説明

顕微鏡

【課題】機器の利便性を向上させることができるようにする。
【解決手段】認証回路22は、使用者51により翳されたICカード51から識別情報を読み出し、通信回路23は、その読み出された識別情報を、ネットワーク12を介して外部管理装置31に送信する。通信回路23は、外部管理装置31から送信されてくる認証の結果を受信し、制御回路21は、認証の結果が、使用者51が正当な使用者でないことを示している場合、標本の観察環境が変更不可能となるように、その観察環境を変更するための複数の機構を制御し、使用者51が正当な使用者であることを示している場合、標本の観察環境が変更可能となるように機構を制御する。本発明は顕微鏡に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は顕微鏡に関し、特に、利便性を向上させることができるようにした顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の顕微鏡等は、使用時に電源を入れるとそのまま使用可能な状態となり、誰がいつ、どのように使用したかは一切管理することはできない。そのような状況では、共用施設等で使用する際に使用者毎の裁量に任された装置使用管理形態となる。
【0003】
近年、装置の高価格化や高機能化に伴い、それらの装置を共同購入という形態をとったり、低価格のものであっても共同使用する形態をとることにより、装置の有効活用が実施されているが、そのような装置の運用を管理することが可能な状態にはなかった。
【0004】
また、一般的な顕微鏡に関する技術としては、例えば、非特許文献1にその内容が開示されている。
【非特許文献1】野島博著「顕微鏡の使い方ノート」羊土社,2003年4月発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような現状を考えると、共同使用機器の運用管理を実施する上で、使用者が機器を使用可能かどうか、あるいは機器の使用時間等を管理する必要が出てくる。
【0006】
また、共同使用機器等では、誰がどのように機器を使用したか分からないため、せっかく実験用にセットアップしていた機器の設定が勝手に変更されてしまう可能性があるという問題点もあった。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、管理対象となる共同使用機器の使用者に対し個人認証を行うことで、機器の利便性を向上させることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の顕微鏡は、観察対象の観察環境を変更するための複数の機構を有する顕微鏡において、使用者を一意に識別するための識別情報を取得する取得手段と、取得された識別情報に基づいた認証の結果が、使用者が正当な使用者でないことを示している場合、観察環境が変更不可能となるように機構を制御し、認証の結果が、使用者が正当な使用者であることを示している場合、観察環境が変更可能となるように機構を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機器の利便性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明
する。
【0011】
図1は、本発明を適用した顕微鏡システムの一実施の形態の構成を示すブロック図である。
【0012】
なお、図1において、実線で囲まれた四角は、装置の構成要素としてのブロックを示し、点線で囲まれた四角は、それらの装置を操作するユーザを示している。
【0013】
顕微鏡システム1においては、顕微鏡11−1、顕微鏡11−2、および外部管理システム13がネットワーク12を介して相互に接続される。また外部管理システム13には、実験管理システム14が接続される。
【0014】
顕微鏡11−1は、標本(観察対象)が載置されるステージや、その標本を照明し対物レンズを通じて標本の観察像を取得する光学系等を有し、使用者51の操作に応じて標本を観察する。顕微鏡11−1における、標本を観察するための機構を図示すると、例えば図2のようになる。すなわち、図2は、顕微鏡11−1の全体の構成を示す概略構成図である。
【0015】
図2に示すように、顕微鏡11−1は、標本の観察を下方から行う倒立顕微鏡であり、主にシャーレに入った培養試料等を観察する場合に用いられる。なお、本実施の形態では、顕微鏡11−1は、倒立顕微鏡であるとして説明するが、勿論、試料の上方から観察する正立顕微鏡であってもよい。
【0016】
顕微鏡11−1は、試料が載置されるステージ72を有しており、このステージ72は、支持脚部73を介して本体部71に支持されている。ステージ72の下方には、対物レンズ74が装着されるレボルバ75が配置されている。ステージ72の一側には、接眼レンズ76が接続される接眼鏡筒77が配置されている。
【0017】
ステージ72の上方には、透過照明装置が配置されている。この透過照明装置は、支持部材81により支持され、透過照明部78、透過照明ランプハウス79、およびコンデンサレンズ80を有している。また本体部71には、レボルバ75を上下動させて、焦準を合わせるフォーカスノブ82が配置されている。
【0018】
以上のようにして、顕微鏡11−1は構成される。
【0019】
なお、図2において、顕微鏡11−1は、各部を電動で制御可能な顕微鏡(以下、電動顕微鏡と称する)として図示しているが、電動顕微鏡以外の顕微鏡、例えば、手動で操作を行う顕微鏡(以下、マニュアル顕微鏡と称する)であってもよい。
【0020】
図1に戻り、顕微鏡11−1は、図2に示した標本を観察するための機構の他に、顕微鏡11−1の各部の動作を制御する制御回路21−1、認証に関係する処理を行う認証回路22−1、およびネットワーク12を介して他の機器との間で行われる通信に関係する処理を行う通信回路23−1、電源予備回路24−1を含むように構成される。
【0021】
具体的には、認証回路22−1は、例えば、非接触型のICカード15に記憶された情報を読み出すリーダライタ機能を有し、使用者51により翳されたICカード15と近接通信を行って、ICカード15に予め記憶されている使用者51を一意に識別するための情報(以下、識別情報と称する)を読み出す。そして、認証回路22−1は、顕微鏡11−1自身で使用者51の認証をする場合、読み出した識別情報と、予め登録されている使用者51を一意に識別するための情報(以下、登録識別情報と称する)とが一致するか否かを判定することで、使用者51が正当な使用者であるか否かを認証し、認証の結果を制御回路21−1に供給する。制御回路21−1は、認証回路22−1から供給される認証の結果に基づいて、顕微鏡11−1の各部の動作を制御する。
【0022】
また認証回路22−1は、顕微鏡11−1以外の他の機器で使用者51の認証をする場合、ICカード15から読み出した識別情報を、通信回路23−1に供給する。通信回路23−1は、認証回路22−1から供給される識別情報を、ネットワーク12を介して、ICカード15を翳した使用者が正当な使用者であるか否かの認証を行う外部管理システム13に送信する。そして、通信回路23−1は、ネットワーク12を介して外部管理システム13から送信されてくる認証の結果を受信し、制御回路21−1に供給する。制御回路21−1は、通信回路23−1から供給される認証の結果に基づいて、顕微鏡11−1の各部の動作を制御する。
【0023】
なお、外部管理システム13から認証の結果の代わりに、外部管理システム13で保持している登録識別情報を受信することで、顕微鏡11−1側で、ICカード15から読み出した識別情報と、受信された登録識別情報を用いた認証処理を行ってもよい。
【0024】
また、本実施の形態では、認証の方法として、ICカード15を用いた認証方法について説明するが、それ以外でも、例えば、身体的な特徴または特性等、個人に固有の情報を利用して使用者の確認を行う、いわゆる生体認証(バイオメトリクス認証)等の認証方法を採用してもよい。この生体認証の方式としては、例えば、指紋、手の甲の静脈、虹彩、網膜、顔画像、または音声等が用いられる。特に、顕微鏡システム1においては、使用者51が顕微鏡11−1の接眼レンズ76を覗き込む際に、使用者51の虹彩の情報を容易に取得できるので、生体認証を利用する場合には、虹彩認証を採用するのが好ましい。
【0025】
顕微鏡11−2は、顕微鏡11−1と同様の構成を有し、使用者の操作に応じて標本を観察する。また、説明を簡略化するために、図1には図示していないが、顕微鏡11−3乃至11−n(nは自然数)を、顕微鏡11−1および11−2と同様に設けることも可能である。なお、以下、顕微鏡11−1乃至11−nを区別する必要がない場合、単に、顕微鏡11と称する。また、顕微鏡11−1乃至11−nを構成している、制御回路21−1乃至21−n、認証回路22−1乃至22−n、通信回路23−1乃至23−n、および電源予備回路24−1乃至24−nについても、同様に区別する必要がない場合には、それぞれ、制御回路21、認証回路22、通信回路23、および電源予備回路24と称する。
【0026】
外部管理システム13は、専用のサーバ等からなる外部管理装置31、登録識別情報データベース32、および設定情報データベース33を含むように構成され、外部管理装置31は、機器管理者52により操作される。
【0027】
外部管理装置31は、顕微鏡11または実験管理システム14からの要求に応じて、各種の処理を行う。また、詳細は後述するが、登録識別情報データベース32には、登録識別情報が格納され、設定情報データベース33には、顕微鏡11を構成する各機構を制御するための情報(以下、設定情報と称する)が格納される。外部管理装置31によって行われる処理の詳細については、図3乃至5のフローチャートを参照して後述する。
【0028】
実験管理システム14は、専用のサーバ等からなる実験管理装置41を含むように構成され、実験管理装置41は、実験管理者53または実験管理者54により操作される。
【0029】
実験管理装置41は、実験管理者53または実験管理者54による操作に応じて、顕微鏡11に関する情報(以下、顕微鏡情報と称する)を取得する。実験管理装置41によって行われる処理の詳細については、図5のフローチャートを参照して後述する。
【0030】
以上のようにして、顕微鏡システム1は構成される。
【0031】
かかる顕微鏡システム1においては、上述したように様々な認証の方法を採用することが可能となるが、本実施の形態では、外部管理システム13側で、顕微鏡11からの問い合せに応じて認証を行う方法を採用した場合について説明する。
【0032】
そこで、次に、図3のフローチャートを参照して、顕微鏡11と外部管理装置31との間で行われる認証処理について説明する。
【0033】
制御回路21は、ステップS11において、使用者51の操作に応じて顕微鏡11の主電源をオンし、ステップS12において、認証回路22を駆動させる。
【0034】
ステップS13において、認証回路22は、使用者51により所持されているICカード15と近接通信可能であるか否かを判定する。ステップS13において、使用者51によってICカード15が翳されて、近接通信可能であると判定された場合、ステップS14において、認証回路22は、ICカード15に記憶されている識別情報を読み出して、取得する。ステップS15において、通信回路23は、ICカード15から読み出された識別情報を、ネットワーク12を介して外部管理装置31に送信する。
【0035】
外部管理装置31は、ステップS21において、顕微鏡11から送信されてくる識別情報を受信し、ステップS22において、受信した識別情報と、登録識別情報データベース32に予め登録されている使用者51に関する登録識別情報とが一致するか否かを判定することで、顕微鏡11を利用しようとしている使用者51が正当な使用者であるか否かを認証する。そして、ステップS23において、外部管理装置31は、認証の結果を、ネットワーク12を介して顕微鏡11に送信する。
【0036】
ステップS16において、通信回路23は、外部管理装置31から送信されてくる認証の結果を受信し、ステップS17において、制御回路21は、受信した認証の結果に基づいて、ICカード15を翳した使用者51が正当な使用者であるか否かを判定する。
【0037】
ステップS17において、使用者51が正当な使用者でないと判定された場合、ステップS18において、制御回路21は、標本の観察環境が変更不可能となるように顕微鏡11の所定の機構を制御する。
【0038】
具体的には、上述したように、顕微鏡11は、電動顕微鏡とマニュアル顕微鏡の2種類に大別できるが、その種類によって、観察環境を変更不可能にする方法は異なる。すなわち、顕微鏡11が電動顕微鏡である場合、制御回路21は、例えば、透過照明装置やレボルバ75等の電気で駆動する顕微鏡11の所定の機構への電力の供給を抑制することで、観察環境を変更不可能にする。なお、電動顕微鏡において、電力の供給を抑制しても操作可能となる機構に関しては、例えばストッパ等の所定の部材により、その機構を固定すればよい。
【0039】
また、顕微鏡11がマニュアル顕微鏡である場合、制御回路21は、顕微鏡11を構成する機構のうち、例えば、レボルバまたはフォーカスノブ等の固定可能となる機構を、ストッパ等の所定の部材により固定することで、前回の観察終了時における観察環境を変更不可能にする。つまり、例えば、前回の観察終了時点において、レボルバ等の固定可能となる機構は、ストッパにより固定されるので、ステップS18の処理では、そのストッパを解除せずにロックしたままにすることで、観察環境が維持されることになる。
【0040】
このように、不正な使用者が顕微鏡11を利用しようとすると、顕微鏡11を操作できないようにして前回行った観察環境を維持するので、例えば実験用にセットアップしていた機器の設定が勝手に変えられてしまうといったことを未然に防止することが可能となる。
【0041】
一方、ステップS17において、使用者51が正当な使用者であると判定された場合、ステップS19において、制御回路21は、標本の観察環境が変更可能となるように顕微鏡11の所定の機構を制御する。
【0042】
すなわち、顕微鏡11が電動顕微鏡である場合、制御回路21は、例えば、透過照明装置等の電気で駆動する所定の機構に電力を供給して駆動させることで、観察環境が変更できるようにする。また、図4のフローチャートを参照して後述するように、外部管理システム13から設定情報を取得するか、あるいは、顕微鏡11自身が設定情報を記憶しておくことで、使用者が後日実験を再開する際には、その設定情報に基づいて各機構の設定をすることが可能となり、設定時間を短縮することができる。
【0043】
また、顕微鏡11がマニュアル顕微鏡である場合、制御回路21は、例えば、顕微鏡11を構成する機構のうちのレボルバまたはフォーカスノブ等を固定していたストッパを解除することで、前回の観察終了時における観察環境を変更可能にする。換言すると、ステップS18の処理で説明したように、レボルバ等の固定可能となる機構は、前回の観察終了時点において、ストッパ等の所定の部材により固定されるので、ステップS19の処理では、そのストッパによるロックを解除することで、観察環境を変更することが可能になる。
【0044】
このように、正当な使用者が顕微鏡11を利用しようとすると、顕微鏡11を操作することが可能となるので、例えば、その正当な使用者は、自分が前回設定しておいた観察環境をそのまま継続して使用することができる。
【0045】
以上のように、顕微鏡11においては、使用者が正当な使用者でない場合には前回の観察終了時における観察環境を変更できないが、使用者が正当な使用者である場合にはその観察環境を変更できる。これにより、顕微鏡11を共用で使用している場合でも、使用者毎の裁量で勝手に使用できなくなり、真に使用すべき使用者にとっては、実験再開時に前回の観察環境をそのまま継続して使用でき、実験時の再調整の手間が省けるので、利便性が向上する。
【0046】
なお、本実施の形態では、非接触型のICカード15を用いた個人認証について説明したが、顕微鏡11に専用の読み取り装置を設けることで、接触型のICカードを用いてもよい。また、これらのICカード認証による顕微鏡11への認証方式には、例えば、ICカードを顕微鏡11へ挿入することにより主電源を供給する方法や、ICカードを翳すことにより顕微鏡11の主電源が供給される方法、あるいは、ICカードを翳した後に一定時間だけ使用可能となり、連続した使用には再度ICカードを翳すことで使用可能になる方法等を適用することができる。またこれらのICカードの内部に、顕微鏡11の使用時間や設定情報等を記憶させることで、ICカードだけでも装置使用管理ができる。すなわち、ICカードの運用管理を行うことで、顕微鏡11の使用時間や使用状況を容易に把握することが可能となる。
【0047】
ところで、顕微鏡11が電動顕微鏡である場合、制御用のパラメータである設定情報を顕微鏡11に提供することで、かかる顕微鏡11は、その設定情報に応じた所定の設定で動作を行うことが可能となる。そこで、次に、外部管理システム13から提供された設定情報に応じた所定の設定で動作する顕微鏡11について説明する。
【0048】
図4は、顕微鏡11と外部管理装置31との間で行われる設定情報を提供する処理(以下、設定情報提供処理と称する)について説明するフローチャートである。
【0049】
なお、図4のフローチャートの処理は、図3のステップS17において、使用者51が正当な使用者であると判定され、ステップS19において、前回の観察終了時における観察環境が変更可能になっていることが前提となる。
【0050】
ステップS31において、制御回路21は、顕微鏡11の設定を変更するか否かを判定する。ステップS31において、例えば、使用者51により設定変更のボタンが押下された場合や、使用者51が正当な使用者であると判定された場合等、顕微鏡11の設定を変更する所定の条件と一致して、顕微鏡11の設定を変更すると判定された場合、ステップS32において、通信回路23は、制御回路21の制御にしたがって、設定情報を取得するための要求(以下、設定情報要求と称する)を、ネットワーク12を介して外部管理装置31に送信する。
【0051】
外部管理装置31は、ステップS41において、顕微鏡11から送信されてくる設定情報要求を受信し、ステップS42において、設定情報データベース33から、受信した設定情報要求に対応する設定情報を取得する。そして、ステップS43において、外部管理装置31は、取得した設定情報を、ネットワーク12を介して顕微鏡11に送信する。
【0052】
なお、設定情報データベース33には、例えば、使用者51を識別するIDと、設定情報とが関連付けられて格納される。例えば、顕微鏡11を使用している使用者51を識別するIDとなる識別情報を、設定情報要求に含まれるようにすることで、外部管理装置31は、そのIDと関連付けられている設定情報を取得することができる。また、設定情報がIDと関連付けられて設定情報データベース33に格納されるタイミングであるが、例えば、顕微鏡11を使用している使用者51によって、観察環境を登録するボタン(図示せず)が押下された場合や、顕微鏡11の使用を終了する場合等となる。すなわち、例えば、顕微鏡11は、使用者51によって、観察環境を登録するボタンが押下されたとき、その時点における観察環境に対応する設定情報を、ネットワーク12を介して外部管理装置31に送信する。そして、外部管理装置31は、顕微鏡11から送信されてくる設定情報を、その設定情報を送信してきた顕微鏡11を使用する使用者51のIDと関連付けて設定情報データベース33に格納する。これにより、設定情報データベース33には、使用者51のIDと、設定情報とが関連付けられて格納される。
【0053】
ステップS33において、通信回路23は、外部管理装置31から送信されてくる設定情報を受信する。ステップS34において、制御回路21は、受信した設定情報に基づいて、顕微鏡11の各機構を制御する。
【0054】
ここで、設定情報には、例えば、対物レンズ74の倍率、透過照明部78による照明の明るさや視野、またはステージ72の位置等の情報(以下、観察情報と称する)が含まれている。また、観察像は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子等からなる撮像装置により撮像されるのが一般的である。そこで、設定情報には、上記の観察情報の他に、例えば、露光時間や解像度等の撮像装置による撮像に関係する情報(以下、撮像情報と称する)を含むようにしてもよい。
【0055】
なお、本実施の形態では、設定情報として、観察情報と撮像情報の2つを例にして説明するが、それ以外にも、例えば、顕微鏡11が蛍光顕微鏡である場合には、蛍光顕微鏡独自のパラメータとなる蛍光フィルタに関する情報等、顕微鏡11の観察環境に関係する情報であれば何れであってもよい。
【0056】
例えば、ステップS34において、制御回路21は、対物レンズ74の倍率に関する観察情報に基づいて、レボルバ75に装着されている複数の対物レンズ74のなかから、その倍率に適した1つの対物レンズ74が観察に用いられるように制御する。同様にまた、制御回路21は、例えば、照明の明るさや視野およびステージ72の位置に関する観察情報に基づいて、透過照明部78およびステージ72を制御する。
【0057】
これにより、ある観察環境に対応する設定情報を設定情報データベース33に登録しておくことで、例えば、後日の実験において、その観察環境を再現したいときには、使用者51が設定変更のボタンを押下することで、登録しておいた観察環境と同様の環境を設定することが可能となる。
【0058】
以上のように、顕微鏡11においては、外部管理装置31から設定情報が取得され、その設定情報に基づいて、各機構の動作が制御される。これにより、予め登録しておいた設定情報に対応する観察環境を再現することができる。
【0059】
なお、本実施の形態では、設定情報は、設定情報データベース33に格納されると説明するが、顕微鏡11自身が記録していてもよい(例えば、制御回路21や認証回路22の内部に設けられたメモリに記録する)。この場合、顕微鏡11においては、例えば、使用者51により設定変更のボタンが押下された場合、自身の記録している設定情報が読み出され、その設定情報に基づいて各機構が制御される。これにより、正当な使用者は、自分が前回設定しておいた観察環境をそのまま継続して使用することができる。
【0060】
また、設定情報には、顕微鏡11に対して特定の機能の実行を禁止する情報が含まれるようにしてもよい。この場合、顕微鏡11は、その特定の機能については使用制限を受けることになる。なお、顕微鏡11には、図1に示すように、電源予備回路24(バッテリ、電池等)を備えている。従って、主電源をオフしても、電源予備回路24を用いて設定情報の格納等の動作を行うことができる。
【0061】
ところで、例えば、実験管理者53が、顕微鏡11を使用している使用者51の上司であるとすると、部下である使用者51の作業の進捗状況を確認すべき状況も考えられる。そこで、次に、図5のフローチャートを参照して、顕微鏡システム1において、実験管理装置41を使用している上司が、顕微鏡11を使用している使用者51の作業の様子を確認する際に行われる処理の例について説明する。
【0062】
図5は、顕微鏡11、外部管理システム13、および実験管理システム14の間で行われる顕微鏡情報取得処理を説明するフローチャートである。
【0063】
ステップS71において、実験管理装置41は、実験管理者53によって顕微鏡情報の取得が指示されたか否かを判定する。ステップS71において、例えば、部下である使用者51の作業の進捗状況を確認したい上司によって、顕微鏡情報の取得が指示されたと判定された場合、ステップS72において、実験管理装置41は、顕微鏡情報を取得するための要求(以下、顕微鏡情報要求と称する)を外部管理装置31に送信する。
【0064】
外部管理装置31は、ステップS61において、実験管理装置41から顕微鏡情報要求を受信し、ステップS62において、受信した顕微鏡情報要求を、ネットワーク12を介して顕微鏡11に送信する。
【0065】
ステップS51において、通信回路23は、外部管理装置31から送信されてくる顕微鏡情報要求を受信し、ステップS52において、制御回路21は、受信した顕微鏡情報要求に対応する顕微鏡情報を取得する。そして、ステップS53において、通信回路23は、取得した顕微鏡情報を、ネットワーク12を介して外部管理装置31に送信する。なお、外部管理装置31に送信される顕微鏡情報は、例えば、顕微鏡情報要求を受信したときに、顕微鏡11で観察されている標本に対応する画像情報等である。
【0066】
外部管理装置31は、ステップS63において、顕微鏡11から顕微鏡情報を受信し、ステップS64において、受信した顕微鏡情報を実験管理装置41に送信する。
【0067】
実験管理装置41は、ステップS73において、外部管理装置31から顕微鏡情報を受信し、ステップS74において、受信した顕微鏡情報を出力する。例えば、実験管理装置41は、顕微鏡情報が顕微鏡11で観察されている標本に対応する画像情報である場合、その画像情報を、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置(図示せず)に表示させる。これにより、上司は、表示装置に表示された画像情報を確認して、部下の作業の進捗状況を容易に把握することが可能となる。
【0068】
以上のように、実験管理装置41においては、顕微鏡11からの顕微鏡情報が取得され、その顕微鏡情報が出力される。これにより、実験管理装置41では、顕微鏡11側で行われている作業の内容を容易に確認することができる。
【0069】
なお、図5のフローチャートにおいては、実験管理装置41と顕微鏡11との間に外部管理装置31を設けることで、実験管理装置41と顕微鏡11は、外部管理装置31を介して通信を行うとして説明したが、実験管理装置41をネットワーク12に接続させることで、実験管理装置41と顕微鏡11とが直接通信するようにしてもよい。
【0070】
本発明によれば、顕微鏡等の共同使用される機器の利便性を向上させることができる。
【0071】
また、機器を管理する側の立場からすれば、機器を使用している使用者の特定や使用時間の把握等、機器運用が容易になる。さらに、このような管理形態の場合、管理者は、共同使用機器の使用可能設定を個人毎に設定することも可能となる。これにより、初心者等の機器に不慣れな使用者が誤って機器の重要な設定を変更してしまうということを未然に防止することが可能となる。さらに、使用機能に応じて課金するシステムを容易に構築することも可能となる。
【0072】
さらに、管理者は、機器使用者に、実験手順等について遠隔から指示することが可能となる。また、指示だけではなく、実験結果や操作履歴等も取得できるので、機器使用者の作業工程や実験結果の把握も容易にできる。これにより、結果として、機器使用者の作業効率や実験状況も把握可能となり、実験全体の工程も容易に把握できる。
【0073】
なお、本実施の形態では、共同使用される機器の一例として、顕微鏡について説明したが、本発明は、顕微鏡以外の共同使用される機器にも適用することが可能である。
【0074】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータ等に、記録媒体からインストールされる。
【0075】
この記録媒体は、コンピュータとは別に、利用者にプログラムを提供するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc))を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini-Disk)(商標)を含む)、若しくは半導体メモリ等よりなるリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、コンピュータに予め組み込まれた状態で利用者に提供される、プログラムが記録されているハードディスクドライブやROM(Read Only Memory)等で構成される。
【0076】
また、上述した一連の処理を実行させるプログラムは、必要に応じてルータ、モデム等のインタフェースを介して、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の通信媒体を介してコンピュータにインストールされるようにしてもよい。
【0077】
なお、本明細書において、記録媒体に格納されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0078】
また、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。
【0079】
さらに、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明を適用した顕微鏡システムの一実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図2】顕微鏡の全体の構成を示す概略構成図である。
【図3】認証処理について説明するフローチャートである。
【図4】設定情報提供処理について説明するフローチャートである。
【図5】顕微鏡情報取得処理について説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0081】
1 顕微鏡システム, 11−1乃至11−nおよび11 顕微鏡, 12 ネットワーク, 13 外部管理システム, 14 実験管理システム, 15 ICカード, 21−1乃至21−nおよび21 制御回路, 22−1乃至22−nおよび22 認証回路, 23−1乃至23−nおよび23 通信回路, 24−1乃至24−nおよび24 電源予備回路, 31 外部管理装置, 32 登録識別情報データベース, 33 設定情報データベース, 41 実験管理装置, 71 本体部, 72 ステージ, 73 支持脚部, 74 対物レンズ, 75 レボルバ, 76 接眼レンズ, 77 接眼鏡筒, 78 透過照明部, 79 透過照明ランプハウス, 80 コンデンサレンズ, 81 支持部材, 82 フォーカスノブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察対象の観察環境を変更するための複数の機構を有する顕微鏡において、
使用者を一意に識別するための識別情報を取得する取得手段と、
取得された前記識別情報に基づいた認証の結果が、前記使用者が正当な使用者でないことを示している場合、前記観察環境が変更不可能となるように前記機構を制御し、前記認証の結果が、前記使用者が正当な使用者であることを示している場合、前記観察環境が変更可能となるように前記機構を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする顕微鏡。
【請求項2】
前記取得手段は、取得された前記識別情報に基づいて、前記使用者が正当な使用者であるか否かを認証し、
前記制御手段は、前記取得手段による認証の結果に基づいて、前記機構を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項3】
取得された前記識別情報を、前記使用者が正当な使用者であるか否かの認証を行う認証装置に送信する通信手段をさらに備え、
前記通信手段は、前記識別情報に応じて、前記認証装置から送信されてくる認証の結果を受信し、
前記制御手段は、受信された前記認証の結果に基づいて、前記機構を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項4】
前記顕微鏡は、前記機構を電動で制御可能な顕微鏡であり、
前記制御手段は、前記認証の結果が、前記使用者が正当な使用者でないことを示している場合、前記機構への電力の供給を抑制させる
ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項5】
前記認証の結果が、前記使用者が正当な使用者であることを示している場合、前記観察環境の設定に関する設定情報を取得するための要求を、前記設定情報の提供を行う提供装置に送信する通信手段をさらに備え、
前記通信手段は、前記要求に応じて、前記提供装置から送信されてくる前記設定情報を受信し、
前記制御手段は、受信された前記設定情報に対応する観察環境になるように、前記機構を制御する
ことを特徴とする請求項4に記載の顕微鏡。
【請求項6】
前記設定情報は、前記観察対象が載置されるステージおよび前記観察対象を照明し対物レンズを通じて前記観察対象の観察像を取得する光学系に関係する観察情報、並びに前記光学系により取得される前記観察像を撮像する撮像装置に関する撮像情報を含んでおり、
前記制御手段は、前記観察情報に基づいて、前記ステージおよび前記光学系に関係する機構を制御し、前記撮像情報に基づいて撮像に関係する機構を制御する
ことを特徴とする請求項5に記載の顕微鏡。
【請求項7】
前記顕微鏡は、前記機構を手動で操作可能な顕微鏡であり、
前記制御手段は、前記認証の結果が、前記使用者が正当な使用者でないことを示している場合、前記機構のうちの固定可能となる機構を所定の部材により固定させる
ことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項8】
前記固定可能となる機構は、レボルバまたはフォーカスノブであり、
前記レボルバまたは前記フォーカスノブは、ストッパにより固定される
ことを特徴とする請求項7に記載の顕微鏡。
【請求項9】
前記複数の機構の設定情報を記憶する記憶部、或は、前記複数の機構の設定情報をネットワークを介して外部記憶部へ送信する通信回路部を有する
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の顕微鏡。
【請求項10】
主電源の他に電源予備回路を備えている
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−128497(P2009−128497A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301690(P2007−301690)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】