説明

風呂蓋の収納構造

【課題】合わせ蓋を浴槽の上縁フランジ上に安定して収納できると共に、コストアップを抑えつつ浴槽周りのデザイン性の低下を防止し得る風呂蓋の収納構造を提供する。
【解決手段】浴室内の浴槽の上縁フランジ上に載置されて該浴槽の上縁開口部を覆う風呂蓋の収納構造であって、風呂蓋が複数枚の蓋体からなる合わせ蓋で形成されると共に、浴槽の背足方向の一方の端部に、該浴槽の上縁フランジから下方に凹み前記合わせ蓋を重ね合わせた状態で収納可能な蓋収納部が設けられていることを特徴とする。前記蓋収納部の底面には、浴室の洗い場方向に下る水勾配が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムバスルーム等の浴室の浴槽を覆う風呂蓋の収納構造に係り、特に、風呂蓋としての合わせ蓋を浴槽の背足方向の一方の端部上に収納可能な風呂蓋の収納構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、浴室の浴槽用風呂蓋として、複数の蓋体からなる合わせ蓋等が用いられている。入浴時には、この合わせ蓋を図6及び図7に示すように各蓋体を重ね合わせた状態で収納している。図6に示す収納構造は、合わせ蓋102の各蓋体102a〜102cが重ね合わせられて、その一端が浴槽101の上縁フランジ101a上に載置されると共に他端が壁面103aに当接されて、各蓋体102a〜102cが壁面103aに立て掛けられるようになっている。
【0003】
また、図7に示す収納構造は、壁面103aに立て掛けられた合わせ蓋102の各蓋体102a〜102cの上端を固定フック104で係止されるようになっている。なお、浴槽の風呂蓋に関する公報としては、特許文献1及び特許文献2が知られている。
【特許文献1】特開平6−22873号公報
【特許文献2】特開平8−98782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図6に示す収納構造においては、合わせ蓋102の各蓋体102a〜102cが浴槽101の上縁フランジ101a上に単に載置されているだけなので、入浴中に各蓋体102a〜102cが倒れる虞がある。また、図7に示す収納構造においては、各蓋体102a〜102cの倒れは防止できるものの、浴室の壁面103aに固定フック104を取付ける必要があり、部材コストや取付けコストがかかってコストがアップすると共に、壁面103aに突起物が存在することになって浴槽101周りのデザイン面で好ましくない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、合わせ蓋を浴槽の上縁フランジ上に安定して収納できると共に、コストアップを抑えつつ浴槽周りのデザイン性の低下を防止し得る風呂蓋の収納構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、浴室内の浴槽の上縁フランジ上に載置されて該浴槽の上縁開口部を覆う風呂蓋の収納構造であって、前記風呂蓋が複数枚の蓋体からなる合わせ蓋で形成されると共に、前記浴槽の背足方向の一方の端部に、該浴槽の上縁フランジから下方に凹み前記合わせ蓋を重ね合わせた状態で収納可能な蓋収納部が設けられていることを特徴とする。また、請求項2に記載の発明は、前記蓋収納部の底面に、浴室の洗い場方向に下る水勾配が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、浴槽の背足方向の一方の端部に、浴槽の上縁フランジから下方に凹み複数枚の蓋体からなる合わせ蓋を重ね合わせた状態で収納可能な蓋収納部が設けられているため、各蓋体の端部を蓋収納部に収納するだけで、合わせ蓋が浴槽の背足方向に一方の端部に安定して収納されると共に、転倒防止用の固定フック等が不要となってコストアップを抑えつつ浴槽周りにスッキリ感が得られてそのデザイン性の低下を防止することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、蓋収納部の底面に浴室の洗い場方向に下る水勾配が設けられているため、浴槽の上縁フランジから下方に凹んだ蓋収納部内の水が洗い場側に流れ、蓋収納部内における水溜まりが防止されてその清潔さを維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図4は、本発明に係る風呂蓋の収納構造の一実施形態を示し、図1が浴槽の平面図、図2が浴槽の設置状態の側断面図、図3がその要部の拡大図、図4が図1のA−A線に沿った矢視図である。
【0010】
図1及び図2に示すように、人造大理石製やステンレス製等の浴槽1は、上縁開口部1bの周囲に上縁フランジ1aが一体形成され、上縁フランジ1aの背足方向イの一方の端部である浴室の壁面3a側に蓋収納部2が設けられている。この蓋収納部2は、図3に示すように、上縁フランジ1aの端部に該上縁フランジ1aから下方に凹んだ状態で一体成形された側壁部2a及び底壁部2bを有している。
【0011】
そして、蓋収納部2は、その底壁部2bの端部が前記壁面3aに当接されることで、蓋収納部2と壁面3aとの間に収納空間4が形成されている。この蓋収納部2は、浴室の洗い場13(図6参照)側が開口するように形成されている。また、蓋収納部2の底面である底壁部2bは、図4に示すように、壁面3b側から洗い場13側に下る水勾配を有するように形成され、蓋収納部2内の水が洗い場13側に流れるようになっている。
【0012】
また、前記蓋収納部2の底壁部2bは、図3に示すように、壁面3aの所定高さ位置にブラケット7にねじ6で固定された木製または樹脂製の取付部材5上に載置されている。また、側壁部2aの上端側には、樹脂製のガタ防止部材8が接着等により固定されている。なお、蓋収納部2の深さhは、後述する合わせ蓋10を形成する3枚の蓋体10a〜10cの前記背足方向イの寸法である幅W1(図2参照)の1/3程度に設定され、また、蓋収納部2の幅W2は、3枚の蓋体10a〜10cの板厚をtとした場合、3tより若干大きくなるように設定されている。
【0013】
そして、この浴槽1には、非入浴時に浴槽内の湯を保温する場合に、その上縁開口部1aに3枚の略同一形状の蓋体10a〜10cからなる合わせ蓋10が載置されるようになっている。この合わせ蓋10は、樹脂成形等により所定の板厚tの平面視長方形状かもしくは正方形状で、かつ3枚の各蓋体10a〜10cの形状が同一または略同一となるように形成されている。また、各蓋体10a〜10cの幅方向の端部には、図3に示すように、補強部11が設けられている。
【0014】
次に、このように構成された浴槽1の使用方法の一例について説明する。非入浴時に浴槽内の湯を保温する場合には、図2の二点鎖線で示すように、合わせ蓋10の3枚の蓋体10a〜10cで浴槽1の上縁開口部1bを覆う。そして、この状態から入浴者が入浴しようとする場合は、合わせ蓋10の各蓋体10a〜10cを浴槽1の上縁フランジ1a上から持ち上げ、図1〜図3に示すように、各蓋体10a〜10cの幅方向の一方の端部を蓋収納部2内に差し込み収納する。
【0015】
この収納の際、蓋収納部2の幅W2が3枚の蓋体10a〜10cの板厚tに応じた所定寸法に設定されていることから、3枚の蓋体10a〜10cが重ね合わさった状態で蓋収納部2内に収納される。このとき各蓋体10a〜10cの1/3程度が蓋収納部2内に位置して残りの2/3程度が浴槽1の上縁フランジ1bから上方に突出した状態となっている。また、各蓋体10a〜10cの収納状態において、最も外側である壁面3a側に位置する蓋体10aが壁面3aに略当接すると共に、浴槽1側に位置する蓋体10cがガタ防止部材8に略当接するか若干の隙間を有して蓋収納部2内に収納される。
【0016】
この収納状態において各蓋体10a〜10cの内面に付着した水滴が落下したり、入浴後に浴槽1を掃除する際に蓋収納部2内に侵入した水は、底壁部2bの水勾配により洗い場13側に自然に流れて、蓋収納部2内に滞留することが防止される。つまり、浴槽1の背足方向イの壁面3a側の端部に凹んだ蓋収納部2を設けることで、この蓋収納部2内に合わせ蓋10の3枚の蓋体10a〜10cが、簡単かつ安定した状態で収納されることになる。
【0017】
このように、上記実施形態の浴槽1にあっては、浴槽1の背足方向イの一方の端部に、浴槽1の上縁フランジ1aから下方に凹んだ蓋収納部2が設けられているため、各蓋体10a〜10cの端部を蓋収納部2に差し込むだけで、合わせ蓋10を浴槽1の背足方向イの一方の端部に安定して収納することができる。
【0018】
特に、蓋収納部2内に蓋体10a〜10cの端部の1/3程度が収納されるため、収納状態の蓋体10a〜10cの浴槽1側への倒れを確実に防止することができる。また、蓋収納部2の幅W2が3枚の蓋体10a〜10cの板厚tの合計より若干大きく設定されると共に、蓋収納部2の上端にガタ防止部材8が設けられているため、収納状態の蓋体10a〜10cのガタ付きが防止されて、より一層安定した収納状態を得ることができる。
【0019】
また、蓋収納部2の底壁部2b内面に浴室の洗い場13方向に下る水勾配が設けられているため、蓋体10a〜10cに付着した水滴の落下や浴槽1の清掃時の水等が蓋収納部2内に侵入しても、この水が水勾配により洗い場13側に自然に流れ、蓋収納部2内における水溜まりが防止されてその清潔さを維持することができると共に、浴槽1の清掃自体を簡単に行うことができる。
【0020】
さらに、各蓋体10a〜10cが蓋収納部2内に倒れが防止された状態で収納されるため、従来のような転倒防止用の固定フック104等を設ける必要がなくなり、部材コストのアップを抑えることができると共に、浴槽1周りの壁面3aや浴槽1の上縁フランジ1a等に突起物がなくなり、浴槽1周りにスッキリ感が得られてそのデザイン性の低下を防止することができる。
【0021】
図5は、本発明に係る収納構造の他の実施形態を示す図3と同様の要部の拡大図である。以下、上記実施形態と同一部位には同一符号を付して説明する。この実施形態の特徴は、蓋収納部2が、浴槽1の背足方向イの一方の端部に取付けた収納部材15で構成されている点にある。収納部材15は、垂直な側壁部15aと水平な底壁部15b及び側壁部15aから水平方向に延びた取付部15cと底壁部15bの先端に下方に延びた取付部15dで形成され、取付部15cが取付部材16にねじ17で固定され、取付部15dが壁面3aにねじ18で固定されている。これにより、浴槽1の背足方向イの一方の端部に収納部材15が取付けられ、この収納部材15と壁面3aとの間に収納空間4を有する蓋収納部2が設けられている。なお、収納部材15の側壁部15aの上端内面にはガタ防止部材8が固定されている。
【0022】
この実施形態の収納構造においても、浴槽1の背足方向イの一方の端部に浴槽1の上縁フランジ1aから下方に凹んだ蓋収納部2が設けられており、この蓋収納部2に合わせ蓋10の3枚の蓋体10a〜10cが収納されて、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。また、この実施形態の場合は、蓋収納部2の収納部材15が浴槽1とは別体で形成されているため、浴槽1自体の構成が簡略化されると共に、収納部材15を既存の浴槽1に取付けできて、既存製品への対応が容易に行えるという作用効果も得ることができる。
【0023】
なお、上記各実施形態においては、風呂蓋としての合わせ蓋10の蓋体10a〜10cの枚数が略同一形状の3枚である場合について説明したが、本発明に係わる蓋体の枚数は、2枚あるいは4枚以上でも良いし、蓋体の形状である大きさ等を異なるようにしても良いし、蓋収納部2の深さhや幅W2も、蓋体の枚数や形状等に応じて適宜に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、システムバスルーム等の浴室に設置される浴槽の風呂蓋に限らず、例えば在来工法の浴室に設置される浴槽や各種施設の浴室に設置される浴槽の風呂蓋等にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る風呂蓋の収納構造の一実施形態を示す浴槽の平面図
【図2】同浴槽の設置状態の側断面図
【図3】同その要部の拡大図
【図4】同図1のA−A線に沿った矢視図
【図5】本発明に係る風呂蓋の収納構造の他の実施形態を示す図3と同様の拡大図
【図6】従来の収納構造を示す平面図
【図7】従来の他の収納構造を示す要部の拡大図
【符号の説明】
【0026】
1・・・浴槽、1a・・・上縁フランジ、1b・・・上縁開口部、2・・・蓋収納部、2a・・・側壁部、2b・・・底壁部、3a、3b・・・壁面、4・・・収納空間、5・・・取付部材、8・・・ガタ防止部材、10・・・合わせ蓋、10a〜10c・・・蓋体、13・・・洗い場、15・・・収納部材、15a・・・側壁部、15b・・・底壁部、15c、15d・・・取付部、16・・・取付部材、イ・・・背足方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室内の浴槽の上縁フランジ上に載置されて該浴槽の上縁開口部を覆う風呂蓋の収納構造であって、
前記風呂蓋が複数枚の蓋体からなる合わせ蓋で形成されると共に、前記浴槽の背足方向の一方の端部に、該浴槽の上縁フランジから下方に凹み前記合わせ蓋を重ね合わせた状態で収納可能な蓋収納部が設けられていることを特徴とする風呂蓋の収納構造。
【請求項2】
前記蓋収納部の底面に、浴室の洗い場方向に下る水勾配が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の風呂蓋の収納構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−289581(P2008−289581A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136371(P2007−136371)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(392008529)ヤマハリビングテック株式会社 (349)
【Fターム(参考)】