説明

骨に沿った筋肉の運動および関節のまわりの筋肉の運動を数値的にシミュレートする方法およびシステム

【課題】骨に沿ったおよび関節のまわりの筋肉運動を数値的にシミュレートするシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】複数のトラス要素を1つ以上のローラとともに有するコンピュータ化モデルを用いる。トラス要素は、筋肉繊維をモデル化するよう構成されており、一方、各ローラは関節に対して構成されている。各トラス要素は2つの端部ノードを有するとともに、筋肉の生体力学特性モデルによってまたは関連して構成される。各ローラは、対応する関節の位置に固定される。関節のまわりの筋肉繊維運動をシミュレートするために、ローラを跨ぐ各ペアのトラス要素が、時間進行シミュレーション(例えば自動車と一人以上の乗員の衝突イベントのコンピュータシミュレーション)において動的に調整される。調整は、時間進行シミュレーションの各ソリューションサイクルにおいて行われる。調整には、「滑り」および「交換」の2つのタイプの調整がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してコンピュータ支援エンジニアリング解析の分野において用いられる方法、システムおよびソフトウェア製品に関し、特に関節のまわりの筋肉繊維の運動の数値的シミュレーションに関する。
【背景技術】
【0002】
連続体力学は、固体および流体(つまり液体および気体)など連続的な物体のシミュレートに用いられている。微分方程式が、連続体力学の問題を解くときに用いられる。多くの数値的プロシージャが用いられている。最もポピュラーな方法のうちの1つは、有限要素解析法(FEA)である。有限要素解析法(FEA)は、三次元の非線形的構造設計および解析など複雑な系に関係する工学問題をモデル化して解くために産業において広く用いられる、コンピュータで処理される方法である。FEAの名前は、想定されている対象の幾何学的配置(ジオメトリ)を特定する方法に由来する。現代のデジタルコンピュータの登場により、FEAは、FEAのソフトウェアとして実装されている。基本的に、FEAのソフトウェアには、幾何学的な記述のモデルと、モデル内の各ポイントでの関連する材質特性と、が提供されている。このモデルにおいて、解析される系の幾何学的配置は、有限要素(エレメント)と呼ばれる種々のサイズのソリッド(中実物)と、シェル(外殻物)と、ビーム(梁状物)と、によって表現される。有限要素の頂点(バーテックス)は、ノードと呼ばれる。モデルは、材料特性と関連づけられた材料名が割り当てられている有限数の有限要素で構成される。モデルは、このように、解析される対象によって占められた物理的空間を、そのすぐ隣接した周囲の状況とともに表現する。そして、FEAのソフトウェアは、各材料タイプの特性(例えば応力−歪み構造方程式、ヤング率、ポアソン比、熱伝導率)が作表されたテーブルを参照する。さらに、対象の境界での条件(つまり荷重、物理的な制約など)が指定される。このように、対象のモデルとその環境が、生成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
最も興味深いFEAのタスクの1つは、車の衝突などの衝突イベントをシミュレートすることである。現代のコンピュータの進歩によって、車の衝突において、車両の挙動だけでなく乗員の運動や反応もシミュレートされるようになっている。乗員(つまり人間)を適切にシミュレートするためには、人体(例えば筋肉)の生体力学特性に応じた運動を、CAE(例えば有限要素解析)における適切なモデルとする必要がある。今日の時点では、満足のいく実用的な解決策はない。従来技術のアプローチでは、従来の有限要素法のために、例えばシミュレーションの全体にわたってその当初長さが変わらないトラス要素のため、スムーズさに欠けるぎくしゃくした運動となる。したがって、骨に沿った筋肉の運動および関節のまわりの筋肉の運動数値的にシミュレートする方法およびシステムの提供が望まれよう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
骨に沿った筋肉の運動および関節のまわりの筋肉の運動を数値的にシミュレートするシステムおよび方法を提供する。本発明の一の例示的な態様では、複数のトラス要素を1つ以上のローラとともに有するコンピュータ化モデルを用いる。トラス要素は、筋肉繊維をモデル化するよう構成されており、一方、それぞれのローラは関節に対して構成されている。それぞれのトラス要素は2つの端部ノードを有するとともに、筋肉の生体力学特性モデル(例えば非線形ヒルタイプ(nonlinear Hill-type))によってまたは関連して構成される。それぞれのローラは、対応する関節の位置に固定される。
【0005】
関節のまわりの筋肉繊維の運動のシミュレートするために、ローラをまたぐそれぞれのペアのトラス要素が、時間進行シミュレーション(例えば自動車と一人以上の乗員の衝突イベントのコンピュータシミュレーション)において動的に(ダイナミックに)調整される。調整は、時間進行シミュレーションのそれぞれのソリューションサイクルにおいて行われる。調整には、「滑り(スリップ)」および「交換(スワッピング)」の2つのタイプの調整がある。
【0006】
用語「滑り」は、トラス要素ペアの局所的な再定義をいう。滑りは、生体力学特性(例えばトラス要素の伸張していない長さの態様の特性)を1ペアの一方の要素から他方の要素に移すことによって、達成される。言いかえれば、1ペアのトラス要素のそれぞれの伸張していない長さが、1ペアの伸張していない長さの合計が変わらないよう、再定義される。
【0007】
用語「交換」は、複数のトラス要素の局所的な再メッシュ化をいう。交換は、1ペアの一方をローラの反対側に移動させることによって、達成される。言いかえれば、筋肉繊維をモデル化するトラス要素は、ローラの一方の側において1つの要素を削除し、他方の側において他の要素を追加することにより、再メッシュ化される。その結果、交換調整後には、異なる別の1組のトラス要素がそのローラにまたがることになる。
【0008】
本発明の目的、特徴および利点は、添付した図面を参照し、以下の本発明の実施の形態の詳細な説明を考察することによって明らかとなろう。
【0009】
添付図面を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一の実施形態にかかる骨に沿った筋肉の動きおよび関節のまわりの筋肉の動き数値的にシミュレートする例示的なプロセスを示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施形態にかかる、筋肉繊維および関節の例示的なコンピュータ化モデルを示す図である。
【図3】本発明の一の実施形態にかかる、例示的な筋肉の生体力学特性モデルを示す図である。
【図4】本発明の一の実施形態にかかる、筋肉の生体力学特性モデルと関連する、応力とトラス要素の規格化された長さとの例示的な関係を示す図である。
【図5】本発明の一の実施形態にかかる、コンピュータ化モデルを調整するためのローラのまわりの2つの軸方向の力/応力の関係を示す図である。
【図6A】本発明の一の実施形態にかかる、例示的な「滑り」および「交換」調整を示す図である。
【図6B】本発明の一の実施形態にかかる、例示的な「滑り」および「交換」調整を示す図である。
【図6C】本発明の一の実施形態にかかる、例示的な「滑り」および「交換」調整を示す図である。
【図7】本発明の実施形態を実現可能である例示的なコンピュータシステムの主要な部品を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず図1を参照して、本発明の実施形態にかかる骨に沿った筋肉の動きおよび関節のまわりの筋肉の動き数値的にシミュレートする例示的なプロセス100を示す。プロセス100は、好ましくはソフトウェアで実行される。プロセス100は、他の図面により理解されよう。
【0012】
プロセス100は、ステップ102において、筋肉の運動を数値的にシミュレートするコンピュータ化モデル(例えば有限要素解析(FEA)モデル)を定義することによって、スタートする。図2に、人間の腕の筋肉繊維および関節の例示的なコンピュータ化モデル210を示す。コンピュータ化モデル210は、他にもある中で、筋肉繊維を表す複数のトラス要素212と、関節を表す少なくとも1つのローラ214と、を有する。コンピュータ化モデル210は、コンピュータシステム(例えば図7に示すコンピュータシステム700)において受信される。それぞれのトラス要素212は、その要素の長さを定義する2つの端部ノードを有する。三次元空間において、それぞれのノードは3つの並進自由度を有する。
【0013】
それぞれのトラス要素は、筋肉の生体力学特性モデルに、例えば図3に示す非線形ヒル(Hill)タイプの筋肉の生体力学特性モデル300に関連している。非線形のヒルタイプの筋肉モデル300は、並列に配置された収縮性要素(CE)301、ダンパ(振動減衰)要素(DE)302、および受動要素(PE)303を有する生体力学特性をエミュレートする(模している)。
【0014】
このような生体力学特性モデルで構成されたトラス要素は、数値的シミュレーションの際に条件に応じてその断面積に応じた軸方向の力(つまり張力すなわち引張力)を担う。トラス要素の引張応力σ304を2つの端部に示す。引張応力304は、周知の方法で、例えば引張力をトラス要素の断面積で除して演算される。
【0015】
収縮性要素301は、筋肉による力の発生を表し、最大応力σmax、時間依存活動レベル関数α(t)、歪み依存スケーリング関数f(ε)および歪み速度依存スケーリング関数

を備える。筋肉による力の発生は、

で表される。
【0016】
受動要素303は、筋弾性からのエネルギ蓄積を表し、最大応力σmaxおよび歪み依存非線形弾性関数

を備える。筋弾性からのエネルギ蓄積は、

で表される。
【0017】
ダンパ要素302は、筋肉粘性を表し、歪み、歪速度および減衰定数に依存する。筋肉粘性は、

で表される。
【0018】
結果として生じる軸方向応力(つまり引張応力)304はすべての成分の合計であり、

で表される。
【0019】
図4に、例示的な非線形ヒルタイプ生体力学特性モデルを例示するグラフ400を示す。グラフ400は、縦軸が軸方向応力を示し、横軸がトラス要素の規格化された長さを示すX−Yプロットである。4つの曲線402および402a〜cが示されている。曲線402は、合計の軸方向応力σを表す。また、曲線402aはσCEを表わしている。曲線402bはσPEを表す。また、曲線403cはσDEを表す。トラス要素の規格化された長さは、伸張していない長さ(lo)に対する現在の長さ(l)の比として演算される無次元の量である。伸張していない長さは、時間進行シミュレーションの初期(つまり時間=0)におけるトラス要素の長さである。また、現在の長さは、特定のソリューションサイクルにおける(つまり時間=t)の長さである。言いかえれば、規格化された長さは、シミュレーションの初期においては、1である。ちなみに、歪みεは、(l - lo)/loすなわち(l/lo) - 1として計算される。
【0020】
それぞれのローラ214は、1つのノードによって関節の位置に固定される。ノード(図2に白丸として示す)は、ローラにまたがる1ペアのトラス要素によって共有される。ローラ500(例えばローラ214)は、図5に示す接触角502を用いて構成される。接触角502は、ローラ500にまたがる1ペアのトラス要素504aおよび504bのそれぞれの方向(向き)によって決定される。言いかえれば、接触角502は、1ペアのトラス要素の軸方向によって形成される取り巻き角度である。
【0021】
張力T1の514aおよびT2の514bは、トラス要素504aおよび504bの対応する軸方向力である。筋肉運動を数値的にシミュレートするために用いられるローラ500は、キャプスタン(Capstan)方程式と呼ばれる方程式に従う。
T2 = T1eμθ
ここで、T2の514bは高い張力であり、T1の514aは低い張力であり、θは接触角であり、μは摩擦係数である。
【0022】
次にステップ104において、プロセス100は、筋肉運動のシミュレートのために構成されたアプリケーションモジュール(例えば筋肉運動シミュレーションのために構成された要素を有する有限要素解析(FEA))によりコンピュータ化モデルを用いて、時間進行シミュレーションを行う。時間進行シミュレーションは、時間の経過を表す一連の連続ソリューションサイクルすなわち時間ステップを有する。種々の周知の技術を、FEAに用いることができる(例えば明示的ソリューション、暗黙的ソリューション等)。通常、それぞれのソリューションサイクルにおいて、1セットのノードの加速、速度および変位が得られる。これらの量の時間的履歴が、数値的シミュレーション結果となる。
【0023】
筋肉および関節がコンピュータ化モデルにおいて定義されると、まずステップ106において筋肉運動の結果がそれぞれのソリューションサイクルにおいて得られる。例えば、トラス要素の軸方向応力および歪み(つまり伸張)が、それぞれのソリューションサイクルにおいて計算される。
【0024】
シミュレートされた骨に沿った筋肉の運動および関節のまわりの筋肉の運動は、トラス要素の現実に即した調整をさらに含んでいる。調整は、ステップ108において、それぞれの関節において(つまりコンピュータ化モデルにおけるそれぞれのローラにおいて)「滑り」および「交換」の態様で行われる。
【0025】
ローラにまたがるそれぞれのペアのトラス要素については、キャプスタン方程式を満たす必要がある。計算された1ペアのトラス要素の軸方向の力がキャプスタン方程式を満たさない場合、「滑り」の態様の調整が行われる。「滑り」調整では、1ペアのトラス要素の伸張していない長さを再定義する。特に、一方の要素の伸張していない長さが減算されるとともに、キャプスタン方程式が満たされるまで、その同じ量がその1ペアの他方に加算される。減算される長さが加算される長さと等しいので、1ペアの合計の伸張していない長さは一定に保たれる。さらに、「滑り」調整は、調整されたコンピュータ化モデルを用いるトラス要素の軸方向応力および歪みの再計算を必要とする非線形反復法(例えばブレント(Brent)の方法)によって、行われる。
【0026】
1ペアのトラス要素の一方が1回以上の「滑り」調整の後にあまりにも短くなった場合、その「あまりにも短い」要素をその現在の位置から取り除き、そのローラの反対側にそれを追加する、「交換」調整が行われる。さらに、ローラに関連するノードが変更される(図6Cおよび以下の対応記載を参照)。「交換」調整は、コンピュータ化モデルの局所的再メッシュ化(つまり、トラス要素の接続の再メッシュ化)ともいう。要素があまりにも短いか否か判断するには、周知の方法、例えば所定の閾値(例えば最小長)を用いることができる。最後に、移動されたばかりの要素が激しく行ったり戻ったりするのを防止するために、「交換」調整において再メッシュ化されたそれぞれの要素には、最小の長さに加えて緩衝量(クッション)を与える。例えば、10%のクッションは、新たに再メッシュ化された要素(つまり、ローラの一方の側から反対側へ移動されたばかりの要素)に、閾値として最小長の1.1倍の長さを与えることを意味する。
【0027】
本発明の実施形態にかかる例示的な一連の「滑り」および「交換」調整を、図6A乃至図6Cは示す。例示を簡単にするために、3つのトラス要素(「e1」611、「e2」612および「e3」613)と、1つのローラ(ノード602において斜線領域に初期に固定された白丸で示す)と、だけを例示的なシーケンスにおいて用いる。トラス要素「e1」611は、2つの端部ノード「n1」601および「n2」602を有する。要素「e2」612は、ノード「n2」602および「n3」603によって定義される。また、要素「e3」613は、ノード「n3」603および「n4」604によって定義される。
【0028】
例示的なシーケンスの第1の配置構成を、図6Aに示す。要素「e1」611および「e2」612は、共通の共有ノード「n2」602においてローラにまたがっている。要素の軸方向応力および歪みが計算された後の次の時間における第2の構成を、図6Bに示す。キャプスタン方程式を、ノード602におけるローラにおいて確認する。「滑り」調整が行われ、要素「e1」611および「e2」612のそれぞれの伸張していない長さが再定義される。この例示的なシーケンスにおいて、要素「e1」611の伸張していない長さは、要素「e2」612において減算された量(短くなった量)と同じ量だけ加算される(長くなる)。
【0029】
要素「e2」612が閾値(つまり最小長lmin)と比して短すぎる場合、図6Cに第3構成として示すように、「交換」調整が行われて要素、「e2」612がローラの一方の側から反対側に移動される。その結果、「交換」調整後、ローラは異なるノード603に関連する。
【0030】
骨に沿った筋肉の運動および関節のまわりの筋肉の運動の時間的履歴は、時間進行シミュレーションにおける時間の進行を表すそれぞれのソリューションサイクルにおける結果を互いにつなげることにより得られる。
【0031】
一の実施形態では、本発明は、以下のアルゴリズムを有するソフトウェアにおいて実行される。
1) それぞれのトラス要素に対する標準的な力を計算する
・伸張されていない長さloを取得する
・現在の長さlおよび歪速度

を計算する
・lo、lおよび

の関数として軸方向応力を計算する

・軸方向の力T = Aσを計算する
2) ローラにまたがるそれぞれのペアのトラス要素の力および長さの補正する(つまり「滑り」調整する)
・計算した軸方向の力を試行値として使用する
・キャプスタン方程式を確認する
・キャプスタン方程式に適う場合は、試行値を張力として使用する
・そうでなければ、反復法を用いて非線形の関数の根(ルート)

を求める

・1ペアのトラス要素のそれぞれの伸張していない長さを更新する
・根から計算された張力を使用する
3) 「あまりにも短い」要素をローラの一方の側から反対側へ移動させる「交換」調整を行う
・1ペアの一方が閾値(つまり最小長lmin)に対して「あまりにも短く」なった場合、トラス要素を再メッシュ化する
・トラス要素の接続を変更する
・ローラに関連するノードを変更する
・移動されたばかりの要素がlminより確実に長くなるよう、移動されたばかりの要素に対して新しいノードを生成する
・移動されたばかりの要素の要素特性を変更する
本発明の実施形態は、ここに説明した機能を実行可能な1つ以上のコンピュータシステムに対してなされたものである。コンピュータシステム700の一例を、図7に示す。コンピュータシステム700は、プロセッサ704など1つ以上のプロセッサを有する。プロセッサ704は、コンピュータシステム内部通信バス702に接続されている。種々のソフトウェアの実施形態を、この例示的なコンピュータシステムの点から説明する。この説明を読むと、いかにして、他のコンピュータシステムおよび/またはコンピュータアーキテクチャーを用いて、本発明を実行するかが、関連する技術分野に習熟している者には明らかになるであろう。
【0032】
コンピュータシステム700は、また、メインメモリ708好ましくはランダムアクセスメモリ(RAM))を有しており、そして二次メモリ710を有することもできる。二次メモリ710は、例えば、1つ以上のハードディスクドライブ712、および/またはフレキシブルディスクドライブ、磁気テープドライブ、光ディスクドライブなどを表わす1つ以上のリムーバブルストレージドライブ714を有することができる。リムーバブルストレージドライブ714は、よく知られている方法で、リムーバブルストレージユニット718を読み取りおよび/またはリムーバブルストレージユニット718に書き込む。リムーバブルストレージユニット718は、リムーバブルストレージドライブ714によって読み取り・書き込みされるフレキシブルディスク、磁気テープ、光ディスクなどを表わす。以下にわかるように、リムーバブルストレージユニット718は、コンピュータソフトウェアおよび/またはデータを内部に記憶しているコンピュータで使用可能な記憶媒体を有している。
【0033】
代替的な実施形態において、二次メモリ710は、コンピュータプログラムあるいは他の命令をコンピュータシステム700にロードすることを可能にする他の同様な手段を有することもできる。そのような手段は、例えば、リムーバブルストレージユニット722とインタフェース720とを有することができる。そのようなものの例には、プログラムカートリッジおよびカートリッジのインタフェース(ビデオゲーム機に見られるようなものなど)と、リムーバブルメモリチップ(消去可能なプログラマブルROM(EPROM)、ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュメモリ、あるいはPROMなど)および関連するソケットと、ソフトウェアおよびデータをリムーバブルストレージユニット722からコンピュータシステム700に転送することを可能にする他のリムーバブルストレージユニット720およびインタフェース722と、が含まれうる。一般に、コンピュータシステム700は、プロセススケジューリング、メモリ管理、ネットワーキングおよびI/Oサービスなどのタスクを行なうオペレーティングシステム(OS)ソフトウェアによって、制御され連係される。
【0034】
通信用インタフェース724も、また、バス702に接続することができる。通信用インタフェース724は、ソフトウェアおよびデータをコンピュータシステム700と外部装置との間で転送することを可能にする。通信用インタフェース724の例には、モデム、ネットワークインタフェイス(イーサネット(登録商標)・カードなど)、コミュニケーションポート、PCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association)スロットおよびカードなど、が含まれうる。通信用インタフェース724を介して転送されたソフトウェアおよびデータは、通信用インタフェース724によって受信可能な電子信号、電磁気信号、光学信号、あるいは他の信号とできる信号の態様である。コンピュータ700は、専用のセットの規則(つまりプロトコル)に基づいて、データネットワーク上の他の演算装置と通信する。一般的なプロトコルのうちの1つは、インターネットにおいて一般に用いられているTCP/IP(伝送コントロール・プロトコル/インターネット・プロトコル)である。一般に、通信インタフェース724は、データファイルをデータネットワーク上で伝達される小さいパケットへのアセンブリングを管理し、あるいは受信したパケット元のデータファイルへと再アセンブルする。さらに、通信インタフェース724は、正しい宛先に届くようそれぞれのパケットのアドレス部分に対処し、あるいはコンピュータ700が宛先となっているパケットを他に向かわせることなく受信する。この書類において、「コンピュータプログラム媒体」、「コンピュータで使用可能な媒体」および「コンピュータで読み取り可能な媒体(コンピュータ可読媒体)」という語は、リムーバブルストレージドライブ714および/またはハードディスクドライブ712に組み込まれたハードディスクなどの媒体を概ね意味して用いられている。これらのコンピュータプログラム製品は、コンピュータシステム700にソフトウェアを提供する手段である。本発明は、このようなコンピュータプログラム製品に対してなされたものである。
【0035】
コンピュータシステム700は、また、コンピュータシステム700をアクセスモニタ、キーボード、マウス、プリンタ、スキャナ、プロッタなどに提供する入出力(I/O)インタフェース730を有することができる。
【0036】
コンピュータプログラム(コンピュータ制御ロジックともいう)は、メインメモリ708および/または二次メモリ710にアプリケーションモジュール706として記憶される。コンピュータプログラムを、通信用インタフェース724を介して受け取ることもできる。このようなコンピュータプログラムが実行された時、コンピュータプログラムによって、コンピュータシステム700がここに説明した本発明の特徴を実行することが可能になる。詳細には、コンピュータプログラムが実行された時、コンピュータプログラムによって、プロセッサ704が本発明の特徴を実行することが可能になる。したがって、このようなコンピュータプログラムは、コンピュータシステム700のコントローラを表わしている。
【0037】
ソフトウェアを用いて発明が実行される実施形態において、ソフトウェアをコンピュータプログラム製品に記憶でき、リムーバブルストレージドライブ714、ハードドライブ712あるいは通信用インタフェース724を用いてコンピュータシステム700へとロードすることができる。アプリケーションモジュール706は、プロセッサ704によって実行された時、アプリケーションモジュールによって、プロセッサ704がここに説明した本発明の機能を実行する。
【0038】
所望のタスクを達成するために、I/Oインタフェース730を介したユーザ入力によってあるいはよることなしに、1つ以上のプロセッサ708によって実行することができる1つ以上のアプリケーションモジュール706を、メインメモリ704に、ロードすることもできる。動作においては、少なくとも1つのプロセッサ704がアプリケーションモジュール706のうちの1つが実行されると、結果が演算されて二次メモリ710(つまりハードディスクドライブ712)に記憶される。筋肉の運動のコンピュータシミュレーションの状況(例えば有限要素解析結果)は、テキストあるいはグラフィック表現で、I/Oインタフェース730を介してユーザに報告される。
【0039】
本発明を具体的な実施形態を参照しながら説明したが、これらの実施形態は単なる例示であって、本発明を限定するものではない。開示した例示的な実施形態に対する種々の変更あるいは変形を、当業者は思いつくであろう。例えば、人間の腕の筋肉および関節をトラス要素およびローラとしてモデル化することを示し説明したが、他の筋肉および関節、例えば脚の筋肉および膝または足首の関節をモデル化することもできる。また、非線形ヒルタイプの筋肉の生体力学特性モデルを示し説明したが、筋肉の生体力学特性をエミュレートする他の適当な数値モデルを使用してもよい。「滑り」および「交換」調整に関して3つのトラス要素および1つのローラを示し説明したが、本発明は、筋肉および関節を表すトラス要素およびローラの数を限定しない。つまり、発明の範囲は、ここで開示した具体的で例示的な実施形態に限定されず、当業者が容易に想到するあらゆる変更が、本願の精神および認識範囲そして添付の特許請求の範囲の権利範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
210 コンピュータ化モデル
212 トラス要素
214 ローラ
300 筋肉モデル
301 収縮性要素(CE)
302 ダンパ要素(DE)
303 受動要素(PE)
500 ローラ
502 接触角
514a 張力
514b 張力
504a トラス要素
504b トラス要素
601〜604 ノード
611〜613 トラス要素
718 リムーバブルストレージユニット
722 リムーバブルストレージユニット
710 2次メモリ
712 ハードディスクドライブ
714 リムーバブルストレージドライブ
720 インタフェース
708 メインメモリ(RAM)
706 モジュール
704 プロセッサ
702 バス
724 通信インタフェース
730 I/Oインタフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨に沿った筋肉の運動および関節のまわりの筋肉の運動を数値的にシミュレートする方法であって、
時間進行筋肉運動シミュレーションを行うアプリケーションモジュールがインストールされたコンピュータシステムにおいて、複数のトラス要素および少なくとも1つのローラを有するコンピュータ化モデルを受け取るステップであって、前記複数のトラス要素が筋肉繊維を表すように構成されるとともにそれぞれのローラが関節を表すように構成されており、前記複数のトラス要素が筋肉の生体力学特性モデルと関連しているステップと、
コンピュータシステムにおけるアプリケーションモジュールを用いてコンピュータ化モデルによって前記時間進行シミュレーションを行うステップであって、前記時間進行シミュレーションが時間の経過を表す一連の連続ソリューションサイクルを有するステップと、
それぞれのソリューションサイクルにおいて前記複数のトラス要素の軸方向応力および歪みを演算するステップと、
それぞれのローラにまたがっているそれぞれのトラス要素ペアに滑り調整および交換調整を適用し、骨に沿った筋肉繊維の数値的にシミュレートされた運動および関節のまわりの筋肉繊維の数値的にシミュレートされた運動を得るステップと、
を備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記滑り調整では、前記それぞれのトラス要素ペアの伸張していない長さを再定義する方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記それぞれのトラス要素ペアの一方が前記滑り調整により閾値より短くなったとき、前記交換調整が行われる方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記交換調整では、前記それぞれローラの第1側から第2側に前記それぞれのトラス要素ペアの前記一方を移動させる方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記交換調整後、前記それぞれのトラス要素ペアの前記一方は、前記閾値より大きい長さで構成される方法。
【請求項6】
請求項2に記載の方法であって、前記伸張していない長さを、前記それぞれローラにおいてキャプスタン方程式を用いて反復的に決定する方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記キャプスタン方程式は、前記それぞれのトラス要素ペアの軸方向応力および歪み、ならびに前記それぞれのローラの接触角の関数である方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記それぞれローラの接触角は、前記それぞれのトラス要素ペアのそれぞれの方向によって決定される方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記コンピュータ化モデルは有限要素解析モデルである方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、前記筋肉生体力学特性モデルは、非線形ヒルタイプ筋肉生体力学特性モデルを備える方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、前記それぞれローラは、前記それぞれのトラス要素ペアによって共有されるノードを有する方法。
【請求項12】
骨に沿った筋肉の運動および関節のまわりの筋肉の運動を数値的にシミュレートするシステムであって、
入出力(I/O)インタフェースと、
筋肉の運動をシミュレートするための1つ以上のアプリケーションモジュールに関するコンピュータ可読コードを記憶しているメモリと、
前記メモリに連結される少なくとも1つのプロセッサと、
を備えており、前記少なくとも1つのプロセッサがメモリ内のコンピュータ可読コードを実行して、これにより、前記1つ以上のアプリケーションモジュールに、
複数のトラス要素および少なくとも1つのローラを有するコンピュータ化モデルを受け取るオペレーションであって、前記複数のトラス要素が筋肉繊維を表すように構成されるとともにそれぞれのローラが関節を表すように構成されており、前記複数のトラス要素が筋肉の生体力学特性モデルと関連しているオペレーションと、
コンピュータシステムにおけるアプリケーションモジュールを用いてコンピュータ化モデルによって前記時間進行シミュレーションを行うオペレーションであって、前記時間進行シミュレーションが時間の経過を表す一連の連続ソリューションサイクルを有するオペレーションと、
それぞれのソリューションサイクルにおいて前記複数のトラス要素の軸方向応力および歪みを演算するオペレーションと、
それぞれのローラにまたがっているそれぞれのトラス要素ペアに滑り調整および交換調整を適用し、骨に沿った筋肉繊維の数値的にシミュレートされた運動および関節のまわりの筋肉繊維の数値的にシミュレートされた運動を得るオペレーションと、
を行わせるシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムであって、前記滑り調整では、前記それぞれのトラス要素ペアの伸張していない長さを再定義し、そして、前記伸張していない長さは、前記それぞれローラにおいてキャプスタン方程式を用いて反復的に決定されるシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムであって、前記それぞれのトラス要素ペアの一方が前記滑り調整により閾値より短くなったとき、前記交換調整が行われ、そして、前記交換調整では、前記それぞれローラの第1側から第2側に前記それぞれのトラス要素ペアの前記一方を移動させるシステム。
【請求項15】
方法を用いて骨に沿った筋肉の運動および関節のまわりの筋肉の運動を数値的にシミュレートするコンピュータが実行可能な命令を有するコンピュータ可読媒体であって、該方法が、
時間進行筋肉運動シミュレーションを行うアプリケーションモジュールがインストールされたコンピュータシステムにおいて、複数のトラス要素および少なくとも1つのローラを有するコンピュータ化モデルを受け取るステップであって、前記複数のトラス要素が筋肉繊維を表すように構成されるとともにそれぞれのローラが関節を表すように構成されており、前記複数のトラス要素が筋肉の生体力学特性モデルと関連しているステップと、
コンピュータシステムにおけるアプリケーションモジュールを用いてコンピュータ化モデルによって前記時間進行シミュレーションを行うステップであって、前記時間進行シミュレーションが時間の経過を表す一連の連続ソリューションサイクルを有するステップと、
それぞれのソリューションサイクルにおいて前記複数のトラス要素の軸方向応力および歪みを演算するステップと、
それぞれのローラにまたがっているそれぞれのトラス要素ペアに滑り調整および交換調整を適用し、骨に沿った筋肉繊維の数値的にシミュレートされた運動および関節のまわりの筋肉繊維の数値的にシミュレートされた運動を得るステップと、
を備えているコンピュータ可読媒体。
【請求項16】
請求項15に記載のコンピュータ可読媒体であって、前記滑り調整では、前記それぞれのトラス要素ペアの伸張していない長さを再定義し、そして、前記伸張していない長さは、前記それぞれローラにおいてキャプスタン方程式を用いて反復的に決定されるコンピュータ可読媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−93030(P2013−93030A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−234376(P2012−234376)
【出願日】平成24年10月24日(2012.10.24)
【出願人】(509059893)リバーモア ソフトウェア テクノロジー コーポレーション (29)