説明

駆虫性物質をコードする核酸およびそれから生産される植物

本発明は、DNA構築物、そのような構築物を含有するトランスジェニック植物、および該植物の生産方法を提供する。該DNA構築物は、発現されると、駆虫活性を有する脂肪酸化合物の産生をもたらすポリペプチドをコードしている。そのようなポリペプチドを発現するトランスジェニック植物は、特に栄養組織において発現する場合に、植物寄生性線虫に対する耐性の増強を示しうる。そのようなポリペプチドを発現するトランスジェニック植物は非農薬産業用途にも有用でありうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年2月4日出願の米国特許出願第10/772,227号の一部継続出願(これは35 USC 120に基づく優先権の利益を請求するものである)である2004年8月4日出願の米国特許出願第10/912,534号(この全体を参照により本明細書に組み入れる)の国際PCT出願である。
【0002】
発明の分野
本発明は植物病理学および植物遺伝的形質転換の分野に関する。より詳しくは、本発明は、例えば植物寄生性線虫のような植物病原体の防除を含む産業目的のためのトランスジェニック植物における新規脂肪酸の産生を増強するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
線虫(糸を意味するギリシャ語に由来する)は、土壌中の水の皮膜および他の生物内の湿った組織を含む湿った表面上または液体環境中に生息する活発で柔軟で細長い生物である。僅か20,000種の線虫が同定されているに過ぎないが、実際には40,000〜1000万種が存在すると推定されている。線虫のいくつかの種は、植物および動物の両方の非常に繁栄した寄生虫へと進化しており、農業および家畜におけるかなりの経済的損失ならびにヒトにおける罹患および致死状態を引き起こす(Whitehead (1998) Plant Nematode Control. CAB International, New York)。
【0004】
植物の寄生性線虫は、根、発生中の花芽、葉および茎を含む植物のあらゆる部分に生息する。植物寄生生物は、その摂食傾向に基づいて広範な範疇(移動性外部寄生生物、移動性内部寄生生物および定住性内部寄生生物)に分類される。定住性内部寄生生物は、根こぶ線虫(Meloidogyne)およびシスト線虫(GloboderaおよびHeterodera)を包含し、摂食部位を誘導し、根において長期的感染を確立し、これは作物にとって大きな損害となることが多い(Whitehead, 前掲)。全主要作物に及ぶ12%の推定平均年間損害に基づいて、寄生性線虫は園芸業および農業に全世界で780億ドルを超える損害を与えていると推定されている。例えば、線虫は全世界で年間約32億ドルの大豆被害を引き起こしていると推定されている(Barkerら (1994) Plant and Soil Nematodes: Societal Impact and Focus for the Future. The Committee on National Needs and Priorities in Nematology. Cooperative State Research Service, US Department of Agriculture and Society of Nematologists)。いくつかの要因が、安全かつ有効な線虫防除の必要性を緊急なものにしている。増大し続ける人口、飢饉および環境悪化は農業の維持に対する懸念を強めており、政府による新たな規制が、多数の利用可能な農業用駆虫剤の使用を妨げたり、著しく制限する可能性がある。
【0005】
化学殺線虫剤の施用が依然として線虫防除の主要手段である。しかし、一般に、化学殺線虫剤は、環境への相当な影響を引き起こすことが知られている高毒性化合物であり、それらを使用しうる量および場所は益々制限されてきている。例えば、種々の特産作物における線虫侵襲を軽減するために有効に使用されている土壌くん蒸剤である臭化メチルは、U.N. Montreal Protocolに基づき、オゾン破壊物質として規制されており、米国においては2005年に撤廃される予定である(Carter (2001) California Agriculture, 55(3):2)。臭化メチルの適当な代替物が見出されなければ、イチゴおよび他の商品作物産業は大きな影響を受けると予想される。同様に、広域スペクトル殺線虫剤、例えばテロン(Telone)(1,3-ジクロロプロペンの種々の製剤)は、毒性に関する懸念により、それらの使用に対する著しい制限を伴う(Carter (2001) California Agriculture, Vol. 55(3):12-18)。
【0006】
大環状ラクトン(例えば、アベルメクチンおよびミルベマイシン)およびBacillus thuringiensis(Bt)由来のデルタ内毒素は、主として、環境に対して安全な寄生性線虫防除を可能にするはずである優れた特異性および効力をもたらす化合物である。残念ながら、実際には、これらの2つの殺線虫剤は根病原体に対する農業的施用においてはそれほど有効でないことが判明している。ある種のアベルメクチンは植物寄生性線虫に対して非常に優れた活性を示すが、これらの化合物には、それらの光感受性、土壌粒子への密着結合および土壌微生物による分解による低いバイオアベイラビリティの問題がある(Lasota & Dybas (1990) Acta Leiden 59(1-2):217-225; Wright & Perry (1998) Musculature and Neurobiology. In: The Physiology and Biochemistry of Free-Living and Plant-parasitic Nematodes (R.N. Perry & D.J. Wright編), CAB International 1998)。したがって、動物寄生性線虫、ダニおよび昆虫に対する長年にわたる研究および広範な使用(植物および動物への施用)にもかかわらず、大環状ラクトン(例えば、アベルメクチンおよびミルベマイシン)は、土壌中の植物寄生性線虫の防除のためには商業的に開発されたことはない。
【0007】
Btデルタ内毒素は、その標的器官である中腸上皮細胞の刷子縁を侵すためには、摂取される必要がある(Marroquinら (2000) Genetics. 155(4):1693-1699)。したがって、それは圃場の植物寄生性線虫の分散型非摂食性幼虫期に対しては有効でないと予想される。幼虫は感受性宿主に感染して初めて摂食を開始するため、殺線虫剤は、有効となるためには植物クチクラに浸透する必要があるであろう。典型的なBtデルタ内毒素のサイズである65〜130kDaのタンパク質の経クチクラ取り込みは考えられない。さらに、土壌移動性は比較的乏しいと予想される。トランスジェニックアプローチでさえもBtデルタ毒素のサイズが問題となる。なぜなら、in plantaでの運搬はHeteroderaのような或る植物寄生性線虫の摂食管による大きな粒子の排出により妨げられる可能性があるからである(Atkinsonら (1998) Engineering resistance to plant-parasitic nematodes. In: The Physiology and Biochemistry of Free-Living and Plant-parasitic Nematodes (R.N. Perry & D.J. Wright編), CAB International 1998)。
【0008】
脂肪酸は毒性非特異的有機ホスファート、カルバマートおよびくん蒸農薬の代替物としてのもう1つのクラスの天然物である(Stadlerら (1994) Planta Medica 60(2):128-132; 米国特許第5,192,546号、第5,346,698号、第5,674,897号、第5,698,592号、第6,124,359号)。脂肪酸は、界面活性(可溶化)効果または該脂肪酸と標的細胞膜の親油性領域との直接的相互作用により線虫クチクラまたはヒポデルミスに悪影響を及ぼすことにより、その殺虫効果を誘導すると示唆されている(Davisら (1997) Journal of Nematology 29(4S):677-684)。この予想作用様式を考慮すると、除草剤(例えば、Dow AgrosciencesのSCYTHEはC9飽和脂肪酸であるペラルゴン酸である)、殺細菌剤、真菌剤(米国特許第4,771,571号、第5,246,716号)、殺虫剤(例えば、Safer, Inc.のSAFER INSECTICIDAL SOAP)などのように、種々の農薬用途において脂肪酸が使用されることは驚くべきことではない。
【0009】
脂肪酸の植物毒性は、植付け後の農業用施用におけるその一般的使用に対する大きな制約となっており(米国特許第5,093,124号)、農薬活性を維持しながらこれらの望ましくない効果を軽減することが主要な研究分野となっている。圃場条件下では脂肪酸は比較的短い半減期を有するため、植付け後の施用が望ましい。
【0010】
脂肪酸のエステル化はその植物毒性を有意に軽減しうる(米国特許第5,674,897号、第5,698,592号、第6,124,359号)。しかし、リノール酸、リノレン酸およびオレイン酸で見られるとおり、そのような修飾は殺線虫活性の低下を招くことがあり(Stadlerら (1994) Planta Medica 60(2):128-132)、その非特異的作用様式から考えると、農薬脂肪酸の植物毒性と殺線虫活性とを完全に切り離すことは不可能かもしれない。おそらく驚くほどのことではないが、殺線虫脂肪酸ペラルゴン酸メチルエステル(米国特許第5,674,897号、第5,698,592号、第6,124,359号)は農薬活性の発現開始と有意な植物毒性の観察との間に比較的小さな「治療ウィンドウ(therapeutic window)」を示す(Davisら (1997) J Nematol 29(4S):677-684)。これは、植物毒性および殺線虫活性の両方が細胞膜の完全性の非特異的破壊から誘導される場合に予想される結果である。
【0011】
反転されたハムスター空腸および回腸部分を使用して、ヒマシ油の主要成分であるレシノール酸が水および電解質の吸収に対する抑制効果を有し(Gaginellaら (1975) J Pharmacol Exp Ther 195(2):355-61)、単離された腸上皮細胞に対する細胞毒性を有すること(Gaginellaら (1977) J Pharmacol Exp Ther 201(1):259-66)が示されている。これらの特徴が、ヒトおよび家畜における軟下剤として投与されるヒマシ油の軟下特性の源泉であると考えられうる(例えば、ヒマシ油は、その軟下特性により、いくつかの駆虫法の一成分である)。これとは対照的に、リシノール酸のメチルエステルはハムスターモデルにおける水吸収の抑制に無効である(Gaginellaら (1975) J Pharmacol Exp Ther 195(2):355-61)。
【0012】
短鎖および中鎖脂肪酸および塩(例えば、C6〜C12)は優れた殺真菌活性を有することが報告されている(米国特許第5,093,124号および第5,246,716号)。市販の殺真菌および殺コケ製品であるDe-Mossが主としてこのサイズ範囲の脂肪酸および塩を含んでいることは驚くべきことではない。また、C9脂肪酸ペラルゴン(ノナン)酸を含む市販の除草剤SCYTHEにより例示されるとおり、これらのより短い脂肪酸の植物毒性は、それらを、より高い濃度で使用された場合に広域スペクトル除草剤として適したものにする。米国特許第5,093,124号、第5,192,546号、第5,246,716号および第5,346,698号は、C16〜C20脂肪酸および塩、例えばオレイン酸(C18:1)が適当な殺虫性脂肪酸であることを教示している。C16およびC18成分に富む、より長い脂肪酸を有効成分が含むM-PEDE and SAFER Insecticidal Concentrateのような殺虫性脂肪酸製品は、この科学的情報の実際の応用を実例として示すものである。これとは対照的に、先行技術は、適当な広域スペクトル殺線虫脂肪酸の選択のための指針をほとんど提供しておらず、存在する情報は矛盾していることが多い。
【0013】
Stadlerら(Stadlerら (1994) Planta Medica 60(2):128-132)は、L4および成体C. elegans(シーエレガンス)に対して一連の脂肪酸を試験し、いくつかの一般的な長鎖脂肪酸、例えばリノール酸(C18:2)、ミリスチン酸(C14:0)、パルミチン酸(C16:1)およびオレイン酸(C18:1)が有意な殺線虫活性を有することを見出した。C. elegansはC6〜C10(中鎖)脂肪酸に対してはそれほど感受性でなかった。Stadlerらは、それらの結果が、植物寄生生物Aphelenchoides besseyiに関する従前の研究の結果と対照的であると記載している。その従前の研究においては、C8〜C12脂肪酸は非常に活性であるがリノール酸(C18脂肪酸)は活性を全く示さないことが見出されていたのである。種々の脂肪酸に対する特定の線虫の感受性の相違はDjianら(Djianら (1994) Pestic. Biochem. Physiol. 50(3):229-239)の研究においても明らかである。彼らは、ペンタン酸のような短い揮発性脂肪酸の殺線虫効力が種間で異なることを示している(例えば、Meloidogyne incognitaはPanagrellus redivivusより100倍以上感受性である)。24時間にわたる100μg/mLのオレイン酸での処理がPanagrellus redivivusにもCaenorhabditis elegansにも殺線虫性ではないというMominおよびNair(Momin & Nair (2002) J. Agric. Food Chem. 50(16):4475-4478)による最近の知見は、状況を更に複雑にしている。というのも、それは、Stadlerらにより測定された25μg/mLのLD50(100μg/mLのLD90)と完全に矛盾しているからである。
【0014】
要約すると、殺真菌剤、除草剤および殺昆虫剤の場合とは異なり、先行技術は、適当な殺線虫性脂肪酸の選択を補助する具体的な又は信頼しうる指針を何ら提供していない。さらに、De-Moss、SCYTHE、M-PEDEおよびSAFERはそれぞれこれらの3つの分野において成功を収めた農薬脂肪酸製品の具体例ではあるが、現在のところ、広く使用されている市販の殺線虫性脂肪酸製品の具体例は存在しない。
【0015】
多数の植物種は線虫に対して著しく耐性であることが報告されている。これらのうち最も詳しく記載されているものには、マリーゴールド(Tagetes spp.)、シラタマソウ(Crotalaria spectabilis)、キク(Chrysanthemum spp.)、ヒマの実(Ricinus communis)、ニーム(Azardiracta indica)およびAsteraceae科(Compositae科)の多数のメンバーが含まれる(Hackney & Dickerson. (1975) J Nematol 7(1):84-90)。Asteraceaeの場合には、光力学化合物であるα-ターチエニル(terthienyl)は根の強力な殺線虫活性をもたらすことが示されている。ヒマの実は、種子作物が結実する前に緑肥として鋤き込まれる。しかし、ヒマ植物の重大な欠点は、その種子が、ヒト、ペットおよび家畜を殺しうる毒性化合物(例えば、リシン)を含有し非常にアレルゲン性でもあることである。しかし、多くの場合、植物殺線虫活性のための有効成分は見出されておらず、したがって、商業的に成功を収める殺線虫製品をこれらの耐性植物から誘導し、あるいは該耐性を農業的に重要な作物(例えば、ダイズおよびワタ)に導入することは依然として困難である。
【0016】
ある線虫に対する遺伝的耐性は幾つかの市販の栽培品種(例えば、ダイズ)において利用可能であるが、これらは、所望の農業的特性および耐性の両方を有する栽培品種の数および利用可能性において制限される。性的交配による遺伝的組換えに基づく通常の植物育種による線虫耐性市販品種の生産は遅々たる方法であり、しばしば、適当な生殖質の欠如により更に妨げられる。
【0017】
小さな化学的エフェクターは、大きな分子のサイズ排除が目的である場合(例えば、定住性植物寄生性線虫の場合)に著しい利点を有しうる。しかし、殺線虫活性な該小分子が高い植物移動性を有さない限り、あるいは該化合物が全身的耐性の増強を促進しない限り、酵素をコードするトランスジーンは、有効となるためには適当な空間的および時間的態様で尚も発現されなければならない。多くの植物寄生性線虫の場合、これは、該殺線虫性産物の根発現が線虫防除のために重要であると考えられうることを意味する。カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーターのような構成的プロモーターが或るヒドロキシラーゼ酵素の発現を駆動するために使用されている場合、非種子組織(例えば、根または葉)においては有意な量のタンパク質産生もヒドロキシラーゼ活性も観察されず、ヒドロキシル化脂肪酸も蓄積しないことが報告されている(van de Looら (1995) Proc Natl Acad Sci U S A 92(15):6743-7; Broun & Sommerville (1997) Plant Physiol. 113(3):933-942; Brounら (1998) Plant J. 13(2):201-210; US 6,291,742; US 6,310,194)。
【0018】
環境に安全で標的特異的な植物寄生性線虫防除方法を開発することが、依然として緊急に必要とされている。特産作物市場においては、線虫侵襲から生じる経済的被害はイチゴ、バナナおよび他の高価値野菜および果物において最も深刻である。高エーカー作物市場においては、線虫被害はダイズおよびワタにおいて最大である。一方、ジャガイモ、コショウ、タマネギ、柑橘類、コーヒー、サトウキビ、温室観賞植物およびゴルフコース芝生など、線虫侵襲を被る何十もの他の作物が存在する。
【発明の開示】
【0019】
発明の概要
本発明は、脂肪酸ヒドロキシラーゼまたはエポキシゲナーゼをコードする配列を含むDNA構築物、そのような構築物を含有するトランスジェニック植物、およびそのようなトランスジェニック植物の生産方法に関する。これらのトランスジェニック植物は線虫に対する耐性の増強を示しうる。また、これらのトランスジェニック植物は、環境に安全な態様で線虫を防除するのに有用でありうる。本発明は部分的には、あるヒドロキシル化またはエポキシ化脂肪酸およびメチルエステル(例えば、リシノレアート、ベルノラート)が殺線虫活性を示すという驚くべき知見に基づくものである。これらの脂肪酸は、他の炭素数18の遊離脂肪酸(例えば、オレアート、エライダートおよびリノレアート)と比較して有意に増強された殺線虫活性を示す。ヒドロキシル化またはエポキシ化脂肪酸のレベルを増加させて、商業的に重要な植物種における線虫被害の防除を補助するために、ヒドロキシラーゼまたはエポキシゲナーゼポリペプチドをコードする核酸を植物内に導入することが可能である。これらの新規ヒドロキシラーゼおよびエポキシゲナーゼ構築物は、他の産業用途(例えば、安全なリシノール酸源の提供)のためにヒドロキシおよびエポキシ脂肪酸の蓄積を増加させるためにも有用である。
【0020】
1つの態様においては、本発明は、少なくとも1つのDNA構築物を含有するトランスジェニック植物に関する。該構築物は、植物の栄養組織における発現をもたらす少なくとも1つの調節要素を含む。該調節要素は、基質からC16、C18またはC20モノ不飽和脂肪酸産物への変換を触媒するのに有効なポリペプチドをコードする核酸に機能しうる形で連結されている。該C16-C20モノ不飽和脂肪酸産物は、
【化1】

(式中、Xは水素、CoA、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド、ACP、メチル、Na+、ホスファチジルコリンまたはホスファチジルエタノールアミンであり、ここで、R1およびR2の両方はヒドロキシルであるか、またはR1およびR2のうちの一方はヒドロキシルであり他方は水素であるか、またはR1およびR2のうちの一方はケトであり他方は水素であり、R3はC2、C4またはC6アルキルである)でありうる。該C16-C20モノ不飽和脂肪酸産物はまた、
【化2】

(式中、Xは水素、CoA、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド、ACP、メチル、Na+、ホスファチジルコリンまたはホスファチジルエタノールアミンであり、ここで、R3はC2、C4またはC6アルキルである)でありうる。
【0021】
該C=C二重結合はシスまたはトランスでありうる。該C16-C20モノ不飽和脂肪酸産物のR3部分はC2アルキルでありうる。C16-C20モノ不飽和脂肪酸産物は、R1、R2およびR3部分としてそれぞれヒドロキシ、水素およびC4アルキルを有しうる(例えば、リシノレアート産物)。あるいは、C16-C20モノ不飽和脂肪酸産物は、カルボニル炭素から数えて12番目および13番目の炭素にエポキシ部分を、R3にC4アルキルを有しうる(例えば、ベルノラート産物)。
【0022】
該植物は、該DNA構築物を欠く対応植物と比較して増加した量のヒドロキシ脂肪酸、例えばリシノール酸を栄養組織に含有しうる。該ヒドロキシ脂肪酸は該組織の全脂肪酸含量の約0.01%〜約25%を構成しうる。いくつかの実施形態においては、該植物は、該DNA構築物を欠く対応植物と比較して増加した量のエポキシ脂肪酸、例えばベルノール酸を栄養組織に含有しうる。該エポキシ脂肪酸は該組織の全脂肪酸含量の約0.01%〜約25%を構成しうる。
【0023】
該調節要素は5'-調節要素または3'-調節要素でありうる。該調節要素は根組織または葉組織における発現をもたらしうる。例えば、5'-調節要素はCaMV35Sプロモーター、ジャガイモリボソームタンパク質S27 a Ubi3プロモーター、アルファルファヒストンH3.2プロモーター、IRT2プロモーター、RB7プロモーター、Arabidopsis FAD2 5'-UTR、Arabidopsis FAD3 5'-UTR、Ubi3 5'-UTR、アルファルファヒストンH3.2 5'-UTRまたはCaMV35S 5'-UTRでありうる。
【0024】
該DNA構築物中のポリペプチドコード配列に機能しうる形で連結された2以上の調節要素が存在しうる。例えば、DNA構築物は2個の5'-調節要素を有しうる。第1の5'-調節要素はUbi3プロモーターであることが可能であり、第2の5'-調節要素はArabidopsis FAD2 5'-UTR、Arabidopsis FAD3 5'-UTR、ジャガイモリボソームタンパク質S27 a Ubi3 5'-UTRまたはCaMV35S 5'-UTRであることが可能である。いくつかの実施形態においては、該DNA構築物は5'-調節要素および3'-調節要素を有しうる。該3'-調節要素はUbi3ターミネーターまたはE9エンドウ(pea)ターミネーターでありうる。あるいは、5'-調節要素はArabidopsis FAD2 5'-UTRまたはArabidopsis FAD3 5'-UTRであることが可能であり、3'-調節要素はArabidopsis FAD2 3'-UTRまたはArabidopsis FAD3 3'-UTRであることが可能である。
【0025】
植物内の該DNA構築物は、植物の栄養組織における発現をもたらす1以上の調節要素に機能しうる形で連結された、PDATまたはDAGATまたはリパーゼポリペプチドをコードする核酸を含みうる。あるいは、PDATまたはDAGATまたはリパーゼをコードする配列および調節要素は該植物内の別々のDNA構築物の一部でありうる。いくつかの実施形態においては、該植物は、Δ12またはΔ15脂肪酸デサチュラーゼをコードするDNA構築物を含有する。
【0026】
該ポリペプチドのアミノ酸配列は配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、C. palaestinaエポキシゲナーゼGenBank(登録商標)No. CAA76156、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、C. palaestinaエポキシゲナーゼキメラ、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号134、配列番号135、配列番号136、配列番号137または配列番号138でありうる。該ポリペプチドをコードする核酸は配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132または配列番号133でありうる。
【0027】
該植物は単子葉または双子葉植物でありうる。例えば、該植物はダイズ、トウモロコシ、ワタ、イネ、タバコ、トマト、コムギ、バナナ、ニンジン、ジャガイモ、イチゴまたは芝生草植物でありうる。
【0028】
もう1つの態様においては、本発明はトランスジェニック植物の生産方法に関する。該方法は、本明細書に記載されているとおりにDNA構築物を得、該構築物を植物内に導入することを含む。該DNA構築物は、本明細書に記載のポリペプチドをコードする核酸を含むことが可能であり、本明細書に記載の調節要素を含みうる。
【0029】
本発明はまた、トランスジェニック植物を駆虫活性に関してスクリーニングするための方法に関する。該方法は、トランスジェニック植物を、該植物が駆虫活性を有するか否かを判定するのに有効な条件下で線虫と接触させることを含む。例えば、線虫を該トランスジェニック植物の根の1以上と接触させることが可能である。該トランスジェニック植物は、本明細書に記載のヒドロキシラーゼまたはエポキシゲナーゼポリペプチドをコードする核酸を含み本明細書に記載の調節要素を含みうるDNA構築物を含有する。該方法は、そのようなトランスジェニック植物からの植物組織、例えば根組織、葉組織または茎組織で行うことも可能である。
【0030】
もう1つの態様においては、本発明は、単離された核酸に関する。該核酸は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132または配列番号133に記載のヌクレオチド配列を含みうる。
【0031】
もう1つの態様においては、本発明は組換え核酸構築物に関する。該構築物は、植物の栄養組織における発現をもたらす少なくとも1つの調節要素を含む。該調節要素は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132または配列番号133に記載のヌクレオチド配列を有する核酸に機能しうる形で連結されている。該調節要素は例えば根または葉における発現をもたらしうる。該調節要素は、配列番号43または配列番号44に記載のヌクレオチド配列を有する5'-調節要素でありうる。該核酸構築物は更に、配列番号45に記載のヌクレオチド配列を有する3'-調節要素を含みうる。
【0032】
本発明はまた、DNA構築物を含有するトランスジェニック植物に関する。該構築物は、該植物の栄養組織における該ポリペプチドの発現をもたらす調節要素に機能しうる形で連結された、脂肪酸エポキシゲナーゼポリペプチドまたは脂肪酸ヒドロキシラーゼポリペプチドをコードする核酸を含む。該ポリペプチドは、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、C. palaestinaエポキシゲナーゼ(GenBank(登録商標)No. CAA76156)、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号134、配列番号135、配列番号136、配列番号137または配列番号138のアミノ酸配列を有しうる。
【0033】
該植物は、該DNA構築物を欠く対応植物と比較して増加した量のヒドロキシ脂肪酸、例えばリシノール酸を該植物の栄養組織に含有しうる。該ヒドロキシ脂肪酸は該組織の全脂肪酸含量の約0.1%〜約10%を構成しうる。いくつかの実施形態においては、該植物は、該DNA構築物を欠く対応植物と比較して増加した量のエポキシ脂肪酸、例えばベルノール酸を該植物の栄養組織に含有しうる。該エポキシ脂肪酸は該組織の全脂肪酸含量の約0.1%〜約10%を構成しうる。
【0034】
もう1つの態様においては、本発明は、少なくとも1つのDNA構築物を含有するトランスジェニック植物に関する。該構築物は、植物の種子の組織の少なくとも1つにおける発現をもたらす少なくとも1つの調節要素を含む。該調節要素は、基質からC16、C18またはC20モノ不飽和脂肪酸産物への変換を触媒するのに有効なポリペプチドをコードする核酸に機能しうる形で連結されている。該C16-C20モノ不飽和脂肪酸産物は、
【化3】

(式中、Xは水素、CoA、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド、ACP、メチル、Na+、ホスファチジルコリンまたはホスファチジルエタノールアミンであり、ここで、R1およびR2の両方はヒドロキシルであるか、またはR1およびR2のうちの一方はヒドロキシルであり他方は水素であるか、またはR1およびR2のうちの一方はケトであり他方は水素であり、R3はC2、C4またはC6アルキルである)でありうる。該C16-C20モノ不飽和脂肪酸産物はまた、
【化4】

(式中、Xは水素、CoA、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド、ACP、メチル、Na+、ホスファチジルコリンまたはホスファチジルエタノールアミンであり、ここで、R3はC2、C4またはC6アルキルである)でありうる。
【0035】
該C=C二重結合はシスまたはトランスでありうる。該C16-C20モノ不飽和脂肪酸産物のR3部分はC2アルキルでありうる。C16-C20モノ不飽和脂肪酸産物は、R1、R2およびR3部分としてそれぞれヒドロキシ、水素およびC4アルキルを有しうる(例えば、リシノレアート産物)。あるいは、C16-C20モノ不飽和脂肪酸産物は、カルボニル炭素から数えて12番目および13番目の炭素にエポキシ部分を、R3にC4アルキルを有しうる(例えば、ベルノラート産物)。
【0036】
該調節要素は5'-調節要素でありうる。該植物は、該DNA構築物を欠く対応植物と比較して増加した量のヒドロキシ脂肪酸、例えばリシノール酸を種子の組織の少なくとも1つに含有しうる。いくつかの実施形態においては、該植物は、該DNA構築物を欠く対応植物と比較して増加した量のエポキシ脂肪酸、例えばベルノール酸を種子の組織の少なくとも1つに含有しうる。
【0037】
本明細書中で用いる「精製されたポリペプチド」は、それが天然で付随している他のタンパク質、脂質および核酸から分離されているポリペプチドを意味する。該ポリペプチドは、精製された調製物の少なくとも10、20、50、70、80または95重量%(乾燥重量比)を構成しうる。
【0038】
「単離された核酸」は、いずれかの天然に存在する核酸と同一ではない又は4以上の分離した遺伝子に及ぶ天然に存在するゲノム核酸のいずれかの断片と同一ではない構造を有する核酸である。したがって、この用語は、例えば、(a)天然に存在するゲノムDNA分子の一部分をなすDNAであるが、それが天然で存在する生物のゲノム内の該分子のその部分に隣接する核酸配列の両方には隣接しないDNA、(b)生じる分子がいずれかの天然に存在するベクターまたはゲノムDNAと同一ではない態様でベクター内または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNA内に組込まれた核酸、(c)分離した分子、例えばcDNA、ゲノム核酸断片、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により産生された断片または制限断片、および(d)例えばハイブリッドまたは融合核酸の一部である組換えDNA分子のような、操作された核酸を包含する。本発明の単離された核酸分子は更に、合成的に産生された分子、ならびに化学的に改変された任意の核酸および/または修飾されたバックボーンを有する任意の核酸を含む。この定義から特に除外されるのは、異なる(i)DNA分子、(ii)トランスフェクト化細胞、または(iii)DNAライブラリー(例えば、cDNAまたはゲノムDNAライブラリー)中の細胞クローン混合物中に存在する核酸、あるいは例えばゲノムDNA制限消化物を含有するゲル薄片内の数百〜数百万の他の核酸の中に存在する他の核酸である。「核酸分子」なる語は主として物理的な核酸分子を意味し、「核酸配列」なる語は、核酸分子内のヌクレオチドの配列を意味するが、それらの2つの語は互換的に用いられうる。
【0039】
与えられたポリペプチドに関して本明細書中で用いる「実質的に純粋」なる語は、該ポリペプチドが他の生物学的高分子を実質的に含有しないことを意味する。実質的に純粋なポリペプチドは乾燥重量で少なくとも75%(例えば、少なくとも80、85、95または99%)純粋である。純度は、任意の適当な標準的な方法、例えばカラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動またはHPLC分析により測定されうる。
【0040】
「異所性発現」なる語は、問題とされる特定の遺伝子または酵素にとって正常ではない細胞下、細胞型、組織型および/または発生的もしくは時間的発現のパターンを意味する。それは異種遺伝子(例えば、該生物内に天然では存在しない遺伝子)(後記のとおり、「トランスジーン」とも称される)の発現をも意味する。そのような異所性発現は必ずしも、正常な組織または発生段階における発現を除外するものではない。
【0041】
本明細書中で用いる「トランスジーン」なる語は、それが導入されるトランスジェニック植物、動物もしくは細胞にとって部分的もしくは全体的に異種性(すなわち外来性)である又はそれが導入されるトランスジェニック植物、動物もしくは細胞内因性遺伝子に対して非相同であるがそれが挿入された細胞のゲノムを改変するよう該植物のゲノム内に挿入される核酸(例えば、それは、天然遺伝子の場合とは異なる位置に挿入され、またはその挿入はノックアウトを引き起こす)を意味する。トランスジーンは、ポリペプチドコード配列に機能しうる形で連結された1以上の調節要素を含みうる。
【0042】
本明細書中で用いる「トランスジェニック細胞」なる語は、トランスジーンを含有する細胞を意味する。本明細書中で用いる「トランスジェニック植物」は、該植物の細胞の1以上または全てがトランスジーンを含む任意の植物である。トランスジーンは染色体内に組込まれうる。あるいはそれは染色体外複製性DNAでありうる。
【0043】
「機能しうる形で連結(された)」、「機能しうる形で挿入(された)」または「機能しうる形で付随(している)」なる語は、ポリペプチドコード配列に対して調節要素が、該ポリペプチドの発現をもたらすようDNA構築物内に配置されていることを意味する。
【0044】
本明細書中で用いる「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズ(させる)」および「高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズ(させる)」なる語は、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)バッファー中、約45℃でハイブリダイズさせ、ついで0.2×SSCバッファー、0.1% SDS中、60℃または65℃で2回洗浄することを意味する。本明細書中で用いる「低ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズ(させる)」なる語は、6×SSCバッファー中、約45℃でハイブリダイズさせ、ついで6×SSCバッファー、0.1%(w/v) SDS中、50℃で2回洗浄することを意味する。
【0045】
「異種プロモーター」は、核酸配列に機能しうる形で連結される場合には、該核酸配列に天然では付随していないプロモーターを意味する。
【0046】
本明細書中で用いる「結合」なる語は、共有結合していない第1の化合物と第2の化合物とが物理的に相互作用しうることを意味する。結合事象に関する見掛け解離定数は1mMまたはそれ未満、例えば10nM、1nMおよび0.1nMまたはそれ未満でありうる。
【0047】
本明細書中で用いる「特異的に結合(する)」なる語は、与えられたリガンドおよび非標的リガンドの両方に同時に抗体がさらされた場合および標的リガンドおよび非標的リガンドが共に抗体に対してモル過剰量で存在する場合に、抗体が標的リガンドと非標的リガンドとを識別して標的リガンドには結合しうるが非標的リガンドには結合し得ないことを意味する。
【0048】
本明細書中で用いる「活性の改変(変化)」なる語は、レベルにおける変化、すなわち、活性における増強または減弱(例えば、他のポリペプチドまたは分子に結合する又はそれらを調節するポリペプチドの能力における増強または減弱)、特に、脂肪酸デサチュラーゼ様または脂肪酸デサチュラーゼ活性(例えば、脂肪酸のΔ12位に二重結合を導入する能力)における増強または減弱を意味する。該変化は定量的または定性的観察において検出されうる。定量的観察を行う場合および複数の観察にわたる包括的分析を行う場合には、レベルが変化している及び統計的パラメーター、例えばp値が0.05未満であるモジュレーションを特定するために、当業者は通常の統計学的分析を適用することが可能である。
【0049】
特に断らない限り、「置換(されている)」炭素、炭素鎖またはメチル、アルキルにおいては、1以上の水素が別の基、例えばハロゲンまたはヒドロキシル基により置換されている。
【0050】
特に定めない限り、本明細書中で用いる全ての科学技術用語は、本発明が属する分野の当業者により一般に理解されているとおりの意義を有する。本明細書に記載されているものと類似した又は同等な方法および材料も本発明の実施に使用されうるが、後記においては、適当な方法および材料について説明されている。本明細書中に挙げられている全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献の全体を参照により本明細書に組み入れることとする。矛盾する場合には、定義を含め本明細書が優先する。また、材料、方法および実施例は例示に過ぎず、限定的なものではない。
【0051】
本発明の1以上の実施形態の詳細は添付図面および後記の説明において記載されている。本発明の他の特徴、目的および利点は該説明および図面、実施例から並びに特許請求の範囲から明らかであろう。
【0052】
詳細な説明
本発明は、驚くべき殺線虫活性を示す小分子化合物の産生に有効なポリペプチドをコードする遺伝子および遺伝的構築物を記載する。殺線虫活性は部分的には、線虫には必須であるらしいが脊椎動物および植物には存在しないか又は必須でない代謝過程の選択的抑制によるものである。したがって、本発明は、環境に安全な植物寄生性線虫防除のための緊急に必要とされているDNA構築物、トランスジェニック植物およびそのような植物の生産方法を提供する。
【0053】
脂肪酸
不飽和脂肪酸は生体膜の適切な機能に必須である。生理的温度では、飽和脂肪酸のみを含有する極性グリセロ脂質は、生体膜の基本構造である液体-結晶二重層を形成し得ない。膜グリセロ脂質の脂肪酸脂肪への適当な数の二重結合の導入(不飽和化と称される過程)はゲルから液体-結晶相への転移温度を減少させ、必要な流動性を膜に付与する。膜の流動性は脂質二重層のバリヤー特性の維持ならびに或る膜結合酵素の活性化および機能に重要である。不飽和化がエタノールおよび酸化ストレスに対する何らかの防御をもたらすという証拠も存在し、このことは、膜脂肪酸の不飽和化度が温度適応異常に重要であることを示唆している。不飽和脂肪酸は、重要なプロスタグランジン源である、動物における多不飽和酸(PUFA)アラキドン酸およびエイコサペンタエン酸の前駆体でもある。これらの分子は、それらが合成される細胞の活性および細胞の結合を改変して生殖、免疫、神経生理学、温度生物学ならびにイオンおよび流体輸送の過程を媒介する局所ホルモンである。
【0054】
細胞膜における不飽和度をモジュレーションする細胞の能力は主として、脂肪酸デサチュラーゼの作用によって決まる。デサチュラーゼ酵素は、二重結合の挿入を触媒するために分子状酸素を利用しNADH(またはNADPH)からの等価体を還元して、その脂肪アシル鎖基質内の特定の位置に不飽和結合を導入する。多くの系では、該反応は、NAD(P)H、シトクロムb5レダクターゼおよびシトクロムb5よりなる短い電子伝達系を用いて、NAD(P)Hおよび炭素-炭素単結合から酸素へ電子を伝達して水および二重結合(C=C)を形成する。多数の真核生物デサチュラーゼは、3つの保存されたヒスチジンリッチモチーフと2つの長い疎水性残基伸長とを含有する小胞体(ER)結合型非ヘム二鉄-オキソタンパク質である。これらの疎水性αヘリックスドメインは、該タンパク質を、その大部分がERの細胞質ゾル面に露出するように配置させ、活性な二鉄-オキソ部分を適切に配位させるよう活性部位ヒスチジンを組織化すると考えられている。
【0055】
哺乳動物を含むほとんどの真核生物は二重結合を炭素数18の脂肪酸のΔ9位に導入しうるが、哺乳動物はΔ12またはΔ15位には二重結合を挿入することができない。この理由により、リノレアート(18:2 Δ9,12)およびリノレナート(18:3 Δ9,12,15)は食物から得る必要があり、したがって必須脂肪酸と称される。これらの食物脂肪酸は主として植物由来である。なぜなら、開花植物はΔ12およびΔ15位を容易に不飽和化するからである。いくつかの昆虫および線虫を含む或る無脊椎動物は、リノレアートおよびリノレナートを含むそれらの構成脂肪酸のすべてをde novo合成しうる。例えば線虫C. elegansは、アラキドン酸およびエイコサペンタエン酸を含む広範な多不飽和脂肪酸を合成しうるが、これは、哺乳動物によっても開花植物によっても共有されない特性である(Spychallaら (1997) Proc. Natl. Acad. Sci USA 94(4):1142-7)。
【0056】
C. elegansデサチュラーゼ遺伝子fat2はS. cerevisiaeにおいて発現されており、Δ12脂肪酸デサチュラーゼであることが示されている(Peyou-Ndiら (2000) Arch. Biochem. Biophys. 376(2):399-408)。この酵素は12番目の炭素と13番目の炭素(カルボキシラート末端からの番号付け)との間に二重結合を導入し、モノ不飽和オレアート(18:1 Δ9)およびパルミトレアート(16:1 Δ9)をそれぞれジ不飽和リノレアート(18:2 Δ9,12)および16:2 Δ9,12脂肪酸へ変換しうる。
【0057】
線虫デルタ-12酵素は、いくつかの理由により、抗線虫化合物の潜在的に良好な標的である。第1に、前記のとおり、哺乳動物はデルタ-12脂肪酸デサチュラーゼを有さないと考えられている。また、該線虫酵素は植物におけるそのホモログとは系統発生的に異なるようであり、アミノ酸レベルで40%未満のペアワイズ配列同一性を有するに過ぎず、系統発生的分析は、植物におけるホモログから離れた線虫デルタ-12およびω-3デサチュラーゼのクラスタリングを示している。Arabidopsisおよびダイズの両方でのトランスジェニック実験は、植物がリノレアートまたはリノレナートの有意な減少に耐えうることを示しており、このことは、デルタ-12デサチュラーゼのインヒビターが植物には毒性でないらしいことを示唆している(Miquel & Browse (1992) J. Biol. Chem. 267(3):1502-9; Singhら (2000) Biochem. Society Trans. 28: 940-942; Leeら (1998) Science 280:915-918)。したがって、酵素意のインヒビターは哺乳動物に無毒性であると考えられうる。
【0058】
本発明者らは、ある脂肪酸類似体の親脂肪酸およびメチルエステル(例えば、リシノレアート、ベルノラート)が殺線虫性であり、線虫デルタ-12デサチュラーゼの特異的インヒビターの活性に合致する活性を有するという驚くべき知見を見出した。該脂肪酸およびメチルエステルは、炭素数18の遊離脂肪酸およびエステル、例えばオレアート、エライダートおよびリノレアートと比較して有意に増強した駆虫活性を示す。短鎖脂肪酸およびエステル、例えばペラルゴナート(ペラルゴン酸またはメチルペラルゴナート)とは対照的に、デルタ-12デサチュラーゼインヒビターであると予想される脂肪酸類似体は植物毒性の低下を示し、したがって、非標的生物に対する望ましくない損傷を最小限にしつつ有効に使用されうる。適当な線虫抑制性化合物には、以下の脂肪酸を遊離またはエステル化形態で有する化合物が含まれる:リシノール酸(12-ヒドロキシオクタデカ-シス-9-エン酸)、ヒドロキシパルミトレイン酸(12-ヒドロキシヘキサデカ-シス-9-エン酸)、リシノエライジン酸、ベルノール酸((12,13)-エポキシ-オクタデカ-シス-9-エン酸)および12-オキソ-9(Z)-オクタデセン酸。
【0059】
ポリペプチド
本発明での使用に適したポリペプチドは、基質からC16、C18またはC20モノ不飽和脂肪酸産物、例えばヒドロキシル化脂肪酸またはエポキシ化脂肪酸への変換を触媒するのに有効である。本発明において有用なヒドロキシラーゼまたはエポキシゲナーゼ酵素の酵素産物は典型的には炭素数16、18もしくは20の長さの脂肪酸またはそれらの類似体である。そのような産物は典型的にはデルタ-9位(カルボニル(カルボキシル)炭素から数えてC9とC10との間)にシス(Z)またはトランス(E)炭素二重結合を有する。そのような産物はC12、C13またはC12とC13との両方にヒドロキシまたはエポキシ修飾をも有する。本発明の脂肪酸ヒドロキシラーゼまたはエポキシゲナーゼには、適当な条件下で補酵素A、アシルキャリヤータンパク質(ACP)または脂質結合モノエン脂肪酸基質からリシノール酸、レスクエロール(lesquerolic)酸、ヒドロキシエルカ酸(16-ヒドロキシドコサ-シス-13-エン酸)またはヒドロキシパルミトレイン酸(12-ヒドロキシヘキサデカ-シス-9-エン酸)を産生するのを触媒する能力を示すポリペプチドが含まれる。
【0060】
いくつかの実施形態においては、該産物は、以下の構造を有するC16-C20モノ不飽和オキソ-脂肪酸である。
【化5】

R1およびR2の一方または両方はヒドロキシルでありうる。例えば、R1は水素であり、R2はヒドロキシルであり、またはR1はヒドロキシルであり、R2は水素であり、またはR1およびR2の両方はヒドロキシルである。あるいは、R1はケト、R2は水素であることが可能であり、またはR1は水素、R2はケトであることが可能である。R3はC2アルキル、C4アルキルまたはC6アルキルでありうる。
【0061】
他の実施形態においては、該産物は、以下の構造を有するC16-C20エポキシモノ不飽和脂肪酸産物である。
【化6】

前記構造においてXが水素である場合には、該産物は脂肪酸である。一方、Xはまた、CoA、ACP、ホスファチジルコリンまたはホスファチジルエタノールアミンでありうる。Xはまた、グリセロール、グリセリド、メチルまたはNa+でありうる。前記の構造のどちらにおいても、第9炭素と第10炭素との間の二重結合はシスまたはトランスでありうる。
【0062】
ポリペプチドがヒドロキシラーゼ活性またはエポキシゲナーゼ活性を示すのかどうかは、US 6,310,194に記載のヒドロキシラーゼアッセイまたはUS 6,329,518に記載のエポキシゲナーゼアッセイにおいて該ポリペプチドを試験することにより判定されうる。適当なポリペプチドを特定するための迅速かつ効率的な方法は、被検ポリペプチドを発現する酵母における脂肪酸産生の分析である。Saccharomyces cerevisiaeはリノール酸(デルタ-12デサチュラーゼ様エポキシゲナーゼの基質)を産生しないため、リノール酸またはリノール酸メチルは基質として外的に供給される。該基質からヒドロキシル化またはエポキシ化産物への任意の変換は、例えば、加水分解後およびメチルエステルへの変換後、全脂肪酸のガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)により測定されうる。該ポリペプチドを発現するSaccharomyces cerevisiaeにおいて、該ポリペプチドを欠く又は発現しない対応対照S. cerevisiaeにおいて産生される量より統計的に有意に大きな量のヒドロキシ-またはエポキシ-脂肪酸を該ポリペプチドが産生する場合には、該ポリペプチドはヒドロキシラーゼ活性またはエポキシゲナーゼ活性を有するとみなされる。適当なポリペプチドを特定するためのもう1つの技術は、Arabidopsis植物の栄養組織または種子の組織の少なくとも1つ、例えば葉組織、根組織または内乳もしくは胚組織における脂肪酸含量の分析である。
【0063】
典型的には、適当なパラメトリックまたはノンパラメトリック統計、例えばχ2検定、スチューデントt検定、Mann-Whitney検定またはF検定でp < 0.05の場合には、差は統計的に有意であるとみなされる。いくつかの実施形態においては、p < 0.01、p < 0.005またはp < 0.001で、差は統計的に有意である。例えば、対照Arabidopsis植物におけるレベルと比較した場合のヒドロキシラーゼポリペプチドを発現するトランスジェニックArabidopsis植物の種子内のリシノール酸レベルの統計的に有意な差は、該ポリペプチドの発現がリシノール酸のレベルの増加を招くことを示している。有意に増加した量のヒドロキシ脂肪酸はサンプルの全脂肪酸含量に対する重量%として約0.01%〜約25%、例えば約0.03%〜約20%、約0.05%〜約20%、約0.1%〜約10%、約0.1%〜約5%、約0.2%〜約3%、約0.5%〜約5.0%、約0.5%〜約10%、約2.0%〜約15%、約1.0%〜約5.0%、約1.0%〜約10%、約3%〜約8%、約3%〜約10%、約4%〜約9%、約4%〜約13%、約5%〜約20%、約5%〜約15%または約5%〜約10%を構成しうる。有意に増加した量のエポキシ脂肪酸はサンプルの全脂肪酸含量に対する重量%として約0.01%〜約35%、例えば約0.03%〜約25%、約0.05%〜約20%、約0.1%〜約5%、約0.2%〜約3%、約0.5%〜約5.0%、約0.5%〜約10%、約2.0%〜約15%、約1.0%〜約5.0%、約1.0%〜約10%、約3%〜約8%、約3%〜約10%、約4%〜約9%、約4%〜約13%、約5%〜約20%、約5%〜約15%または約5%〜約10%を構成しうる。
【0064】
いくつかの実施形態においては、該ポリペプチドは、LesquerellaまたはRicinus植物から単離される遺伝子によりコードされるヒドロキシラーゼである。他の実施形態においては、該ポリペプチドは、Stokesia、CrepisまたはVernonia植物から単離される遺伝子によりコードされるエポキシゲナーゼである。これらの酵素の具体例には、Ricinus communis、Lesquerella fendleri、Lesquerella lindheimeri、Lesquerella gracilisからのオレアートヒドロキシラーゼ、ならびにStokesia laevis、Crepis biennis、Crepis palaestinaおよびVernonia galamensisからのリノレアートエポキシゲナーゼが含まれる。
【0065】
いくつかの実施形態においては、本発明での使用に適したポリペプチドは、2以上の天然に存在するアミノ酸配列の融合体である。例えば、Ricinus communis、Lesquerella fendleri、Lesquerella lindheimeriまたはLesquerella gracilisに由来する天然に存在するオレアートヒドロキシラーゼポリペプチドにおいては、N末端の約30アミノ酸がrabidopsis thaliana FAD2遺伝子由来のN末端アミノ酸で置換されうる。例えば、配列番号19〜23を参照されたい。あるいは、融合ポリペプチドは、N末端のアミノ酸がArabidopsis thaliana FAD2遺伝子由来のN末端アミノ酸により置換された、Stokesia laevisまたはCrepis biennisに由来する天然に存在するリノレアートエポキシゲナーゼ(例えば、配列番号24)でありうる。
【0066】
他の天然に存在するヒドロキシラーゼおよびエポキシゲナーゼは、本明細書に記載の具体的な例示配列を使用して入手可能である。さらに、修飾アミノ酸配列を有する合成ヒドロキシラーゼを製造しうることが明らかであろう。修飾アミノ酸配列には、突然変異した又は末端切断された又は増大した配列などが含まれ、そのような配列には、部分的または全体的に合成されたものが含まれうる。
【0067】
いくつかの実施形態においては、本発明での使用に適したヒドロキシラーゼまたはエポキシゲナーゼは標的ポリペプチドに対して少なくとも60%の全アミノ酸配列同一性、例えば75%、80%、85%、90%、95%、96%、98%または99%の配列同一性を有する。
【0068】
任意の対象核酸またはアミノ酸配列(例えば、本明細書に記載のヒドロキシラーゼポリペプチドのいずれか)に関する、別の「標的」核酸またはアミノ酸配列に対する配列同一性(%)は、以下のとおりに決定されうる。そのような同一性は、整列(アライン)された核酸配列においてマッチ(一致)した位置の数を求め、マッチ位置の数を整列ヌクレオチドの総数で割り算し、100を掛け算することにより算出される。マッチ位置は、整列された核酸配列内の同一位置において同一ヌクレオチドが見出される位置を意味する。配列同一性(%)は任意のアミノ酸配列に関しても決定されうる。配列同一性(%)を決定するためには、BLASTNバージョン2.0.14およびBLASTPバージョン2.0.14を含有するBLASTZの独立型(stand-alone)バージョンからのBLAST 2 Sequences (Bl2seq)プログラムを使用して、標的核酸またはアミノ酸配列を、特定された核酸またはアミノ酸配列と比較する。BLASTZのこの独立型バージョンは、Fish & Richardsonのウェブサイト (World Wide Web at “fr” dot “com” slash “blast”) または米国政府のNational Center for Biotechnology Informationのウェブサイト (World Wide Web at “ncbi” dot “nlm” dot “nih” dot “gov”)から入手可能である。Bl2seqプログラムの使用方法の説明はBLASTZに付属のリードミー(readme)ファイルにおいて見出されうる。
【0069】
Bl2seqは、BLASTNまたはBLASTPアルゴリズムを使用して2つの配列間の比較を実行する。BLASTNは、核酸配列を比較するために使用され、一方、BLASTPは、アミノ酸配列を比較するために使用される。2つの核酸配列を比較するためには、オプションを以下のとおりに設定する。-iを、比較すべき第1核酸配列を含有するファイル(例えば、C:\seq1.txt)に設定する。-jを、比較すべき第2核酸配列を含有するファイル(例えば、C:\seq2.txt)に設定する。-pをblastnに設定する。-oを任意の所望のファイル名(例えば、C:\output.txt)に設定する。-qを-1に設定する。-rを2に設定する。すべての他のオプションはそれらのデフォルト設定のままにしておく。以下のコマンドが、2つの配列間の比較を含有する出力ファイルを作成するであろう:C:\Bl2seq -i c:\seq1.txt -j c:\seq2.txt -p blastn -o c:\output.txt -q -1 -r 2。標的配列が、特定された配列(特定配列)のいずれかの部分と相同性(ホモロジー)を共有する場合には、示された出力ファイルは、整列配列として、相同性のそれらの領域を与えるであろう。標的配列が特定配列のいずれの部分とも相同性を共有しない場合には、示された出力ファイルは整列配列を与えないであろう。
【0070】
整列したら、特定配列からの配列とのアライメントにおいて示された標的配列からの連続ヌクレオチドの数を任意のマッチ位置から任意の他のマッチ位置まで計数することにより、長さを決定する。マッチ位置は、標的配列および特定配列の両方において同一ヌクレオチドが示される任意の位置である。ギャップはヌクレオチドではないため、標的配列に示されたギャップは計数されない。同様に、特定配列内に示されたギャップは計数されない。なぜなら、標的配列ヌクレオチドが計数されるのであり、特定配列からのヌクレオチドが計数されるのではないからである。
【0071】
特定の長さにわたる同一性(%)は、その長さにわたるマッチ位置の数を計数し、その数をその長さで割り算し、ついで得られた値に100を掛け算することにより決定される。例えば、(i)500アミノ酸の標的配列を対象アミノ酸配列と比較し、(ii)Bl2seqプログラムが、対象配列の領域と整列された標的配列からの200アミノ酸を示し、ここで、その200アミノ酸領域の最初と最後のアミノ酸がマッチしており、(iii)それらの200個の整列アミノ酸にわたるマッチの数が180である場合には、その500アミノ酸の標的配列は200の長さ、およびその長さにわたる90%(すなわち、180/200×100 = 90)の配列同一性を有する。いくつかの実施形態においては、本発明での使用に適したポリペプチドのアミノ酸配列は配列番号13、14、15、16、17、18、36、134、135、136、137または138のアミノ酸配列に対して40%の配列同一性を有する。他の実施形態においては、本発明での使用に適したポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号13、14、15、16、17、18、36、134、135、136、137または138のアミノ酸配列に対して40%を超える配列同一性(例えば、> 40%、> 50%、> 60%、> 70%、> 80%、> 90%または>95%)を有する。
【0072】
特定配列と整列する単一の核酸標的配列内の種々の領域がそれぞれ、それらに特有の同一性(%)を有すると理解されるであろう。同一性(%)の値は小数点以下第1位に四捨五入されることに注意すべきである。例えば、78.11、78.12、78.13および78.14は78.1に切り捨てられ、一方、78.15、78.16、78.17、78.18および78.19は78.2に切り上げられる。長さの値は常に整数となることにも注意すべきである。
【0073】
鋳型または対象ポリペプチドの保存領域の特定は相同ポリペプチド配列分析を促進しうる。保存領域は、反復配列であり何らかの二次構造(例えば、ヘリックスおよびβシート)を形成しており正もしくは負に荷電したドメインを確立しており又はタンパク質モチーフもしくはドメインを表している、鋳型ポリペプチドの一次アミノ酸配列内の領域を位置決定することにより特定されうる。例えば、種々のタンパク質モチーフおよびドメインに関するコンセンサス配列を記載しているPfamウェブサイト(http://www.sanger.ac.uk/Pfam/およびhttp://genome.wustl.edu/Pfam/)を参照されたい。Pfamデータベースに含まれる情報の説明はSonnhammerら (1998) Nucl. Acids Res. 26: 320-322; Sonnhammerら (1997) Proteins 28:405-420; およびBatemanら (1999) Nucl. Acids Res. 27:260-262に記載されている。Pfamデータベースから、タンパク質モチーフおよびドメインのコンセンサス配列を鋳型ポリペプチド配列と整列させて保存領域を決定することが可能である。
【0074】
保存領域は、密接に関連した植物種からの同一または関連ポリペプチドの配列を整列させることによっても決定されうる。密接に関連した植物種は、好ましくは、同一科のものである。あるいは、すべて単子葉植物である又はすべて双子葉植物である植物種からの配列を使用して、アライメントを行う。いくつかの実施形態においては、2つの異なる植物種からの配列のアライメントが適切である。例えば、1以上の保存領域を特定するために、カノーラおよびArabidopsisからの配列を使用することが可能である。
【0075】
典型的には、少なくとも約35%のアミノ酸配列同一性を示すポリペプチドが保存領域の特定に有用である。関連タンパク質の保存領域は少なくとも40%のアミノ酸配列同一性(例えば、少なくとも50%、少なくとも60%または少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%のアミノ酸配列同一性)を示すことがある。いくつかの実施形態においては、標的および鋳型ポリペプチドの保存領域は少なくとも92、94、96、98または99%のアミノ酸配列同一性を示す。アミノ酸配列同一性はアミノ酸またはヌクレオチド配列から演繹されうる。
【0076】
本発明において有用なポリペプチドは、場合によっては、アミノ末端またはカルボキシ末端に追加的なアミノ酸残基を有しうる。例えば、6×HisタグまたはFLAG(商標)残基をポリペプチドのアミノ末端に連結することが可能である。例えば、米国特許第4,851,341号および第5,001,912号を参照されたい。もう1つの例として、レポーターポリペプチド、例えばグリーン蛍光タンパク質(GFP)を該ポリペプチドのカルボキシ末端に融合させることが可能である。例えば、米国特許第5,491,084号を参照されたい。
【0077】
核酸
本発明に適した核酸としては、本明細書に記載のポリペプチドをコードする核酸が挙げられる。典型的には、そのような核酸は、植物内への導入および植物ゲノム内への組込みに適したDNA構築物内に組込まれる。ヒドロキシラーゼまたはエポキシゲナーゼポリペプチドをコードする核酸を含むDNA構築物は、植物の栄養組織または種子の組織の少なくとも1つにおける発現をもたらす1以上の調節要素に機能しうる形で連結されている。典型的には、DNA構築物は形質転換植物内での発現のための5'-調節要素および3'-調節要素を含む。いくつかの実施形態においては、そのような構築物はキメラである。すなわち、コード配列と1以上の調節配列とが、異なる起源に由来する。例えば、ポリペプチドコード配列はRicinus communisヒドロキシラーゼであることが可能であり、5'-調節要素はジャガイモS27aプロモーターであることが可能である。しかし、非キメラDNA構築物も使用されうる。DNA構築物はクローニングベクター核酸をも含みうる。本発明での使用に適したクローニングベクターは商業的に入手可能であり、当業者により通常に使用されている。
【0078】
調節要素は、典型的には、それ自体は遺伝子産物をコードしない。その代わりに、調節要素はコード配列の発現、すなわち、コード配列の転写ならびに生じたmRNAのプロセシングおよび翻訳に影響を及ぼす。DNA構築物における使用に適した調節要素の具体例には、核酸配列の発現をモジュレーションするプロモーター配列、エンハンサー配列、応答要素または誘導要素が含まれる。本明細書中で用いる「機能しうる形で連結(された)」は、コード化ポリペプチドの発現を可能にする又は促進するよう、構築物内で調節要素が核酸コード配列に対して配置されていることを意味する。構築物内に含まれる要素の選択は、限定的なものではないが複製効率、選択性、誘導可能性、所望の発現レベルおよび細胞または組織特異性を含むいくつかの要因に左右される。
【0079】
適当な調節要素には、或る細胞型においてのみ又は或る細胞型において優先的に転写を開始させるプロモーターが含まれる。例えば、基本分裂組織、維管束、形成層、篩部、皮質、茎頂分裂組織、側枝分裂組織、根端分裂組織、側根分裂組織、葉原基、葉肉または葉表皮のような栄養組織に特異的なプロモーターが、適当な調節要素でありうる。細胞型または組織特異的プロモーターは、栄養組織以外の組織における、機能しうる形で連結された配列の発現を駆動しうる。したがって、本明細書中で用いる細胞型または組織特異的プロモーターは、標的組織において優先的に発現を駆動するが他の細胞型または組織においても幾らかの発現を引き起こしうるプロモーターである。植物ゲノムDNA内のプロモーター領域を特定し特徴づけるための方法には、例えば、以下の参考文献に記載されている方法が含まれる:Jordanoら (1989) Plant Cell, 1:855-866; Bustosら (1989) Plant Cell, 1:839-854; Greenら (1988) EMBO J. 7:4035-4044; Meierら (1991) Plant Cell, 3:309-316; およびZhangら (1996) Plant Physio. 110:1069-1079。
【0080】
他の適当な調節要素は5'-非翻訳領域(5'-UTR)および3'-非翻訳領域(3'-UTR)において見出されうる。5'-UTRおよび3'-UTRなる語は、DNA構築物内のコード配列のそれぞれ5'側および3'側に配置されておりmRNA内のそれぞれ開始コドンの5'側および停止コドンの3'側に見出されうる核酸を意味する。5'-UTRおよび3'-UTRは、コード配列の転写に影響を及ぼす要素、ならびにmRNAのプロセシングおよびコード配列の翻訳に影響を及ぼす要素を含みうる。
【0081】
植物における使用に適した調節要素には、ノパリンおよびマンノピン(mannopine)シンターゼ調節要素、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター、Arabidopsis根周辺部IRT2プロモーター、Solanum tuberosum(ジャガイモ)リボソームS27a Ubi3プロモーター、イネアクチンI遺伝子プロモーターおよびトウモロコシ由来のユビキチンI遺伝子プロモーター(McElroyら (1995) Mol. Breed. 1:27-37)が含まれる。関心のある誘導可能な線虫応答性プロモーターには、タバコtobRB7(Yamamotoら (1991) Plant Cell, 3(4):371-382)、ヒマワリSun-RB7(Sardaら (1999) Plant Mol Biol. 40(1):179-191)およびジャガイモpotRB7(Heinrichら (1996) Plant Physiol. 112(2):861-864)プロモーターが含まれる。根発現を要する用途において使用されうる他の典型的なプロモーター5'-UTR構築物を表8に示す。
【0082】
ポリペプチドの発現が葉または根のような栄養植物組織において望まれる実施形態では、Arabidopsis FAD2またはFAD3遺伝子の5'上流非コード領域(5'-UTR)および3'下流非コード領域(3'-UTR)の全部または一部の使用が意図される。同様に適当なものとして、配列番号7〜12の核酸および配列番号19〜24のアミノ酸配列の場合のように、例えばFAD2またはFAD3デサチュラーゼのようなデサチュラーゼからの最初の約30アミノ酸をヒドロキシラーゼまたはエポキシゲナーゼの同等N末端領域で置換することにより、キメラヒドロキシラーゼおよびエポキシゲナーゼを構築することが挙げられる。特に望ましいのは、非種子特異的UTRと共にキメラデサチュラーゼ様エポキシゲナーゼまたはヒドロキシラーゼを使用することである。
【0083】
転写終結領域のような調節要素がDNA構築物内に提供されうる。DNA構築物内のコード配列および転写終結領域が、天然に存在する異なる起源に由来する場合には、該転写終結領域は、典型的には、該終結領域が由来する構造遺伝子の3'側の配列の少なくとも約0.5kb、好ましくは約1〜3kbを含有する。
【0084】
DNA構築物は、他のポリペプチドをコードする配列をも含有しうる。そのようなポリペプチドは、例えば、宿主生物内への核酸構築物の導入または維持を促進しうる。考えられうる宿主細胞には、原核細胞および真核細胞の両方が含まれる。意図される用途に応じて、宿主細胞は単細胞であることが可能であり、あるいは分化した又は未分化の多細胞生物内に見出されうる。宿主に応じて、調節要素は、ウイルス、プラスミドまたは染色体遺伝子などに由来する要素を含みうる。原核または真核微生物、特に単細胞宿主における発現のためには、多種多様な構成的または誘導性プロモーターが使用されうる。微生物内での発現は、所望のポリペプチドの容易な入手源を提供しうる。記載されている転写開始領域としては、例えばβ-ガラクトシダーゼ、T7ポリメラーゼ、トリプトファンEなどのような遺伝子を含む、細菌および酵母宿主、例えばEscherichia coli、Bacillus subtilis、Saccharomyces cerevisiaeに由来する領域が挙げられる。
【0085】
DNA構築物は、ヒドロキシラーゼまたはエポキシゲナーゼポリペプチドの発現、活性、生化学的活性または生理的活性に影響を及ぼしうる他のポリペプチドをコードする配列をも含みうる。例えば、DNA構築物は、植物の栄養組織または種子の組織の少なくとも1つにおける発現をもたらす少なくとも1つの調節要素に機能しうる形で連結された、PDAT、DAGAT、リパーゼ、FAD2またはFAD3ポリペプチドをコードする核酸を含みうる。いくつかの実施形態においては、DNA構築物は、PDATポリペプチドをコードする核酸、およびFAD2ポリペプチドをコードする核酸を含む。あるいは、そのような他のポリペプチドコード配列は別のDNA構築物上に提供されうる。
【0086】
適当なリン脂質:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(PDAT)ポリペプチドおよびジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DAGAT)ポリペプチドには、A. thalianaDAGATまたはC. elegans DAGATが含まれる。適当なPDATおよびDAGATポリペプチドのコード配列には、GenBank(登録商標)アクセッション番号AAF19262、AAF19345、AAF82410およびP40345が含まれる。
【0087】
DAGATおよびPDAT酵素は、トリアシルグリセロール(TAG)画分中に見出される脂肪酸の量(Bouvier-Naveら (2000) Biochem. Soc. Trans. 28(6):692-695; Jakoら (2001) 126(2):861-874)およびタイプ(Banasら (2000) Biochem. Soc. Trans. 28(6):703-705; Dahlqvistら (2000) Proc. Natl. Acad. Sci USA, 97(12):6487-6492)の両方の重要な決定因子である。さらに、トリアシルグリセロール(TAG)画分は、種子におけるリシノール酸およびベルノール酸のような新規脂肪酸の主要な宝庫であり、これは植物細胞膜に対するこれらの特異脂肪酸の破壊効果を最小にすると考えられている(Millarら (2000) Trends Plant Sci. 5(3):95-101)。ほとんどの植物においては、根、葉および他の非種子組織は通常は、主なトリアシルグリセロール蓄積の場ではない。したがって、非種子組織においては、PDATおよびDAGATのようなTAG合成経路における鍵酵素の活性は、予想される用途に関して最適以下となる可能性があり、それは、TAG画分内の脂肪酸蓄積の有意な増加をもたらしうるこれらの酵素の過剰発現により改善されうる(Bouvier-Naveら (2000) Eur. J. Biochem. 267(1):85-96)。
【0088】
1以上のデサチュラーゼをコードするDNA構築物には、デルタ-12脂肪酸デサチュラーゼまたはデルタ-15脂肪酸デサチュラーゼをコードする構築物が含まれる。例えば、Arabidopsis thaliana FAD2またはArabidopsis thaliana FAD3ポリペプチドは、根および/または葉のような非種子組織における発現をもたらす適当なプロモーターに機能しうる形で連結されうる。デルタ-12デサチュラーゼおよびエポキシゲナーゼの発現は有用でありうる。なぜなら、該デサチュラーゼの産物であるリノール酸は該エポキシゲナーゼによりベルノール酸に変換される基質だからである。
【0089】
本明細書に記載の核酸は、相同な植物ヒドロキシラーゼまたはエポキシゲナーゼをコードする配列を特定するために使用されうる。得られた配列は他の植物ヒドロキシラーゼまたはエポキシゲナーゼを提供しうる。特に、PCRは、本明細書に記載の配列データから関連核酸を得るための有用な技術でありうる。当業者であれば、典型的に高度に保存された配列の配列比較または領域に基づいてオリゴヌクレオチドプローブを設計しうるであろう。特に関心が持たれるのは、図2におけるヒドロキシラーゼおよびエポキシゲナーゼ(配列番号13〜24および34〜42)の間のアミノ酸配列の保存領域に基づくポリメラーゼ連鎖反応プライマーである。これらのプローブを使用するPCR反応の設計および方法に関する詳細は実施例に更に詳しく記載されている。核酸プローブを使用する場合には、それは全コード配列より短くてもよい。例えば10、15、20または25ヌクレオチドまたはそれ以上の長さのオリゴヌクレオチドが使用されうる。
【0090】
ヒドロキシル化脂肪酸は幾つかの天然植物種において大量に見出される。このことは植物酵素源に関する幾つかの可能性を示唆している。例えば、リシノレアートに関連したヒドロキシ脂肪酸は種々のLesquerella種からの種油中に大量に見出される。特に関心が持たれるレスクエロール(lesquerolic)酸は、鎖のカルボキシル末端に2つの追加的な炭素を有する、リシノレアートの炭素数20のホモログである。ヒドロキシ化脂肪酸の他の天然植物源には、Linum属の種子、Wrightia種、Lycopodium種、Strophanthus種、Convolvulaces種、Calendula種および他の多数の種の種子が含まれる(van de Looら (1993))。例えば、Lesquerella densipilaは、ヒマおよびLesquerella fendleriヒドロキシラーゼと密接に関連した酵素により産生されると考えられている、ヒドロキシル基を有する炭素数18のジ不飽和脂肪酸を含有する(van de Looら (1993) Lipid Metabolism in Plants CRC Press, Boca Raton, p. 99-126)。同様に、Vernonia属、Crepis属、Euphorbia属およびStokesia laevisを含む種々の植物においてエポキシ化脂肪酸が見出される。
【0091】
また、天然に存在する配列から修飾されたポリペプチドをコードする核酸を突然変異誘発により製造することが可能である。デルタ-12デサチュラーゼは、例えば、標的突然変異誘発によりオレアートヒドロキシラーゼに変換されうる(Brounら (1998) Science, 282(5392):1315-1317; Broadwaterら (2002) J Biol Chem. 277(18):15613-15620)。デルタ-15(オメガ-3)デサチュラーゼのようなコード配列における同様の変化を施して新規ヒドロキシラーゼを得ることが可能である。当技術分野でよく知られているとおり、植物ヒドロキシラーゼまたはエポキシゲナーゼをコードするcDNAクローンが得られたら、それを使用してその対応ゲノム核酸を得ることが可能である。したがって、抗体調製物、核酸プローブなどを製造し、それらを使用して相同または関連ヒドロキシラーゼおよびエポキシゲナーゼを種々の起源からスクリーニングし回収しうる、と当業者は認識するであろう。
【0092】
典型的には、本発明の核酸は標的核酸に対して70%以上の配列同一性、例えば80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%またはそれ以上の配列同一性を有する。配列同一性は本明細書に記載のとおりに決定される。いくつかの実施形態においては、核酸は20〜30ヌクレオチド、または20〜50ヌクレオチド、または25〜100ヌクレオチド、または500〜1500ヌクレオチド、または900〜2,000ヌクレオチドの長さである。核酸の特定の実施形態は配列表に記載のヌクレオチド配列を含む。遺伝暗号の縮重が、アミノ酸配列の対応修飾を伴うことなくコドン修飾を許容することに注意すべきである。したがって、核酸におけるコドンは、所望により修飾されることが可能であり、これはポリペプチドの発現を最適化しうる。例えば、選択された植物種ゲノムにおいて8%以下の出現頻度を有するコドンは、より高い出現頻度のコドン(例えば、その特定のアミノ酸に関する最高出現頻度のコドンまたは2番目に高い出現頻度のコドン)により置換されうる。もう1つの代替手段として、選択された植物種のゲノムの既知配列においてコドンが12%以下の出現頻度を有する場合には、コドンの連続的ペアのメンバーの1つを修飾することが可能である。コドン使用頻度データベースに関するデータは例えば<http://www.kazusa.or.jp/codon/>において見出されうる。
【0093】
mRNAの不安定性をもたらしうるATTTA(すなわち、AUUUA)要素を除去するためにコドンを変化させることも可能であり、潜在的ポリアデニル化部位を除去するためにコドンを変化させることも可能である。A、G、CまたはTの5個以上の連続的ヌクレオチドの並び(例えば、TTTTTT)を中断させるためにコドンを修飾することも可能である。また、異常スプライシングの可能性を減少させるためにコドンを修飾することも可能である。予測アルゴリズム、例えば<http://www.cbs.dtu.dk/services/NetPGene>のアルゴリズムを使用して、スプライシングの可能性を減少させるために、スプライシングの可能性を評価し、ドナー(GT)またはアクセプター(AG)スプライス部位を除去することが可能である。また、該ポリペプチドのN末端付近のコドンを、選択した植物、例えばダイズ(Glycine max)にとって好ましいコドンへ変化させることが可能である。限定的なものではないが前記の修飾を含む1以上のコドン修飾を核酸コード配列に施すことが可能であると理解されるであろう。植物発現を改善するための1以上のコドン修飾を有し野生型配列と比較してアミノ酸配列の若干の変化を有する配列の具体例には、配列番号28〜33および129〜133が含まれる。
【0094】
ポリペプチドをコードする核酸はゲノムコード配列、cDNAコード配列またはmRNAコード配列を有しうる。cDNAコード配列は、プレプロセシング配列、例えばトランジットまたはシグナルペプチド配列を有していてもよい。トランジットまたはシグナルペプチド配列は、与えられた細胞小器官への該タンパク質の運搬を促進し、しばしば、該細胞小器官への進入に際して該ポリペプチドから切断されて「成熟」配列を遊離する。植物細胞発現カセットにおいては該前駆体DNA配列の使用が有用でありうる。
【0095】
トランスジェニック植物
本発明のもう1つの態様においては、トランスジェニック植物を提供する。そのような植物は、典型的には、本明細書に記載のDNA構築物のポリペプチドコード配列を発現して、そのような植物の栄養植物組織または種子の組織の少なくとも1つにおけるヒドロキシル化またはエポキシ化脂肪酸の量の増加をもたらす。植物種または品種は、異なる植物種または品種に由来するポリペプチドをコードするDNA構築物で形質転換されうる(例えば、ダイズは、ヒマ酵素をコードする遺伝子で形質転換されうる)。あるいは、植物種または品種は、同一植物種または品種に由来するポリペプチドをコードするDNA構築物で形質転換されうる。
【0096】
したがって、本発明の方法は、本明細書に記載のDNA構築物を植物内に導入することを含む。外因性核酸を単子葉植物および双子葉植物内に導入するための技術は当技術分野で公知であり、該技術には、限定的なものではないがAgrobacterium媒介形質転換、リポソーム融合、マイクロインジェクション、ウイルスベクター媒介形質転換、浸透、吸収、エレクトロポレーションおよび粒子銃(パーティクルガン)形質転換(例えば、米国特許第5,204,253号および第6,013,863号)が含まれる。形質転換のための受容組織として細胞または組織培養を使用する場合には、当業者に公知の技術により、植物を形質転換培養から再生させることが可能である。形質転換をもたらす任意の方法を用いることが可能である。
【0097】
植物細胞形質転換のためにAgrobacteriumを使用する場合には、Agrobacterium宿主内に存在するTi-またはRi-プラスミドとの相同組換えのために、Agrobacterium宿主内に導入されうるベクターを使用することが可能である。組換えのためのT-DNAを含有するTi-またはRi-プラスミドは武装(armed)(ゴール形成を引き起こしうる)状態または武装解除(disarmed)(ゴールを形成し得ない)状態でありうるが、後者は、形質転換Agrobacterium宿主内にvir遺伝子が存在する場合に限り許容される。武装状態のプラスミドは正常植物細胞およびゴールの混合物を与えうる。
【0098】
植物細胞を形質転換するためのビヒクルとしてAgrobacteriumを使用するいくつかの場合には、T-DNA境界により境界が定められたDNA構築物を広域宿主スペクトルベクター内に導入する。広域宿主スペクトルベクターは文献に記載されている。一般に使用されるのはpRK2またはその誘導体である。該発現構築物およびT-DNAと共に含まれるものとしては、1以上のマーカーが挙げられ、これは形質転換Agrobacteriumおよび形質転換植物細胞の選択を可能にする。植物細胞で使用するための多数のマーカー、例えばカナマイシン、アミノグリコシドG418、ヒグロマイシンなどに対する耐性マーカーが開発されている。
【0099】
除草剤耐性を付与する多数の遺伝子がマーカーとして使用されうる。成長点または分裂組織を抑制する除草剤に対する耐性を付与する遺伝子が好適でありうる。この範疇における典型的な遺伝子は、例えばU.S. 5,767,366および5,928,937に記載されているとおり、突然変異ALSおよびAHAS酵素をコードする。米国特許第4,761,373号および第5,013,659号は、種々のイミダゾリノンまたはスルホンアミド除草剤に耐性である植物に関するものである。米国特許第4,975,374号は、グルタミンシンテターゼ(GS)を抑制することが知られている除草剤(例えば、ホスフィノトリシンおよびメチオニンスルホキシミン)による抑制に耐性である突然変異グルタミンシンテターゼ(GS)をコードする遺伝子を含有する植物細胞および植物に関するものである。米国特許第5,162,602号は、シクロヘキサンジオンおよびアリールオキシフェノキシプロパン酸除草剤による抑制に耐性である植物を開示している。該耐性は、改変されたアセチル補酵素Aカルボキシラーゼ(ACCアーゼ)により付与される。グリホサート(商品名Roundup(登録商標)で販売されている)に対する耐性に関する遺伝子も適している。例えば、米国特許第4,940,835号および米国特許第4,769,061号を参照されたい。米国特許第5,554,798号はトランスジェニックグリホサート耐性トウモロコシ植物を開示しており、この耐性は、改変された5-エノールピルビル-3-ホスホシキマート(EPSP)シンターゼ遺伝子により付与される。グルホシナートアンモニウムまたはホスフィノトレシンのようなホスホノ化合物およびピリジノキシまたはフェノキシプロピオン酸およびシクロヘキソンに対する耐性に関する遺伝子も適している。欧州特許出願番号0 242 246を参照されたい。他の適当な除草剤には、光合成を抑制するもの、例えばトリアジンおよびベンゾニトリル(ニトリラーゼ)が含まれる。米国特許第4,810,648号を参照されたい。他の適当な除草剤には、2,2-ジクロロプロピオン酸、セトキシジム(sethoxydim)、ハロキシフォプ(haloxyfop)、イミダゾリノン除草剤、スルホニル尿素除草剤、トリアゾロピリミジン除草剤、s-トリアジン除草剤およびブロモキシニル(bromoxynil)が含まれる。プロトックス(protox)酵素に対する耐性を付与する除草剤も適している。例えば、米国特許出願第20010016956号および米国特許第6,084,155号を参照されたい。使用する個々のマーカーは本発明には必須ではなく、個々の宿主および構築方法に応じて種々のマーカーが好適となりうる。
【0100】
トランスジェニック植物は、典型的には、そのゲノム内に組込まれたDNA構築物を含有し、典型的にはメンデル遺伝パターンを示す。例えば、ポリペプチドをコードする核酸を他の系統内に導入するために、あるいは該核酸を他の種に導入するために、あるいは他の望ましい形質の更なる選択のために、トランスジェニック植物を育種計画に加えることが可能である。あるいは、そのような技術に適した種のために、トランスジェニック植物を栄養繁殖させることが可能である。後代は特定の植物または植物系統の子孫を含む。本植物の後代は、F1、F2、F3および後続世代の植物上で形成された種子、またはBC1、BC2、BC3および後続世代の植物上で形成された種子を含む。トランスジェニック植物により産生された種子を成長させ、ついで自殖させて(または他殖させ自殖させて)、新規ポリペプチドをコードする核酸に関してホモ接合である種子を得ることが可能である。
【0101】
本発明の実施において使用しうる植物には、限定的なものではないが以下のものが含まれる:タバコ (Nicotiana tabacum)、ジャガイモ (Solanum tuberosum)、ダイズ (glycine max)、ラッカセイ (Arachis hypogaea)、ワタ (Gossypium hirsutum)、サツマイモ (Ipomoea batatus)、キャッサバ (Manihot esculenta)、コーヒー (Cofea spp.)、ココヤシ (Cocos nucifera)、パイナップル (Ananas comosus)、柑橘類高木 (Citrus spp.)、カカオ (Theobroma cacao)、チャ (Camellia sinensis)、バナナ (Musa spp.)、アボカド (Persea americana)、イチジク (Ficus casica)、グワバ (Psidium guajava)、マンゴー (Mangifera indica)、オリーブ (Olea europaea)、パパイア (Carica papaya)、カシュー (Anacardium occidentale)、マカダミア (Macadamia integrifolia)、アーモンド (Prunus amygdalus)、テンサイ (Beta vulgaris)、トウモロコシ (Zea mays)、コムギ、エンバク、ライムギ、オオムギ、イネ、野菜、観賞植物および針葉樹。野菜には、トマト (Lycopersicon esculentum)、レタス (例えば、Lactuca sativa)、サヤインゲン (Phaseolus vulgaris)、アオイマメ (Phaseolus limensis)、エンドウ (Lathyrus spp.) ならびにCucumis属のメンバー、例えばキュウリ (C. sativus)、カンタループ (C. cantalupensis)およびマスクメロン (C. melo)が含まれる。観賞植物には、アザレア (Rhododendron spp.)、アジサイ (Macrophylla hydrangea)、ハイビスカス (Hibiscus rosasanensis)、バラ (Rosa spp.)、チューリップ (Tulipa spp.)、ラッパズイセン (Narcissus spp.)、ペチュニア (Petunia hybrida)、カーネーション (Dianthus caryophyllus)、ポインセチヤ (Euphorbia pulcherima)およびキクが含まれる。本発明の実施に使用されうる針葉樹には、例えば、マツ、例えばテーダマツ (Pinus taeda)、エリオットマツ (Pinus elliotii)、ポンデローサマツ (Pinus ponderosa)、コントルタマツ (Pinus contorta)およびモンテレーマツ (Pinus radiata); ベイマツ (Pseudotsuga menziesii); ベイツガ (Tsuga canadensis); ベイトウヒ (Picea glauca); アカスギ (Sequoia sempervirens); 純粋なモミ(true firs)、例えばヨーロッパモミ (Abies amabilis) およびバルサムモミ (Abies balsamea); ならびにシーダー、例えばベイスギ (Thuja plicata) およびアラスカ・イエロー・シーダー (Alaska yellow-cedar)(Chamaecyparis nootkatensis)が含まれる。適当な草類には、ナガハグサ (Poa pratensis) およびコヌカグサ (Agrostris palustris)が含まれる。
【0102】
本発明のポリペプチドによりイン・プランタ(in planta)で産生されるヒドロキシ化またはエポキシ化脂肪酸を更に、植物内に通常存在し遺伝子工学方法により植物内に導入される他の酵素による酵素修飾に付すことが可能である。例えば、レスクエロール(lesquerolic)酸は多数のLesquerella種に存在し、リシノール酸の伸長により産生されると考えられている(Moonら (2001) Plant Physiol. 127(4):1635-1643)。したがって、トランスジェニック植物内のRicinus communisヒドロキシラーゼ構築物の存在は、ヒドロキシラーゼポリペプチドによるリシノール酸の産生および内因性ポリペプチドによるリシノール酸の伸長を介した同一植物におけるレスクエロール(lesquerolic)酸の産生に十分なものでありうる。
【0103】
線虫耐性
非種子組織内のヒドロキシ-およびエポキシ-脂肪酸の産生に関してトランスジェニック植物を試験することが可能である。そのような植物を殺線虫活性に関しても試験することが可能である。ヒドロキシル化およびエポキシ化脂肪酸の産生および殺線虫活性に関する同様の試験は、A. rhizogenesでの形質転換により形成される毛状根培養上で行うことが可能である。したがって、本発明は、駆虫活性に関してトランスジェニック植物をスクリーニングするための方法であって、該植物を、該植物が駆虫活性を有するか否かを判定するのに有効な条件下で線虫と接触させることを含んでなる方法に関する。該トランスジェニック植物は、本明細書に記載のヒドロキシラーゼまたはエポキシゲナーゼポリペプチドをコードする核酸を含む。駆虫活性を判定するための適当な条件は本明細書に記載されている。該方法は、トランスジェニック植物からの植物組織、例えば根組織、葉組織または茎組織で行うことも可能である。
【0104】
もう1つの態様においては、本発明は、駆虫活性を有する植物の生産方法に関する。本明細書に記載のとおり、外因性核酸を単子葉植物および双子葉植物内に導入するための技術は当技術分野で公知である。いくつかの実施形態においては、例えば、駆虫活性を有する植物の生産方法は、(1)植物種の再生可能な細胞を本明細書に記載のDNA構築物で形質転換し、(2)1以上のトランスジェニック植物を該細胞から再生させることを含む。得られたトランスジェニック植物は、対応する非形質転換対応物と比較して、非種子組織におけるヒドロキシル化またはエポキシ化脂肪酸の量の統計的に有意な増加を伴いうる。ヒドロキシ-またはエポキシ-脂肪酸のレベルの増加は、駆虫活性を有する植物を与えうる。植物の根、茎、球根または葉に寄生する線虫を、本発明の方法を用いて防除することが可能である。
【0105】
本明細書中で用いる脂肪酸化合物は、イン・プランタ(in planta)で試験された場合に、該化合物が該化合物の非存在下での対照処理と比較して殺線虫活性における統計的に有意な上昇、線虫生殖能における統計的に有意な低下、生殖不能性における統計的に有意な上昇、線虫がその宿主内で感染し生殖する能力における統計的に有意な低下、線虫の成長または発生における統計的に有意な低下を示すならば、それは駆虫活性を有する。例えば、駆虫活性を有する化合物は、成体線虫の生存時間を、同様の段階にある非曝露成体と比較して、例えば約20%、40%、60%、80%またはそれ以上減少させる。いくつかの実施形態においては、駆虫活性を有する化合物は、線虫が複製し再生し及び/又は生存可能な後代を産生するのを、該化合物の非存在下の対照処理と比較して例えば約20%、40%、60%、80%またはそれ以上阻止させうる。
【0106】
駆虫活性を有する化合物は、該化合物の非存在下の対照処理と比較して、線虫忌避特性における統計的に有意な上昇をもたらしうる。該アッセイにおいては、例えばマイクロタイターディッシュのウェルにおいて、液体もしくは固形培地内または該化合物を含有する土壌内で、該化合物を線虫と一緒にする。段階づけられた(staged)成体線虫を該培地上に配置する。生存時間、後代の生存性および/または線虫の運動を測定する。
【0107】
本発明により植物が防御されうる典型的な植物寄生性線虫およびそれらの対応植物としては以下のものが挙げられる:アルファルファ: Ditylenchus dipsaci, Meloidogyne hapla, Meloidogyne incognita, Meloidogyne javanica, Pratylenchus spp., Paratylenchus spp., Xiphinema spp.; バナナ: Radopholus similis, Helicotylenchus multicinctus, Meloidogyne incognita, M. arenaria, M. javanica, Pratylenchus coffeae, Rotylenchulus reniformis; マメおよびエンドウ: Meloidogyne spp., Heterodera spp., Belonolaimus spp., Helicotylenchus spp., Rotylenchulus reniformis, Paratrichodorus anemones, Trichodorus spp.; キャッサバ: Rotylenchulus reniformis, Meloidogyne spp.; cereals: Anguina tritici (エンマーコムギ、ライムギ、スペルトコムギ), Bidera avenae (エンバク、コムギ), Ditylenchus dipsaci (ライムギ, エンバク), Subanguina radicicola (エンバク、オオムギ、コムギ、ライムギ), Meloidogyne naasi (オオムギ、コムギ、ライムギ), Pratylenchus spp. (エンバク、コムギ、オオムギ、ライムギ), Paratylenchus spp. (コムギ), Tylenchorhynchus spp. (コムギ, エンバク); ヒヨコマメ: Heterodera cajani, Rotylenchulus reniformis, Hoplolaimus seinhorsti, Meloidogyne spp., Pratylenchus spp.; 柑橘類: Tylenchulus semipenetrans, Rad
opholus similis, Radopholus citrophilus (フロリダのみ), Hemicycliophora arenaria, Pratylenchus spp., Meloidogyne spp., Bolonolaimus longicaudatus (フロリダのみ), Trichodorus, Paratrichodorus, Xiphinema spp.; クローバー: Meloidogyne spp., Heterodera trifolii; ココヤシ: Rhadinaphelenchus cocophilus; コーヒー: Meloidogyne incognita (ブラジルにおいて最重要), Meloidogyne exigua (広範), Pratylenchus coffeae, Pratylenchus brachyurus, Radopholus similis, Rotylenchulus reniformis, Helicotylenchus spp.; トウモロコシ: Pratylenchus spp., Paratrichodorus minor, Longidorus spp., Hoplolaimus columbus; ワタ: Meloidogyne incognita, Belonolaimus longicaudatus, Rotylenchulus reniformis, Hoplolaimus galeatus, Pratylenchus spp., Tylenchorhynchus spp.,Paratrichodorus minor; ブドウ: Xiphinema spp., Pratylenchus vulnus, Meloidogyne spp., Tylenchulus semipenetrans, Rotylenchulus reniformis; 草類: Pratylenchus spp., Longidorus spp., Paratrichodorus christiei, Xiphinema spp., Ditylenchus spp.; ラッカセイ: Pratylenchus spp., Meloidogyne hapla., Meloidogyne arenaria, Criconemella spp., Belonolaimus longicaudatus (米国東部); キマメ: Heterodera cajani, Rotylenchulus reniformis, Hoplolaimus seinhorsti, Meloidogyne spp., Pratylenchus spp.; パイナップル: Paratrichodorus christiei, Criconemella spp., Meloidogyne spp., Rotylenchulus reniformis, Helicotylenchus spp., Pratylenchus spp., Paratylenchus spp.; ジャガイモ: Globodera rostochiensis, Globodera pallida, Meloidogyne spp., Pratylenchus spp., Trichodorus primitivus, Ditylenchus spp., Paratrichodorus spp., Nacoabbus aberrans; イネ: Aphelenchiodes besseyi, Ditylenchus angustus, Hirchmanniella spp., Heterodera oryzae, Meloidogyne spp.; 小果類: Meloidogyne spp.; Pratylenchus spp., Xiphinema spp., Longidorus spp., Paratrichodorus christiei, Aphelenchoides spp. (イチゴ); ダイズ: Heterodera glycines, Meloidogyne incognita, Meloidogyne javanica, Belonolaimus spp., Hoplolaimus columbus; テンサイ: Heterodera schachtii, Ditylenchus dipsaci, Meloidogyne spp., Nacobbus aberrans, Trichodorus spp., Longidorus spp., Paratrichodorus spp.; サトウキビ: Meloidogyne spp., Pratylenchus spp., Radopholus spp., Heterodera spp., Hoplolaimus spp., Helicotylenchus spp., Scutellonema spp., Belonolaimus spp., Tylenchorhynchus spp., Xiphinema spp., Longidorus spp., Paratrichodorus spp.; チャ: Meloidogyne spp., Pratylenchus spp., Radopholus similis, Hemicriconemoides kanayaensis, Helicotylenchus spp., Paratylenchus curvitatus; タバコ: Meloidogyne spp., Pratylenchus spp., Tylenchorhynchus claytoni, Globodera tabacum, Trichodorus spp., Xiphinema americanum, Ditylenchus dipsaci (ヨーロッパのみ), Paratrichodorus spp.; トマト: Pratylenchus spp., Meloidogyne spp.; 果樹: Pratylenchus spp. (リンゴ、セイヨウナシ、核果), Paratylenchus spp. (リンゴ、セイヨウナシ), Xiphinema spp. (セイヨウナシ、オウトウ、モモ), Cacopaurus pestis (クルミ), Meloidogyne spp. (核果、リンゴなど), Longidorus spp. (オウトウ), Criconemella spp. (モモ), and Tylenchulus spp. (オリーブ)。
【0108】
本明細書に記載のトランスジェニック植物は、線虫の代謝、成長、生存性、生殖能、発生、感染性および/または線虫の生活環を阻害するための、環境に安全な有効な手段を提供しうる。該植物は、単独で又は化学的殺線虫剤と共に、あるいは統合された病害虫対策計画の一部として使用されうる。トランスジェニック植物は季節にわたる線虫防除をもたらすことが可能であり、それにより、化学防除の必要性およびその頻度を軽減することにより労働力の節約をもたらしうる。
【0109】
以下に、デルタ-12脂肪酸デサチュラーゼ活性が線虫の生存に必須であることを示す実験を記載する。また、デルタ-12脂肪酸デサチュラーゼインヒビターのものに合致した活性を有する殺線虫性脂肪酸およびエステルを含む殺線虫性脂肪酸および類似体も記載する。また、再生植物細胞、根および植物の試験と同様に、これらの脂肪酸を産生する酵素をコードするDNA配列のクローニング、修飾、植物内への導入および非種子組織(例えば、根)内での発現についても記載する。以下の実施例は単なる例示として解釈されるべきであり、いかなる点においても限定的なものと解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0110】
RNA媒介干渉(RNAi)
二本鎖RNA(dsRNA)分子は、RNA媒介干渉として公知の方法(Fireら (1998) Nature 391:806-811およびGonczyら (2000) Nature 408:331-336)によりデルタ-12脂肪酸デサチュラーゼ(デルタ-12 fat2)遺伝子を細胞内で不活性化するために使用されうる。該dsRNA分子はデルタ-12 fat2核酸(好ましくはエキソン)またはその断片のヌクレオチド配列を有しうる。該dsRNA分子は、直接注入により又は濃縮dsRNAを含有する水溶液への線虫の浸漬により又は該dsRNA分子を産生するよう遺伝的に操作された大腸菌(E. coli)上で細菌食性(bacteriovorous)線虫を成長させることにより、線虫に運搬されうる。
【0111】
注入によるRNAi
デルタ-12 fat2活性の抑制効果を調べるために、基本的にはMelloら (1991) EMBO J. 10:3959-3970に記載されているとおりに、C. elegansデルタ-12 fat2遺伝子に対応するdsRNAを該線虫内に注入した。簡潔に説明すると、第1エキソンの全体を含有し第1エキソンと第1イントロンとの間の保存イントロンスプライス部位の直前で終結するC. elegansデルタ-12 fat2配列の一部(詳しくは、651ヌクレオチド長の断片)を含有するプラスミドを構築した。この構築物はC. elegansデルタ-12 fat2遺伝子の最初の約217アミノ酸をコードする。この配列を直鎖状dsDNAとして特異的に増幅するためのプライマーを使用した。T7 RNAポリメラーゼおよびSP6 RNAポリメラーゼを使用して、これらの断片から一本鎖RNAを転写した(該RNAはセンスおよびアンチセンスRNA鎖に対応する)。RNAを沈殿させ、RNアーゼ非含有水に再懸濁させた。ssRNAをアニーリングしてdsRNAを形成させるために、それらのssRNAを一緒にし、95℃まで2分間加熱し、ついで1.5〜2.5時間にわたって70℃〜室温に冷却した。
【0112】
15〜20匹の若い成体C. elegans雌雄同体の体腔内にdsRNAを注入した。線虫をアガロースパッド上に固定化し、典型的には1mg/mLの濃度で注入した。注入は、例えば、10倍および40倍DIC対物レンズを備えたZeiss Axiovert複合顕微鏡を使用する視覚的観察下で行った。Narishigeニードル・プラー(needle puller)、ステージ・マイクロマニュピレーター(Leitz)および10〜20 p.s.iに設定されたN2駆動インジェクター(Narishige)を使用して、マイクロインジェクション用の針を調製した。注入後、200μlの回収用バッファー(0.1% サケ精子DNA, 4% グルコース, 2.4 mM KCl, 66 mM NaCl, 3 mM CaCl2, 3 mM HEPES, pH 7.2)を該アガロースパッドに加え、該線虫をアガロースパッド上で0.5〜4時間回収した。回収後、食物源として大腸菌(E. coli)株OP50の菌叢が播かれたNGM寒天プレート上に該線虫を移した。翌日およびその後連続して3日間、7匹の健常注入線虫を、OP50が播かれた新たなNGMプレートに移した。1日当たり線虫1匹当たりの産卵数、および孵化し生殖性成体に達した卵の数を決定した。対照として、グリーン蛍光タンパク質(GFP)dsRNAを調製し、同様の方法を用いて注入した。GFPは、最初はクラゲから単離された一般に使用されているレポーター遺伝子であり、原核生物系および真核生物系の両方において広く使用されている。GFP遺伝子は野生型C. elegansゲノム内には存在しない。したがって、野生型C. elegansにおいてはGFP dsRNAはRNAi表現型を誘発しない。C. elegansデルタ-12 fat2 RNAi表現型はF1孵化率の著しい減少を示し、少数の生存個体は初期幼虫段階で成長停止した。
【0113】
摂食によるRNAi
デルタ-12 fat2発現を抑制するよう設計された二本鎖RNA(dsRNA)を産生するよう遺伝的に操作された大腸菌(E. coli)の菌叢上でC. elegansを成長させることが可能である。簡潔に説明すると、第1エキソンの全体を含有し第1エキソンと第1イントロンとの間の保存イントロンスプライス部位の直前で終結するC. elegans fat2遺伝子配列の一部のゲノム断片(詳しくは、651ヌクレオチド長の断片)で大腸菌(E. coli)を形質転換した。この構築物はC. elegansデルタ-12 fat2遺伝子の最初の約217アミノ酸をコードする。該651ヌクレオチドゲノム断片を対向T7ポリメラーゼプロモーター間の大腸菌(E. coli)発現ベクター内にクローニングした。ついで該クローンを、IPTG誘導性T7ポリメラーゼを含有する大腸菌(E. coli)の株で形質転換した。対照として、グリーン蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子で大腸菌(E. coli)を形質転換した。C. elegans卵から、またはC. elegans L4から、摂食RNAiを開始させた。C. elegansデルタ-12 fat2またはGFP dsRNAを発現する大腸菌(E. coli)およびIPTGを含有するNGMプレート上、摂食性RNAiをC. elegans卵から23℃で開始させた場合には、該C. elegansデルタ-12 fat2 RNAi摂食性表現型は、部分的に生殖不能なF1個体および死亡したF2胚を示した。C. elegansデルタ-12 fat2またはGFP dsRNAを発現する大腸菌(E. coli)およびIPTGを含有するNGMプレート上、摂食性RNAiをC. elegans L4幼虫から23℃で開始させた場合には、該C. elegans RNAi摂食性表現型は、発生停止した生殖不能なF1線虫と共に、部分的に生殖不能なP0個体(すなわち、最初に曝露された個体)を示した。fat2遺伝子の配列は、該RNAiが他の遺伝子との交差反応性を表すとは考えられないくらいに十分に高い複雑性(すなわち、特有性)を有する。
【0114】
dsRNAを発現する大腸菌(E. coli)の存在下で成長させたC. elegans培養、およびデルタ-12 fat2遺伝子からのdsRNAを注入したC. elegansは著しく損なわれた。このことは、該脂肪酸デサチュラーゼ様遺伝子が線虫における必須機能を提供すること、および該脂肪酸デサチュラーゼ様遺伝子からのdsRNAが、C. elegansにより摂取された場合またはC. elegans内に注入された場合には、致死性であることを示している。
【実施例2】
【0115】
リノール酸メチルエステルによるC. elegansデルタ-12 fat2 RNAi摂食性表現型のレスキュー
C. elegansデルタ-12脂肪酸デサチュラーゼ(FAT-2タンパク質)はモノ不飽和オレイン酸をジ不飽和脂肪酸リノール酸へ変換する。デルタ-12 fat2 RNAiはデルタ-12脂肪酸デサチュラーゼの発現を妨げ、これは線虫におけるリノール酸のレベルの減少を引き起こし、発生停止および死亡を招くと予想される。該RNAi実験に使用したNGM培地への3mM リノール酸メチルエステルの添加はデルタ-12 fat2 RNAi摂食性表現型の部分的レスキューを引き起こす。3mM オレイン酸メチルエステルの添加は該デルタ-12 fat2 RNAi摂食性表現型をレスキューしない(以下の表1を参照されたい)。
【表1】

【実施例3】
【0116】
Caenorhabditis elegansおよび脂肪酸の調製
混合段階(mixed stage)のC. elegansを、M9溶液を使用して、OP50細菌が播かれたプレートから洗い落とした。約50〜100匹の該線虫を含有する250μlの該M9溶液を24ウェルプレートの各ウェル内にピペッティングした。
【0117】
リシノエライジン酸(ricinelaidic acid)の脂肪酸塩および遊離酸の例外を除き、すべての他の脂肪酸エマルションを、Kimら(米国特許第5,698,592号)の教示に従い調製した。簡潔に説明すると、1.5mLのエッペンドルフチューブ内で10μlの脂肪酸を20μlの界面活性剤Igepal CO 630と混合することにより、1mLの1%ストック溶液エマルションを調製した。脂肪酸およびIgepal CO 630を注意深く混合した後、850μlのddH20を加え、均一溶液が得られるまで穏やかなピペッティングにより混合した。最後に、120μlの純粋なイソプロパノールを加え、穏やかなピペッティングにより混合した。リシノール酸のカリウム塩、リシノエライジン酸のナトリウム塩および遊離リシノエライジン酸の1%ストックエマルションも調製した。リシノール酸のカリウム塩の場合には、0.01グラムを100μlのddH20に溶解し、1.5mLエッペンドルフチューブ内で20μlの界面活性剤Igepal CO 630と一緒にした。脂肪酸およびIgepal CO 630を注意深く混合した後、760μlのddH20を加え、均一溶液が得られるまで穏やかなピペッティングにより混合した。最後に、120μlの純粋なイソプロパノールを加え、穏やかなピペッティングにより混合した。リシノエライジン酸のナトリウム塩および遊離酸の場合には、0.01グラムを100μlのアセトンに溶解し、1.5mLエッペンドルフチューブ内で20μlの界面活性剤Igepal CO 630と一緒にした。脂肪酸およびIgepal CO 630を注意深く混合した後、760μlのddH20を加え、均一溶液が得られるまで穏やかなピペッティングにより混合した。最後に、120μlの純粋なイソプロパノールを加え、穏やかなピペッティングにより混合した。ついで、24ウェルプレートアッセイにおいて種々の脂肪酸希釈エマルションを得るために、これらのストック溶液を使用した。100μlのアセトン、20μlの界面活性剤Igepal CO 630、760μlのddH20および120μlの純粋なイソプロパノールを1.5mL エッペンドルフチューブ内で一緒にし均一になるまで混合することにより、「アセトン対照」エマルションを調製した。
【実施例4】
【0118】
Caenorhabditis elegansに対する単一脂肪酸メチルエステルエマルションの殺線虫活性
各ウェルに、脂肪酸エマルションまたは対照エマルションを加え、渦巻き回転により迅速に混合した。エマルションまたは対照の添加の24時間後の種々の時点で、視覚的観察および運動性アッセイにより、線虫生存性を評価した。試験した脂肪酸エマルションはノナン酸(ペラルゴン酸)、リシノール酸、ベルノール酸、リノール酸、オレイン酸のメチルエステル、および脂肪酸を欠く対照エマルションであった。
【0119】
リシノール酸およびメチルエステル、リシノエライジン酸(ricinelaidic acid)メチルエステル(この表には含まれていない)およびベルノール酸メチルエステルの構造を図1に示す。
【表2】

【0120】
ノナン酸およびリシノール酸メチルエステルエマルションの両方は0.1%の濃度で強力に殺線虫性である。ノナン酸メチルエステルエマルションは線虫運動のほとんど即座な停止およびそれに続く死亡を引き起こし、一方、リシノール酸メチルエステルエマルションは、強力な殺線虫効果が明らかになる前に30分までを要する。しかし、0.003%では、ノナン酸メチルエステルエマルションはC. elegansを一時的に「気絶」させ、最初に100%死亡表現型の出現をもたらした。接種の数時間後、多数の線虫は回復し、再び運動を開始した。この「気絶」効果はその他の脂肪酸エマルションでは観察されなかった。
【実施例5】
【0121】
Caenorhabditis elegans N2およびDauerに対する単一脂肪酸メチルエステル、塩および遊離脂肪酸エマルションの殺線虫活性
L: リノレン酸, R: リシノール酸, Re: リシノエライジン酸; V-trans:(12,13)-エポキシ-trans-9-オクタデセン酸; ME: メチルエステル
【表3】

【表4】

【実施例6】
【0122】
根こぶ線虫J2幼虫(Meloidogyne spp.)の調製
M. incognitaおよびM. javanicaをトマト根から得た。該根を漂白し、濾過およびそれに続くスクロース密度勾配遠心分離により残渣をJ2幼虫および卵から分離した。卵を15℃で4日間かけて孵化させ、フィルターに通し次いで遠心分離することによりJ2幼虫を集めた。
【実施例7】
【0123】
根こぶ線虫(Meloidogyne spp.)に対する脂肪酸メチルエステルエマルションの殺線虫活性
線虫およびエマルションを、振とうしながら室温で48時間インキュベートした。各ウェルの内容物を、細菌を欠く個々のNGMプレート上の小さなスポットに移した。プレートに移してから24時間後、該接種スポットの上または外の線虫を、それぞれ、生存不能または生存可能なものとして計数した。線虫が該接種スポットから這い出した場合または線虫が運動していた場合に、該線虫は生存可能であるとみなした。線虫が該接種スポットに留まっていた場合には、該線虫は生存不能であるとみなした。
【表5】

【実施例8】
【0124】
脂肪酸メチルエステルの植物毒性評価
滅菌トマト種子を、Gamborg寒天培地を含有するマジェンタジャー内で発芽させた。2週間の成長のあと、茎-培地界面に直接適用する250μlの1%脂肪酸メチルエステルエマルション(ノナン酸、リシノール酸、リシノエライジン酸、オレイン酸、またはいずれの脂肪酸をも欠く対照エマルション)で実生を処理した。トマト実生をエマルションの適用後の種々の時点で評価した。試験した脂肪酸のうち、1%ノナン酸メチルエステルエマルションのみが該トマトに対して明らかな細胞毒性効果を示した。ノナン酸エマルション適用の18時間以内に、それらのトマトは膨圧の顕著な低下(萎れ表現型)を示し、外観上、緑色の淡化が認められるようになった。24時間以内に、ノナン酸処理トマトは淡白色へとほぼ完全に漂白され、ほぼ完全に倒れ、ほとんどの葉は寒天培地表面上に直に横たわった。重要なことに、その他の脂肪酸メチルエステルエマルションで処理されたトマトはいずれも、可視効果を示さなかった。したがって、リシノール酸およびリシノエライジン酸メチルエステルは、高い殺線虫特性と好ましい低植物毒性とを併せ持つことから、駆虫化合物としての優れた可能性を示している。
【実施例9】
【0125】
自由生活性、動物寄生性および植物寄生性線虫のスペクトルに対する単一脂肪酸メチルエステルエマルションの殺線虫活性
簡潔に説明すると、示されている脂肪酸エマルションを24ウェルプレートのウェル内の線虫に加え、渦巻き回転させることにより迅速に混合した。エマルションの添加の24時間後(植物寄生性線虫MeloidogyneおよびHeterodera種に関しては48時間後)、視覚的観察および運動性アッセイにより線虫の生存性を評価した。試験した脂肪酸エマルションはノナン酸(ペラルゴン酸)、リシノエライジン酸、リシノール酸、ベルノール酸、リノール酸およびオレイン酸のメチルエステルであった。多様な生活様式を示す線虫に対する種々のエマルション活性の比較を容易にするために、自由生活性、動物寄生性および植物寄生性線虫に対する脂肪酸エマルションに関する結果を1つの表にまとめた。示されている結果は、複数の独立した実験から得られた平均%値である。
【表6】

【0126】
Caenorhabditis elegansは混合期(混合段階)集団であった。同様の効果が幾つかの他の自由生活性線虫種で見られた。Parastrongyloides trichosuri(オーストラリアフクロギツネ(Australian bushtail possum)の寄生虫)はダウアー(dauer)様感染第3期幼虫であった。自由生活段階に対しても同様の効果が見られた。Meloidogyne incognitaおよびMeloidogyne javanica(根こぶ線虫)は第2期幼虫(ダウアー様感染期)であった。Heterodera glycines(ダイズシスト線虫)は第2期幼虫(ダウアー様感染期)であった。最後に、Pratylenchus scribneri(トウモロコシ病斑(corn lesion)線虫)は混合期集団であった。
【0127】
前記の表中のデータが示しているとおり、リシノエライジン酸およびリシノール酸メチルエステルエマルションエマルションは共に、0.1%および0.01%の濃度で強力に殺線虫性である。リシノエライジン酸メチルエステルは、特に、広いスペクトルの多様な線虫属に対して、好ましい殺線虫活性を示した。
【実施例10】
【0128】
以下の表には、ヒドロキシラーゼ、エポキシゲナーゼ、5'-UTRおよび3'-UTRを含む種々の核酸構築物のクローニングおよび調製において使用したプライマーを列挙する。
【表7】



【実施例11】
【0129】
以下の表には、植物栄養組織におけるポリペプチドの発現を達成するために使用しうるプロモーターおよびUTRを列挙する。
【表8】

【実施例12】
【0130】
この実施例はデルタ-12デサチュラーゼ様ヒドロキシラーゼおよびエポキシゲナーゼ(配列表中の配列番号1〜6および27)のクローニングを記載する。
【0131】
ヒマオレアートヒドロキシラーゼ遺伝子のクローニング
ゲノムDNAをRicinus communisの葉組織から単離した。センスプライマーHyd1(配列番号46)およびアンチセンスプライマーHyd2(配列番号47)を使用して、標準的な条件下でのKTLA DNAポリメラーゼでの勾配(Gradient)PCR反応[30サイクルの加熱サイクル(95℃で1分間、48〜63℃で30秒間、68℃で2分間)]においてヒマヒドロキシラーゼ遺伝子のゲノムコピーを増幅した。PCR産物を1%アガロースゲル中で分画した。約1100bp長のバンドを切り出し、ゲル精製(QIAquick Gel Extraction)した。TOPO TAキット (Invitrogen)を使用してDNAをクローニングした。候補クローンをそれらの全体において自動DNAシークエンサー(例えば、Applied Biosystems, Inc.のモデル373)で配列決定した。
【0132】
Lesquerella lindheimeriおよびLesquerella gracilis二官能性ヒドロキシラーゼ遺伝子のクローニング
ゲノムDNAをL. lindheimeriおよびL. gracilisの葉組織から単離した。センスプライマーLes1(配列番号48)およびアンチセンスプライマーLes10(配列番号49)を使用して、標準的な条件下でのKTLA DNAポリメラーゼでの勾配(Gradient)PCR反応[30サイクルの加熱サイクル(94℃で2分間、55℃で1分間、68℃で2分間)]において両方のLesquerella二官能性ヒドロキシラーゼ遺伝子のゲノムコピーを増幅した。PCR産物を1%アガロースゲル中で分画した。約1100bp長のバンドを切り出し、ゲル精製(QIAquick Gel Extraction)した。TOPO TAキット (Invitrogen)を使用してDNAをクローニングした。候補クローンをそれらの全体において自動DNAシークエンサー(例えば、Applied Biosystems, Inc.のモデル373)で配列決定した。
【0133】
Lesquerella fendleri二官能性ヒドロキシラーゼ遺伝子のクローニング
ゲノムDNAをL. fendleriの葉組織から単離した。センスプライマーLes1(配列番号48)およびアンチセンスプライマーLes6(配列番号50)を使用して、標準的な条件下でのKTLA DNAポリメラーゼでの勾配(Gradient)PCR反応[30サイクルの加熱サイクル(95℃で1分間、45〜63℃で30秒間、68℃で2分間)]において両方のL. fendleri二官能性ヒドロキシラーゼ遺伝子のゲノムコピーを増幅した。PCR産物を1%アガロースゲル中で分画した。約1100bp長のバンドを切り出し、ゲル精製(QIAquick Gel Extraction)した。TOPO TAキット (Invitrogen)を使用してDNAをクローニングした。候補クローンをそれらの全体において自動DNAシークエンサー(例えば、Applied Biosystems, Inc.のモデル373)で配列決定した。
【0134】
Crepis biennisエポキシゲナーゼ遺伝子のクローニング
ゲノムDNAをC. biennisから単離した。センスプライマーEcrep2(配列番号51)およびアンチセンスプライマーEcrep8(配列番号52)を使用して、標準的な条件下でのKTLA DNAポリメラーゼでの勾配(Gradient)PCR反応[30サイクルの加熱サイクル(95℃で1分間、45〜63℃で30秒間、68℃で2分間)]においてC. biennisエポキシゲナーゼ遺伝子の部分的ゲノムクローンを増幅した。PCR産物を1%アガロースゲル中で分画した。約1100bp長のバンドを切り出し、ゲル精製(QIAquick Gel Extraction)した。ついで、TOPO TAクローニングキット (Invitrogen)を使用して該遺伝子断片をクローニングした。候補クローンをそれらの全体において自動DNAシークエンサー(例えば、Applied Biosystems, Inc.のモデル373)で配列決定して、プラスミドクローンDiv2966を得た。コドン33-374および3'終止コドンのヌクレオチド配列を含む、C. biennisエポキシゲナーゼに関する部分配列データをDiv2966から得た。該クローンは、C. biennisエポキシゲナーゼの最初の32コドンおよび5'非翻訳領域を欠いていた。該C. biennisエポキシゲナーゼ遺伝子の欠落した5'配列を得るために、逆PCR技術を用いた。逆PCRは、標的配列に直に隣接している未知DNAセグメントの迅速な増幅を可能にする。簡潔に説明すると、C. biennisゲノムDNAを、選択された制限酵素で消化し、ついで連結して、より小さなゲノムDNAセグメントを環化する。ついでこれらの環化セグメントをPCRの鋳型として使用する。該PCRにおいては、欠落隣接配列を増幅するために、関心遺伝子の既知領域から外側へのDNA増幅を導くプライマーを使用する。逆PCRを用いて欠落5'または3'配列を増幅することが可能である。消化され連結され環化されたゲノムDNAを直接的にPCR増幅した。該PCRにおいては、関心遺伝子内にアニールする、既知配列から設計された遺伝子特異的プライマー(Crep12F; 配列番号115およびCrep13R; 配列番号116)を使用した。この方法を行ってクローンDiv4373を得た。これはコドン1-137および355-374を含有する。総合すると、クローンDiv2966およびDiv4373は、C. biennisのエポキシゲナーゼ遺伝子の完全なオープンリーディングフレームを含む配列を含有する。
【0135】
Stokesia leavisエポキシゲナーゼ遺伝子のクローニング
ゲノムDNAをS. laevisから単離した。多数の植物エポキシゲナーゼの間で高度の配列保存性を示すと予想されるS. laevisエポキシゲナーゼ遺伝子内の領域にアニールする縮重プライマーを設計した。センスプライマーEstok14(配列番号117)およびアンチセンスプライマーEstok17(配列番号118)を使用して、S. laevisエポキシゲナーゼ遺伝子のゲノム断片を増幅した。ついで、増幅されたPCR産物をDNA分析のための適当なベクター内にクローニングした。この方法を行ってクローンDiv4023を得た。このクローンはコドン88-356を含有していた。該遺伝子の5'末端配列を得るために、関心遺伝子内にアニールする遺伝子特異的プライマーを既知配列から設計し、センスプライマーS1-1(配列番号119)およびアンチセンスプライマーStok1R(配列番号120)を使用して、該エポキシゲナーゼ遺伝子の残部を増幅した。これはプラスミドクローンDiv4172を与えた。このクローンはコドン1-260を含有していた。S. laevisエポキシゲナーゼ遺伝子の3'末端を得るためには、逆PCR技術を用いた。逆PCRは、標的配列に直に隣接している未知DNAセグメントの迅速な増幅を可能にする。簡潔に説明すると、S. laevisゲノムDNAを、選択された制限酵素で消化し、ついで連結して、より小さなゲノムDNAセグメントを環化する。ついでこれらの環化セグメントをPCRの鋳型として使用する。該PCRにおいては、欠落隣接配列を増幅するために、関心遺伝子の既知領域から外側へのDNA増幅を導くプライマーを使用する。逆PCRを用いて欠落5'または3'配列を増幅することが可能である。消化され連結され環化されたゲノムDNAを直接的にPCR増幅した。該PCRにおいては、関心遺伝子内にアニールする、既知配列から設計された遺伝子特異的プライマーStok12R(配列番号121)およびStok14F(配列番号122)を使用した。この方法を行ってクローンDiv4324を得た。これはコドン1-108および254-377を含有する。総合すると、クローンDiv4023、Div4172およびDiv4324は、S. laevisのエポキシゲナーゼ遺伝子の完全なオープンリーディングフレームを含む配列を含有する。
【0136】
ΔT L. gracilis二官能性ヒドロキシラーゼ構築物のクローニング
完全長R. communisヒドロキシラーゼ遺伝子からヌクレオチド245-247(CTA)を除去する特異的プライマーを設計した。2ラウンドのPCRに基づくサブクローニング法を用いて、ΔT L. gracilis二官能性ヒドロキシラーゼを作製した。第1ラウンドのPCRプライマーは以下のとおりであった:ヌクレオチド245-247以外の二官能性ヒドロキシラーゼの5'末端を増幅するためには、クローニングベクターpCR2.1内に含有されているL. gracilis二官能性ヒドロキシラーゼ遺伝子のコピーを鋳型として使用するPCR反応において、センスプライマーM13リバース(配列番号100)およびアンチセンスプライマー3'ΔT(配列番号97)を使用した。ヌクレオチド245-247以外の二官能性ヒドロキシラーゼの3'末端を増幅するためには、センスプライマー5'ΔT(配列番号96)およびアンチセンスプライマーgracilis XbaI MfeI R(配列番号101)を使用した。第2ラウンドのPCRには、センスプライマーHIII NcoI gracilis F (配列番号102) およびアンチセンスプライマーgracilis XbaI Mfe R (配列番号101)を使用して、最終PCR産物ΔT L. gracilisヒドロキシラーゼを得た。5サイクルの加熱サイクル(94℃で1分間、50℃で30秒間、68℃で1.5分間)およびそれに続く15サイクルの加熱サイクル(94℃で1分間、57℃で30秒間、68℃で1.5分間)を用いて、標準的な条件下、KTLA DNAポリメラーゼを使用して、PCR産物を増幅した。ついで、NcoIおよびXbaI制限酵素部位を使用して、該構築物を植物発現ベクター内にサブクローニングした。
【0137】
ΔKKGG Ricinus communisヒドロキシラーゼ構築物のクローニング
完全長R. communisヒドロキシラーゼ遺伝子からヌクレオチド53-64(AGAAAGGAGGAA, 配列番号140)を除去する特異的プライマーを設計した。2ラウンドのPCRに基づくサブクローニング法を用いて、ΔKKGG Ricinus communisヒドロキシラーゼ遺伝子を作製した。第1ラウンドのPCRプライマーは以下のとおりであった:ヌクレオチド53-64以外のRicinusヒドロキシラーゼ遺伝子の5'末端を増幅するためには、クローニングベクターpCR2.1内に含有されているR. communisヒドロキシラーゼ遺伝子のコピーを鋳型として使用するPCR反応において、センスプライマーM13リバース(配列番号100)およびアンチセンスプライマー3'ΔKKGG2(配列番号95)を使用した。ヌクレオチド53-64以外のRicinusヒドロキシラーゼ遺伝子の3'末端を増幅するためには、センスプライマー5'ΔKKGG2(配列番号94)およびアンチセンスプライマー ヒマXbaI MfeI R(配列番号98)を使用した。第2ラウンドのPCRには、センスプライマーHIII NcoIヒマF (配列番号99) およびヒマXbaI Mfe R (配列番号98)を使用して、最終PCR産物ΔKKGG Ricinus communisヒドロキシラーゼを得た。5サイクルの加熱サイクル(94℃で1分間、50℃で30秒間、68℃で1.5分間)およびそれに続く15サイクルの加熱サイクル(94℃で1分間、57℃で30秒間、68℃で1.5分間)を用いて、標準的な条件下、KTLA DNAポリメラーゼを使用して、PCR産物を増幅した。ついで、NcoIおよびXbaI制限酵素部位を使用して、該構築物を植物発現ベクター内にサブクローニングした。
【実施例13】
【0138】
この実施例は、Arabidopsis thaliana fad2調節およびコード配列の単離、ならびにfad2/ヒドロキシラーゼおよびfad2/エポキシゲナーゼ融合ポリペプチドの構築を記載する。配列表中の配列番号7〜12を参照されたい。
【0139】
A. thaliana fad2デサチュラーゼcDNAクローンの単離
全RNAをA. thalianaの葉組織から単離した(Qiagen RNeasy)。センスプライマー5'UTR-HIIIF (配列番号53) およびアンチセンスプライマー3'UTR-SphIR (配列番号54)と共にRoche Titan One Tube RT-PCR系を使用して、RT-PCRを行った。該キットの説明書に従いRT-PCRを設定した[1サイクル(50℃で30分間)、1サイクル(94℃で2分間)、10サイクル(94℃で10秒間、60℃で30秒間、68℃で1分間)、25サイクル(94℃で10秒間、60℃で30秒間、68℃で1分間 + 各サイクルごとに5秒間のサイクル延長)、1サイクル(68℃で7分間)]。約1100bp長のバンドを切り出し、ゲル精製した(QIAquick Gel Extraction)。TOPO TA kit (Invitrogen)を使用してDNAをクローニングした。候補クローンをそれらの全体において自動DNAシークエンサー(例えば、Applied Biosystems, Inc.のモデル373)で配列決定した。
【0140】
A. thaliana fad2デサチュラーゼゲノムDNAクローンの単離
ゲノムDNAをA. thalianaの葉組織から単離した。センスプライマー5'UTR-HIIIF(配列番号53)およびアンチセンスプライマー3'UTR-SphIR (配列番号54)を使用して、標準的な条件下でのKTLA DNAポリメラーゼでのPCR反応[5サイクルの加熱サイクル(95℃で1分間、54℃で30秒間、68℃で2分間)、25サイクルの加熱サイクル(95℃で1分間、62℃で30秒間、68℃で2分間)]においてゲノムfad2 DNAを増幅した。PCR産物を1%アガロースゲル中で分画した。約2400bp長のバンドを切り出し、ゲル精製(QIAquick Gel Extraction)した。TOPO TAキット (Invitrogen)を使用してDNAをクローニングした。候補クローンをそれらの全体において自動DNAシークエンサー(例えば、Applied Biosystems, Inc.のモデル373)で配列決定した。
【0141】
fad2/Ricinus communisヒドロキシラーゼキメラcDNAの作製
2ラウンドのPCRに基づくサブクローニング法を用いて、該キメラcDNAのすべてを作製した。第1ラウンドのPCRにおいては、センスプライマーFad-HIIIF (配列番号55) およびアンチセンスプライマー3' Fad/cas (配列番号57) を使用して、該fad2 cDNAクローンからの最初の114塩基を増幅した。センスプライマー5' -Fad/cas (配列番号58) およびアンチセンスプライマーCas-SalR (配列番号59)を使用して、標準的な条件下でのKTLA DNAポリメラーゼでのPCR[1サイクルの加熱サイクル(94℃で4分間)、5サイクルの加熱サイクル(94℃で45秒間、50℃で45秒間、68℃で60秒間)、25サイクルの加熱サイクル(94℃で45秒間、57℃で45秒間、68℃で60秒間)]により、Ricinus communisヒドロキシラーゼcDNAクローンの最後の1034塩基(TAAを除く)を増幅した。PCR産物を1%アガロースゲル中で分画した。該バンドを切り出し、クリーニングした(QIAquick Gel Extraction - 最終容量50μl)。そのクリーニングされた産物を1:100(TE)希釈し、両方のDNAを第2ラウンドのPCRにおいて鋳型(各1μl)として使用した。第2ラウンドのPCRにおいては、センスプライマーFad-HIIIF (配列番号55) およびアンチセンスプライマーCas-SalR (配列番号59) を使用して、標準的な条件下、KTLA DNAポリメラーゼで最終的なPCR産物fad2/Ricinus communisキメラcDNA[1サイクルの加熱サイクル(94℃で4分間)、5サイクルの加熱サイクル(94℃で45秒間、50℃で45秒間、68℃で60秒間)、25サイクルの加熱サイクル(94℃で45秒間、57℃で45秒間、68℃で60秒間)]を得た。約1300bp長のバンドを切り出し、ゲル精製した(QIAquick Gel Extraction)。TOPO TA kit (Invitrogen)を使用してDNAをクローニングした。候補クローンをそれらの全体において自動DNAシークエンサー(例えば、Applied Biosystems, Inc.のモデル373)で配列決定した。
【0142】
fad2/Lesquerella fendleriヒドロキシラーゼキメラcDNAの作製
同じ2ラウンドのPCRに基づくサブクローニング法を用いて、fad2/Lesquerella fendleriキメラcDNAを作製した。第1ラウンドのPCRプライマーは以下のとおりであった:A. thaliana fad2の5'末端を増幅するためには、センスプライマーFad-HIIIF (配列番号55) およびアンチセンスプライマー3'-Fad/les (配列番号60)を使用した。L. fendleri二官能性ヒドロキシラーゼ遺伝子の3'末端を増幅するためには、センスプライマー5' Fad/lesプライマー (配列番号61) およびアンチセンスプライマーLes-SalIR (配列番号62)を使用した。第2ラウンドのPCRにおいては、センスプライマーFad-HIIIF (配列番号55)およびアンチセンスプライマーLes-SalIR (配列番号62)を使用して、最終PCR産物fad2/Lesquerella fendleriキメラcDNAを作製した。
【0143】
fad22/Lesquerella lindheimeriヒドロキシラーゼキメラcDNAの作製
同じ2ラウンドのPCRに基づくサブクローニング法を用いて、fad2/ Lesquerella lindheimeriキメラcDNAを作製した。第1ラウンドのPCRプライマーは以下のとおりであった:A. thaliana fad2の5'末端を増幅するためには、センスプライマーFad-HIIIF (配列番号55) およびアンチセンスプライマー3'-Fad/lind (配列番号63)を使用した。L. lindheimeri二官能性ヒドロキシラーゼ遺伝子の3'末端を増幅するためには、センスプライマー5' Fad/lindプライマー (配列番号64) およびアンチセンスプライマーLind-SalIR (配列番号65)を使用した。第2ラウンドのPCRにおいては、センスプライマーFad-HIIIF (配列番号55)およびアンチセンスプライマーLind-SalIR (配列番号65)を使用して、最終PCR産物fad2/ Lesquerella lindheimeriキメラcDNAを作製した。
【0144】
fad22/Lesquerella gracilis AヒドロキシラーゼキメラcDNAの作製
同じ2ラウンドのPCRに基づくサブクローニング法を用いて、fad2/Lesquerella gracilis AキメラcDNAを作製した。第1ラウンドのPCRプライマーは以下のとおりであった:A. thaliana fad2の5'末端を増幅するためには、センスプライマーFad-HIIIF (配列番号55) およびアンチセンスプライマー3'-Fad/grac (配列番号66)を使用した。L. gracilis二官能性ヒドロキシラーゼ遺伝子の3'末端を増幅するためには、センスプライマー5' Fad/gracプライマー (配列番号67) およびアンチセンスプライマーGrac-SalIR (配列番号68)を使用した。第2ラウンドのPCRにおいては、センスプライマーFad-HIIIF (配列番号55)およびアンチセンスプライマーGrac-SalIR (配列番号68)を使用して、最終PCR産物fad2/Lesquerella gracilis AキメラcDNAを作製した。
【0145】
fad22/Crepis biennisエポキシゲナーゼキメラcDNAの作製
同じ2ラウンドのPCRに基づくサブクローニング法を用いて、fad2/Crepis biennisキメラcDNAを作製した。第1ラウンドのPCRプライマーは以下のとおりであった:A. thaliana fad2の5'末端を増幅するためには、センスプライマーFad-HIIIF (配列番号55) およびアンチセンスプライマー3'-Fad/crep (配列番号69)を使用した。C. biennisエポキシゲナーゼの3'末端を増幅するためには、センスプライマー5' Fad/crepプライマー (配列番号70) およびアンチセンスプライマーCrep-SalIR (配列番号71)を使用した。第2ラウンドのPCRにおいては、センスプライマーFad-HIIIF (配列番号55)およびアンチセンスプライマーCrep-SalIR (配列番号71)を使用して、最終PCR産物fad2/ Crepis biennisキメラcDNAを作製した。
【実施例14】
【0146】
この実施例は、11個の合成最適化ヒドロキシラーゼおよびエポキシゲナーゼ配列の構築を記載する。
【0147】
5個のコドン最適化ヒドロキシラーゼ(Ricinus communis、HAタグ付きRicinus communisおよびLesquerella gracilis)およびエポキシゲナーゼ(Stokesia laevis AおよびCrepis biennis)配列を以下のとおりに構築した。まず、開始メチオニンコドンの下流の第2、第3および第4コドンをGCT、TCCおよびTCC(アラニン、セリンおよびセリンをコードする)へ変化させた。第2に、Arabidopsis thaliana、Glycine max、Lycopersicon esculentumまたはNicotiana tabacumゲノムにおいて8%以下の出現頻度を有するコドン(例えば、アルギニンに関するCGG)を、その特定のアミノ酸に関する最高出現頻度のコドンまたは2番目に高い出現頻度のコドン(例えば、アルギニンに関するAGAまたはAGG)により置換されうる。最後に、Arabidopsis thaliana、Glycine max、Lycopersicon esculentumまたはNicotiana tabacumゲノムにおいて両方のコドンが12%以下の出現頻度を有する場合には、コドンの連続的ペアのメンバーの1つを最適化することが可能である。コドン最適化法のためのデータはコドン使用頻度データベース(http://www.kazusa.or.jp/codon/)から得た。
【0148】
mRNAを不安定化しうるATTTA(すなわち、AUUUA)要素を除去するために、および潜在的ポリアデニル化部位を除去するために、およびA、G、CまたはTの5個以上の連続的ヌクレオチドの並び(例えば、TTTTTT)を中断させるために、コドンを変化させた。また、異常スプライシングの可能性を減少させるためにコドンを修飾した。NetPlantGene予測サーバー(http://www.cbs.dtu.dk/services/NetPGene/)を使用して、スプライシングの可能性を評価した。ドナーおよびアクセプターが存在し、どちらも、0.9を超える信頼度で予想された場合には、ドナー(GT)またはアクセプター(AG)部位を除去してスプライシングの可能性を軽減するために、コドンを突然変異させた。配列番号30、31、32および129はこれらの最適化配列の具体例である。
【0149】
Ricinus communisおよびLesquerella gracilisヒドロキシラーゼならびにCrepis biennis、Crepis palaestinaおよび第2 Stokesia laevis (Stokesia laevis B)エポキシゲナーゼ遺伝子の追加的なコドン最適化変異体を作製した。これらの追加的配列は、最も一般的なダイズ(Glycine max)コドンを、より厳密に模擬するための修飾を含有していた。開始メチオニンコドンの下流の第2、第3および第4のコドンをGCT、TCCおよびTCC(アラニン、セリンおよびセリン)に変化させた。また、mRNAを不安定化しうるATTTA(すなわち、AUUUA)要素を除去するために、および潜在的ポリアデニル化部位を除去するために、およびA、G、CまたはTの5個以上の連続的ヌクレオチドの並び(例えば、TTTTTT)を中断させるために、コドンを変化させた。また、異常スプライシングの可能性を減少させるためにコドンを修飾した。NetPlantGene予測サーバー(http://www.cbs.dtu.dk/services/NetPGene/)を使用して、スプライシングの可能性を評価した。ドナーおよびアクセプターが存在し、どちらも、0.9を超える信頼度で予想された場合には、ドナー(GT)またはアクセプター(AG)部位を除去してスプライシングの可能性を軽減するために、コドンを突然変異させた。コドン最適化法のためのデータはコドン使用頻度データベース(http://www.kazusa.or.jp/codon/)から得た。配列番号28、29、130、131、132および133は、それぞれ、そのような最適化R. communis、S. laevis A、C. palaestina、S. laevis B、C. biennisおよびL. gracilis遺伝子の具体例である。
【実施例15】
【0150】
この実施例は、Saccharomyces cerevisiaeにおけるヒドロキシラーゼ、二官能性ヒドロキシラーゼおよびエポキシゲナーゼポリペプチドの発現、ならびにGC-MSによる酵母における脂肪酸プロファイルの分析を記載する。
【0151】
酵母株、培地および培養条件
これらの研究の全体にわたり、Saccharomyces cerevisiae株YPH499(MATa ura3-52 lys2-801 ase2-101 trp1-Δ63 his3-Δ2000 leu2-Δ1) およびINVsc1 (MATa his3-Δ1 leu2 trp1-289 ura3-52/MATαhis3Δ1 leu2 trp1-289 ura3-52)を使用した。
【0152】
酵母形質転換のためのプラスミド
酵母株を形質転換するために、プラスミドpYES2 (Invitrogen)を使用した。該プラスミドは大腸菌(E. coli)複製起点、酵母プラスミド複製起点、大腸菌(E. coli)アンピシリン耐性遺伝子および酵母遺伝子URA3を含有する。それは、ガラクトース誘導性プロモーター(GAL-1)を含む発現カセットを使用する。
【0153】
酵母発現ベクターpYES2内への関心遺伝子のクローニング
R. communisヒドロキシラーゼおよびL .gracilis二官能性ゲノムクローンの修飾を、特異的プライマーを使用するPCR増幅により行った。
【0154】
Ricinus communisヒドロキシラーゼ: 開始コドンの直上流にコザックコンセンサス配列およびHindIII制限部位を、終止コドンの直下流にBamH1部位を導入するために、以下の特異的プライマーを設計した:順行(Direct)プライマー: 5'-CastorhindIII-k (配列番号72)およびリバースプライマー: 3' Castor(ヒマ)BamHI (配列番号73)。該ヒドロキシラーゼをPCR[標準的な条件下、KTLA DNAポリメラーゼでの、5サイクルの加熱サイクル(92℃で1分間、50℃で30秒間、68℃で1.5分間)およびそれに続く25サイクルの加熱サイクル(92℃で1分間、57℃で30秒間、68℃で1.5分間)]により増幅した。PCR産物をHindlllおよびBamH1で消化し、ついでpYES2酵母発現ベクターのHindlll, BamH1内にクローニングした。
【0155】
C末端HAタグを有するRicinus communisヒドロキシラーゼ: 開始コドンの直上流にコザックコンセンサス配列およびHindIII制限部位を、終止コドンの直前にNotI部位およびHAタグを導入するために、以下の特異的プライマーを設計した:順行プライマー: 5'-CastorhindIII-k (配列番号72)およびリバースプライマー: 3' Castor(ヒマ)-HANOTI (配列番号74)。C末端HAタグを有する該ヒドロキシラーゼをPCR[標準的な条件下、KTLA DNAポリメラーゼでの、5サイクルの加熱サイクル(92℃で1分間、50℃で30秒間、68℃で1.5分間)およびそれに続く25サイクルの加熱サイクル(92℃で1分間、57℃で30秒間、68℃で1.5分間)]により増幅した。PCR産物をHindlllおよびBamH1で消化し、ついでpYES2酵母発現ベクターのHindlll, BamH1部位内にクローニングした。
【0156】
N末端HAタグを有するRicinus communisヒドロキシラーゼ: N末端HAタグを有するRicinus communisヒドロキシラーゼの構築のために、以下のプライマーを設計した:順行プライマー: BamHI ヒマF (配列番号104)およびリバースプライマー: ヒマXbaI MfeI R (配列番号98)。該ヒドロキシラーゼをPCR[標準的な条件下、KTLA DNAポリメラーゼでの、5サイクルの加熱サイクル(92℃で1分間、50℃で30秒間、68℃で1.5分間)およびそれに続く25サイクルの加熱サイクル(92℃で1分間、57℃で30秒間、68℃で1.5分間)]により増幅した。PCR産物をBamHI/MfeIで消化し、ついでpUC-HAベクターのBamHI/EcoRI部位内にサブクローニングした。ついで、N末端HAタグを有する該ヒドロキシラーゼを酵母発現ベクターpYES2内にサブクローニング(HindIII/XbaI)した。
【0157】
Lesquerella lindheimeri二官能性酵素: 開始コドンの直上流にコザックコンセンサス配列およびHindIII制限部位を、終止コドンの直下流にBamHI部位を導入するために、以下の特異的プライマーを設計した:順行プライマー: 5'-fendhindIII-K (配列番号75) およびリバースプライマー: 3'-fendBamHI (配列番号76)。該ヒドロキシラーゼをPCR[標準的な条件下、KTLA DNAポリメラーゼでの、5サイクルの加熱サイクル(92℃で1分間、50℃で30秒間、68℃で1.5分間)およびそれに続く25サイクルの加熱サイクル(92℃で1分間、57℃で30秒間、68℃で1.5分間)]により増幅した。PCR産物をHindlllおよびBamH1で消化し、ついでpYES2酵母発現ベクターのHindlll, BamH1内にクローニングした。
【0158】
N末端HAタグを有するLesquerella lindheimeri二官能性酵素: HAタグの直上流にコザックコンセンサス配列およびHindIII制限部位を、終止コドンの直前にBamH1部位を導入するために、以下の特異的プライマーを設計した:順行プライマー: 5'-HindIIIK/HA/fend (配列番号77) およびリバースプライマー: 3'-fendBamHI (配列番号76)。N末端HAタグを有する該ヒドロキシラーゼをPCR[標準的な条件下、KTLA DNAポリメラーゼでの、5サイクルの加熱サイクル(92℃で1分間、50℃で30秒間、68℃で1.5分間)およびそれに続く25サイクルの加熱サイクル(92℃で1分間、57℃で30秒間、68℃で1.5分間)]により増幅した。PCR産物をHindIIIおよびBamH1で消化し、ついでpYES2発現ベクターのHindIII、BamHI内にサブクローニングした。
【0159】
Lesquerella gracilis二官能性酵素: コザックコンセンサス配列を導入するために、以下の特異的プライマーを設計した:順行プライマー: HIII NcoI gracilis F (配列番号102) およびリバースプライマー: gracilis XbaI MfeI R (配列番号101)。該ヒドロキシラーゼをPCR[標準的な条件下、KTLA DNAポリメラーゼでの、5サイクルの加熱サイクル(92℃で1分間、50℃で30秒間、68℃で1.5分間)およびそれに続く25サイクルの加熱サイクル(92℃で1分間、57℃で30秒間、68℃で1.5分間)]により増幅した。PCR産物をHindlll、XbaIで消化し、ついでpYES2酵母発現ベクターのHindlll, XbaI内にクローニングした。
【0160】
ΔT Lesquerella gracilis二官能性酵素: コザックコンセンサス配列を導入するために、以下の特異的プライマーを設計した:順行プライマー: HIII NcoI gracilis F (配列番号102) およびリバースプライマー: gracilis XbaI MfeI R (配列番号101)。該ヒドロキシラーゼをPCR[標準的な条件下、KTLA DNAポリメラーゼでの、5サイクルの加熱サイクル(92℃で1分間、50℃で30秒間、68℃で1.5分間)およびそれに続く25サイクルの加熱サイクル(92℃で1分間、57℃で30秒間、68℃で1.5分間)]により増幅した。PCR産物をHindlll、XbaIで消化し、ついでpYES2酵母発現ベクターのHindlll, XbaI内にクローニングした。
【0161】
ΔKKGG Ricinus communisヒドロキシラーゼ: コザックコンセンサス配列を導入するために、以下の特異的プライマーを設計した:順行プライマー: HIII NcoI ヒマ(castor) F (配列番号99) およびリバースプライマー: ヒマ(castor) XbaI MfeI R (配列番号98)。該ヒドロキシラーゼをPCR[標準的な条件下、KTLA DNAポリメラーゼでの、5サイクルの加熱サイクル(92℃で1分間、50℃で30秒間、68℃で1.5分間)およびそれに続く25サイクルの加熱サイクル(92℃で1分間、57℃で30秒間、68℃で1.5分間)]により増幅した。PCR産物をHindlll、XbaIで消化し、pYES2酵母発現ベクターのHindlll, XbaI内にクローニングした。
【0162】
Crepis biennisエポキシゲナーゼ酵素: コザックコンセンサス配列を導入するために、以下の特異的プライマーを設計した:順行プライマー: HIII NcoI C. biennis F (配列番号123) およびリバースプライマー: Crepis XbaI MfeI R (配列番号103)。該ヒドロキシラーゼをPCR[標準的な条件下、KTLA DNAポリメラーゼでの、5サイクルの加熱サイクル(92℃で1分間、50℃で30秒間、68℃で1.5分間)およびそれに続く25サイクルの加熱サイクル(92℃で1分間、57℃で30秒間、68℃で1.5分間)]により増幅した。PCR産物をHindlll、XbaIで消化し、pYES2酵母発現ベクターのHindlll, XbaI内にクローニングした。
【0163】
Stokesia laevisエポキシゲナーゼ酵素: コザックコンセンサス配列を導入するために、以下の特異的プライマーを設計した:順行プライマー: BamHI NcoI S. epoxygenase F (配列番号106) およびリバースプライマー: S. epoxygenase XbaI R (配列番号107)。該ヒドロキシラーゼをPCR[標準的な条件下、KTLA DNAポリメラーゼでの、5サイクルの加熱サイクル(92℃で1分間、50℃で30秒間、68℃で1.5分間)およびそれに続く25サイクルの加熱サイクル(92℃で1分間、57℃で30秒間、68℃で1.5分間)]により増幅した。PCR産物をBamHI、XbaIで消化し、pYES2酵母発現ベクターのBamHI、 XbaI内にクローニングした。
【0164】
ヌクレオチド配列決定
R. communisヒドロキシラーゼ、N末端HAタグを有するR. communisヒドロキシラーゼ、C末端HAタグを有するR. communisヒドロキシラーゼ、L. lindheimeri二官能性酵素、N末端HAタグを有するL. lindheimeri二官能性酵素、ΔT L. gracilisおよびΔKKGG R. communisヒドロキシラーゼの配列決定を、当業者によく知られた方法を用いて自動シークエンサー(例えば、Applied Biosystems, Inc.のモデル373)を使用して行った。
【0165】
酵母の形質転換
Invitrogen pYES2キット (V825-20)に従い、形質転換を行った。新鮮な酵母培養(初期吸光度 = 0.4)をYPD培地内で4時間成長させた。該細胞を集め、1×TE中で1回洗浄し、2 mLの1×LiAc/0.5×TE (100mm 酢酸リチウム pH 7.5, 5mm tris-HCL pH 7.5, 0.5mm EDTA)に再懸濁させた。100μgの変性ニシン精子DNAをDNA担体として、1μgの該プラスミドDNAに加えた。100μlのコンピテント酵母および700μlの1×liAc/40%PEG-3350/1×TE (100mM 酢酸リチウム pH 7.5, 40% PEG-3350, 10 mM tris-HCL pH 7.5, 1 mM EDTA)を加えた。該混合物を30℃で30分間インキュベートした。88μlのDMSOを加え、該混合物を42℃で7分間インキュベートした。遠心分離後、該細胞を1×TE(100μl)に再懸濁させ、適当な補足物を含有する最少培地上でプレーティングした。
【0166】
酵母内での関心遺伝子の過剰発現
ヒドロキシラーゼまたは二官能性酵素のインサートも遺伝子も含有しない、pYES2プラスミドで形質転換された酵母株を、同時に増殖させた。リシノール酸の分析のために、2%グルコースおよび1%カザアミノ酸で補足されたSC-URA(ウラシルを欠く酵母合成完全培地, Sigma)内で、2,5の光学濃度(600nm)になるまで形質転換細胞を30℃で増殖させた。ついで細胞を遠心分離し、グルコースを含有しないSC-URA培地内で3回洗浄し、2%グルコースおよび1%カザアミノ酸で補足されたSC-URA培地(ウラシルを欠く酵母合成完全培地, Sigma)内で30℃で48時間培養した。培養を遠心分離し、乾燥させた。
【0167】
酵母抽出物の脂肪酸分析
乾燥酵母ペレットを(メタノール中の400μLの1%ナトリウムメトキシド)でメチル化し、ヘキサンで抽出し、トリメチルシリル化(100μLのBSTAFA-TMCS, Supelco, 90℃で45分間)した。サンプルをAgilent 6890 GC-5973 Mass Selective Detector (GC/MS) およびAgilent DB-23キャピラリーカラム (0.25 mm×30 m×0.25 μm)上で分析した。インジェクターを250℃に維持し、オーブン温度を235℃にし、1.0mL/分のヘリウム流を維持した。
【0168】
表9は、実施例13に記載の酵素のいくつかを発現する酵母からのMSデータの具体例を示す。
【表9】

【0169】
これらのGC/MSデータは、R. communis(3522-4074*)由来のヒドロキシラーゼが、酵母内で発現された場合に機能的であったことを示している。該表に挙げられているリシノール酸の比率(%R)は全脂肪酸に対する比率である。
【表10】

【0170】
これらのGC/MSデータは、L. gracilus(3958)由来のヒドロキシラーゼが、酵母内で発現された場合に機能的であったことを示している。該表に挙げられているリシノール酸の比率(%R)は全脂肪酸に対する比率である。
【表11】

【0171】
これらのGC/MSデータは、L. gracilis由来のヒドロキシラーゼが、アミノ酸83の欠失にもかかわらず、酵母内で発現された場合に機能的であったことを示している。該表に挙げられているリシノール酸の比率(%R)は全脂肪酸に対する比率である。
【表12】

【0172】
これらのGC/MSデータは、R. communisからの欠失突然変異ヒドロキシラーゼが(ΔKKGG)、18-21位のアミノ酸欠失にもかかわらず、酵母内で発現された場合に機能的であったことを示している。該表に挙げられているリシノール酸の比率(%R)は全脂肪酸に対する比率である。
【表13】

【0173】
これらのGC/MSデータは、インサートを含有しないベクターを酵母内で発現させた場合にはリシノール酸の検出可能な量が何ら産生されなかったことを示している。該表に挙げられているリシノール酸(%R)およびオレイン酸(%O)の比率(%R)は全脂肪酸に対する比率である。
【実施例16】
【0174】
この実施例は、植物内での発現に適したベクターの構築を記載する。該ベクターの概要図を図4〜6に示す。
【0175】
トランスジェニックベクターの作製:修飾pUCAPベクターの構築
pUCAPベクター[Engelenら (1995) Transgenic Res. 4(4):288-290]を修飾して、pUCAP2、pUCAP3、pUCAP4、pUCAP5およびpUCAP6を得た。
【0176】
Ubi3ターミネーターに隣接する5'-Sacおよび3'-EcoRI部位を導入するために、以下の特異的プライマーを設計した:順行プライマー: UT3 (配列番号78) およびリバースプライマー: UT4 (配列番号79)。PCR[標準的な条件下、KTLA DNAポリメラーゼでの、25サイクル(94℃で4分間、60℃で30秒間、68℃で1分間)]により、pBinplus [Engelenら (1995) Transgenic Res. 4(4):288-290] からUbi3ターミネーターを増幅した。PCR産物をSacIおよびEcoRIで消化し、ついでpUCAP内にクローニングしてpUCAP1を得た。
【0177】
Ubi3プロモーターに隣接する5'-AscIおよび3'-SphI部位を導入するために、以下の特異的プライマーを設計した:順行プライマー: UP1 (配列番号80) およびリバースプライマー: UP2 (配列番号81)。PCR[標準的な条件下、KTLA DNAポリメラーゼでの、25サイクル(94℃で4分間、60℃で30秒間、68℃で1分間)]により、pBinplus [Engelenら (1995) Transgenic Res. 4(4):288-290] からUbi3プロモーターを増幅した。PCR産物をAscIおよびSphIで消化し、ついでpUCAP1のAscI/SphI部位内にクローニングしてpUCAP2を得た。
【0178】
開始コドンの直前にBamH1突出部を有しHAタグの最後のコドンの直後にSacI突出部を有する該HAタグを作製するために、以下の特異的オリゴを設計した:順行オリゴ: CHA1 (配列番号84) およびリバースオリゴ: CHA2 (配列番号85)。オリゴ(0.1pg/μL)を92℃で3分間アニールさせ徐々に室温にすることにより、該HAタグを作製した。該HAタグをpUCAP2のBamHI/SacI部位内にクローニングしてpUCAP3を得た。pUCAP3のMCS内にクローニングされたDNAはC末端にHAタグを有するであろう。
【0179】
開始コドンの直前にHindIII突出部を有しHAタグの最後のコドンの直後にSalI突出部を有する該HAタグを作製するために、以下の特異的オリゴを設計した:順行オリゴ: HA5 (配列番号82) およびリバースオリゴ: HA6 (配列番号83)。オリゴ(0.1pg/μL)を92℃で3分間アニールさせ徐々に室温にすることにより、該HAタグを作製した。該HAタグをpUCAP2のHindIII/SalI部位内にクローニングしてpUCAP4を得た。pUCAP4のMCS内にクローニングされたDNAはN末端にHAタグを有するであろう。
【0180】
A. thaliana IRT2プロモーターに隣接する5'-AscI部位および3'-SphI部位をpUCAP1のAscIおよびSphIに付加するために、以下の特異的オリゴを設計した:順行プライマー: IRT1 (配列番号86) およびリバースプライマー: IRT2 (配列番号87)。30サイクルの勾配(Gradient)PCR[標準的な条件下、KTLA DNAポリメラーゼでの(95℃で4分間、48〜63℃で30秒間、68℃で2分間)]を用いて、IRT2プロモーターをArabidopsis thalianaから増幅した。PCR産物をAscI/SphIで消化し、AscI/SphIをpUCAP1内にクローニングしてpUCAP5を得た。
【0181】
該AscI/SphI部位を使用して、pUCAP3のUbi3プロモーターをIRT2プロモーターで置換することにより、pUCAP6を得た。
【0182】
N末端融合のためのHAタグを含有するベクターの作製
オリゴヌクレオチドHAタグ-F (配列番号109) およびHA-タグ-R (配列番号110)を混合し、標準的な方法を用いてアニールさせた。該アニール化産物はHidIIIおよびBamHI制限部位の適合性末端を生成し、該産物をプラスミドベクターpUC118内にクローニングしてプラスミドpUC-HAを得た。
【0183】
A. thalianaからのfad2遺伝子の5'UTRおよび3'UTR領域を含有する植物形質転換ベクター
A. thalianaゲノムDNAを鋳型として使用した。KTLAは、PCRに適したDNAポリメラーゼであった。プライマーFad5'UTR-F (配列番号111) およびFad5'UTR-R (配列番号112)を使用して、5'UTR、第1イントロンおよびfad2(5'末端において制限部位XhoIに、および3'末端においてNcoI、BamHIに隣接するもの)の第1コドンをPCR増幅した。PCR反応は標準的な条件下で以下のとおりに行った:97℃で30秒間、35サイクルの増幅(94℃で45秒間、55℃で1分間、72℃で90秒間)および72℃で5分間の最終伸長。PCR産物をプラスミドベクターpCR2.1 (Invitrogen)内にクローニングした。
【0184】
プライマーFad3'UTR-F (配列番号113) およびFad3'UTR-R (配列番号114)を使用して、fad2の3'UTRをPCR増幅した。反応は以下のとおりに行った:97℃で10秒間および35サイクルの増幅(94℃で30秒間、60℃で1分間、72℃で2.5分間)。PCR産物をプラスミドベクターpCR2.1内にクローニングした。両方のPCR産物fad2 5' UTR (配列番号44) およびFad2 3' UTR (配列番号45)の同一性をDNA配列決定により確認した。
【0185】
両方のfad2 UTR領域を含有する植物形質転換ベクターを2工程で構築した。まず、該fad2 5' UTR断片をXhoI/BamHIインサートとしてバイナリーベクターのCaMV35Sプロモーターの直下流にサブクローニングした。ついで、XbaIおよびHindIII制限部位の間の該プラスミド内に存在するA. tumefaciens NOS 3' UTRを,同じ部位の間のA. thaliana fad2 3'UTR断片で置換して、pFADUTRと称されるプラスミドを得た。
【0186】
pUCAP3、pUCAP4およびpUCAP6内へのヒドロキシラーゼおよび二官能性ヒドロキシラーゼ遺伝子のクローニング
R. communisヒドロキシラーゼおよびL. lindheimeri二官能性ヒドロキシラーゼゲノムクローンを、特異的プライマーを使用するPCR増幅により作製した。
【0187】
C末端HAタグを有するRicinus communisヒドロキシラーゼ: 開始コドンの直上流にHindIII部位を、終止コドンの直前にBamHI部位を導入するために、以下の特異的プライマーを設計した:順行プライマー: ヒマ(Castor) 5'-HindIII (配列番号88) およびリバースプライマー: ヒマ(Castor) 3'-BamHI (配列番号89)。PCR[標準的な条件下、KTLAでの、5サイクル(94℃で4分間、94℃, 50℃で45秒間、72℃で45秒間)およびそれに続く25サイクル(94℃で45秒間、58℃で45秒間、72℃で2分間)]により、該ヒドロキシラーゼを増幅した。PCR産物をHindIIIおよびBamH1で消化し、ついでpUCAP3発現ベクターのHindIII、BamH1内にクローニングしてRc-pUCAP3を得た。
【0188】
N末端HAタグを有するRicinus communisヒドロキシラーゼ: Ricinus communisヒドロキシラーゼをN末端HAタグでタグ付けするために、以下の特異的プライマーを設計した:順行プライマー: BamHI ヒマ(castor) F (配列番号104) およびリバースプライマー: ヒマ(castor) XbaI MfeI R (配列番号98)。PCR[標準的な条件下、KTLA DNAポリメラーゼでの、5サイクル(92℃で1分間、50℃で30秒間、68℃で1.5分間)およびそれに続く25サイクル(92℃で1分間、57℃で30秒間、68℃で1.5分間)]により、該ヒドロキシラーゼを増幅した。PCR産物をBamHI/MfeIで消化し、pUC-HAベクターのBamHI/EcoRI部位内にサブクローニングした。
【0189】
N末端HAタグを有するLesquerella lindheimeri二官能性酵素: 開始コドンの直上流にSalI部位を、終止コドンの直後にBamH1部位を導入するために、以下の特異的プライマーを設計した:順行プライマー: fend F SalI (配列番号90) およびリバースプライマー: Fend R B-stop. (配列番号91)。PCR[標準的な条件下、KTLA DNAポリメラーゼでの、5サイクル(94℃で4分間、94℃で45秒間、50℃で45秒間、72℃で2分間)およびそれに続く25サイクル(94℃で45秒間、58℃で45秒間、72℃で2分間)]により、該二官能性ヒドロキシラーゼを増幅した。PCR産物をSalIおよびBamH1で消化し、ついでpUCAP4発現ベクターのSalI/BamH1内にクローニングしてRc-pUCAP4を得た。
【0190】
N末端HAタグを有するL. gracilis二官能性ヒドロキシラーゼ: L. gracilis二官能性ヒドロキシラーゼをN末端HAタグでタグ付けするために、以下のプライマーを設計した:順行プライマー: BamHI gracilis F (配列番号105) およびリバースプライマー: gracilis XbaI MfeI R (配列番号101)。PCR[標準的な条件下、KTLA DNAポリメラーゼでの、5サイクルの加熱サイクル(92℃で1分間、50℃で30秒間、68℃で1.5分間)およびそれに続く25サイクルの加熱サイクル(92℃で1分間、57℃で30秒間、68℃で1.5分間)]により、該ヒドロキシラーゼ遺伝子を増幅した。PCR産物をBamHI/MfeIで消化し、ついでpUC-HAベクターのBamHI/EcoRI部位内にサブクローニングした。
【0191】
BglII NcoI C. biennis F (配列番号108)/Crepis XbaI MfeI R (配列番号103) およびBamHI NcoI S. epoxygenase F (配列番号106)/S.epoxygenase XbaI R (配列番号107)を使用して、前記のとおり、Crepis biennisおよびStokesia laevisエポキシゲナーゼ遺伝子をpUC-HAベクター内にサブクローニングした。
【0192】
Asc1 Nco1 C. biennis F (配列番号124)/Crepis XbaI MfeI R (配列番号103) およびBamHI NcoI S. epoxygenase F (配列番号106)/S.epoxygenase XbaI R (配列番号107)を使用して、前記のとおり、HA配列を欠くCrepis biennisおよびStokesia laevisエポキシゲナーゼ遺伝子を植物発現ベクター内にサブクローニングした。
【0193】
植物発現ベクター
構築物Rc-pUCAP3、Ll-pUCAP4およびRc-pUCAP6をAscIおよびPacIで消化してインサートを遊離させ、ついでインサートを、[Engelenら (1995) Transgenic Res. 4(4):288-290]に記載のとおりに操作されたpBinPlusARSバイナリーベクターのAscI/PacI部位内にサブクローニングして、Rc-3pBinPlusARS、Ll4-pBinPlusARSおよびRc6-pBinPlusARSを得た。
【0194】
ΔKKGGヒマ、ΔT gracilis、R. communisヒドロキシラーゼ、キメラfad2/R. communisヒドロキシラーゼ、L. gracilis二官能性ヒドロキシラーゼ、キメラfad2/L. gracilis二官能性ヒドロキシラーゼ、C. biennisエポキシゲナーゼおよびS. laevisエポキシゲナーゼ遺伝子を、NcoI/XbaI制限酵素部位を使用して植物発現ベクター内にサブクローニングした。N末端HAタグ付きキメラfad2/R. communisヒドロキシラーゼおよびN末端キメラfad2/R. communisヒドロキシラーゼをpUC-HAから取り出し、NcoI/XbaI制限酵素部位を使用して植物発現ベクター内にサブクローニングした。また、前記構築物を、NcoI/XbaI制限部位を使用して、fad2 5’UTRおよびfad2 3'UTRを含有する植物発現ベクター(pFADUTR)内にサブクローニングした。
【実施例17】
【0195】
この実施例は、実施例16に記載のプラスミドベクターを使用する、トランスジェニックArabidopsi植物、トランスジェニックトマトカルス、トランスジェニックトマト毛状根、ダイズ毛状根およびダイズ複合植物の生産を記載する。
【0196】
Agrobacterium tumefaciensおよびAgrobacterium rhizogenesの形質転換
ヒドロキシラーゼ、エポキシゲナーゼまたはキメラfad2構築物をコードする遺伝子を含有する植物発現ベクターを、以下のとおりにAgrobacterium tumefaciens LB4404内に形質転換した。Agrobacteriumを100mLのLB[カナマイシン(50μg/mL)、リファンピシン(10μg/mL)およびストレプトマイシン(150μg/mL)で補足された(1% バクトトリプトン、0.5% 塩化ナトリウムおよび0.5% バクト-酵母エキス)]中、一晩増殖させた。同様にして補足された100mLのLBを1mLの該一晩培養物に接種し、30℃で4時間成長させた。該培養を10分間冷却し、細胞を遠心分離により集めた。細胞を1mLの氷冷CaCl2 (20 mM)に再懸濁させ、100μLアリコートに分配した。1μgのプラスミドDNAを該細胞に加え、ドライアイス上で凍結させ、37℃で5分間放置し、1mLのLB中、30℃で90分間振とうした。細胞をペレット化し、100μLのLBに再懸濁させ、LBプレート[カナマイシン(50μg/mL)、リファンピシン(10μg/mL)およびストレプトマイシン(150μg/mL)で補足された(1% バクトトリプトン、0.5% 塩化ナトリウム、0.5% バクト-酵母エキスおよび0.15% 寒天)]上でプレーティングした。
【0197】
以下の点以外はAgrobacterium tumefaciens株LB4404と同様にして、Agrobacterium rhizogenes株A4の形質転換を行った。使用した培地はMGL [抽出物 (2.5 g/L)、トリプトン (5 g/L)、塩化ナトリウム (5 g/L)、L-グルタミン酸 (1 g/L)、マンニトール (5 g/L)、リン酸カリウム (0.26 g/L)、硫酸マグネシウム七水和物 (100 mg/L)およびビオチン (1 mg/L)] およびMGLプレート [酵母エキス (2.5 g/L)、トリプトン (5 g/L)、塩化ナトリウム (5 g/L)、L-グルタミン酸 (1 g/L)、マンニトール (5 g/L)、リン酸カリウム (0.26 g/L)、硫酸マグネシウム七水和物 (100 mg/L)、ビオチン (1 mg/L)およびバクト-寒天 (14 g/L)]であった。
【0198】
植物形質転換
CloughおよびBent [Clough & Bent (1998) Plant J. 19(3):249-257]に従い、Agrobacterium tumefaciensを介して、Arabidopsis thalianaを形質転換した。簡潔に説明すると、形質転換されたLB4404(LB-10μg/mL リファンピシン、50μg/mL カナマイシン、150μg/mL ストレプトマイシン)の5mLの一晩培養物を30℃で成長させた。該5ml培養物を使用して500mL LB(10μg/mL リファンピシン、50μg/mL カナマイシン、150μg/mL ストレプトマイシン)に接種し、30℃で一晩成長させた。培養を遠心沈殿(5K, 5分間)させた。ペレットを5%グルコース + 0.02% Silwet L-77に再懸濁させた。該植物の地上部を、穏やかに攪拌しながらAgrobacterium溶液に5分間浸漬した。植物をドームの下に一晩覆った。
【0199】
Arabidopsis thalianaの葉および根組織の脂肪酸分析
植物材料の作製
種子の滅菌: 該形質転換植物からの約200個の第2世代種子をエッペンドルフチューブ内に配置した。エタノール中の1mLの20%漂白剤を加え、該チューブを室温で15分間放置した。ついで該種子を100%エタノールで2回洗浄し、開いたチューブを層流フード内に放置して一晩乾燥させた。
【0200】
種子の発芽: 約50個の種子を0.5×MSプレート上に配置し、パラフィルムで包み、発芽するまで室温に維持した。
【0201】
約0.10gの根組織または葉組織を1.5mL エッペンドルフチューブ内に入れ、ドライアイス上で凍結させ、ついで乳棒で粉砕した。ついで該粉砕根組織をメチル化(メタノール中の500μLの1%ナトリウムメトキシド)し、ヘキサンで抽出し、トリメチルシリル化(100μLのBSTAFA-TMCS, Supelco, 90℃で45分間)した。サンプルをAgilent 6890 GC-5973 Mass Selective Detector (GC/MS) およびAgilent DB-23キャピラリーカラム (0.25 mm×30 m×0.25 μm)上で分析した。インジェクターを250℃に維持し、オーブン温度を235℃にし、1.0mL/分のヘリウム流を維持した。
【表14】

【0202】
これらのGC/MSデータは、5'および3'fad2 UTRに機能しうる形で連結されたキメラfad2/R.communisヒドロキシラーゼ(4062または4028*)が、A. thaliana内で発現された場合に機能的であったことを示している。該表に挙げられているリシノール酸の比率は全脂肪酸に対する比率である。インサートを含有しないベクターで形質転換されたA. thaliana(3819)はリシノール酸(R)を蓄積しなかった。
【0203】
トマトの毛状根形質転換プロトコール
植物材料の調製: このプロトコールはトマトの根の形質転換のために用いた。形質転換剤としてはA. rhizogenesの多数の株を使用することが可能であるが、この場合には株A4 (ATCC番号43057)を使用した。Lycopersicon esculentum cv. Rutgers、Money MakerまたはMountain Springを使用したが、Meloidogyne incognita (M. incognita)感染に対して感受性である他の品種を使用することも可能である。対照として、耐性品種Motelleを使用した [Vosら (1998) Nat. Biotechnol. 16: 1365-1369]。このプロトコールは、Arabidopsis thaliana, ecotype Columbiaからの毛状根培養を作製するためにも用いることが可能である。
【0204】
該形質転換プロトコールは、既に記載されているもの [McCormick (1991) Transformation of tomato with Agrobacterium tumefaciens. in Plant Tissue Culture Manual, Fundamentals and Applications, K. Lindsey (編), Kluwer, Vol. B6: 1-9]に類似している。簡潔に説明すると、トマト種子を次亜塩素酸塩で滅菌し、子葉が完全に開くまで、Gamborgの合成培地 [Gamborgら (1968) Exp. Cell Res. 50:151-158]を含有するマジェンタボックス内で日光下で7日間成長させた。子葉を無菌的に取り出し、近位および遠位の両方の先端をレーザー刃で除去することによりMSO培地(MS塩、3% スクロース、GamborgのB5ビタミン, pH 5.8)内で損傷させた。D1培地(MS塩、3%グルコース、GamborgのB5ビタミン、1 mg/L ゼアチン、0.8% Gel-rite寒天)で調製された150 mm2プレート上に配置された濾紙上で向軸側を上にして、損傷子葉を1〜2日間インキュベートした。このインキュベーション時間の後、子葉をA. rhizogenesの懸濁液と共に共培養した。
【0205】
A. rhizogenes培養の調製: A. rhizogenes A4のグリセロールストックをMGL培地[McCormick (1991) Transformation of tomato with Agrobacterium tumefaciens. in Plant Tissue Culture Manual, Fundamentals and Applications, K. Lindsey (編), Kluwer, Volume B6: 1-9] 上にストリークし、個々のコロニーが出現するまで29℃で成長させた。単コロニーを使用してMGL培地の15mL培養に接種し、それを振とうインキュベーター内で100rpm、29℃で1日間成長させた。翌日、3800×gで10分間の遠心分離により該細菌を回収した。得られたペレットを、該ペレットを乱すことなく15mLのMSO培地で2回洗浄し、3800×gで5分間遠心分離した。最終ペレットを15mL MSO培地内に再懸濁させ、550nmにおける該培養の光学密度を測定した。該密度をMSO培地で0.4に調節した。50μlの0.074M アセトシリンゴンの添加の後、共培養のためにこの培養の10mLを使用した。アセトシリンゴンの添加の1時間以内に共培養を行った。
【0206】
トマト子葉とA. rhizogenesとの共培養: 子葉の各プレート上に、5mLのA. rhizogenes培養を、プレインキュベートされた子葉上に無菌技術によりピペッティングした。該プレートを室温で10分間インキュベートし、この間、プレートを時々回転させた。ついで該細菌懸濁液を無菌ピペットで取り出した。小刀またはレーザー刃を使用して、D1培地上にWhatman濾紙ディスクを含有する新たな100×20mmペトリプレートに、該子葉を、向軸側を上にして穏やかに移した。該プレートを微小孔テープで密封し、南側の窓際で室温で2日間インキュベートした。
【0207】
トランスジェニック根の選択: 共培養後、200mg/L セフォタキシムを含有するGamborgの培地上に、該子葉を、向軸側を上にして20〜30子葉/プレートの密度で移した。該プレートを微小孔テープで密封し、暗所にて室温で10日間インキュベートした。第10日に、該子葉を新鮮な選択培地プレートに移した。更に10日間の後、毛状根原基を、無菌レーザー刃を使用して該子葉から摘出し、10日後に新鮮なプレートへ移すと共に選択培地上でインキュベートた。該毛状根がA. rhizogenesによる感染から治癒したかどうかを評価するために、該根を、セフォタキシムを含有しないGamborg培地に移し、10日間成長させた。該根の周囲に細菌増殖を示しているプレートを捨てた。
【0208】
根培養を、20〜30日ごとに連続的に移すことにより、選択を欠くGamborg培地上で維持した。
【0209】
トマト毛状根抽出物の脂肪酸分析
約0.25gの根組織を1.5mLエッペンドルフチューブ内に配置し、ドライアイス上で凍結させ、ついで乳棒で粉砕した。ついで該粉砕根組織をメチル化(メタノール中の500μLの1%ナトリウムメトキシド)し、ヘキサンで抽出し、トリメチルシリル化(100μLのBSTAFA-TMCS, Supelco, 90℃で45分間)した。サンプルをAgilent 6890 GC-5973 Mass Selective Detector (GC/MS) およびAgilent DB-23キャピラリーカラム (0.25 mm×30 m×0.25 μm)上で分析した。インジェクターを250℃に維持し、オーブン温度を235℃にし、1.0mL/分のヘリウム流を維持した。
【表15】

【0210】
これらのGC/MSデータは、R.communis(4203)ヒドロキシラーゼが、トマト毛状根組織内で発現された場合に機能的であったことを示している。該表に挙げられているリシノール酸の比率(%R)は全脂肪酸に対する比率である。インサートを含有しないベクター(3677)で形質転換されたトマト毛状根はリシノール酸(R)を蓄積しなかった。%Lおよび%Oの欄には、それぞれリノール酸およびオレイン酸の比率が挙げられている。
【表16】

【0211】
これらのGC/MSデータは、キメラfad2/R.communisヒドロキシラーゼ(3927または3938*)が、トマト毛状根組織内で発現された場合に機能的であったことを示している。該表に挙げられているリシノール酸の比率(%R)は全脂肪酸に対する比率である。インサートを含有しないベクター(3677)で形質転換されたトマト毛状根はリシノール酸(R)を蓄積しなかった。%Lおよび%Oの欄には、それぞれリノール酸およびオレイン酸の比率が挙げられている。
【表17】

【0212】
これらのGC/MSデータは、5'および3' fad2 UTRに機能しうる形で連結されたキメラFad2/R.communisヒドロキシラーゼ(4062または4028*)が、トマト毛状根組織内で発現された場合に機能的であったことを示している。該表に挙げられているリシノール酸の比率は全脂肪酸に対する比率である。インサートを含有しないベクター(3677)で形質転換されたトマト毛状根はリシノール酸(R)を蓄積しなかった。
【0213】
ダイズの毛状根形質転換プロトコール
種子の滅菌: 約250個の種子を100×25mmプレート内に配置し、換気フード内のデシケーター内に配置した。350mLビーカーを使用して、2mLの濃HClを200mLの100%漂白剤に注意深く加え、該種子が滅菌ガスにさらされるよう該ビーカーをデシケーター内に配置した。24時間後、該方法を繰返した。合計3回の滅菌のために、これを3回行った。無菌性を試験するために、10個の種子をLB内に配置し、37℃で24時間、振とう器上に配置した。該LBが、細菌増殖の非存在を示す透明であれば、該種子をペトリディッシュ内で密封し、後日、発芽させた。細菌増殖が見られたら、該滅菌法を再度行った。
【0214】
種子の発芽: 9個の種子を0.25×固形MSプレート上に配置し、パラフィルムで包み、室温で7日間維持した。
【0215】
A. rhizogenes培養の調製: A. rhizogenes A4のグリセロールストックをMGL培地[McCormick (1991) Transformation of tomato with Agrobacterium tumefaciens. in Plant Tissue Culture Manual, Fundamentals and Applications, K. Lindsey (編), Kluwer, Volume B6: 1-9] 上にストリークし、個々のコロニーが出現するまで29℃で成長させた。単コロニーを使用してLB + カナマイシン培地の15mL培養に接種し、それを振とうインキュベーター内で100rpm、29℃で1日間成長させた。翌日、3800×gで10分間の遠心分離により該細菌を回収した。得られたペレットを、0.2〜0.3の最終光学密度になるまでMSOに再懸濁させた。ついでアセトシリンゴンを375μmの最終濃度まで加えた。アセトシリンゴンの添加の1時間以内に共培養を行った。
【0216】
外植片切除: 腋芽が摘出されるのを確認しながら、子葉を主軸から切り出した。
【0217】
ダイズ子葉とA. rhizogenesとの共培養: 無菌技術を用いてダイズ子葉を該培養に加えた。ついで該培養を2分間、減圧浸潤に付し、室温で20分間インキュベートした。ついで該細菌懸濁液を無菌ピペットで取り出した。ピンセットを使用して、MSOに浸漬されたWhatman濾紙ディスクを含有する100×20mmペトリプレートに、該子葉を、向軸側を上にして穏やかに移した。該プレートを微小孔テープで密封し、南側の窓際で室温で2日間インキュベートした。
【0218】
トランスジェニック根の選択: 共培養後、500mg/L カルベニシリンを含有するMS固形培地上に、該子葉を、向軸側を上にして10子葉/プレートの密度で移した。該プレートを微小孔テープで密封し、室温でインキュベートした。接種の約28日後、毛状根を、無菌レーザー刃を使用して該子葉から摘出し、選択を伴うGamborg培地上でインキュベートした。
【0219】
Arabidopsis thalianaの毛状根形質転換プロトコール
種子の滅菌: 約200個の種子をエッペンドルフチューブ内に配置した。エタノール中の1mLの20%漂白剤を加え、該チューブを室温で15分間放置した。ついで該種子を100%エタノールで2回洗浄し、開いたチューブを層流フード内に放置して一晩乾燥させた。
【0220】
種子の発芽: 約50個の種子を0.5×固形MSプレート上に配置し、パラフィルムで包み、発芽するまで室温に維持した。
【0221】
A. rhizogenes培養の調製: A. rhizogenes A4のグリセロールストックをMGL培地[McCormick (1991) Transformation of tomato with Agrobacterium tumefaciens. in Plant Tissue Culture Manual, Fundamentals and Applications, K. Lindsey (編), Kluwer, Volume B6: 1-9] 上にストリークし、個々のコロニーが出現するまで29℃で成長させた。単コロニーを使用してLB + カナマイシン培地の15mL培養に接種し、それを振とうインキュベーター内で100rpm、29℃で1日間成長させた。翌日、3800×gで10分間の遠心分離により該細菌を回収した。得られたペレットを、0.2〜0.3の最終光学密度になるまでMSOに再懸濁させた。ついでアセトシリンゴンを375μmの最終濃度まで加えた。アセトシリンゴンの添加の1時間以内に共培養を行った。
【0222】
外植片切除: A. thaliana子葉を無菌的に取り出し、近位および遠位の両方の先端をレーザー刃で除去することによりMSO培地(MS塩、3% スクロース、GamborgのB5ビタミン, pH 5.8)内で損傷させた。D1培地(MS塩、3%グルコース、GamborgのB5ビタミン、1 mg/L ゼアチン、0.8% Gel-rite寒天)で調製された150 mm2プレート上に配置された濾紙上で向軸側を上にして、損傷子葉を1〜2日間インキュベートした。このインキュベーション時間の後、子葉をA. rhizogenesの懸濁液と共に共培養して形質転換を開始させた。
【0223】
A. thaliana子葉とA. rhizogenesとの共培養: 無菌技術を用いてA. thaliana子葉を該A. rhizogenes培養に加え、室温で10分間放置した。ついで該細菌懸濁液を無菌ピペットで取り出した。無菌へらを使用して、500mg/L カルベニシリンと共に固形Gamborgs培地を含有する100×20mmペトリプレート内のWhatman濾紙ディスクに、該子葉を、向軸側を上にして穏やかに移した。該プレートを微小孔テープで密封し、南側の窓際で室温でインキュベートした。
【0224】
トランスジェニック根の選択: 接種の約10日後、毛状根を、無菌レーザー刃を子葉して該子葉から摘出し、選択を伴うGamborg培地上に配置した。
【0225】
カルス形質転換プロトコール
植物材料の調製: このプロトコールはトランスジェニックトマトアルスの作製のために用いられうる。行った全ての形質転換においては、Agrobacterium tumefaciens株LB4404およびトマト品種Lycopersicon esculentum cv. Rutgers、Money MakerまたはMountain Springを使用した。毛状根形質転換の節において記載されているとおりに、トマト子葉を成長させた。
【0226】
A. tumefaciens培養の調製: A. tumefaciens LB4404のグリセロールストックをLB培地(リファンピシン10μg/mL、ストレプトマイシン150mg/mL、カナマイシン50mg/mL)(McCormick, 1991)上にストリークし、個々のコロニーが出現するまで29℃で成長させた。単コロニーを使用してLB培地の15mL培養に接種し、それを振とうインキュベーター内で100rpm、29℃で1日間成長させた。翌日、3800×gで10分間の遠心分離により該細菌を回収した。得られたペレットを、該ペレットを乱すことなく15mLのMSO培地で2回洗浄し、3800×gで5分間遠心分離した。最終ペレットを15mL MSO培地内に再懸濁させ、550nmにおける該培養の光学密度を測定した。該密度をMSO培地で0.4に調節した。50μlの0.074M アセトシリンゴンの添加の後、共培養のためにこの培養の10mLを使用した。アセトシリンゴンの添加の1時間以内に共培養を行った。
【0227】
トマト子葉とA. tumefaciensとの共培養: A. tumefaciensを使用すること以外は毛状根形質転換の節において記載されているとおりに、共培養を行った。
【0228】
トランスジェニックカルスの選択: 共培養後、200mg/L セフォタキシムおよび100mg/L カナマイシンを含有する2Z培地(4.3 g MS塩/L、20%スクロース、1 mg ゼアチン/L、100 mg/L イノシトール、1×Nitschビタミン、1×葉酸、8 g/L 組織培養寒天)上に、該子葉を、向軸側を上にして20〜30子葉/プレートの密度で移した。該プレートを微小孔テープで密封し、暗所にて室温で10日間インキュベートした。10日ごとに、該子葉を新鮮な選択培地プレートに移した。2〜3週間後、外植片は緑色ないし白色のカルスに成長し始めた。死んでいた外植片(褐色に変色していたもの)は除外した。死亡組織を含有する外植片からカルスを切り出した。該カルスをGamborg培地上で維持した。
【0229】
ダイズに関する複合植物プロトコール:
Agrobacterium rhizogenes A4培養を、適当な抗生物質を含有するルリアブロス(Luria Broth)内で30℃で一晩成長させた。培養を4,000gで10分間遠心沈殿させた。細胞を0.2〜0.5の最終O.D.600nmまで1/4 MSに懸濁させた。
【0230】
無菌ダイズ種子(Cl2ガスで処理された種子)を土壌内に植えた。いずれかの花序を欠く若いシュートを節間領域の中央で切断した。シュートを1cm2 FibrGro(登録商標)立方体内に移植した。各移植体を4mLのA. rhizogenes懸濁液に接種し、平箱(flat)内に配置し、透明な蓋で覆い、ベンチの最上部に1日間放置して順化させた。第2日に、該蓋を取り除いて該立方体を乾燥させた。ついで移植体に水をやり、それを覆った。2〜4週間で根が出現した。形質転換された根は可視マーカーにより特定されうる。形質転換されていない根は切除するべきである。数週間後、シュートを、線虫感染アッセイのために砂に移植することが可能である。
【実施例18】
【0231】
この実施例は、トランスジェニック植物の駆虫活性を測定するためのアッセイを記載する。
【0232】
毛状根の感染: 1個の成長中の毛状根先端(長さ1〜2cm)を、ストック根プレートから、Gel-rite寒天が3.0%Phytagel(SigmaカタログP-8169)により置換された約30mLのGamborg培地を含有する100×15cmペトリデッィシュ上に移すことにより、アッセイ用プレートを調製した。1アッセイ当たり1トランスジェニック系統当たり少なくとも2つのプレートを使用した。対照として、本発明者らは、プロモーターの後にいずれのコード配列をも含有しない植物形質転換プラスミドで形質転換されたA. rhizogenesを使用して作製された毛状根を使用した。アッセイプレートを微小孔テープで密封し、28℃で4〜7日間インキュベートした後、それにMeloidogyne incognita卵を感染させた。
【0233】
Meloidogyne incognita接種物の調製: 既に記載されているプロトコール[Hussey & Barker (1973) Plant Disease Reporter 57:1025-1028]を用いて、28〜42日前に5000個のM. incognita卵に感染した温室栽培トマト植物(Lycopersicon esculentum cv. Mountain Spring)からM. incognita卵を集めた。該トマト植物の地上組織を除去し、水道水で満たされたバケツの中で穏やかに攪拌することにより、根塊から土壌を除いた。該根塊を家庭用ミキサーに移し、それに500mLの10%漂白剤溶液(水道水中のClorox漂白剤)を加え、ピューレセット(puree setting)を使用して細かい断片に切り刻んだ。該根スラリーを、500メッシュの篩いの上に載せられた200メッシュの篩(それぞれ、VWRカタログ番号57334-492および57334-480)に移し、水道水で激しくすすぐことにより500メッシュの篩いの上に卵を集めた。卵を更にクリーニングし、スクロース密度遠心分離により濃縮した。卵を約30mLの水中に集め、50mL遠心チューブ中の30mLの30%スクロース溶液の上でピペッティングし、回転バケツローター内での1000×gで10分間の遠心分離によりバンド形成させた。該卵を、パスツールピペットを使用して集め、水道水を使用して十分にすすいで小さな500メッシュの篩い上でスクロースを除去した。卵を少量の水中に集め、使用するまで4℃で保存した。
【0234】
接種物の滅菌: 約100,000個の保存されたM. incognita卵を15mL遠心チューブ内に配置し、10%漂白溶液で10mLの容量にした。該チューブを5分間攪拌し、前記のとおりに遠心分離により卵を集めた。上清を除去し、該卵を無菌水で3回すすいだ。卵を1mLの水に再懸濁させ、McMaster線虫卵計数チャンバーを使用して計数した。虫様幼虫を含有する卵のみを計数した。
【0235】
あるいは、孵化したJ2幼虫を接種物として使用する場合には、標準的なプロトコールを用いて卵を孵化させた。幼虫を、前記のとおりに遠心分離により集め、Atkins, 1996 [Atkinsonら (1996) J. Nematol. 28:209-215]に記載されているとおりに、ペニシリン、硫酸ストレプトマイシンおよびクロロヘキシジン溶液中での連続的インキュベーションならびにそれに続く無菌水中でのすすぎにより滅菌した。
【0236】
接種およびアッセイのモニター: 無菌技術を用いて、10μL中の1プレート当たり300個の卵または100匹のJ2幼虫を加えることにより、毛状根感染を開始させた。接種物の添加の後、プレートをパラフィルムで再密封し、第2、7、14、21、28および35日にモニターした。細菌または真菌による汚染を示しているプレートを捨てた。線虫誘発性感染ゴールは第7日に低倍率で視認でき、成体雌は第25〜30日に視認できた。
【0237】
感染アッセイの評価
ゴール(虫こぶ)の数: 30〜35日後に、低倍率下で計数することにより、1プレート当たりのゴールの数を測定した。ゴールの総数ならびに成体および卵保有雌の数を記録した。あるいは、根のフクシン染色により[Eisenback (2000) Techniques for measuring nematode development and egg production. in Laboratory Techniques in Nematode Ecology. Wheelerら編, Society of Nematologists: Hyattsville, MD. p.1-4]、すべての段階におけるM. incognitaの総数を測定した。
【0238】
同腹サイズ: 卵保有雌をそれぞれ別々のアッセイプレートから切り出し、ミクロ遠心チューブ内に配置した。1mLの10% 漂白剤を各チューブに加え、該チューブを3分間攪拌した。遊離した卵をミクロ遠心分離(1000×g、2分間)により集め、無菌水で3回すすぎ、前記のとおりに計数した。同腹サイズを卵/雌として記録した。
【0239】
同腹生存度: 計数後、個々のプレートからの卵を500μLの水中で、24ウェルプレートのウェルに移し、暗所にて室温で7日間インキュベートした。この期間の後に視認されうる新たに孵化したJ2幼虫の数を測定し、記録した。卵または幼虫が毛状根に再感染する能力を、記載されているとおりに卵またはJ2を対照根に接種することにより測定した。
【0240】
根ゴール形成に基づく評価系: 前記方法によりプレートの数を評価することが困難になった場合には、比較的高いスループットの評価系を用いることが可能である。以下の表は、Meloidogyne sppにより生じた損傷根の目視評価に基づく評価系の一例である。
【0241】
損傷スコア 説明
0 ゴールは無し
1 1〜2個の小さなゴール
3 3〜5個の小さなゴール
5 5個を超えるゴール、しかし複合ゴールは無し
10 いくつかの小さなゴールおよび少なくとも1つの複合ゴール
25 該根の25%が複合ゴールを有する; 多数の小さなゴール
50 該根の50%が複合ゴールを有する
75 該根の75%が複合ゴールを有する
90 根全体がゴール形成しており、矮化している
【0242】
ダイズシスト線虫ポットアッセイ
このアッセイは、根におけるダイズシスト線虫(Heterodera glycines)の感染およびその繁殖に対するダイズ植物の耐性を評価するために用いる。直径3〜4インチ平方のポットを清潔な砂で満たし、それに十分に水をやった。ダイズ種子または任意の発根植物部分をポットの中央にポットごとに植付けし、それに十分に水をやって、空気塊を除去した。該植物が、接種に適した齢になるまで、該ポットを温室またはグロースチャンバー内で20℃〜30℃でインキュベートした。種子から開始したダイズは、典型的には、植付けの2〜3週間後に接種し、一方、移植体は、植付けの1〜3日後に接種する。試験接種物は、侵襲されたダイズ植物の土壌および根から集めた成熟H. glycinesシストからの卵よりなるものであった。250ミクロンメッシュの篩いを使用して該シストを集め、ついでそれをTenbroeckガラス組織ホモジナイザー内で粉砕して卵を遊離させた。該卵を更に、篩い及び40%スクロース溶液上での4000RPMで5分間の遠心分離により精製した。実験用接種物は、1mL当たり500個の虫様卵を含有する水よりなるものであった。該卵懸濁液の5mLを、該試験植物を含有する砂の表面上でピペッティングし、該卵を軽く水で濡らした。ついで該試験植物を温室またはグロースチャンバーに戻し、3〜4週間インキュベートして、根感染およびシスト形成を引き起こさせた。ついで該ポットおよび砂を穏やかに除去し、水中ですすぐことにより、該根を集めた。該根系に付着した白色線虫シストの数を計数することにより、線虫感染の重症度を測定した。あるいは、該砂および根を水で希釈し、250ミクロンの篩いに通して、保存または計数のために該シストを集め濃縮することが可能であろう。
【0243】
シスト線虫感染のアッセイのためのトマト毛状根の使用: 前記アッセイは、シスト線虫系統TN2を使用して、シスト線虫がトマト根に感染する能力を測定するためにも用いられうる。
【実施例19】
【0244】
【表18】

【実施例20】
【0245】
この実施例は、種々のコドン最適化Ricinus communis構築物を発現するトマト毛状根およびArabidopsis thaliana種子に脂肪酸分析の結果を記載する。
【0246】
トマト毛状根の脂肪酸分析を塩基性誘導体化法で行った。SID 129遺伝子(HAタグ付きR. communis配列 - 配列番号129)を発現するトマト毛状根の分析の結果を表19に示す。SID 30遺伝子(R. communis - 配列番号30のもの)またはSID 28遺伝子(R. communis - 配列番号28のもの)を発現するトマト毛状根の分析の結果を表20に示す。該分析において使用する根を光および温度サイクリング条件下(明所における23℃で12時間と暗所における20℃で12時間との交互)で成長させた。塩基性誘導体化法は、Cahoonら (Plant Physiol. 2002, 128: 615-624)に記載されているのと実質的に同じ方法で行った。粉砕根組織をメタノール中の500μLの1%ナトリウムメトキシドでメチル化し、ヘキサンで抽出し、トリメチルシリル化(100μLのBSTAFA-TMCS, Supelco, 90℃で45分間)した。サンプルをAgilent 6890 GC-5973 Mass Selective Detector (GC/MS) およびAgilent DB-23キャピラリーカラム (0.25 mm×30 m×0.25 μm)上で分析した。インジェクターを250℃に維持し、オーブン温度を235℃にし、1.0mL/分のヘリウム流を維持した。
【0247】
A. thaliana種子の脂肪酸分析は、塩基性または酸性誘導体化法で行った。SID 129遺伝子(HAタグ付きR. communis配列 - 配列番号129)を発現するA. thaliana種子の分析の結果を表21に示す。Arabidopsis植物をグロースチャンバー内の制御環境下、3インチのポット内で成長させた。12時間の明期:12時間の暗期のサイクルで23℃の温度を維持した。植物に水道水で毎日水をやり、週1回施肥した。塩基性誘導体化法は、メタノール中のナトリウムメトキシドの代わりにメタノール中の500μLの2.5%硫酸を使用する以外はCahoonら (Plant Physiol. 2002, 128: 615-624)に記載されているのと同じであった。
【表19】

【表20】

【表21】

【0248】
表19および20は、ヒマ遺伝子のコドン最適化が、そのような遺伝子を発現する植物の栄養組織におけるリシノール酸(18:1-OH)の蓄積を可能にし、一方、空ベクターで形質転換された植物においては蓄積が見られないことを示している。表21は、CaMV 35Sプロモーターが種子特異的プロモーターでない場合であってもA. thaliana種子においてリシノール酸の蓄積が検出されることを示している。総合すると、これらの及び前記実験の結果は、トランスジェニック植物における新規脂肪酸の蓄積の増加が線虫防除および非農薬産業用途(例えば、油料種子)の両方に有用であることを示唆している。
【0249】
他の実施形態
本発明はその詳細な説明と共に記載されているが、前記の説明は、添付の特許請求の範囲により定められる本発明を例示するものであり、本発明の範囲を限定するものではないと意図される。他の態様、利点および修飾も特許請求の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0250】
【図1】図1は、リシノール酸、リシノエライジン酸、12-オキソ-9(Z)-オクタデセン酸、12-オキソ-9(E)-オクタデセン酸、(12,13)-エポキシ-トランス-9-オクタデセン酸およびベルノール酸の構造を示す一連の図である。炭素の番号は、カルボニル(カルボキシル)炭素が炭素1となるように示されている。R = OH (酸); OCH3 (メチルエステル); O-Na+ (ナトリウム塩)。
【図2−1】図2-1は、ヒドロキシラーゼおよびエポキシゲナーゼポリペプチド(配列番号 (SEQ_ID_NO_) 13-24; 34-42)およびA. thaliana(配列番号125)、B. napus(配列番号126)、G. max(配列番号127)およびS. indicum(配列番号128)FAD2 Δ-12デサチュラーゼポリペプチド(それぞれgi|15229956|ref|NP_187819.1, gi|8705229|gb|AAF78778.1, gi|904154|gb|AAB00860.1およびgi|8886726|gb|AAF80560.1)の配列のアライメントである。
【図2−2】図2-2は、ヒドロキシラーゼおよびエポキシゲナーゼポリペプチド(配列番号 (SEQ_ID_NO_) 13-24; 34-42)およびA. thaliana(配列番号125)、B. napus(配列番号126)、G. max(配列番号127)およびS. indicum(配列番号128)FAD2 Δ-12デサチュラーゼポリペプチド(それぞれgi|15229956|ref|NP_187819.1, gi|8705229|gb|AAF78778.1, gi|904154|gb|AAB00860.1およびgi|8886726|gb|AAF80560.1)の配列のアライメントである。
【図3】図3はトランスジェニックエポキシゲナーゼおよびヒドロキシラーゼ構築物の概要図である。HAはアミノ酸配列YPYDVPDYA (配列番号139)を意味し、これはヒトインフルエンザウイルス赤血球凝集素の残基99-107に対応する。LBおよびRBはAgrobacterium T-DNAのそれぞれ左境界および右境界を意味する。
【図4】図4はプラスミドpUCAP6の概要図である。
【図5】図5はプラスミドpUCAP4の概要図である。
【図6】図6はプラスミドpUCAP3の概要図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのDNA構築物を含有するトランスジェニック植物であって、該構築物が、
(a)
i)
【化1】

(式中、Xは水素、CoA、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド、ACP、メチル、Na+、ホスファチジルコリンまたはホスファチジルエタノールアミンであり、ここで、R1およびR2の両方はヒドロキシルであるか、またはR1およびR2のうちの一方はヒドロキシルであり他方は水素であるか、またはR1およびR2のうちの一方はケトであり他方は水素であり、R3はC2、C4またはC6アルキルである)および
ii)
【化2】

(式中、Xは水素、CoA、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド、ACP、メチル、Na+、ホスファチジルコリンまたはホスファチジルエタノールアミンであり、ここで、R3はC2、C4またはC6アルキルである)
よりなる群から選ばれるC16、C18またはC20モノ不飽和脂肪酸産物への、基質からの変換を触媒するのに有効なポリペプチドをコードする核酸と、
(b)該ポリペプチドをコードする核酸に機能しうる形で連結された、該植物の栄養組織における発現をもたらす調節要素とを含む、トランスジェニック植物。
【請求項2】
第9炭素と第10炭素との間の二重結合がシスである、請求項1記載の植物。
【請求項3】
第9炭素と第10炭素との間の二重結合がトランスである、請求項1記載の植物。
【請求項4】
該調節要素が5'-調節要素である、請求項1記載の植物。
【請求項5】
5'-調節要素が根組織における発現をもたらす、請求項4記載の植物。
【請求項6】
該植物が、該DNA構築物を欠く対応植物と比較して有意に増加した量のヒドロキシ脂肪酸を該植物の根に含有する、請求項5記載の植物。
【請求項7】
ヒドロキシ脂肪酸がリシノール酸である、請求項6記載の植物。
【請求項8】
リシノール酸が該根の全脂肪酸含量の約0.1%〜約25%を構成する、請求項7記載の植物。
【請求項9】
該植物が、該DNA構築物を欠く対応植物と比較して有意に増加した量のエポキシ脂肪酸を該植物の根に含有する、請求項5記載の植物。
【請求項10】
エポキシ脂肪酸がベルノール酸である、請求項9記載の植物。
【請求項11】
ベルノール酸が該根の全脂肪酸含量の約0.1%〜約25%を構成する、請求項10記載の植物。
【請求項12】
5'-調節要素が、CaMV35Sプロモーター、ジャガイモリボソームタンパク質S27a Ubi3プロモーター、RB7プロモーター、アルファルファヒストンH3.2プロモーター、IRT2プロモーター、Arabidopsis FAD2 5'-UTR、Arabidopsis FAD3 5'-UTR、Ubi3 5'-UTR、アルファルファヒストンH3.2 5'-UTRおよびCaMV35S 5'-UTRよりなる群から選ばれる、請求項4記載の植物。
【請求項13】
該調節要素が、第2の5'-調節要素に機能しうる形で連結された第1の5'-調節要素を含み、第1の5'-調節要素がUbi3プロモーターであり、第2の5'-調節要素が、Arabidopsis FAD2 5'-UTR、Arabidopsis FAD3 5'-UTR、ジャガイモリボソームタンパク質S27 a 5'-UTR、Ubi3 5'-UTRおよびCaMV35S 5'-UTRよりなる群から選ばれる、請求項1記載の植物。
【請求項14】
該DNA構築物が更に、3'-調節要素を含む、請求項4記載の植物。
【請求項15】
3'-調節要素がUbi3ターミネーターまたはE9エンドウ(pea)ターミネーターを含む、請求項4記載の植物。
【請求項16】
5'-調節要素が、Arabidopsis FAD2 5'-UTRおよびArabidopsis FAD3 5'-UTRよりなる群から選ばれ、3'-調節要素が、Arabidopsis FAD2 3'-UTRおよびArabidopsis FAD3 3'-UTRよりなる群から選ばれる、請求項14記載の植物。
【請求項17】
5'-調節要素が配列番号43または44を含み、3'-調節要素が配列番号45を含む、請求項16記載の植物。
【請求項18】
前記の少なくとも1つのDNA構築物が更に、PDATまたはDAGATポリペプチドをコードする核酸に機能しうる形で連結された、植物の栄養組織における発現をもたらす少なくとも1つの調節要素を含む、請求項1記載の植物。
【請求項19】
該植物が更に、第2のDNA構築物を含み、この第2のDNA構築物が、PDATまたはDAGATポリペプチドをコードする核酸に機能しうる形で連結された、植物の栄養組織における発現をもたらす少なくとも1つの調節要素を含む、請求項1記載の植物。
【請求項20】
R3がC2アルキルまたはC4アルキルである、請求項1記載の植物。
【請求項21】
該ポリペプチドが、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、C. palaestinaエポキシゲナーゼGenBank(登録商標)No. CAA76156、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号134、配列番号135、配列番号136、配列番号137および配列番号138よりなる群から選ばれる、請求項1記載の植物。
【請求項22】
該ポリペプチドが配列番号37を含む、請求項21記載の植物。
【請求項23】
該ポリペプチドが配列番号38を含む、請求項21記載の植物。
【請求項24】
該ポリペプチドが配列番号14を含む、請求項21記載の植物。
【請求項25】
該ポリペプチドが配列番号15を含む、請求項21記載の植物。
【請求項26】
該ポリペプチドが配列番号16を含む、請求項21記載の植物。
【請求項27】
該ポリペプチドが配列番号40を含む、請求項21記載の植物。
【請求項28】
該ポリペプチドが配列番号41を含む、請求項21記載の植物。
【請求項29】
該ポリペプチドをコードする核酸がGenBank(登録商標)アクセッション番号CAA76156を含む、請求項21記載の植物。
【請求項30】
該ポリペプチドが配列番号34を含む、請求項21記載の植物。
【請求項31】
該ポリペプチドが配列番号35を含む、請求項21記載の植物。
【請求項32】
該ポリペプチドをコードする核酸が配列番号28である、請求項22記載の植物。
【請求項33】
該ポリペプチドをコードする核酸が配列番号29である、請求項23記載の植物。
【請求項34】
該ポリペプチドをコードする核酸が配列番号2である、請求項24記載の植物。
【請求項35】
該ポリペプチドをコードする核酸が配列番号3である、請求項25記載の植物。
【請求項36】
該ポリペプチドをコードする核酸が配列番号4である、請求項26記載の植物。
【請求項37】
該ポリペプチドをコードする核酸が配列番号31である、請求項27記載の植物。
【請求項38】
該ポリペプチドをコードする核酸が配列番号32である、請求項28記載の植物。
【請求項39】
該ポリペプチドをコードする核酸が配列番号25である、請求項30記載の植物。
【請求項40】
該ポリペプチドをコードする核酸が配列番号26である、請求項31記載の植物。
【請求項41】
該ポリペプチドが、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24およびC. palaestinaエポキシゲナーゼキメラよりなる群から選ばれる、請求項1記載の植物。
【請求項42】
該ポリペプチドが配列番号19である、請求項41記載の植物。
【請求項43】
該ポリペプチドが配列番号20である、請求項41記載の植物。
【請求項44】
該ポリペプチドが配列番号21である、請求項41記載の植物。
【請求項45】
該ポリペプチドが配列番号22である、請求項41記載の植物。
【請求項46】
該ポリペプチドが配列番号23である、請求項41記載の植物。
【請求項47】
該ポリペプチドが配列番号24である、請求項41記載の植物。
【請求項48】
該ポリペプチドをコードする核酸が配列番号7である、請求項42記載の植物。
【請求項49】
該ポリペプチドをコードする核酸が配列番号8である、請求項43記載の植物。
【請求項50】
該ポリペプチドをコードする核酸が配列番号9である、請求項44記載の植物。
【請求項51】
該ポリペプチドをコードする核酸が配列番号10である、請求項45記載の植物。
【請求項52】
該ポリペプチドをコードする核酸が配列番号11である、請求項46記載の植物。
【請求項53】
該ポリペプチドをコードする核酸が配列番号12である、請求項47記載の植物。
【請求項54】
該植物が、タバコ、トマト、ダイズ、トウモロコシ、ワタ、イネ、コムギ、バナナ、ニンジン、ジャガイモ、イチゴおよび芝生草植物よりなる群から選ばれる、請求項1記載の植物。
【請求項55】
請求項1記載の構築物を植物内に導入することを含んでなる、トランスジェニック植物の生産方法。
【請求項56】
該構築物の調節要素が5'-調節要素である、請求項55記載の生産方法。
【請求項57】
5'-調節要素が、CaMV35Sプロモーター、ジャガイモリボソームタンパク質S27a Ubi3プロモーター、RB7プロモーター、アルファルファヒストンH3.2プロモーター、IRT2プロモーター、Arabidopsis FAD2 5'-UTR、Arabidopsis FAD3 5'-UTR、Ubi3 5'-UTR、アルファルファヒストンH3.2 5'-UTRおよびCaMV35S 5'-UTRを含む、請求項56記載の生産方法。
【請求項58】
該調節要素が、第2の5'-調節要素に機能しうる形で連結された第1の5'-調節要素を含み、第1の5'-調節要素がUbi3プロモーターであり、第2の5'-調節要素が、Arabidopsis FAD2 5'-UTR、Arabidopsis FAD3 5'-UTR、ジャガイモリボソームタンパク質S27 a 5'-UTR、Ubi3 5'-UTRおよびCaMV35S 5'-UTRよりなる群から選ばれる、請求項56記載の生産方法。
【請求項59】
該DNA構築物が更に、3'-調節要素を含む、請求項56記載の生産方法。
【請求項60】
5'-調節要素が配列番号43または配列番号44を含み、3'-UTRが配列番号45を含む、請求項59記載の生産方法。
【請求項61】
該DNA構築物の核酸が、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、C. palaestinaエポキシゲナーゼGenBank(登録商標)No. CAA76156、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号134、配列番号135、配列番号136、配列番号137および配列番号138よりなる群から選ばれるポリペプチドをコードする、請求項55記載の生産方法。
【請求項62】
該ポリペプチドが配列番号13を含む、請求項55記載の生産方法。
【請求項63】
該ポリペプチドが配列番号19を含む、請求項55記載の生産方法。
【請求項64】
該ポリペプチドが配列番号20を含む、請求項55記載の生産方法。
【請求項65】
該ポリペプチドが配列番号21を含む、請求項55記載の生産方法。
【請求項66】
該ポリペプチドが配列番号22を含む、請求項55記載の生産方法。
【請求項67】
該ポリペプチドが配列番号23を含む、請求項55記載の生産方法。
【請求項68】
該ポリペプチドが配列番号24を含む、請求項55記載の生産方法。
【請求項69】
該ポリペプチドが配列番号36を含む、請求項55記載の生産方法。
【請求項70】
該ポリペプチドが配列番号37を含む、請求項55記載の生産方法。
【請求項71】
該ポリペプチドが配列番号38を含む、請求項55記載の生産方法。
【請求項72】
該ポリペプチドが配列番号40を含む、請求項55記載の生産方法。
【請求項73】
該ポリペプチドが配列番号41を含む、請求項55記載の生産方法。
【請求項74】
配列番号3〜12または25〜33または129〜133のいずれか1つに記載のヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸。
【請求項75】
該ヌクレオチド配列が配列番号3である、請求項74記載の単離された核酸。
【請求項76】
該ヌクレオチド配列が配列番号4である、請求項74記載の単離された核酸。
【請求項77】
該ヌクレオチド配列が配列番号5である、請求項74記載の単離された核酸。
【請求項78】
該ヌクレオチド配列が配列番号28である、請求項74記載の単離された核酸。
【請求項79】
植物の栄養組織における発現をもたらす少なくとも1つの調節要素を含んでなる組換え核酸構築物であって、該調節要素が、配列番号3〜12または25〜33または129〜133のいずれか1つに記載のヌクレオチド配列を有する核酸に機能しうる形で連結されている、組換え核酸構築物。
【請求項80】
前記の少なくとも1つの調節要素が、配列番号43または配列番号44に記載のヌクレオチド配列を有する5'-調節要素を含む、請求項79記載の核酸構築物。
【請求項81】
該構築物が更に、配列番号45に記載のヌクレオチド配列を有する3'-調節要素を含む、請求項80記載の核酸構築物。
【請求項82】
請求項1記載のトランスジェニック植物を、該植物が駆虫活性を有するか否かを判定するのに有効な条件下で複数の線虫と接触させることを含む、トランスジェニック植物を駆虫活性に関してスクリーニングするための方法。
【請求項83】
該線虫を該トランスジェニック植物の根の1以上と接触させる、請求項82記載の方法。
【請求項84】
請求項1記載のトランスジェニック植物からの組織を、該植物組織が駆虫活性を有するか否かを判定するのに有効な条件下で複数の線虫と接触させることを含む、トランスジェニック植物を駆虫活性に関してスクリーニングするための方法。
【請求項85】
該組織が根組織である、請求項84記載の方法。
【請求項86】
脂肪酸エポキシゲナーゼポリペプチドまたは脂肪酸ヒドロキシラーゼポリペプチドをコードする核酸を含むDNA構築物を含有するトランスジェニック植物であって、該核酸が、該植物の栄養組織における該ポリペプチドの発現をもたらす調節要素に機能しうる形で連結されている、トランスジェニック植物。
【請求項87】
該ポリペプチドが、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、C. palaestinaエポキシゲナーゼ(GenBank(登録商標)No. CAA76156)、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号134、配列番号135、配列番号136、配列番号137および配列番号138よりなる群から選ばれるアミノ酸配列を含む、請求項86記載の植物。
【請求項88】
該植物が、該DNA構築物を欠く対応植物と比較して有意に増加した量のヒドロキシ脂肪酸を該植物の根に含有する、請求項86記載の植物。
【請求項89】
ヒドロキシ脂肪酸がリシノール酸である、請求項88記載の植物。
【請求項90】
リシノール酸が該根の全脂肪酸含量の約0.1%〜約25%を構成する、請求項89記載の植物。
【請求項91】
該植物が、該DNA構築物を欠く対応植物と比較して有意に増加した量のエポキシ脂肪酸を該植物の根に含有する、請求項86記載の植物。
【請求項92】
エポキシ脂肪酸がベルノール酸である、請求項91記載の植物。
【請求項93】
ベルノール酸が該根の全脂肪酸含量の約0.1%〜約25%を構成する、請求項92記載の植物。
【請求項94】
該ポリペプチドが配列番号42を含む、請求項21記載の植物。
【請求項95】
該ポリペプチドが配列番号134を含む、請求項21記載の植物。
【請求項96】
該ポリペプチドが配列番号135を含む、請求項21記載の植物。
【請求項97】
該ポリペプチドが配列番号136を含む、請求項21記載の植物。
【請求項98】
該ポリペプチドが配列番号137を含む、請求項21記載の植物。
【請求項99】
該ポリペプチドが配列番号138を含む、請求項21記載の植物。
【請求項100】
該ポリペプチドをコードする核酸が配列番号33である、請求項94記載の植物。
【請求項101】
該ポリペプチドをコードする核酸が配列番号129である、請求項95記載の植物。
【請求項102】
該ポリペプチドをコードする核酸が配列番号130である、請求項96記載の植物。
【請求項103】
該ポリペプチドをコードする核酸が配列番号131である、請求項97記載の植物。
【請求項104】
該ポリペプチドをコードする核酸が配列番号132である、請求項98記載の植物。
【請求項105】
該ポリペプチドをコードする核酸が配列番号133である、請求項99記載の植物。
【請求項106】
該ポリペプチドが配列番号42を含む、請求項55記載の植物。
【請求項107】
該ポリペプチドが配列番号134を含む、請求項55記載の植物。
【請求項108】
該ポリペプチドが配列番号135を含む、請求項55記載の植物。
【請求項109】
該ポリペプチドが配列番号136を含む、請求項55記載の植物。
【請求項110】
該ポリペプチドが配列番号137を含む、請求項55記載の植物。
【請求項111】
該ポリペプチドが配列番号138を含む、請求項55記載の植物。
【請求項112】
少なくとも1つのDNA構築物を含有するトランスジェニック植物であって、該構築物が、
a)
i)
【化3】

(式中、Xは水素、CoA、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド、ACP、メチル、Na+、ホスファチジルコリンまたはホスファチジルエタノールアミンであり、ここで、R1およびR2の両方はヒドロキシルであるか、またはR1およびR2のうちの一方はヒドロキシルであり他方は水素であるか、またはR1およびR2のうちの一方はケトであり他方は水素であり、R3はC2、C4またはC6アルキルである)および
ii)
【化4】

(式中、Xは水素、CoA、グリセロール、モノグリセリド、ジグリセリド、ACP、メチル、Na+、ホスファチジルコリンまたはホスファチジルエタノールアミンであり、ここで、R3はC2、C4またはC6アルキルである)
よりなる群から選ばれるC16、C18またはC20モノ不飽和脂肪酸産物への、基質からの変換を触媒するのに有効なポリペプチドをコードする核酸と、
(b)該ポリペプチドをコードする核酸に機能しうる形で連結された、該植物の種子の組織の少なくとも1つにおける発現をもたらす調節要素とを含む、トランスジェニック植物。
【請求項113】
該調節要素が5'-調節要素である、請求項112記載の植物。
【請求項114】
該植物が、該DNA構築物を欠く対応植物と比較して有意に増加した量のヒドロキシ脂肪酸を該植物の種子の組織の少なくとも1つに含有する、請求項113記載の植物。
【請求項115】
ヒドロキシ脂肪酸がリシノール酸である、請求項114記載の植物。
【請求項116】
該植物が、該DNA構築物を欠く対応植物と比較して有意に増加した量のエポキシ脂肪酸を該植物の種子の組織の少なくとも1つに含有する、請求項113記載の植物。
【請求項117】
エポキシ脂肪酸がベルノール酸である、請求項116記載の植物。
【請求項118】
請求項112記載の構築物を植物内に導入することを含んでなる、トランスジェニック植物の生産方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−508877(P2008−508877A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524944(P2007−524944)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2005/027566
【国際公開番号】WO2006/017577
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(507036751)ダイバージェンス,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】