説明

顕色剤組成物、その水分散液の製造方法及び感圧複写紙

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、顕色剤組成物、その水分散液の製造方法及びそれを含む塗液を塗布してなる初期発色性に優れた感圧複写紙に関する。
【0002】
【従来の技術】感圧複写紙には電子供与性有機発色剤(以下単に発色剤と記す)等を溶解した油性物質を内包するマイクロカプセルを主成分とする発色剤カプセル組成物を支持体の片面に塗布した上用紙と、支持体の片面に上記発色剤と接触したときに呈色する電子受容性顕色剤(以下単に顕色剤と記す) を主成分とする顕色剤組成物を塗布し、反対面に発色剤カプセル組成物を塗布した中用紙、及び支持体の片面に顕色剤組成物を塗布した下用紙等の各種シートがあり、一般に上用紙−下用紙、或いは上用紙−中用紙−下用紙の順に組み合わせて複写セットとして実用されている。また、支持体の同一面上に発色剤と顕色剤を塗布して一枚で感圧複写可能とした自己発色型感圧複写紙もその一形態として知られている。
【0003】かかる感圧複写紙の呈色剤としては、酸性白土、活性白土、アタパルジャイト、ゼオライト、ベントナイト、シリカ、ケイ酸アルミ等の如き無機呈色剤と、フェノール−アルデヒド重合体、フェノール−アセチレン重合体等のフェノール重合体、芳香族カルボン酸あるいはその誘導体の多価金属塩等の有機呈色剤が知られている。
【0004】このうち有機呈色剤は無機呈色剤に比べ、発色能が高く、しかも得られた発色像が水分の付着や通常のファイル保存等で濃度低下を来さないという長所を備えている。しかし、印字直後の発色濃度が低く、飽和濃度に達するまでに時間を要する欠点(所謂初期発色性に劣る欠点)があり、その改良が望まれていた。従来より、かかる欠点を解消する方法として、発色剤を溶解する油性物質の粘度を下げて発色剤と呈色剤との接触を早める方法が行われている。しかし、特に低温条件下においては油性物質の粘度が上がるため、このような方法では満足すべき結果が得られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題を解決し、初期発色性に優れた感圧複写紙を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、一般式(1)で表される核置換サリチル酸塩を主成分とする顕色剤と、一般式(2)で示される化合物を含む顕色剤組成物である。
【0007】
【化5】


【0008】〔式中、R1,2,3,及びR4 は同じでも異っていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から15までのアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、核置換されたフェニル基、アラールキル基、または核置換されたアラールキル基であり、またR1,2,3,及びR4 のうち相隣る二つが結合して環を形成してもよい。nは1以上の整数、Mは多価金属原子を示す。〕
【0009】
【化6】


【0010】〔式中、R5 は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、シクロアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、アルケニル基、又は置換基を有してもよいアラールキル基を示す。またR6,R7 は同じでも異なってもよく、置換基を有してもよいアルキル基、シクロアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、アルケニル基、又は置換基を有してもよいアラールキル基を示し、R6 とR7 は隣接する窒素原子とともにモルホリン環を形成してもよい。〕また本発明は、上記一般式(1)で表される核置換サリチル酸塩を主成分とする顕色剤と、上記一般式(2)で示される化合物を有機溶剤に溶解させ、この溶液を水性媒体中で加熱下または非加熱下に乳化分散せしめ、つづいてこの分散液を加熱して有機溶剤を蒸留除去して得られる顕色剤組成物水分散液の製造方法、およびこの方法で製造された顕色剤組成物水分散液である。
【0011】更に本発明は、上記顕色剤組成物または顕色剤組成物水分散液を含む塗液を支持体に塗布してなる感圧複写紙である。
【0012】
【作用】本発明で初期発色性の優れた感圧複写紙が得られる理由は必ずしも明らかではないが、一般式(2)の化合物中の窒素原子のローンペア電子が置換サリチル酸塩の金属原子に対してキレート結合することで置換サリチル酸塩の結晶構造の一部をアモルファス化する事に起因していると考えられる。その結果、発色剤を含有した油性物質との吸着性や馴染みを改良し、極めて優れた初期発色能を備えた感圧複写紙が得られるものと推定される。
【0013】一般式(1)で表される置換サリチル酸塩は、いずれも顕色能に優れ、その代表的な例としては、3−メチル−5−イソノニルサリチル酸、3−メチル−5−イソドデシルサリチル酸、3−メチル−5−イソペンタデシルサリチル酸、3−メチル−5−(α−メチルベンジル)サリチル酸、3−メチル−5−(α,α−ジメチルベンジル)サリチル酸、3,5−ジセカンダリブチルサリチル酸、3,5−ジターシャリブチル−6−メチルサリチル酸、3−ターシャリブチル−5−フェニルサリチル酸、3,5−ジターシャリアミルサリチル酸、3−シクロヘキシル−5−イソノニルサリチル酸、3−フェニル−5−イソノニルサリチル酸、3−(α−メチルベンジル)−5−イソノニルサリチル酸、3−イソプロピル−5−イソノニルサリチル酸、3−イソノニルサリチル酸、3−イソノニル−5−メチルサリチル酸、3−イソノニル−5−シクロヘキシルサリチル酸、3−イソノニル−5−フェニルサリチル酸、3−イソノニル−5−(α−メチルベンジル)サリチル酸、3−イソノニル−5−(4,α−ジメチルベンジル)サリチル酸、3−イソノニル−5−(α,α−ジメチルベンジル)サリチル酸、3−(α,α−ジメチルベンジル)−5−イソノニルサリチル酸、3−イソノニル−6−メチルサリチル酸、5−イソノニルサリチル酸、3−ターシャリブチル−5−イソノニルサリチル酸、3,5−ジイソノニルサリチル酸、3−イソドデシルサリチル酸、3−イソドデシル−5−メチルサリチル酸、3−イソドデシル−6−メチルサリチル酸、3−イソプロピル−5−イソドデシルサリチル酸、3−イソドデシル−5−エチルサリチル酸、5−イソドデシルサリチル酸、3−イソペンタデシルサリチル酸、3−イソペンタデシル−5−メチルサリチル酸、3−イソペンタデシル−6−メチルサリチル酸、5−イソペンタデシルサリチル酸、3,5−ジシクロヘキシルサリチル酸、3−シクロヘキシル−5−(α−メチルベンジル)サリチル酸、3−フェニル−5−(α−メチルベンジル)サリチル酸、3−フェニル−5−(α,α−ジメチルベンジル)サリチル酸、3−(α−メチルベンジル)サリチル酸、3−(α−メチルベンジル)−5−メチルサリチル酸、3−(α−メチルベンジル)−6−メチルサリチル酸、3−(α−メチルベンジル)−5−フェニルサリチル酸、3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸、3−(α−メチルベンジル)−5−(α,α−ジメチルベンジル)サリチル酸、3−(α−メチルベンジル)−5−ブロモサリチル酸、3−(α,4−ジメチルベンジル)−5−メチルサリチル酸、3,5−ジ(α,4−ジメチルベンジル)サリチル酸、3−(α,α−ジメチルベンジル)−5−メチルサリチル酸、3−(α,α−ジメチルベンジル)−6−メチルサリチル酸、3,5−ジ(α,α−ジメチルベンジル)サリチル酸、5−(4−メシチルメチルベンジル)サリチル酸、ベンジル化スチレン化サリチル酸、ピネン化サリチル酸、2−ヒドロキシ−3−(α,α−ジメチルベンジル)−1−ナフトエ酸又は3−ヒドロキシ−7−(α,α−ジメチルベンジル)−2−ナフトエ酸などの多価金属塩が挙げられる。多価金属の具体例としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル等が挙げられるが亜鉛が最も好ましい。これらは単独で、又は混合して使用される。
【0014】ここでイソノニル基、イソドデシル基、イソペンタデシル基はそれぞれプロピレン三量体、プロピレン四量体又は1−ブテン三量体及びプロピレン五量体が付加して生じた置換基の総称として定義する。一般式(1)においてR1 またはR3 のうち少なくとも一つがイソノニル基、イソドデシル基またはイソペンタデシル基であるものは、感圧複写紙が日光に曝されても呈色能が低下し難いため好ましい。
【0015】これらの置換サリチル酸塩の中には単独では結晶性であるものもあり、その軟化点もまちまちである。非結晶性で好ましい軟化点を有する顕色剤を調製するには、適当に混合して目的の物性になるように調節する。因みに、顕色剤の軟化点が低すぎると、紙表面に塗布、乾燥される顕色剤が紙繊維間に浸透移行して発色濃度が低下し、顕色剤の水分散液も凝固しやすく、長時間にわたっての貯蔵安定性に欠ける。一方、顕色剤の軟化点が極めて高いと、紙表面に塗布、乾燥される時に殆ど自着作用を現さないので、これを紙表面に固着させるために多量の接着剤を使用しなければならず、その場合は接着剤が膜となってマイクロカプセル中に存在する染料溶解オイルの移行を妨げることもあり、顕色能がやや劣る場合もある。これらの理由から顕色剤の軟化点範囲は20℃以上が好ましく、更に好ましくは30℃〜85℃程度である。
【0016】顕色剤の軟化点を好ましい温度に調節する方法としては、第一には軟化点の異なる顕色剤を混合すること、第二には顕色剤の軟化点を下げるには、軟化点を低下させる物質、例えば脂肪酸の金属塩、トリアルキルフェノール、トリアラールキルフェノールまたはスチレンオリゴマー等を添加すること、第三には低すぎる軟化点の顕色剤に軟化点を上昇させるような物質、例えばポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレンまたは石油樹脂等を添加することが挙げられる。混合割合については特に限定されるものではない。なお、本発明でいう軟化点とは、顕色剤が水中で平衡水分を含有する状態での軟化温度をいう。通常、乾燥状態での軟化点より50℃程度低めである。
【0017】本発明では上記顕色剤に特定の置換アミド類を併用するものであるが、かかる置換アミド類の具体例には、N,N−ジ(2−エチルヘキシル)ホルムアミド、N,N−ジシクロヘキシルホルムアミド、N,N−ジフェニルホルムアミド、N,N−ジブチルアセトアミド、N,N−ジオクチルアセトアミド、N,N−ジ(2−エチルヘキシル)アセトアミド、N,N−ジシクロヘキシルアセトアミド、N,N−ジフェニルアセトアミド、N,N−ジベンジルアセトアミド、N,N−ジ(2−エチルヘキシル)プロピオアミド、N,N−ジシクロヘキシルプロピオアミド、N,N−ジエチルカプリルアミド、N,N−ジブチルカプリルアミド、N,N−ジ(2−エチルヘキシル)カプリルアミド、N,N−ジシクロヘキシルカプリルアミド、N,N−ジメチルラウロイルアミド、N,N−ジエチルラウロイルアミド、N,N−ジブチルラウロイルアミド、N,N−ジ(2−エチルヘキシル)ラウロイルアミド、N,N−ジアリルラウロイルアミド、N,N−ジシクロヘキシルラウロイルアミド、N,N−ジメチルミリストイルアミド、N,N−ジエチルミリストイルアミド、N,N−ジメチルパルミトイルアミド、N,N−ジエチルパルミトイルアミド、,N−ジメチルステアロイルアミド、N,N−ジエチルステアロイルアミド、N,N−ジメチルオレオイルアミド、N,N−ジエチルオレオイルアミド、N,N−ジブチルオレオイルアミド、N,N−ジブチルフェノキシアセトアミド、N,N−ジ(2−エチルヘキシル)フェノキシアセトアミド、N,N−ジブチルベンゾイルアミド、N,N−ジ(2−エチルヘキシル)ベンゾイルアミド、N,N−ジブチルフェニルアセトアミド、N,N−ジ(2−エチルヘキシル)フェニルアセトアミド、N,N−ジ(2−エチルヘキシル)シクロヘキサミド、N,N−ジエチルベンザミド、ラウロイルモルホリド、カプリルモルホリド、又はオレオイルモルホリド等が挙げられる。勿論これらに限定されるものではない。上記化合物は単独もしくは併用で使用しても良い。これらの中でも、一般式(2)においてR5 が炭素数1から17のアルキル基又は炭素数2から17のアルケニル基で、かつR6 、R7 がそれぞれ炭素数1から8のアルキル基又はシクロキシル基であるジ置換アミド化合物が好ましく、特にN,N−ジ(2−エチルヘキシル)アセトアミド、N,N−ジシクロヘキシルアセトアミド、N,N−ジエチルラウロイルアミド、N,N−ジブチルラウロイルアミド、N,N−ジメチルオレオイルアミド、N,N−ジエチルオレオイルアミド、N,N−ジブチルオレオイルアミドが好ましい。
【0018】上記一般式(2)で示される化合物を多量に配合すると、得られる感圧複写紙用呈色紙の発色性能が低下したり、呈色剤層の表面が粘着性を示し印刷時等にトラブルを起こす恐れがある為、乾燥重量で一般式(1)で表される置換サリチル酸塩100重量部に対して好ましくは0.05〜20重量部、より好ましくは0.1〜10重量部程度の一般式(2)で示される化合物を呈色紙用塗液中に含有させる。
【0019】顕色剤分散液を調製する為には、例えば一般式(1)で示される顕色剤を有機溶剤に溶解し、水性媒体中に乳化分散することが好ましい。有機溶剤としては、水に対する溶解性が比較的小さく、顕色剤の溶解性が良いこと、沸点が低いことないしは分散液の調製中に化学的な変化を受け難いこと等の諸性質が要求される。この際一般式(2)で示される化合物も有機溶剤に溶解させておくと調製作業が容易になる利点がある。
【0020】有機溶剤の具体的な例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエタン、クロルベンゼン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブタノール、アミルアルコールまたはメチルターシャリブチルエーテル等が挙げられる。有機溶剤の使用量は、目的とする分散粒子の大きさ等に応じて適宜調節されるが、顕色剤100重量部に対して500重量部以下程度の範囲で調節するのが望ましい。
【0021】本発明の顕色剤組成物水分散液の製造方法においては、特定の顕色剤と一般式(2)で示される化合物を上記の如き有機溶剤に溶解させ、次いでこの有機溶剤溶液を水性媒体中で乳化分散させる。水性媒体中に乳化分散する際に用いる分散剤としては、例えばアルキル硫酸エステルのアルカリ塩、アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ塩、アルキルナフタレンスルホン酸のアルカリ塩、オレイン酸アミドスルホン酸のアルカリ塩、ジアルキルスルホコハク酸のアルカリ塩等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のノニオン性界面活性剤、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、寒天、ゼラチン等の天然高分子物質、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチル化澱粉、リン酸化澱粉、リグニンスルホン酸ナトリウム等の半合成高分子物質、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体、エチレン・無水マレイン酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、アクリル酸重合体、アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸・アクリルアミド共重合体、ビニルベンゼンスルホン酸重合体等の重合体や共重合体のアルカリ塩、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ビニルカルボン酸エステル・アクリルアミド共重合体等の合成高分子物質等が挙げられるが、本発明の方法ではこれらの中でも特にビニルカルボン酸エステル・アクリルアミド共重合体が好ましい。特に、重合度が100以上であり、少なくともアクリルアミド70〜96モル%とアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸又はマレイン酸の炭素数4以下のアルキル又はアルコキシアルキルエステル4〜30モル%の共重合比を有するアクリルアミド共重合体は保護コロイド性が大きく、また起泡性が小さいため特に好ましい。なお、これら分散剤の使用は単独であっても、2種以上の併用であっても構わない。
【0022】これら分散剤の使用量は目的とする分散粒子の大きさ等に応じて適宜調節されるが、好ましくは顕色剤100重量部に対して1〜30重量部程度の割合で調節される。かくして調製された顕色剤の水分散液は、加熱処理により、有機溶剤が蒸留除去されて真球状の粒子からなる顕色剤組成物水分散液が調製される。
【0023】こうして得られた顕色剤組成物水分散液は、更に分散処理することもできる。分散機としては例えばボールミル、ペブルミル、サンドグラインダー(縦型,横型)、コボルミル、アトライター、ダイノミル等の如く粉砕メディアを使用する各種のサンドミル型粉砕機、3本ロールミル、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル等の高速グラインド装置等が挙げられるが、処理条件設定の容易さ、粉砕効率等を考慮するとサンドミル型粉砕機(縦型,横型)、高速インペラー分散機が好ましく、その中でもサンドミル型粉砕機(縦型,横型)がより好ましい。
【0024】一般に、水分散液中の顕色剤の濃度は、10%以上の高濃度が可能であり、好ましい上限は55%程度である。このように高濃度であると、輸送コストを軽減させるのみならず、高濃度塗工液の調製も可能となり、塗布工程における乾燥効率のアップ、得られる感圧複写紙用呈色紙の品質改良効果も期待できる。
【0025】顕色剤層を形成する塗液には、このようにして得られた顕色剤組成物分散液に、通常更に接着剤として、例えば澱粉、カゼイン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス、酢酸ビニル系ラテックス等が配合されるが、さらに、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム等の無機顔料や感圧複写紙製造分野で公知の各種助剤を適宜添加することができる。
【0026】かくして調製された顕色剤層用塗液は、エアーナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、サイズプレスコーター、カーテンコーター、ショートドウェルコーター等の通常の塗布装置によって上質紙、コート紙、合成紙、フィルム等の支持体上に塗布され、感圧複写紙として仕上げられる。支持体への顕色剤層用塗液の塗布量は特に限定しないが乾燥重量で2〜8g/m2 程度である。
【0027】なお、本発明の顕色剤組成物および顕色剤組成物水分散液は、支持体の同一面に顕色剤層と発色剤層を有するか、あるいは顕色剤塗液とカプセル化した発色剤を含む塗液の混合塗布層を有する自己発色型感圧複写紙(所謂セルフコンテンド型)にも勿論応用することが出来る。
【0028】
【実施例】以下に、本発明の効果を一層明確にするため、実施例及び比較例を記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、例中の「部」及び「%」は特に断らない限りそれぞれ「重量部」及び「重量%」を表わす。
実施例1〔顕色剤組成物水分散液の調製〕
かきまぜ機と温度計を備えた内容積20000 mlのステンレススチール製の円筒型容器に水2000g及び硫酸亜鉛(7 水塩)400 gを入れ、溶解させる。これに3,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸ナトリウム10%水溶液8500gを内容物を激しくかきまぜながら添加する。複分解によって容器内はただちにチキソトロピック状のドロッとした液になる。ここでα−メチルスチレンとスチレンの共重合体(共重合比;40対60モルパーセント、平均分子量;約1500)150 gとN,N−ジシクロヘキシルアセトアミド20gを含むメチルイソブチルケトン溶液 900gを短時間のうちに加える。チキソトロピック状のドロッとした内容物の流動性が次第に良くなるので、流動しやすくなったら、容器を加熱して内容物の温度を75℃にして静置する。上層に水相が下層に油相が分離するので油層を全量取り出し、これを内容積5000mlの硬質ガラス製のビーカーに移す。ここへ更に、水600 g、炭酸ナトリウム2.5 g、ポリビニルアルコール(ケン化度;98%、重合度;約1700)5 %水溶液500 g、及びアクリル酸エチルとアクリルアミドの共重合体(共重合比;13対87モルパーセント、重合度;約400)25%水溶液60gを加え、35℃ないし40℃の範囲でホモミキサー(モデルM 、特殊機化工業株式会社製)により毎分8800ないし9000回の回転数にて20分間乳化操作を行うことによって水中油型の乳化液が得られる。これをかきまぜ機、温度計及び蒸留口のついた内容積10000 mlの硬質ガラス製三つ口フラスコに移し、更に水2000gを加えてから内容物をゆっくりかきまぜながらフラスコを加熱して沸騰させる。蒸留口からメチルイソブチルケトン及び一部の水を取り出すと、内容物はメチルイソブチルケトンを含まない全固形分38%の乳化液になる。得られた顕色剤分散粒子の平均粒子径は2.0 μであった。分散相の軟化点は78℃である。
【0029】
〔顕色剤塗液の調製〕
上記の処理で得られた38%の顕色剤組成物水分散液18部、炭酸カルシウム94部、水100 部を混合分散し、さらにバインダーとして10%のポリビニルアルコール水溶液50部、50%のカルボキシ変性 SBRラテックス(SN-307, 住友ノーガタック社製)10部を混合分散して顕色剤塗液を調製した。
【0030】
〔感圧複写紙用顕色紙の製造〕
上記顕色剤塗液を40g/m2 の原紙の片面に乾燥重量が 5g/m2 となるように塗布、乾燥して感圧複写紙用顕色紙を得た。
【0031】
実施例2実施例1において、N,N−ジシクロヘキシルアセトアミド20gの代わりに、N,N−ジエチルラウロイルアミド20gを使用する以外は実施例1と同様にして顕色剤組成物水分散液を調製した。得られた顕色剤分散粒子の平均粒子径は 1.5μ(全固形分38%)であった。
【0032】以下、実施例1と同様にして感圧複写紙用顕色紙を得た。
【0033】
実施例3実施例1において得られた顕色剤組成物水分散液を横型サンドミル(グレーンミルGMH-S20M,浅田鉄工社製)で毎分3 kgの条件で処理し顕色剤水分散液を調製した。得られた顕色剤分散粒子の平均粒子径は 1.8μ(全固形分38%)であった。以下、実施例1と同様にして感圧複写紙用顕色紙を得た。
【0034】
実施例4実施例2において得られた顕色剤組成物水分散液をサンドグラインダー(五十嵐機械株式会社製,MODEL NO,OSG-8G)で毎分2 Kgの条件で処理し、顕色剤組成物水分散液を調製した。得られた顕色剤分散粒子の平均粒子径は 1.4μ(全固形分38%)であった。
【0035】以下、実施例2と同様にして感圧複写紙用顕色紙を得た。
【0036】
実施例53−イソドデシルサリチル酸亜鉛1000g及びトルエン700 gを50℃で混合溶解させ、トルエン溶液を調製する。このトルエン溶液にN,N−ジエチルラウロイルアミド20gを加え溶解する。このトルエン溶液を内容積5000mlのステンレススチール製のビーカーに移し、水 600g、炭酸ナトリウム2.5 g、アクリル酸エチルとアクリルアミドの共重合体(共重合比;13対87モルパーセント、重合度;約400)25%水溶液100 gを加え、35℃ないし40℃の範囲でホモミキサー(モデルM 、特殊機化工業株式会社製)により毎分8800ないし9000回の回転数にて20分間乳化操作を行うことによって水中油型の乳化液が得られる。これをかきまぜ機、温度計及び蒸留口のついた内容積10000 mlの硬質ガラス製三つ口フラスコに移し、更に水2000gを加えてから内容物をゆっくりかきまぜながらフラスコを加熱して沸騰させる。蒸留口からトルエン約 700g及び水約 650gを取り出すと、内容物はトルエンを含まない全固形分38%の乳化液になる。得られた顕色剤分散粒子の平均粒子径は1.5 μであった。分散相の軟化点は63℃である。
【0037】次にこの分散液をサンドグラインダー(五十嵐機械株式会社製,MODEL NO,OSG-8G)で毎分2 Kgの条件で処理し、平均粒径が1.4 μの顕色剤分散液を調製した。以下実施例1と同様にして感圧複写紙用顕色紙を得た。
【0038】
実施例63,5−ジ(α−メチルベンジル)サリチル酸亜鉛500 gとα−メチルスチレンとスチレンの共重合体(共重合比;40対60モルパーセント、平均分子量;約1500)150 g、3−イソドデシルサリチル酸亜鉛350 g及びトルエン700 gを50℃で混合溶解させ、トルエン溶液を調製する。このトルエン溶液にN,N−ジエチルラウロイルアミド20gを加え溶解する。別に内容積5000mlのステンレススチール製のビーカーに、水600 g、炭酸ナトリウム2.5 g、アクリル酸エチルとアクリルアミドの共重合体(共重合比;13対87モルパーセント、重合度;約400)25%水溶液100 gを加え、35℃ないし40℃の範囲でホモミキサー(モデルM 、特殊機化工業株式会社製)により毎分8800ないし9000回の回転数にて20分間乳化操作を行うことによって水中油型の乳化液が得られる。これをかきまぜ機、温度計及び蒸留口のついた内容積10000 mlの硬質ガラス製三つ口フラスコに移し、更に水2000gを加えてから内容物をゆっくりかきまぜながらフラスコを加熱して沸騰させる。蒸留口からトルエン約700 g及び水約650 gを取り出すと、内容物はトルエンを含まない全固形分38%の乳化液になる。得られた顕色剤分散粒子の平均粒子径は2.1 μであった。分散相の軟化点は73℃である。以下実施例2と同様にして感圧複写紙用顕色紙を得た。
【0039】
実施例7実施例1において、N,N−ジシクロヘキシルアセトアミド20gの代わりに、N,N−ジブチルラウロイルアミド30gを使用する以外は実施例1と同様にして顕色剤組成物水分散液を調製した。得られた顕色剤分散粒子の平均粒子径は 1.2μ(全固形分38%)であった。以下実施例1と同様にして感圧複写紙用顕色紙を得た。
【0040】
実施例8実施例7において得られた顕色剤組成物水分散液を横型サンドミル(グレーンミルGMH-S20M,浅田鉄工社製)で毎分4 kgの条件で処理し顕色剤組成物水分散液を調製した。得られた顕色剤分散粒子の平均粒子径は1.0μ(全固形分38%) であった。
【0041】以下実施例7と同様にして感圧複写紙用顕色紙を得た。
【0042】
実施例9実施例1において、N,N−ジシクロヘキシルアセトアミド20gの代わりに、N,N−ジメチルオレオイルアミド30gを使用した以外は実施例1と同様にして顕色剤組成物水分散液を調製した。得られた顕色剤分散粒子の平均粒子径は 1.4μ(全固形分38%) であった。以下実施例1と同様にして感圧複写紙用顕色紙を得た。
【0043】
比較例1実施例1において、N,N−ジシクロヘキシルアセトアミド20gを使用しなかった以外は同様にして顕色剤組成物水分散液を調製した。得られた顕色剤分散粒子の平均粒子径は 2.4μ(全固形分38%) であった。以下同様にして感圧複写紙用顕色紙を得た
【0044】
比較例2実施例5において、N,N−ジエチルラウロイルアミド20gを使用せずに、顕色剤組成物水分散液を調製した。得られた顕色剤分散粒子の平均粒子径は 1.7μ(全固形分38%) であった。以下同様にして感圧複写紙用顕色紙を得た。
【0045】
比較例3実施例1においてN,N−ジシクロヘキシルアセトアミド20gを使用する代わりに2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−ターシャリブチルフェノール) を使用した以外は同様にして顕色剤組成物水分散液を調製した。得られた顕色剤分散粒子の平均粒子径は1.9 μ(全固形分38%)であった。以下同様にして感圧複写紙用顕色紙を得た。
【0046】
比較例4実施例1においてN,N−ジシクロヘキシルアセトアミド20gを使用する代わりにトリエチレングリコール−ビス〔3−(3−ターシャリブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル) プロピオネート〕20gを使用した以外は同様にして顕色剤水分散液を調製した。
【0047】得られた顕色剤分散粒子の平均粒子径は2.9 μ(全固形分38%)であった。以下同様にして感圧複写紙用顕色紙を得た。
【0048】かくして得られた13種類の感圧複写紙用顕色紙について以下の品質評価試験を行いその結果を表1に示した。
〔上用紙の作成〕
アルキル化ナフタレンにクリスタルバイオレットラクトンを溶解し、この油性液をマイクロカプセル化して調製したカプセル塗液を上質紙の片面に乾燥重量が4g/m2 となるように塗布、乾燥して上用紙を得た。
【0049】
低温発色性試験顕色紙と上用紙を1℃の雰囲気下に10時間放置した。次に呈色紙と上用紙の塗布面同士を対向させ1℃の雰囲気下で、落下式発色試験機(錘り:150 g,高さ:10 cm)により発色させ、マクベス反射濃度計で打圧から10秒後、1日後の発色濃度を測定した。
【0050】
【表1】


【0051】
【発明の効果】表1の結果から明らかなように、本発明の感圧複写紙用顕色紙は、低温発色性、特に初期発色性に優れた特性を備えていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】一般式(1)で表される核置換サリチル酸塩を主成分とする顕色剤と、一般式(2)で示される化合物を含む顕色剤組成物。
【化1】


〔式中、R1,2,3,及びR4 は同じでも異っていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から15までのアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、核置換されたフェニル基、アラールキル基、または核置換されたアラールキル基であり、またR1,2,3,及びR4 のうち相隣る二つが結合して環を形成してもよい。nは1以上の整数、Mは多価金属原子を示す。〕
【化2】


〔式中、R5 は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、シクロアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、アルケニル基、又は置換基を有してもよいアラールキル基を示す。またR6,R7 は同じでも異なってもく、置換基を有してもよいアルキル基、シクロアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、アルケニル基、又は置換基を有してもよいアラールキル基を示し、R6 とR7 は隣接する窒素原子とともにモルホリン環を形成してもよい。〕
【請求項2】一般式(1)で表される核置換サリチル酸塩を主成分とする顕色剤と、一般式(2)で示される化合物を有機溶剤に溶解させ、この溶液を水性媒体中で加熱下または非加熱下に乳化分散せしめ、つづいてこの分散液を加熱して有機溶剤を蒸留除去して得られる顕色剤組成物水分散液の製造方法。
【化3】


〔式中、R1,2,3,及びR4 は同じでも異っていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1から15までのアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、核置換されたフェニル基、アラールキル基、または核置換されたアラールキル基であり、またR1,2,3,及びR4 のうち相隣る二つが結合して環を形成してもよい。nは1以上の整数、Mは多価金属原子を示す。〕
【化4】


〔式中、R5 は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、シクロアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、アルケニル基、又は置換基を有してもよいアラールキル基を示す。またR6,R7 は同じでも異なってもく、置換基を有してもよいアルキル基、シクロアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、アルケニル基、又は置換基を有してもよいアラールキル基を示し、R6 とR7 は隣接する窒素原子とともにモルホリン環を形成してもよい。〕
【請求項3】請求項2記載の方法で製造された顕色剤組成物水分散液。
【請求項4】請求項1記載の顕色剤組成物または請求項3記載の顕色剤組成物水分散液を含む塗液を支持体に塗布してなる感圧複写紙。

【特許番号】第2824343号
【登録日】平成10年(1998)9月4日
【発行日】平成10年(1998)11月11日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−65952
【出願日】平成3年(1991)3月29日
【公開番号】特開平4−211987
【公開日】平成4年(1992)8月3日
【審査請求日】平成8年(1996)8月9日
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【出願人】(000144290)株式会社三光開発科学研究所 (1)
【参考文献】
【文献】特開 平2−215582(JP,A)
【文献】特開 昭58−181685(JP,A)
【文献】特開 昭57−80096(JP,A)
【文献】特開 昭63−98483(JP,A)
【文献】特開 昭64−347820(JP,A)