説明

駐車車両の退出阻止装置

【課題】鎖錠板を起立させて駐車車両の不正退出を阻止する退出阻止装置における、モータ動力を鎖錠板に伝達する動力伝達機構を簡素化して、コンパクトで低コストの退出阻止装置とする。
【解決手段】歯車152と回転体157の相互間の位相差により捩じられて径が変化するマキバネ159の径縮小に伴ってマキバネ159により締め付けられる固定軸154上に歯車152をすべり軸受153を介して回転自由に設け、固定軸154を中空形状とし、この中空部に、すべり軸受156を介して固定軸154に対して回転可能に鎖錠板112に連結する出力軸155を貫通させ、この出力軸155に回転体157を固定する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車場の各駐車区画に設置され鎖錠板を起立させて駐車車両の不正退出を阻止する駐車車両の退出阻止装置に関し、特に、モータの動力を鎖錠板に伝達する動力伝達機構をコンパクトな構成に改良した駐車車両の退出阻止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の退出阻止装置の動力伝達機構としては、特許文献1に記載されたものがある。
かかる動力伝達機構の駆動原理を図5に示し説明する。
モータ1に減速機構2を介して接続した歯車3が、マキバネからなる接手スプリング5を介して歯車4と歯車6を相互に連結する動力伝達部の歯車6に噛み合う。接手スプリング5は、一端側が歯車4側に固定され他端側が歯車6側に固定され、鎖錠板18を起立させる方向のモータ1の回転によりマキバネ径が縮小されてバネ接手として機能する。また、鎖錠板18を倒伏させる方向のモータ1の回転によりマキバネ径が拡大して歯車4と歯車6の各円筒中空部の内壁に当接して拘束されて歯車6から歯車4に略100%の回転力を伝達する。
【0003】
歯車4は、電磁ブレーキ7により鎖錠板18の倒伏動作に対してのみ制動保持される歯車8に噛み合い、歯車8は、固定軸9に回転自由に取付けられた歯車10に噛み合う。歯車10には凸部11,12が形成されており、凸部12に固定軸9に巻き付けられたマキバネ13の一端が係止され、マキバネ13の他端は、固定軸9に回転自由に取付けられた回転フランジ14の凸部15に係止される。そして、鎖錠板18の起立動作時及び鎖錠板18に倒伏方向の外力が作用した時に歯車10と回転フランジ14相互間の位相差によりマキバネ13が捩じられ、その径が変化するよう構成される。
【0004】
回転フランジ14には、相対的な回転角度の差が所定値になると歯車10の凸部11に係止して歯車10の回転力を以後100%伝達するピン16が固定されている。回転フランジ14は、リンク17を介してクランク20と連結し、クランク20は、鎖錠板18に連結された軸19に固定される。軸19には鎖錠板スプリング21が巻き付けられており、鎖錠板スプリング21の端部は、固定部に固定されたピン22とクランク20に固定されたピン23に係止し、鎖錠板18を起立方向に弾性付勢する。
【0005】
次に、この動力伝達機構の動作について簡単に説明する。
まず、鎖錠板18の倒伏動作を説明する。
倒伏動作指令信号によりモータ1がb方向に回転し、歯車3,6を介して接手スプリング5が捩じられて径が拡大し歯車4と歯車6の内壁で拘束され、歯車6から歯車4に略100%の回転力が伝達される。歯車4が回転すると、歯車8を介して歯車10がc方向に回転し、マキバネ13が弛められてマキバネ13と固定軸9との間の摩擦力が低減して回転フランジ14の制動保持が解除される。そして、更に歯車10が回転すると凸部11がピン16に係止し、回転フランジ14が歯車10と一体に回動する。これにより、リンク17を介して鎖錠板スプリング21の弾性力に抗してクランク20、軸19が回動して鎖錠板18を倒伏させる。そして、鎖錠板18が所定の倒伏位置まで回動したことを検知してモータ1へ停止信号を送信し、モータ1を停止させる。
【0006】
次に、鎖錠板18の起立動作を説明する。
車両検知センサが車両を検知すると、モータ1がa方向に回転し、歯車3,6を介して接手スプリング5が捩じられて径が縮小し、接手スプリング5が弾性接手として歯車4に回転力を伝える。歯車10がd方向に回転し、凸部11とピン16との係合が外れて回転フランジ14が回転自由となり、鎖錠板スプリング21の弾性力で鎖錠板18が起立する。鎖錠板18が車両の底部に当たると回転フランジ14の回転が停止し、モータ1の回転でマキバネ13の径が縮小してマキバネ13と固定軸との間の摩擦力が上昇する。この摩擦力の上昇により、歯車4,8,10等に作用する負荷が大きくなり、モータ1により接手スプリング5が更に捩じられ、マキバネ13と固定軸9との間の摩擦力が更に高められる。その後、モータ1が停止し、電磁ブレーキ7が作動して歯車8が制動保持される。
【0007】
かかる動力伝達機構によれば、鎖錠板18に過負荷が作用した場合、マキバネ13が固定軸9上を滑ることにより回転フランジ14の回転が許容され過大な力が構成部品に作用するのを抑制できると共に、鎖錠板18が車両の底部に当たった後でマキバネ13と固定軸9との摩擦力で鎖錠板18を保持固定するので、任意の車底高に対応できる。
【特許文献1】特許第1568088号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、退出阻止装置を各駐車区画に設置する場合、防水対策として上述した駆動機構を防水構造の収納ボックス内に収納して設置するが、従来の動力伝達機構では、歯車10からマキバネ13、固定軸9を含んで回転フランジ14に至る動力伝達部とクランク20及び軸19を経て鎖錠板18に至る動力伝達部とを、リンク17を用いて連結する構成であるため、これら両動力伝達部の収納スペースを収納ボックス内にそれぞれ設ける必要があった。また、鎖錠板18に過大な負荷が作用した場合に、リンク17が変形する虞れがあり、長年の使用により変形が蓄積されると機能不能に陥る虞れがある。
【0009】
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、収納スペースが縮小可能なコンパクトな構成の動力伝達機構を備える駐車車両の退出阻止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、請求項1の発明は、駐車場の各駐車区画に設置され、駐車車両を鎖錠する鎖錠板と、起立して駐車車両を鎖錠する鎖錠位置と倒伏して駐車車両の退出を可能とする倒伏位置にモータにより前記鎖錠板を選択的に駆動可能な駆動部とを備え、該駆動部が、前記鎖錠板を起立方向に弾性付勢させると共に、前記モータからの動力を前記鎖錠板へ伝達する動力伝達機構内に、互いに対面する回転体とその相互間の位相差により捩じられ径が変化するマキバネとからなる動力伝達部を介在させ、マキバネ径の縮小に伴って前記マキバネにより半径方向に圧接される固定部材を備える構成の駐車車両の退出阻止装置において、前記固定部材を中空形状とし、該中空部に、前記固定部材に対して回転可能に軸部材を貫通させ、該軸部材に前記互いに対面する回転体の一方を固定すると共に前記鎖錠板を連結する構成としたことを特徴とする。
【0011】
かかる構成では、マキバネを含む動力伝達部とこの動力伝達部の動力を鎖錠板に伝達する動力伝達部が同軸上に配置できるようになり、鎖錠板の駆動部をコンパクトにできるようになる。
請求項2のように、前記軸部材に角柱部を形成し、該角柱部に前記一方の回転体を嵌合固定する構成とするとよい。
かかる構成では、軸部材の角柱部に回転体を嵌め込むだけで、軸部材と回転体を固定でき、その組立てが容易となる。
【0012】
請求項3のように、前記動力伝達機構は、前記モータと前記マキバネを設けた動力伝達部との間の動力伝達機構部に、捩じられて径が変化する第2のマキバネからなる接手スプリングを直列に介在させる構成とするとよい。
かかる構成では、直列に介在させた接手スプリングにより、モータ1の過負荷状態及びモータ起動時のトルク変動等を抑制できるようになる。
【0013】
請求項4の発明では、駐車区画の車両の有無を検知する車両検知センサの出力状態に基づいて車両の有無判定出力を発生するセンサ制御部と、該センサ制御部の判定出力及び料金精算機からの精算完了信号に基づいて駐車時刻管理や鎖錠板駆動制御を行う駐車管理制御部と、駐車管理制御部の駆動制御指令に基づいて前記モータを駆動制御するモータ制御部とを、一体的に備える制御基板を、前記動力伝達機構を収納する収納ボックス内に収納する構成とした。
【発明の効果】
【0014】
本発明の駐車車両の退出阻止装置によれば、従来リンクで連結した動力伝達部を同軸上に配置する構成としたので、動力伝達軸1本分のスペースが不要なコンパクトな構成となり、収納ボックス内に占める動力伝達機構の設置スペースを縮小でき、収納ボックスを小型化することが可能となる。また、鎖錠板に過負荷が作用したときに変形する虞れがあったリンクを省略したことにより、リンクの変形に起因する動力伝達機構の機能不能を防止でき、退出阻止装置の信頼性を向上できる。また、構成の簡素化により部品点数が削減でき、退出阻止装置の製造コストを低減できる。
【0015】
また、収納ボックス内の増大したスペースを利用して、車両検知センサの出力状態に基づいて車両の有無を判定するセンサ制御部、このセンサ制御部の判定出力及び料金精算機からの精算完了信号で駐車時刻管理や鎖錠板駆動制御を行う駐車管理制御部及び駐車管理制御部の駆動制御指令でモータを駆動制御するモータ制御部等の端末器側の制御機能を、制御基板に一体化して従来と略同じサイズの収納ボックス内に収納することが可能となり、従来、端末器の制御機能の一部を収納するために各駐車区画毎に設置していた支柱等を省略でき、料金精算機を含めた駐車管理システムの設備コストを低減できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の駐車車両の退出阻止装置を駐車区画に配置した状態を示しており、退出阻止装置100は、駐車車両を鎖錠する鎖錠部101と、鎖錠部101の鎖錠板112を駆動する駆動部102と、カバー部103を備え、前記駆動部102を各駐車区画200の側端の略中央部に設置し、鎖錠部101を駆動部102側から駐車区画200の中央部に向けて延設して設置する。
【0017】
前記鎖錠部101は、地面に固定されるベース部110に回動可能に軸支される回動軸111と、回動軸111と一体に設けられ駐車車両の前後タイヤ間に起立して駐車車両の退出を阻止する鎖錠位置と倒伏して車両の退出を可能とする解錠位置とに回動軸111と一体に回動される鎖錠板112と、鎖錠板112と対応する位置で車両が通過し易いように回動軸111とは反対方向に下方に傾斜してベース部110に固定される樹脂製カバー113とを備える。鎖錠板112は、回動軸111に金属製の板材112aを例えば溶接等により固着し、板材112aの周縁部を金属製パイプ112bで補強してある。
【0018】
前記駆動部102は、鎖錠板112を駆動する後述する動力伝達機構や動力伝達機構の図2に示すモータ141を駆動制御するモータ制御部等が、防水構造の収納ボックス120内に収納され、前記動力伝達機構の図2に示す出力軸155と回動軸111との連結部がカバー121で覆われて設けられている。収納ボックス120には、メンテナス時等に退出阻止装置100の各部の動作状態を表示する状態表示部122を設けてある。尚、123は、トラブル発生時に手動で鎖錠板112を倒伏させるために収納ボック120に設けられた手動スイッチの外部操作用窓を覆っている錠付きの窓カバーであり、悪戯防止のために通常は鎖錠されて取り外せないようになっている。
【0019】
前記カバー部103は、図示しないが、回動軸111を軸支する軸受部と、送信コイルと受信コイルからなり駐車区画200の車両の有無を検知する車両検知センサとが配置されており、樹脂製カバー130で覆われている。
【0020】
次に、収納ボックス120に収納された本実施形態の動力伝達機構の構成について、図2〜図4に基づいて説明する。
本実施形態の動力伝達機構は、モータ141に減速機構142を介して歯車143が接続され、歯車143は、歯車144に噛み合っている。歯車144は、ケース145に内蔵された第2のマキバネからなる接手スプリングを介して歯車146と相互に連結する。歯車144は、軸受147,148により回転自由に軸支される。尚、歯車144の回転方向を、回転板149と2つの光センサ150,151を用いて起立動作終了と倒伏動作終了をそれぞれ検知しモータ141を停止させる。前記第2のマキバネは、鎖錠板112を起立させる方向のモータ141の回転によりマキバネ径が縮小されてバネ接手として機能する。また、鎖錠板112を倒伏させる方向のモータ141の回転によりマキバネ径が拡大してケース145内壁に当接して拘束されて歯車144から歯車146に略100%の回転力を伝達する。尚、ケース145は、歯車144と一体化した部分と歯車146側と一体化した部分に分割構成され、従来の中空円筒部に相当する。
【0021】
歯車146は、歯車152に噛み合い、歯車152はすべり軸受153を介して固定部材である固定軸154の外周部に回転自由に取付けられる。固定軸154は、中空形状をなし、該中空部に軸部材である出力軸155がすべり軸受156を介して回転自由に貫通する。出力軸155は角柱部155aを有し、この角柱部155aに、回転体157が嵌合して固定される。従って、回転体157の回転が出力軸155に直接伝達される。
【0022】
歯車152には、2つの凸部158(一方は図示せず)が形成されており、一方の凸部158に固定軸154及び回転体157に巻き付けたマキバネ159の一端が係止され、マキバネ159の他端は、回転体157の凸部160に係止される。そして、鎖錠板112の起立動作時及び鎖錠板112に倒伏方向の外力が作用した時に歯車152と回転体157相互間の位相差によりマキバネ159が捩じられ、その径が変化するよう構成される。回転体157には、相対的な回転角度の差が所定値になると歯車152の図示しない凸部に係止して歯車152の回転力を以後100%伝達するピン161が固定されている。
【0023】
出力軸155は、図4に示すようにカバー121で覆ったリンク機構162(クランク162a、リンク162b、クランク162cからなる)を介して鎖錠板112の回動軸111に連結する。また、出力軸155には鎖錠板スプリング163が巻き付けられており、鎖錠板スプリング163の端部は、固定部に固定されたピン164とリンク機構162のリンク機構162の出力軸側取付け部162aに固定されたピン(図示せず)に係止し、鎖錠板112を起立方向に弾性付勢する。尚、図4中、165は回動軸112の軸受である。
【0024】
また、収納ボックス120には、図2に示すように、車両検知センサの出力状態に基づいて車両の有無判定出力を発生するセンサ制御部と、このセンサ制御部の判定出力及び料金精算機からの精算完了信号に基づいて駐車時刻管理や鎖錠板駆動制御を行う駐車管理制御部と、駐車管理制御部の駆動制御指令に基づいてモータ141を駆動制御するモータ制御部とを、一体的に備える制御基板170が、収納ボックス120の長手方向に沿って上下方向に配置されている。この制御基板170には、前述した光センサ150,151や図示しないが状態表示部122の発光手段である例えばLED等が取付けられる。
【0025】
収納ボックス120は、図3に示すように、上面開口の筐体120aの開口をカバー120bで覆い、防水パッキン124を介在させてボルト125で固定した防水構造となっている。収納ボックス120内には、図2及び図3に示すように、防水構造の電源供給用及び通信用ケーブル引き込み口181、外部出力用ケーブル引き込み口182、センサケーブル引き込み口185、配線端子部183及び鎖錠板112の手動操作用スイッチ184等も設けられている。
【0026】
次に、本実施形態の動力伝達機構の動作を説明する。
本実施形態の動力伝達機構の動力伝達原理は、前述した図5に示す従来のものと略同一であるので、簡単に説明する。ここで、歯車144,146と第2のマキバネからなる接手スプリングを備えた動力伝達部は、図5の歯車6,4と接手スプリング5を備えた動力伝達部に相当し、歯車152、固定軸154、マキバネ159及び回転体157を備えた動力伝達部は、図5の歯車10からマキバネ13、固定軸9を含んで回転フランジ14に至る動力伝達部に相当し、出力軸155は、図5の軸19に相当している。
【0027】
まず、鎖錠板112の倒伏動作を説明する。
制御基板170に設けた駐車管理制御部が図示しない料金精算機から精算完了を受けると、モータ制御部に対して倒伏動作指令を送信する。モータ制御部は、受信した倒伏指令によりモータ141を鎖錠板112が倒伏する側に回転動作させる。モータ141の回転により、歯車143,144が回転し、接手スプリングのマキバネ径を拡大する。これにより、接手スプリングを介して歯車144の回転力を歯車146に略100%伝達する。歯車146が回転すると、歯車152が固定軸154上を回転し、マキバネ159が弛められてマキバネ159と固定軸9との間の摩擦力が低減し、摩擦力による回転体157の制動保持が解除される。そして、更に歯車152が回転するとこれに形成した凸部(図示せず)がピン161に係止し、回転体157が歯車152と一体に回転する。これにより、回転体157と一体に出力軸155が、鎖錠板スプリング163の起立弾性力に抗しながら回転し、リンク機構162、回動軸111を介して鎖錠板112を倒伏方向に回動動作させる。鎖錠板112が所定の倒伏位置まで回動すると、光センサ150,151のうちの倒伏動作の終了検知用センサ側の検知出力を受けて、モータ制御部がモータ141を停止して倒伏動作が終了する。
【0028】
次に、鎖錠板112の起立動作を説明する。
駐車区画200に図1の矢印方向から進入した車両をカバー部130に収納された車両検知センサが検知すると、センサ制御部の車両有り判定出力を受けて駐車管理制御部がモータ制御部に対して起立動作指令を送信する。モータ制御部は、受信した起立指令によりモータ141を鎖錠板112が起立する側に回転動作させる。モータ141の回転により、歯車143,144を経て接手スプリングがその径を縮小する方向に捩じられ、接手スプリングが弾性接手として歯車146に回転力を伝える。これにより、歯車152が倒伏時と逆方向に回転し、凸部(図示せず)とピン161との係合が外れ、回転体157及び出力軸155が回転自由となり、鎖錠板スプリング163の起立弾性力により出力軸155が回転して鎖錠板112が上昇する。鎖錠板112が車両の底部に当たる出力軸155と及び回転体157の回転が停止し、モータ141の回転によりマキバネ159が締付けられて固定軸154への押圧力が上昇し、マキバネ159と固定軸154との間に作用する摩擦力が上昇する。この摩擦力の上昇により歯車146,152等に作用する負荷が大きくなるから、モータ141により接手スプリングが更に捩じられてマキバネ159と固定軸154との間の摩擦力が高められる。その後、光センサ150,151のうちの起立動作の終了検知用センサ側の検知出力を受けて、モータ制御部がモータ141を停止して起立動作が終了する。
【0029】
かかる本実施形態の動力伝達駆動の構成によれば、固定軸154を中空形状とし、この中空部に出力軸155を貫通させることにより、従来リンク17を介して連結していた動力伝達部を図2に示すように同軸上に配置したので、動力伝達軸1本分のスペースが不要となり、収納ボックス120内に占める動力伝達機構の設置スペースを縮小でき、収納ボックス120をコンパクトにすることが可能となる。また、鎖錠板112に過負荷が作用したときに変形する虞れがあったリンク17を省略したので、リンクの変形に起因する動力伝達機構の機能不能を防止でき、退出阻止装置100の信頼性を向上できる。また、構成が簡素化され、部品点数を削減でき、退出阻止装置100の製造コストを低減できる。
【0030】
更に、収納ボックス120を従来同様の大きさにすれば、収納ボックス120内の空きスペースが増えてレイアウトの自由度が大きくなるので、料金精算機と情報通信する端末器側の全ての制御機能(上述したセンサ制御部、駐車管理制御部及びモータ制御部等)を、収納ボックス120内の制御基板170に集約して収納することができる。これにより、端末器の制御機能の一部を収納するために各駐車区画毎に設置していた支柱等を省略でき、料金精算機を含めた駐車管理システムの設備コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る退出阻止装置の一実施形態の駐車区画配置図
【図2】駆動部の収納ボックス内の配置状態図
【図3】図2の駆動部のA−A線矢視断面図
【図4】駆動部と鎖錠部とを連結する連結部の構成を示す図
【図5】従来の動力伝達機構の動作原理を示す図
【符号の説明】
【0032】
100 退出阻止装置
102 駆動部
101 鎖錠部
112 鎖錠板
141 モータ
143,144,146,153 歯車
154 固定軸
155 出力軸
155a 角柱部
157 回転体
159 マキバネ
163 鎖錠板スプリング
170 制御基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車場の各駐車区画に設置され、駐車車両を鎖錠する鎖錠板と、起立して駐車車両を鎖錠する鎖錠位置と倒伏して駐車車両の退出を可能とする倒伏位置にモータにより前記鎖錠板を選択的に駆動可能な駆動部とを備え、該駆動部が、前記鎖錠板を起立方向に弾性付勢させると共に、前記モータからの動力を前記鎖錠板へ伝達する動力伝達機構内に、互いに対面する回転体とその相互間の位相差により捩じられ径が変化するマキバネとからなる動力伝達部を介在させ、マキバネ径の縮小に伴って前記マキバネにより半径方向に圧接される固定部材を備える構成の駐車車両の退出阻止装置において、
前記固定部材を中空形状とし、該中空部に、前記固定部材に対して回転可能に軸部材を貫通させ、該軸部材に前記互いに対面する回転体の一方を固定すると共に前記鎖錠板を連結する構成としたことを特徴とする駐車車両の退出阻止装置。
【請求項2】
前記軸部材に角柱部を形成し、該角柱部に前記一方の回転体を嵌合固定する構成である請求項1に記載の駐車車両の退出阻止装置。
【請求項3】
前記動力伝達機構は、前記モータと前記マキバネを設けた動力伝達部との間の動力伝達機構部に、捩じられて径が変化する第2のマキバネからなる接手スプリングを直列に介在させた請求項1又は2に記載の駐車車両の退出阻止装置。
【請求項4】
駐車区画の車両の有無を検知する車両検知センサの出力状態に基づいて車両の有無判定出力を発生するセンサ制御部と、該センサ制御部の判定出力及び料金精算機からの精算完了信号に基づいて駐車時刻管理や鎖錠板駆動制御を行う駐車管理制御部と、駐車管理制御部の駆動制御指令に基づいて前記モータを駆動制御するモータ制御部とを、一体的に備える制御基板が、前記動力伝達機構を収納する収納ボックス内に収納される請求項1〜3のいずれか1つに記載の駐車車両の退出阻止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−205019(P2007−205019A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−24479(P2006−24479)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)