説明

風呂装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、浴槽に自動的に設定水量の湯張りを行う機能を有する風呂給湯器等の加熱循環システムを備え、浴槽内の残水量を演算により求めるようにした風呂装置に関する。
【0002】
【従来の技術】浴槽に自動的に設定水量の湯張りを行なう場合には、浴槽内に湯水が残っていると湯が浴槽から溢れるので浴槽の規定容量から残水量を引いた差分の容量の湯を浴槽に給湯する必要がある。ところで、風呂給湯器は循環ポンプを用いて浴槽内の湯水を熱交換器に循環させて加熱するように構成されている。この場合、熱交換器を介して湯水に伝達される熱量が一定であれば、残水量が少ないほど湯水温度は高温になる。従って、湯水への伝達熱量と浴槽内の湯水温度の上昇量との相関関係から残水量を知ることができる。そこで、熱源の発熱量と熱交換器の効率とから循環する湯に伝達される熱量を求めると共に、浴槽内の湯水温度の上昇量を熱交換器の上流側の循環経路に設けた温度センサにより検知して、残水量を計測している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】浴槽内の湯水を加熱する際湯水をかき回さないと水面付近が底面付近に比較して高温になる。残水量が比較的多い場合には高温部分と低温部分との間の中間部分の湯水を循環路内に吸引することになる。該中間部分の温度は浴槽内の平均温度に近い温度になる。一方、残水量が少なく浴槽内に開口する循環路の吸引口が水面のすぐ下に位置する場合には、浴槽内の湯水の平均温度より高い温度を温度センサが検知する。その結果、湯温上昇量が実際より大きく検出され浴槽内に実際に残っている湯水量より少ない量しか残っていないものと判断される。このように実際より少なく判断された残水量に基づいて給湯を行うと湯水が浴槽から溢れるおそれが生じる。
【0004】そこで本発明は、前記の問題点に鑑み、浴槽内の残水量を正確に計測し得る風呂装置を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために、本発明は、循環路を介して浴槽の湯水を加熱する熱交換器と浴槽内の湯水を循環させる循環ポンプとを備えた加熱循環システムが配設され、熱交換器より上流に位置するように循環路内に設けた温度センサが検知する湯温上昇量と熱交換器を介して前記湯水に伝達される熱量とから浴槽内の推定残水量を求める残水量演算手段を有する風呂装置において、前記残水量演算手段は、演算された推定残水量が少ないほど残水量を多くする補正を行うことを特徴とする。
【0006】この場合、前記残水量演算手段は、加熱後の湯温から加熱前の湯温を引いて求めた温度上昇量から推定残水量を推定し、該推定残水量が少ないほど加熱後の湯温を下げる補正をし、補正された加熱後の温度を用いて再度残水量を求めることにより前記推定残水量を補正するようにしてもよい。
【0007】更には、前記循環路の循環流量を検知する流量検出手段を備え、前記残水量演算手段は、該循環流量が少ないほど前記推定残水量を多くする第2の補正を行うようにしてもよい。
【0008】そしてその場合には、前記循環路の循環流量を検知する流量検出手段を備え、前記残水量演算手段は、該循環流量が少ないほど加熱後の湯温を下げる補正をし、補正された加熱後の温度を用いて再度残水量を求めることにより前記推定残水量を補正するようにしてもよい。
【0009】
【発明の実施の形態】図1を参照して、1は浴槽であり、内部には湯水11が残っている。該湯水11は熱源であるバーナ2によって加熱されるものであり、熱媒ポンプ31によって循環される水を熱媒とし、気−液型の熱交換器21によって熱媒を加熱し、液−液型の熱交換器3に供給する。一方、浴槽1内の湯水11は循環路7に介設された循環ポンプ4によって熱交換器3内を循環するように構成されている。そして、該熱交換器3に循環される湯水11の熱交換器3に対しての入口の温度と出口の温度とは各々温度センサ41・42によって検知される。ところで、熱交換器21で加熱された熱媒は熱交換器3に供給され浴槽1内の湯水11を加熱するだけではなく、循環路8の途中で床暖房用の温水マット5に分岐され、室内暖房としても使用される。該温水マット5による暖房のオン・オフは開閉弁51によって行なうものであり、開閉弁51を開弁すると温水マット5に熱媒が供給され室内暖房が行なわれる。また、開閉弁51を閉弁すると温水マット5への熱媒の供給が禁止され、熱媒は全て熱交換器3に供給される。一方、温度センサ42と浴槽1との間には開閉バルブ61を介して湯張り機構6が接続されており、開閉バルブ61を開弁すると湯張り機構6により加熱された湯が浴槽1へ供給され、自動的に浴槽1への湯張りが行なわれるように構成されている。尚、湯針を行う際に図示しない流量センサにより追加する湯量が測定される。
【0010】前記構成において、湯張り機構6を用いて自動的に湯張りを行なうに際し、湯張り機構6によりどのくらいの量の湯を浴槽1に追加するかを決定するため、浴槽1内に湯水11がどのくらい残っているかを知る必要がある。
【0011】熱交換器3を介して所定の時間内に湯水11に伝達される熱量をQ(Kcal)とし、温度センサ41により検知される浴槽内の湯水11の温度であって、加熱前の温度をTc(℃)・加熱後の温度をTh(℃)とすると、湯水11の残水量W(L(リットル))は、 Q=W・(Th−Tc)より W=Q/(Th−Tc) ・・・(1)
で表される。尚、浴槽1内の湯水温度は前記のごとく熱交換器3の上流側に設けた温度センサ41で検出するので、浴槽1内に温度センサを設けなくてもよい。尚、湯水11に伝達される熱量Qは温水マット5の使用状態にかかわらず温度センサ41・42の検知温度差と後述する循環水量とにより検知することができる。
【0012】ところで、浴槽1内の湯水11は吸込口71から循環路7へ吸い込まれ、吐出口72から浴槽1内へと戻される。湯水11の量が多く水面が吸込口71より十分に上方に位置していれば吸込口71からは浴槽1の底面12と水面13に挟まれた中間部分の湯水11が吸い込まれる。水面13近傍の温度は比較的高く、底面12近傍の温度は比較的低くなり、そのため中間部分の湯水の温度は浴槽1内の湯水全体の平均温度に近くなる。具体的には湯水11が最大設定量の時に温度センサ41で検出される温度が湯水全体の平均温度となるように温度センサ41のオフセット量が予め設定されている。ところが、残水量が少なく水位が低い場合には吸込口71と水面13との距離が短くなり、吸込口71からは湯水全体の平均温度より高温の水面13近傍の湯水を吸い込むことになる。そのため温度上昇量が大きくなり、前記(1)式より残水量Wは実際の残水量より少なく演算される。該演算結果に基づいて湯張りを行えば必要以上の量の湯が追加され、浴槽1から湯水11が溢れる場合が生じる。そこで、演算された残水量を推定残水量Wtmpとして、Wtmpに応じて演算結果を補正するようにした。
【0013】残水量によって影響を受ける因子は加熱後の温度Thである。そこで、図2に示すマップを用いて、Wtmpに応じた補正係数αを求め、該補正係数αでThを補正する(α・Th)。そして、前記(1)式にα・Thを代入し、W=Q/(α・Th−Tc)
から最終的な残水量Wを求める。尚、αを取り込んだ別の補正係数を設定しておき、Wtmpに直接その補正係数を乗じてWを求めるようにしてもよい。
【0014】ところで、浴槽1内の湯水11が循環路7に吸い込まれる吸込口71と循環路7から浴槽1内へと吐出される吐出口72とは比較的近接して設けられており、循環流速が遅い場合(循環流量が少ない場合)には吐出口72から浴槽1内へ吐出された湯が浴槽1内に拡散する前に吸込口71に吸い込まれる割合が増加する。すると、温度センサ41が検知する温度は浴槽1内の湯水11の実際の温度より高温になる。そのため前記残水量が少ない場合と同じように残水量Wは実際の残水量より少なく演算される。
【0015】吐出口72から吐出された湯が浴槽1内に拡散する前に吸込口71に吸い込まれる、いわゆるショートサーキットは吐出口72からの湯の吐出速度が遅いほど多くなる。従って、循環流量を検知し前記Thを補正すればよい。尚、湯水11の循環路中に流量計を介設して循環流量を検知するようにしてもよいが、浴槽1内の湯水11にはごみや毛髪等の異物が混入することが多いため流量計が機能しなくなる場合が生じる。そこで、例えば風呂の追焚き単独運転時のように暖房運転が行なわれていない状態で、両温度センサ41・42の検知温度差Δt(℃)を基に循環流量q(L/min)を以下の(2)式により求め、EEPROM(消去可能な電気的書換式読取専用メモリ)等の記憶手段に記憶させることとした。但し、cは比熱(Kcal/L・℃)である。尚、暖房運転が行なわれていない状態で循環流量qを求めるのは、温水マット5へ熱媒が流れていると、熱交換器3を介して湯水11に伝達される熱量が変動し、qを求めることができないからである。
【0016】
q=Q/(ΔTc) ・・・(2)
そして、図3に示すマップを基に循環流量qに応じた補正係数βを求め、該補正係数βを前記α・Thに乗じて第2の補正を行い、W=Q/(α・β・Th−Tc)により残水量を求めるようにしてもよい。尚、この場合にβを取り込んだ別の補正係数を設定しておき、Wに直接その補正係数を乗じてWを補正するようにしてもよい。
【0017】前記実施形態では液−液型の熱交換器3を用いて熱媒を介して湯水を加熱するものを示したが、気−液型の熱交換器を用いて熱媒を介さずに湯水を熱源により直接加熱するようにしても良い(風呂単独の場合)。また、ところで、前記実施形態では熱源としてバーナを用いたが、電気式のヒータ等のその他のものを熱源として使用してもよい。
【0018】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明は、浴槽内の残水量を検知する際に残水量が少なくても正確に残水量を検出することができ、また、浴槽と熱交換器との間の湯水の循環流量によって影響を受けることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】推定残水量Wtmpと補正係数αとの関係を示すマップ
【図3】循環流量qと補正係数βとの関係を示すマップ
【符号の説明】
1 浴槽
2 バーナ
3 熱交換器(液−液型)
4 循環ポンプ
5 温水マット
6 湯張り機構
11 湯水
41 温度センサ
42 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 循環路を介して浴槽の湯水を加熱する熱交換器と浴槽内の湯水を循環させる循環ポンプとを備えた加熱循環システムが配設され、熱交換器より上流に位置するように循環路内に設けた温度センサが検知する湯温上昇量と熱交換器を介して前記湯水に伝達される熱量とから浴槽内の推定残水量を求める残水量演算手段を有する風呂装置において、前記残水量演算手段は、演算された推定残水量が少ないほど残水量を多くする補正を行うことを特徴とする風呂装置。
【請求項2】 前記残水量演算手段は、加熱後の湯温から加熱前の湯温を引いて求めた温度上昇量から推定残水量を推定し、該推定残水量が少ないほど加熱後の湯温を下げる補正をし、補正された加熱後の温度を用いて再度残水量を求めることにより前記推定残水量を補正することを特徴とする請求項1記載の風呂装置。
【請求項3】 前記循環路の循環流量を検知する流量検出手段を備え、前記残水量演算手段は、該循環流量が少ないほど前記推定残水量を多くする第2の補正を行うことを特徴とする請求項1または請求項2記載の風呂装置。
【請求項4】 前記循環路の循環流量を検知する流量検出手段を備え、前記残水量演算手段は、該循環流量が少ないほど加熱後の湯温を下げる補正をし、補正された加熱後の温度を用いて再度残水量を求めることにより前記推定残水量を補正することを特徴とする請求項3記載の風呂装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【特許番号】特許第3205956号(P3205956)
【登録日】平成13年7月6日(2001.7.6)
【発行日】平成13年9月4日(2001.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−116657
【出願日】平成8年5月10日(1996.5.10)
【公開番号】特開平9−303876
【公開日】平成9年11月28日(1997.11.28)
【審査請求日】平成11年7月21日(1999.7.21)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【参考文献】
【文献】特開 平8−271044(JP,A)