説明

飲料供給バルブ

【課題】飲料容器からの飲料の抽出を安定的、且つ、円滑に抽出できる飲料供給バルブを提供する。
【解決手段】飲料供給バルブ1は、ペットボトルPの口部Dに取り付けられて内部がペットボトル内に連通する本体2と、ペットボトルの口部が下向きに開放された状態において本体下部に位置する保持部3と、保持部に上下移動自在に保持され、下端に形成された開口18、19と開口に連通して側面に形成された第1及び第2の連通口21、22とを有する抽出部材4を備える。抽出部材4が降下した状態で、第1及び第2の連通口は閉塞され、抽出部材4が上昇した状態で、第1及び第2の連通口は本体2内に開放されると共に、第1の連通口21は第2の連通口22よりも上に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットボトルや瓶、紙パックや樽などの飲料容器の口部に取り付けられて飲料の抽出を制御するための飲料供給バルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりペットボトル入り飲料などを抽出する場合、当該ペットボトルなどの飲料容器の口部にバルブを取り付け、飲料容器を倒立させた状態で、手動にてこのバルブを開閉することにより、飲料容器内の飲料を抽出する方法が採られている(例えば、特許文献1又は特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−126649号公報
【特許文献2】特開2003−221099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、係る飲料容器から飲料を抽出する場合には、口部から飲料容器内に空気を流入させなければ飲料容器内の飲料は出てこない。しかしながら、前述した従来のバルブでは飲料が流下する経路と同じ経路で空気が飲料容器内に流入する構造であったため、流下する飲料と上昇する空気(気泡)とがバルブ内で衝突するかたちとなり、抽出が不安定となり、円滑な抽出ができなくなる問題があった。
【0004】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、飲料容器からの飲料の抽出を安定的、且つ、円滑に抽出できる飲料供給バルブを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の飲料供給バルブは、飲料容器の口部に設けられて当該口部からの飲料の抽出を制御するものであって、飲料容器の口部に取り付けられて内部が当該飲料容器内に連通する本体と、飲料容器の口部が下向きに開放された状態において本体下部に位置する保持部と、この保持部に上下移動自在に保持され、下端に形成された開口とこの開口に連通して側面に形成された第1及び第2の連通口とを有する抽出部材とを備え、この抽出部材が降下した状態で、第1及び第2の連通口は閉塞され、抽出部材が上昇した状態で、第1及び第2の連通口は本体内に開放されると共に、第1の連通口は第2の連通口よりも上に形成されていることを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明の飲料供給バルブは、上記において抽出部材は、第1の連通口から開口に至る第1の通路と、第2の連通口から開口に至る第2の通路とを仕切る仕切壁を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明の飲料供給バルブは、上記において第2の通路に対応する部分の開口は、第1の通路に対応する部分の開口よりも下方にて開放していることを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明の飲料供給バルブは、上記各発明において抽出部材が上昇していく過程で、第2の連通口は第1の連通口よりも先に本体内に開放されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、飲料容器の口部に設けられて当該口部からの飲料の抽出を制御する飲料供給バルブにおいて、飲料容器の口部に取り付けられて内部が当該飲料容器内に連通する本体と、飲料容器の口部が下向きに開放された状態において本体下部に位置する保持部と、この保持部に上下移動自在に保持され、下端に形成された開口とこの開口に連通して側面に形成された第1及び第2の連通口とを有する抽出部材とを備えており、この抽出部材が降下した状態で、第1及び第2の連通口は閉塞され、抽出部材が上昇した状態で、第1及び第2の連通口は本体内に開放されるようにしたので、抽出部材が降下した状態では第1及び第2の連通口が閉塞されていることで開口から飲料は抽出されずに飲料供給バルブは飲料容器の口部を閉じている。そして、抽出部材を上昇させれば第1及び第2の連通口が本体内に開放されるので、これら連通口と本体内を介して飲料容器内は開口と連通するかたちとなる。
【0010】
このとき、抽出部材の第1の連通口は第2の連通口よりも上に形成されているので、飲料容器から出て本体内に入っている飲料は、ヘッド差により基本的には下方に位置する第2の連通口から出て行き易くなる。そして、その場合空気は上方に位置する第1の連通口から流入し、本体内を経て飲料容器内に流入するようになる。これにより、空気は抽出部材の開口から第1の連通口を通り、本体内を経て飲料容器内に流入し、飲料容器内の飲料は本体内を経て第2の連通口より出て開口から抽出されることになる。
【0011】
また、第1の連通口から飲料が出始めた場合でも、飲料は当該第1の連通口を経て開口から抽出され、空気は開口から第2の連通口を通り、本体内に流入することになる。何れにしても、本発明によれば、飲料容器から飲料が抽出される経路と、飲料容器に空気が流入する経路を、第2の連通口と第1の連通口の何れかに分けることができるようになり、空気を円滑に飲料容器内に流入させて、飲料を安定的、且つ、円滑に抽出することができるようになるものである。
【0012】
また、請求項2の発明によれば、上記に加えて抽出部材は、第1の連通口から開口に至る第1の通路と、第2の連通口から開口に至る第2の通路とを仕切る仕切壁を備えているので、抽出される飲料と流入する空気が抽出部材内で衝突する不都合も無くなり、抽出が一層円滑化されるものである。
【0013】
また、請求項3の発明によれば、上記に加えて第2の通路に対応する部分の開口を、第1の通路に対応する部分の開口よりも下方にて開放させたので、第2の通路を経て当該第2の通路に対応する部分の開口より抽出される飲料が、第1の通路に対応する部分の開口を塞いでしまう不都合を防止することができるようになり、第1の通路に対応する部分の開口から空気を円滑に流入させて、安定的に飲料を抽出することができるようになるものである。
【0014】
また、請求項4の発明によれば、上記各発明に加えて抽出部材が上昇していく過程で、第2の連通口が第1の連通口よりも先に本体内に開放されるようにしたので、ヘッド差により飲料が流出し易い位置にある第2の連通口を第1の連通口より先に本体内に連通させ、本体内にある飲料を最初から第2の連通口より流出させることができるようになる。これにより、第1の連通口から飲料が流出する現象を防止若しくは抑制して、第2の連通口より飲料が流出し、第1の連通口より空気が流入する状態を確実に構成し、より安定した抽出を実現することができるようになるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を詳述する。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明の一実施例の飲料供給バルブ1をペットボトルPに取り付け、当該ペットボトルを倒立させた状態の斜視図、図2は同側面図、図3は図1及び図2の飲料供給バルブ1の縦断側面図をそれぞれ示している。
【0017】
各図において、Pはコーラなどの炭酸飲料、或いは、ミネラルウォーターやお茶、ジュースなどの無炭酸飲料が収容されたペットボトルであり、この実施例では飲料容器の一例としてこのペットボトルPを用いて本発明を説明する。ペットボトルPは周知の如く起立状態で上端に位置する口部Dを備えており、この口部Dの開放端より少許下方には、外側に張り出した鍔部Lが一体に形成されている。尚、この口部Dは当初図示しないキャップにて閉塞されており、以下に説明する飲料供給バルブ1を取り付ける際にキャップは取り外されて口部Dは開放される。
【0018】
そして、本発明の飲料供給バルブ1は、例えばステンレス製の本体2と、この本体2の下部に位置する下壁2Aに穿設された保持部3に上下移動自在に保持されたステンレス製抽出部材4と、この抽出部材4を上下移動させるための操作レバー6などから構成されている。本体2は上面の略全域が開放し、下壁2Aの下面が前記保持部3にて開放した内部中空の円柱状を呈しており、上面は、ねじ込み接続された蓋部7(本体2の一部を構成する)にて閉塞されている。8はこの蓋部7と本体2の上縁間をシールするためのパッキンである。また、蓋部7の中央には上方に突出して開放する接続部9が形成されており、この接続部9から外側に張り出した鍔部9Aより先端側の周囲にはパッキン11が取り付けられている。
【0019】
一方、抽出部材4は本体2よりも細い円柱状を呈しており、その外径寸法は本体2の保持部3内面に密接し、且つ、摺動自在に挿入可能な値とされている。抽出部材4には軸方向に第1の通路12と第2の通路13が貫通して穿設されており、各通路12、13間は仕切壁14にて仕切られている。また、抽出部材4の上端には上面平坦な閉塞部16(抽出部材4の一部を構成する)がネジ込み接続されており、これによって、両通路12、13の上端は閉塞されている。尚、17は閉塞部16と通路12、13の上縁間をシールするパッキンである。
【0020】
また、第1の通路12下端の開口18(第1の通路に対応する部分の開口)と第2の通路13下端の開口19(第2の通路に対応する部分の開口)には位置に上下の差が付けられており、開口19の方が開口18よりも下方にて開放している。更に、抽出部材4の側面には第1の連通口21と第2の連通口22が形成されており、第1の連通口21は第1の通路12に対応して連通し、第2の連通口22は第2の通路13に対応して連通している。即ち、第1の連通口21は第1の通路12を介して開口18に連通しており、第2の連通口22は第2の通路13を介して開口19に連通している。
【0021】
そして、本発明では第1の連通口21は第2の連通口22よりも上に位置して形成されている。実施例では両連通口21、22は同一寸法の孔(丸孔)とされ、第1の連通口21の上縁が第2の連通口22の上縁より上に位置し、第1の連通口21の下縁も第2の連通口22の下縁より上に位置している。即ち、第1の連通口21の中心が第2の連通口22の中心より上にある。
【0022】
また、閉塞部16の下端は第1の連通口21の少許上側まで降下しており、その下端にはパッキン23が取り付けられている。抽出部材4は本体2の保持部3に上下移動自在に保持され、且つ、降下した状態で、閉塞部16を含む上部は本体2内に位置し、開口18、19を含む下部は本体2より下方に突出している。また、両連通口21、22は本体2の保持部3の内面に位置しており、保持部3によって閉塞されている。更に、パッキン23は保持部3の上端開口周囲の下壁2A上面に当接してシールする(図3)。
【0023】
尚、この実施例では両連通口21、22が保持部3の内面で閉塞される構成としたが、前述の如くパッキン23が保持部3の上端開口周囲をシールする関係上、仮に両連通口21、22が保持部3の内面に密接しておらず、当該内面にて閉塞されない構造であっても、抽出部材4の閉塞部16のパッキン23により、連通口21、22は実質的に閉塞されることになる。即ち、実施例では保持部3とパッキン23の双方で連通口21、22を塞ぐかたちとして閉塞状態を確実に維持している。
【0024】
この状態から抽出部材4が上昇されると、両連通口21、22は保持部3よりも上方に移動して本体2内に開放される。この上昇した状態においても開口18、19を含む抽出部材4の下部は本体2より下方に突出している(図4)。
【0025】
一方、操作レバー6(飲料供給バルブ1の一部を構成する)は本体2の下壁2A外面に形成された括れ部2Bに係合して取り付けられた取付具26の軸26Aに回動自在に取り付けられており、この軸26Aよりも抽出部材4側に延在する係合部6Aが抽出部材4外面に形成された段差部4A下面に係合している。また、軸26Aより抽出部材4から離間する方向に延在した部分は操作部6Bとされ、軸26Aから操作部6Bの先端までの距離は軸26Aから係合部6Aの先端までの距離よりも長く設定されている。
【0026】
以上の構成で、本発明の飲料供給バルブ1をペットボトルPに取り付ける際には、先ず、ペットボトルPを起立させた状態でそのキャップ(図示せず)を取り外し、飲料供給バルブ1の接続部9を下にした状態で口部D内に接続部9及びパッキン11を押し込む。これにより、パッキン11は口部Dの内面に密接してシールすると共に、接続部9はペットボトルP内に開放される。
【0027】
次に、図1、図2に示す締付具28(図3、図4では示さない)により飲料供給バルブ1をペットボトルPに固定する。この場合、締付具28(飲料供給バルブ1の一部を構成する)は接続部9の鍔部9Aの本体2側の面に当接するフランジ29AとペットボトルPの鍔部Lの飲料供給バルブ1側に位置するフランジ29Bを有した締付具本体29と、フランジ29Bに螺合するネジ31、31を有して鍔部Lのフランジ29Bとは反対側の面に当接する押さえ具32とを備えている。そして、ネジ31、31をフランジ29Bにネジ込めば、押さえ具32とフランジ29Aが接続部9の鍔部9AとペットボトルPの鍔部Lとを外側から挟み込む。これにより、飲料供給バルブ1の本体2はペットボトルPの口部Dに着脱自在に取り付けられる。
【0028】
このように飲料供給バルブ1をペットボトルPに取り付けた後、各図に示すようにペットボトルPを倒立させて飲料供給バルブ1を下側とする。ペットボトルPが倒立することで、内部に収容された飲料は本体2内に流入するが、抽出部材4は自重及びペットボトルP内の飲料から閉塞部16が受ける水圧にて降下しており、図3のようにパッキン23は下壁2A上面に密着し、両連通口21、22は保持部3により閉塞されているので、開口18、19は本体2内に連通されず、従って、飲料が飲料供給バルブ1から抽出されることは無い。
【0029】
そして、飲料を抽出する際には、操作レバー6の操作部6Bを押し下げる。操作部6Bが降下することで、係合部6Aは上昇するので、抽出部材4が持ち上げられて上昇する。このとき、抽出部材4には自重並びに飲料からの水圧(炭酸飲料の場合には発泡による上昇した気圧も加わる)により押し下げる方向の力が印加されている。従って、操作レバー6はこの力に抗して押し下げることになるが、前述した如く操作レバー6は、軸26Aから操作部6Bの先端までの距離が軸26Aから係合部6Aの先端までの距離よりも長く設定されているので、梃子の原理で押し下げる際の力は非常に軽くて済む。
【0030】
このように、抽出部材4が上昇すると、図4に示すようにパッキン23が下壁2Aから離間し、各連通口21、22は下壁2A上側に移動するので、両連痛口21、22が本体2内に開放され、両通路12、13とこれら連通口21、22、及び、本体2内を介してペットボトルP内は両開口18、19と連通するかたちとなる。
【0031】
このとき、抽出部材4の第1の連通口21は第2の連通口22よりも上に形成されているので、第1の連通口21が先に本体2内に開放される。そのため、ペットボトルPから出て本体内に入っている飲料は、第1の連通口21から少量出て行く(ペットボトルPからの圧力や水圧によっては出ない場合もある)。しかしながら、ヘッド差により下方に位置する第2の連通口22から飲料は出て行き易くなっているので、第2の連通口22が本体2内に開放した時点で、飲料は下方に位置する第2の連通口22から出て行く状態に切り替わる。一方、外部の空気(大気)はその上方に位置する第1の連通口21から流入し、本体2内を経てペットボトルP内に流入するようになる。
【0032】
これにより、空気は抽出部材4の第1の開口18から第1の通路12を経て第1の連通口21を通り、本体2内を経てペットボトルP内に流入し(図4に破線矢印で示す)、ペットボトルP内の飲料は本体2内を経て第2の連通口22より出て第2の通路13を通り、第2の開口19から抽出されるようになる(図4に実線矢印で示す)。
【0033】
即ち、係る構成によってペットボトルPから飲料が抽出される経路と、ペットボトルPに空気が流入する経路が、第2の連通口22−第2の通路13−第2の開口19(飲料)と、第1の開口18−第1の通路12−第1の連通口21(空気)とに分けられる。従って、流出する飲料と流入する空気とが例えば同一の連通口を通過する場合に比して、空気を第1の開口18−第1の連通口21からペットボトルP内に円滑に流入させ、飲料を第2の連通口22−第2の開口19から安定的、且つ、円滑に抽出することができるようになる。
【0034】
ここで、両連通口21、22を同一の高さの位置に形成した場合、ペットボトルP内の飲料容器の重量や前述した発泡圧による力と大気圧とがバランスしてしまった場合、飲料が連通口21、22の何れからも出てこない状態が発生するが、本発明のように第1の連通口21を第2の連通口22より上に形成することにより両連通口に高低差を設ければ、係るバランス状態を崩すことができるようになる。また、両連通口21、22にヘッド差を付けることができるようになるので、飲料の流出し易さに優先順位が付けられる。そのため、バランスして飲料が流出できなくなることは無い。
【0035】
特に、抽出部材4の第1の通路12と第2の通路13とは仕切壁14にて仕切られているので、抽出される飲料と流入する空気が抽出部材4内で衝突する不都合も無くなり、抽出が一層円滑化される。
【0036】
また、飲料が抽出される第2の開口19と、空気が流入する第1の開口18が同じ高さ、或いは、略同じ高さにあると、第2の開口19から抽出される飲料が表面張力により第1の開口18側に伝って当該開口18から流入する空気の流れを阻害する危険性がある。しかしながら、実施例のように第2の開口19を第1の開口18よりも下方にて開放させれば、第2の通路13を経て第2の開口19より抽出される飲料が、第1の開口18まで上っていくことは無くなるので、開口18を塞いでしまう不都合も防止することができるようになり、第1の開口18から空気を円滑に流入させて、安定的に飲料を抽出することができるようになる。
【0037】
飲料の抽出を終了する場合には、操作レバー6の操作部6Bから手を離せば抽出部材4は自重と飲料からの圧力で降下する。そして、図3の状態に復帰し、両連通口21、22が保持部3にて閉塞され、パッキン23が下壁2A上面に密着するので、飲料の抽出は停止する。
【0038】
尚、この実施例では抽出部材4が上昇する過程で先に第1の連通口21が本体2内に開放するかたちとなるため、前述した如く第1の連通口21から先に本体2内の飲料が少量出始める。そして、場合によっては第2の連通口22が本体2内に開放してからも第1の連通口21から引き続き飲料が流出する状態が継続されることがある。その場合には第2の開口19を経て連通口22から空気が流入し、飲料は第1の連通口21から出て第1の開口18より抽出されるかたちとなる。
【0039】
何れにしても本発明によれば飲料が抽出される経路と空気が流入する経路が分けられるかたちとなるため、ペットボトルPに空気を円滑に流入させて、飲料を円滑に抽出することができるようになる。
【実施例2】
【0040】
次に図5乃至図7を参照して本発明の他の実施例を説明する。前記実施例の如く第1の連通口21を第2の連通口22より上に形成してヘッド差を付けた場合、抽出部材4を上昇させていく過程で第1の連通口21が先に本体2内に開放されることになる。即ち、第1の連通口21の上縁が第2の連通口22の上縁よりも先に下壁2A上面上に出るので、前述した如く第1の連通口21から先に飲料が少量ながら流出し始める。係る場合でも、やがては第2の連通口22が本体2内に開放されたときに第2の連通口22から飲料が流出するように切り替わるが、飲料は最初に出始めた方から出易くなるので、前述した如く場合によっては第1の連通口21から引き続き飲料が流出し、第2の連通口22から空気が流入する状態となる。即ち、前記実施例では基本的には第2の開口19から飲料が出るものの、第1の開口18から出る場合もあると云うことになる。
【0041】
これを防止した構造を図5乃至図7に示す。尚、各図において図1乃至図4と同一符号は同一若しくは同様の機能を奏するものとする。この場合、本体2の保持部3内面には、抽出部材4が降下した状態において第2の連通口22の上方に対応する位置に、下壁2A上面まで斜めに上昇する切込34が形成されている。そして、抽出部材4が降下した状態において、この切込34の下端から第2の連通口22の上縁までの距離は、下壁2A上面から第1の連通口21の上縁までの距離よりも小さく設定されている。また、パッキン23はこの切込34の外側にて下壁2A上面に密着するように構成されている。
【0042】
以上の構成で、抽出部材4が降下した状態で、前述の実施例同様に両連通口21、22が保持部3の内面に位置して閉塞されているので、飲料は抽出されない。尚、前述したようにパッキン23が切込34外側の下壁2A上面に密着することで両連通口21、22は実質的に閉塞されるので、図5の状態で第2の連通口22は切込34にラップし、当該切込34に連通していても差し支えない。但し、この実施例の場合には第1の連通口21は必ず保持部3の内面にて閉塞されている必要がある。
【0043】
その状態で操作レバー6の操作部6Bを押し下げ、抽出部材4を上昇させていくと、第1の連通口21の上縁が下壁2A上面に出るより早く、第2の連通口22の上縁が切込34に至り、第1の連通口21よりも早く、第2の連通口22がこの切込34を介して本体2内に連通するようになる。そのため、飲料は最初からこの第2の連通口22より流出することになる(図6に実線矢印で示す)。
【0044】
そして、更に抽出部材4が上昇すると、次に第1の連通口21の上縁が下壁2A上面に出るので、その時点以降空気が前述の実施例同様に第1の連通口21から本体2を経てペットボトルP内に流入するようになる(図7に破線矢印で示す)。以後はこの状態が継続されることになる。
【0045】
このように、この場合には抽出部材4が上昇していく過程で、第2の連通口22が第1の連通口21よりも先に本体2内に開放されるので、ヘッド差により飲料が流出し易い位置にある第2の連通口22を第1の連通口21より先に本体2内に連通させ、本体2内にある飲料を最初から第2の連通口22より流出させることができるようになる。これにより、この実施例の構造によれば、前述した第1の連通口21から先に飲料が流出する現象を防止若しくは抑制して、第2の連通口22からの飲料の流出と、第1の連通口21からの空気の流入を確実に行わせて、より安定した抽出を実現することができるようになる。
【0046】
尚、各実施例では第1の連通口21と第2の連通口22を同一寸法の孔にて構成し、第1の連通口21の中心が第2の連通口22の中心より上に来るように設定したが、それに限らず、第1の連通口21と第2の連通口22とにヘッド差(第1の連通口21が第2の連通口22より上)が付けられる形状であれば実施例に限定されるものではない。また、実施例では二つの連通口21と22を形成したが、それに限らず、実施例の第1及び第2の連通口を含む三つ以上の連通口を形成し、それらにヘッド差を付けても本発明は有効である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の飲料供給バルブを取り付けて倒立させた状態のペットボトル(飲料容器)の斜視図である。
【図2】同じく本発明の飲料供給バルブを取り付けて倒立させた状態のペットボトル(飲料容器)の側面図である。
【図3】図1、図2の状態の飲料供給バルブの縦断側面図である(実施例1)。
【図4】同じく図1、図2の状態の飲料供給バルブのもう一つの縦断側面図である。
【図5】本発明の飲料供給バルブの他の実施例の縦断側面図である(実施例2)。
【図6】図5の飲料供給バルブのもう一つの縦断側面図である。
【図7】図5の飲料供給バルブの更にもう一つの縦断側面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 飲料供給バルブ
2 本体
3 保持部
4 抽出部材
6 操作レバー
12 第1の通路
13 第2の通路
14 仕切壁
18 第1の開口
19 第2の開口
21 第1の連通口
22 第2の連通口
34 切込

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料容器の口部に設けられて当該口部からの飲料の抽出を制御する飲料供給バルブであって、
前記飲料容器の口部に取り付けられて内部が当該飲料容器内に連通する本体と、
前記飲料容器の口部が下向きに開放された状態において前記本体下部に位置する保持部と、
該保持部に上下移動自在に保持され、下端に形成された開口と該開口に連通して側面に形成された第1及び第2の連通口とを有する抽出部材とを備え、
該抽出部材が降下した状態で、前記第1及び第2の連通口は閉塞され、前記抽出部材が上昇した状態で、前記第1及び第2の連通口は前記本体内に開放されると共に、前記第1の連通口は前記第2の連通口よりも上に形成されていることを特徴とする飲料供給バルブ。
【請求項2】
前記抽出部材は、前記第1の連通口から前記開口に至る第1の通路と、前記第2の連通口から前記開口に至る第2の通路とを仕切る仕切壁を備えたことを特徴とする請求項1に記載の飲料供給バルブ。
【請求項3】
前記第2の通路に対応する部分の前記開口は、前記第1の通路に対応する部分の前記開口よりも下方にて開放していることを特徴とする請求項2に記載の飲料供給バルブ。
【請求項4】
前記抽出部材が上昇していく過程で、前記第2の連通口は前記第1の連通口よりも先に前記本体内に開放されることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の飲料供給バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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