説明

風車役物、及びパチンコ遊技機

【課題】複数の風車を近接配置してユニット状に組み合わせた風車役物を構築して風車間に見え隠れする遊技球の位置、移動経路、排出位置を風車の回転状態を手掛かりにして予測可能とし、風車の利用価値を格段に高めて遊技内容を変化に富んだものとすることができる。
【解決手段】略垂直に配置されるベース部材21と、ベース部材によって回転自在に支持されベース部材面を流下する遊技球と接して回転する羽根車を備えた複数の風車30と、を有した風車役物20であって、近接配置された複数の風車からなる風車列を複数列配置し、少なくとも2つの隣接する風車間を一つの遊技球が通過する際に両風車を構成する羽根車が回転するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ遊技機を構成する遊技盤面上に配置されて遊技球の流下経路に変化を与える風車役物の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ遊技機においては、遊技盤の盤面に入賞口、風車、図柄表示装置、電飾装置等の各種盤面部品を設けて遊技内容の多様性を図っている。
風車(風車役物)は、遊技盤面に立設された風車軸によって羽根車を回転自在に軸支した構成を備え、遊技盤面を流下してきた遊技球が羽根車の羽根に当接することにより羽根車を回転させて演出効果を発揮させると共に、羽根による干渉によって遊技球の流下経路に変化がもたらされる(特許文献1)。
図11(a)は従来の風車を備えた遊技盤面の構成を示す正面図であり、(b)は風車の組付け状態を示す断面図である。
遊技盤100の盤面には、液晶表示器(画像表示装置)101を備えたセンター役物102が配置され、センター役物102の下方には、始動入賞口103が設けられ、更にその下方には特別図柄表示器の特別図柄を可変表示させるための可変入賞装置104が設けられている。
さらに可変入賞装置104の下方には、特別遊技状態の一つである大当り状態のときに開成状態になる開閉扉を有する大入賞口105が設けられている。
また遊技盤100には、普通入賞口106が設けられていると共に、遊技盤面には風車107や、多数の遊技釘110が突設されている。
風車107は、遊技盤面に打ち込まれた風車釘(風車軸)107aによって軸孔を回転自在に軸支された樹脂製の羽根車107bと、羽根車107bの前面に固定された化粧板としての前板107cと、から構成されている。羽根車107bは、遊技球が羽根107b’と接触して回転することにより、遊技球の落下速度を遅くすると共に、落下方向を変化させて遊技進行上の興趣を高めている。
【0003】
ところで、風車107は、流下してきた遊技球を始動入賞口103がある右方向と、左方向へ振り分ける役割を有しており、右方向へ振り分けられた遊技球Bは風車107から右方向へ下向き傾斜して一列に配列された複数本の道釘115から成る釘列上に移行して始動入賞口103へ向けて案内される。
しかし、従来の風車は、離間配置された他の風車との連携なしに単体で盤面上に配置されているに過ぎず、その役割が遊技球の振り分け手段という単純な範囲に限定されていた。それにも拘わらず、風車の活用範囲を拡大して遊技内容の向上を図ろうとする試みはこれまで一切なされてこなかった。
【特許文献1】特開2002−200313公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように従来のパチンコ遊技機にあっては、風車は遊技球を左右に振り分ける機能を有しているに過ぎず、風車を利用して遊技者の興趣を高める新たな活用方法を構築するという発想は存在しなかった。例えば、風車による遊技球の振り分け方向、振り分けパターンを多様化させて、遊技進行上の意外性、面白みを増幅させるという発想はこれまで存在しなかった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、複数の風車を近接配置した風車群を遊技盤面に配置することにより、単品としての風車では実現できなかった遊技球の振り分けパターンの多様化、集合状態で配置された複数の風車の回転状態を手掛かりとして遊技球の移動経路を予測する面白みを実現することができる風車役物、パチンコ遊技機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る風車役物は、前面を遊技球が流下するベース部材と、該ベース部材によって回転自在に支持され前記遊技球と接して回転する複数の風車と、を有した風車役物であって、少なくとも2つの隣接する風車の間隔を、一つの遊技球が両風車間を通過する際に両風車を回転させるように近接して設定したことを特徴とする。
従来のパチンコ遊技機においては、風車は、離間配置された他の風車と連携することなく単独で配置され、遊技球の流路を振り分ける手段として利用されていたに過ぎなかった。本発明では、複数の風車を近接配置してユニット状に組み合わせた風車役物を構築して風車間の連携を可能とし、風車間に見え隠れする遊技球の位置、複数の風車の回転方向等の情報から遊技球の移動経路を予測する(風車の動きによって遊技球の移動経路を演出する)面白さを得るようにしている。このため、盤面部品としての風車の利用価値を格段に高めて遊技内容を変化に富んだもの(遊技球の移動経路変更パターンの多様化)とすることができる。特に、風車を所定方向に複数列(複数段)配置するので、遊技球の通過に時間を要することとなり、興趣を高めることができる。
【0006】
請求項2の発明に係る風車役物は、近接配置された複数の前記風車からなる風車列を複数列備え、前記風車列は、横方向、縦方向、或いは斜め方向に向けて、直線状、曲線状、或いは屈曲線状に延びていることを特徴とする。
風車列の延在方向、列の形状、列数等に制限はない。円弧状、円周状、V字状、逆V字状、W字状等々、種々の形態が想定される。
請求項3の発明に係る風車役物は、前記風車群は、全体輪郭形状がピラミッド状、或いは逆ピラミッド状をなしていることを特徴とする。
風車群の全体輪郭形状にも制限がないが、例えばピラミッド状、或いは逆ピラミッド状は、風車の配置がシンプルでありながら、遊技球を風車間に見え隠れさせながら流下させて、風車の動作によって移動経路、位置、排出位置を予測する楽しさを提供することができる。
請求項4の発明に係る風車役物は、少なくとも2つの隣接する前記風車間の間隔、或いは少なくとも2つの前記風車列間の間隔は、該間隔内を通過する前記遊技球を前記ベース部材前面側から視認できない程度に近接していることを特徴とする。
風車群の少なくとも一部の間隔を近接させて遊技球を視認できなくすることにより、風車の動作によって移動経路、位置、排出位置を予測する楽しさを提供することができる。
【0007】
請求項5の発明に係る風車役物は、複数の前記風車の少なくとも一つの外径寸法が、他の風車の外径寸法と異なっていることを特徴とする。
請求項6の発明に係る風車役物は、一つの大径の前記風車の外周に沿って複数の小径の前記風車を配置したことを特徴とする。
請求項7の発明に係る風車役物は、前記ベース部材は、複数の前記風車を配置する風車配置領域と、該風車配置領域の上方に配置されて該風車配置領域内に一個ずつの遊技球の進入を許容する遊技球導入部と、該風車配置領域内へ側方から遊技球が進入することを阻止する遮蔽部材と、を備えていることを特徴とする。
風車役物の最上部から一個ずつ遊技球を導入しつつ、他の部位からの遊技球の進入を防止することができる。
請求項8の発明に係る風車役物は、前記風車は、前記ベース部材に立設された風車軸と、前記風車軸を挿通する軸穴を有した軸部材及び該軸部材の前面に配置された前板を有した羽根車と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項9の発明に係る風車役物は、前記ベース部材の前面側には前面側風車を配置した前面側風車配置領域を有し、該ベース部材の裏面側には裏面側風車を配置した裏面側風車配置領域を有し、前記前面側風車と前記裏面側風車は、前記ベース部材を貫通して回転自在に軸支された共通の風車軸に一体化されており、前記ベース部材には、前記前面側風車配置領域と前記裏面側風車配置領を連通させる連通穴が形成されていることを特徴とする。
風車配置領域を前後二段構造としたことにより、風車の動作によって移動経路、位置、排出位置を予測する楽しさを提供することができる。
請求項10の発明に係る風車役物は、前記羽根車は、前記軸穴を有した軸部材と、軸部材の外周面に突設された羽根と、から成り、該軸部材は前方から裏面側に向けて外径が漸減するテーパー状であることを特徴とする。
請求項11の発明に係る風車役物は、前記ベース部材は、パチンコ遊技機の遊技盤であることを特徴とする。
請求項12の発明に係る風車役物は、前記ベース部材は、パチンコ遊技機の遊技盤に組み付けられる別部材であることを特徴とする。
【0009】
請求項13の発明に係るパチンコ遊技機は、遊技盤と、請求項1乃至12の何れか一項に記載の風車役物と、該風車役物から排出されてきた遊技球を受け入れる入賞口と、を備えたことを特徴とする。
請求項14の発明は、請求項13のパチンコ遊技機において、請求項9に記載の裏面側風車配置領域を流下した遊技球は前記入賞口に入賞できない位置から遊技盤面に排出されるように構成されていることを特徴とする。
入賞口との関係において、遊技球の入賞が不可能な裏面側風車配置領域を設けることで、風車の動きによって予想される位置とは異なる位置から遊技球が排出されるという意外性を生じさせることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、ベース部材上に形成される前面側風車配置領域内に風車を多列状(多段状)に近接配置したため、風車間を通過する遊技球を直接目視してその位置や移動方向を常時確認し続けることが困難となる。そして、遊技球との接触によって回転する風車の回転状態から遊技球の所在、移動方向、排出位置を推測する面白さを遊技内容に付加することができる。
風車の一部を離間させて遊技球が見え隠れするように構成することにより、更に興趣を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る遊技機の一例としてのパチンコ遊技機の正面図である。
図1に示すパチンコ遊技機1は、図示しない矩形形状の枠を有し、この枠の窓孔に対して裏側から遊技盤3が着脱可能に取り付けられている。
ベニヤ板、或いはアクリル板から成る遊技盤3の前面側にはガラス枠(図2中の符号2)が開閉可能に取り付けられている。また遊技盤3の下部には遊技球を貯めておく図示しない受け皿部と、受け皿部内の遊技球を発射する図示しない発射レバー等が設けられている。また受け皿部の上部には、遊技演出を行うチャンスボタンや十字キー、あるいは遊技球の購入ボタンや購入取り消しボタンなどの操作部が設けられている。
遊技盤3の裏面には、液晶画面、主制御基板とサブ制御基板等、遊技の進行、演出に関わる裏部品を組み付けた合成樹脂製の機構板(何れも図示せず)が開閉自在に装着されている。遊技盤3における遊技領域3aの周囲には、発射レバーを操作することにより発射装置から発射された遊技球を遊技領域3aの上部に案内したり、アウト口4に案内したりする外レールR1及び内レールR2が設けられている。
【0012】
遊技盤3のほぼ中央には、本発明に係る風車役物20が配置されている。なお、必要に応じて遊技盤面の他のスペースに図示しない画像表示手段としての液晶表示器を配置してもよい。液晶表示器は、例えば液晶表示パネルにより構成され、通常動作状態の時は、特別図柄に応じた画像が表示される。また、所謂リーチ状態や特別遊技状態の時は、それぞれの遊技状態であることを示す演出画像等が表示される。
遊技盤3の右側下方の遊技領域外には、特別図柄の変動と表示を行う特別図柄表示器5や普通図柄の変動と表示を行う普通図柄表示器6などが設けられている。
また遊技盤3には、普通入賞口9が設けられていると共に、遊技盤面には多数の図示しない遊技釘が突設されている。
また、風車役物20の直下(遊技球排出部側)には複数の入賞口15が横一列に配置されている。なお、入賞口15の個数、配置位置、配列方向は、図示のものに限定される訳ではない。
【0013】
図2(a)及び(b)は風車役物の正面図、及びA−A縦断面図であり、図2(c)及び(d)は裏面側風車の配置例を示す説明図、及び風車の構成を示す斜視図である。更に、図3(a)及び(b)は風車役物の分解斜視図、及び組立状態を示す斜視図である。
風車役物20は、遊技盤3に形成した開口3c内に嵌合配置される略垂直(遊技盤面と平行)なベース部材21と、ベース部材21によって回転自在に支持されベース部材面21aを流下する遊技球と接して回転する羽根車31を備えた複数の風車30と、を有している。
ベース部材21上において、少なくとも2つの隣接する風車30の間隔を、一つの遊技球が当該両風車間を通過する際に両風車を回転させるように近接して設定している構成が一つの特徴をなしている。
なお、ベース部材21は、その前面を遊技球が流下する構成であれば、略垂直に配置されていなくてもよい。
【0014】
本実施形態では、ベース部材21を遊技盤3とは別部材とし、遊技盤に対してベース部材を組み付けるように構成しているが、遊技盤自体に複数の風車を取り付けることによって風車役物を構築してもよい。この場合には、遊技盤3がベース部材21となる。
本例では、ベース部材21を構成する底板22(前面側底板22A)の前面側には前面側風車30Aを配置した前面側風車配置領域S1を有し、底板22(22A)の裏面側に位置する奥側底板22B上には裏面側風車30Bを配置した裏面側風車配置領域S2を有する。前面側風車30Aと裏面側風車30Bは、ベース部材を貫通して回転自在に軸支された共通の風車軸32に一体化されている。更に、ベース部材21には、前面側風車配置領域S1と裏面側風車配置領S2を連通させる連通穴23が形成されている。
【0015】
更に、ベース部材21上の前面側風車配置領域S1と裏面側風車配置領域S2には、夫々近接配置された複数の風車30(前面側風車30A、裏面側風車30B)からなる風車列30−1、30−2、30−3、30−4を複数列配置している。これらの風車群においては、少なくとも2つの隣接する風車間を一つの遊技球が通過する際に両風車を構成する羽根車31が回転するように構成されている。なお、本例では、裏面側風車配置領域S2には、第1の風車例30−1は、配置されていない。
即ち、各風車30(30A、30B)は、ベース部材21の面と直交するように立設された風車軸32と、風車軸32が挿通される軸穴36aを有した軸部材36(36A、36B)を有した羽根35と、を有している。軸部材36と羽根35とは、羽根車31を構成している。前面側風車30Aの羽根車31は、軸部材36Aの前端面に前板37を有している。
【0016】
本例では、ベース部材21の底板22を貫通しつつ底板22によって回転自在に軸支された風車軸32に対して前面側風車30Aと裏面側風車30Bを同一軸心状に挿通(固定)させることにより、両風車30A、30Bが風車軸32と一体回転するようにしている。
本例では、横方向に延びる4列の風車列30−1、30−2、30−3、30−4を上下位置関係で近接配置し、上方の風車列30−1を構成する風車の個数よりも下側の風車列を構成する風車の個数が順次増えるようにピラミッド型に構成されている。
更に、最下部の風車列30−4の下方に相当する遊技盤面には入賞口15が横方向に複数個(4個)配置されている。この際、各入賞口15への入賞時の出球数を異ならせておくことが好ましい。符号16は遊技釘である。
なお、隣接する風車間の間隔は、両風車間を一つの遊技球が通過したときに両風車の羽根車31に干渉してこれらを同時に回転させるように構成する。但し、全ての風車間の間隔をそのように近接させる必要はなく、少なくとも一部の風車間の間隔を上記のごとく近接配置すればよい。
【0017】
また、少なくとも2つの隣接する風車間の間隔、或いは風車列間の間隔は、間隔内を通過する遊技球をベース部材面側から視認できない程度に近接させることにより、遊技者が風車役物内を流下する遊技球の全移動経路を直接視認し続けることができないようにするのが好ましい。但し、一部の風車間の間隔、或いは風車列間の間隔を広く設定して遊技球を目視できるようにしてもよい。
図示した実施形態に示した風車群は、その全体輪郭形状をピラミッド状としているが、逆ピラミッド状、長方形、正方形、菱形、三角形等々、任意の全体輪郭形状としてもよい。
風車群の全体輪郭形状をどのような形状とするかにより、その下方の盤面に配置する入賞口15の個数、レイアウト等も適宜変更することとなる。
【0018】
また、ベース部材21は、複数の風車を配置する風車配置領域T1と、風車配置領域T1の上方に配置されて風車配置領域内に一個ずつの遊技球の進入を許容する遊技球導入部T2と、該風車配置領域T1内へ側方から遊技球が進入することを阻止するために底板22の面上に立設された遮蔽部材24と、を備えている。これによれば、風車役物を構成する前面側の風車配置領域T1内への遊技球の進入経路が遊技球導入部T2に極限されることとなり、多数の遊技球Bの進入による風車間の遊技球詰まり等を防止することができる。
更に、本発明では、遊技球導入部T2に、ホッパ状の遊技球受入れ部材26を設けて、同一時期に前面側の風車配置領域T1に進入可能な遊技球の個数を一個に制限している。即ち、遊技球受入れ部材26は、その底面26aがすり鉢状になっており、更に、底面26aには風車配置領域T1に直結した導入穴26b(遊技球一個分を通過させ得る直径)を形成して遊技球受入れ部材26内に複数個の遊技球が入っている場合においても導入穴26bから一個ずつしか風車配置領域T1に進入できないようにしている。また、底面26aには、導入穴26b以外にも排出穴26cを形成し、排出穴26c内に落下した遊技球は遊技盤面へ戻されるか、或いはアウト口4に排出されるように構成する。
遊技球受入れ部材26内に進入した直後の遊技球はすり鉢状の底面26aに沿って遊技球受入れ部材内を周回移動し、速度が低下した際に何れかの穴26b、26c内に落下することとなる。
【0019】
上記実施形態では、ベース部材21の最上部にのみ遊技球導入部T2を設けたが、これは一例に過ぎず、遊技球導入部を他の部位に別設してもよく、配置場所、個数に制限はない。
なお、図4に示したように、前面側の風車配置領域T1内に配置された風車30Aの羽根車31は、軸穴36aを有した軸部材36と、軸部材の外周面に突設された羽根35と、前板37と、から構成し、軸部材の外形状は前方から裏面側に向けて外径が後方へ向けて漸減するテーパー状とすることにより、上方から落下してきた遊技球Bが軸部材のテーパー状の外面に衝突したときに後方へ向けて跳ねるようにすることができる。前板37は、羽根35により方向転換させられる遊技球を前方から目視し難くしている。
【0020】
以上の構成を備えた風車役物において、発射装置から打ち出され、レールR1、R2を経て遊技領域3aに進入してきた遊技球が遊技球受入れ部材26内に進入すると、遊技球は遊技球受入れ部材26内を周回し、速度が低下した時点で何れかの穴26b、26c内に落下する。導入穴26b内に落下した遊技球は前面側風車配置領域S1(風車配置領域T1)内の最上部の風車列30−1上に落下する。最上部の風車列30−1は二個の風車30から構成されており、穴26bの位置が最上部の二個の風車30の中間位置に設定されているため、遊技球は二個の風車30の中間位置に進入し、各風車の羽根車を回転させつつ落下してゆく。最上部の風車列30−1を構成する2つの風車を通過した遊技球は第2の風車列30−2に達する過程で左右何れかに振り分けられることとなり、風車の動きを手掛かりとして遊技球の進行経路を予測することができるようになっている。第2の風車列30−2を通過した遊技球が順次、第3、第4の風車列30−3、30−4を通過する際にも同様にどのような経路にて流下して行くかは遊技球毎に一定ではなく、風車の回転方向、回転量等のみによって予測することができる。しかも、風車間、風車列間を可能な限り密着して隙間を少なくすることにより、目視によって最終的な遊技球の流下位置(出口)を確認することも困難となる。このように前面側風車配置領域S1内に落下してきた遊技球の微妙な位置の違い、落下速度、回転方向、風車を構成する羽根車の羽根の角度等々の種々の不確定要因が多重に関係することにより、遊技球の移動経路が変化に富んだ不確定な状態となる一方で、風車の動きから予測可能となり、遊技の興趣を高めることが可能となる。
【0021】
更に、本発明では、ベース部材21の裏側に裏側風車配置領域S2を設けており、本例では第2の風車列30−2の背面側に位置するベース部材の部分に連通穴23を設けているため、第1の風車列30−1を通過した遊技球の一部は連通穴23を経由して裏面側風車配置領域S2へ進入して行き、裏面側風車配置領域を流下する過程で裏面側風車30Bを回転させる。裏面側風車配置領域S2に配置された裏面側風車30Bは、共通の風車軸32に一体化された前面側風車30Aと一体回転する。一方、遊技者が視認できるのは前面側風車30Aのみであるため、前面側風車30Aが回転している場合にその回転が前面側風車30Aと遊技球が接触したための回転か、或いは同一軸心状に配置された裏面側風車30Bと遊技球が接触したための回転であるかを知ることはできず、遊技球の移動経路、流下位置を前面側風車30Aの回転状態だけを手掛かりに予測することは困難となる。
要するに本実施形態では、風車配置領域を前後二段構造としたことにより、風車の動作によって移動経路、位置、排出位置を予測する楽しさを提供することができる一方で、遊技球の入賞が不可能な裏面側風車配置領域S2を設けることで、風車の動きによって予想される位置とは異なる位置から遊技球が排出されるという意外性を生じさせることができる。
【0022】
第2の風車列30−2を構成する風車の軸部材の外面形状を裏面側に向けて外径が後方へ向けて漸減するテーパー状とすることにより、上方から落下してきた遊技球Bが軸部材のテーパー状の外面に衝突したときに後方へ跳ねて連通穴23内に進入し易くなる。
なお、ベース部材21の下部に、裏面側風車配置領域S2と連通する下部連通穴25を設け、この下部連通穴25の横方向位置を何れの入賞口15にも入賞できない位置とすることにより、裏面側風車配置領域S2を落下してきた遊技球を遊技領域3aに戻すように構成してもよい。
本実施形態では、前面側風車配置領域S1に配置される風車群のうちの最下部の風車列30−4には4箇所の遊技球排出位置があるため、何れの排出位置から遊技球が排出されてくるかによって何れの入賞口15に入球するのか、或いは遊技盤面に移動するのかが最後まで予測しにくい状態となる。このため遊技進行上の興趣を更に高めることが可能となる。
【0023】
次に、図5は本発明の変形例に係る風車役物の縦断面図であり、この実施形態に係る風車役物20は、ベース部材21が前面側風車配置領域S1と裏面側風車配置領域S2の二段構造を有している前記実施形態とは異なり、前面側風車配置領域のみを有した一段構造である。
本実施形態では、上記実施形態における裏面側風車配置領域S2と、そこに組み付けられる裏面側風車30B等の部品をなくする一方で、前面側風車配置領域S1には前面側風車30A等を配置する。
この実施形態においても、近接配置された複数の風車、或いは風車列を遊技球が通過する際の風車の回転方向、回転タイミングにより遊技球の出口を大ざっぱに予測することが可能となる一方で、必ずしも予測通りには遊技球が移動しないという不確実性を有した予測を楽しむことが可能となる。
上記実施形態では、横方向へ延びる複数の風車列を上下方向に配列した例を示したが、風車列は、横方向以外にも、縦方向、或いは斜め方向に向けて、直線状、曲線状、或いは屈曲線状に延びる構成としてもよい。
【0024】
また、全ての風車(前板、羽根車)の外径を同径とする必要はなく、風車の少なくとも一つの外径寸法が、他の風車の外径寸法と異なっているようにしてもよい。
即ち、図6の風車役物20は、ベース部材21の底板22上に、上向きの(突状)円弧状(曲線状)の風車列30−1、30−2、30−3を上下位置関係で配列した例を示している。
本実施形態に係る風車役物20では、下段に位置する風車列を構成する風車の外径は上段に位置する風車列を構成する風車の外径よりも順次小径となっているが、全ての風車の外径を同径としてもよいし、下段に向かうほど大径となるようにしてもよい。
この実施形態に係る風車役物20においては、隣接する2つの風車間に形成される遊技球の出口E(排出方向)が垂直方向のみならず斜め下方向となるため、遊技球の排出方向にバリエーションを持たせることが可能となる。
なお、図6の実施形態では、各風車列を上向きの円弧状としたが、下向き(凹状)の円弧状としてもよい。
或いは、各風車列をV字状、或いは逆V字状に配列してもよいし、ジグザグ状に配置しても良い。
【0025】
次に、図7に示した風車役物20は、風車30を円周を描くように底板22上に配置した内側の風車列30−1と、その外周に配置した外側の風車列30−2と、から構成されている。
この実施形態に係る風車役物20においては、遊技球の出口Eが垂直方向のみならず斜め下方向となるため、遊技球の排出方向にバリエーションを持たせることが可能となる。
次に、図8に示した風車役物20は、底板22の中央部に配置した大径の風車30Cの外周に小径の風車30Dを配置した構成が特徴的である。
この実施形態に係る風車役物20においては、遊技球の出口Eが垂直方向のみならず斜め下方向となるため、遊技球の排出方向にバリエーションを持たせることが可能となる。
【0026】
次に、図9に示した風車役物20は、底板22の面上に大径風車30Eからなる風車列30−1、30−3、30−5と、小径風車30Fからなる風車列30−2、30−4を交互に配置した構成が特徴的である。
この実施形態に係る風車役物20においては、遊技球の出口Eが垂直方向のみならず斜め下方向となるため、遊技球の排出方向にバリエーションを持たせることが可能となる。
なお、図6乃至図9の各実施形態に係る風車役物の風車配置例は、図2に示した二段構造を有したベース部材と、図5に示した一段構造のベース部材の双方に適用することができる。
また、上記各実施形態では風車役物20の下方に相当する遊技盤3の部位に入賞口15を固定配置したが、風車役物20の下側端縁(最下部の風車列からの出口)に沿って左右に動く図示しない可動役物を配置し、風車役物から排出されてきた遊技球をこの可動役物によって一旦受け入れてから遊技盤面に設けた入賞口に導くように構成してもよい(後述)。従って、可動役物に受け入れられない遊技球は入賞球とはならない。
【0027】
次に、図10は本発明の風車役物を二種のパチンコ遊技機に適用した構成例を示している。
本実施形態では風車役物20を大入賞装置として利用している。
大入賞装置としての風車役物20の上部にある遊技球導入部T2には左右一対の開閉爪40が配置されており、図示しない制御部からの制御信号によって駆動する図示しないソレノイドにより開閉動作する。開閉爪40は、遊技球が入賞し難い閉状態と遊技球が入賞し易い開状態に変化可能である。風車役物20の内部には、図示しない入球検知部、風車30(30A、30B)、及び特定領域(Vゾーン)41などが設けられている。
入球検知部は遊技球導入部T2への入球の有無を検知する入球検知スイッチから構成される。特定領域41は、左右方向へ往復動作するように構成されており、風車群を通過して流下してきた遊技球が入球したことを検知する入球検知スイッチが設けられている。
なお、連通穴23から裏面側風車配置領域S2に入った遊技球は、遊技盤外へ排出される。
風車役物20の下方両側には始動口50が配置され、風車役物20の下方中央にはゲート51と、開閉爪52aを有する電動式チューリップ52が配置されている。始動口50は、遊技球が入球したときに特別図柄表示器5に表示される特別図柄を変動表示させる権利を発生させる。このため、始動口50の内部には遊技球の入球を検知する始動口スイッチが設けられている。
【0028】
ゲート51は、遊技球が通過したときに後述する普通図柄表示器6に表示される普通図柄を変動表示させる権利を発生させる。このため、ゲートの内部には遊技球の通過を検知するゲートスイッチが設けられている。遊技球がゲートのゲートスイッチを通過したときに、所定時間作動して停止するようになっている。そして、所定態様で停止したときに可変入賞装置に設けられた電動式チューリップ52を構成する開閉片52aを所定時間、開成動作するように構成されている。
電動式チューリップ52は、普通図柄表示器6に表示される普通図柄が所定態様で停止したときに開閉爪52aを所定時間開成する動作を行い、遊技球が入球したときに始動口と同様に、特別図柄表示器5に表示される特別図柄を変動表示させる権利を発生させる。このため、電動式チューリップの内部には遊技球の入球を検知する始動口スイッチが設けられている。
なお、風車役物20を遊技盤上のどのような位置に配置して、遊技進行上におけるどのような機能を発揮させるかについては種々選択可能であり、図示した実施形態に限定されるものではない。
【0029】
以上のように本発明に係る風車役物20にあっては、ベース部材21上に形成される前面側風車配置領域S1内に風車を多列状(多段状)に近接配置したため、風車間を通過する遊技球を常時直接目視してその位置や移動方向を確認することが困難となる。そして、遊技球との接触によって回転する風車の回転状態から遊技球の所在、移動方向、排出位置を推測する面白さを遊技内容に付加することができる。
風車の一部を離間させて遊技球が見え隠れするように構成することにより、更に興趣を高めることができる。
また、風車群から排出される遊技球の移動経路に入賞口を設けることにより、更に面白さを高めることができる。特に複数の入賞口を配置した場合に、各入賞口の出玉数を異ならせることにより、どの入賞口に入球するかによって結果を異ならせて楽しみを増やし、興趣を更に高めることができる。
動く入賞口、或いは入賞口に導く可動役物を風車役物の下方に配置してもよい。
本発明の風車役物をパチンコ遊技機に組み込む場合、例えば風車の前板を緑色に着色して森林の樹木として表現すると共に、樹木の間を移動して森林から排出される遊技球を小鳥、動物等としてイメージさせる等の演出を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る遊技機の一例としてのパチンコ遊技機の正面図である。
【図2】(a)及び(b)は風車役物の正面図、及びA−A縦断面図であり、(c)及び(d)は裏面側風車の配置例を示す説明図、及び風車の構成を示す斜視図である。
【図3】(a)及び(b)は風車役物の分解斜視図、及び組立状態を示す斜視図である。
【図4】風車の構成例を示す側面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る風車役物における風車の配置例を示す説明図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る風車役物における風車の配置例を示す説明図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る風車役物における風車の配置例を示す説明図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る風車役物における風車の配置例を示す説明図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る風車役物における風車の配置例を示す説明図である。
【図10】本発明の風車役物を二種のパチンコ遊技機に適用した場合の構成例を示した正面図である。
【図11】(a)は従来の風車を備えた遊技盤面の構成を示す正面図であり、(b)は風車の組付け状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1…パチンコ遊技機、2…ガラス、3…遊技盤、3a…遊技領域、3c…開口、4…アウト口、5…特別図柄表示器、6…普通図柄表示器、9…普通入賞口、T1…風車配置領域、T2…遊技球導入部、S1…前面側風車配置領域、S2…裏面側風車配置領域、10…普通入賞口、15…入賞口、20…風車役物、21…ベース部材、21a…ベース部材面、22…底板、22A…前面側底板、22B…奥側底板、23…連通穴、24…遮蔽部材、25…下部連通穴、26…遊技球受入れ部材、26a…底面、26b…穴、26b…導入穴、26b…連通穴、26c…排出穴、30…風車、30−n…風車列、30A…前面側風車、30B…裏面側風車、30C…風車、30D…風車、30E…大径風車、30F…小径風車、31…羽根車、32…風車軸、35…羽根、36…軸部材、36A…軸部材、36a…軸穴、37…前板、40…開閉爪、41…特定領域、50…始動口、51…ゲート、52…電動式チューリップ、52a…開閉爪、52a…開閉片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面を遊技球が流下するベース部材と、該ベース部材によって回転自在に支持され前記遊技球と接して回転する複数の風車と、を有した風車役物であって、
少なくとも2つの隣接する風車の間隔を、一つの遊技球が両風車間を通過する際に両風車を回転させるように近接して設定したことを特徴とする風車役物。
【請求項2】
近接配置された複数の前記風車からなる風車列を複数列備え、
前記風車列は、横方向、縦方向、或いは斜め方向に向けて、直線状、曲線状、或いは屈曲線状に延びていることを特徴とする請求項1に記載の風車役物。
【請求項3】
前記風車群は、全体輪郭形状がピラミッド状、或いは逆ピラミッド状をなしていることを特徴とする請求項1、又は2に記載の風車役物。
【請求項4】
少なくとも2つの隣接する前記風車間の間隔、或いは少なくとも2つの前記風車列間の間隔は、該間隔内を通過する前記遊技球を前記ベース部材前面側から視認できない程度に近接していることを特徴とする請求項1、2、又は3に記載の風車役物。
【請求項5】
複数の前記風車の少なくとも一つの外径寸法が、他の風車の外径寸法と異なっていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の風車役物。
【請求項6】
一つの大径の前記風車の外周に沿って複数の小径の前記風車を配置したことを特徴とする請求項1に記載の風車役物。
【請求項7】
前記ベース部材は、複数の前記風車を配置する風車配置領域と、該風車配置領域の上方に配置されて該風車配置領域内に一個ずつの遊技球の進入を許容する遊技球導入部と、該風車配置領域内へ側方から遊技球が進入することを阻止する遮蔽部材と、を備えていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の風車役物。
【請求項8】
前記風車は、前記ベース部材に立設された風車軸と、前記風車軸を挿通する軸穴を有した軸部材及び該軸部材の前面に配置された前板を有した羽根車と、を備えていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の風車役物。
【請求項9】
前記ベース部材の前面側には前面側風車を配置した前面側風車配置領域を有し、該ベース部材の裏面側には裏面側風車を配置した裏面側風車配置領域を有し、前記前面側風車と前記裏面側風車は、前記ベース部材を貫通して回転自在に軸支された共通の風車軸に一体化されており、
前記ベース部材には、前記前面側風車配置領域と前記裏面側風車配置領を連通させる連通穴が形成されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の風車役物。
【請求項10】
前記羽根車は、前記軸穴を有した軸部材と、軸部材の外周面に突設された羽根と、から成り、該軸部材は前面側から裏面側に向けて外径が漸減するテーパー状であることを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の風車役物。
【請求項11】
前記ベース部材は、パチンコ遊技機の遊技盤であることを特徴とする請求項1乃至8、10の何れか一項に記載の風車役物。
【請求項12】
前記ベース部材は、パチンコ遊技機の遊技盤に組み付けられる別部材であることを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項に記載の風車役物。
【請求項13】
遊技盤と、請求項1乃至12の何れか一項に記載の風車役物と、該風車役物から排出されてきた遊技球を受け入れる入賞口と、を備えたことを特徴とするパチンコ遊技機。
【請求項14】
請求項13のパチンコ遊技機において、請求項9に記載の裏面側風車配置領域を流下した遊技球は前記入賞口に入賞できない位置から遊技盤面に排出されるように構成されていることを特徴とするパチンコ遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−167026(P2010−167026A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11059(P2009−11059)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000161806)京楽産業.株式会社 (4,820)
【Fターム(参考)】