0045】
なお、このとき、顕微鏡11は、パーソナルコンピュータ121との接続が切断されたために送信先がないので、顕微鏡ステータスSTの送信を停止する。
【0046】
ステップS16において、顕微鏡11は、操作権の変更を通知する。具体的には、通知部58は、パーソナルコンピュータ121から顕微鏡11に操作権が変更された旨を、たとえば、画面上に表示したり、音声を出力したりすることで通知する。
【0047】
ステップS17において、顕微鏡11は、操作権が顕微鏡制御に切り替わり、ランプ制御などの顕微鏡制御が有効となっているので、たとえば、観察者によりスイッチ22が操作されることで、ランプ21を消灯させる。
【0048】
以上のように、本発明の顕微鏡システムにおいては、顕微鏡11とパーソナルコンピュータ121との接続が切断される等の異常が発生しても、操作権を顕微鏡11に切り替えて、顕微鏡制御を有効にすることで、顕微鏡操作を継続して行うことができる。また、このとき、顕微鏡11を再起動する必要がないため、異常が発生する直前の観察環境を維持しており、観察環境を再設定する必要がなくなる。
【0049】
図6は、本発明を適用した顕微鏡システムの一実施の形態の他の構成を示すブロック図である。
【0050】
図6において、図1と対応する箇所には同一の符号が付してあり、処理が同じ部分の説明は繰り返しになるので省略する。すなわち、図6の顕微鏡システムには、顕微鏡11とパーソナルコンピュータ121の他に、顕微鏡11に取り付けられたカメラ711を制御するカメラ制御装置721が設けられている。このカメラ制御装置721は、専用ケーブル741を介してカメラ711と接続され、カメラ711により撮像された観察対象に対応する画像を、表示部に表示することが可能である。また、カメラ制御装置721は、通信ケーブル731を介して顕微鏡11とも接続されており、表示部には、顕微鏡11を制御するためのグラフィカルインターフェース(GUI)が表示される。すなわち、観察者は、そのGUIを操作することで、顕微鏡11を操作することができる。以下、本実施の形態では、カメラ制御装置721から通信ケーブル731を経由して顕微鏡11を制御する制御方法を、カメラ制御と称する。
【0051】
カメラ制御において、観察者の操作に応じたカメラ制御装置721からの制御命令を受信した顕微鏡11は、その制御命令を解析し、解析結果に応じた所定の処理を実行する。そして、顕微鏡11は、所定の処理を実行した後、その応答を、通信ケーブル731を介してカメラ制御装置721に対して返す。このように、図6の顕微鏡システムの構成においては、顕微鏡11を外部から制御する制御手段は、PC制御とカメラ制御の2つとなる。したがって、図6の顕微鏡システムにおいて、操作権は、顕微鏡制御、PC制御、カメラ制御の3つあるため、顕微鏡11との通信が切断された際に操作権を移す機器の優先順位に関する情報(以下、優先順位情報という)を、あらかじめ顕微鏡11の記憶部57に記憶させておくことにより、通信が切断された際には操作権を適切に切り替えることが可能となる。
【0052】
図7は、通信切断時の操作権の遷移優先順位である優先順位情報の設定例を示す図である。
【0053】
図7には、パターン1ないしパターン5の5パターンの優先順位の例を示している。たとえば、図6の顕微鏡システムのように、顕微鏡11、パーソナルコンピュータ121、及びカメラ制御装置721から構成される場合、図7のパターン1で示すように、3つの機器のうちの優先順位の最も高い機器をパーソナルコンピュータ121、次に優先順位の高い機器をカメラ制御装置721、最も優先順位の低い機器を顕微鏡11のように設定する。このように設定しておくことで、パーソナルコンピュータ121との通信が切断された場合でも、操作権がカメラ制御装置721に切り替えられ、さらに、そのカメラ制御装置721との通信が切断された場合には、操作権が顕微鏡11に切り替えられることになる。
【0054】
また、優先順位情報は、顕微鏡システムを構成する機器に応じて、パターンを自由に増やすことが可能であり、図7の他の4パターンについても、パターン1と同様である。すなわち、顕微鏡システムが、顕微鏡11の他に、2台のパーソナルコンピュータと、1台のカメラ(カメラ制御装置)から構成される場合、優先順位情報として、たとえば、パターン2のように設定することができる。また、顕微鏡システムが、顕微鏡11の他に、2台のパーソナルコンピュータと、2台のカメラ(カメラ制御装置)から構成される場合、優先順位情報として、パターン3、パターン4、又はパターン5のように設定できる。
【0055】
この優先順位情報の記憶方法であるが、外部装置を顕微鏡11と接続させて、その外部装置を使ったユーザの操作によって顕微鏡11に保持されている優先順位情報が設定されるようにすればよい。また、優先順位情報は、顕微鏡11の記憶部57に記憶させる方法に限らず、たとえば、ディップスイッチのような設定手段を設けておいて、ディップスイッチの論理によって記憶させてもよい。
【0056】
また、図7においては、顕微鏡11を制御する機器として、パーソナルコンピュータとカメラ制御装置を例にしているが、その他の顕微鏡11を制御可能な機器についても同様である。
【0057】
次に、図8のシーケンス図を参照して、優先順位情報としてパターン1を設定した場合における、図6の顕微鏡システムの異常時の動作について説明する。
【0058】
なお、図8のシーケンス図は、図6の顕微鏡システムに対応しているため、顕微鏡11、パーソナルコンピュータ121、カメラ制御装置721のそれぞれで行われる処理が示されている。また、図中の矢印で表しているように、顕微鏡11とパーソナルコンピュータ121、及び顕微鏡11とカメラ制御装置721の間で所定のケーブルを介してやり取りされるデータの流れも示されている。
【0059】
また、図8のシーケンス図は、図5のシーケンス図と同様に、はじめ正常に動作していた図6の顕微鏡システムにおいて、途中から異常が発生し、その後、異常時の動作を行うといった流れで説明するため、異常が発生するまでの処理は、図4のシーケンス図に示した、図1の顕微鏡システムの通常時の動作と基本的に同じである。すなわち、図8のステップS31及びステップS32においては、図4のステップS1及びステップS2と同様に、顕微鏡11の起動時に、顕微鏡制御に設定された操作権が、パーソナルコンピュータ121からの操作権変更命令CH1に応じてPC制御に切り替えられる。そして、顕微鏡11によって、顕微鏡ステータスST1,ST2が順次、パーソナルコンピュータ121に送られると、それらを順次受信するパーソナルコンピュータ121は、応答REST1を送り返す。
【0060】
ところが、図8のシーケンス図では、図5のシーケンス図と同様に、顕微鏡11から顕微鏡ステータスST2が送られた後、ステップS51において、通信ケーブル131が切断されたため、顕微鏡11側には、本来、顕微鏡ステータスST2に応じて送られてくるはずの応答REST2が、パーソナルコンピュータ121から送られてこないこととなる。すなわち、ステップS33ないしステップS36においては、図5のステップS13ないしステップS16と同様に、顕微鏡11によって、パーソナルコンピュータ121からの応答REST2を所定の時間内に受信したか否かが判定され、異常が発生し、タイムアウトした場合には、所定の機構の動作を停止する処理、操作権を変更する処理、及び、操作権の変更を通知する処理が順次実行される。
【0061】
ここで、操作権を変更する処理であるが、優先順位情報としてパターン1が設定されているので、図7に示すように、パターン1の場合には、パーソナルコンピュータ121の次に優先順位が高いのはカメラ制御装置721となる。したがって、顕微鏡11は、ステップS35において、顕微鏡の操作権を、パーソナルコンピュータ121からカメラ制御装置721に切り替える。すなわち、通信ケーブル131が切断された状態で操作権がパーソナルコンピュータ121側になったままであると、顕微鏡11に備えられたスイッチ22と調光ボリューム23によるランプ21の点灯制御などの顕微鏡制御をすることができなくなる。そこで、そのような状態になった場合には、顕微鏡11は、優先順位情報(この例ではパターン1)にしたがって、操作権を強制的に、パーソナルコンピュータ121からカメラ制御装置721に切り替えることで、操作権が、制御不能となっていたPC制御からカメラ制御に切り替わり、ランプ制御などのカメラ制御が有効になる。
【0062】
その後、顕微鏡11によって、操作権が与えられたカメラ制御装置721に対して、顕微鏡ステータスST3,ST4が順次送られると、それらを順次受信するカメラ制御装置721は、応答REST3を送り返す。ところが、顕微鏡ステータスST4が送られた後、ステップS61において、通信ケーブル731が切断された場合、顕微鏡11側には、本来、顕微鏡ステータスST4に応じて送られてくるはずの応答REST4が、カメラ制御装置721から送られてこないこととなる。すなわち、ステップS37ないしステップS41においては、図5のステップS13ないしステップS17と同様に、顕微鏡11によって、カメラ制御装置721からの応答REST4を所定の時間内に受信したか否かが判定され、タイムアウトした場合には、所定の機構の動作を停止する処理、操作権を変更する処理、操作権の変更を通知する処理、及び、ランプ制御などの顕微鏡制御が順次実行される。
【0063】
ここで、操作権を変更する処理であるが、優先順位情報としてパターン1が設定されているので、図7に示すように、パターン1の場合には、カメラ制御装置721の次に優先順位が高いのは顕微鏡11となる。したがって、顕微鏡11は、ステップS39において、顕微鏡の操作権を、カメラ制御装置721から顕微鏡11に切り替える。すなわち、通信ケーブル731が切断された状態で操作権がカメラ制御装置721側になったままであると、顕微鏡11における点灯制御などの顕微鏡制御をすることができなくなる。そこで、そのような状態になった場合には、顕微鏡11は、優先順位情報(この例ではパターン1)にしたがって、操作権を強制的に、カメラ制御装置721から顕微鏡11に切り替えることで、操作権が制御不能となっていたカメラ制御から顕微鏡制御に切り替わり、ランプ制御などの顕微鏡制御が有効になる。
【0064】
以上のように、優先順位情報によって、顕微鏡システムの構成に応じた通信切断時の操作権の遷移優先順位を設定することが可能となるため、たとえば、顕微鏡11と、パーソナルコンピュータ121又はカメラ制御装置721との接続が切断される等の異常が発生しても、操作権を優先順位情報により指定される機器に与えることで、顕微鏡操作を継続して行うことができる。また、このとき、顕微鏡11を再起動する必要がないため、異常が発生する直前の観察環境を維持しており、観察環境を再設定する必要がなくなる。
【0065】
また、この場合、操作権が自動的に切り替えられ、ユーザが現在の操作権がどこにあるのかが判別し難いので、モニタに操作権の場所を表示するのが好ましい。
【0066】
図9は、本発明を適用した顕微鏡システムの一実施の形態のさらに他の構成を示すブロック図である。
【0067】
図9において、図6と対応する箇所には同一の符号が付してあり、処理が同じ部分の説明は繰り返しになるので省略する。すなわち、図9の顕微鏡システムには、顕微鏡11、パーソナルコンピュータ121、及び顕微鏡11に取り付けられたカメラ711を制御するカメラ制御装置721の他に、さらにもう1台のパーソナルコンピュータ122が設けられている。このパーソナルコンピュータ122は、基本的にパーソナルコンピュータ121と同様の機能を有しており、通信ケーブル132を介して顕微鏡11と接続されている。パーソナルコンピュータ122は、通信ケーブル132を介して顕微鏡11から受信した顕微鏡ステータスSTが専用のソフトウェア312によって解析され、モニタに表示されたGUIに反映される。そして、観察者は、そのソフトウェア312に提示されるGUIを操作することで、顕微鏡11を操作することができる。
【0068】
なお、図9の顕微鏡システムの構成においては、パーソナルコンピュータ121とパーソナルコンピュータ122のそれぞれによってPC制御が行われるので、それを区別するために、パーソナルコンピュータ121から通信ケーブル131を経由して顕微鏡11を制御する制御方法を、第1のPC制御と称し、パーソナルコンピュータ122から通信ケーブル132を経由して顕微鏡11を制御する制御方法を、第2のPC制御と称する。
【0069】
したがって、図9の顕微鏡システムの構成においては、顕微鏡11を外部から制御する制御手段は、第1のPC制御、第2のPC制御、カメラ制御の3つとなる。すなわち、図9の顕微鏡システムにおいて、操作権は、顕微鏡制御、第1のPC制御、第2のPC制御、カメラ制御の4つあるため、優先順位情報としては、たとえば、図7のパターン2を設定することができる。
【0070】
次に、図10のシーケンス図を参照して、優先順位情報としてパターン2を設定した場合における、図9の顕微鏡システムの異常時の動作について説明する。
【0071】
なお、図10のシーケンス図は、図9の顕微鏡システムに対応しているため、顕微鏡11、パーソナルコンピュータ121、パーソナルコンピュータ122、カメラ制御装置721のそれぞれで行われる処理が示されている。また、図中の矢印で表しているように、顕微鏡11とパーソナルコンピュータ121、顕微鏡11とパーソナルコンピュータ122、及び顕微鏡11とカメラ制御装置721の間で所定のケーブルを介してやり取りされるデータの流れも示されている。
【0072】
また、図10のシーケンス図は、図5等のシーケンス図と同様に、はじめ正常に動作していた図9の顕微鏡システムにおいて、異常が発生するまでの処理は、図4のシーケンス図に示した、図1の顕微鏡システムの通常時の動作と基本的に同じである。すなわち、ステップS71及びステップS72においては、顕微鏡11の起動時に、顕微鏡制御に設定された操作権が、パーソナルコンピュータ121からの操作権変更命令CH1に応じて、顕微鏡11からパーソナルコンピュータ122、つまり、第2のPC制御に切り替えられる。なお、図9の顕微鏡システムにおいては、各機器を接続する所定のケーブルが切断されない限り、顕微鏡11、パーソナルコンピュータ121、パーソナルコンピュータ122、カメラ制御装置721の間で、操作権を自由に切り替えることができる。ここでは、その一例として、ステップS72において、顕微鏡11によって、操作権がパーソナルコンピュータ122に設定されたものとして説明する。
【0073】
そして、顕微鏡11によって、顕微鏡ステータスST1,ST2,ST3が順次、パーソナルコンピュータ122に送られると、それらを順次受信するパーソナルコンピュータ122は、応答REST1,REST2を送り返す。
【0074】
ところが、図10のシーケンス図では、図5等のシーケンス図と同様に、顕微鏡11から顕微鏡ステータスST3が送られた後、ステップS101において、通信ケーブル132が切断された状態を想定しているため、顕微鏡11側には、本来、顕微鏡ステータスST3に応じて送られてくるはずの応答REST3が、パーソナルコンピュータ122から送られてこないこととなる。すなわち、ステップS73ないしステップS76においては、図5のステップS13ないしステップS16等と同様に、顕微鏡11によって、パーソナルコンピュータ122からの応答REST3を所定の時間内に受信したか否かが判定され、異常が発生し、タイムアウトした場合には、所定の機構の動作を停止する処理、操作権を変更する処理、及び、操作権の変更を通知する処理が順次実行される。
【0075】
ここで、操作権を変更する処理であるが、優先順位情報としてパターン2が設定されているので、図7に示すように、パターン2の場合には、パーソナルコンピュータ121、パーソナルコンピュータ122、カメラ制御装置721、顕微鏡11の順に、優先順位が設定されており、パーソナルコンピュータ122と顕微鏡11との通信が切断された場合には、残りのパーソナルコンピュータ121、カメラ制御装置721、顕微鏡11のうちで最も優先順位の高いパーソナルコンピュータ121に操作権を与えることになる。したがって、顕微鏡11は、ステップS75において、顕微鏡の操作権を、パーソナルコンピュータ122からパーソナルコンピュータ121に切り替える。すなわち、通信ケーブル132が切断された状態で操作権がパーソナルコンピュータ122側に残ったままであると、ランプの点灯制御などの顕微鏡制御をすることができなくなる。そこで、そのような状態になった場合には、顕微鏡11は、優先順位情報(この例ではパターン2)にしたがって、操作権を強制的に、パーソナルコンピュータ122からパーソナルコンピュータ121に切り替えることで、操作権が、制御不能となっていた第2のPC制御から第1のPC制御に切り替わり、ランプ制御などの第1のPC制御が有効になる。
【0076】
その後、顕微鏡11によって、操作権が与えられたパーソナルコンピュータ121に対して、顕微鏡ステータスST4,ST5,ST6が順次送られると、それらを順次受信するパーソナルコンピュータ121は、応答REST4,REST5を送り返す。ところが、顕微鏡ステータスST6が送られた後、ステップS91において、通信ケーブル131が切断された場合、顕微鏡11側には、本来、顕微鏡ステータスST6に応じて送られてくるはずの応答REST6が、パーソナルコンピュータ121から送られてこないこととなる。すなわち、ステップS77ないしステップS80においては、図5のステップS13ないしステップS16等と同様に、顕微鏡11によって、パーソナルコンピュータ121からのREST6を所定の時間内に受信したか否かが判定され、タイムアウトした場合には、所定の機構の動作を停止する処理、操作権を変更する処理、及び、操作権の変更を通知する処理が順次実行される。
【0077】
ここで、操作権を変更する処理であるが、優先順位情報としてパターン1が設定されているので、図7に示すように、パターン2の場合には、パーソナルコンピュータ121の次に優先順位の高いのはパーソナルコンピュータ122となる。ところが、パーソナルコンピュータ122は不具合(ステップS101の処理)により既に通信切断と判定されているため(ステップS73の処理)、操作権をパーソナルコンピュータ122には設定せずに、その次に優先順位の高いカメラ制御装置721にするようにする。したがって、顕微鏡11は、ステップS79において、顕微鏡の操作権を、パーソナルコンピュータ121からカメラ制御装置721に切り替える。すなわち、通信ケーブル131が切断された状態で操作権がパーソナルコンピュータ121側に残ったままであると、顕微鏡11におけるランプの点灯制御などの顕微鏡制御をすることができなくなる。そこで、そのような状態になった場合には、顕微鏡11は、優先順位情報(この例ではパターン2)にしたがって、操作権を強制的に、パーソナルコンピュータ121からカメラ制御装置721(既にパーソナルコンピュータ122との通信が途絶えているのでその次に優先順位の高いカメラ制御装置721としている)に切り替えることで、操作権が、操作不能となっていた第1のPC制御からカメラ制御に切り替わり、ランプ制御などのカメラ制御が有効となる。
【0078】
その後、顕微鏡11によって、操作権が与えられたカメラ制御装置721に対して、顕微鏡ステータスST7が送られると、それらを順次受信するカメラ制御装置721は、応答REST7を送り返す。なお、図10のシーケンス図には図示していないが、仮に、カメラ制御装置721と接続している通信ケーブル731が切断された場合には、顕微鏡11は、優先順位情報(この例ではパターン2)にしたがって、操作権を強制的に、カメラ制御装置721から顕微鏡11に切り替えることで、操作不能となっていたカメラ制御から顕微鏡制御に切り替わり、ランプ制御などの顕微鏡制御が有効となる。
【0079】
このように、優先順位情報によって、顕微鏡システムの構成に応じた通信切断時の操作権の遷移優先順位を設定することができるとともに、通信が切断されている機器に対しては操作権を渡さずに、次に優先順位の高い機器に操作権を設定するので、通信が切断されている機器に操作権を渡して、顕微鏡ステータスSTを送るといったロスを回避することが可能となる。
【0080】
以上のように、本発明によれば、顕微鏡側に操作権がない状態で顕微鏡の制御が不能となっても、観察状態を制御が不能となる前の条件で復旧することができる。
【0081】
なお、本発明における顕微鏡の観察条件(状態)とは、たとえば、絞りの開口径、対物レンズ等で調整される倍率、各種フィルタの選択、観察位置設定のためのステージの移動条件、照明光の種類や強度等のランプに関するもの、カメラによる画像取得に関するもの等である。
【0082】
また、たとえば、通信ケーブルの切断等の異常が発生し、本発明のように操作権が変更されている場合、たとえば、ステージの移動や、ステージ、対物レンズの上下動の最中に異常が発生した場合には、ステージや対物レンズの動作を一時的に停止することが好ましい。これは、異常が発生し、制御不能の状態が生じた場合、たとえば、対物レンズとステージとの衝突などの問題が発生する可能性があるからである。この場合、制御を一時停止し、操作権の変更が完了してから、再び動作を継続させるようにする。
【0083】
なお、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、たとえば汎用のパーソナルコンピュータ等に、記録媒体からインストールされる。
【0084】
この記録媒体は、コンピュータとは別に、ユーザにプログラムを提供するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk))を含む)、光磁気ディスク、若しくは半導体メモリ等よりなる図2のリムーバブルメディア60により構成されるだけでなく、コンピュータに予め組み込まれた状態でユーザに提供される、プログラムが記録されているROM52や記憶部57等で構成される。
【0085】
また、上述した一連の処理を実行させるプログラムは、必要に応じてルータ、モデム等のインターフェースを介して、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の通信媒体を介してコンピュータにインストールされるようにしてもよい。
【0086】
なお、本明細書において、記録媒体に格納されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0087】
また、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。
【0088】
さらに、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明を適用した顕微鏡システムの一実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図2】顕微鏡の構成例を示す図である。
【図3】顕微鏡ステータスのデータ配列の例を示す図である。
【図4】顕微鏡システムの通常時の動作について説明するシーケンス図である。
【図5】顕微鏡システムの異常時の動作について説明するシーケンス図である。
【図6】本発明を適用した顕微鏡システムの一実施の形態の他の構成を示すブロック図である。
【図7】優先順位情報の設定例を示す図である。
【図8】優先順位情報(パターン1)を設定した場合における、顕微鏡システムの異常時の動作について説明するシーケンス図である。
【図9】本発明を適用した顕微鏡システムの一実施の形態のさらに他の構成を示すブロック図である。
【図10】優先順位情報(パターン2)を設定した場合における、顕微鏡システムの異常時の動作について説明するシーケンス図である。
【符号の説明】
【0090】
11 顕微鏡, 121,122 パーソナルコンピュータ, 131,132 通信ケーブル, 21 ランプ, 22 スイッチ, 23 調光ボリューム, 24 対物レンズ, 25 レボルバ, 26 ステージ, 27 照準ハンドル, 28 接眼部, 311,312 ソフトウェア, 51 CPU, 56 通信部, 57 記憶部, 58 通知部, 59 ドライブ, 60 リムーバブルメディア, 711 カメラ, 721 カメラ制御装置, 731 通信ケーブル, 741 専用ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡と、前記顕微鏡が有する機器を前記顕微鏡の外部より制御する制御装置からなる顕微鏡システムにおいて、
前記機器を制御する操作権が、前記制御装置に与えられている場合に、前記制御装置による前記機器の制御が不能となったか否かを判定する判定手段と、
前記機器の制御が不能となったと判定された場合、前記操作権を、前記制御装置から、前記顕微鏡又は前記制御装置とは異なる前記顕微鏡の制御が可能な他の機器に切り替える切り替え手段と
を備えることを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項2】
前記顕微鏡と前記制御装置とは、通信ケーブルを介して接続されており、
前記判定手段は、前記通信ケーブルによる通信が切断された場合、前記制御装置による前記機器の制御が不能になったと判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡システム。
【請求項3】
前記制御装置では、前記機器を制御するためのソフトウェアが起動しており、
前記判定手段は、前記ソフトウェアがフリーズした場合、前記制御装置による前記機器の制御が不能になったと判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡システム。
【請求項4】
前記制御装置は、複数設けられており、
前記切り替え手段は、前記複数の制御装置のうちの第1の制御装置による前記機器の制御が不能となったと判定された場合、前記操作権を、前記第1の制御装置から、前記第1の制御装置とは異なる前記複数の制御装置のうちの第2の制御装置又は前記顕微鏡に切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡システム。
【請求項5】
複数の前記制御装置及び前記顕微鏡に対して前記操作権を割り当てる順番に関する優先順位情報を保持する保持手段をさらに備え、
前記切り替え手段は、前記第1の制御装置による前記機器の制御が不能となったと判定された場合、前記操作権を、前記第1の制御装置から、保持されている前記優先順位情報にて前記第1の制御装置の優先順位の次の順番が割り当てられている前記第2の制御装置又は前記顕微鏡に切り替える
ことを特徴とする請求項4に記載の顕微鏡システム。
【請求項6】
前記切り替え手段は、前記第2の制御装置に前記操作権を割り当てることができない場合、前記操作権を、前記第1の制御装置から、保持されている前記優先順位情報にて前記第2の制御装置の優先順位の次の順番が割り当てられている第3の制御装置又は前記顕微鏡に切り替える
ことを特徴とする請求項5に記載の顕微鏡システム。
【請求項7】
前記制御装置による前記機器の制御が不能になったと判定された場合、前記制御装置からの指示に従って駆動している機器の動作を停止させる停止手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡システム。
【請求項8】
前記操作権が、前記制御装置から前記他の装置に切り替えられた場合、その旨を通知する通知手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡システム。
【請求項9】
顕微鏡を制御するコンピュータに実行されるプログラムであって、
前記機器に与えられる操作権が、前記顕微鏡が有する機器を前記顕微鏡の外部より制御する制御装置に与えられている場合に、前記制御装置による前記機器の制御が不能となったか否かを判定し、
前記機器の制御が不能となったと判定された場合、前記操作権を、前記制御装置から、前記顕微鏡又は前記制御装置とは異なる前記顕微鏡の制御が可能な他の機器に切り替える
ステップを含むことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−102093(P2010−102093A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273074(P2008−273074)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】