説明

食肉スライサー及び食肉スライス方法

【課題】チルド状態の食肉をスライスする際に一回にスライスされる量の均一化を図るとともに連続したスライス作業が可能な作業効率のよい食肉スライサーおよび食肉スライス方法を提供する。
【解決手段】底部コンベア2と上部コンベヤ3及び左右一対の側部コンベア4,4とによって断面が四角形の食肉移送空間5が形成された肉箱1の食肉移送空間5の出口付近における断面積が、食肉移送空間5内に食肉が充満された状態で一回にスライスされるスライス肉片がトレーへの盛付けの単位量になるように設定されるとともに、肉箱1の始端部側には底部コンベヤ2と側部コンベヤ4,4とが延長されて上部コンベヤ3の無い樋状の食肉供給空間6が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食肉スライサーに関し、詳しくはチルド状態の比較的柔らかい食肉をスライスする際、一回にスライスされる量を均一化して販売用のトレーへの盛付を容易にするための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、食品が載置される下側コンベヤと食品の上面に接する上側コンベヤとからなる供給コンベヤと、送込まれる食品の側面に接する左右案内板が前下がり状に設けられていて、これらによって送り出される食品の前端が回転する刃物により切断される食品スライサーが開示されている。
この食品スライサーにおいて、下側コンベヤ上に載置される食品は左右案内板により規制されるが上側コンベヤは食品の上面に接して上下に移動可能に支持されているので食品は供給された原形のままでスライスされるので一回にスライスされる量は均一ではない。
【0003】
特許文献2には、ブロック肉などの食品を開閉動作する分割型からなる成形部で所定形状に成形してから徐々に押出し押出された食品を刃物によってスライスする食品スライサーが開示されている。
この食品スライサーにおいては、所定の形状に成形されてからスライスされるので一回にスライスされる量は均一化される。
【0004】
特許文献3にはハムなどの原木を両側から挟持するベルトを直交する方向にも設けて、周囲4箇所で挟持して搬送する供給装置が開示されている。
しかしながら上記の特許文献2及び特許文献3に記載されたスライサーにおいては、連続したスライス作業でなく食品のブロック単位毎の反復処理となるので能率的でなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−300285号公報
【特許文献2】特開2009−172683号公報
【特許文献3】実公平5−21346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、チルド状態の比較的柔らかい食肉をスライスする際、一回にスライスされる量の均一化を図るとともに連続したスライス作業が可能な作業効率のよい食肉スライサーおよび食肉スライス方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明の食肉スライサーは、底部コンベアと上部コンベヤ及び左右一対の側部コンベアとによって包囲された断面が四角形の食肉移送空間が形成された肉箱と、肉箱の出口から所定量ずつ送り出される食肉をスライスする刃物とを具備した食肉スライサーにおいて、
少なくとも、肉箱の出口付近における食肉移送空間内には食肉が充満された状態で一回にスライスされるスライス肉片がトレーへの盛付けの単位量になるように食肉移送空間の断面積が設定されるとともに、肉箱の始端部側には底部コンベヤと左右の側部コンベヤとが延長されて上部コンベヤの無い樋状の食肉供給空間が形成されている。
【0008】
又、上部コンベヤ及び側部コンベヤの始端部には食肉移送方向に対する迎角を有して食肉の誘導面が形成されていること、肉箱における上部コンベヤの始端部近くには、食肉供給空間の前面を塞ぐ開閉自在のシャッターが設けられていることが好ましい。
【0009】
更には、刃物による切削部付近の下方位置であって、肉箱の出口に対向する位置には、出口の幅に適合する幅を有したトレーを移送する移送部材を備えて、所定のスライス回数毎にスライス肉片をトレーに投入して外部へ送り出すように構成することが好ましく、更には、始端部がスライス肉片の取り出し口に臨むように進出させて、スライス肉片をコンベヤ上に直接受け取る搬出コンベヤを出退可能に設けて、トレー移送部材と選択的に使用可能とすることが好ましい。
【0010】
これらの食肉スライサーを使用し、食肉供給空間内に複数の食肉を相互に接触させるとともに底部コンベヤ及び左右の側部コンベヤにも接触させて詰め込み、尚且つ上部コンベヤの始端部付近においては上部コンベヤにも接触させた状態で食肉移送空間に送り込みながら、複数の食肉を同時にスライスしてコマギレ肉を得るようにした食肉スライス方法とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る食肉スライサーは、底部コンベアと上部コンベヤ及び左右一対の側部コンベアとによって包囲された断面が四角形の食肉移送空間が形成された肉箱を備えており、肉箱の出口付近における食肉移送空間内には食肉が充満された状態で一回にスライスされるスライス肉片がトレーへの盛付けの単位量になるように食肉移送空間の断面積が設定されるとともに、肉箱の始端部側には底部コンベヤと左右の側部コンベヤとが延長されて上部コンベヤの無い樋状の食肉供給空間が形成されているので、食肉供給空間で各コンベヤに接触するように詰込まれた食肉はそのまま各コンベヤで食肉移送空間から送り出され肉箱の出口でスライスされるので一回にスライスされる量が均一化される。又、スライス作業中であっても食肉供給空間へ順次、食肉の詰込みができるのでの連続作業が可能である。
【0012】
上部コンベヤ又は側部コンベヤの始端部には食肉移送方向に対する迎角を有して食肉の誘導面が形成されているので複数の食肉が圧縮されながらスムーズに誘導され移送される。
【0013】
又、肉箱における上部コンベヤの始端部近くには、食肉供給空間の前面を塞ぐシャッターが開閉自在に設けられているので、作業開始時には、シャッターで塞いだ状態で、食肉をシャッターに当接させるように詰込み後、シャッターを退去させてから食肉移送空間を経て出口まで移送すれば食肉の先端面が平面となっているので、切り始めから歩留まりの良いスライス作業が効率よく行える。
【0014】
刃物による切削部付近の下方位置であって、肉箱の出口に対向する位置には、出口の幅に適合する幅を有したトレーを移送する移送部材を備えて、所定のスライス回数毎にスライス肉片をトレーに投入して外部へ送り出すようにすれば、スライス肉片が均一に盛付けられたトレーが連続して得られる。
また、始端部がスライス肉片の送り出し部に臨むように進出させて、スライス肉片をコンベヤ上に直接受け取り機外に搬出する搬出コンベヤを出退可能に設けて、トレー移送部材と選択的に使用可能とすれば作業適応範囲が拡大する。
【0015】
更には、このような食肉スライサーを使用し、食肉供給空間内に複数の食肉を相互に接触させるとともに底部コンベヤ及び左右の側部コンベヤにも接触させて詰め込み、尚且つ、上部コンベヤの始端部付近においては上部コンベヤにも接触させた状態で食肉移送空間に送り込みながら、複数の食肉を同時にスライスしてコマギレ肉を得るようすれば、一回にスライスされる量が均一なコマギレ肉のスライス作業を連続して行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る食肉スライサーの主要部を示す一部を断面した側面図である。
【図2】肉箱における食肉移送空間の縦断面と、肉箱とトレーとの関係位置を示す正面図である。
【図3】肉箱の要部のみを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明を実施するための形態について説明する。図1はスライス肉の受取部材を備えた食肉スライサーの一実施例における主要部を示す一部を断面した側面図である。
本発明に係る食肉スライサーの基本的な構成については限定されないが、本実施例の食肉スライサーにおける肉箱1には、出口側に(図1における右側)に底部コンベヤ2と上部コンベヤ3及び左右一対の側部コンベヤ4,4とによって包囲された図2に示す断面が四角形の食肉移送空間5が肉箱1の出口まで延設されている。
又、肉箱1の始端部側(図1における左側)には、底部コンベヤ2と左右の側部コンベヤ4,4が後方(図1における左方向)に向けて適当量だけ延長されて上部コンベヤ3が無い底部コンベヤ2と左右の側部コンベヤ4,4とによって樋状の食肉供給空間6が形成される。
【0018】
肉箱1の始端部側に形成された食肉供給空間6の左右から突設させた支持軸7,7は、機台8の後方(図1の左側方)上部に設けられた左右一対の軸受9、9に嵌合しており、肉箱1は支持軸7、7を中心として水平位置を含む所定範囲内で往復揺動できるように支持されている。
この肉箱1は、本実施例のように往復揺動されるものに限定されるものでなく適宜ガイドに規制されて刃物に対して直線的に往復移動させるようにしてもよい。
又、肉箱1が刃物に対して相対移動されることで食肉がスライスされるが、本実施例と異なり回転刃のように刃物を移動させれば肉箱1は固定されるが、この場合に肉箱1は水平姿勢から45度までの範囲内の前傾姿勢とすることが好ましく、いずれの場合においても、肉箱1が水平位置付近から45度までの範囲内に位置されれば食肉供給空間6への食肉の詰込み作業が行い易く又、人手による食肉の詰込み作業に適する地上からの高さ寸法を80cm程度に設定すれば適度のスライス肉片の受取位置の高さ寸法が得られるので以降の工程との連係が容易となる。
【0019】
肉箱1の底部には食肉供給空間6の送り出し始端部から肉箱1の出口までに亘って底部コンベヤ2が食肉の移送方向に沿うように張設されている。この底部コンベヤ2は、本実施例においては、ベルトコンベヤを用いているがチェーンなどの無端帯であってもよい。
【0020】
底部コンベヤ2を構成する表面に適宜な送り出し用の突起を有したコンベヤベルトは、周回可能に底部ローラー10、11に掛け回されており、送り出し始端側の底部ローラー10には、適宜な伝導機構を介して図示しないサーボモーターが接続されて送り込み方向(刃物側)に向けて駆動されるように構成されている。
【0021】
図1における右方が肉箱1の出口側になるが、出口側の上部には、底部コンベヤ2と対向して上部コンベヤ3が設けられている。
この上部コンベヤ3の始端部は、適宜上方に向かって持ち上げられて移送方向に対する迎角を付与され、食肉が詰め込まれ易いように傾斜を有した誘導面とされる。
この誘導面を過ぎると上部コンベヤ3の下面は図1に示されるように肉箱1の出口に至るまで底部コンベヤ2の上面と略平行状態を維持しながら、左右に対向して設けられた一対の側部コンベヤ4,4とによって包囲された断面が四角形の食肉移送空間5を形成する。
この上部コンベヤ3は、上部ローラー12,13に掛け回された表面に適宜な突起を有したコンベヤベルトからなり、ローラー12は底部コンベヤ2に連結されているサーボモーターから適宜の伝導機構を介して駆動され底部コンベヤ2と上部コンベヤ3とは、同調して走行するよう連結されている。
【0022】
このように構成された上部コンベヤ3は、図2に示されるように底部コンベヤ2の上面と左右の側部コンベヤ4,4とによって包囲された断面が四角形の食肉移送空間5を形成して所定位置に固定される。
また、図示は省略するが上部コンベヤ3を送り機能を有しない単なる押圧部材に交換可能に構成し、上下方向に可動自在に支架させ、少なくとも肉箱から送出された食肉が刃物でスライスされる間は、食肉の上面を押圧する従来のスライサーのように構成すれば、一回に切り出されるスライス肉片は定量化されないが、高さ寸法が変動する単一の食肉塊であっても従来通りにスライスすることが可能となる。
【0023】
肉箱1の左右両側には、送り出し方向に沿って、側部コンベヤ4,4が対向して立設される。この側部コンベヤ4,4は、肉箱1の両側位置で底部コンベヤ2と同様に送り出し始端部から出口まで延長して張設され底部コンベヤ2と同調して走行し食肉を所定量ずつ送り出す。
底部コンベヤ2の上面と上部コンベヤ3の下面と左右側部コンベヤ4,4の対向面とによって包囲されて形成される図2に示す四角形の断面形状は、肉箱1の出口から所定の区間は遡って維持されるように構成される。
【0024】
肉箱1の出口付近における食肉移送空間5の断面積は、一回にスライスされるスライス肉片が販売用のトレーへの盛付けの単位量となるよう設定される。即ち、少なくとも肉箱1の出口付近における食肉移送空間5内には食肉が詰込まれた充満状態であって、この肉箱1の出口付近における食肉移送空間5の断面積(食肉が移送される方向に直交した縦断面の面積)がそのまま食肉の切断面積となるとして、この断面積にスライス厚みと経験的な見かけの比重を乗じて得られる一回にスライスされるスライス肉片の重量が、販売用のトレーへの盛付の単位量となるように食肉移送空間5の断面形状の四角形の各辺の長さ寸法が決定される。
この場合、食肉移送空間5への食肉の詰め込み度合、即ち、充填率は100%とはならないので断面形状の寸法を適宜補正する。
【0025】
比較的生産量が多いチルド状態の、豚のモモ肉のコマギレ肉の、販売用のトレーへの盛付であれば、通常スライス厚みは2mm程度で、一個のトレーへ盛付けられる量は100〜400gの範囲内であって50g単位で盛付けられる。
例えば、肉箱1の出口付近における食肉移送空間5の四角形の寸法を145mm×150mmとしスライス厚みを2.3mmに設定すれば、食肉の見かけの比重が1.0として一回にスライスされるスライス肉片の重量は略50gとなり、これがトレーへの盛付けの単位量となる。従って所望の盛付量を得るにはこの単位量をもとにしてスライス回数で決めればよく200g盛付けとする場合にはスライス4回分を一個のトレー23に投入すれば良い。
実作業においては、食肉の状態、詰込み具合などで一回にスライスされるスライス肉片の量は多少変動するのでスライス厚みを増減して微調整を行うこともある。
【0026】
肉箱1の送り出し始端部(図1における左側)は、前述した通り上部コンベヤ3が無く、底部コンベヤ2の上面と左右の側部コンベヤベルト4,4の対向面とによって上面が開放された断面が四角形の樋状の食肉供給空間6が形成されている。
この食肉供給空間6を形成する左右側部コンベヤ4,4の対抗面は図3に示すように送り出し始端部から移送方向に対する適宜な迎角を有して食肉の誘導移送面が形成され食肉を詰め込み易くすると良い。即ち、食肉移送空間5の巾に対して始端部側を広く構成して、始端部位置で緩く詰込まれた食肉であっても漸次圧縮されながら食肉移送空間5まで移送されるようにする。
【0027】
肉箱1における上部コンベヤ3の始端部近くには、食肉供給空間6の前面を塞ぐシャッター14が開閉自在に設けられる。このシャッター14は、詳細は省略するが適宜の開閉手段で食肉供給空間6の前面を塞ぐ状態と開放状態とに切り替えができるように開閉自在に構成する。
本実施例においてはシャッター14にハンドルを延設して手動で着脱自在としており、食肉供給空間6内に多数の食肉が詰込まれると取り外して食肉供給空間6の前面を開放状態にする。このシャッター14は、本実施例のような着脱式にしないで肉箱1に取り付けられたエアーシリンダーなどに支持されて開閉されるように構成すると便利である。
【0028】
肉箱1の出口には、受刃枠15が取り付けられる。受刃枠15は、食肉移送空間5の出口を囲む額縁状の枠体で肉箱1の出口に固着される。この受刃枠15の先端面は肉箱1の揺動中心を中心とする円弧状に形成され、内壁面側には底部コンベヤ2、左右の側部コンベヤ4,4及び上部コンベヤ3の先端部が入り込んで食肉移送空間5が延長された構成とされている。
本実施例においては、肉箱1を単列構成としているが2列以上の複数列に構成することも可能であり、増加された分だけ処理能力は増大する。
【0029】
肉箱1は、機台8の底部に据え付けられた減速機付モーター16を駆動することによってクランク装置17を介して水平位置を含む所定範囲内を往復揺動される。図1において実線表示の揺動始端位置から図示しないが上方の終端位置まで揺動する間において肉箱1から送り出された食肉の先端部が後述する刃物によってスライスされる。
【0030】
刃物は、肉箱1の受刃枠15の円弧状先端面に刃先を近接させたバンドナイフ18であり、詳細は図示しないが機台8の両側に設けられたプーリー19に掛け回されて周回している。
肉箱1の出口に設けられた受刃枠15の先端面に沿うように曲板からなる当て板20が所定の距離をおいて設けられ、バンドナイフ18の刃先にその上端面が対向している。
刃物はバンドナイフに限定されるものでなく鉈刃を使った回転刃でもよいがその場合には前述したように肉箱1は固定される。
【0031】
当て板20は、肉箱1の出口から送り出される食肉の先端面を受ける。肉箱1の出口側が上方に揺動することによって食肉の先端面は、当て板20に沿って上昇移動しながらバンドナイフ18の刃先によってスライスされる。バンドナイフ18に対する当て板20の位置を調整することによってスライス厚みが調整できる。
【0032】
次に切り出されるスライス肉片の受取る回転体21について説明する。
バンドナイフ18による切削部付近に接近して回転しながら周面でスライス肉片を受取る回転体21が配設される。この回転体21は、外周面が平滑な円柱状の部材であり、少なくとも肉箱1の出口の幅寸法(食肉移送空間5の内幅と同じ)を有し、回転体駆動用サーボモーター(図示なし)に連結されて、肉箱1の先端移動速度に関連して反対方向に回転し、切り出されるスライス肉片をその外周面に付着させて受取って剥ぎ取り位置まで移送する。
【0033】
スライス肉片は、食肉から刃物で切り離される前に回転体21の外周面に付着した状態で切り出されるので、バンドナイフ18によって引かれても乱れ難い。そして、肉箱1から送り出されたままの幅寸法を保ちながら、バンドナイフ18の走行する方向に若干ずれた状態で、回転体21で受け取られ、回転体21と接蝕して同方向に回転するように設けた剥離ローラー22で剥がれて下方位置に待機している肉箱1の出口の幅に適合する幅を有したトレー23内に投入されて機外に搬出される。肉箱1の出口において切削されたスライス肉片は、略その幅寸法を保って回転体21によって移送されてくるので、これを確実に受取るには、このトレー23は肉箱1の出口の幅と同等若しくは若干大きめの幅を有することが必要である。そしてトレー23が待機する位置は肉箱1の出口に対して刃物の走行方向に若干ずれた位置に設定される。
トレー23を切削部付近の下方位置まで移送する移送部材24は、詳細は記載しないが所望するスライス回数毎にトレー23が肉箱1の送り出し方向と直交する方向に移送されるように適宜構成される。
【0034】
25はスライス肉片の搬出コンベヤであって、この搬出コンベヤ25は肉箱1の送り出し方向に沿って走行するように延設されて、スライス肉片をトレー23で受け取る作業中においては、図1の実線表示の退去位置に置かれているが、スライス肉片を直接トレーに投入しない場合には、図1に示す仮想線での表示状態のように、搬出コンベヤ25の送り出し始端部をスライス肉片の送り出し部に臨むように進出させて、回転体21によって移送されたスライス肉片を、コンベヤ上に直接受け取り機外に搬出できるように構成されている。
この場合においても、コンベヤ上に受取られるスライス肉片は、一回にスライスされるスライス肉片を単位として区切られて搬出することが可能で以降の工程において都合が良い。
また、上部コンベヤ3または、前述したように上部コンベヤ3に代えて送り機能を有しない単なる押圧部材を、上下方向に可動自在に支架させ、少なくとも肉箱から送出された食肉が刃物でスライスされる間は、食肉の上面を押圧するように構成して、高さ寸法が変動する単一の食肉塊をスライスするときにおいても、直接トレーで受けないで一旦搬出コンベヤ25で受けてから適宜処理することができる。
【0035】
このように構成された食肉スライサーを使用して、複数の食肉を相互に接触せるとともに食肉移送空間5を形成する各コンベヤにも接触させた状態で詰め込み、複数の食肉を同時にスライスするコマギレ肉のスライス方法について述べる。
先ずシャッター14を取り付けて食肉供給空間6の前面を塞ぎ、食肉供給空間6内に複数の食肉を相互に接触させ極力隙間のないよう周囲の各コンベヤとシャッター14にも接触させて詰込む。この場合、左右の側部コンベヤ4,4の高さ寸法を目安として、少なくとも上部コンベヤ3の下面に接触する高さまで詰め込む。ついで、シャッター14を取り外して食肉供給空間6の前面を開放し、上、底、左右両側全てのコンベヤ2、3、4,4を同時に走行させて詰込まれた複数の食肉の前端面が当て板20に当接するまで食肉移送空間5内を経て送り込み、続いてスライス作業に移る。
【0036】
本実施例においては、先に供給された食肉のスライス作業中であっても、途切れないように次々と食肉供給空間6内への食肉の詰込み作業を並行して行うことができるので、連続作業が可能であり、特許文献2及び3に見られる従来の成形食肉のスライサーのような成形された食肉毎にスライス作業を中断しての断続作業でないので効率よく作業ができる。
特に、本実施例においては、食肉供給空間6が肉箱1の揺動中心付近に位置するので運転中であっても動きが少なく食肉の詰込み作業が容易に行える。
【0037】
この食肉スライサーを使用すれば、複数の食肉を組み合わせて詰込み同時にスライスして得られるコマギレ肉のスライス方法において、先行する食肉がスライスされている時間内に、食肉供給空間6に複数の食肉を極力隙間が発生しないように相互に接触させて詰込み、上部、底部、両側部コンベヤで四方が囲われた食肉移送空間5内に食肉を充満させて肉箱1の出口まで確実に移送しスライスすることで一回に切出されるスライス肉片量の均一化が図れる。
また、当て板20の位置を調節して設定されるスライス厚み寸法と食肉移送空間5の断面積とから一回にスライスされる重量が算出可能であって、スライス回数を単位としたスライス肉片の所望する定量取出しが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1.肉箱
2.上部コンベヤ
3.底部コンベヤ
4.側部コンベヤ
5.食肉移送空間
6.食肉供給空間
8.機台
14.シャッター
20.当て板
21.回転体
23.トレー
24.トレーの移送部材
25.搬出コンベヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部コンベアと上部コンベヤ及び左右一対の側部コンベアとによって包囲された断面が四角形の食肉移送空間が形成された肉箱と、肉箱の出口から所定量ずつ送り出される食肉をスライスする刃物とを具備した食肉スライサーにおいて、
少なくとも、肉箱の出口付近における食肉移送空間内には食肉が充満された状態で一回にスライスされるスライス肉片がトレーへの盛付けの単位量になるように食肉移送空間の断面積が設定されるとともに、肉箱の始端部側には底部コンベヤと左右の側部コンベヤとが延長されて上部コンベヤの無い樋状の食肉供給空間が形成されている食肉スライサー。
【請求項2】
上部コンベヤ又は側部コンベヤの始端部には食肉移送方向に対する迎角を有して食肉の誘導面が形成されている請求項1に記載の食肉スライサー。
【請求項3】
肉箱における上部コンベヤの始端部近くには、食肉供給空間の前面を塞ぐ開閉自在のシャッターが設けられている請求項1又は請求項2に記載の食肉スライサー。
【請求項4】
刃物による切削部付近の下方位置であって、肉箱の出口に対向する位置には、出口の幅に適合する幅を有したトレーを移送する移送部材を備えて、所定のスライス回数毎にスライス肉片をトレーに投入して外部へ送り出すようにした請求項1から請求項3のいずれかに記載の食肉スライサー。
【請求項5】
始端部がスライス肉片の送り出し部に臨むように進出させて、スライス肉片をコンベヤ上に直接受け取る搬出コンベヤを出退可能に設けて、トレー移送部材と選択的に使用可能とした請求項4に記載の食肉スライサー。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の食肉スライサーを使用し、食肉供給空間内に複数の食肉を相互に接触させるとともに底部コンベヤ及び左右の側部コンベヤにも接触させて詰め込み、尚且つ上部コンベヤの始端部付近においては上部コンベヤにも接触させた状態で食肉移送空間へ送り込みながら、複数の食肉を同時にスライスしてコマギレ肉を得るようにした食肉スライス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−232399(P2012−232399A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115198(P2011−115198)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000152815)株式会社日本キャリア工業 (61)