説明

骨の処置におけるケイ素化合物

【発明の詳細な説明】
発明の分野 本発明はケイ素化合物の骨沈着の刺激に用いること、およびそれらをカルシウム性骨疾患の治療、予防、または罹患の遅延のために用いることに関するものである。
発明の要約 本発明は、脊椎動物の骨組織の増殖を刺激するためにケイ素化合物を用いることに関するものである。従って1形態においては本発明は、カルシウム性骨疾患、たとえば女性における閉経後オステオポローシス(骨粗しょう症)の治療、予防、または罹患の遅延のためにケイ素含有化合物を用いることよりなる。他の形態においては本発明は、骨の強度が望ましいものより低い動物において骨の強度を高める方法よりなる。
本発明に用いられる薬剤は、ケイ素が酸素またはハロゲンのみに結合した生理学的に受容しうる有機ケイ素化合物である。ハロゲンのうちではフッ素、塩素および臭素が好ましい。好ましい薬剤においては、ケイ素の原子価の4分の1以上が酸素への結合により占められている。すなわちケイ素の原子価の少なくとも2分の1(好ましくはそれ以上)がハロゲンではなく酸素への結合により占められている。本発明に使用しうる化合物の例としては、テトラオルガノオルトシリケート、すなわち炭水化物、たとえばグルコース、蔗糖、およびアルコルビン酸とテトラカルボン酸ケイ素、たとえば四酢酸ケイ素から誘導されるケイ素含有反応生成物が挙げられる。
好ましい1形態においては本発明は、上記薬剤1種または2種以上により処置された温血脊椎動物によってそれらの薬剤から形成されたケイ酸を用いることよりなる。ケイ酸は処置された動物の体内で胃腸管、胃腸粘膜その他の部位において形成される。こうして形成されたケイ酸を(a)カルシウム性骨疾患の治療、予防、もしくは罹患の遅延のために、または(b)骨の強度が望ましいものより低い動物において骨の強度を高めるために用いることができる。前記薬剤と同様に、それらの薬剤で処置された対象により形成されるケイ酸は、女性において閉経後オステオポローシスを、また男性もしくは女性においてステロイド誘発性もしくは低ゴナドトロビン性オステオポローシスを治療もしくは予防し、またはその罹患を遅延させることができる。
本発明の薬剤について起こる加水分解の部位および程度は、それらの比活性を変化させ、遊離ケイ酸は一般に到達し得ない全身部位へそれらを向かわせ、これにより新規な、または付加的な活性部位との相互作用を可能にする。従って母体化合物のみでなくケイ酸自体を含めたすべての代謝産物が、目的とする特定の骨の増殖または再生の刺激活性に関与する可能性がある。従って我々はこれらの化合物において複雑な一連の変換が予想され、いずれかまたは数種の変換生成物が活性または有用性の種々のスペクトルに関与することを認識する。
好ましい形態の説明 本発明は温血脊椎動物におけるカルシウム性骨疾患を治療もしくは予防し、またはその罹患を遅延させる方法において、該脊椎動物を少量ではあるが有効な量の(i)ケイ素の原子価の2分の1以上が酸素への結合により占められた状態でケイ素が酸素または塩素もしくは臭素のみに結合した、生理学的に受容しうる有機ケイ素化合物、あるいは(ii)脊椎動物に投与された有効量の該有機ケイ素化合物から該脊椎動物により形成されたケイ酸で処置する方法よりなる。
また本発明は骨の強度が望ましいものより低い温血脊椎動物における骨の強度を高める方法において、該脊椎動物を少量ではあるが有効な量の(i)ケイ素の原子価の2分の1以上が酸素への結合により飽和された状態でケイ素が酸素またはハロゲン、好ましくはフッ素、塩素もしくは臭素のみに結合した、生理学的に受容しうる有機ケイ素化合物、または(ii)脊椎動物に投与された有効量の該有機ケイ素化合物から該脊椎動物により形成されたケイ素で処置する方法よりなる。
処置すべき患者または動物に投与される薬剤の量は、食物の約0.1−約10.0重量%であってよい。これより多量または少量も使用しうる。
本発明に関して温血脊椎動物の特性または種類は重要でない。好ましい種はヒト、および経済的に重要な家畜、たとえばペット、荷車用動物、および食用として飼育される動物である。たとえば好ましい動物には鳥、たとえば家禽、家畜哺乳類、たとえばハウスペット、ならびに農業上重要な動物、たとえば馬、牛、豚および羊が含まれる。
本発明に用いられる薬剤の1形態はシリケートエステルである。好ましいシリケートエステルはオルトシリケート;すなわち式Si(OR)の化合物であり、式中のRは有機残基である。これらの式において、各基は同一でも異なってもよい。好ましくはオルトシリケート出発物質において4個の有機残基は等しい。有機残基の厳密な性質、大きさおよび形状は重要でない。
たとえば上記式においてRで示される基は炭素および水素のみからなりうる。これらの基は環式または非環式のいずれであってもよい。一般にそれらはアルキル基である。直鎖または分枝鎖アルキル基が適している。たとえばRにより示される基は1−約6個の炭素原子を含むアルキル基、すなわち上記で定義したような“低級アルキル基”でありうる。これらの基の例はメチル、エチル、n−プロピル、sec−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルなどである。
入手しやすいという理由から、本発明に用いられる好ましいオルトシリケートの1形態は4個の炭素原子(すなわち4個のメチル基)から約24個の炭素原子(4個のヘキシル基)までを含む。極めて好ましいこの種類のテトラアルキルオルトシリケートはテトラエチルオルトシリケート;Si(OC2H5である。
しかし生理学的に受容しうる他の置換基が本発明に用いられるシリケートエステル中に存在してもよいと解すべきである。この種類の置換基はたとえばアシル、アリール、アラルキル、アルカリール、複素環式アルキル、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルホスファト、カルボニル、チオカルボニルなどである。
本発明の第2の種類の薬剤は上記のものに類似する。この第2の種類において、上記式中のRにより示される基はポリヒドロキシ基、たとえばグリセリンまたはプロピレングリコールから誘導されるものである。たとえば本発明はグリセリンおよびグリコールオルトシリケートを用いることよりなる。ポリヒドロキシ基は他の炭水化物、たとえばアルドースおよびケトースを含む糖類から、またはそれより誘導されるアルコール類、たとえばマンニトールから誘導される。以下はこの種類の薬剤の例である:マンニトールオルトシリケート、グルコースオルトシリケート、フルクトースオルトシリケート、およびシュークロースオルトシリケート。これらの材料およびこれらに類する他のものはドイツ特許第285,285号明細書(1914年3月22日)に記載の方法により製造しうる。
しかし、本発明にとってポリヒドロキシ基の性質は改質効果をもつと思われるが、その性質は重要でなく、生理学的に受容しうるいずれかの炭水化物−−ポリヒドロキシアルデヒド、ポリヒドロキシケトンを含む−−または加水分解されてそれらになりうる化合物から誘導しうることを理解すぺきである。たとえば炭水化物は単糖類、二糖類、オリゴ糖類または多糖類、たとえばデンプンである。単糖類はトリオース、テトロース、ペントース、ヘキソースなどである。本発明に好ましい炭水化物は18個までの炭素原子を含む。
上記ドイツ特許明細書に示されるように、本発明に用いられる薬剤はテトラ低級アルキルオルトシリケート(たとえばテトラエチルオルトシリケート)とアルドースまたはケトースを、エステル交換が助成される条件下で反応させることにより製造しうる。それらはハロゲン化ケイ素(たとえばSiCl4またはSiBr4)から、塩基の存在下にアルドースまたはケトースとの反応によっても製造しうる。この方法は糖類反応体の分子形状を若干転位させる場合があり、必ずしもすべてのハロゲン原子がアルドースまたはケトースにより置換されない場合もある。それにもかかわらず、これらの材料は本発明に使用しうる。好ましくは少なくとも原子価の半分がハロゲンの代わりに酸素への結合により占められている。
本発明の第3の種類の薬剤は、アスコルビン酸または置換アスコルビン酸とテトラアルキルオルトシリケートの反応生成物である。
アルコルビン酸は次式の構造をもつ:

これは本発明の薬剤を製造するために好ましい出発物質である。置換アスコルビン酸も出発物質として使用しうる。本発明の目的について“置換アスコルビン酸”という語は、1または2個以上の置換可能な水素が有機残基により置換された上記アスコルビン酸の構造をもつ化合物を意味る。出発物質として有用であるためには置換アスコルビン酸は、用いる反応条件下でシリケートエステルと反応しうる少なくとも1個の置換可能な水素(たとえば−OH基中の水素)を含まなければならない。
置換アスコルビン酸中に置換基として存在しうる有機残基はヒドロカルビル基、すなわち炭素および水素のみから構成される基である。好ましくはヒドロカルビル基はアルキル基、より好ましくは低級アルキル基である。本発明の目的について“低級アルキル基”という語は約6個までの炭素原子を含むアルキル基である。直鎖または分枝鎖アルキル基がアスコルビン酸部分に置換基として存在し、“低級アルキル基”という語に含まれる。これらの基の例はメチル、エチル、n−プロピル、sec−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルなどである。
しかし有機置換基(アスコルビン酸部分に結合しうるもの)の性質および大きさは、それらが生理学的に受容しうる限り重要でないと解すべきである。本発明の目的について“生理学的に受容しうる”とは、その物質がケイ素化合物を薬剤として受容し得ないものにするほど有毒ではないことを意味する。これらの基は受容しうる経費でアスコルビン酸構造に付加されることが好ましい。言い換えれば、置換基が相対的に廉価であることが好ましい。また有機置換基は立体障害により、または受容し得ない程度の異質な副反応を生じることにより目的の反応を妨害しない大きさ、性質および形状であることが好ましい。上記ヒドロカルビル基のほかに、生理学的に受容しうる他の置換基がアスコルビン酸誘導体中に存在してもよい。これらの置換基はたとえばアシル、アリール、アラルキル、アルカリール、複素環式アルキル、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルホスファト、カルボニル、チオカルボニルなどである。
少なくとも1個の反応性水素が存在する限り、アスコルビン酸部分に結合しうる有機置換基の数には実際の上限はない。しかし一般に多重置換アスコルビン酸よりモノ置換アスコルビン酸の方が好ましい。従って極めて好ましい形態においては、本発明の薬剤を製造するための出発物質として用いられるアスコルビン酸誘導体は6−約12個の炭素原子を含む。
本発明の薬剤をアスコルビン酸または置換アスコルビン酸から製造するためには、1種または2種以上のアスコルビン酸化合物を1種または2種以上のシリケートエステルと混合し、加熱する。好ましくは1−4モルのアスコルビン酸または置換アスコルビン酸をシリケートエステルのモル当たり反応させるか、または1−4モルのシリケートエステルをアスコルビン酸または置換アスコルビン酸のモル当たり反応させる。これより高いか、または低い比率を採用することもできるが、それらの比率を採用すると未反応の出発物質を生成物から分離する必要性が生じる。
出発物質を単に混合および加熱するか、またはそれらを不活性液状反応媒質、たとえば炭水化物の存在下で反応させることができる。
多くの場合、液状反応媒質は必要ない。たとえば反応温度ではアスコルビン酸はテトラエチルオルトシリケートに可溶性(利用しうる程度に)である。他方、両反応体が反応温度で固体である場合、液状反応媒質を用いることが好ましい。反応体がその液体に完全には溶解しない場合、反応体の接触を促進するために揺動、たとえば撹拌を採用することができる。
反応温度は妥当な期間内に妥当な生成物収率を得るべく選ばれる。通常は約65℃を越える温度が用いられる。200℃以上の温度を採用しうる。
好ましくは、本発明の薬剤を製造する反応は大気圧において行われる。この方法を採用する場合、反応混合物中の最低沸点の反応体の沸点より低く、かつ処理中に生成する副生アルコール類の沸点より高い反応温度を用いることが好ましい。たとえばアスコルビン酸をテトラエチルオルトシリケートと反応させる場合、好都合な反応温度は約155℃である。この温度は、該シリケートの沸点よりわずかに低く、副生エタノールの沸点より高い。この温度は反応帯域からの未反応テトラエチルオルトシリケートの除去を促進し、これにより反応生成物の単離を助成する。
副生アルコール類および/または未反応出発物質の除去を助成するために、所望により反応帯域を不活性ガス流により掃除してもよい。
反応温度は真の独立変数ではなく、採用される他の反応条件に少なくとも若干は依存する。一般に反応温度が高いほど反応時間は短縮される。さらに反応体の十分な混合およびアルコール系副生物の効果的な除去は、反応を駆動して完結させるのに役立ち、これにより反応時間が短縮される。一般に処理は約1−約24時間の反応期間にわたって行われることができる。反応を多段階で行うこともできる。たとえば反応をある温度で初期反応期間行い;次いでこの初期反応期間後に残留する出発物質の部分の反応を補助するために比較的短時間、温度をある程度高めることができる。
前記のように好ましい反応圧力は周囲圧力である。ただし所望により減圧および加圧を採用しうることは当業者には明らかであろう。
通常、生成物は固体である。反応混合物中に液体が存在する場合、生成物を濾過によりこれから分離しうる。好ましくは生成物を濾過する前に反応混合物を冷却する。生成物を反応混合物から分離したのち、これを洗浄し、乾燥させ、所望により粉砕しうる。
好ましい形態においては、本発明の薬剤が少なくとも2重量%、より好ましくは約10−約15重量%のケイ素を含有するように出発物質を組み合わせて反応させる。この種類の適切な薬剤は、1モルのアスコルビン酸または他の炭水化物を1モルのテトラ低級アルキルオルトシリケート、たとえばテトラエチルオルトシリケートと反応させることにより製造しうる。
ポリヒドロキシ化合物とケイ素含有部分を反応させることにより製造された本発明の薬剤の厳密な特性は分かっていない。本発明の代表的な薬剤を分析すると(NMRおよび赤外線により)反応生成物は重合体であることが示される。この種類の生成物の分子量、すなわち重合度は測定するのが困難である。一般に生成物は分子量測定に慣用される溶剤に不溶性だからである。生成物は水性媒質、たとえば水性酸または水性塩基に可溶性である。しかし水性媒質中の溶液は加水分解を生じる。従って本発明の生成物の分子量を水性媒質中で測定することはできない。
この種類の薬剤は均一ではなく、オルトシリケートエステルとポリヒドロキシ化合物、たとえばアスコルビン酸および/または置換アスコルビン酸の反応により形成される種々の物質の混合物からなると考えられる。
実施例1 機械的撹拌機を備えた三口丸底パイレックスフラスコを用いた。一方の口には揮発性物質を所望により保持または除去しうるように冷却器を取り付けた。目的外の加水分解を最小限に抑えるために、正の窒素圧を用いて水分が系内に侵入するのを防止した。
100gのアスコルビン酸を反応フラスコに添加した。緩和な加熱および窒素パージののち、200mlのテトラエチルオルトシリケートを添加した。次いで得られた混合物を50℃に2時間加熱したのち、激しい撹拌下にさらに2時間80℃に加熱した。次いで得られた混合物を加熱してエタノールを除去したのち、約155℃でテトラエチルオルトシリケートを除去した。
フラスコに残留する固体生成物を室温に冷却し、次いでメタノールで洗浄した。次いで試料を真空オーブン内で一夜乾燥させ、次いでウェアリングブレンダーで摩砕することにより粉砕した。
生成物は有機溶剤、たとえばジクロロメタン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)および四塩化炭素に不溶性または実質的に不溶性である。
生成物はIPC(誘導結合プラズマ)原子吸収スペクトルにより測定して11%のケイ素を含有していた。XRD(X線回折)による検査は生成物にアスコルビン酸基が存在することを示唆した。生成物の回折パターンを出発アスコルビン酸の回折パターンと比較したところ、アスコルビン酸含量19重量%が測定された。
生成物の加水分解により生成した化合物種を同定するために、少量の試料を撹拌下に水にスラリー化した。種々の時点でスラリーを取り出し、シリンジフィルターで濾過した。次いで濾液中のケイ質物質をHClの存在下にヘキサメチルジシロキサンにより誘導体化した。生成したトリメチルシリル誘導体を気相クロマトグラフィーにより分析した。その結果、オルトケイ酸のトリメチルシリル誘導体のみの存在が示された。これは試料の加水分解により生成したケイ質物質がほとんどすべて、オルトケイ酸および/または容易にオルトケイ酸に変化しうる化合物種であったことを示唆する。
他の生成物試料をアルカリ性条件下で加水分解してエタノールの存在量を測定した。試料の5.8重量%に相当するエタノールの放出が検出された。このエタノール量はテトラエチルオルトシリケートの加水分解により得られる理論的エタノール放出量(88.4重量%)より実質的に少ない。
約65−約200℃の反応温度を用いて、上記方法を改変しうる。この方法はさらに前記の置換アスコルビン酸、たとえばメチル、エチル、n−プロピル、sec−ブチル、n−ペンチルもしくはn−ヘキシル基で置換されたアスコルビン酸部分を含むか、またはカルボン酸基、たとえばホルミル、アセチル、プロピオニルもしくはカプロイルにより部分エステル化されたアスコルビン酸誘導体を用いて改変しうる。
上記方法は、テトラエチルオルトシリケート反応体の代わりに式Si(OR)(式中、Rはそれぞれ1または3−6個の炭素原子を含むアルキル基である)の物質を用いることにより改変しうる。
上記方法は、シリケートエステルのモル当たり1−4モルのポリヒドロキシ化合物、たとえばアスコルビン酸もしくは置換アスコルビン酸を反応させ、またはアスコルビン酸もしくは置換アスコルビン酸もしくは前記の他のポリヒドロキシ化合物のモル当たり1−4モルのシリケートエステルを反応させ、2重量%以上、より好ましくは約10−約15重量%のケイ素を含む物質となすことにより改変しうる。
以上の一般法に従って反応体を約1−約24時間反応させることにより、この実施例の上記変法を実施しうる。
実施例2 上記実施例に記載した型の反応器を用いて、100gのグリセリンおよび142gのテトラエチルオルトシリケートを140℃で約3時間、撹拌下に加熱することにより反応させた。固いゲルが形成され、撹拌機が停止したのち、反応を停止した。ゲルを蒸発皿に移し、真空オーブンに一夜入れて未反応物質を除去した。生成物はケイ素含量8.0重量%を示した。
実施例3 上記の型の反応器に42gの蔗糖を添加した。次いで蔗糖中に存在する可能性のある水分を除去するために窒素気流を用いて緩和に加熱した。次いで104gのテトラエチルオルトシリケートをフラスコに添加した。このスラリーを4時間加熱還流したのち、揮発性生成物を蒸留により除去した。この蔗糖/シリケート混合物は反応全体を通じて不均質系であった。
真空オーブン内で揮発性物質を除去したのち、固体生成物をウェアリングブレンダーにより粉砕した。元素分析はケイ素含量3.13重量%を示した。
実施例2および3の方法に従ってテトラ低級アルキルシリケートを前記の他の炭水化物と反応させることにより、本発明の他の薬剤を製造しうる。一般に本発明の薬剤として用いるために製造された反応生成物は少なくとも2重量%のケイ素含量をもつことが好ましい。より好ましくはケイ素含量は約10−約15重量%である。
先にテトラカルボン酸ケイ素を本発明において薬剤として使用しうると述べた。これらの物質は第4種の薬剤である。これらは式Si(OR′)をもち、式中のR′はカルボン酸から誘導される基である。言い換えれば、R′カルボキシル基である。この種類の薬剤の例は四酢酸ケイ素である。これらはハロゲン化ケイ素(たとえば四塩化ケイ素または四臭化ケイ素)とカルボン酸を、副生物ハロゲン化水素、たとえばHClまたはHBrの開裂に好都合な条件下で反応させることにより製造しうる。こうして製造されたカルボン酸ケイ素中に残留ハロゲンが存在するであろう。カルボキシレート中のケイ素の原子価の少なくとも2分の1がハロゲンではなくカルボキシル基に結合することにより占められていることが好ましい。
カルボキシレートにおいて上記式中のR′で表される基は同一でも異なってもよい。好ましくはそれらは同一である。本発明において薬剤として用いられるテトラカルボキシレートはカルボン酸およびそれらの無水物、たとえば後記のものから製造される(本発明の薬剤を含有する食物および剤形の記述の後)。
本発明の薬剤は骨組織に伴う障害を処置するために使用しうる。より詳細には、本発明の薬剤はカルシウム性骨疾患の治療、予防、または罹患の遅延のために使用しうる。従って本発明は本発明の薬剤を用いることよりなる、上記種類の骨障害の処置法からなる。本発明の薬剤による処置が有効な骨疾患には、家禽、牛、羊、犬および豚の脛骨軟骨発育不全およびこれに類する他の疾患が含まれる。家禽の場合、脛骨軟骨発育不全は増殖している脛骨の末端におけるカルシウム沈着が損なわれることを特色とする。これは哺乳動物に起こるものと同じ疾患であると考えられ、骨軟骨症として知られる。さらに本発明は、オスチオポローシス、特に女性における閉経後オスチオポローシスの処置に有用である。
本発明の物質を骨障害の処置に用いるためには、1種または2種以上の物質を少量ではあるが有効な量で、処置される動物に投与する。好ましくは本発明の薬剤は経口投与される。これらの薬剤を、処置されるヒトもしくは動物の食物中において投与するか、または食物とは別個に、すなわち単位剤形において投与する。好ましい単位剤形は錠剤およびカプセル剤である。
家禽の処置については本発明の薬剤約0.01−5重量%を含有する家禽飼料を使用しうる。他の動物種、たとえば豚、牛、羊および犬を処置する場合、これと同様またはこれより少量を使用しうる。薬剤を食物とは別個に投与したい場合、有効量の薬剤を錠剤もしくはカプセル剤または他のいずれかの受容しうる剤形で投与しうる。これらの単位剤形は、活性薬剤の有効濃度を終日維持しうるために1日多数回投与しうる。好ましくは骨障害の処置に用いられる本発明の薬剤はケイ素含量約10−約15重量%をもつ。これより高いかまたは低いケイ素含量の薬剤も使用しうる。
先に、上記のケイ素含有薬剤の家禽のカルシウム性骨疾患の処置に使用しうると述べた。本発明について“家禽”という語は、すべての飼い鳥、すなわち鶏、七面鳥、アヒル、ガチョウなどを含む。
コーンは大部分の家禽の主食である(少なくともコーンが主な穀類である米国その他の国では)。これらの国では下記よりなる配合飼料が望ましい: 重量% コーン 50−75 大豆ミール 10−30 炭酸カルシウム 4−10 本発明の薬剤 0.25−4.0 大規模産卵養鶏用の一般的調製飼料は下記よりなる(重量%): コーン 62−68 大豆ミール 18−24 石灰石 5−9 アルファルファミール 1 ホスフェート類 2 砂 1−2 ビタミン、アミノ酸、塩、その他の無機質 0−1 コーンが主な穀類でない国においては上記配合物に用いるコーンの代わりに他の穀類を使用しうる。
炭酸カルシウムは通常は適宜な粒径に粉砕された天然石灰石の形であるが、時には同様に適宜粉砕されたカキ殻が用いられる。
養鶏飼料に種々に栄養素または食物が含有されることは認識される。管理された環境で鶏は望ましい食物または飼料のみを与えられる。一般的な産卵養鶏用組成物は下記のものを含有する: 重量% 粗蛋白質 − 16.0以上 粗脂肪 − 2.5以上 粗繊維質 − 7.0以下 カルシウム(Caとして) − 3.1以上 カルシウム(Caとして) − 4.1以下 リン(P) − 0.5以上 ヨウ素(I) − 0.0001以上 塩(NaCl) − 0.3以上 塩(NaCl) − 0.9以下 以上の組成物は下記の成分から得られるか、またはそれらを含有する: 穀類および加工殻類副生物.コーン、コーンホミニー、コーン胚芽ミール、オオムギ、アワ、オートムギ、コメ、モミガラ、ライムギ、モロコシ、コムギおよびコムギショートを含む。これらはエネルギー供与成分に含まれ、大部分は炭水化物であり、若干の蛋白質を含む。
植物蛋白質製品.大豆油ミール、オオムギ麦芽若芽、ココナツミール、コーン酒造所穀類、コーングルテンミール、綿実ミール、豆種子、バレイショミール、ピーナッツミール、ナタネ種子ミール、ヒマワリミール、コムギ麦芽ミール、醸造所酵母を含む。これらはすべて蛋白質源である。
不消化物または繊維質.脱水アルファルファ、アルファルファ干し草、アルファルファ葉ミールおよび牧草を含む。これらはすべて繊維源である。
動物および魚類副生物.血液ミール、血液粉、乾燥バターミルク、乾燥ホエー、乾燥カゼイン、魚粉、乾燥魚類可溶分、肝臓ミール、肉ミール、肉ミールタンクかす、骨ミール、および乾燥スキムミルクを含む。アンチョビ、ニシンおよびメンハーデンは魚粉の原料である。これらの製品は蛋白質源である。
無機質および合成微量成分.ビタミン、たとえばB−12、A、パントテン酸、ナイアシン、リボフラビン、Kなど、DLメチオニン、コリンクロリド、葉酸、リン酸二カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、(石灰石、カキ殻)、塩、亜セレン酸ナトリウム、酸化第一マンガン、ヨウ化カルシウム、酸化銅、酸化亜鉛、およびD活性化動物ステロールを含む。
風味を改善し、エネルギー水準を高め、またはバランスをとるために、糖密および動物性脂肪が添加される。
防腐剤、たとえばエトキシキン(Ethoxyquin、商標)および亜硫酸ナトリウムも添加される。
一般に産卵養鶏用の本発明の飼料組成物は好ましくは下記のものを含有する(重量%): 重量% 粗蛋白質 − 少なくとも約14 粗脂肪 − 少なくとも約2 粗繊維質 − 約7以下 カルシウム − 約2.7−4.1 リン − 少なくとも約0.05 ヨウ素 − 少なくとも0.0001 ナトリウム − 約0.1−0.4 塩素 − 約0.04−0.10 本発明の薬剤 − 約0.25−4.0 食肉源として飼育される家禽、すなわちブロイラーについても同様な飼料が用いられる。
前記のように本発明の薬剤を骨疾患に対処するために用いる場合、単位剤形、たとえば錠剤またはカプセル剤として投与しうる。他の剤形はコーチング錠、糖衣錠、散剤など、および既知の徐放剤を含む徐放製剤である。これらの剤形については、本発明により提供される有効成分は、この種の製剤につき慣用される薬剤学的に受容しうるアジュバントおよびキャリヤーと共に配合される。本発明はこれらの薬剤混合物、およびそれらを骨疾患に対処するために用いることを包含する。
本発明の単位剤形は本発明の有効成分20−1000mgを含有するのが好都合である。それらは一般に1日1−6回、好ましくは2−4回投与される。
本発明の1形態においては上記有効成分を酸性化剤と共に配合しうる。これらの酸性化剤は米国特許出願第153,456号明細書(1988年2月8日出願)にゼオライト組成物につき示されている。本発明者らは他と共にこの関連出願の共同発明者である。その明細書中の酸性化剤に関する記載全体をここに参考として引用する。
米国特許出願第153,456号明細書に記載されるように、酸性化剤は薬剤学的に受容しうる有機酸である。本発明にはL−アスパラギン酸およびグルタミン酸が用いられる。各カルボキシル基がα−炭素上にアミノ基を含むグリシンおよびこれに類する酸と異なり、アスパラギン酸およびグルタミン酸はα−アミノ基を含まないカルボキシル基をもつ。この隔離されたカルボキシル基は非ツビッターイオンであるので、L−アスパラギン酸およびこれに類する隔離されたカルボキシル基を含む物質は好ましい有機酸の群をなす。この酸は、酸官能性がカルボキシ基以外の基から誘導されるアスコルビン酸または他のいずれかの酸性物質であってもよい。あるいはこの酸は一塩基性、二塩基性、三塩基性または四塩基性カルボン酸のいずれであってもよい。この種の酸には酢酸、トリメチル酢酸、乳酸、安息香酸、マロン酸、酒石酸、グルコン酸、クエン酸などが含まれる。好ましくはこの酸は3−6個の炭素原子を含むもの、たとえばプロピオン酸、ピバル酸、リンゴ酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、酪酸、吉草酸、フマル酸およびグルタミン酸である。
たとえば本発明に用いられる酸は次式のいずれかをもつ酸から選ばれる:R′−COOH、R″(COOH)およびR■(COOH)等である。これらの分子式においてR′、R″およびR■は有機残基、たとえばヒドロカルビル基、すなわち炭素および水素のみからなる基である。R′、R″およびR■により表される基は環式、非環式、直鎖または分枝鎖、飽和もしくは不飽和のいずれであってもよい。環式基は芳香族または非芳香族である。上記式において基R′、R″およびR■はヒドロキシ置換ヒドロカルビル基からも選ばれうる。好ましくはこれらの酸は約10個までの炭素原子を含む。
選ばれる酸アジュバントの厳密な特性または分子構造は、その酸が処置される動物の胃液に妥当な程度に可溶性である限り重要ではない。
これらの酸は炭素、水素および酸素以外の元素を含んでもよい;それらはハロゲン、たとえばフッ素、塩素もしくは臭素、またはイオウ、リンなどを含んでもよい。
使用しうる他の酸には下記のものが含まれる:デカン酸、ウンデシレン酸、サリチル酸、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、P−クロロベンゼンスルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン−1−カルボン酸、シクロペンタンプロピオン酸、1,2−エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、o−(4−ヒドロキシベンジル)安息香酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、メタンスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ステアリン酸、2−ナフチレンスルホン酸、3−フェニルプロピオン酸、p−トルエンスルホン酸、グルコン酸、パントテン酸、、パルミチン酸、馬尿酸、マンデル酸およびカプロン酸などである。無機酸、たとえば塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、硫酸、オルトリン酸、ホウ酸なども使用しうる。液体酸は摂取前にその酸とゼオライトの相互作用が実質的に防止されるデリバリーシステム中に配合される。固体酸も好ましくは当業者により、摂取前に成分の相互作用を低下させるために配合される。
本発明は加水分解に際して酸を生成する酸無水物の使用をも包含する。従って無水酢酸、ピロリン酸、およびこれらに類する他の単純もしくは混合酸無水物を本発明に使用しうる。有用な酸無水物は上記酸から誘導される。
酸性塩は本発明に使用しうる他の種類の酸性化剤である。これらの塩は一般にカチオンが弱酸である上記酸の塩である。この種の代表的カチオンはカルシウム、マグネシウム、アンモニウムなどである。本発明により処置される生物にその塩が投与された際に目的外の作用を生じない限り、カチオンの厳密な特性は重要でない。カチオンは、その塩を水性系に添加することにより達成されるpHが7よりかなり低下するのに十分な程度に弱くなければならない。より詳細には、1グラム分子量の塩を1リットルの蒸留水に添加した場合にpHを5以下に低下させる塩が好ましい。本発明の酸性化剤として使用しうる塩はたとえば下記のものである:硫酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸水素カルシウム、これらの塩のマグネシウム同族体、たとえば上記の種類の他の酸性リン酸塩および硫酸塩などである。
処置される動物の胃粘膜により分泌される塩酸は本発明の酸性成分とならない。従ってたとえば塩酸を含有する本発明の組成物は、処置される患者または動物に投与する前に有効な活性成分と混合した状態でこの酸を含有する。
本発明の組成物はかなりの量の酸性化剤を含む。たとえばこれらの組成物は約5−約75重量%の酸性化剤および約95−25重量%の本発明の有効成分を含有する。この範囲より若干外側の組成物も本発明に包含される。好ましくは本発明組成物は約35−約65重量%の酸性化剤および約65−35重量%の本発明の有効成分を含有する。
上記のように本発明の極めて好ましい形態は、(a)処置される患者または動物により、(b)それらの患者または動物に投与された本発明の薬剤から形成されるケイ酸を用いることによる、カルシウム性骨疾患の予防、治療、または罹患の遅延を包含する。従って本発明の1観点においては、本方法は本発明の薬剤が分割されてケイ酸となり、これが吸収されて体内の活性部位、たとえばオステオイド組織へ輸送されることにより、骨障害に対処し、または骨の強度を高める方法よりなる。
当業者は以上の記述により、請求の範囲に示される範囲および精神から逸脱することなく本発明を多様に変更および修正しうるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】ケイ素の原子価の4分の1以上が酸素への結合により占められた状態でケイ素が酸素またはハロゲン、好ましくはフッ素、塩素もしくは臭素のみに結合した、生理学的に受容しうる有機ケイ素化合物を含有する、温血脊椎動物におけるカルシウム含有骨組織の増殖または再生を刺激するための組成物。
【請求項2】骨組織の増殖または再生に対する刺激が、カルシウム性骨疾患の治療、予防、または罹患の遅延に際して用いられる、請求の範囲第1項に記載の組成物。
【請求項3】骨組織の増殖または再生に対する刺激が、望ましいものより低い強度を有する脊椎動物の骨の強度を高めるために用いられる、請求の範囲第1項に記載の組成物。
【請求項4】有機ケイ素化合物が式Si(OR)を有するテトラオルガノオルトシリケート(式中、Rにより表される各有機残基は同一かまたは異なり、炭素および水素のみからなる)である、請求の範囲第1項に記載の組成物。
【請求項5】Rにより表される各有機残基が約6個までの炭素原子を含むアルキル基から選ばれる、請求の範囲第4項に記載の組成物。
【請求項6】アルキル基がエチルである、請求の範囲第5項に記載の組成物。
【請求項7】ケイ素が炭水化物中に存在する酸素にのみ結合している、請求の範囲第1項に記載の組成物。
【請求項8】炭水化物が単糖類、二糖類または三糖類である、請求の範囲第7項に記載の組成物。
【請求項9】炭水化物が単糖類である、請求の範囲第8項に記載の組成物。
【請求項10】単糖類がグルコースである、請求の範囲第9項に記載の組成物。

【特許番号】第2944117号
【登録日】平成11年(1999)6月25日
【発行日】平成11年(1999)8月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平1−508123
【出願日】平成1年(1989)7月19日
【公表番号】特表平4−503943
【公表日】平成4年(1992)7月16日
【国際出願番号】PCT/US89/03119
【国際公開番号】WO90/00884
【国際公開日】平成2年(1990)2月8日
【審査請求日】平成8年(1996)7月16日
【出願人】(999999999)エチル・コーポレーション