説明

食品組成物

【課題】ルテイン類を十分な量で含有させることができながら、ルテイン類の酸化劣化および熱劣化を効率よく抑制することのできる食品組成物を提供すること。
【解決手段】有効成分としてのルテイン類と、ルテイン類の分解を防止するためのトコトリエノールとを含み、トコトリエノールを、ルテイン類100重量部に対し、0.075〜7.5重量部含有させる。さらに好ましくは、ルテイン類の変色を防止するためのコエンザイムQ10を含有させる。こうして得られる食品組成物は、例えば、顆粒、錠剤、ハードカプセル剤などの各種形態で提供され、また、いずれの形態においても、ルテイン類を十分な量で含有させつつ、ルテイン類の酸化や加熱による分解を効率よく抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルテイン類を含有する食品組成物に関し、詳しくは、健康食品または栄養補助食品として好適な、ルテイン類を含有する食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
天然カロチノイドの一種であるルテイン類は、通常、ルテインと、飽和または不飽和脂肪酸とのエステルとして存在しており、このルテインエステルをケン化することで、遊離状態のルテインが得られる。また、ルテインと、ルテインエステルとは、同様の生理機能を有することが知られている(特許文献1参照)。
ルテインおよびルテインエステルは、優れた抗酸化作用を有しており、さらに近年、眼の健康維持、とりわけ、眼精疲労の改善、加齢黄斑変性病(AMD)の予防などに効果があるとの報告がされていることから、健康食品や栄養補助食品(サプリメント)に利用され、経口摂取されている。
【0003】
例えば、特許文献2には、ルテインを含有する、抗酸化活性を有する健康食品が記載されており、特許文献3および4には、ルテインエステルを含有し、各種の食品に含ませて用いられる抗酸化組成物が記載されている。
しかし、ルテイン類は、酸化や加熱により分解されやすいことから、一般に、ルテイン類を、健康食品や栄養補助食品として供給する際には、ルテイン類をゼラチンなどからなる柔軟な皮膜で密に覆い、ルテイン類と空気との接触を遮断した形態、すなわち、ソフトカプセル剤の形態として提供されている。
【0004】
また、特許文献5には、栄養補助食品用のビーズレット(beadlet)において、ルテインをカロテンと共存させることで、互いの安定化を図り、さらに、ルテインとカロテンとの早発性の酸化を防ぐために、抗酸化剤(例えば、トコフェロール、トコトリエノールなど)を配合することが記載されている(同文献の段落[0011]参照)。
【特許文献1】特表2002−513411号公報
【特許文献2】特開2003−64360号公報
【特許文献3】特開2005−320319号公報
【特許文献4】特開2006−83102号公報
【特許文献5】特表2003−516720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、健康食品や栄養補助食品としてのバリエーションを増やす観点より、例えば、ルテイン類を粉末、顆粒、錠剤の形態で供給する場合や、例えば、ルテイン類の粉末、顆粒などを、ゼラチンなどから形成された比較的剛直な小容器内に収容した状態、すなわち、ハードカプセル剤の形態で供給する場合には、ルテイン類の酸化や加熱による分解を防止するため、抗酸化性成分を配合する対策が必要となる。
【0006】
特許文献5に記載のビーズレットでは、ルテインの安定化を図るために、ルテインにカロテンを共存させることが必要である。また、さらなる安定化を図るためには、ルテインとカロテンとの共存下、さらに、トコフェロール、トコトリエノールなどの抗酸化成分を、ルテインとカロテンとの総量に対し、比較的多量に、具体的には、約0.1〜10倍程度配合することが必要である(同文献の段落[0024]参照)。
【0007】
しかし、主としてルテイン類の摂取を目的とする場合に、上記したカロテンと共存させることや、多量の抗酸化成分を配合することは、かえって、ルテイン類の含有量を低減させるなど、ルテイン類を含有する食品組成物の組成に制約が生じるおそれがある。
そこで、本発明の目的は、ルテイン類を十分な量で含有させることができながら、ルテイン類の酸化劣化および熱劣化を効率よく抑制することのできる食品組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の食品組成物は、有効成分としてのルテイン類と、前記ルテイン類の分解を防止するためのトコトリエノールとを含み、前記トコトリエノールを、前記ルテイン類100重量部に対し、0.075〜7.5重量部含有することを特徴としている。
本発明の食品組成物によれば、ルテイン類100重量部に対し、0.075〜7.5重量部というわずかな量配合されるトコトリエノールによって、ルテイン類の酸化や加熱による分解を、効率よく抑制することができる。
【0009】
なお、本発明においては、遊離状態のルテインを、単に「ルテイン」といい、飽和または不飽和脂肪酸とのエステルを、単に「ルテインエステル」といい、これらルテインとルテインエステルとを合わせて、「ルテイン類」という。
上記食品組成物は、さらに、前記ルテイン類の変色を防止するためのコエンザイムQ10を含有することが好ましく、また、前記コエンザイムQ10を、前記ルテイン類100重量部に対し、0.5〜20重量部含有することがより好ましい。
【0010】
上記食品組成物に対し、さらに、コエンザイムQ10を配合することにより、特に、コエンザイムQ10を上記割合で配合することにより、ルテイン類の変色を効率よく防止することができる。
上記食品組成物は、顆粒、錠剤またはハードカプセル剤であることが好適である。
上記食品組成物によれば、ルテイン類の酸化や加熱による分解が効率よく抑制されることから、顆粒、錠剤またはハードカプセル剤として加工される場合であっても、ルテイン類含有量の減少を抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の食品組成物によれば、ルテイン類に対し、わずかな量のトコトリエノールを配合することで、ルテイン類の酸化や加熱による分解を、効率よく抑制することができる。そのため、ルテイン類を十分な量で含有させることができながら、ルテイン類の酸化劣化および熱劣化を効率よく抑制することのできる食品組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の食品組成物は、有効成分としてのルテイン類と、上記ルテイン類の分解を防止するためのトコトリエノールとを含んでおり、上記トコトリエノールの含有量が、上記ルテイン類100重量部に対し、0.075〜7.5重量部である。
ルテイン類は、上述のとおり、ルテインと、ルテインと飽和または不飽和脂肪酸とのエステル(ルテインエステル)とを含んでいる。食品組成物中には、ルテインおよびルテインエステルのいずれか一方のみを含んでいてもよく、ルテインとルテインエステルとが混合して含まれていてもよい。
【0013】
ルテインは、β,ε−カロテン−3,3’−ジオール(C4056)であって、ルテインエステルは、ルテインの3位および3’位の2つのヒドロキシル基のいずれか一方または両方が、飽和または不飽和の脂肪酸でエステル化されたものである。また、ルテインエステルが、ジエステルである場合において、3位および3’位の2つのヒドロキシル基は、互いに異なる脂肪酸によってエステル化されていてもよい。
【0014】
飽和または不飽和の脂肪酸としては、これに限定されないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ヘンイコサン酸、ベヘン酸などの、炭素数1〜22の飽和モノカルボン酸や、例えば、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸などの、炭素数1〜22の不飽和モノカルボン酸が挙げられる。
【0015】
本発明に用いられるルテイン類は、天然物からの抽出物であってもよく、合成物であってもよい。ルテイン類を含む天然物としては、これに限定されないが、例えば、ケール、キャベツ、ほうれん草、ブロッコリー、かぼちゃ、レタス、にんじん、セロリ、ピーマンなどの緑黄色野菜、例えば、豆類、例えば、卵黄、例えば、マリーゴールド、ローズマリーなどの草花、例えば、マンゴー、パパイヤ、トマト、コーンなどの果実、などが挙げられる。
【0016】
具体的に、ルテインエステルとしては、例えば、マリーゴールドから、有機溶媒(ヘキサンなど)で抽出し、精製したものが挙げられる。こうして得られるルテインエステルの純度は、特に限定されないが、好ましくは、80重量%程度、または、それ以上である。また、ルテインエステルに含まれる脂肪酸として、好ましくは、例えば、パルミチン酸、ミリスチン酸、アラキドン酸、ステアリン酸、ラウリン酸などが挙げられる。
【0017】
本発明の食品組成物中でのルテイン類の含有割合は、食品組成物の利用形態に合わせて設定されるものであるため、特に限定されず、例えば、食品組成物全体(総量)に対し、0.001〜95重量%の範囲で、適宜設定することができる。
トコトリエノールは、ビタミンEとして分類される成分の一つである。このトコトリエノールは、天然物からの抽出物であってもよく、合成物であってもよい。トコトリエノールを含む天然物としては、これに限定されないが、例えば、パーム油、ヤシ油、米糠(米胚芽)、小麦胚芽などが挙げられる。
【0018】
トコトリエノールは、常温で液体であって、例えば、粉体状の食品組成物に対し、そのままの状態で配合することすることができる。また、あらかじめ、デキストリン、炭酸カルシウム、乳糖、デンプン、セルロースなどに吸着させ、粉末化した上で、粉体状の食品組成物中に配合することも可能である。
トコトリエノールの具体的としては、例えば、米糠(米胚芽)由来のトコトリエノールを、トコトリエノールの濃度が8重量%程度となるように、炭酸カルシウムで希釈し、粉末化したものが挙げられる。
【0019】
本発明において、食品組成物中でのトコトリエノールの含有割合は、ルテイン類の酸化や加熱による分解の抑制効果を十分に発揮させ、かつ、食品組成物中での他の配合成分の含有量にできるだけ制約を生じさせないようにするという観点より設定される。
また、上記したのと同様の観点より、ルテイン類100重量部に対するトコトリエノールの含有量は、0.075〜7.5重量部、好ましくは、0.15〜6.5重量部、より好ましくは、0.25〜4.0重量部、さらに好ましくは、0.60〜2.0重量部である。
【0020】
ルテイン類100重量部に対するトコトリエノールの含有量が、上記範囲を下回ると、ルテイン類の酸化や加熱による分解の抑制効果が得られなくなるおそれがある。逆に、トコトリエノールを、ルテイン類100重量部に対し、上記範囲を上回る割合で配合したとしても、ルテイン類の酸化や加熱による分解の抑制効果に特段の変化は生じない。このため、トコトリエノールの含有割合は、本発明の食品組成物が、ルテイン類の摂取だけでなく、トコトリエノールの摂取をも目的としている場合を除き、上記範囲を上回らないように設定することが好ましい。
【0021】
また、トコトリエノールの含有割合は、上記のとおり、ルテイン類の含有量に対して、極めて少ないことから、本発明によれば、食品組成物の組成の決定、とりわけ、ルテイン類の含有割合の決定に際し、トコトリエノールの含有量によって制約を受けるおそれを低減することができる。
上記食品組成物は、好ましくは、さらに、ルテイン類の変色を防止するためのコエンザイムQ10を含有している。
【0022】
コエンザイムQ10(CoQ10)は、ユビキノンまたはビタミンQと呼ばれる脂溶性のビタミン様物質であり、例えば、酵母発酵や化学合成により製造されたものを用いることができる。
本発明において、食品組成物中でのコエンザイムQ10の含有割合は、ルテイン類の変色の抑制効果を十分に発揮させるという観点より設定される。
【0023】
また、上記したのと同様の観点より、ルテイン類100重量部に対するコエンザイムQ10の含有量は、0.2〜20重量部、好ましくは、0.5〜10重量部、より好ましくは、3.5〜8重量部である。
ルテイン類100重量部に対するコエンザイムQ10の含有量が、上記範囲を下回ると、ルテイン類の変色の抑制効果が十分に発揮されなくなるおそれがある。逆に、コエンザイムQ10を、ルテイン類100重量部に対し、上記範囲を上回る割合で配合したとしても、ルテイン類の変色の抑制効果に特段の変化は生じない。このため、コエンザイムQ10の含有割合は、本発明の食品組成物が、ルテイン類の摂取だけでなく、コエンザイムQ10の摂取をも目的としている場合を除き、上記範囲を上回らないように設定することが好ましい。
【0024】
上記食品組成物には、他の成分として、例えば、カシスポリフェノール、ブルーベリーアントシアニン、アイブライトエキス、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維、ラクトフェリン、各種ミネラル類、各種ビタミン類、各種ハーブ類およびそのエキスなどの、食品への利用が可能な、動物性、植物性および微生物由来の各種の栄養成分を配合することができる。なお、カシスポリフェノール、ブルーベリーアントシアニン、β−カロテン、アスタキサンチン、クロレラ、抹茶などは、食品組成物に対する着色剤としても作用する。
【0025】
また、他の成分として、例えば、食品組成物を各種形態に加工する際の加工性を調整するために、例えば、寒天、マルチトール、デキストリン、デンプンなどの増量剤・賦形剤、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの滑択剤、その他、例えば、風味改良の目的で、甘味料、酸味料、香辛料などを配合することができる。
【0026】
これら他の成分の含有割合は、特に限定されず、食品組成物へのルテイン類やトコトリエノールの配合が阻害されない範囲で、適宜設定することができる。
本発明の食品組成物は、ルテイン類およびトコトリエノールと、さらに、任意の成分として、コエンザイムQ10や上記他の成分を配合し、例えば、ボールミル、リボンミキサ、羽式攪拌ミキサ、V型ブレンダ、ロッキングミキサ、ニーダなどの攪拌・混合機に投入し、乾式攪拌で各上記成分を混合することにより、粉末状に調製することができる。
【0027】
本発明の食品組成物は、粉末状で供給されるほか、粉末状の食品組成物を、例えば、顆粒、錠剤、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤などの形態に加工して供給することができる。
顆粒は、例えば、上記の手順にて調製された粉末状の食品組成物を、水、各種デンプン、キサンタンガムなどのガム類、プルラン、アルギン酸類などの増粘剤などをバインダとして、例えば、噴霧造粒機、湿式造粒機、攪拌造粒機などの成形機に投入し、加熱成形することにより、得ることができる。顆粒の成形時および乾燥時における加熱温度は、特に限定されないが、通常、品温として、50℃以下であることが好ましい。
【0028】
錠剤は、例えば、上記の手順にて調製された粉末状の食品組成物を、そのままの状態で打錠機に投入し、成型することにより、または、上記の手順により得られた顆粒を、打錠機に投入し、成型することにより、得ることができる。
ソフトカプセル剤は、例えば、上記の手順により得られた顆粒を、そのままの状態で、例えば、ゼラチン、セルロースなどからなる皮膜で密に覆うことにより、または、上記手順により得られた顆粒に、例えば、小麦胚芽油、ゴマ油、サフラワー油などの油脂と、乳化剤とを加え、乳化機により乳化液とした上で、例えば、ゼラチン、セルロースなどからなる皮膜で密に覆うことにより、得ることができる。
【0029】
ハードカプセル剤は、ルテイン類の粉末や顆粒を、可食性皮膜(例えば、ゼラチン、セルロースなどの皮膜)から形成された比較的剛直な小容器(すなわち、ハードカプセル)に収容することにより、得ることができる。
これら顆粒、錠剤、ソフトカプセル剤およびハードカプセル剤の製造方法は、上記した方法に限定されず、また、これらの製造条件は、常法に従って、適宜設定できる。
【0030】
本発明の食品組成物は、有効成分としてのルテイン類と、ルテイン類の分解を防止するためのトコトリエノールとを含んでいることから、酸化や加熱による分解が抑制されている。それゆえ、粉末状に調整された食品組成物をそのままの状態で保存した場合や、上記した顆粒、錠剤、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤などの各種の形態に加工した場合であっても、食品組成物中でのルテイン類の含有量の低下を抑制することができる。
【実施例】
【0031】
次に、試験例、実施例および比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。
下記の試験例、実施例および比較例において、ルテインエステルには、マリーゴールドから、有機溶媒(ヘキサンなど)で抽出し、精製したもの(純度80重量%以上)を用いた。このルテインエステルに含まれる脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、ミリスチン酸、アラキドン酸、ステアリン酸、ラウリン酸などが挙げられる。
【0032】
また、トコトリエノールには、米糠(米胚芽)由来のトコトリエノールを、トコトリエノールの濃度が8重量%となるように、炭酸カルシウムで希釈し、粉末化したものを用いた。
(1) ルテイン類の分解防止効果の対比
対照
ルテインエステルとマルチトールとを、両成分の総量に対し、ルテインエステルの含有割合が1.32重量%となり、かつ、マルチトールの含有割合が残余の割合となるように混合して、粉末状のサンプル(サンプル1)を得た。
【0033】
上記サンプル1を平皿上に50g載せ、温度60℃の環境下(開放系)で24時間放置することにより、ルテインエステルの酸化や加熱による分解の程度を確認した(以下、酸化や加熱による分解の程度を確認するために、上記環境下でサンプルを24時間放置する試験を、「過酷試験」という)。
過酷試験後、サンプル1内のルテインエステルの含有割合(重量%)を測定し、サンプル1の調製時の含有割合との比較により、ルテインエステルの残存率(%)を算出した。
【0034】
なお、ルテインエステルの含有割合は、ヘキサンとアセトンとエタノールとトルエンとの混合溶媒(体積比10:7:6:7)を用いて、サンプルからルテインエステルを抽出後、抽出物を水酸化カリウムでケン化し、サンプル作製時と過酷試験後とでのルテイン濃度の差に基づいて、ルテインエステルの含有割合を算出した。
さらに、過酷試験後におけるサンプル1の色調を目視で観察し、後述する基準に従って評価した。
【0035】
実施例1(試験例1)
ルテインエステルと、トコトリエノールと、マルチトールとを、上記成分の総量に対し、ルテインエステルの含有割合が1.32重量%となり、トコトリエノールの含有割合が0.080重量%となり、かつ、マルチトールの含有割合が残余の割合となるように混合して、粉末状のサンプル(サンプル2)を得た。なお、トコトリエノールの含有量は、ルテインエステル100重量部に対し、6.06重量部である。
【0036】
次に、上記サンプル1に代えて、上記サンプル2を用いたこと以外は、上記対照と同様にして過酷試験を行い、さらに、過酷試験後のルテインエステルの含有割合の測定と、ルテインエステルの残存率の算出と、過酷試験後におけるサンプル2の色調の観察と、を行った。
比較試験例1〜8
トコトリエノールに代えて、下記の成分を下記に示す割合で配合したこと以外は、試験例1と同様にして過酷試験を行い、さらに、過酷試験後のルテインエステルの含有割合の測定と、ルテインエステルの残存率の算出とを行った。
【0037】
トコトリエノールに代えて配合した成分と、サンプルの総量に対する上記成分の含有割合としては、比較試験例1では、トコフェロール(ビタミンEの一種)を0.20重量%とし、比較試験例2では、ビタミンCを1.00重量%とし、比較試験例3では、アスタキサンチンを0.090重量%とし、比較試験例4では、リポ酸を0.98重量%とし、比較試験例5では、ブドウ種子エキスを0.40重量%とし、比較試験例6では、β−カロテンを0.10重量%とし、比較試験例7では、ラクトフェリンを1.00重量%とし、比較試験例8では、コエンザイムQ10を1.00重量%とした。なお、比較試験例1〜8では、いずれも、サンプルの総量に対し、ルテインエステルの含有割合が1.32重量%となり、かつ、マルチトールの含有割合が残余の割合となるように設定した。
【0038】
対照、試験例1および比較試験例1〜8における、過酷試験後のルテインエステルの含有割合の測定結果と、ルテインエステルの残存率の算出結果とを、表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1中、「抗酸化成分」欄の「含有割合」は、サンプルの総量に対する抗酸化成分の含有割合(重量%)を示している。また、対照、試験例1および比較試験例1〜8についての「ルテインエステル」の「含有割合」は、いずれも、過酷試験後の測定値である。
表1に示すように、比較試験例1〜8では、ルテインエステルの残存率が、サンプル中に抗酸化成分が配合されていない対照と同程度であって、ルテインエステルの酸化や加熱による分解の抑制効果が乏しいことがわかった。
【0041】
これに対し、抗酸化成分がトコトリエノールである試験例1では、ルテインエステルの残存率が極めて高く、ルテインエステルの酸化や加熱による分解の抑制効果が優れていることがわかった。
(2) トコトリエノールの含有割合の相違による分解抑制効果の対比
実施例2
ルテインエステルと、トコトリエノールと、マルチトールとを、上記成分の総量に対し、ルテインエステルの含有割合が1.32重量%となり、トコトリエノールの含有割合が0.0010重量%となり、かつ、マルチトールの含有割合が残余の割合となるように混合して、粉末状のサンプル(サンプル3)を得た。なお、トコトリエノールの含有量は、ルテインエステル100重量部に対し、0.0758重量部である。
【0042】
次に、上記サンプル1に代えて、上記サンプル3を用いたこと以外は、上記対照と同様にして過酷試験を行い、さらに、過酷試験後のルテインエステルの含有割合の測定と、ルテインエステルの残存率の算出と、過酷試験後におけるサンプル3の色調の観察と、を行った。
実施例3〜12および比較例1
トコトリエノールを下記に示す割合で配合したこと以外は、実施例2と同様にして、粉末状のサンプルを調製した。
【0043】
サンプルの総量に対するトコトリエノールの含有割合(ルテインエステル100重量部に対する含有量)は、比較例1では、0.0005重量%(0.0379重量部)とし、実施例3では、0.0015重量%(0.114重量部)とし、実施例4では、0.0020重量%(0.152重量部)とし、実施例5では、0.0025重量%(0.189重量部)とし、実施例6では、0.0030重量%(0.227重量部)とし、実施例7では、0.0035重量%(0.265重量部)とし、実施例8では、0.0040重量%(0.303重量部)とし、実施例9では、0.0060重量%(0.455重量部)とし、実施例10では、0.0080重量%(0.606重量部)とし、実施例11では、0.015重量%(1.14重量部)とし、実施例12では、0.050重量%(3.79重量部)とした。
【0044】
なお、実施例3〜12および比較例1では、いずれも、サンプルの総量に対し、ルテインエステルの含有割合が1.32重量%となり、かつ、マルチトールの含有割合が残余の割合となるように設定した。
次に、こうして得られたサンプルを用いたこと以外は、上記対照と同様にして過酷試験を行い、さらに、過酷試験後のルテインエステルの含有割合の測定と、ルテインエステルの残存率の算出と、過酷試験後におけるサンプルの色調の観察と、を行った。
【0045】
サンプルの色調は、目視による観察し、その結果を下記の基準で評価した。
A+:オレンジ色であった(サンプル調製時の色調が維持された)。
A:わずかに橙色を帯びたオレンジ色であった。
A−:橙色を帯びたオレンジ色であった。
B:橙色を帯びたオレンジ色であったが、全体的に淡い色調であった。
C:わずかにオレンジ色を帯びた灰色であった。
D:サンプルから色味が失われ、灰白色となった。
【0046】
サンプルの色調は、食品組成物としての実用上、「A−」以上の評価であることが好ましく、少なくとも、「B」以上の評価であることが求められる。
実施例1〜12および比較例1における、過酷試験後のルテインエステルの含有割合の測定結果と、ルテインエステルの残存率の算出結果と、サンプルの色調の評価結果とを、表2に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
表2中、「トコトリエノール」欄の「含有割合」は、サンプルの総量に対するトコトリエノールの含有割合(重量%)を示しており、また、「A 100に対する含有量」は、サンプル中のルテインエステル(A)100重量部に対する、トコトリエノール(B)の含有量(単位:重量部)を示している。また、対照、実施例および比較例についての「ルテインエステル」の「含有割合」は、いずれも、過酷試験後の測定値である。
【0049】
表2に示すように、ルテインエステルの分解抑制効果は、サンプルの総量に対し、トコトリエノールの含有割合が0.0010重量%以上(ルテインエステル100重量部に対し、トコトリエノールの含有量が0.0758重量部以上)である場合に、発揮されている。また、トコトリエノールの含有割合が0.0020重量%以上(ルテインエステル100重量部に対し、0.152重量部以上)である場合には、ルテインエステルの分解抑制効果が良好となっており、さらに、トコトリエノールの含有割合が0.035重量%(ルテインエステル100重量部に対し、0.189重量部)に達したときには、ルテインエステルの残存率が概ね90%に達し、ルテイン類の分解の抑制に関して、極めて優れた効果が得られた。
【0050】
また、上記実施例および比較例では、ルテイン類として、ルテインエステルを使用したが、ルテインエステルに代えて、ルテインを使用した場合であっても、上記実施例と同様の結果が得られた。すなわち、ルテインと、ルテインに対して所定の割合のトコトリエノールとを併存させることで、ルテインの酸化や加熱による分解を効率よく抑制することができた。
【0051】
なお、上記実施例より、ルテイン類と、ルテイン類に対して所定の割合のトコトリエノールとの併存により、過酷試験後に、サンプルの色調に変化が生じること(若干、橙色を帯びること)が確認された。
(3) ルテイン類の変色防止効果の対比
実施例13
ルテインエステルと、トコトリエノールと、コエンザイムQ10と、マルチトールとを、上記成分の総量に対し、ルテインエステルの含有割合が1.32重量%となり、トコトリエノールの含有割合が0.015重量%となり、コエンザイムQ10の含有割合が0.005重量%となり、かつ、マルチトールの含有割合が残余の割合となるように混合して、粉末状のサンプル(サンプル4)を得た。このサンプル4では、ルテインエステル100重量部に対し、トコトリエノールの含有量が約1.14重量部であり、コエンザイムQ10の含有量が約0.379重量部である。
【0052】
次に、上記サンプル1に代えて、上記サンプル4を用いたこと以外は、上記対照と同様にして過酷試験を行い、さらに、過酷試験後のルテインエステルの含有割合の測定と、ルテインエステルの残存率の算出と、過酷試験後におけるサンプルの色調の観察と、を行った。
実施例14〜17
コエンザイムQ10を下記に示す割合で配合したこと以外は、実施例13と同様にして、粉末状のサンプルを得た。
【0053】
サンプルの総量に対するコエンザイムQ10の含有割合(ルテインエステル100重量部に対する含有量)は、実施例6では、0.010重量%(0.758重量部)とし、実施例7では、0.025重量%(1.89重量部)とし、実施例8では、0.050重量%(3.79重量部)とし、実施例9では、0.10重量%(7.58重量部)とした。
なお、実施例14〜17では、いずれも、サンプルの総量に対し、ルテインエステルの含有割合が1.32重量%となり、トコトリエノールの含有割合が0.015重量%(ルテインエステル100重量部に対し、1.14重量部)となり、かつ、マルチトールの含有割合が残余の割合となるように設定した。
【0054】
次に、こうして得られたサンプルを用いたこと以外は、上記対照と同様にして過酷試験を行い、さらに、過酷試験後のルテインエステルの含有割合の測定と、ルテインエステルの残存率の算出と、過酷試験後におけるサンプルの色調の観察と、を行った。
実施例11、13〜17における、過酷試験後のルテインエステルの含有割合の測定結果と、ルテインエステルの残存率の算出結果と、サンプルの色調の評価結果とを、表3に示す。
【0055】
【表3】

【0056】
表3中、「コエンザイムQ10」欄の「含有割合」は、サンプルの総量に対するコエンザイムQ10の含有割合(重量%)を示しており、また、「A 100に対する含有量」は、サンプル中のルテインエステル(A)100重量部に対する、コエンザイムQ10の含有量(単位:重量部)を示している。また、「ルテインエステル」の「含有割合」は、いずれも、過酷試験後の測定値である。
【0057】
表3に示すように、ルテイン類と、ルテイン類に対し所定割合のトコトリエノールと、さらに、ルテイン類に対し所定割合のコエンザイムQ10と、を並存させることにより、ルテイン類の酸化または加熱による分解の抑制だけでなく、サンプルの色調変化を抑制できることがわかった。
また、実施例13〜17での過酷試験後のルテインエステルの含有割合は、1.30〜1.32重量%(残存率98.5〜100%)であった。すなわち、実施例13〜17でのルテインエステルの分解防止効果は、実施例11の場合(過酷試験後のルテインエステルの含有割合が1.31重量%(残存率99.2%)と同様であった。なお、実施例11は、実施例13〜17とはトコトリエノールの含有割合が同じであるものの、コエンザイムQ10を含有していない例である。
【0058】
(4) 食品組成物の製造
製造例1
ルテインエステル(マリーゴールド抽出物)と、トコトリエノール(米胚芽由来)と、カシスポリフェノール(含有量7%)と、アイブライトエキスと、水溶性食物繊維(難消化性デキストリン)と、ラクトフェリンと、寒天と、マルチトールとの各成分を、リボンミキサに投入し、乾式攪拌により、各上記成分を混合して、粉体状の食品組成物を得た。
【0059】
この食品組成物の各上記成分の含有割合は、次のとおりである。ルテインエステル:1.32重量%、トコトリエノール:0.008重量%、カシスポリフェノール:5.72重量%、アイブライトエキス:1.0重量%、水溶性食物繊維:27.0重量%、ラクトフェリン:10.0重量%、寒天:5.0重量%。マルチトールの含有割合は、残余の割合とした。
【0060】
こうして得られた食品組成物では、60℃で24時間加熱後においても、ルテインエステルが分解しなかった。
製造例2
ルテインエステルと、トコトリエノールと、コエンザイムQ10と、カシスポリフェノールと、アイブライトエキスと、水溶性食物繊維と、ラクトフェリンと、寒天と、マルチトールとの各成分を、リボンミキサに投入し、乾式攪拌により、各上記成分を混合して、粉体状の食品組成物を得た。
【0061】
この食品組成物の各上記成分の含有割合は、次のとおりである。ルテインエステル:1.32重量%、トコトリエノール:0.008重量%、コエンザイムQ10:0.1重量%、カシスポリフェノール:5.72重量%、アイブライトエキス:1.0重量%、水溶性食物繊維:27.0重量%、ラクトフェリン:10.0重量%、寒天:5.0重量%。マルチトールの含有割合は、残余の割合とした。
【0062】
こうして得られた食品組成物では、60℃で24時間加熱後においても、ルテインエステルが分解しなかった。
製造例3
ルテイン(マリーゴールド抽出物)と、トコトリエノール(米胚芽由来)と、コエンザイムQ10と、カシスポリフェノール(含有量7%)と、アイブライトエキスと、水溶性食物繊維(難消化性デキストリン)と、ラクトフェリンと、寒天と、マルチトールとの各成分を、リボンミキサに投入し、乾式攪拌により、各上記成分を混合して、粉体状の食品組成物を得た。
【0063】
この食品組成物の各上記成分の含有割合は、次のとおりである。ルテイン:1.32重量%、トコトリエノール:0.008重量%、コエンザイムQ10:0.1重量%、カシスポリフェノール:5.72重量%、アイブライトエキス:1.0重量%、水溶性食物繊維:27.0重量%、ラクトフェリン:10.0重量%、寒天:5.0重量%。マルチトールの含有割合は、残余の割合とした。
【0064】
こうして得られた食品組成物では、60℃で24時間加熱後においても、ルテインが分解しなかった。
製造例4
製造例1〜3で得られた粉体状の食品組成物を、噴霧造粒機に投入し、水をバインダとして顆粒状に加熱成形した。この成形時の加熱温度は、50℃以下とした。
【0065】
さらに、上記加熱成形により得られた顆粒に対し、グリセリン脂肪酸エステルを5.0重量%の割合で添加し、ゼラチン製の可食性皮膜からなるハードカプセルに充填し、ハードカプセル剤を得た。
また、上記加熱成形により得られた顆粒に対し、グリセリン脂肪酸エステルを5.0重量%の割合で添加し、打錠機にて錠剤に成型した。
【0066】
こうして得られた顆粒、ハードカプセル剤および錠剤は、いずれも、ルテイン類が安定して含有されていた。
なお、上記錠剤に対する比較製造例として、トコトリエノールを配合せずに錠剤(コート層を有する二層錠)を成型し、その二層錠でのルテイン類の分解の程度を確認した。すなわち、トコトリエノールを配合しなかったこと以外は、製造例1〜3と同様の組成を有する食品組成物を調製し、この食品組成物を、上記と同様の条件で加熱成形して、顆粒を調製し、さらに、得られた顆粒を打錠機にて錠剤(二層錠)に成型した。打錠時には、錠剤の外表面に、シェラック(天然樹脂)からなるコーティング層が形成されるように調整した。
【0067】
その結果、食品組成物は、打錠後に、シェラックからなるコーティング層で覆われているものの、打錠前に、空気中に晒され、しかも、顆粒の成型時に加熱されていることから、ルテイン類の分解を防止することができなかった。
製造例5
ルテインエステルと、トコトリエノールと、コエンザイムQ10と、カシスポリフェノールと、アイブライトエキスと、水溶性食物繊維と、ラクトフェリンと、寒天と、グリセリン脂肪酸エステルと、マルチトールとの各成分を、リボンミキサに投入し、乾式攪拌により、各上記成分を混合して、粉体状の食品組成物を得た。
【0068】
この食品組成物の各上記成分の含有割合は、下記のとおりである。
ルテインエステル:1.32重量%、トコトリエノール:0.008重量%、コエンザイムQ10:0.1重量%、カシスポリフェノール:5.72重量%、アイブライトエキス:1.0重量%、水溶性食物繊維:27.0重量%、ラクトフェリン:10.0重量%、寒天:5.0重量%、グリセリン脂肪酸エステル:5.0重量%。マルチトールの含有割合は、残余の割合とした。
【0069】
次いで、上記粉体状の食品組成物を、非加熱の状態のままで、打錠機にて錠剤に成型した。
本発明は、以上の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲において、種々の設計変更を施すことが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてのルテイン類と、前記ルテイン類の分解を防止するためのトコトリエノールとを含み、前記トコトリエノールを、前記ルテイン類100重量部に対し、0.075〜7.5重量部含有することを特徴とする、食品組成物。
【請求項2】
さらに、前記ルテイン類の変色を防止するためのコエンザイムQ10を含有することを特徴とする、請求項1に記載の食品組成物。
【請求項3】
前記コエンザイムQ10を、前記ルテイン類100重量部に対し、0.5〜20重量部含有することを特徴とする、請求項2に記載の食品組成物。
【請求項4】
顆粒、錠剤またはハードカプセル剤であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の食品組成物。

【公開番号】特開2008−61528(P2008−61528A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240512(P2006−240512)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(506301232)
【Fターム(参考)】