説明

養鶏施設の給水装置

【課題】簡潔な循環経路で給水できるとともに、鶏の飲み水は、飲むまでは外気に触れないような給水装置を提供すること。
【解決手段】本発明の養鶏施設の給水装置においては、養鶏施設の各ケージに沿って配管され、養鶏施設内で飼育される鶏に飲み水を供給する給水管を有し、この給水管が所望ピッチで設けられた給水口をその途中に備える養鶏施設の給水装置において、前記給水管は、外管と、該外管の内部空間に配設された内管とからなる二重構造の給水管とし、前記内管には別途冷却された冷水を供給し、前記外管の内部空間で且つ前記内管の外側の隙間には、鶏の飲み水を供給し、前記給水口は、前記外管に取り付けられて、前記外管の内部空間で且つ前記内管の外側の隙間に供給されている飲み水を供給し得るように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養鶏施設の給水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今の養鶏施設は、卵や鶏肉の生産効率を上げるために、養鶏施設内に多段かつ多列にケージを配置するとともに、給餌、給水も自動化するなどして数万羽という鶏を一度に飼育できるようになっている。
ところで、このような養鶏施設で問題となるのが、夏場等の気温が高い時期の対策である。すなわち、鶏は気温が高くなってくると、夏バテを起こし、鶏卵の生産が落ちり、さらには熱射病により死んでしまったりする。そこで、対策としては、養鶏施設内の温度を下げる方法と、鶏に水を飲ませて体温を下げる方法が考えられる。
そのために、養鶏施設内の温度を下げる方法としては、養鶏施設内を冷房する方法が提案されている。
【0003】
一方、鶏に水を飲ませて体温を下げる方法の場合、鶏が自主的に水を飲まなければならないが、養鶏施設内の温度があがると給水管内の水温も上昇する。そして、水温が上がるとを鶏が水を飲まなくなり、結果として脱水症状を起こして死んでしまう恐れがある。
そこで、給水管内の水温を監視し、水温がある一定以上に上がると、給水管内の水を捨てて新しい水に入れ換える給水方法が提案されている。
【0004】
しかし、前者の養鶏施設内を冷房する方法の場合、大きな養鶏施設内を冷房するため、大型の冷房装置が必要でコストがかかり過ぎるという問題がある。
一方、後者の水を入れ換える方法の場合、給水管内の水を捨てて新しい水に入れ換えるようになっているため、水が大量に必要となり、コストがかかるとともに、夏場などは上水道の温度もかなり高くなっており、新しい水と入れ換えるだけでは十分とはいえない。
【0005】
そこで、発明者は、養鶏施設内を冷房するような大掛かりな装置を用いなくても、夏場などの気温が高い時期の鶏の水分補給を十分行えるとともに、鶏の暑さによる体力減退や熱射病等による死亡を防止するために、養鶏施設の給水装置で冷水を供給できる技術を発明した(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特許第3914929号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の発明によれば、夏場には鶏に冷水を飲ませることができるので、鳥の夏ばてを防ぎ、生産性を向上させるという実績が多数示されている。
しかし、特許文献1に記載の発明は、鶏が飲んだ残りの排水を回収して、回収した排水を冷却装置で冷やした後に、再び循環させて給水する技術である。
また、排水を回収する際には、排水側に地下タンクを設置して、地下タンクに回収した排水を、ポンプを用いて給水側に送水するように構成されている。地下タンクを設ける理由は、鶏舎の最下段の排水口は、地上からの高さが十分に高くない場合が多いので、その場合でも、排水がタンクに回収されるための十分な高低差を得るためである。また、鶏が飲むためのニップル式給水器が設けられている給水管内の水圧は、1m程度の小さい水圧であるために、十分な高低差を得るためである。
また、特許文献1に記載の発明では、給水管の循環経路が複雑になりやすいので、より簡潔な配管が待望されていた。
さらに、給水管の循環経路の途中で、循環水が外気に触れるので、循環水が外気によって汚染される心配があった。
【0008】
そこで、本発明は、簡潔な循環経路で給水できるとともに、鶏の飲み水は、飲むまでは外気に触れないような給水装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる請求項1の養鶏施設の給水装置においては、
養鶏施設の各ケージに沿って配管され、養鶏施設内で飼育される鶏に飲み水を供給する給水管を有し、この給水管が所望ピッチで設けられた給水口をその途中に備える養鶏施設の給水装置において、
前記給水管は、外管と、該外管の内部空間に配設された内管とからなる二重構造の給水管とし、
前記内管には別途冷却された冷水を供給し、前記外管の内部空間で且つ前記内管の外側の隙間には、鶏の飲み水を供給し、
前記給水口は、前記外管に取り付けられて、前記外管の内部空間で且つ前記内管の外側の隙間に供給されている飲み水を供給し得るように構成されている。
請求項2では、
前記冷水を冷却するための冷却装置を備え、
該霊薬装置から前記内管まで冷水を導く冷却配管と、
前記内管を通過した冷水を前記冷却装置まで戻す冷却戻し配管とを備え、
前記冷水は、給水管の内管を通過するときに外管との隙間に供給された飲み水を冷却した後、再び、前記冷却装置に戻って循環するように構成されている。
請求項3では、
冷却装置における冷水を、所定の温度以下に保つように、前記冷却装置を運転制御する制御装置を備えている。
請求項4では、
冷却装置の運転を所定のスケジュールに従って制御する制御装置を備えている。
請求項5では、
給水管は、
断面形状が略長方形状の外管の内部空間の約半分に、内管が挿通された二重構造であり、
前記外管の内部空間の残りの約半分には、所定の間隔で給水口が配設されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、
給水管は、外管と、該外管の内部空間に配設された内管とからなる二重構造の給水管とし、前記内管には別途冷却された冷水を供給し、前記外管の内部空間で且つ前記内管の外側の隙間には、鶏の飲み水を供給し、前記給水口は、前記外管に取り付けられて、前記外管の内部空間で且つ前記内管の外側の隙間に供給されている飲み水を供給し得るように構成されているので、冷水を供給し得る給水経路を簡潔に構成することができる。また、無駄が少なく飲み水を冷やすことができる。また、飲み水の水圧は低くし、冷水の水圧は高くすることができるので、地下タンクなどが不要となる。
また、給水管は、断面形状が略長方形状の外管の内部空間の約半分に、内管が挿通された二重構造であり、前記外管の内部空間の残りの約半分には、所定の間隔で給水口が配設されているので、冷水によって飲み水を効率よく冷やすことができるとともに、給水口を適宜配設することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1〜図4は、本発明にかかる養鶏施設の給水装置の1つの実施の形態をあらわしている。
【0012】
図1に示すように、この発明に係る給水装置においては、鶏が飲むための給水口としてのニップル式給水器2が取り付けられている給水管3が、二重構造になっていることが特徴である。
前記給水管3は、例えば、断面形状が略長方形状の外管31の内部空間の約半分に、内管32が挿通された構造になっている。前記外管31の内部空間の残りの約半分には、所定の間隔でニップル式給水器2が取り付けられている。
【0013】
前記内管32内には、後述する冷却装置などを用いて冷却された冷水が供給され、前記外管31内で、前記内管32の外側の隙間には、鶏が飲むための飲み水として、水道水もしくは井戸水から供給されている。
【0014】
ニップル式給水器2は、図1(a)に示した状態で、ニップル式給水器2の下方に突出するニップル状の突起21が、鶏のくちばし等で上方に突き上げられると、突起21が図1(b)に示すように、本体22内に入り込み、弁が開放されて、前記外管31と前記内管32の隙間に供給されている飲み水が、本体22の下方から流れ落ちるようになっている。すなわち、鶏が突起21を突き上げないと、図1(a)に示すように、突起21が下がり,弁が閉じて給水管3から水が漏れ出ないようになっている。
【0015】
図2は、前記構造の給水管3に接続された冷水配管4と飲み水配管5とを示し、図3は、多段ケージ(図示を省略)に配設された複数の給水管3を含んだ給水装置Wの構成図を示している。
図2、3に示したように、
前記飲み水配管5には、水道水もしくは井戸水から供給される飲み水が飲み水本管51から分岐して配管されており、その配管の途中には、減圧装置52と水位表示用浮き53が設けられている。前記飲み水本管51の途中には、必要に応じて送水ポンプ(図示せず)が設けられ、この送水ポンプは、飲み水本管51に設けられた圧力センサ(図示せず)によって一定以上の水圧に上昇したこと検知すると停止するようになっている。
【0016】
前記冷水配管4は、冷水本管41から分岐して配管されており、前記飲み水配管5とともに、前記給水管3の流入側に接続されている。
前記冷水配管4は前記給水管3の内管32に接続され、前記飲み水配管5は前記給水管3の外管31に接続されている。
したがって、給水管3の外管31と内管32との隙間を流れる飲み水は、内管32を流れる冷水によって冷却される。前記飲み水は、内管32の表面と接触するので、十分な接触面積が得られ、十分に冷やされる。前記給水管3の流出側にはドレン用の水栓54が設けられている。
前記外管31は、熱伝導率の低い素材を用い、前記内管32は熱伝導率の高い素材を用いるとよい。
【0017】
図3に示したように、
冷水タンク6の冷水は、循環ポンプ61によって、冷水本管41、冷水配管4、給水管3の内管32を通って冷水戻り本管42から再び前記冷水タンク6に戻ってくるように構成されている。
以上の構成において、冷水タンク6の内部の水は、チラーや氷蓄熱材等を用いた冷却装置7との間を、冷却循環ポンプ71によって循環させることによって冷却される。
そして、冷却された冷水タンク6内の冷水は、冷水本管41を通って鶏舎の多段ケージに送水され、分岐して、冷水配管4を通って各給水管3の内管32に供給される。
そして、各給水管3の内管32を通過した冷水は、冷水戻り本管42にまとめられて冷水タンク6に戻される。
【0018】
図4は、本発明にかかる給水装置1を備えた養鶏施設の要部を示している。
図4において、8は例えば図示したような5段構成の多段ケージであり、例えば、鶏舎の建屋内に例えば図示したように3列の多段ケージ8が配設されている。
そして、冷水タンク6から循環ポンプ61と冷水本管41とを介して各多段ケージ8に冷水が供給され、各多段ケージ8においては、図1、2、3に示したような構造の給水管3によって飲み水配管を冷やした後、冷水戻り本管42を通って前記冷水タンク6に戻ってくる。
前記冷水タンク6内の冷水は、冷却循環ポンプ71によって、冷却装置7との間で循環させられて、十分に冷却される。
【0019】
各多段ケージ8は、各段で、多段ケージ8の幅方向の両側面に沿って1本ずつの給水管3が全長に渡って添設されているとともに、多段ケージ8内に新鮮な空気を送風する送風装置(図示せず)を備えているとともに、図示していないが、給餌装置を含む公知の養鶏施設と同様の設備も備えている。
そして、給水管3の各部屋に臨む位置には、ニップル式給水器2が設けられている。
【0020】
冷水タンク6には、冷却装置7が冷却循環ポンプ71と冷却循環配管72を介して接続され、前記冷却装置7は水温計(図示せず)と制御装置9を備えている。
制御装置9は、冷却水の温度を適温に保つ温度制御機能と、冷却装置7の運転停止を所定のスケジュールに従って制御するスケジュール運転機能とを備えている。
【0021】
温度制御機能は、温度センサ(図示せず)で測定された養鶏施設の建屋内の気温が設定温度以上になると、冷却装置7を稼働させ、設定温度未満の場合、冷却装置7を停止するようになっている。
スケジュール運転機能は、夜間など、鶏が眠りにつきほとんど水を飲まない時間になると、冷却装置7の稼働を停止し、朝になり、鶏が活動する時間になると冷却装置7を稼働させるようになっている。
【0022】
以上のように、この給水装置1では、飲み水配管5と冷水配管4とが独立した配管系統になっているので、それぞれの水圧をそれぞれ適した条件に設定して運転することができる。即ち、ニップル式給水器4が適切に機能するために飲み水配管5は低い水圧に設定しておく必要があるが、冷水配管4は、飲み水配管5の水圧とは無関係により高圧にすることができるので、冷水タンク6を地下に設けなくても十分な水圧で冷却水が戻ってくる。
【0023】
また、冷水タンク6を省略して、冷却装置7からの冷水を直接、冷水本管41に供給することもできる。
また、冷却装置7としては、冷媒を用いた冷凍サイクル式の冷却装置でもよいが、氷蓄熱装置を用いて、夜間電力で氷を造っておき、昼間にその冷熱を利用して冷却してもよい。鶏は夜間は水を飲まないため、夜間に氷蓄熱装置で冷水や氷を造っておき、その冷熱を昼間に利用するのである。
【0024】
このように、二重構造の給水管3を用い、冷水と飲み水とを完全に分離して循環もしくは供給するので、給水管の循環経路が簡潔になるとともに、飲み水は途中で外気に触れないので外気によって汚染される心配もない。
したがって、夏場などの気温が高い時期であっても、鶏が給水管3から冷やされた飲み水を十分摂取することができるので、熱射病や脱水症状によって死ぬと言った問題を解消できる。
勿論、養鶏施設内を冷房する必要もなく、コストダウンを図れる。
【0025】
上記の実施の形態では、ケージが5段構成であったが、6階建て以上としても構わないし、4階建て以下でも構わない。
上記の実施の形態では、養鶏施設内のケージが3列であったが、4列以上としても構わないし、2列以下でも構わない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明にかかる給水装置に用いる給水管の断面図である。
【図2】前記給水装置に用いる給水管とその周辺の構造を説明する説明図である。
【図3】前記給水装置の全体の構造を説明する説明図である。
【図4】養鶏施設に配設した給水装置の説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 給水装置
2 給水口、ニップル式給水器
3 給水管
31 外管
32 内管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
養鶏施設の各ケージに沿って配管され、養鶏施設内で飼育される鶏に飲み水を供給する給水管を有し、この給水管が所望ピッチで設けられた給水口をその途中に備える養鶏施設の給水装置において、
前記給水管は、外管と、該外管の内部空間に配設された内管とからなる二重構造の給水管とし、
前記内管には別途冷却された冷水を供給し、前記外管の内部空間で且つ前記内管の外側の隙間には、鶏の飲み水を供給し、
前記給水口は、前記外管に取り付けられて、前記外管の内部空間で且つ前記内管の外側の隙間に供給されている飲み水を供給し得るように構成されていることを特徴とする養鶏施設の給水装置。
【請求項2】
前記冷水を冷却するための冷却装置を備え、
該霊薬装置から前記内管まで冷水を導く冷却配管と、
前記内管を通過した冷水を前記冷却装置まで戻す冷却戻し配管とを備え、
前記冷水は、給水管の内管を通過するときに外管との隙間に供給された飲み水を冷却した後、再び、前記冷却装置に戻って循環するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の養鶏施設の給水装置。
【請求項3】
冷却装置における冷水を、所定の温度以下に保つように、前記冷却装置を運転制御する制御装置を備えている請求項1または請求項2に記載の養鶏施設の給水装置。
【請求項4】
冷却装置の運転を所定のスケジュールに従って制御する制御装置を備えている請求項1または請求項2に記載の養鶏施設の給水装置。
【請求項5】
給水管は、
断面形状が略長方形状の外管の内部空間の約半分に、内管が挿通された二重構造であり、
前記外管の内部空間の残りの約半分には、所定の間隔で給水口が配設されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の養鶏施設の給水装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate