説明

高レベルに油性物質を有するゴム組成物およびそのゴルフボールにおける使用

【課題】高レベルの油性物質を含有し、低コストで製造が容易、圧縮速度を減少させたゴルフボール材料を提供する。
【解決手段】ベースゴムと、このベースゴム100重量部に対して10から120部の油性物質とを有するゴム組成物から製造された少なくとも1つの層を具備するゴルフボールである。ベースゴムはムーニー粘度が40以上のポリブタジエンである。ゴム組成物は、任意の1または複数のコア層、カバー層または中間層にあってよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高レベルに油性物質、例えば、可塑剤および/またはプロセス油を有するゴム組成物、および、そのようなゴム組成物のゴルフボールへの使用に向けられている。
【背景技術】
【0002】
高レベルに可塑剤を含有するゴム組成物が知られている。例えば、米国特許第4,429,068号(ナカヒラ。特許文献1)は、100重量部のゴム成分、5から2000重量部のファクチス(油ゴム)、および20から2000重量部の軟化剤を有するゴム組成物を硬化して得られた、特有な物理特性を有する硬化ゴムを開示している。この参考文献は、このゴム組成物がゴルフボールのコアに採用できると説明している。
【0003】
米国特許第5,776,294号(Nagel。特許文献2)は、α,β−エチレン系不飽和カルボン酸の金属塩、およびオプションとしてのアルキルアミノアルキルフェノール硫化阻害剤を利用して架橋される硬化可能エラストマーの実現方法を開示している。アクリルおよびメタクリル酸の金属塩にエチレンプロピレンジエンゴムおよび高レベルのSunpar、すなわち、ペンシルバニア州フィラデルフィアのSun Refining and Marketing Companyから入手可能な独自可塑剤を混合させたものが例として示されている。
【0004】
米国特許第6,380,291号(Hellens。特許文献3)は、アクリレートまたはメタクリレート塩、過酸化物開始剤で硬化可能なエラストマー、および1分子に1以上のエポキシ基を具備する可塑剤を有するゴム組成物を開示している。この参考文献は、可塑剤がゴム組成物中に約2から約20phrの量だけ存在しなければならないと説明している。この参考文献は、ゴルフボールが典型的な目的用途であるとも説明している。
【0005】
ゴルフボール工業分野では、高レベルの可塑剤を含有するゴム組成物が、糸巻ゴルフボール中の内側コアそう材料として有益であることが知られている。例えば、米国特許第6,593,443号(特許文献4)および同第6,669,581号(ともにIwami。特許文献5)および同第6,846,247号(Kato。特許文献6)は、油性物質、例えば、石油合成油、可塑剤、合成ゴム(rubber substitute。ファクチス)、アルキルベンゼン、および液体ゴムを含有するゴム組成物を硫化、成型して内側コア層を得ることが好ましい、糸巻ゴルフボールを開示している。これら参考文献は、油性物質がベースゴム中にベースゴムを100として約30から500部の量だけ含有されることが好ましいことを説明している。
【0006】
高レベルの油性物質を含有してソリッドゴルフボールに有益な新規なゴム組成物に対する要請が依然としてある。そのような組成物は既知のゴルフボール材料に較べて以下の特性のうちの少なくとも1つを有してよい。すなわち、低コスト、容易な製造、減少した圧縮、および減少した速度である。この発明はそのような組成物およびその組成物の種々のゴルフボールのコア、カバー、および中間層における利用を説明する。
【特許文献1】米国特許第4,429,068号
【特許文献2】米国特許第5,776,294号
【特許文献3】米国特許第6,380,291号
【特許文献4】米国特許第6,593,443号
【特許文献5】米国特許第6,669,581号
【特許文献6】米国特許第6,846,247号
【発明の開示】
【0007】
1実施例において、この発明は、コアおよびカバーを有するソリッドゴルフボールを提供する。コアは、ベースゴムと、上記ベースゴムの100重量部に対して10から120重量部の油性物質とを有するゴム組成物から製造される。ベースゴムは、ムーニー粘度が45以上のポリブタジエンである。
【0008】
他の実施例において、この発明は、コア、ポリウレタンまたはポリ尿素の外側カバー層、および、それらコアおよび外側カバー層の間に配された中間層を有するソリッドゴルフボールを提供する。コアは、ベースゴムと、当該ベースゴムの100重量部に対して10重量部から120重量部の油性物質とを有するゴム組成物から製造される。ベースゴムのムーニー粘度が55以上である。中間層は、部分的に中和されたコポリマーおよび十分に中和されたコポリマーならびにこれらのブレンドから選択された高弾力性材料から製造される。
【0009】
さらに他の実施例において、この発明は、コア、ポリウレタンまたはポリ尿素の外側カバー層、および、それらコアおよび外側カバー層の間に配された中間層を有するソリッドゴルフボールを提供する。コアの直径は2.03cm(0.8インチ)から3.56cm(1.4インチ)であり、また、コアは、ベースゴムと当該ベースゴムの100重量部に対して30重量部から120重量部の油性物質とを有するゴム組成物から製造される。ベースゴムは、ムーニー粘度が65以上でシス含有量が90%以上である、ネオジム触媒化ポリブタジエンである。中間層の厚さは、0.254cm(0.1インチ)以上で、また、中間層は、部分的に中和されたコポリマーおよび十分に中和されたコポリマーならびにこれらのブレンドから選択された高弾力性材料から製造される。
【発明の詳細な説明】
【0010】
通常のゴルフボールは2つの一般的なクラス、すなわち、ソリッドおよび糸巻に分類できる。ソリッドゴルフボールは、ワンピース、ツーピース(すなわちソリッドコアおよびカバー)、および多層(すなわち、1以上の層のソリッドコア、および/または1以上の層のカバー)のゴルフボールを含む。糸巻ゴルフボールは、典型的には、ソリッド、空洞または液体充填のセンタを含み、これに引っ張り状態のエラストマー材料およびカバーを被覆してなる。
【0011】
この発明のゴルフボールは、種々のコア構造、中間層、カバーおよびコーティングを具備するソリッドゴルフボールである。この発明のゴルフボールコアは、コア中心からその外周までを含む単一の一体層であってよく、また、センターとこれを取り巻く少なくとも1つの外側コア層とを有してもよい。この発明のゴルフボールカバーは、1または複数の層、例えば、内側および外側カバー層を具備する二重層を含んでもよい。オプションとして、付加的な層をコアおよびカバーの間に配してもよい。
【0012】
この発明のゴルフボールは、この発明のゴム組成物から製造される少なくとも1つの層を具備する。このゴム組成物を有する層は、内側コア層、中間コア層、外側コア層、内側カバー層、中間カバー層、外側カバー層、またはコアおよびカバーの間に配された中間層から選択された任意の1または複数の層である。具体的な実施例では、ゴム組成物は、ツーピースゴルフボールのコア層の全部または一部を有する。他の具体的な実施例では、ゴム組成物は、多層ゴルフボールの内側コア層および/または外側コア層の全部または一部を有する。さらに他の具体的な実施例では、ゴム組成物は、多層ゴルフボールの内側カバー層の全部または一部を有する。
【0013】
ゴム組成物
この発明のゴム組成物はベースゴムと高レベルの油性物質とを有する。この発明の目的において、油性物質が100重量部のベースゴムに対して2重量部以上の量の油性物質が組成物中に存在すれば組成物は「高レベルの油性物質」を有する。具体的な実施例では、油性物質は、ベースゴムの100重量部に対して2.5重量部以上、または5重量部以上の量だけ組成物中に存在する。他の具体的な実施例では、油性物質は、ベースゴムの100重量部に対して、下限が2重量部、または2.5重量部、または3重量部、または5重量部、または10重量部、上限が20重量部、または25重量部、または30重量部、または50重量部、または100重量部、または200重量部の範囲内の量だけ、組成物中に存在する。他の具体的な実施例では、油性物質は、ベースゴムの100重量部に対して、下限が10重量部、または15重量部、または20重量部、または25重量部、または30重量部、または35重量部、上限が100重量部、または120重量部、または150重量部、または200重量部の範囲内の量だけ、組成物中に存在する。
【0014】
油性物質は、一般に、ゴムプロセス油、植物油、加硫植物油、動物油、液体ゴム、可塑剤、およびこれらの組み合わせから選択される。適切なゴムプロセス油の例は、これに限定されないが、芳香油、ナフテン油、パラフィン油で、ASTM D2226により分類されるものである。具体的な実施例では、油性物質はパラフィン油、ナフテン油、およびこれらの組み合わせから選択される。とくに適切なパラフィンおよびナフテン油は、例えば、ペンシルバニア州フィラデルフィアのSunoco,Incから商業的に入手可能なSunpar(商標)パラフィン油;カリフォルニア州サンラモンのChevron Corporationから商業的に入手可能なParalux(商標)パラフィン油;ミシシッピー州ジャクソンのErgon,Incから商業的に入手可能なUniteheneナフテン油である。とくに適切な油は、低PCA/PHA(polycyclic aromatic/polyaromatic hydrocarbon)油であり、これは、軽抽出ソルベート(MES;mild extraction solvates)、処理蒸留物芳香族抽出物(TDAE;treated distillate aromatic extracts)、および重ナフテン油を含む。適切な低PCA油は米国特許第6,977,276号(例えばその第4コラム第31行から第6コラム第27行)にさらに開示されており、その内容は参照してここに組み入れる。水素化ナフテン油も適切であり、これは、米国特許第6,939,910号に開示されているものを含み、その内容は参照してここに組み入れる。適切な植物油は、例えば、菜種油、ヒマシ油、アマニ油、大豆油、およびキリ油である。適切な加硫植物油は、例えば、半透明ファクチス、ブラックファクチス、およびブラウンファクチスを含み;とくに、「F14」および「F17」硫黄加硫菜種油、「K14D」硫黄加硫修正脂肪酸、「Gloria 17」硫黄加硫菜種油、「Humburg 4」部分水素化菜種油、および「WP」無硫黄・無塩素過酸化物架橋修正ひまし油を含み、これらはすべてコネチカット州のノーウォークのRT Vandebilt Companyから商業的に入手できる。適切な動物油は例えば鯨油および魚油を含む。適切な液体ゴムは例えば液体ポリブタジエンおよび液体ポリイソプレンを含む。適切な可塑剤の例は、アジペート、例えば、ジオクチルアジペート、ジイソプロピルアジペート、ジブチルアジペート、ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、ポリプロピレンアジペート、ジイソデシルアジペート、ビス(2−メチルヘキシル)アジペート、ジカプリルアジペート、およびオクチルデシルアジペート;フタレート、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ノニルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジノニルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジカプチルフタレート、ジラウリルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジメチルグリコールフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ブチルシクロヘキシルフタレート、ブチルラウリルフタレート、ブチルココナツアルキルフタレート、オクチルデカノイルフタレート、オクチルデシルフタレート、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート、ビス(3,5,5−トリメチルヘキシル)フタレート、ビス(ジエチレングリコールモノメチルエーテル)フタレート、ブチルベンジルフタレート、およびテキサノールベニルフタレート;ホスフェート、例えば、トリクレシルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、イソプロピル化トリフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、tris(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート、イソデジルジフェニルホスフェート、混合ドデシルおよびテトラデシルジフェニルホスフェート、ブチルフェニルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、フェニルジクレシルホスフェート、キシレニルジクレシルホスフェート、クレシルジキシレニルホスフェート、ジフェニルホスフェートハイドロキノン凝縮物、トリクロロエチルホスフェート、トリ(β−クロロプロピル)ホスフェート、トリ(ジクロロプロピル)ホスフェート、およびトリ(トリブロモネオペンチル)ホスフェート;セバケート、例えば、ジオクチルセバケートおよび2−エチルヘキシルセバケート;アルキルベンゼン、例えば、1−ドデシル−4−ヘキシルベンゼン、1−ドデシル−3−ヘキシルベンゼン、1,2,3−ヘミメリテン;シトレート、例えばアセチルトリブチルシトレート、トリエチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、およびトリブチルシトレート;グリコール酸エステル、例えば、エチルフタリルエチレングリコレート、メチルフタリルエチレングリコレート、およびブチルフタリルエチレングリコレート;エポキシ化合物、例えば、ブチルエポキシステアレート、オクチルエポキシステアレート、エポキシブチルオレエート、エポキシ化ブチルオレエート、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化アルキル油、およびエポキシ化アルキル油アルコールエステル;トリメリテート、例えば、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート、およびトリ−オクチルトリメリテート;脂肪酸エステル、例えば、ブチルオレエート;ベンゾエート、例えば、ジエチレングリコールベンゾエート、およびジプロピレングリコールベンゾエート;アゼレート;グルタレート;アルキルアルコール;およびこれらの混合物を含む。適切な可塑剤は米国特許出願公開2005/0137030に開示されているものも含み、その内容は参照してここに組み入れる。
【0015】
ベースゴムは、一般的には、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、およびこれらの2以上の組み合わせから選択される。好ましいベースゴムは1または複数のポリブタジエンである。とくに適切なポリブタジエンブレンドは、例えば、米国特許第6,774,187号に開示されており、その内容は参照してここに組み入れる。他の好ましいベースゴムは、1または複数のポリブタジエンに、ポリイソプレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリスチレンエラストマー、ポリエチレンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリ尿素エラストマー、メタローセン触媒エラストマー、およびプラストマーから選択された1または複数のエラストマーをオプションとして混合したものである。ゴム組成物が付加的なエラストマーを含む(すなわちベースゴムに加えて)ときには、付加的なエラストマーはベースゴム中にベースゴムの100重量部に対して100重量部未満の量だけ含まれる。具体的な実施例では、付加的なエラストマーは、ベースゴムの100重量部に対して50重量部以下、または、45重量部以下、または20重量部以下、または5重量部以下の量だけ含まれる。
【0016】
この発明の組成物中のとくに好ましいベースゴムは、高ムーニーのポリブタジエンである。この発明の目的においては、「高ムーニー」は、油または可塑剤を添加する前に測定したムーニー粘度が40以上のポリブタジエンを指す。好ましくは、高ムーニーポリブタジエンのムーニー粘度は、油または可塑剤添加前に測定して、45以上、または50以上、または55以上、または60以上、または65以上、75以上、または80以上である。
【0017】
この発明の好ましい高ムーニーポリブタジエンは、ネオジム触媒化されたものであり、好ましくは、90%以上のシス含有量を有する。ただし、低シス(<90%)、トランス、およびビニルの種類のものも適切である。チタン触媒化、ネッケル触媒化、およびコバルト触媒化の高ムーニーポリブタジエンも適切であり、好ましくはシス含有量は90%以上であるが、低シス(<90%)、トランス、およびビニルの種類のものも適切である。
【0018】
特に好ましい実施例では、ゴム組成物は、ネオジム触媒で製造され、37.5phrのMES油が付与された、溶液性の、高シス、高ムーニーのポリブタジエンポリマーを有する。この実施例の具体的な側面では、ゴム組成物のムーニー粘度はASTM D1646で測定して37である。この実施例の他の具体的な側面では、油付加前に、ポリブタジエンのムーニー粘度は80から90である。この実施例の他の具体的な側面では、ゴム組成物の比重はASTM D5668に従って測定して0.93である。この実施例の他の具体的な側面では、ポリブタジエンのシス−1,4成分は、FT−IRスペクトロスコピで測定して96重量%である。この実施例の他の具体的な側面では、ゴム組成物の油成分はASTM D5774で測定して27.3重量%である。特に適切な、37.5phrのMES油を付与された高シスのネオジム触媒化ポリブタジエンは、Lanxess(商標) Corporationから商業的に入手可能なBuna CB29MESである。高シスネオジム触媒化ポリブタジエンはオプションとして非付加のゴム、これに限定されないが、天然ゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、バラタ、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、およびこれらの組み合わせをブレンドされてもよい。
【0019】
ベースゴムは典型的には通常の硬化プロセスを用いて硬化される。適切な硬化プロセスは、例えば、過酸化物硬化、硫黄硬化、照射、およびこれらの組み合わせを含む。1実施例では、ベースゴムは過酸化物硬化される。フリーラジカル開始剤として適切な有機過酸化物は、例えば、ジクミルペルオキシド;n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルペルオキシ)バレレート;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン;ジ−t−ブチルペルオキシ;ジ−t−アミルペルオキシ;t−ブチルペルオキシ;t−ブチルクミルペルオキシ;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3;ジ(2−t−ブチル−ペルオキシイソプロピル)ベンゼン;ジラウロイルペルオキシド;ジベンゾイルペルオキシド;t−ブチルヒドロペルオキシド;およびこれらの混合物を含む。ペルオキシドのフリーラジカル開始剤は一般にゴム組成物中に重量基準でベースゴム100部に対して0.05部または0.1部または0.25部または1部または1.5部の下限および重量基準でベースゴム100部に対して2.5部または3部または5部または6部または10部または15部の上限を有する範囲内の量だけ存在する。コエージェントは一般にペルオキシドとともに使用され硬化状態を増大させる。適切なコエージェントは、これに限定されないが、3から8個の炭素原子を有する不飽和カルボン酸の金属塩;不飽和ビニル化合物および多価モノマー(例えばトリメチロールプロパントリメクリレート);フェニレンビスマレイミド;およびこれらの混合物を含む。とくに適切な金属塩は、例えば、アクリレート、ジアクリレート、メタクリレート、およびジメタクリレートの1または複数の金属塩を含む。ただし、金属はマグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、リチウム、およびニッケルから選択される。具体的な実施例では、コエージェントは、アクリレート、ジアクリレート、メタクリレートおよびジメタクリレートの亜鉛塩から選択される。他の実施例では、コエージェントは亜鉛ジアクリレートである。コエージェントが亜鉛ジアクリレートおよび/または亜鉛ジメタクリレートの場合、コエージェントは、ゴム組成物中に重量基準でベースゴム100部に対して1部または5部または10部または20部の下限および重量基準でベースゴム100部に対して25部または30部または35部または40部または50部または60部の上限を有する範囲内の量だけ存在する。1または複数の活性コエージェントが使用される場合、使用されるコエージェントの量は、亜鉛ジアクリレートおおび亜鉛ジメタクリレートのコエージェントに対する量と同じまたはより多い。
【0020】
硫黄および硫黄ベースの硬化剤を、オプションの促進剤とともに、過酸化物開始剤に組み合わせてまたはこれに代えて用いて、ベースゴムを架橋できる。適切な硬化剤および促進剤は、これに限定されないが、硫黄;N−オキシジエチレン2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド;N,N−ジ−オルト−トリルグアニジン;ビスマスジメチルジチオカルバメート;N−シクロヘキシル2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド;N,N−ジフェニルグアニジン;4−モルホリニル−2−ベンゾチアゾールジスルフィド;ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド;チウラムジスルフィド;メルカプトベンゾチアゾール;スルフェンアミド;ジチオカルバメート;チウラムスルフィド;グアニジン;チオ尿素;キサントエート;ジチオホスフェート;アルデヒド−アミン;ジベンゾチアジルジスルフィド;テトラエチルチウラムジスルフィド;テトラブチルチウラムジスルフィド;およびこれらの組み合わせを含む。
【0021】
フリーラジカルを発生可能な高エネルギ放射源をベースゴムの架橋に用いてもよい。そのような放射源の適切な例は、これに限定されないが、電子ビーム、紫外線放射、ガンマ放射、X−線放射、赤外線放射、熱、およびこれらの組み合わせを含む。
【0022】
適切なフリーラジカル開始剤、コエージェント、および硬化剤の他の適切な例は米国特許出願公開2004/0214661および同2003/0144087および米国特許第6,566,483号、同6,695,718号、および同6,939,907号に開示されており、これらの内容は参照してここに組み入れる。
【0023】
この発明のゴム組成物は、シス−トランス変換化合物、例えば、ハロゲン化有機硫黄、有機ジスルフィド、または無機ジスルフィド化合物を含んでよい。とくに適切なハロゲン化有機硫黄化合物は、これに限定されないが以下の一般式を有するものを含む。
【化1】

式中、R〜Rはいずれの順番であってもよく、独立に、C〜Cアルキル基、ハロゲン基、チオール基(−SH)、カルボキシレート基、スルホネート基、及び水素から選択される。適切な例は、これに限定されないが、ペンタフルオロチオフェノール;2−フルオロチオフェノール;3−フルオロチオフェノール;4−フルオロチオフェノール;2,3−フルオロチオフェノール;2,4−フルオロチオフェノール;3,4−フルオロチオフェノール;3,5−フルオロチオフェノール;2,3,4−フルオロチオフェノール;3,4,5−フルオロチオフェノール;2,3,4,5−テトラフルオロチオフェノール;2,3,5,6−テトラフルオロチオフェノール;4−クロロテトラフルオロチオフェノール;ペンタクロロチオフェノール;2−クロロチオフェノール;3−クロロチオフェノール;4−クロロチオフェノール;2,3−クロロチオフェノール;2,4−クロロチオフェノール;3,4−クロロチオフェノール;3,5−クロロチオフェノール;2,3,4−クロロチオフェノール;3,4,5−クロロチオフェノール;2,3,4,5−テトラクロロチオフェノール;2,3,5,6−テトラクロロチオフェノール;ペンタブロモチオフェノール;2−ブロモチオフェノール;3−ブロモチオフェノール;4−ブロモチオフェノール;2,3−ブロモチオフェノール;2,4−ブロモチオフェノール;3,4−ブロモチオフェノール;3,5−ブロモチオフェノール;2,3,4−ブロモチオフェノール;3,4,5−ブロモチオフェノール;2,3,4,5−テトラブロモチオフェノール;2,3,5,6−テトラブロモチオフェノール;ペンタヨードチオフェノール;2−ヨードチオフェノール;3−ヨードチオフェノール;4−ヨードチオフェノール;2,3−ヨードチオフェノール;2,4−ヨードチオフェノール;3,4−ヨードチオフェノール;3,5−ヨードチオフェノール;2,3,4−ヨードチオフェノール;3,4,5−ヨードチオフェノール;2,3,4,5−テトラヨードチオフェノール;2,3,5,6−テトラヨードチオフェノール;及びこれらの塩、好ましくは亜鉛塩またはマグネシウム塩を含む。具体的な実施例では、ハロゲン化した有機硫黄化合物はペンタクロロチオフェノールであり、これは純粋な形態で市場から入手可能であり、又はペンタクロロチオフェノールを45パーセント(2.4部のPCTPに相当する)付加した硫黄化合物を含むクレイをベースとするキャリヤーであるSTRUKTOL(登録商標)の登録商標名で入手可能である。STRUKTOL(登録商標)はストウのストラクトルカンパニーオブ アメリカ(Struktol Company of America of Stow,オハイオ州)から市場を通じて入手可能である。PCTPは市場を通じてサンフランシスコのエキナケム(eChinachemofSan Francisco,カリフォルニア州)から純粋な形態で入手可能であり、サンフランシスコのエキナケム(eChinachem of San Francisco,CA)から塩の形態で入手可能である。最も好ましくは、ハロゲン化した有機硫黄化合物はペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩であり、これはサンフランシスコのエキナケム(eChinachemofSan Francisco,カリフォルニア州)から市場を通じて入手可能である。適切なシス−トランス変換化合物は、例えば、米国特許出願公開2005/0187353および米国特許第5,252,652号、同第5,697,856号、同第5,816,944、同第6,139,447号、同第6,184,301号、同第6,465,578号、および同第6,525,141号により十分に開示されており、これらの内容は参照してここに組み入れる。
【0024】
この発明のゴム組成物がシス−トランス変換化合物を含むときには、シス−トランス変換化合物は一般的にゴム組成物中に、ベースゴム100部に対して0.01部または0.05部または2.2部または2.3部の下限、およびベースゴム100部に対して4部または5部の上限の範囲の量だけ存在する。
【0025】
この発明のゴム組成物はオプションとして1または複数種類の粒状のフィラーを含み、これは無機フィラー、例えば、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化錫、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、マイカ、タルク、クレイ、シリカ、珪酸鉛、その他;高比重金属粉末状フィラー、例えば、タングステン粉末、モリブデン粉末、その他;リグリンド、すなわち、粉砕またはリサイクルされたコア材料;およびナノフィラーから選択される。この発明のゴム組成物中に存在する粒状材料の量は、典型的には、重量基準でベースゴム100部に対して5部または10部の下限および重量基準でベースゴム100部に対して30部または50部または100部の上限の範囲である。
【0026】
この発明のゴム組成物はオプションとしてフリーラジカル捕捉剤、スコーチ遅延剤、着色剤、香料、化学吹き出しまたは発泡剤、脱泡剤、安定剤、軟化剤、衝撃修正剤、その他から選択された1または複数種類の添加剤を含む。この発明のゴム組成物中に典型的に存在する添加剤の量は、典型的には、重量基準でベースゴム100部に対して0部の下限および重量基準でベースゴム100部に対して20部または50部または100部または150部の上限の範囲である。
【0027】
フィラー材料は二重の機能を持つフィラー、例えば、酸化亜鉛(フィラー/酸捕捉剤として使用されてよい)および二酸化チタン(フィラー/光沢剤として使用されてよい)であってよい。さらに適切なフィラーおよび添加剤の例は、これに限定されないが、米国特許出願公開2003/0225197に開示されているものを含み、その内容は参照してここに組み入れる。
【0028】
この発明はゴム組成物のどのような具体的な製造方法にも限定されない。具体的な混合プロセスでは、ゴム組成物は、混合装置、例えば、バンバリミキサ、2ロールミル等を用いて単一パス手順または多重パス手順で材料を混合することにより製造される。油性物質は、ベースゴムに混合するのに先立って、オプションとしてポリマーにプリブレンドまたはマスターバッチにより混合する。
【0029】
この発明のゴム組成物は種々の用途に採用できる。例えば、この発明のゴム組成物はゴルフ用品に使用して好適であり、これは比制限的にはゴルフボール、ゴルフシューズおよびゴルフクラブを含む。
【0030】
ゴルフボールへの応用
この発明のゴルフボールは、1または複数のコア層、1または複数のカバー層、およびコアおよびカバーの間にオプションとして配された1または複数の中間層を具備するソリッドボールである。これらの層のうち少なくとも1つが、ここに説明したように高レベルの油性物質を有するゴム組成物から製造される。この発明のゴム組成物を有する2以上の層を具備するゴルフボールにおいては、1の層のゴム組成物は他の層のゴム組成物と同一でも異なってもよい。
【0031】
この発明のゴルフボールは、好ましくは、この発明のゴム組成物殻製造される少なくとも1つのコア層を有する。具体的に実施例では、この発明は、この発明のゴム組成物からなる単一層コアを具備するゴルフボールを実現する。他の具体的な実施例では、この発明は、内側コア層および外側コア層を具備する二重コアを有し、内側コア層がこの発明のゴム組成物から製造されるゴルフボールを実現する。他の具体的な実施例では、この発明は、内側コア層および外側コア層を具備する二重コアを有し、外側コア層がこの発明のゴム組成物から製造されるゴルフボールを実現する。他の具体的な実施例では、この発明は、内側コア層、外側コア層および少なくとも1つの中間コア層を具備する多層コアを有し、内側コア層がこの発明のゴム組成物から製造されるゴルフボールを実現する。他の具体的な実施例では、この発明は、内側コア層、外側コア層および少なくとも1つの中間コア層を具備する多層コアを有し、外側コア層がこの発明のゴム組成物から製造されるゴルフボールを実現する。他の具体的な実施例では、この発明は、内側コア層、外側コア層および少なくとも1つの中間コア層を具備する多層コアを有し、中間コア層がこの発明のゴム組成物から製造されるゴルフボールを実現する。
【0032】
この発明のゴルフボールコアの全体の径は、好ましくは、0.5インチまたは0.8インチまたは1インチまたは1.25インチまたは1.3インチの下限で、1.35インチまたは1.4インチまたは1.5インチまたは1.56インチまたは1.6インチまたは1.63インチの上限の範囲内である。この発明の内側コア層の径は、好ましくは、0.5インチまたは0.75インチまたは1インチの下限で、1.25インチまたは1.4インチまたは1.55インチまたは1.57インチまたは1.58インチの上限の範囲内である。この発明の外側コア層の厚さは、好ましくは、0.01インチまたは0.015インチまたは0.02インチまたは0.025インチまたは0.03インチの下限で、0.05インチまたは0.1インチまたは0.28インチまたは0.35インチまたは0.4インチまたは0.5インチまたは0.55インチの上限の範囲内である。この発明の中間層の総合的な厚さは、好ましくは、0.02インチまたは0.025インチまたは0.032インチの下限で、0.15インチまたは0.22インチまたは0.28インチの上限の範囲内である。
【0033】
この発明のゴム組成物から製造された少なくとも1つの層を具備するゴルフボールコアでは、油性物質が存在故に、圧縮および/または速度が減少される。そのため、圧縮および/または速度が大きくなくてはならないゴルフボールに適用する場合には、高弾力性材料から製造された1または複数の層を含ませ、および/または、カバーの全体の厚さを0.1インチ以上にすることが好ましい。適切な高弾力性材料は、これに限定されないが、米国特許出願公開2005/0250600に開示されている「低ひずみ」材料;PCT刊行物No.WO01/29129および米国特許第6653382号に開示されているような高弾力性および柔らかさを具備するサーモプラスチック;PCT刊行物No.00/23519おyび米国特許第6,815,480号に開示されているような高弾力性熱可塑性エラストマー;米国特許第6,777,472号に開示されているような高度に中和されたエチレンコポリマー;米国特許第5,306,760号に開示されているような高レベルの脂肪酸塩を含有するアイオノマー;米国特許第6,756,436号に開示されているような高度に中和された酸ポリマー;米国特許出願公開2005/0255941に開示されるようなNa−アイオノマー/Li−アイオノマーブレンド;米国特許第6,245,862号に開示されるようなスルホネートおよび/またはホスホネート・アイオノマー組成物;米国特許第6,100,321号に開示されるようなステアリン修正アイオノマー;米国特許第6,187,864号に開示されるような比較的硬いポリアミドおよび比較的柔らかいアイオノマー樹脂のブレンド;米国特許第6,232,400号に開示されるようなポリ(トリメチレンテレフタレート)組成物;米国特許第6,290,611号に開示されるようなグリシジルポリマー組成物;および、米国特許第5,902,855号に開示されるようなアクリレートエステル−含有アイオノマー樹脂を含む。上述の刊行物および特許の各々は参照してここに組み入れる。適切な高弾力性材料は、ゴルフボールの他の材料と相性がよい、任意の硬い、高曲げ弾性率の、弾力性材料も含み、これには、例えば、熱可塑性および熱硬化性ポリウレタン、熱可塑性および熱硬化性ポリ尿素、熱可塑性および熱硬化性熱可塑性および熱硬化性ポリエーテルエステル、熱可塑性および熱硬化性ポリエーテルアミド、熱可塑性および熱硬化性ポリエステル、動的に加硫されたエラストマー、官能化スチレン−ブタジエンエラストマー、メタローセンポリマー、ナイロン、およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、ならびにこれらの1以上の組み合わせが含まれる。また、E.I.DuPont de Nemours and Companyから商業的に入手可能な、Surlyn(商標)アイオノマー、Hytel(商標)熱可塑性ポリエステルエラストマー、およびDuPont(商標)HPF1000およびHPF2000の商標で販売されているアイオノマー材料;ExxonMobile Chemical Companyから商業的に入手可能なIotek(商標)アイオノマー;Arkema Incから商業的に入手可能なPebax(商標)熱可塑性ポリエーテルブロックアミドも高弾力性材料として好適である。
【0034】
ゴルフボールコアはこの発明のゴム組成物以外の適切な材料で製造された1または複数の層を含んでよい。ここに開示されるゴルフボールに用いて適切な材料は、これに限定されないが、天然および合成ゴム、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレンブロックコポリマーゴム(例えば、SI、SIS、SB、SBS、SIBS、その他、ただし「S」はスチレン、「I」はイソブチレン、「B」はブタジエンである)、ブチルゴム、ハロブチルゴム、イソブチレンおよびパラ−アルキルスチレンのコポリマー、イソブチレンおよびパラ−アルキルスチレンのハロゲン化コポリマー、ブタジエンのアクリロニトリルとのコポリマー、ポリクロロプレン、アルキルアクリレートゴム、塩化イソプレンゴム、およびアクリロニトリル塩化イソプレンゴム、;メタローセンポリマー;酸コポリマーおよびアイオノマー;およびこれらの組み合わせを含む。
【0035】
この発明のゴルフボールカバーは単一、二重、および多層カバーを含み、好ましくは、その全体の厚さは、0.01インチまたは0.02インチまたは0.05インチまたは0.06インチまたは0.1インチまたは0.115インチの下限および0.15インチまたは0.2インチまたは0.25インチまたは0.5インチまたは0.8インチまたは1.0の上限の範囲である。二重および多層カバーは内側カバー層および外側カバー層を有し、多層カバーはさらに少なくとも1つの中間カバー層を内側カバー層および外側カバー層の間に有する。この発明の内側カバー層の厚さは、好ましくは、0.005インチまたは0.01インチまたは0.015インチまたは0.02インチまたは0.025インチまたは0.03インチの下限および0.05インチまたは0.1インチまたは0.15インチまたは0.2インチの上限の範囲である。この発明の外側カバー層の厚さは、好ましくは、0.01インチまたは0.02インチまたは0.025インチまたは0.03インチの下限および0.04インチまたは0.05インチまたは0.15インチまたは0.2インチの上限の範囲である。この発明の中間層の厚さは、好ましくは、0.01インチまたは0.02インチまたは0.025インチの下限および0.05インチまたは0.15インチまたは0.2インチの上限の範囲である。
【0036】
この発明のゴルフボールカバーは、この発明のゴム組成物以外の適切な材料で製造された1または複数の層を含んでよい。カバー材料は好ましくは丈夫で切断耐性のあるものを所望の特性に基づいて選択する。ここで開示されるゴルフボールに使用して好適なカバー材料は、例えば、先に開示して高弾力性材料;例えば低密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、および高密度ポリエチレンを含むポリエチレン;ポリプロピレン;ゴム強化オレフィンポリマー;アイオノマーの部分を構成しない酸コポリマー;プラストマー;フレクソマー:スチレン−ブタジエンゴムおよびイソプレン−またはエチレン−ブタジエンゴムのようなブロックコポリマー;動的に加硫したエラストマー;エチレンビニルアセテート;エチレンメタクリレート;塩化ビニルを有するビニル樹脂;アクリル樹脂;ポリアミド、アミド−エステルエラストマー、および、アイオノマーとポリアミドのグラフトコポリマー(例えば、Arkema社から商業的に入手可能なPebax(商標)熱可塑性ポリエーテルブロックアミドを含む);架橋トランスポリイソプレンブレンド;ポリウレタン;ポリ尿素;ポリエステルベースの熱可塑性エラストマー、例えば、E.I.DuPont de Nemours and Companyから商業的に入手可能なHytel(商標);ポリウレタンベースの熱可塑性エラストマー、例えば、BASF社から商業的に入手可能なElastollan(商標);ポリフェニレン酸化物樹脂、例えば、GE Plasticsから商業的に入手可能なNoryl(商標);合成または天然の加硫ゴム;アイオノマー樹脂;およびこれらの組み合わせを含む。適切なカバー材料および構造は、これに限定されないが、米国特許第6,117,025号、同第6,767,940号および同第6,969,630号に開示されたものを含み、これらの内容は参照し得ここに組み入れる。
【0037】
商業的に入手可能はアイオノマーのカバー材料は、これに限定されないが、E.I.DuPont de Nemours and Companyから商業的に入手可能なSurlyn(商標)アイオノマー樹脂およびDuPont(商標)HPF1000およびHPF2000;およびExxonMobile Chemical Companyから商業的に入手可能なIotek(商標)アイオノマーを含む。アイオノマーを熱可塑性エラストマーとブレンドしたものも好適である。適切なアイオノマーカバー材料はさらに例えば米国特許第6,653,382号、同第6,756,436号、同第6,894,098号、同第6,919,393号、および同第6,953,820号に開示されており、その内容は参照してここに組み入れる。
【0038】
適切なポリウレタンカバー材料はさらに例えば米国特許第6,756,436号に開示されており、その内容は参照してここに組み入れる。ポリウレタンおよびポリ尿素はカバー材料として使用するときには熱硬化性でも熱可塑性でもよい。熱硬化性材料から、通常の注型または反応性射出成型の手法により、ゴルフボール層を形成できる。熱可塑性材料から、通常の圧縮または射出成型の手法により、ゴルフボール層を形成できる。光安定性ポリウレタンおよびポリ尿素が、単一層カバーおよび二重あるいは多層カバーの外側層に好ましい。高弾性(high modulus)熱可塑性材料が二重カバーおよび多層カバーの内側カバー層に好適な材料である。
【0039】
ゴルフボールカバーは、オプションとして、1または複数のフィラーおよび/または添加物を含む。適切なフィラーは、例えば、金属酸化物、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、マイカ、タルク、クレイ、シリカ、鉛シリケート、その他を含む。適切な添加物は、例えば、着色剤、蛍光剤、白色剤、金属、酸化防止剤、分散剤、UV吸収剤、光安定剤、可塑剤、表面活性剤、粘度修正剤、整合剤、発泡剤、強化剤、離型剤、その他を含む。
【0040】
この発明のゴルフボールはオプションとしてコアおよびカバーの間に配された1または複数の中間層を有する。中間層があるときには、中間層の全体の厚さは一般的に0.01インチまたは0.05インチまたは0.1インチの下限および0.3インチまたは0.35インチまたは0.4インチの上限の範囲である。この発明のゴム組成物に加え、適切な中間層材料は、例えば、天然ゴム、バラタ、ガタパーチャ、シス−ポリブタジエン、トランス−ポリブタジエン、合成ポリイソプレン、ポリオクテナマー(polyoctenamer)、スチレン−プロピレン−ジエンゴム、メタローセンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン、クロロプレンゴム、アクリロニトリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−エチレンブロックコポリマー、無水マレイン酸または琥珀酸エステル修正メタローセン触媒エチレンコポリマー、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ尿素、塩化ポリエチレン、ポリスルフィドゴム、フルオロカーボン、およびこれらの組み合わせを含む。
【0041】
この発明のゴルフボールの全体の直径は、好ましくは、1.6インチまたは1.62インチまたは1.66インチの下限および1.69インチまたは1.74インチまたは1.800インチの上限の範囲である。より好ましくはこの発明のゴルフボールの全体の直径は1.68インチである。この発明のゴルフボールの圧縮は好ましくは120以下、または110以下、または105以下である。この発明のゴルフボールの125ft/sのCORは好ましくは0.750以上または0.780以上または0.790以上または0.800以上である。
【0042】
適切なゴルフボール構造および材料はさらに例えば米国特許出願公開2003/0144087、同2005/0164810および同2005/0255941;米国特許第5,688,119号、同第5,919,100号、および同第7,004,856号;およびPCT刊行物WO00/23519および同WO00/29129に開示されており、それらの内容は参照してここに組み入れる。
【0043】
具体的な実施例において、この発明は、単一層コアおよび単一、二重、または多層カバーを有するゴルフボールに向けられている。コア層は、高レベルに油性物質を有するゴム組成物から製造され、その径は1.4インチ以下である。好ましくは、コアの径は、0.5インチまたは0.8インチまたは1.3インチの下限で、1.35インチまたは1.4インチの上限の範囲である。コア層の圧縮は好ましくは70以下、または60以下、または50以下、または45以下である。カバーの全体の厚さは、好ましくは、0.1インチ以上である。カバーはオプションとして内側カバー層および外側カバー層を含み、内側カバー層は高弾力性材料から製造される。
【0044】
他の具体的な実施例において、この発明は、コア、ポリウレタンまたはポリ尿素の外側カバー層、およびコアと外側カバー層の間に配された中間層を有するゴルフボールに向けられている。コア層は、高レベルに油性物質を有するゴム組成物から製造され、その径は1.4インチ以下である。好ましくは、コアの径は、0.5インチまたは0.8インチまたは1.3インチの下限で、1.35インチまたは1.4インチの上限の範囲である。コア層の圧縮は好ましくは70以下、または60以下、または50以下、または45以下である。中間層の厚さはo.1インチ以上であり、好ましくは、0.1インチから0.3インチであり、高弾力性材料から製造される。高弾力性材料は先に開示した高弾力性材料を含む。好ましくは、中間層の高弾力性材料は、部分的に中和された酸コポリマー、十分に中和された酸コポリマー、2以上の部分的に中和された酸コポリマーのブレンド、2以上の十分に中和された酸コポリマーのブレンド、少なくとも1つの部分的に中和された酸コポリマーと少なくとも1つの十分に中和された酸コポリマーとのブレンドから選択される。
【0045】
さらに他の具体的な実施例において、この発明は、2層コアおよび2層カバーを有するゴルフボールに向けられている。内側コア層は、高レベルに油性物質を有するゴム組成物から製造され、その径は好ましくは1インチ以下である。外側コア層は、ベースゴムとこのベースゴム100重量部に対して5重量部以下の油性物質とを有するゴム組成物を有し、その厚さは好ましくは0.280インチである。そして2層コアの全体の径は、好ましくは、1.560インチである。2層カバーは内側カバー層および外側カバー層を有する。内側カバー層はアイオノマーを有し、好ましくは、その厚さは、0.030インチである。外側カバー層は注型可能なポリウレタンまたはポリ尿素組成物を有し、好ましくは、その厚さは0.030インチである。
【0046】
この発明はゴルフボール層を形成する具体的な方法のいずれにも制約されない。層は、射出成型、圧縮成型、注型、および反応性射出成型を含む任意の適切な手法で製造できることに留意されたい。
【0047】
この発明の目的において、圧縮は、既知の手順に従って、Atti圧縮試験装置を用いて測定される。ここではピストンを用いてボールをスプリングに押しつける。ピストンの移動量は固定されスプリングの偏位が測定される。スプリングの偏位の測定はボールの接触時点で開始しない。むしろ、ほぼ第1の1.25mm(0.25インチ)のスプリングの偏位のオフセットがある。非常に剛性が小さなコアはスプリングを1.25mmより多く撓まさず、ゼロの圧縮が測定される。Atti圧縮テスタは42.7mm(1.68インチ)の径の物体を測定するように設計されている。したがって、ゴルフボールコアのようなより小さな物体は隙間を埋めて42.7mmの高さとなるようにして正確な測定値を得るようにしなければならない。
【0048】
この発明の目的において、CORは既知の手順に従って決定され、ここでは、ゴルフボールまたはゴルフボールのサブアッセンブリ(例えばゴルフボールコア)を空気砲から所定の速度(この発明の目的では38.1m/s(125ft/s))で打ち出す。複数の弾道光スクリーンが空気砲およびスチール板の間に配置されてボールの速度を測定する。ボールがスチール板へ移動するときに、ボールは各光スクリーンを活性化して各光スクリーンにおける時間を測定する。これにより、ボールの入射速度に比例した入射移行時間が得られる。ボールはスチール板と衝突して複数の光スクリーンを通じてリバウンドし、これが光スクリーン間を移行するのに要する時間間隔を測定する。これにより、ボールの飛び出し速度に比例した飛び出し移行時間が得られる。CORは飛び出し移行時間間隔の入射移行時間間隔に対する比、COR=Tout/Tinとして計算される。
【0049】
ここで数値の下限および数値の上限が示される場合、これらの値の任意の組み合わせを採用できることに留意されたい。
【0050】
ここに引用した、先行文献を含む、すべての特許、刊行物、テスト手順および他の参照資料は、参照して、この発明と矛盾しない範囲で、ここに完全にくみいれる。
【0051】
この発明の事例的な実施例を詳細に説明したが、種々の変更や他の実施例をこの発明の趣旨を逸脱することなく当業者が容易に想到できることに留意されたい。したがって、特許請求の範囲はここに示された例や説明に制限されるのでなく、むしろ、特許請求の範囲は、この発明に宿る特許性のある新規な特徴をすべてを包囲するように理解され、それはこの発明が関連する分野の当業者により均等なものと扱われるすべての特徴を含むことに留意されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアおよびカバーを有するソリッドゴルフボールにおいて、上記コアは、ベースゴムと、上記ベースゴムの100重量部に対して10重量部から120重量部の油性物質とを有するゴム組成物から製造され、上記ベースゴムは、ムーニー粘度が45以上のポリブタジエンであることを特徴とするソリッドゴルフボール。
【請求項2】
上記ポリブタジエンのムーニー粘度が55以上である請求項1記載のソリッドゴルフボール。
【請求項3】
上記ポリブタジエンのムーニー粘度が65以上である請求項1記載のソリッドゴルフボール。
【請求項4】
上記ポリブタジエンゴムがネオジム触媒化ポリブタジエンである請求項1記載のソリッドゴルフボール。
【請求項5】
上記ポリブタジエンゴムが90%以上のシス含有量を有する請求項1記載のソリッドゴルフボール。
【請求項6】
上記油性物質は低PCAのオイルである請求項1記載のソリッドゴルフボール。
【請求項7】
上記ゴム組成物は、上記ベースゴムの100重量部に対して少なくとも30重量部の油性物質を有する請求項1記載のソリッドゴルフボール。
【請求項8】
上記コアの圧縮は50以下である請求項1記載のソリッドゴルフボール。
【請求項9】
上記カバーの全体の厚さが0.254cm(0.1インチ)以上である請求項1記載のソリッドゴルフボール。
【請求項10】
上記カバーは、部分的に中和されたコポリマーおよび十分に中和されたコポリマーならびにこれらのブレンドから選択された高弾力性材料から製造される層を含む請求項1記載のソリッドゴルフボール。
【請求項11】
ベースゴムと当該ベースゴムの100重量部に対して10重量部から120重量部の油性物質とを有するゴム組成物から製造され、上記ベースゴムのムーニー粘度が55以上のコアと、
ポリウレタンまたはポリ尿素の外側カバー層と、
上記コアおよび上記外側カバー層の間に配され、部分的に中和されたコポリマーおよび十分に中和されたコポリマーならびにこれらのブレンドから選択された高弾力性材料から製造される中間層とを有することを特徴とするソリッドゴルフボール。
【請求項12】
上記ポリブタジエンのムーニー粘度が65以上である請求項11記載のソリッドゴルフボール。
【請求項13】
上記ポリブタジエンのムーニー粘度が75以上である請求項11記載のソリッドゴルフボール。
【請求項14】
上記ポリブタジエンゴムがネオジム触媒化ポリブタジエンである請求項11記載のソリッドゴルフボール。
【請求項15】
上記ポリブタジエンゴムが90%以上のシス含有量を有する請求項14記載のソリッドゴルフボール。
【請求項16】
上記油性物質は低PCAのオイルである請求項11記載のソリッドゴルフボール。
【請求項17】
上記ゴム組成物は、上記ベースゴムの100重量部に対して少なくとも30重量部の油性物質を有する請求項11記載のソリッドゴルフボール。
【請求項18】
上記コアの圧縮は50以下である請求項11記載のソリッドゴルフボール。
【請求項19】
上記中間層の厚さが0.254cm(0.1インチ)以上である請求項11記載のソリッドゴルフボール。
【請求項20】
直径が2.03cm(0.8インチ)から3.56cm(1.4インチ)であり、ベースゴムと当該ベースゴムの100重量部に対して30重量部から120重量部の油性物質とを有するゴム組成物から製造され、上記ベースゴムが、ムーニー粘度が65以上でシス含有量が90%以上である、ネオジム触媒化ポリブタジエンであるコアと、
ポリウレタンまたはポリ尿素の外側カバー層と、
上記コアおよび上記外側カバー層の間に配され、厚さが0.254cm(0.1インチ)以上で、部分的に中和されたコポリマーおよび十分に中和されたコポリマーならびにこれらのブレンドから選択された高弾力性材料から製造される中間層とを有することを特徴とするソリッドゴルフボール。

【公開番号】特開2008−6269(P2008−6269A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−131132(P2007−131132)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(390023593)アクシュネット カンパニー (155)
【氏名又は名称原語表記】ACUSHNET COMPANY
【Fターム(参考)】